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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】位置規制部材、折戸及び折戸装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/48 20060101AFI20240307BHJP
   E06B 7/36 20060101ALN20240307BHJP
   E05F 7/00 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
E06B3/48
E06B7/36 G
E05F7/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020061506
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021161637
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】古庄 浩之
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-002162(JP,A)
【文献】実開平01-154285(JP,U)
【文献】特開2018-145598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/48
E06B 7/36
E05D 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折戸が複数連結され、互いに隣接する前記折戸の縦框同士の少なくとも一方に配置され、
前記縦框の見付面及び見込面にまたがるように設けられ、
前記見付面を覆う見付部と、
前記見付部から屈曲して前記見込面を覆う見込部と、
前記見付部と前記見込部とを接続する角部を面取りして形成される面取部と、を有する、前記折戸の位置規制部材。
【請求項2】
請求項に記載の位置規制部材を備える折戸。
【請求項3】
前記位置規制部材は、前記縦框の上下方向に間を空けて複数配置される、請求項に記載の折戸。
【請求項4】
請求項に記載の位置規制部材を備える折戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置規制部材、折戸及び折戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折戸を開閉する際に、折戸を構成する戸体と戸体が閉じたときに、戸体が密着して指を挟んでしまうことを回避するため、戸体と戸体の連結部分に戸体の位置を記載する位置規制部材を設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-248847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の折戸を連結して配置した場合、折戸と折戸との間で、閉じた状態で当たる面と、開けた状態で当たる面とが異なる。閉じた状態と明けた状態で当たる面それぞれに位置規制部材を設けると、部品点数が多くなり、外観の統一感に欠けるだけでなく、製造コストも増加する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、折戸が複数連結され、互いに隣接する前記折戸の縦框同士の少なくとも一方に配置され、前記縦框の見付面及び見込面にまたがるように設けられた前記折戸の位置規制部材に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本実施形態の折戸装置の閉じた状態を室内側から視た図である。
図1B】本実施形態の折戸装置の開いた状態を室外側から視た図である。
図2】本実施形態の折戸装置の吊元側における部分横断面図である。
図3】本実施形態の折戸装置の吊元側における部分縦断面図である。
図4】本実施形態の固定部を示す展開斜視図である。
図5】本実施形態の折戸装置の開いた状態を上面側から視た図である。
図6A】本実施形態の吊車及が上枠内に収まった状態を示す図である。
図6B】本実施形態の吊車及び位置規制部材を示す図である。
図7A】本実施形態の位置規制部材の上面図である。
図7B】本実施形態の位置規制部材を室内側の見付面から視た図である。
図7C】本実施形態の位置規制部材を室外側の見込面から視た図である。
図8A】本実施形態の折戸を下側から視た斜視図である。
図8B】本実施形態の折戸を下部後方側から視た図である。
図8C】本実施形態の折戸を下側から視た他の斜視図である。
