IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東海旅客鉄道株式会社の特許一覧 ▶ コイト電工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-座席装置 図1
  • 特許-座席装置 図2
  • 特許-座席装置 図3
  • 特許-座席装置 図4
  • 特許-座席装置 図5
  • 特許-座席装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】座席装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/00 20060101AFI20240307BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60N3/00 A
A47C7/62 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020064248
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160556
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隼
(72)【発明者】
【氏名】深山 瑛之
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083934(JP,A)
【文献】特開2013-047076(JP,A)
【文献】実開平05-003031(JP,U)
【文献】特開2016-137133(JP,A)
【文献】実公昭38-13022(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
B60N 3/00
B61D 33/00
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の背凭れが傾倒可能であり、該背凭れの背面側にテーブルを備えた座席装置において、
前記テーブルは、テーブル本体と、該テーブル本体を、前記背凭れ背面に沿う収納位置、ないし前記背凭れ背面より後方へ倒れた使用位置に起倒可能に支持する支持部材と、を有し、
前記支持部材の起倒支点は、前記背凭れが傾倒する回転中心とは別に設けられ、前記テーブル本体が収納位置にあるとき、前記背凭れの傾倒に追随して、前記背凭れ背面に対する前記テーブル本体の収納位置を一定に保つ方向へ移動可能であり、
前記支持部材の起倒支点のある下端部を、座席の固定側に対して移動可能に支持するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、
前記支持部材の下端部および座席の固定側にあるベースの何れか一方に設けられ、前記支持部材の下端部が前記背凭れの傾倒に追随して移動する軌跡に沿ったカム径路と、
前記支持部材の下端部および前記ベースの何れか他方に設けられ、前記カム径路に移動可能に係合して前記支持部材の起倒支点をなす係合部と、を有し、
前記カム径路は、前記軌跡に沿って延びる一のガイド溝からなり、
前記係合部は、前記ガイド溝に対して互いに離隔した状態でスライド可能に係合する一対のローラからなることを特徴とする座席装置。
【請求項2】
前記背凭れの回転中心よりも下方に位置する下端部が、前記ベースに対して移動可能に設けられ、
前記背凭れを傾倒させたとき、その下端部が前方へ移動するように設定したことを特徴とする請求項に記載の座席装置。
【請求項3】
前記背凭れ背面側の下部に、座席両側に配された一対の前記支持部材の下端部間を覆うと共に、前記背凭れの傾倒に追随して上端側から前記背凭れ背面の内側に隠れるカバー部材を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の座席装置。
【請求項4】
前記支持部材を、前記テーブル本体が収納位置となる起立方向へ付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1,2または3に記載の座席装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席の背凭れが傾倒可能であり、該背凭れの背面側にテーブルを備えた座席装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道車両等の乗物用の座席には、リクライニングする背凭れの背面側に、後方座席の着座者が使用するテーブルを備えたものが知られている。この種の座席では、一般に背凭れがリクライニングする回転中心は定位置に固定され、テーブルは、背凭れと同じ回転中心に支持アームを介して起倒可能に支持されていた(例えば特許文献1参照)。このようなテーブルは、背凭れの傾倒に関わらず、常に一定の位置に倒して水平に展開して使用でき、背凭れ背面に沿うよう起立させて収納することができた。
