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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20240307BHJP
   F16F 15/139 20060101ALI20240307BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16F15/139 B
F16F15/134 B
F16D7/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020067601
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021162142
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-343651(JP,A)
【文献】実開平03-121230(JP,U)
【文献】特開昭54-065270(JP,A)
【文献】特開昭61-105322(JP,A)
【文献】実開昭57-136025(JP,U)
【文献】特開昭49-112077(JP,A)
【文献】米国特許第04185728(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/121-15/123
F16F 15/127-15/139
F16D 7/02
F16D 11/00-13/76
F16D 21/00-23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転体と、
筒状のハブと、前記ハブの外周側に前記ハブと相対回転可能に配置されたフランジと、を有し、前記第1回転体と相対回転可能な第2回転体と、
前記ハブと前記フランジとを回転方向に弾性的に連結し、前記第1回転体と前記第2回転体との第1捩り角度領域で作動する第1プリダンパと、
前記第1プリダンパと円周方向において異なる位置に配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結し、前記第1捩り角度領域よりも大きい第2捩り角度領域で作動する第1主弾性部材と、
前記第1回転体と前記第2回転体との相対回転角度を所定の角度範囲に規制するストッパ機構と、
を備え、
前記フランジは、前記第1主弾性部材を収容する第1窓孔を有し、
前記第1プリダンパは第1副弾性部材及び第2副弾性部材を有し、
前記第1副弾性部材は、前記ハブと前記フランジとの相対回転がない中立時において圧縮された状態で配置され、前記ハブに対して前記フランジを第1回転方向に付勢し、
前記第2副弾性部材は、前記中立時において圧縮された状態で配置され、前記ハブに対して前記フランジを第2回転方向に付勢し、
前記ストッパ機構は、前記フランジに形成された第1切欠及び第2切欠と、前記第1回転体に固定された2個のストップ部材と、を有し、
前記第1切欠は、前記第1窓孔の円周方向の一方側に円周方向に延びて形成されており、
前記第2切欠は、前記第1窓孔の円周方向の他方側に円周方向に延びて形成された孔であって、前記第1窓孔に近い端部が前記第1窓孔に連通しており、
前記2個のストップ部材は、前記第1切欠内及び前記第2切欠内において円周方向に移動可能である、
ダンパ装置。
【請求項2】
前記第1副弾性部材は、前記ハブが前記フランジに対して第1回転方向に回転する際にさらに圧縮され、
前記第2副弾性部材は、前記ハブが前記フランジに対して第2回転方向に回転する際にさらに圧縮される、
請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記第1副弾性部材は、前記ハブが前記フランジに対して第2回転方向に回転する際に伸長し、
前記第2副弾性部材は、前記ハブが前記フランジに対して第1回転方向に回転する際に伸長する、
請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記ハブは、外周面に、複数の第1係合部と、支持部と、を有し、
前記フランジは、内周面に、前記複数の第1係合部に対して円周方向に隙間を介して対向する複数の第2係合部と、所定の幅を有し前記支持部が挿入された保持用切欠と、を有し、
前記第1副弾性部材は、前記支持部と、前記保持用切欠の一方の端部と、の間に圧縮された状態で装着され、
前記第2副弾性部材は、前記支持部と、前記保持用切欠の他方の端部と、の間に圧縮された状態で装着されている、
請求項1から3のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第1切欠は前記第1窓孔とは離反して設けられている、請求項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第1切欠は、第1ピッチ径上に円弧状に形成されており、
前記第2切欠は、前記第1ピッチ径より内周側の第2ピッチ径上に円弧状に形成された孔である、
請求項に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記第1窓孔は、円周方向の一方の押圧面に突出部を有し、前記突出部は、前記押圧面の径方向の中央部に円周方向に膨らむように突出しており、
前記第1切欠の前記第1窓孔に近い端部は、前記突出部に向かって延びている、