図9A】本実施形態のスペーサの上面図である。
図9B】本実施形態のスペーサの短手方向の側面図である。
図9C】本実施形態のスペーサの長手方向の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一実施形態における折戸装置1ついて、図面を参照しながら説明する。折戸装置1は、例えば、室内と室外を分ける位置に設置される。折戸装置1は、図1Aに示すように、枠体10と、複数の折戸2と、図1Bに示すようにヒンジ部3と、吊車4と、ガイドローラ47と、を有する。折戸装置1は、さらにアーム5と、位置規制部材6と、移動安定化部材7と、を有する。折戸装置1は、枠体10の内側に複数の折戸2が折り畳み可能に連結されて吊り込まれた建具である。折戸装置1は、折戸2を閉めた状態では、枠体10内に三組の折戸2が並んで配置され、開けた状態では折戸2を一方側(図1Bにおける左側)に一組、他方側(図1Bにおける右側)に二組折り畳んで枠体10内を開放可能に配置されている。
【0008】
枠体10は、上枠11と、下枠12と、左右の縦枠13、14とを有し、それぞれが四角い枠を形成するように組まれて形成される。上枠11の下面側及び下枠12の上面側には、それぞれ枠体10の内部側に向かって開口した溝部111、121が形成されている。溝部111内を、折戸2がスライドする。
【0009】
折戸2は、二枚の戸体20を折り畳み可能に連結して構成される。折戸2は、二枚の戸体20が、二枚で一組の折り畳みの山(又は谷)を形成するように連結框21eにより連結されている。連結框21eの室内側には、図1Aに示すように把手15が設けられており、把手15を室外側に押し出すことで、折戸2が折れ、開くように配置されている。図1Bに示すように、折戸2は、連結框21eが、折り畳んだ際に室外側に向かって突出するように連結される。
【0010】
折戸2は、枠体10の左右の縦枠13、14に固定されずに、枠体10の中間の位置で自由に連結位置を変更可能な中間折戸220と、縦枠13に接続された折戸210と、縦枠14に接続された折戸230とを有する。折戸2は、複数の折戸(例えば210、220、230)が複数連結して構成される。中間折戸220は、折戸210及び折戸230のいずれに連結できるようにも構成することができる。
【0011】
戸体20は、框21と、ガラス板25とを有する。框21は、上框21a、下框21b、一対の縦框21c、21dで構成される。框21の四周には、室内側及び室外側の両方にパッキン23aが取り付けられている。ガラス板25は、框21の内側に配置されている。戸体20は、枠体10内に六枚配置されている。
【0012】
図1A及び図1Bに示すように、六枚の戸体20のうち、縦枠13、14に隣接して配置された吊元側の戸体20を吊元側戸体20Aと呼ぶ。六枚の戸体20のうち、一方及び他方の吊元側戸体20Aの間に配置される四枚の戸体20をいずれも戸先側戸体20Bと呼ぶ。吊元側戸体20Aは、後述するヒンジ部3により上枠11及び下枠12に連結されている。まず、吊元側の構成について説明する。
【0013】
ヒンジ部3は、吊元側戸体20Aを上枠11及び下枠12に回転可能に接続するための構造部である。図2及び図3に示すように、ヒンジ部3は、枠体10の見付方向両側で、上枠11及び下枠12と、吊元側戸体20Aの上框21a及び下框21bとに配置される。ヒンジ部3は、上側に上側軸部31及び固定部32を有し、下側に下框孔34、下側軸部35及び保持プレート36を有する。
【0014】
上側軸部31は、吊元側戸体20Aの上框21aの上面から上方に突出する略円柱状の軸部である。上側軸部31は、金属製でヒンジ部3の回転する軸部を構成する。
【0015】
固定部32は、上枠11の吊元側に設けられる。固定部32は、上側軸部31の回転位置を上枠11内に固定する部材である。固定部32は、上枠孔37と、本固定部330と、を有する。
【0016】
仮固定部320は、上枠11の溝部111に取り付けられる断面視略コ字状の部材である。図3及び図4に示すように、仮固定部320は、上面部321と、側面部322と、下面部323と、立ち上がり側面部324と、立ち上がり端面325と、ガイド溝326と、固定孔327と、を有する。
【0017】
上面部321は、上枠11の溝部111内における上面に固定される長方形の板状の部分である。上面部321には、固定用の孔321aが形成され、ネジにより上枠11の溝部111に固定される。
【0018】
側面部322は、上面部321の室外側から下垂する長方形の板状の部分である。側面部322は、上面部321と下面部323とを接続する。
【0019】
