(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ノズル装置、排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/302 20060101AFI20240307BHJP
E03C 1/304 20060101ALI20240307BHJP
B08B 9/043 20060101ALI20240307BHJP
B08B 9/045 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
E03C1/302
E03C1/304
B08B9/043 436
B08B9/045
(21)【出願番号】P 2020065647
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】514234333
【氏名又は名称】河原田 祥正
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】河原田 祥正
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-077874(JP,U)
【文献】実開昭52-163962(JP,U)
【文献】特表平10-505539(JP,A)
【文献】特開2016-065439(JP,A)
【文献】特開平06-328053(JP,A)
【文献】特開2010-253425(JP,A)
【文献】特開2017-051909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
B08B 9/04-9/045
B05B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧ホースに接続され、排水口を管側面に有する管状の軸体を備える管状軸体部と、
前記軸体に回転自在に軸支され、前記排水口から供給された水を噴射する少なくとも一つの噴射口を備え、前記水の噴射の反力によって回転するノズルヘッドと、
前記ノズルヘッドの側面から延出し、前記水の噴射に干渉しない盤状部と
、
前記ノズルヘッドよりも前記軸体の先端側に前記軸体に回転自在に軸支され、前記ノズルヘッドの外周よりも大きく前記盤状部の最外周よりも小さい外形を有する円盤状部材と、を備えることを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
前記盤状部は、歯状の端部を有する請求項1に記載のノズル装置。
【請求項3】
前記円盤状部材は、ベアリングを介して前記軸体に軸支されている請求項1に記載のノズル装置。
【請求項4】
前記円盤状部材は、外縁が歯状である請求
項1~3の何れか1項に記載のノズル装置。
【請求項5】
前記円盤状部材よりも前記軸体の先端側に配され、前記円盤状部材の外形よりも小さい外形を有する前記先端側に凸であるドーム状部材をさらに備える請求
項1~4の何れか1項に記載のノズル装置。
【請求項6】
高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、
請求項
1~5の何れか1項に記載のノズル装置と、前記ノズル装置を先端に接続する耐圧ホースと、前記耐圧ホースに沿う可撓性直立支持材と、前記耐圧ホースに高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備え、
前記耐圧ホースは、前記ノズル装置との接続口から所定の長さの前記可撓性直立支持材に沿っていない領域を有することを特徴とする排水縦管洗浄装置。
【請求項7】
前記所定の長さは、50~1000mmである請求
項6に記載の排水縦管洗浄装置。
【請求項8】
請求
項6または7に記載の排水縦管洗浄装置を用いた高層建物の排水縦管の洗浄方法であって、
前記排水縦管の低層階側の開口部に、前記ノズル装置を侵入させる工程と、
前記ノズル装置の前記ノズルヘッドの噴射口から、前記高圧水洗浄機から供給される高圧水を噴射させながら、前記排水縦管内で前記低層階側から高層階側に向かって前記耐圧ホースを送り上げる工程と、を備えることを特徴とする排水縦管洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅等の高層建物に設置されている排水管の洗浄に好ましく用いられるノズル装置、排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の高層建物の流し台、洗面所、浴室、トイレ等の設備から発生する排水は、各設備の配された室内から通じる横枝管を経て、各階を貫通する共用の排水縦管から汚水槽等に流される。