請求項に記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記第1プリダンパの径方向外側に配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する第2主弾性部材をさらに備え、
前記第1回転体は、前記第2主弾性部材の円周方向長さよりも長い1対の窓部を有し、
前記フランジは、前記第2主弾性部材が収容された1対の窓孔を有する、
請求項1からのいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項9】
前記第1回転体の回転軸を挟んで前記第1プリダンパと対向して配置され、前記第1プリダンパととともに前記ハブと前記フランジとを回転方向に弾性的に連結する第2プリダンパと、
前記第1回転体の回転軸を挟んで前記第1主弾性部材と対向して配置され、前記第1主弾性部材とともに前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する第3主弾性部材と、
前記第1回転体の回転軸を挟んで前記第2主弾性部材と対向して、かつ前記第2プリダンパの径方向外側に配置され、前記第2主弾性部材とともに前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する第4主弾性部材と、
をさらに備え請求項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンで発生した動力をトランスミッション側に伝達するとともに、回転変動を減衰するために、車両には、ダンパ装置が搭載されている。
【0003】
この種のダンパ装置は、入力回転体と、出力回転体と、複数のコイルスプリングと、を有している。コイルスプリングは、入力回転体の窓部及び出力回転体の窓孔に配置され、入力回転体と出力回転体とを回転方向に弾性的に連結している。
【0004】
また、ダンパ装置には、特にアイドリング時の振動及び異音を抑制するために、メインダンパユニットに加えてプリダンパユニットが設けられる場合がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-90428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されたプリダンパユニットでは、出力側回転体が、筒状のハブと、ハブの外周側に設けられた円板状のフランジと、これらの間に配置された複数のスプリングと、によって構成されている。ハブの外周には複数の歯が形成され、この歯が、フランジの内周面に形成された複数の凹部に係合している。そして、これらの歯と凹部との間には、円周方向の隙間が形成され、この隙間の角度分だけ、ハブとフランジとが相対回転可能となっている。
【0007】
このようなプリダンパユニットでは、ハブとフランジとの間の隙間と、スプリングの長さと、の関係によっては、回転方向にガタが発生し、このガタに起因して異音が発生する等の問題がある。
【0008】
本発明の課題は、ダンパ装置において、プリダンパユニットにおける異音の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るダンパ装置は、第1回転体と、第2回転体と、第1プリダンパと、第1主弾性部材と、を備えている。第2回転体は、筒状のハブと、ハブの外周側にハブと相対回転可能に配置されたフランジと、を有し、第1回転体と相対回転可能である。第1プリダンパは、ハブとフランジとを回転方向に弾性的に連結し、第1回転体と第2回転体との第1捩り角度領域で作動する。第1主弾性部材は、第1プリダンパと円周方向において異なる位置に配置され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結し、第1捩り角度領域よりも大きい第2捩り角度領域で作動する。
【0010】
また、第1プリダンパは第1副弾性部材及び第2副弾性部材を有している。第1副弾性部材は、ハブとフランジとの相対回転がない中立時において圧縮された状態で配置され、ハブに対してフランジを第1回転方向に付勢する。また、第2副弾性部材は、中立時において圧縮された状態で配置され、ハブに対してフランジを第2回転方向に付勢する。
【0011】
この装置では、アイドルリング時のように第1回転体と第2回転体との捩り角度が小さい第1捩り角度領域では、第1プリダンパが作動する。また、第1回転体と第2回転体との捩り角度が大きい第2捩り角度領域では、第1主弾性部材が作動する。
【0012】
ここで、第1プリダンパの第1副弾性部材及び第2副弾性部材は、ハブとフランジとの間に圧縮された状態で、かつ各副弾性部材は、ハブに対してフランジをそれぞれ異なる方向に付勢している。このため、中立時においては、2つの副弾性部材によって、ハブとフランジとの間の隙間が一定の隙間に保持され、例えば、アイドリング時において、ハブとフランジとの衝突による異音を抑えることができる。
【0013】
(2)好ましくは、第1副弾性部材は、ハブがフランジに対して第1回転方向に回転する際にさらに圧縮される。この場合、第2副弾性部材は、ハブがフランジに対して第2回転方向に回転する際にさらに圧縮される。
【0014】
(3)好ましくは、第1副弾性部材は、ハブがフランジに対して第2回転方向に回転する際に伸長する。また、第2副弾性部材は、ハブがフランジに対して第1回転方向に回転する際に伸長する。
【0015】