下面部323は、上面部321に対向する長方形の板状の部分である。下面部323は、側面部322の下端から室外側に延出する。下面部323における見込方向の寸法は、上面部321の寸法よりも大きく、下面部323は、上面部321よりも室外側に延出して配置されている。図3に示すように、下面部323の上面には、ライナー板328が重ねられ、下面部323とともに固定されている。ライナー板328は、図4では省略されている。
【0020】
立ち上がり側面部324は、下面部323の室外側の端部から上方に立ち上がる面である。立ち上がり側面部324は、側面部322に対向する側に位置する。立ち上がり側面部324は、側面部322の上下方向の半分よりも低く形成され、上面部321まで達していない。
【0021】
立ち上がり端面325は、下面部323の長手方向における一方側の端部から上方に向かって起立する面である。立ち上がり端面325は、側面部322及び立ち上がり側面部324と略直交する方向に延びる。
【0022】
ガイド溝326は、上側軸部31を回転位置に案内するように形成される。ガイド溝326は、見込溝326a及び見付溝326bを有する。見込溝326aは、下面部323の室外側端部及び立ち上がり側面部324の室外側の端縁が切り欠かれ、端縁から枠体10の見込方向に所定距離延びる。見付溝326bは、見込溝326aの見込方向奥側から見付方向に延びる。ガイド溝326は、仮固定部320の下面から視て略L字状に形成される。ガイド溝326では、上側軸部31を見込溝326aに挿入し、見付溝326bの終端へと案内することで、上側軸部31の回転位置が決定される。ガイド溝326内の見付溝326bの終端側が、ヒンジ部3の上側軸部31が挿入される上枠孔37となる。
【0023】
固定孔327は、下面部323に形成され、ガイド溝326に隣接する貫通孔である。固定孔327は以下に説明する本固定部330を仮固定部320に固定するねじを締結するための孔である。
【0024】
本固定部330は、図4に示すように、仮固定部320の下面部323を覆うように配置される板状の部材である。本固定部330は、固定孔331と、上側軸部挿通溝332と、を有する。
【0025】
固定孔331は、仮固定部320における下面部323に形成された固定孔327と位置が合うように配置され、本固定部330の下面から、本固定部330の固定孔331、仮固定部320の固定孔327をねじが挿通して固定される。
【0026】
上側軸部挿通溝332は、仮固定部320の下面部323に形成されたガイド溝326のうち見付溝326bと合うように配置されるように切り欠かれた部分である。図2に示すように、上側軸部31は、ガイド溝326の見付溝326bに挿通した状態で、本固定部330の上側軸部挿通溝332にも挿通する。上側軸部挿通溝332が見付溝326bとのみ連通することで、本固定部330を仮固定部320の下面部323に合わせると、上側軸部31は、見込溝326aを移動して固定部32から外れることができなくなる。これにより、本固定部330は、仮固定部320とともに上側軸部31の回転位置を、上枠11内に固定する。
【0027】
下框孔34は、下框21bの下方に形成され、以下に説明する下側軸部35の上端が挿通する略円形の貫通孔である。
【0028】
下側軸部35は、上側軸部31の軸線上の下方で、下枠12から上方へ突出する軸部である。下側軸部35は、ナット34aで固定されている。下側軸部35は、上端が吊元側戸体20Aの下框に挿通する。
【0029】
保持プレート36は、図2及び図3に示すように、下側軸部35が挿通する位置に貫通孔が形成された板状の部材である。保持プレート36は、第1保持プレート361及び第2保持プレート362を有する。第1保持プレート361は、下枠12の上面に配置され、ねじで固定される。第2保持プレート362は、第1保持プレート361の上に重ねられる。第2保持プレート362は、下側軸部35の近傍で、第2保持プレート362から一部が上方に離れるように第1保持プレート361から浮いて延出する。
【0030】
アーム5は、図5に示すように、吊元側戸体20A及び戸先側戸体20Bそれぞれを、上枠11に接続する板状の支持部材である。図5は、折戸装置1を開いた状態の上面から視た図であり、上枠11の天面側を省略して示している。アーム5は、折戸2が必要以上に開くことで吊車4等に荷重がかかりすぎることを防止する機構である。アーム5は、折戸2を構成する戸体20の上框21aに配置され、上框21aと上枠11とを接続して折戸2の開き度合いを規制する。
【0031】