【0003】
排水には多量の残渣や油脂等が含まれている。排水管の内壁には、排水の通過する時間の経過に伴い、排水中の残渣や油脂等が凝集して形成された固形物(スラッジ)が徐々に固着し、管径を徐々に減少させる。スラッジをそのまま放置した場合にはスラッジが成長して排水管を閉塞させることもある。このような排水管の閉塞を防ぐために、高層建物に設置されている排水縦管や排水横管は一定期間ごとに清掃される必要がある。
【0004】
排水縦管を清掃する方法として、ノズル装置を先端に取り付けた耐圧ホースを排水縦管内に挿入し、回転するノズルヘッドから噴射された高圧水を排水縦管の内壁に固着したスラッジに当てることにより、スラッジを崩すようにして清掃する方法(以下、単に、高圧洗浄方法とも称する)が用いられている。
【0005】
高圧洗浄方法としては、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄する方法が知られている。例えば、下記特許文献1及び2は、高層建物に設置されている排水縦管において、内壁に大量のスラッジが固着して内径が小さくなっている排水縦管でも洗浄することができる排水縦管洗浄装置を提案している。具体的には、特許文献1及び特許文献2は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、先端にノズル装置を備える耐圧ホースと、排水縦管内で耐圧ホースを直立に保持するグラスファイバーロッドやアルミニウム三層管のような可撓性直立支持材と、耐圧ホースに接続されて、ノズル装置に高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備える排水縦管洗浄装置を開示する。
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示された排水縦管洗浄装置によれば、高層建物の排水縦管内を低層階側からの作業だけで、低層階側から高層階側に向かって排水縦管を洗浄することができる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示された排水縦管洗浄装置においては、排水中の残渣や油脂等が凝集して形成されたスラッジは除去することができるものの、金属の排水管の錆びに由来する錆状の固着物を除去することは困難であった。このような問題を解決する技術として、次のような技術も提案されている。
【0007】
例えば、下記特許文献3は、フレキシブルシャフトと、フレキシブルシャフトの先端に接続したコアビットと、フレキシブルシャフトの末端に接続して、コアビットを回転させるモータと、フレキシブルシャフトに沿って配され、可撓性を有し、フレキシブルシャフトに直立性を付与する可撓性直立部材と、を備える研削装置を開示する。また、下記特許文献4は、高層建物の排水縦管を、低層階側に形成された開口部から高層階側に向かって洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、 複数のシャフトユニットを連結して形成されたシャフトと、シャフトの高層階側の先端に連結されたコアビットと、シャフトを回転させる回転駆動機構と、シャフトを昇降させるシャフト昇降機構と、を備える排水縦管洗浄装置を開示する。
【0008】
ところで、上述したように、可撓性直立支持材で支えられた耐圧ホースの先端にノズル装置を接続し、低層階側から高層階側に向かって排水縦管内でノズル装置を上昇させながら洗浄する場合、可撓性直立支持材にフレキシブル性がないために、次のような問題が生じることもあった。
【0009】
図9は、従来の高圧水を噴射するノズル装置を備えた排水縦管洗浄装置で排水縦管L内を洗浄するときの模式説明図である。
図9中、101は噴射口102bを備えたノズル装置であり、ノズル装置101は図略のカプラにより耐圧ホース11に接続されている。また、耐圧ホース11はアルミニウム三層管やグラスファイバーロッドのような、可撓性直立支持材15で支えられている。
【0010】
図9に示すように、従来のノズル装置101を備えた排水縦管洗浄装置で排水縦管L内を洗浄する場合、排水縦管Lの管内を低層階から高層階にノズル装置110を進行させていったとき、耐圧ホース11が可撓性直立支持材15で支えられているために、直立した状態で高層階へ進行していく。この場合、