(4)好ましくは、ハブは、外周面に、複数の第1係合部と、支持部と、を有している。この場合、フランジは、内周面に、複数の第2係合部と、保持用切欠と、を有している。複数の第2係合部は、複数の第1係合部に対して円周方向に隙間を介して対向する。保持用切欠は、所定の幅を有し、支持部が挿入されている。
【0016】
そして、第1副弾性部材は、支持部と、保持用切欠の一方の端部と、の間に圧縮された状態で装着されている。また、第2副弾性部材は、支持部と、保持用切欠の他方の端部と、の間に圧縮された状態で装着されている。
【0017】
(5)好ましくは、フランジは、第1主弾性部材を収容する第1窓孔を有している。また、好ましくは、ダンパ装置は、第1回転体と第2回転体との相対回転角度を所定の角度範囲に規制するストッパ機構をさらに備えている。
【0018】
ストッパ機構は、フランジに形成された第1切欠及び第2切欠と、第1回転体に固定された2個のストップ部材と、を有している。第1切欠は、第1窓孔の円周方向の一方側に円周方向に延びて形成されている。第2切欠は、第1窓孔の円周方向の他方側に円周方向に延びて形成された孔であって、第1窓孔に近い端部が第1窓孔に連通している。2個のストップ部材は、第1切欠内及び第2切欠内において円周方向に移動可能である。
【0019】
このダンパ装置では、第2切欠の一方の端部が第1窓孔に連通している。このため、第2切欠の円周方向の長さを長くすることができる。すなわち、ストッパ機構の作動範囲を広げることができ、第1回転体と第2回転体との互いの一方向への相対回転角度(捩り角度)を広角化できる。
【0020】
(6)好ましくは、第1切欠は第1窓孔とは離反して設けられている。この場合は、第1切欠と第1窓孔とが離反して設けられているので、第1切欠と第1窓孔とが連通している場合に比較して、フランジの強度の低下を抑えることができる。
【0021】
(7)好ましくは、第1切欠は、第1ピッチ径上に円弧状に形成されている。この場合、第2切欠は、第1ピッチ径より内周側の第2ピッチ径上に円弧状に形成された孔である。
【0022】
ここでは、第1切欠のピッチ径と第2切欠のピッチ径とを変えているので、第1窓孔を挟む第1切欠と第2切欠とを互いに近づけることができる。すなわち、隣接する切欠の間の角度を90°に近づけることができ、第1回転体及びフランジの強度が不均一になるのを抑えることができる。
【0023】
(8)好ましくは、第1窓孔は、円周方向の一方の押圧面に突出部を有し、突出部は、押圧面の径方向の中央部に円周方向に膨らむように突出している。この場合、第1切欠の第1窓孔に近い端部は、突出部に向かって延びている。
【0024】
ここでは、第1切欠の一方の端部を、第1窓孔の突出部に食い込む程度に延長することができる。したがって、第1切欠の円周方向の長さを長くすることができる。
【0025】
(9)好ましくは、ダンパ装置は、第2主弾性部材をさらに備えている。第2主弾性部材は、第1プリダンパの径方向外側に配置され、第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。この場合、第1回転体は、第2主弾性部材の円周方向長さよりも長い1対の窓部を有し、フランジは、第2主弾性部材が収容された1対の窓孔を有する。
【0026】
(10)好ましくは、ダンパ装置は、第2プリダンパと、第3主弾性部材と、第4主弾性部材と、をさらに備えている。第2プリダンパは、第1回転体の回転軸を挟んで第1プリダンパと対向して配置され、第1プリダンパととともにハブとフランジとを回転方向に弾性的に連結する。第3主弾性部材は、第1回転体の回転軸を挟んで第1主弾性部材と対向して配置され、第1主弾性部材とともに第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。第4主弾性部材は、第1回転体の回転軸を挟んで第2主弾性部材と対向して、かつ第2プリダンパの径方向外側に配置され、第2主弾性部材とともに第1回転体と第2回転体とを回転方向に弾性的に連結する。
【発明の効果】
【0027】
以上のような本発明では、プリダンパユニットを有するダンパ装置において、プリダンパユニットにおける異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置の断面図。
図2】ダンパユニットの正面図。
図3】第2プレートの正面図。
図4】フランジの正面図。
図5】第1スプリングシートの側面図。
図6図5のVI-VI線断面図。
図7】プリダンパの正面部分図。
図8図1の拡大部分図。
図9】スプリンホルダの正面図。
図10】受け部材の斜視図。
図11】捩り特性線図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるトルクリミッタ付きダンパ装置1(以下、単に「ダンパ装置」と記載する場合もある)の断面図である。また、図2はダンパ装置1の正面図であり、一部の部材を取り外して、又は部材の一部を削除して示している。図1において、O-O線は回転軸である。図1において、ダンパ装置1の左側にエンジンが配置され、右側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0030】