【0003】
また、座席のリクライニング時に、背凭れの傾倒に座部も連動させることにより、傾倒した背凭れの後方座席側への変位量を抑えると共に、尻ずれも生じない快適な座面を維持できる新タイプのリクライニング機構も提案されている(例えば特許文献2参照)。この種の座席では、背凭れの回転中心は、座部の変位に伴って移動し、定位置に固定されていない。このような場合、テーブルの中心位置を仮想位置に設定して、背凭れのテーブル収納位置に合せる必要があった。
【0004】
すなわち、テーブルを背凭れ背面に沿わせて収納するとき、テーブルを背凭れ背面に設けたテーブルストッパで押さえて保持する。ここでテーブルの支持アームの回転中心を定位置に固定すると、背凭れの傾倒に伴って、背凭れ背面に設けたテーブルストッパと、背凭れ背面に沿わせた収納位置のテーブルとの相対位置が変化する。よって、背凭れ背面におけるテーブルの相対位置の変化に応じて、テーブルストッパの位置も上下動させて、テーブルの展開収納を可能としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-225842号公報
【文献】特開2018-90026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した新タイプのリクライニング機構を備えた座席装置では、背凭れ背面におけるテーブルストッパの位置を上下動させるため、その可動部分にスライド溝等の特別な構造を別途設けなければならなかった。かかる特別な構造は、後方座席の着座者がテーブル使用時に操作する位置にあるため、操作時に何かを挟めたりするおそれがあり、さらなる改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、リクライニング時に背凭れの回転中心が移動する場合でも、背凭れの背面に対して起倒するテーブルを問題なく操作することができる座席装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
座席の背凭れが傾倒可能であり、該背凭れの背面側にテーブルを備えた座席装置において、
前記テーブルは、テーブル本体と、該テーブル本体を、前記背凭れ背面に沿う収納位置、ないし前記背凭れ背面より後方へ倒れた使用位置に起倒可能に支持する支持部材と、を有し、
前記支持部材の起倒支点は、前記背凭れが傾倒する回転中心とは別に設けられ、前記テーブル本体が収納位置にあるとき、前記背凭れの傾倒に追随して、前記背凭れ背面に対する前記テーブル本体の収納位置を一定に保つ方向へ移動可能であり、
前記支持部材の起倒支点のある下端部を、座席の固定側に対して移動可能に支持するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、
前記支持部材の下端部および座席の固定側にあるベースの何れか一方に設けられ、前記支持部材の下端部が前記背凭れの傾倒に追随して移動する軌跡に沿ったカム径路と、
前記支持部材の下端部および前記ベースの何れか他方に設けられ、前記カム径路に移動可能に係合して前記支持部材の起倒支点をなす係合部と、を有し、
前記カム径路は、前記軌跡に沿って延びる一のガイド溝からなり、
前記係合部は、前記ガイド溝に対して互いに離隔した状態でスライド可能に係合する一対のローラからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る座席装置によれば、リクライニング時に背凭れの回転中心が移動する場合でも、背凭れの背面に対して起倒するテーブルを問題なく操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る座席装置を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る座席装置において、テーブルが収納位置にあるときの(a)アップライト姿勢、(b)リクライニング姿勢、それぞれの内部構造を示す側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る座席装置において、テーブルが使用位置にあるときの(a)アップライト姿