アーム5は、戸体20を折り畳んだ状態で室内側に位置する上框21aの端部近傍に取り付けられている。アーム5は、上枠側接続部52及び戸体側接続部53により上枠11及び戸体20に接続されている。アーム5は、細長く平たい板材で、長手方向の端部が半円状の曲面を有する。アーム5の長手方向の端部には、図示しないねじ留め用の孔が形成されている。
【0032】
上枠側接続部52は、上枠11の溝部に配置され、アーム5の一端を回転可能に接続する。上枠側接続部52は、樹脂で形成された略直方体状の部材であり、上枠11の溝部111内を、戸体20の異動に伴ってスライド移動することができる。上枠側接続部52は、不図示のねじ孔を有し、ねじによりアーム5を接続している。
【0033】
戸体側接続部53は、折戸2の上框21aにおける室内側に配置され、アーム5の他端を回転可能に接続する。戸体側接続部53は、戸体20の上框21aの上面に取り付けられるアーム5よりも短い板状の部材である。戸体側接続部53は、不図示のねじ孔を有し、ねじによりアーム5を接続している。
【0034】
吊元側戸体20Aの吊り込み方法について説明する。吊元側戸体20Aは、室外側から吊元側戸体20Aの板面を折戸装置1の正面に沿って、すなわち折戸2を閉じた姿勢で、吊り込むことができる。まず、固定部32の仮固定部320を、上枠11の溝部111における吊元側にねじで固定しておく。次に、下框孔34を下側軸部35に挿通させた状態で、上框21aから突出する上側軸部31を、仮固定部320のガイド溝326における見込溝326aの手前側から奥側へ挿入する。上側軸部31を、続けて見込溝326aの奥側から見付溝326bへスライドさせ、終端まで移動させる。次に、上側軸部31を見付溝326bの終端に配置した状態で、仮固定部320の下面から本固定部330を重ねる。本固定部330の上側軸部挿通溝332を、上側軸部31の周囲に合わせた状態で本固定部330と仮固定部320を固定することで、上側軸部31の回転位置を上枠孔37に固定する。その後、下側軸部35を、ナット34aを締結して固定する。
【0035】
次に吊元側戸体20Aから戸先側に配置される複数の戸先側戸体20Bについて説明する。戸先側戸体20Bは、上枠11側では、吊車4により上枠11に吊り込まれている。戸先側戸体20Bは、下枠12側では、ガイドローラ47により下枠12の溝部121内に係合している。
【0036】
吊車4は、折戸2を吊り込むとともに上枠11内の溝部111を走行可能な部品である。吊車4は、折戸2に直接接続されている。図5に示すように、吊車4は、戸先側戸体20Bにおける、折戸2を折り畳んだ際に室内側に位置する縦框21c、21dの上端に直接接続されている。図6A及び図6Bは、上枠11の溝部111内に配置された吊車4及び移動安定化部材7のブロック72を示す。図6A及び図6Bに示すように、吊車4は、ベース部41と、車輪42と、回転軸部43と、ガイド軸部44と、取付部45と、高さ調整部46と、を有する。
【0037】
ベース部41は、上部が開口した側面視略コの字状の部材である。ベース部41は、略長方形の底面部411と、底面部411の一方及び他方の長手方向に延びる側縁から起立する一対のベース側面部412と、を有する。底面部411には、後述する車輪42、回転軸部43及びガイド軸部44が取り付けられる。ベース部41は、長手方向が溝部111に沿って配置される。
【0038】
車輪42は、図6A及び図6Bに示すように、ベース部41の向かい合うベース側面部412の一方及び他方の外側に、互い対向して一対取り付けられる。一対の車輪420は、上枠11の溝部111の幅方向における一方及び他方に向かい合って配置され、溝部111内を回転可能に取り付けられる。車輪42の外径は、ベース側面部412の上下方向の寸法をわずかに超える程度である。対向する一対の車輪420は、車軸421により連結されており、一方の車輪42と他方の車輪42の回転が連動するように取り付けられている。一対の車輪420は、ベース部41の長手方向に並んで、二組取り付けられる。
【0039】
回転軸部43は、上枠11と折戸2の戸先側戸体20Bとを回転可能に接続する。回転軸部43は、底面部411から下方に延びる略円柱状の軸部である。回転軸部43は、ベース部41に対して回転可能に取り付けられている。回転軸部43は、ベース部41の底面部411から下方に延び、以下に説明する取付部45に取り付けられる。回転軸部43の回転方向は、車輪42の回転方向に対して略直交する方向である。
【0040】
ガイド軸部44は、ベース部41の底面部411から下方に延び、回転軸部43に隣接して配置される略円柱状の突起である。ガイド軸部44の外径は、回転軸部43と同程度である。ガイド軸部44の長さは、回転軸部43の半分程度である。
【0041】