なお、以下の説明において、軸方向とは、ダンパ装置1の回転軸Oが延びる方向である。また、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。なお、円周方向とは、回転軸Oを中心とした円の円周方向に完全に一致している必要はなく、例えば、図2の上部に示された窓部及び窓孔を基準とした左右方向も含む概念である。また、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の直径方向に完全に一致している必要はなく、例えば、図2の上部に示された窓部及び窓孔を基準とした上下方向も含む概念である。
【0031】
このダンパ装置1は、図示しないフライホイールと駆動ユニットの入力軸との間に設けられ、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するための装置である。ダンパ装置1は、トルクリミッタユニット10と、ダンパユニット20と、を有している。
【0032】
[トルクリミッタユニット10]
トルクリミッタユニット10は、ダンパユニット20の外周側に配置されている。トルクリミッタユニット10は、フライホイールとダンパユニット20との間で伝達されるトルクを制限する。トルクリミッタユニット10は、第1サイドプレート11及び第2サイドプレート12と、摩擦ディスク13と、プレッシャプレート14と、コーンスプリング15と、を有している。
【0033】
第1サイドプレート11と第2サイドプレート12とは複数のリベットによって互いに固定されている。摩擦ディスク13は、コアプレート131及び1対の摩擦部材132を有している。プレッシャプレート14及びコーンスプリング15は、第1サイドプレート11と摩擦ディスク13との間に配置されている。コーンスプリング15は、プレッシャプレート14を介して摩擦ディスク13を第2サイドプレート12に押圧している。
【0034】
[ダンパユニット20]
ダンパユニット20は、入力側プレート21(第1回転体の一例)と、ハブフランジ22(第2回転体の一例)と、入力側プレート21とハブフランジ22との間に配置されたダンパ部23と、から構成されている。
【0035】
<入力側プレート21>
入力側プレート21は、第1プレート211と第2プレート212とを有している(以下、第1プレート211及び第2プレート212を併せて「入力側プレート21」と記載する場合もある)。図3に示すように、第1プレート211及び第2プレート212は、ともに中心孔を有する環状の部材である。なお、図3は第2プレート212のみを示しているが、基本的な構成は第1プレート211も同様である。第1プレート211と第2プレート212とは、4個のストップピン24(図2参照)によって、軸方向に所定の間隔をあけて互いに固定されている。したがって、第1プレート211と第2プレート212とは、軸方向及び回転方向に相対的に移動不能である。また、図1に示すように、第2プレート212の外周部には、4個のリベット25によって摩擦ディスク13のコアプレート131の内周部が固定されている。
【0036】
図3に示すように、第1プレート211及び第2プレート212には、それぞれ1対の第1窓部21a及び第2窓部21bが形成されている。1対の第1窓部21aは、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。図3では、第2プレート212の第1窓部21a及び第2窓部21bが示されているが、第1プレート211の第1窓部及び第2窓部も同様の構成である。1対の第1窓部21aは、それぞれのプレート211,212を切り起こして形成されており、円周方向の両端面に押圧面21cを有し、外周縁及び内周縁にそれぞれ支持部を有している。また、1対の第2窓部21bは、第1窓部21aとは90°の間隔をあけて、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。1対の第2窓部21bは、円周方向に延びるとともに、軸方向に貫通する円弧状の開口であり、円周方向の両端面に押圧面21dを有している。
【0037】
また、第1プレート211及び第2プレート212には、リベット25をかしめるための4個の組付け用孔21eが、リベット25と対応する位置に形成されている。
【0038】
<ハブフランジ22>
ハブフランジ22は、入力側プレート21からのトルクを出力側の装置に伝達するための部材である。ハブフランジ22は、図1及び図2に示すように、ハブ30と、フランジ40と、を有している。
【0039】
ハブ30は、筒状の部材であり、第1プレート211及び第2プレート212の中心孔内に配置されている。ハブ30の内周部にはスプライン孔が形成されており、このスプライン孔に出力側の部材がスプライン係合可能である。また、ハブ30の外周面には、8個の歯30a(第1係合部の一例)と、1対の突起部30b(支持部の一例)と、が形成されている。1対の突起部30bは、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。
【0040】
フランジ40は、図2及び図4に示すように、円板状に形成され、第1プレート211と第2プレート212との軸方向間に配置されている。フランジ40は、それぞれ1対の第1窓孔41a及び第2窓孔41bと、それぞれ1対の第1ストッパ用孔42a(第1切欠の一例)及び第2ストッパ用孔42b(第2切欠の一例)と、を有している。また、フランジ40は、中心部に、ハブ30が挿入可能な開口43が形成されている。この開口43の内周面に、8個の係合孔43a(第2係合部の一例)と、1対の保持用切欠43bと、が形成されている。なお、8個の係合孔43aのうちの4個は、1対の保持用切欠43bと連通しており、明確な係合孔の形状ではない。