図9に示すように、内壁に付着した厚みを有する固着物Sにノズル装置101が当たったとき、ノズル装置101がさらに高層階に進行することが妨げられるという問題があった。また、このような場合においては、ノズル装置101が排水縦管Lの内壁にもたれ掛かってしまうために、ノズル装置101から噴射される高圧水を内壁に均等に当てることができなくなり、固着物をきれいに取り除くことができないことがあった。
【0011】
上述した問題を解決するために、下記特許文献5は、管内を進行しながら管内壁に付着した固着物を除去するためのノズル装置であって、耐圧ホースを経て供給される高圧水を噴射するノズル装置と、ノズル装置の先端に配置される矢じり状部材と、を備え、矢じり状部材の外径がノズル装置の外径よりも大きいノズル装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許5748255号公報
【文献】特許5748251号公報
【文献】特開2019-2215号公報
【文献】特開2018-96121号公報
【文献】特開2019-2150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献3や特許文献4に開示された装置は、排水縦管の内壁に固着した錆状の固着物をモーター等で駆動されるコアビット等で機械的に除去する装置である。これらの装置はモーターを用いるために、装置が大掛かりになり、作業現場での設置作業も煩雑になるという問題があった。
【0014】
本発明は、モーター等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着したスラッジや錆等の固着物に機械的な衝撃を与えて破壊するためのノズル装置、及び、そのノズル装置を用いた排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面は、耐圧ホースに接続され、排水口を管側面に有する管状の軸体を備える管状軸体部と、軸体に回転自在に軸支され、排水口から供給された水を噴射する少なくとも一つの噴射口を備え、水の噴射の反力によって回転するノズルヘッドと、ノズルヘッドの側面から延出し、水の噴射に干渉しない盤状部を備える、ノズル装置である。このようなノズル装置によれば、ノズルヘッドとともに水平方向に突出した盤状部も回転することにより、盤状部が排水管の内壁に付着した固着物にハンマーを当てるように衝突して固着物を機械的に破壊する。その結果、高圧水の噴射に加えて、盤状部の衝突による機械的な破壊力により、固着物を破壊することができる。なお、ノズルヘッドは、水の噴射による反力によって回転するために、盤状部は、水の噴射によるノズルヘッドの回転を阻害しない位置及び形状に形成される。また、盤状部は、歯状の端部を有することが、固着物をより除去しやすい点から好ましい。
【0016】
また、ノズル装置は、ノズルヘッドよりも軸体の先端側に軸体に回転自在に軸支され、ノズルヘッドの外周よりも大きく盤状部の最外周よりも小さい外形を有する円盤状部材をさらに備える。このような円盤状部材は、排水管内でノズル装置を進行させるときに、円盤状部材の外周が排水管の内壁に当たることにより、盤状部を固着物や配管の継ぎ目の凹凸等に引っかかりにくくする。また、盤状部が固着物に引っかかったときには、円盤状部材が管内壁に沿って回転して引っ掛かりを解除しやすくさせる。
【0017】
また、円盤状部材は、ベアリングを介して軸体に軸支されていることが、軸体に対して円盤状部材をよりスムーズに回転させやすくする点から好ましい。
【0018】
また、円盤状部材は、外縁が歯状(ギヤ状)であることが、円盤状部材を内壁に沿ってスムーズに回転させやすくする点から好ましい。
【0019】
また、ノズル装置は、円盤状部材よりも軸体の先端側に配され、円盤状部材の外形よりも小さい外形を有する先端側に凸であるドーム状部材をさらに備えることが、ノズル装置を管内で進行させるときに、ノズル装置を固着物等に引っかかりにくくさせる点から好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一局面は、高層建物の排水縦管を洗浄するための排水縦管洗浄装置であって、上記ノズル装置と、ノズル装置を先端に接続する耐圧ホースと、耐圧ホースに沿う可撓性直立支持材と、耐圧ホースに高圧水を供給する高圧水洗浄機と、を備え、耐圧ホースは、ノズル装置との接続口から所定の長さの可撓性直立支持材に沿っていない領域を有する排水縦管洗浄装置である。