取付部45は、回転軸部43の下端から下方に配置される箱状の部材である。取付部45は、戸体20の縦框21c、21dの内部に挿入され、縦框21c、21dに固定される。取付部45の寸法は、図6Aに示す取付部45の幅が、戸体20の厚さ寸法より小さいように形成される。
【0042】
高さ調整部46は、取付部45の下方に取り付けられ、上下方向に移動可能な機構である。高さ調整部46は、ラック部461と、歯車462と、伝達部463と、ケース464と、を有する。ラック部461は、取付部45から下方に延びる軸部であり、外周に溝が形成されている。歯車462は、ラック部461の外周に形成された溝に係合し、回転することでラック部461を上下に移動するように取り付けられている。伝達部463は、歯車462の下方に配置され、外部からアクセス可能なドライバー等の工具の係止部である。伝達部463は、例えばプラスやマイナス形状の溝である。ケース464は、歯車462及び伝達部463の周囲を囲う箱状の覆いである。
【0043】
折戸装置の施工者が、伝達部463にドライバー等を係止させて回転させることにより、伝達部463に連動する歯車462が、ラック部461を上下に動く。歯車462の回転により、歯車462と取付部45との間が長くなったり短くなったりする。この運動により、戸体20が吊車4に対して上がったり下がったりする。これにより上枠11に対する戸体20の高さ方向の位置を調整することができる。
【0044】
吊車4は、戸体20を吊った状態で上枠11の溝部111内を走行する。ガイド軸部44も、回転軸部43と同様に上枠11内の溝部111内を走行する。吊車4には、一対の車輪420が二組配置されているので、ガイド軸部44が回転軸部43に隣接する方の一対の車輪420の下方に配置されていることで、吊車4の溝部における左右方向のがたつきを抑えて、スムーズに走行する。また、折戸2を折る際(戸を開ける際)に、一対の車輪420が一組のみであった場合には、一対の車輪420が強く溝部111を形成する室外側見付面と室内側見付面にぶつかる。しかし、一対の車輪420が二組(複数)配置されていると、その勢いが小さくなるので、吊車4自体の経年劣化を防ぐことができる。
【0045】
ガイドローラ47は、図8A図8Cに示すように、戸先側戸体20Bの縦框21c、21d内部における下方に取り付けられる回転軸である。ガイドローラ47は下部が縦框21c、21dよりも下方に突するように配置される。ガイドローラ47は、下枠12内の溝部121を移動する。ガイドローラ47は、軸部471と、ローラ部472とを有する。軸部471は、上下移動可能に設けられている。軸部471は、下方に移動して下枠12に形成された図示しない係止孔に挿入されることにより、縦框21c、21dを下枠12に位置決めして固定することができる。ローラ部472は、軸部471の下端に設けられる。軸部471が上方に移動した状態で、ローラ部472が、溝部121を回転可能に移動する。ローラ部472が溝部121内を走行することで、吊車4に吊られた折戸2が室内外方向に振れないように構成されている。
【0046】
位置規制部材6は、複数の戸体20が互いに所定の間隔を空けて位置するように、位置を規制する部材である。図1Aに示すように、位置規制部材6は、縦框21c、21dの上下に間隔を空けて二か所取り付けられる。位置規制部材6は、複数の戸体20のうち、縦枠13、14に接続された吊元側の縦框21c、21dを除き、互いに隣接する戸体20の縦框21c、21d同士の少なくとも一方に配置される。典型的には、位置規制部材6は、縦枠13、14に接続されていない中間折戸220の縦框21c、21dに取り付けられる。中間折戸220の両端に位置規制部材6を配置することで、中間折戸220と、折戸210及び折戸230との間に所定の隙間が形成される。しかし、吊元側戸体20Aにおける戸先側の縦框21c、21dに位置規制部材6が設けられることも排除されない。
【0047】
位置規制部材6は、縦框21c、21dの見付面及び見込面にまたがるように設けられる。図7Aに示すように、位置規制部材6は、縦框21c、21dに当たる内側の面6aが平面視で略L字状に屈曲している。位置規制部材6における縦框21c、21dに当たらない外側の面6bは、内側の面6aが屈曲することで形成される角部が傾斜した外形を有する。位置規制部材6は、樹脂製である。図7B及び図7Cに示すように、位置規制部材6は、内側の面6a及び外側の面6bそれぞれから視ると、略長方形の形状を有する。位置規制部材6は、見込部61と、見付部62と、面取部63と、を有する。
【0048】