【0041】
第1窓孔41aは、回転軸Oを挟んで対向して配置されており、第1プレート211及び第2プレート212の第1窓部21aと対応する位置に形成されている。第1窓孔41aは、円周方向の両端面に押圧面41cを有している。そして、第1窓孔41aの円周方向のR1側(以下、単に「R1側」と記載する)の押圧面41cは、対向する押圧面41cに向かって(すなわち、円周方向に)膨らむように突出する突出部41dを有している。
【0042】
第2窓孔41bは、第1窓孔41aとは90°の間隔をあけて、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。すなわち、第2窓孔41bは、第1プレート211及び第2プレート212の第2窓部21bと対応する位置に形成されている。第2窓孔41bは矩形状に形成されており、第2窓孔41bの径方向位置(孔の径方向の幅の中央位置)は、第1窓孔41aの径方向の中心位置よりも径方向内側に位置している。第2窓孔41bは、円周方向の両端面に押圧面41fを有しており、両押圧面41f間の距離は、入力側プレート21の第2窓部21bの両押圧面21d間の距離(円周方向の長さ)より短く設定されている。
【0043】
図4に示すように、第1ストッパ用孔42aは、第1窓孔41aのR1側において、円弧状に延びる長孔である。第1ストッパ用孔42aは、第1窓孔41aとは離れて形成されている。第1ストッパ用孔42aの第1窓孔41aから離れた側の端部は、第2窓孔41bの径方向外側にまで延びている。また、第1ストッパ用孔42aの第1窓孔41aに近い方の端部は、第1窓孔41aの突出部41dに向かって延びている。具体的には、第1ストッパ用孔42aの第1窓孔41a側の端部は、直線Lに到達している。ここで、直線Lは、第1窓孔41aの突出部41dが形成されていない外周側の端面と内周側の端面とをつなぐ直線である。
【0044】
第2ストッパ用孔42bは、第1窓孔41aの円周方向のR2側(以下、単に「R側」と記載する)において、円弧状に延びる長孔である。第2ストッパ用孔42bのR1側の端部は、第1窓孔41aの径方向の中央部に連通している。
【0045】
また、第1ストッパ用孔42a及び第2ストッパ用孔42bにおいて、R2側の端部近傍には、外周側に膨らむ切欠42cが形成されている。この切欠42cは、入力側プレート21のリベット25の組付け用孔21eに対応する位置に、同様の大きさとなるように形成されている。この切欠42c及び組付け用孔21eを通して、リベット25をかしめることが可能である。
【0046】
このような構成では、第1窓孔41aに突出部41dが形成されていない場合に比較して、第1ストッパ用孔42aの第1窓孔41a側の端部を、より長く延ばして形成することができる。また、第2ストッパ用孔42bの一方の端部が第1窓孔41aに連通しているので、第2ストッパ用孔42bの円周方向長さをより長く形成することができる。この結果、第1窓孔41aを挟む1対のストップピン24の間の角度を、90°に近づけることができる。
【0047】
また、第1ストッパ用孔42a及び第2ストッパ用孔42bにはストップピン24が軸方向に貫通している。このため、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24が各ストッパ用孔42a,42b内において移動可能な範囲で相対回転可能である。言い換えれば、ストップピン24と各ストッパ用孔42a,42bとによってストッパ機構45が構成されており、入力側プレート21とハブフランジ22とは、ストップピン24が各ストッパ用孔42a,42bの端面に当接することによって、互いの相対回転が禁止される。
【0048】
ここで、1対の第1窓孔41aの径方向位置は同じであるが、第1ストッパ用孔42aのピッチ半径P1(第1ストッパ用孔42aの径方向中央部の半径)は、第2ストッパ用孔42bのピッチ半径P2よりも大きい。すなわち、第1ストッパ用孔42aと第2ストッパ用孔42bとは、径方向にずれた位置に形成されている。
【0049】
このため、第1ストッパ用孔42aのR2側の端部を、第1窓孔41aの径方向の中央部(すなわち突出部41d)に向かって延ばすことができる。また、第2ストッパ用孔42bのR1側の端部を、第1窓孔41aの径方向の中心部に連通させることができる。
【0050】
8個の係合孔43aのうち、4個の係合孔43aは、それぞれ2個の係合孔43aが、回転軸Oを挟んで対向する位置に形成されている。図2に示すように、この4個の係合孔43aに、ハブ30の8個の歯30aのうちの4個の歯30aが、円周方向の両側に所定の隙間(角度θ1に対応)を介して嵌っている。
【0051】
1対の保持用切欠43bは、1対の第1窓孔41aと90°ずれた位置(すなわち、円周方向において1対の第2窓孔41bと同じ位置)に形成されている。保持用切欠43bは、円周方向に直線状に形成され、所定の幅を有している。すなわち、保持用切欠43bの一方の端部は1対の第1窓孔41aの一方に向かって延び、他方の端部は1対の第1窓孔41aの他方に向かって延びている。
【0052】
<ダンパ部23>
図1及び図2に示すように、ダンパ部23は、1対の大コイルスプリング47(第1及び第2主弾性部材の一例)と、1対の樹脂部材48(第3及び第4主弾性部材の一例)と、1対のプリダンパ50(第1及び第2プリダンパの一例)と、ヒス発生機構60と、を有している。
【0053】