このような排水縦管洗浄装置によれば、ノズル装置を高層建物の排水縦管の低層階側から高層階側に向かって、容易に上げることができる。そして、耐圧ホースは、ノズル装置との接続口から所定の長さの可撓性直立支持材に沿っていない領域を有することにより、排水縦管の管内で円盤状部材の回転によりノズル装置を揺動させて内壁に均等にノズル装置を当てやすくなる。また、盤状部が固着物等に引っかかったときには、耐圧ホースが撓むことによって、盤状部の引っ掛かりを解除させやすくする。それにより、排水縦管の効果的な洗浄を実現できる。ノズル装置の接続口からの所定の長さは、ノズル装置をフレキシブルに回転させることができる限り特に限定されないが、例えば、50~1000mmであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の他の一局面は、上記排水縦管洗浄装置を用いた高層建物の排水縦管の洗浄方法であって、排水縦管の低層階側の開口部に、ノズル装置を侵入させる工程と、ノズル装置のノズルヘッドの噴射口から、高圧水洗浄機から供給される高圧水を噴射させながら、排水縦管内で低層階側から高層階側に向かって耐圧ホースを送り上げる工程と、を備える排水縦管洗浄方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るノズル装置によれば、モーター等の駆動力を用いずに、配管内壁に固く付着した固着物に機械的な衝撃を与えて破壊することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態のノズル装置10の構成を説明するための模式説明図である。
【
図2】
図2は、ノズル装置10を構成する各部材を説明するための分解透過斜視模式図ある。
【
図3】
図3は、ノズル装置10を構成する、各部材の外形の大きさを説明するための模式断面図である。
【
図4】
図4は、ノズル装置10を構成する円盤状部材3の作用を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態のノズル装置20の構成を説明するための模式説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態の排水縦管Lを洗浄するための、排水縦管洗浄装置50の全体構成を説明する模式説明図である。
【
図7】
図7は、排水縦管内で高層階に送られたノズル装置10が揺動する状態を示す拡大模式図である。
【
図8】
図8は、耐圧ホース11に可撓性直立支持材15(15a,15b,15c)を沿わせるときの構成の一例を示す模式断面図である。
【
図9】
図9は、従来のノズル装置を用いて、排水縦管Lを洗浄するときの様子を説明するための模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態のノズル装置を図面を参照して説明する。
図1は、耐圧ホース11に連結された状態の本実施形態のノズル装置10の模式説明図であり、(a)は正面模式図、(b)はノズル装置10の模式断面図である。また、
図2は、ノズル装置10を構成する各部材を説明するための分解透過斜視模式図ある。また、
図3は、ノズル装置10における、各部材の外形の大きさを説明するための模式断面図である。
【0025】
図1及び
図2を参照すれば、ノズル装置10は、排水口1bを管側面に有する管状の軸体1aを備える管状軸体部1と、軸体1aに回転自在に軸支され、排水口1bから供給された水を噴射する噴射口2bを備えるノズルヘッド2と、ノズルヘッド2よりも先端側で軸体1aに回転自在に軸支される円盤状部材3と、円盤状部材3よりも先端側に配される、軸体に挿通されるドーム状部材4と、を備える。ノズルヘッド2は、管状軸体部1の排水口1bから供給された水の噴射の反力によって回転する。また、ノズル装置10は、ノズルヘッド2の側面から延出し、水の噴射に干渉しない盤状部5を備える。また、軸体1aには、ピン孔hが設けられており、ピン孔hに挿通された固定ピン1pにより、軸体1aに挿通された各部材を軸体1aに留めている。
【0026】
図1に示すように、ノズル装置10は、耐圧ホース11に連結されている。本実施形態においては、耐圧ホース11は、カプラ13を介してノズル装置10の管状軸体部1に連結されている。
図1(b)及び