勢、(b)リクライニング姿勢、それぞれの内部構造を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る座席装置のテーブルにおいて、(a)収納位置、(b)使用位置、それぞれを後方から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る座席装置において、テーブルが収納位置にあるときの(a)アップライト姿勢、(b)リクライニング姿勢、それぞれを後方から見た斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る座席装置において、テーブルが収納位置にあるときの(a)アップライト姿勢、(b)リクライニング姿勢、それぞれの内部構造と一部断面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1図6は、本発明の一実施形態を示している。
本実施形態に係る座席装置10は、座席の座部20の後端側に背凭れ30が傾倒可能に支持され、該背凭れ30の背面側にテーブル50を備えている。ここで座席の種類は、特に限定されるものではないが、以下、鉄道車両の客室内に搭載する1人掛けの腰掛に適用した場合を例に説明する。
【0012】
<座席装置10の概要>
図1に示すように、座席装置10は、床面上に固定されるベース11に座部20および背凭れ30が支持され、背凭れ30の傾倒に伴ない座部20が連動するリクライニング動作が可能に構成されている。ここで背凭れ30は、起立したアップライト姿勢(図2(a)参照)と、傾倒したリクライニング姿勢(図2(b)参照)と、に保持することができる。
【0013】
背凭れ30の背面側に、後方座席の着座者が使用するテーブル50が起倒可能に設けられている。座部20の両側には、座席側方を覆う袖部16が設けられている。袖部16の上端側は、前後に延びる肘掛17となっている。なお、座部20の後端部の下方には、後方座席の着座者が使用するレッグレスト18が展開可能に設けられている。
【0014】
<<ベース11について>>
図2に示すように、座席の土台をなすベース11は、座席両側で互いに対向して立設された左右一対のベース板12を備えている。両ベース板12は、例えば図示した形状に加工した金属製の板状部材からなり、強度を高めるリブが適所に設けられ、互いに数ヶ所でシャフト(図示せず)を介して連結されている。なお、ベース11は、床面上に直接固定してもよく、あるいは既知の回転機構を介して座席の向きを変換可能に床面上に固定しても良い。
【0015】
ベース11上には、後述するリクライニング機構を介して、座部20および背凭れ30が互いに連動して変位可能に支持されている。座席のリクライニング動作は、詳しくは後述するが、背凭れ30を起立させたアップライト姿勢からリクライニング姿勢へ傾倒させると、座部20も連動して後方へ下がりながら前端側よりも後端側が下降するように構成されている。
【0016】
<<座部20および背凭れ30について>>
座部20は、フレームをなす台枠21にクッション材を装着し、座面を含む表面を表皮材で被覆してなる。台枠21は、座席の前後方向と平行な一対の側部材22を座部20の幅相当の間隔をあけて配置し、両側部材22の前後端等をシャフト23等で連結して枠組み状に構成されている。
【0017】
背凭れ30は、バックフレーム31にクッション材を装着し、背凭れ面を含む表面を表皮材で被覆してなる。背凭れ30の背面において、後述するテーブル50のテーブル本体51が収まる領域の下方には、網状のポケット35(図5参照)が取り付けられている。バックフレーム31は、逆U字型に成形した枠部材の両側端の間に薄板材や横桟を連結して構成されている。バックフレーム31の両下端部寄りの途中には、それぞれ前方へ突出する略三角形の支持ブラケット32が固定されている。
【0018】
また、台枠21の両側部材22の後端部には、それぞれ斜め後上方へ延出する取付板24が固定されている。取付板24の上部には、バックフレーム31の支持ブラケット32の先端部が、枢軸33を介して回動可能に連結されている。かかる台枠21とバックフレーム31との連結構造は、次述するリクライニング機構の一部をなしている。ここで背凭れ30が傾倒する回転中心となる枢軸33は、座部20の変位に伴って前方へ移動する。なお、背凭れ30が傾倒する回転中心とは、固定された回転軸という意味ではなく、背凭れ30が傾倒する一連の変位の中で、それぞれの位置における傾斜角度の原点を意味する概念である。
【0019】
<リクライニング機構について>