見込部61は、縦框21c、21dの見付面を覆い、内側の面6aが縦框21c、21dの見付面に当接する。図7B及び図7Cに示すように、見込部61には、上下に間隔を空けてねじ留め用の貫通孔61aが形成される。位置規制部材6は、縦框21c、21dの見込面に、貫通孔61aを介してねじ留めされる。
【0049】
見付部62は、見込部61から屈曲して縦框21c、21dの見込面を覆い、内側の面6aが縦框21c、21d見込面に当接している。見込部61及び見付部62は、互いに直交する方向に延びている。
【0050】
面取部63は、位置規制部材6が縦框21c、21dに取り付けられた状態で外側の面6bに形成される。面取部63は、見込部61と見付部62とを接続する角部の外側の面6bを面取りして形成される部分である。面取部63は、平坦な面を有し、見込部61と見付部62とを平面視で直線的に接続している。
【0051】
図1A及び図8Cに示すように、折戸2を閉じた状態では、見込部61が隣接する折戸2に当たる。見込部61が隣接する折戸2の見込面に当たることで、閉じた状態で折戸2同士の間に間が空くように位置が規制され、隣接する折戸2同士の見込面が密着しない。
【0052】
図5に示すように、折戸2を開いた状態では、見付部62が、隣接する折戸2に当たる。見付部62が隣接する折戸2の見付面に当たることで、隣接する折戸2同士の見付面が密着せず、開いた状態で折戸2同士の間に間が空くように位置が規制される。
【0053】
折戸2を開いた状態と閉じた状態に変化させる途中では、隣接する折戸2が、位置規制部材6の見込部61から見付部62、又は見付部62から見込部61へ当たる位置が変化する途中で、面取部63に当たる。
【0054】
移動安定化部材7は、中間折戸220が折り畳まれた状態で枠体10内をスライド移動する際に、中間折戸220の姿勢を維持して移動を安定化する部材である。図1Aに示すように、折戸装置1を閉じた状態では、移動安定化部材7は、中間折戸220の見付方向の内側で、見付方向の両側に配置される。折戸装置1を開き、中間折戸220が折り畳まれてスライド移動する際には、移動安定化部材7は、中間折戸220の戸体20と戸体20の間で見付方向に沿って配置される。移動安定化部材7は、スペーサ71と、ブロック72と、を有する。
【0055】
スペーサ71は、図8A図8Cに示すように、ガイドローラ47の軸部471に係止され、下枠12の溝部121内に配置される。図8Aは、中間折戸220を折り畳んだ状態で、下側から視た斜視図であり、図8Bは、折り畳んだ状態の中間折戸220の下部を室内側から視た図である。図8Cは、折戸装置1を閉じた状態で、下側から視た斜視図である。
【0056】
スペーサ71は、図9A図9Cに示すように、本体部711と、係止部712と、を有する。本体部711は、下方に向かって開口した略直方体の形状を有する。本体部711は、上面711aと、一対の長手方向側面711bと、一対の短手方向側面711cと、下部開口711dと、補強リブ711eとを有する。上面711aは、下部開口711dよりも一回り外周が大きい略長方形である。一対の長手方向側面711bは、上面711aの外縁よりも内側から下方に延びる。補強リブ711eは、下部開口711dの内部に、長手方向に間を空けて、一対の長手方向側面711b間を接続する壁状に形成されている。
【0057】
係止部712は、本体部711の長手方向の一端から外側に突出し、ガイドローラ47の軸部471の外周を保持するように形成される。係止部712は、スペーサ71の長手方向外側の一端から、短手方向に間を空けて二本のアームが突出して形成されている。二本のアームの内側は、ガイドローラ47の軸部471の周囲を保持可能に略C字状に形成されている。スペーサ71は樹脂部材で構成され、ガイドローラ47の軸部471に弾性変形して係止される。
【0058】
図1A及び図8Cに示すように、折戸装置1を閉じた状態では、スペーサ71は、中間折戸220の幅方向の両側に配置されたガイドローラ47にそれぞれ係止されている。スペーサ71は、中間折戸220の幅方向の一方側と他方側で離れている。図1Aの状態から、上枠11の溝部111内で吊車4を走行させるとともにガイドローラ47を下枠12の溝部121を走行させながら、折戸2が折り畳まれる。図1Bのように折り畳んだとき、折戸2を下側から見ると、図8A及び図8Bに示すように、中間折戸220の幅方向の一方及び他方に配置されたスペーサ71同士が近づいて当接する。
【0059】