図2を参照すれば、管状軸体部1の軸体1aは、内部に通水するための通水路1cと通水路1cに通じる排水口1bとを有する管状の部材であり、耐圧ホース11から供給された水を通水路1cを経て排水口1bから高圧水を排出してノズルヘッド2の内面に供給する構造を有する。
【0027】
図2を参照すれば、ノズルヘッド2は、管状軸体部1の軸体1aが挿通される挿通孔2cと、排水口1bから供給された水を噴射する少なくとも一つの噴射口2bとを備える。噴射口2bは挿通孔2cまで連通しており、管状軸体部1の排水口1bから供給される水を斜め後方に噴射する通水路が形成されている。ノズルヘッド2は、軸体1aに回転自在に軸支されており、噴射口2bから水を斜め後方に噴射したときの反力により、軸体1aに対して回転する。噴射口の数は、限定されないが、1~3個、さらには1~2個であることが好ましい。
【0028】
ノズル装置10は、ノズルヘッド2の側面から延出する盤状部5を備える。ノズルヘッド2の側面から延出するとは、噴射口2bが形成されたノズルヘッド2の側面の外表面を基端とし、ノズルヘッド2の側面から円周方向に延びるように盤状部5が形成されていることを意味する。盤状部は、配水管内に形成された固着物にハンマーを当てるように衝撃を与えて崩すことが可能な厚さ及び大きさを有する金属塊である。盤状部の形状や側面に対する盤状部が形成される領域の割合は特に限定されないが、ノズルヘッドの噴射口から噴射される水の噴射の反力による回転を阻害しないように、水の噴射に干渉する方向には形成されていないことが必要である。また、盤状部の大きさは特に限定されないが、軸体1aの中心を共通の基準として、ノズルヘッドの半径に対して、円周方向に垂直に最も遠い先端までの径が1.2~5倍、さらには、1.3~3倍程度の大きさが例示できる。
【0029】
また、
図2を参照すれば、円盤状部材3は、円盤状部材本体3aと、ベアリングを備えた軸受部材3bと、管状軸体部1の軸体1aが挿通される挿通孔3cとを備える。軸受部材3bは、軸体1aに対して円盤状部材本体3aをより滑らかに回転させるための部材である。軸受部材3bは、円盤状部材本体3aをベアリングBで軸受けして回転自在に支持する。また、円盤状部材は、後述するように円盤状部材3を排水管の内壁面に沿ってより回転させやすくするために。外縁が凹凸形状の歯状(ギア状)であることが内壁面を捕捉して回転させやすくなる点から好ましい。
【0030】
そして、
図2を参照すれば、ノズル装置10には、円盤状部材3よりも先端側に任意に設けられる、円盤状部材3の外形よりも小さい外形を有する、先端側に凸状であるドーム状部材4をさらに備えてもよい。ドーム状部材4は、例えば軸体1aの先端に設けられたねじ山に螺合することにより固定させたり、軸体1aの先端に溶接して固定させたりしてノズル装置10の先端側に固定される。ドーム状部材4は先端をドーム状に形成することにより、ノズル装置10が管内壁の固着物に引っかかって進行が妨げられることを抑制する部材である。
【0031】
図3は、ノズル装置10を構成する、各部材の外形の大きさを説明するための模式断面図である。
図3を参照すれば、円盤状部材3は、ノズルヘッド2の側面の外周に一致する盤状部5の基端BSよりも大きい。また、盤状部5の先端T1よりも小さい外形T2を有する。また、ドーム状部材4は、円盤状部材3の外形T2よりも小さい外形T3を有する。
【0032】
次に、このようなノズル装置10の動作を説明する。ノズル装置10は、耐圧ホース11から供給される高圧水を噴射することにより、排水管内を進行させられながら排水管の内壁に付着した固着物を除去する。
図1(b)を参照すれば、耐圧ホース11から供給された高圧水は、管状軸体部の軸体1aの通水路1c及び排水口1bを経て、ノズルヘッド2の噴射口2bから噴射される。このとき、噴射口2bが適度な角度をもって高圧水を斜め後方に噴射するように設けられることにより、高圧水の噴射の反力により、軸体1aに軸支されたノズルヘッド2が回転する。ノズルヘッド2が回転したとき、ノズルヘッド2の側面から延出する盤状部5も軸体1aを中心として回転する。排水管内においては、ノズルヘッド2を回転させながら噴射口2bから噴射される高圧水を排水管の内壁に当てることにより、排水管の内壁に付着した固着物を剥離させる。また同時に、ノズルヘッド2の回転に伴い回転する盤状部5が排水管の内壁に付着した固着物に衝突することにより、内壁に付着した固着物を剥離させる。
【0033】