座席装置10は、背凭れ30の傾倒に座部20の変位を連動させるリクライニング機構を備えている。本実施形態のリクライニング機構は、主としてリンク機構からなり、座部20および背凭れ30を連結する前述した取付板24と、支持ブラケット32と、枢軸33に加えて、座部20およびベース11を連結する第1リンク41と、第2リンク42と、を有している。
【0020】
第1リンク41は、一端がベース11のベース板12の前端寄りの箇所に枢軸41aを介して回動可能に枢支され、他端が台枠21の側部材22の前端寄りの箇所に枢軸41bを介して回動可能に枢支されている。第2リンク42は、一端がベース板12で枢軸41aより後方の箇所に枢軸42aを介して回動可能に枢支され、他端が台枠21の側部材22で枢軸41bより後方の箇所に枢軸42bを介して回動可能に枢支されている。ここで2つの枢軸41a,42a間のベース板12は第3リンクとなり、2つの枢軸41b,42b間の側部材22は第4リンクとなり、4節リンク機構をなしている。
【0021】
このような4節リンク機構によって、ベース11のベース板12に台枠21の側部材22を支持することで、背凭れ30を、図2(a)に示すアップライト姿勢から図2(b)に示すリクライニング姿勢に変位させるとき、座部20は、後方へ後退しつつ前端よりも後端が下降するように変位する。
【0022】
また、ベース11のベース板12の後端側には、バックフレーム31の動きを規制するガイド溝13が穿孔されている。ガイド溝13には、バックフレーム31の下端部に設けられたローラ34が移動可能に係合している。ガイド溝13は、ベース板12の中央付近から後方に向かい斜め上方に湾曲しながら延びている。なお、ローラ34は、軸として突出したピン状のものであっても良い。
【0023】
詳しく言えば、ガイド溝13は、図2(a)に示すアップライト姿勢から図2(b)に示すリクライニング姿勢の間の座部20の各位置において、背凭れ30が所定の傾斜角度となるように湾曲具合が設定されている。すなわち、バックフレーム31の回転中心(枢軸33)に対するバックフレーム31の下端部(ローラ34)の相対位置は、ガイド溝13で規制される。これにより、座部20の各位置におけるバックフレーム31の傾斜角度が設定される。ガイド溝13の位置ないし形状により、座部20の各位置に対応する背凭れ30の傾斜角度を任意に設定することができる。
【0024】
その他、座席装置10は、座部20の台枠21を、リクライニング姿勢の位置からアップライト姿勢の位置に向けて付勢するダンパー(図示せず)を備えている。さらに、座席装置10は、座部20が所望の位置で変位しないように、座部20をロックした状態とロックを解除した状態に切り替え可能なロック機構(図示せず)を備えている。なお、ダンパーおよびロック機構の構成は一般的であるので、詳細な説明は省略する。
【0025】
<テーブル50について>
図1に示すように、テーブル50は、後方座席の着座者が使用するものであり、背凭れ30の背面に設けられている。テーブル50は、テーブル本体51と、該テーブル本体51を、背凭れ30の背面に沿う収納位置、ないし背凭れ30の背面より後方へ倒れた使用位置に起倒可能に支持する支持部材60と、を有している。図2は、テーブル本体51を背凭れ30の背面に沿わせて収納した収納位置を示し、図3は、テーブル本体51を後方へ倒して略水平に展開した使用位置を示している。
【0026】
<<テーブル本体51>>
図4に示すように、テーブル本体51は、例えば合成樹脂により横長矩形の板状に形成されている。支持部材60は、2つで1組をなしており、テーブル本体51を両側から挟むように互いに平行に配置されている。各支持部材60は、例えば金属材により上下方向に延びるアーム状に形成されている。図3に示すように、テーブル本体51は、背凭れ30の傾倒角度に関わらず、支持部材60によって使用位置が常に一定となるように支持される。
【0027】
図4に示すように、テーブル本体51の基端縁の両側には、左右一対の連結部52が凹設されている。各連結部52には、それぞれ支持部材60の上端部がヒンジピン(図示せず)により回動可能に連結されている。なお、各連結部52は、使用位置に倒したテーブル本体51を、例えばカム等により略水平に展開させた状態に保持できるように構成されている。かかる構成は、一般的であるので詳細な説明は省略する。
【0028】
<<支持部材60>>