中間折戸220が折り畳まれた状態で、スペーサ71は、中間折戸220の戸体20同士を連結する連結框21eの幅寸法よりも大きな幅寸法を有する。ここで幅寸法とは、折戸装置の見付方向に沿った寸法である。このため、中間折戸220を折り畳んでも、縦框21c、21d同士が密着することが防止される。仮に、スペーサ71を設けずに、折り畳まれた中間折戸220の二枚の戸体20を折り畳んで、戸体20同士の間に隙間がなくなると、枠体10をスライド移動させる際に傾きやすくなり、中間折戸220は止まりやすくなる。戸体20同士の間にスペーサ71が配置されていると、上方から下方へ吊り込まれた戸体20の姿勢が大きく変わらないので、安定して移動する。
【0060】
ブロック72は、図5及び図6Bに示すように、中間折戸220を閉じた状態では、中間折戸220の幅方向における一方及び他方に配置される吊車4の間に配置されている。ブロック72は、図5に示すように、上枠11の溝部111をスライド移動可能に溝部111に嵌め込まれる。ブロック72は、図6Bに示すように、下側の面にねじを留める貫通孔72aが一つ形成されている。ブロック72には、アーム5の一端がねじにより留められている。ブロック72は、吊元側戸体20Aを上枠11に接続する上枠側接続部52と同様に、アーム5を回転可能に上枠11に接続する。すなわち、アーム5は、一端がブロック72に回転可能に接続される。アーム5の他端は、中間折戸220の上框21aにおける幅方向外側の端部に回転可能に接続される。
【0061】
図5に示すように、中間折戸220が折り畳まれた状態で、ブロック72は、中間折戸220の戸体20と戸体20のとの間に見付方向に沿って配置される。このため、中間折戸220を折り畳んでも、縦框21c、21d同士が密着することが防止される。
【0062】
図8A図8Cに示すように、縦框21c、21dの厚さ方向における室内側端部及び室外側端部の両方で、縦框21c、21dの側面の上端から他端まで、樹脂製のパッキン23aが配置されている。図8A及び図8Bでは、折戸2を折り畳んだ状態で、室内側にパッキン23aが露出している。図8Cに示すように、折戸2を折戸装置1の見付方向に沿って移動させ、閉じていくと、隣接する戸体20の縦框21c、21dに設けられたパッキン23a同士が向き合う。図1Aに示すように、折戸2を完全に閉じると、向き合ったパッキン23a同士が密着して水密となり、室内側への水の侵入が防止される。
【0063】
図6Aに示すように、上枠11の下面と上框21aとの間には、軟質樹脂で構成されるパッキン23bが配置され、断熱性を高めている。上枠11の室内側において上方から下方に延びる室内側見付面には、パッキン23cを係止するパッキン支持部24が配置されている。パッキン支持部24は、上枠11の室内側見付面に形成された凸部11aに係合して取り付けられている。パッキン支持部24は、上下方向に一定の幅を有しており、下方側にパッキン23cが係合される。パッキン支持部24及びパッキン23cは、枠体10の見付方向に沿って延びる。折戸2が閉じられると、パッキン支持部24の上方が不図示のキャップにより押圧され、パッキン23cが折戸2と上枠11との間の気密を確保する。また、室内側の樹脂枠から連続して軟質樹脂で構成されるパッキン23dが配置され、戸体20との間にわずかな隙間をあけて配置され、室内側への冷気を滞留させて断熱性を向上させている。
【0064】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。折戸2の位置規制部材6を、折戸2が複数連結され、互いに隣接する折戸2の縦框21c、21d同士の少なくとも一方に配置させた。折戸2の位置規制部材6を、縦框21c、21dの見付面及び見込面にまたがるように設けた。位置規制部材6が縦框21c、21の見付面及び見込面にまたがるように設けられているので、隣接する折戸2同士が閉じたときに当たる見込面と、開いたときに当たる見付面とのそれぞれに別部材を設ける必要がない。このため、部品点数を低減し、製造コストを低減することができる。外観から視認される部品の数が減るため、外観も統一的に設計し、意匠性も向上する。
【0065】
本実施形態によれば、位置規制部材6見付面を覆う見付部62と、見付部62から屈曲して見込面を覆う見込部61と、見付部62と見込部61とを接続する角部を面取りして形成される面取部63と、を含んで構成した。折戸2を閉じた状態では、見込部61が隣接する折戸2の見込面に当たる。このため、折戸2同士が当たって傷が付いたり、金属で形成されていた場合には、当たった際に音が鳴ったりすることを防止することができる。
折戸2を開いた状態では、見付部62が隣接する折戸2の見付面に当たる。このため、使用者が折戸2を開く間に、指を挟む懸念も低減される。位置規制部材6の見込部61から見付部62、又は見付部62から見込部61へ、隣接する折戸2に当たる位置が変化する途中では、面取部63が隣接する折戸2に当たる。これにより、折戸2の姿勢変化に追従しつつ、折戸2同士の間に間隔が空くように位置を規制し続けることができる。