図4を参照すれば、排水縦管L内でノズル装置10を進行させたときに、ノズルヘッド2の盤状部5が内壁に固く付着した固着物Sや配管の継ぎ目の凹凸等に引っかかるときがある。このときに、円盤状部材3が管内壁に当たった状態で自由回転することにより、引っ掛かりを解除させやすくする。円盤状部材3の外形が、盤状部5の最外周を形成する先端T1よりも大きい場合には、盤状部5が管内壁に当たりにくくなって、固着物に盤状部5が衝突しにくくなって固着物の剥離の作用が奏されにくくなる。また、円盤状部材3の外形が、ノズルヘッド2の側面の外周よりも小さい場合には、円盤状部材3が管内壁に当たりにくくなって引っ掛かりを解除させる作用が低下する。
【0034】
以上、第1の実施形態のノズル装置10について詳しく説明した。本発明に係るノズル装置は、ノズル装置10から円盤状部材3及びドーム状部材4を省略した
図5に示したノズル装置20のような構成であってもよい。
図5はこのような構成のノズル装置20を説明するための模式説明図であり、(a)は正面模式図、(b)はノズル装置20の模式断面図である。ノズル装置20は円盤状部材3及びドーム状部材4を省略した以外、ノズル装置10と同様の構成を有する。
【0035】
次に、上述したノズル装置を用いた排水縦管の内部の洗浄方法、及びその洗浄方法に用いられる排水縦管洗浄装置の一実施形態について
図6を参照しながら説明する。
【0036】
図6は、本実施形態の排水縦管洗浄装置50及びそれを用いた排水縦管洗浄方法を説明するための説明図であり、排水縦管内のノズル装置10を拡大した模式図も示している。また、
図7は、排水縦管内で高層階に送られたノズル装置10が揺動しながら固着物を剥離する様子を示す拡大模式図である。
図6及び
図7中、11は耐圧ホースであり、15は可撓性直立支持材、10はノズル装置、32は耐圧ホース11に高圧水を供給する高圧水洗浄機、33は耐圧ホース11と可撓性直立支持材15とを巻回させて収納するホースリールである。排水縦管洗浄装置50においては、ノズル装置10の接続口であるカプラから所定の長さで可撓性直立支持材15に沿っていない耐圧ホース21を備える。
【0037】
また、37は、可撓性直立支持材15を沿わせた耐圧ホース11を送り上げる送りローラである。また、38は分岐管であり、分岐管38は排水縦管Lに一端が接続される主路38a,主路38aから分岐する分岐路38b及び分岐路38bへ向かって送風するための送風口38c,止水シール材38dを備える。39は、送風口38cに接続され、分岐路38bに向けて送風するためのブロアーである。また、40は、分岐管38から排出される固着物S及び水Wを固液分離する固液分離装置である。固液分離装置40は、剥離させた固着物を捕捉する網40aと排水ポンプ40bとを備える。
【0038】
図6及び
図7に示す排水縦管洗浄装置50においては、
図8に示すように、耐圧ホース11は可撓性直立支持材15(15a、15b、15c)で支えられている。可撓性直立支持材とは、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放して直線状に賦形したときに直立性を保持する線状または管状の部材である。このような可撓性直立支持材は、可撓性を有するために作業現場へ巻回した状態で運搬することができるとともに、排水縦管内においては直立性を維持することができる。可撓性直立支持材で耐圧ホースを支える構造としては、例えば、
図8(a)に示すように、耐圧ホース11の外側にグラスファイバーロッドやカーボンファイバーロッドのような可撓性を有するロッドである可撓性直立支持材15aを沿わせるように固定したり、
図8(b)に示すように、耐圧ホース11の管内に可撓性直立支持材15bを収容したり、
図8(c)に示すように、アルミニウム三層管のような管状の可撓性直立支持材15cの管内に耐圧ホース11を収容したりするようにして、耐圧ホース11に排水縦管内で直立性を付与するような構造が挙げられる。
【0039】
可撓性を有するロッドとしては、例えば、建築物の配線のための入線ロッドとして広く用いられているような弾性ロッドが特に好ましく用いられる。弾性ロッドの具体例としては、例えば、グラスファイバー,カーボンファイバー,スチールファイバー,セラミックファイバー等で補強された繊維強化プラスチックを主体とするようなロッドが好ましく用いられる。また、管状の可撓性直立支持材としては、例えば、アルミニウム管の内層と外層をポリエチレン等の樹脂で被覆したアルミニウム三層管やフレキシブル金属チューブ(パイプ)のような直立性フレキシブルチューブ等のような、巻回可能な可撓性と巻回状態から解放したときに直立性を有する管状の部材等が挙げられる。