支持部材60の下端部には、支持部材60の起倒支点をなす一対のローラ61a,61bが設けられている。各ローラ61a,61bは、互いに上下に離隔した状態で、同じ内側に向かって側方に突出するように設けられている。ここで各ローラ61a,61bは、本発明の「係合部」に相当するものであり、軸として突出したピン状のものであっても良い。このように、支持部材60の起倒支点(ローラ61a,61b)は、背凭れ30が傾倒する回転中心(枢軸33)とは別に設けられている。
【0029】
各ローラ61a,61bは、それぞれベース11にあるガイド溝14に対して移動可能に係合している。すなわち、ベース11のベース板12には、前述したガイド溝13とは別に、前記支持部材60の下端部にある各ローラ61a,61bが移動可能に係合するガイド溝14も形成されている。ここでガイド溝14は、ベース板12の後端側で、ガイド溝13の後方に沿って下端から途中まではガイド溝13とほぼ同一形状であり、さらに斜め上方にガイド溝13の略2倍の長さまで湾曲しながら延びている。
【0030】
このようなガイド溝14に対して、支持部材60の起倒支点である各ローラ61a,61bは、図2(a)ないし図2(b)に示すように、テーブル本体51が収納位置にあるときは、背凭れ30の傾倒に追随して、背凭れ30の背面に対するテーブル本体51の収納位置を一定に保つ方向へ移動可能に構成されている。また、支持部材60は、後方への回動が所定の傾斜角(図3(a)に示す使用位置)で止まるように規制される。
【0031】
ガイド溝14は、支持部材60の下端部が背凭れ30の傾倒に追随して移動する軌跡に沿った本発明の「カム径路」に相当するものである。ここでベース11にあるガイド溝14と、支持部材60にある各ローラ61a,61bとは、支持部材60の下端部を座席の固定側に移動可能に支持するガイド機構を構成している。なお、両支持部材60の上端部間には、補強用のシャフト62(図4参照)が連結されている。
【0032】
<<テーブルストッパ53>>
背凭れ30の背面の上端側には、テーブル本体51を収納位置に保持するためのテーブルストッパ53が設けられている。テーブルストッパ53は、例えば下向きのロック位置ないし横向きの解除位置に回動可能な係止爪からなる。図5に示すように、テーブル本体51を背凭れ30の背面に沿わせた収納位置にして、テーブルストッパ53を下向きにすると、テーブル本体51の先端縁がテーブルストッパ53に押さえられて収納位置に保持される。一方、テーブルストッパ53を横向きにすると、テーブルストッパ53がテーブル本体51から外れるように設定されている。
【0033】
<<カバー部材70>>
図5に示すように、背凭れ30の背面側の下部には、両支持部材60の下端部間を覆うと共に、背凭れ30の傾倒に追随して上端側から背凭れ30の背面の内側に隠れるカバー部材70が設けられている。カバー部材70は、背凭れ30の背面側の下部に沿う形状であり、両支持部材60の下端部間に横幅がほぼ合致する横長矩形の板状に形成されている。
【0034】
図6に示すように、カバー部材70は、下端縁71が、両ベース板12の後端間に連結されたシャフト15bに取り付けられており、上端縁72が、背凭れ30の背面にある横溝36より背凭れ30の内側に挿入され、上下方向へ自由に摺動可能な状態で収まっている。図5に示すように、横溝36は、ポケット35の下端側に沿って隠れるように配置されている。
【0035】
<<ダンパー80>>
図4に示すように、テーブル50には、支持部材60を、テーブル本体51が収納位置となる起立方向へ付勢するダンパー80が備えられている。ダンパー80は、シリンダ本体81に対してピストンロッド82が出没可能に挿入されて構成され、ピストンロッド82がシリンダ本体81から突出する方向へ付勢するものである。ここでダンパー80は、本発明の「付勢手段」に相当するものであり、例えばガススプリング、あるいはエアーシリンダ等で構成される。
【0036】
詳しく言えば、両ベース板12の後端間に連結されたシャフト15bの略中央には、上方へ突出するブラケット15cが固定されている。ブラケット15cの上端に、ピストンロッド82の先端が回動可能に軸支されている。また、両支持部材60の下端部で、係合部61bの上方には、それぞれ前方へ突出する支持片63が一体に設けられている。両支持片63の前端間には、中央寄り部分が後方へ段状に屈曲したクランプ64が固定されている。クランプ64の略中央に、シリンダ本体81の基端が回動可能に軸支されている。
【0037】