1対の大コイルスプリング47及び1対の樹脂部材48は、入力側プレート21とハブフランジ22とを回転方向に弾性的に連結するための機構である。
【0054】
-大コイルスプリング47及び樹脂部材48-
大コイルスプリング47はフランジ40の第1窓孔41aに収容され、樹脂部材48はフランジ40の第2窓孔41bに収容されている。また、大コイルスプリング47及び樹脂部材48は、第1プレート211及び第2プレート212の各窓部21a,21bによって、軸方向及び径方向に支持されている。
【0055】
なお、樹脂部材48は、図2に示すように、入力側プレート21の第2窓部21bに対して、円周方向に隙間(角度θ2に相当)を介して配置されている。一方、樹脂部材48は、フランジ40の第2窓孔41bに対して、円周方向に隙間なく配置されている。
【0056】
大コイルスプリング47のR1側の端面には第1スプリングシート71が設けられている。図5及び図6に示すように、第1スプリングシート71は、端面支持部711と、外周支持部712と、を有している。なお、図5は第1スプリングシート71の側面図(円周方向の一方側から視た図)であり、図6図5のVI-VI線断面図である。
【0057】
端面支持部711は、大コイルスプリング47のR1側の端面を支持するとともに、入力側プレート21の第1窓部21aの押圧面21c及びフランジ40の第1窓孔41aの押圧面41cに支持されている。端面支持部711において、第1窓孔41aの押圧面41cに支持されている面には、図6に示すように、大コイルスプリング47側に向かって円弧状に凹む凹部711aが形成されている。また、この凹部711aの中央部、すなわち、径方向の中央部でかつ軸方向の中央部に、円周方向に貫通する孔711bを有している。そして、フランジ40の第1窓孔41aの突出部41dが、この凹部711aに嵌まり込んでいる。
【0058】
外周支持部712は、端面支持部711の外周端部から円周方向に延びて形成されている。この外周支持部712は、大コイルスプリング47のR1側の端部の外周部と、第1窓部21a及び第1窓孔41aの内周面と、の間に配置されている。このため、大コイルスプリング47が遠心力によって、あるいは圧縮された状態で、外周側に移動しても、大コイルスプリング47と第1窓部21a及び第1窓孔41aとの接触を避けることができる。
【0059】
また、大コイルスプリング47のR2側の端面には第2スプリングシート72が設けられている。より詳細には、大コイルスプリング47のR2側の端面は、第2スプリングシート72に支持され、第2スプリングシート72は、第1窓部21aのR2側の押圧面21c及び第1窓孔41aのR2側の押圧面41cに支持されている。この第2スプリングシート72は、従来から周知のものであり、ここでは詳細な説明は省略する。
【0060】
-プリダンパ50-
1対のプリダンパ50は、ハブ30とフランジ40とを回転方向に弾性的に連結するための機構である。1対のプリダンパ50は、図2に示すように、回転軸Oを挟んで対向して配置されている。各プリダンパ50は、第2窓孔41bの径方向内側であって、1対の第1窓孔41aによって挟まれるように配置されている。各プリダンパ50は、図7に示すように、スプリングホルダ51と、受け部材52と、第1及び第2小コイルスプリング53,54(第1及び第2副弾性部材の一例)と、を有している。
【0061】
スプリングホルダ51は、図1の一部を拡大して示す図8に示すように、第1プレート211とフランジ40との軸方向間に配置されている。スプリングホルダ51は、図9に示すように、中心部に孔を有する円板部511と、1対の支持部512と、を有している。
【0062】
円板部511は、内周面がハブ30の外周面に支持されている。図8に示すように、円板部511の第2プレート212側の側面には、ハブ30の歯30a及び突起部30bと、フランジ40の内周部と、が当接している。
【0063】
図9に示すように、1対の支持部512は、円板部511の第2プレート212側の側面に、回転軸Oを挟んで対向して形成されている。1対の支持部512は同様の構成であるので、以下では、一方の支持部512及びそれに関連する部材についてのみ説明する。
【0064】
支持部512は、円板部511の側面から、第2プレート212側に突出して形成されている。支持部512は、図7に示すように、1対の第1窓孔41aの内周端部の間に所定の幅で延びており、フランジ40の保持用切欠43bに嵌まり込んでいる。したがって、フランジ40とスプリングホルダ51とは、相対回転不能である。また、支持部512は、第1窓孔41aの内周端部近傍に1対のスプリング受け部512a,512bを有している。より詳細には、支持部512のR1側の端部にスプリング受け部512aを有し、R2側の端部にスプリング受け部512bを有している。そして、支持部512の中心部、すなわち、対向する1対のスプリング受け部512a,512bの中心部に、ハブ30の突起部30bが挿入されている。
【0065】
受け部材52は、図7及び図10に示すように、ハブ30の突起部30bに装着されている。受け部材52は、ブロック状に形成されており、内周側に開く開口52aと、両側面に外側に向かって開く1対のスプリング用穴52b,52cと、を有している。開口52aにはハブ30の突起部30bが挿入されている。スプリング用穴52b,52cは、底部を有しており、円周方向には貫通していない。そして、受け部材52と、スプリングホルダ51の1対の受け部512a,512bのそれぞれと、の間に、第1小コイルスプリング53及び第2小コイルスプリング54が圧縮された状態で配置されている。