【0066】
本実施形態における位置規制部材6を備える折戸2により、折戸2同士が密着して指を挟んだり、勢いよく衝突したりすることを防止できる。折戸2同士を、適切な間隔を空けるように容易に配置することができる。
【0067】
本実施形態によれば、位置規制部材6を、縦框21c、21dの上下方向に間を空けて複数配置させた。位置規制部材6を縦框21c、21dの全長に亘って設けなくても、部分的に配置するだけで同じ効果を得られるので、位置規制部材6を目立たなく配置できることに加えて、折戸2を軽量にすることができる。位置規制部材6を上下方向に間を空けて配置することで、折戸2同士の間に空く間隔を、上方と下方で同程度に維持することができる。
【0068】
本実施形態における位置規制部材6を備える折戸装置1により、折戸2同士の間に適切な間隔が空いた折戸装置1を提供することができる。
【0069】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、変形、改良等は本開示に含まれる。
上記実施形態では、戸先側戸体20Bには、回転軸部43を有する吊車4が配置されている。戸先側戸体20Bは、エンドマリオンに連結して回転可能に吊り込んでもよい。回転軸部43を有する吊車4は、吊元側戸体20Aを除いたすべての戸先側戸体20Bに配置してもよく、一部に配置してもよい。
【0070】
上記実施形態では、位置規制部材6の面取部63は、見込部61と見付部62とを平面視で直線的に接続する平坦な面で形成されている。面取部63は、湾曲して形成されていてもよい。見込部61と見付部62とを平面視で曲線的に接続する曲面であってもよい。
【0071】
上記実施形態では、位置規制部材6は、縦框21c、21dの上下方向に間隔を空けて二つ配置されている。位置規制部材6の数及び配置は、限定されない。位置規制部材6は、縦框21c、21dの上下方向における中央側に一つ配置されてもよい。戸体の上下方向の寸法によって、数は適宜変更されてよい。
【0072】
中間折戸220は、アーム5により上枠11に接続されなくてもよい。この場合、ブロック72は、中間折戸220の戸体20を吊る一対の吊車4の向かい合う面に直接固定されていてもよい。
【0073】
スペーサ71及びブロック72は、それぞれ二つの部材が中間折戸220の幅方向の一方及び他方に分かれて配置されているが、いずれか一方に配置されていてもよい。この際、スペーサ71やブロック72を一つ配置し、二つ配置する場合よりも幅寸法を大きくしてもよい。
【0074】
上記実施形態では、中間折戸220の上側において、ブロック72の幅は、連結框21eの幅と同程度に図示されている。図5では、ブロック72と吊車4を合わせて見付方向に配置し、中間折戸220を折り畳んだ際に、戸体20同士の隙間が連結框21eの幅よりも大きく形成されている。しかし、ブロック72の幅は限定されない。ブロック72の幅寸法を大きくし、連結框21eの幅よりも大きくしてもよい。
【0075】
上記実施形態では、折戸2は、一端側が枠体に連結された折戸210及び折戸230の間に、枠体に固定されない中間折戸220を有するものとして説明したが、枠体10に固定されない折戸2としては、上記に限定されない。例えば、二枚の戸体20からなる一つの折戸2が、枠体10内で固定されずに自由に連結・接続可能に構成された折戸であってよい。さらに例えば、複数の折戸2が見付方向に連結された折戸において、枠体10の見付方向外側に位置して枠体10に接する折戸2が、枠体10に固定されずに自由に連結・接続可能に構成されていてよい。
【0076】
折戸2を、吊車4で吊られる吊り戸を例に説明した。しかし、戸車は吊車4ではなく、下框21bに設けられた戸車であってもよく、下枠12の溝部121を走行してよい。本明細書において、戸車とは、吊り戸車である吊車及び戸体の下方に設けられる戸車の両方を含み、戸体20に装着される走行車輪を含む部材である。
【0077】
ガイドローラ47は、上記実施形態では、下枠12内の溝部121を走行している。しかし、ガイドローラは、戸体20の上框21a内に配置され、上枠11の溝部111内を移動するように構成されてもよい。移動安定化部材7が、上枠11を移動するガイドローラに係止されて、上枠11の溝部111内に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 折戸装置、 2 折戸、 21c、21d 縦框、 6 位置規制部材、 61 見込部、 62 見付部、 63 面取部

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C