このようなダンパー80は、トグル機構をなしており、図4(b)に示すように、テーブル本体51が使用位置にあるときは、ダンパー80は前後方向へ水平に延びてトグルのデッドポイントとなり、テーブル本体51は使用位置に自重でそのまま保持される。一方、テーブル本体51を使用位置から上方に起倒させると、ダンパー80は、直ぐにトグルのデッドポイントを越えて、図4(a)に示すように、テーブル本体51が収納位置となる起立方向へ付勢する。なお、テーブル本体51を使用位置に倒すときは、ダンパー80の付勢力に抗してテーブル本体51を支持部材60ごと押し下げることになる。
【0038】
<座席装置10の動作について>
次に、本実施形態に係る座席装置10の作用を説明する。
図1に示した座席装置10では、着座者によるリクライニング機構の操作によって、背凭れ30をアップライト姿勢(図1中の想像線)からリクライニング姿勢(図1中の実線)まで傾倒させることができる。また、座部20も背凭れ30の傾倒に伴って、後方に下がりながら後端側が前端より下降するように変位する。
【0039】
<<テーブル50の動作>>
図2(a)に示すように、背凭れ30がアップライト姿勢にあるとき、着座者は自然に多少前屈するような安楽な姿勢で着座することができ、長時間着座しても疲れが生じにくい着座姿勢となる。起立した背凭れ30の背面側にあるテーブル本体51は、通常はテーブルストッパ53によって、背凭れ30の背面に沿った収納位置に保持されている。
【0040】
図3(a)に示すように、テーブルストッパ53によるテーブル本体51のロックを外して、テーブル本体51ごと支持部材60を後方に倒すと、支持部材60の下端部にある起倒支点の各ローラ61a,61bが、それぞれベース板12にあるガイド溝14内を上端から下端まで移動して止まる。これにより、後方に倒したテーブル本体51は、使用位置に規制される。
【0041】
テーブル50の使用位置では、両支持部材60の上端部間でテーブル本体51を水平に展開させた状態に保持することができる。このように、テーブル本体51を収納位置から使用位置まで後方へ倒すときは、図4に示したダンパー80の付勢力に抗して操作を行うことになり、急に倒れるおそれがなく衝撃も緩和される。逆に、テーブル本体51を使用位置から収納位置まで起立させるときは、ダンパー80の付勢力によって少ない力で容易に戻すことができる。
【0042】
次に、背凭れ30をリクライニングするには、背凭れ30を保持するロック機構(図示せず)によるロックを解除した状態で、着座者は背中を背凭れ30に押し付けてそのまま傾倒させる。このとき、背凭れ30の傾倒角度が大きくなるほど、着座者の体重が自然に背凭れ30にかかるので、無理な力を加えることなく身体を後方へ傾けるだけの動きで、背凭れ30を傾倒させることができる。
【0043】
図2(b)に示すように、背凭れ30がリクライニング姿勢まで倒れると、着座者はよりリラックスした姿勢を得ることができる。図2(a)から図2(b)に示すように、背凭れ30を傾倒させるとき、テーブル本体51が背凭れ30の背面に沿った収納位置にある場合、支持部材60の起倒支点である各ローラ61a,61bは、背凭れ30の傾倒に追随して、ベース板12にあるガイド溝14内を下方へ移動する。
【0044】
これにより、支持部材60の起倒支点(ローラ61a,61b)が、背凭れ30が傾倒する回転中心(枢軸33)とは同軸上ではなく別の位置にあっても、背凭れ30の傾倒角度の変化に関わらず、背凭れ30の背面に対するテーブル本体51の収納位置を一定に保つことができる。ここで支持部材60が、背凭れ30の背面に対して相対的に上下動する下端部は、後方座席の着座者がテーブル50を操作する位置から離れているため、操作上何らかの支障を来すおそれはない。
【0045】
仮に、支持部材60の起倒支点が定位置に設けられた場合、背凭れ30を傾倒させると、背凭れ30側のテーブルストッパ53と、収納位置にあるテーブル本体51の上端とが位置ずれする。そのため、リクライニング姿勢では、テーブル本体51を収納位置に保持できなくなる。なお、図3(a)ないし図3(b)に示すように、テーブル50が使用位置にある状態では、背凭れ30をアップライト姿勢ないしリクライニング姿勢に変換しても、テーブル50が影響を受けることはない。
【0046】
<<カバー部材70の動作>>
図5に示すように、背凭れ30の背面側の下部において、両支持部材60の下端部が上下移動する内部空間は、カバー部材70によって覆われている。ここでカバー部材70は、下端縁71が、両ベース板12の後端間に連結されたシャフト15bに取り付けられて固定位置となり、上端縁72は、背凭れ30の背面にある横溝36より背凭れ30の内側に挿入され、上下方向へ自由に摺動可能な状態で収まっている。
【0047】