【0040】
本実施形態の排水縦管洗浄方法においては、はじめに、排水縦管Lの低層階、例えば、1階で排水縦管Lを切断する。そして、排水縦管Lの切断により形成された開口部に分岐管38をカップリング継手を用いて接続する。そして、耐圧ホース11の先端に装着されたノズル装置10を排水縦管Lの開口部から侵入させる。
【0041】
そして、送りローラ37に可撓性直立支持材15を沿わせた耐圧ホース11を挟持させ、送りローラ37を回転させることにより、排水縦管L内において、それらを低層階側から高層階側に向かって送り上げる。ホースリール33からは、可撓性直立支持材15を沿わせた耐圧ホース11が順次繰り出される。
【0042】
このとき、ホースリール33から繰り出された耐圧ホース11を排水縦管Lの管内の低層階側(1F)から高層階側(11F)に向けて送り出しながら、高圧水洗浄機32から高圧水を送り、ノズル装置10のノズルヘッド2の噴射口2bから進行方向に対して斜め後方に高圧水を噴射させる。
【0043】
そして、
図7のノズル装置10付近の拡大模式図に示すように、排水縦管Lの内壁面に固着した固着物Sは、ノズル装置10のノズルヘッド2から噴射される高圧の水及びノズルヘッド2の側面から延出する盤状部5の衝突により破壊される。そして、ノズル装置10は、排水縦管L内の低層階側から高層階側に送り出されながら、排水縦管L内を低層階側から高層階側に向かって固着物Sの付着した内壁を清浄化していく。
【0044】
排水縦管洗浄装置50は、ノズル装置10の接続口から所定の長さで可撓性直立支持材15に沿っていない耐圧ホース21の領域を有する。そのために、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ノズル装置10は、可撓性直立支持材15に沿っていない耐圧ホース21の柔軟性と、ノズルヘッド2の側面に不均一に偏心して形成された盤状部5の遠心力により、排水縦管Lの管内でコマのように揺動する。そして、排水縦管Lの内壁にノズル装置10がもたれたときには、ノズル装置10のノズルヘッド2よりも先端側で軸体1aに回転自在に軸支される円盤状部材3が回転することにより、ノズル装置10を動きやすいほうに動かす作用をする。それにより、排水縦管Lの内壁の固着物や配管の継ぎ目に形成された凹凸等にノズル装置10が引っかかって進行を止めようとしたときにも、固着物や配管の継ぎ目に形成された凹凸等への係合が容易に解除されて、再び、ノズル装置10がの排水縦管Lの管内でコマのように揺動するようになる。
【0045】
排水縦管洗浄装置50においては、可撓性直立支持材15に沿っていない耐圧ホース21の長さは、ノズル装置10を揺動させることができる限り特に限定されないが、例えば、50~1000mm、さらには、80~500mm、とくには100~300mmであることが、排水縦管洗浄の作業性に優れる点から好ましい
【0046】
そして、
図7に示すように、排水縦管Lの内壁に固着していた崩された固着物Sは、排水縦管L内を水Wとともに落下する。そして、落下する固着物Sと水Wとは、
図6に示す、分岐管38の主路38aと分岐路38bとの分岐点に達したときに、ブロアー39からの風により分岐路38bへ吹き飛ばされる。そして、分岐路38bから排出された固着物S及び水Wは、固液分離装置40へ送られ、固液分離された後、処理される。
【0047】
以上、本発明に係るノズル装置、排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法の実施形態を詳しく説明した。発明に係るノズル装置、排水縦管洗浄装置及び排水縦管洗浄方法は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して用いられてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 管状軸体部
1a 軸体
1b 排水口
1c 通水路
2,12 ノズルヘッド
2b 噴射口
2d 盤状部
2c,3c 挿通孔
3 円盤状部材
3a 円盤状部材本体
3b 軸受部材
4 ドーム状部材
5 盤状部
10,20 ノズル装置
11 耐圧ホース
13 カプラ
15 可撓性直立支持材
21 可撓性直立支持材に沿っていない耐圧ホース
50 排水縦管洗浄装置
B ベアリング
BS 基端
L 排水縦管
S 固着物
T1 盤状部の先端
T2 円盤状部材の外形
T3 ドーム状部材の外形