【0066】
第1小コイルスプリング53の一方の端面はスプリングホルダ51のR1側の受け部512aに支持され、他方の端面は受け部材52のスプリング用穴52bに挿入されて支持されている。また、第2小コイルスプリング54の一方の端面はスプリングホルダ51のR2側の受け部512bに支持され、他方の端面は受け部材52のスプリング用穴52cに挿入されて支持されている。
【0067】
このような構成では、第1小コイルスプリング53は、ハブ30に対してフランジ40をR1方向に付勢し、第2小コイルスプリング54は、ハブ30に対してフランジ40をR2方向に付勢している。
【0068】
なお、プリダンパ50の各小コイルスプリング53,54は、第1窓孔41aに配置された大コイルスプリング47に比較して、低剛性である。したがって、ダンパ部23の作動時においては、捩り角度の小さい領域では、プリダンパ50の各小コイルスプリング53,54が作動し、その作動が停止したあとの捩り角度の大きい領域において、大コイルスプリング47及び樹脂部材48が作動する。
【0069】
また、図8に示すように、スプリングホルダ51の第2プレート212側の端面には、カバー55が配置されている。すなわち、カバー55は、スプリングホルダ51の端面と、第2プレート212と、の軸方向間に配置されている。このカバー55によって、第1及び第2小コイルスプリング53,54は、スプリングホルダ51の支持部512の内部に保持されている。
【0070】
ヒス発生機構60は、図8に示すように、第1プレート211及び第2プレート212と、ハブフランジ22と、の軸方向間に配置されている。ヒス発生機構60は、スプリングホルダ51及びカバー55を含み、ブッシュ61と、コーンスプリング62と、を有している。ブッシュ61及びコーンスプリング62は、カバー55と第2プレート212との軸方向間に配置されている。ブッシュ61は、第2プレート212に対して相対回転不能であり、コーンスプリング62はブッシュ61と第2プレート212との軸方向間に圧縮された状態で配置されている。
【0071】
以上のような構成によって、ハブ30とフランジ40とが互いに相対回転すると、スプリングホルダ51とハブ30との間に比較的小さい第1ヒステリシストルクが発生する。また、第1プレート211及び第2プレート212と、ハブフランジ22と、が互いに相対回転すると、スプリングホルダ51の側面と第1プレート211との間、カバー55とブッシュ61との間、において比較的大きい第2ヒステリシストルクが発生する。
【0072】
[トルクリミッタユニット10とダンパユニット20の組付け]
このダンパ装置1の組み立てに際しては、まず、トルクリミッタユニット10とダンパユニット20とを、それぞれ別に組み付ける。その後、トルクリミッタユニット10のコアプレート131の内周部と、第2プレート212の外周部とを、リベット25によってかしめ固定する。
【0073】
このとき、第1プレート211には組付け用孔21eが形成され、またフランジ40には組付け用切欠42cが形成されているので、これらの孔21e及び切欠42cを利用して、かしめ工具をリベット25に当て、リベット25をかしめることができる。
【0074】
[動作]
エンジンからフライホイールに伝達されたトルクは、トルクリミッタユニット10を介してダンパユニット20に入力される。ダンパユニット20では、トルクリミッタユニット10の摩擦ディスク13が固定されている入力側プレート21にトルクが入力され、このトルクは、プリダンパ50、コイルスプリング47、及び樹脂部材48を介してハブフランジ22に伝達される。そして、ハブフランジ22から、出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0075】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタユニット10によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に制限される。
【0076】
<正側捩り特性>
ダンパユニット20における正側の捩り特性、すなわち、エンジンからトルクが入力された場合(正側トルクの入力)の特性について説明する。
【0077】
ここで、プリダンパ50においては、前述のように、第1小コイルスプリング53及び第2小コイルスプリング54は、ともに圧縮された状態で配置され、ハブ30に対してフランジ40をそれぞれが異なる回転方向に付勢している。したがって、捩り角度が「0」の中立状態では、ハブ30とフランジ40との円周方向隙間は、角度θ1に維持されており、両者のガタによる異音は発生しない。
【0078】
正側トルクが入力されると、図2において、入力側プレート21はR1方向に回転する。前述のように、大コイルスプリング47は、第1及び第2小コイルスプリング53,54に比較して剛性が高い。したがって、捩り角度が角度θ1よりも小さい場合は、大コイルスプリング47は作動せず(圧縮されず)、入力側プレート21とフランジ40とは一体で回転する。
【0079】
この場合は、ハブ30に対してフランジ40がR1側に相対回転し、プリダンパ50の第2小コイルスプリング54はさらに圧縮され、第1小コイルスプリング53は伸長する。このため、図11に示すように、捩り角度が角度θ1になるまでは、低剛性の捩り特性C1が得られる。なお、第1小コイルスプリング53は伸長するが、捩り角度θ1の状況では圧縮された状態であって、自由状態にまで伸長しているわけではない。また、ここでは、ハブ30とフランジ40とが互いに相対回転するので、比較的小さい第1ヒステリシストルクが発生する。