図6(a)に示すように、座席がアップライト姿勢にあるとき、カバー部材70は、背凭れ30の横溝36から広い範囲で外側に露出して、両支持部材60の下端部間の内部構造を隠蔽する。一方、図6(b)に示すように、座席がリクライニング姿勢にあるとき、カバー部材70は、その下端縁71を除いた大部分が背凭れ30の横溝36から背凭れ30の内側に収納された状態となる。このように、座席が何れの状態にあっても、両支持部材60の下端部間はカバー部材70によって覆われることになり、かかる内部空間に足先等を挟むおそれはない。
【0048】
<<座席のリクライニング動作>>
本座席装置10では、背凭れ30を傾倒させると、リクライニング機構によって、座部20は後方に下がりながら後端側が前端より下降するように連動する。図2に示すように、バックフレーム31の傾倒は、下端部にあるローラ34が係合するベース板12のガイド溝13によって制限される。ここで背凭れ30を傾倒するときに後方に向かう背凭れ30の上部の傾動量は極力抑えられる。また、バックフレーム31と連動する台枠21の変位は、その4節リンク機構によって制限される。
【0049】
すなわち、背凭れ30を傾倒させると、座部20は後方に下がりながら後端側が前端より下降するように連動する。従って、背凭れ30をリクライニング姿勢にしても、座部20の座面が僅かに高くなると共に着座者がやや上向きになるだけであり、着座者の姿勢はアップライト姿勢での安楽な着座姿勢とほぼ同じ姿勢が常に維持され、尻ずれしない安楽感がそのまま持続される。
【0050】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0051】
先ず、本発明は、
座席の背凭れ30が傾倒可能であり、該背凭れ30の背面側にテーブル50を備えた座席装置10において、
前記テーブル50は、テーブル本体51と、該テーブル本体51を、前記背凭れ30の背面に沿う収納位置、ないし前記背凭れ30の背面より後方へ倒れた使用位置に起倒可能に支持する支持部材60と、を有し、
前記支持部材60の起倒支点は、前記背凭れ30が傾倒する回転中心33とは別に設けられ、前記テーブル本体51が収納位置にあるとき、前記背凭れ30の傾倒に追随して、前記背凭れ30の背面に対する前記テーブル本体51の収納位置を一定に保つ方向へ移動可能としたことを特徴とする。
【0052】
本座席装置10によれば、テーブル本体51は、支持部材60によって、背凭れ30の背面に沿う収納位置と、背凭れ30の背面より後方へ倒れた使用位置とに起倒可能に支持される。ここで支持部材60の起倒支点は、背凭れ30が傾倒する回転中心33とは別に設けられているので、テーブル本体51は、背凭れ30の傾倒に関わらず、支持部材60によって使用位置が常に一定となるように支持することができる。
【0053】
そして、支持部材60の起倒支点は、テーブル本体51が収納位置にあるとき、背凭れ30の傾倒に追随して、背凭れ30の背面に対する収納位置を一定に保つ方向へ移動する。すなわち、リクライニングに伴う背凭れ30の背面上でのテーブル本体51の相対的な位置ずれは、支持部材60の起倒支点側の移動で解消され、テーブル本体51の背凭れ30の背面上での収納位置が相対的に変位(上下動)することはなく、常に一定に保たれる。
【0054】
ここで支持部材60が、背凭れ30の背面に対して相対的に変位(上下動)する下端部は、後方座席の着座者がテーブル50を操作する位置から離れている。すなわち、背凭れ30の背面において、後方座席の着座者がテーブル50を操作する上で相対する位置では、テーブル本体51は何ら動くことはなく、またテーブル本体51を動かすためのスライド溝等の特別な構造も不要となる。よって、テーブル50の操作時に、特別な構造に何かを挟んだりするようなおそれもなく、操作上何らかの支障を来すおそれはない。
【0055】
また、本発明は、
前記支持部材60の起倒支点のある下端部を、座席の固定側に対して移動可能に支持するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、
前記支持部材60の下端部および座席の固定側にあるベース11の何れか一方に設けられ、前記支持部材60の下端部が前記背凭れ30の傾倒に追随して移動する軌跡に沿ったカム径路14と、
前記支持部材60の下端部および前記ベース11の何れか他方に設けられ、前記カム径路14に移動可能に係合して前記支持部材60の起倒支点をなす係合部61a,61bと、を有することを特徴とする。
【0056】
このように、簡易な構成であるカム経路14と係合部61a,61bによって、支持部材60の起倒支点を容易に構成することができると共に、この起倒支点を、背凭れ30の傾倒に追随して移動させる所望の方向へ確実に導くことができる。
【0057】
また、本発明は、
前記カム径路14は、前記軌跡に沿って延びる一のガイド溝からなり、
前記係合部61a,61bは、前記ガイド溝に対して互いに離隔した状態でスライド可能に係合する一対のローラからなることを特徴とする。
【0058】
このように、カム径路14は、一のガイド溝から極めて容易に構成することができ、係合部61a,61bは一対のローラで構成したことにより、ローラがガイド溝の途中で不用意に回転してしまう事態を防ぐことができ、より確実に支持することが可能となる。
【0059】
また、本発明は、
前記背凭れ30の回転中心33よりも下方に位置する下端部(ローラ34)が、前記ベース11に対して移動可能に設けられ、
前記背凭れ30を傾倒させたとき、その下端部(ローラ34)が前方へ移動するように設定したことを特徴とする。
【0060】
このように、背凭れ30の下端部(ローラ34)と、支持部材60の起倒支点のある係合部61a,61bとを、共通の部品であるベース11に支持したことにより、いっそう構成を簡易化することが可能となる。また、背凭れ30を傾倒させたとき、その下端部(ローラ34)が前方へ移動することにより、背凭れ30の後方への傾動量を小さくして、後部座席の着座空間が侵食されることを抑えることができる。
【0061】
また、本発明は、
前記背凭れ30の背面側の下部に、座席両側に配された一対の前記支持部材60の下端部間を覆うと共に、前記背凭れ30の傾倒に追随して上端側から前記背凭れ30の背面の内側に隠れるカバー部材70を備えたことを特徴とする。
【0062】
このようなカバー部材70によれば、背凭れ30の傾倒に関わらず、両支持部材60の下端部間を含む内部構造を隠蔽することができ、かかる内部空間に足先等を挟むおそれはない。
【0063】
さらに、本発明は、
前記支持部材60を、前記テーブル本体51が収納位置となる起立方向へ付勢する付勢手段80を備えたことを特徴とする。
【0064】
このような付勢手段80によれば、テーブル本体51を収納位置から使用位置まで後方へ倒すときは、ダンパー80の付勢力に抗して操作を行うことになり、急に倒れるおそれがなく衝撃も緩和される。逆に、テーブル本体51を使用位置から収納位置まで起立させるときは、ダンパー80の付勢力によって少ない力で容易に戻すことができる。
【0065】
以上、実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、ベース11、座部20、背凭れ30、それにテーブル50等の形状は図示したものに限定されることはない。また、座席は1人掛けの例を説明したが、2人掛けや3人掛けであっても良い。
【0066】
また、座席のリクライニングによる背凭れ30と座部20の具体的な変位は、実施形態で示したものに限定されるものではない。例えば、実施形態では、背凭れ30の回転中心が座部20の変位に伴って移動したが、必ずしも移動しなくても良い。また、座部20は、必ずしも背凭れ30の傾倒に連動させる必要はない。
【0067】
また、実施形態では、テーブル本体51の動きを規制するガイド機構において、ガイド溝14をベース11に設ける一方、ローラ61a,61bを支持部材60の下端部に設けたが、逆の態様として、ローラ61a,61bをベース11に設ける一方、ガイド溝14を支持部材60の下端部に設けるように構成しても良い。背凭れ30を支持するガイド溝13とローラ34についての逆態様も同様である。
【0068】
さらに、前記実施形態では、テーブル本体51の動きを規制するガイド機構において、カム径路をガイド溝14により形成し、支持部材60の下端部の係合部をローラ61a,61bにより構成したが、他に例えば、カム径路をレール状に形成して、係合部をレールに移動可能に係合するもので構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、特に鉄道車両、航空機、自動車船舶等の客室内に設置される乗物用の座席に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10…座席装置
11…ベース
12…ベース板
13…ガイド溝
14…ガイド溝
20…座部
21…台枠
30…背凭れ
31…バックフレーム
32…支持ブラケット
33…枢軸
41…第1リンク
42…第2リンク
50…テーブル
51…テーブル本体
60…支持部材
61a,61b…ローラ
70…カバー部材
80…ダンパー
図1
図2
図3
図4
図5
図6