【0080】
捩り角度が角度θ1になると、ハブ30の歯30aがフランジ40の係合孔43aの端面に当接する。このため、ハブ30とフランジ40とは一体で回転し、2つの小コイルスプリング53,54の作動は停止する。この場合は、2つの大コイルスプリング47は、入力側プレート21の第1窓部21aのR2側の押圧面21cに支持されている第2スプリングシート72と、フランジ40の第1窓孔41aのR1側の押圧面41cに支持されている第1スプリングシート71と、の間で圧縮される。
【0081】
なお、図2に示すように、樹脂部材48は、中立時において、フランジ40の第2窓孔41bに隙間なく支持されているが、入力側プレート21の第2窓部21bにおいては、R1側及びR2側にそれぞれθ2の円周方向隙間が存在している。また、ストップピン24と各ストッパ用孔42aとの間には、R1側及びR2側にθ3の円周方向隙間が存在している。ここで、各円周方向隙間(以下、単に「隙間」と記載する)の関係は、以下のように設定されている。
【0082】
θ2<θ3
以上のような隙間の設定により、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度(以下、「捩り角度」と記載した場合、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度である)がθ2になるまでは、大コイルスプリング47のみが圧縮され、樹脂部材48は圧縮されない。そして、捩り角度がθ2を超えると、樹脂部材48は、入力側プレート21の第2窓部21bのR2側押圧面21dと、フランジ40の第2窓孔41bのR1側押圧面41fとの間で圧縮される。このため、正側の捩り特性は、図11で示すように、捩り角度がθ1からθ2までは特性C2となり、捩り角度がθ2を超えると特性C3となる。
【0083】
また、捩り角度がθ3になると、第1ストッパ用孔42aのR1側の端面にストップピン24が当接し、入力側プレート21とハブフランジ22との互いの相対回転が禁止される。
【0084】
<負側捩り特性>
ダンパユニット20における負側の捩り特性、すなわち、駆動ユニット側から逆にトルクが入力された場合(負側トルクの入力)の特性について説明する。
【0085】
正側捩り特性で説明したと同様に、捩り角度が角度-θ1よりも小さい場合は、大コイルスプリング47は作動せず(圧縮されず)、入力側プレート21とフランジ40とは一体で回転する。
【0086】
この場合は、フランジ40に対してハブ30がR1側に相対回転し、プリダンパ50の第1小コイルスプリング53はさらに圧縮され、第2小コイルスプリング54は伸長する。このため、図11に示すように、捩り角度が角度-θ1になるまでは、低剛性の捩り特性C1が得られる。なお、第2小コイルスプリング54は伸長するが、捩り角度-θ1の状況では圧縮された状態であって、自由状態にまで伸長しているわけではない。また、ここでは、ハブ30とフランジ40とが互いに相対回転するので、比較的小さい第1ヒステリシストルクが発生する。
【0087】
捩り角度が角度-θ1になると、ハブ30の歯30aがフランジ40の係合孔43aの端面に当接する。このため、ハブ30とフランジ40とは一体で回転し、2つの小コイルスプリング53,54の作動は停止する。この場合は、大コイルスプリング47は、ハブフランジ22の第1窓孔41aのR2側押圧面41cに装着された第2スプリングシート72と、入力側プレート21の第1窓部21aのR1側押圧面21cに装着された第1スプリングシート71と、の間で圧縮される。
【0088】
樹脂部材48の作動については、正側トルクが入力された場合と同様である。すなわち、捩り角度が-θ2になるまでは圧縮されず、捩り角度が-θ2以下では、図11に示すように、低剛性の捩り特性C2となる。また、捩り角度が-θ2になると、樹脂部材48は、ハブフランジ22の第2窓孔41bのR2側押圧面41fと、入力側プレート21の第2窓部21bのR1側押圧面21dと、の間で圧縮され始める。このため、捩り角度が-θ2を超えると、図11に示すように、高剛性の捩り特性C3となる。
【0089】
捩り角度が-θ3になると、ストップピン24が第2ストッパ用孔42bのR2側端面に当接し、入力側プレート21とハブフランジ22との互いの相対回転が禁止される。
【0090】
[特徴]
(1)プリダンパ50において、2つの小コイルスプリング53,54が圧縮された状態で配置され、ハブ30に対してフランジ40をそれぞれが異なる回転方向に付勢している。このため、アイドリング時等において、ハブ30とフランジ40との隙間に起因する異音を抑えることができる。
【0091】
(2)入力側プレート21において、第2窓部21bの円周方向長さを樹脂部材48の幅よりも長くしている。このため、フランジ40の第2窓孔41bの円周方向長さを、樹脂部材48と同等にできる。この結果、フランジ40に、特徴的な構成を有するプリダンパ50を配置するためのスペースを確保できる。
【0092】
(3)第1スプリングシート71に凹部711aが形成され、この凹部711aに、フランジ40の第1窓孔41aに形成された突出部41dが嵌まり込んでいる。そして、この突出部41dに向かって第1ストッパ用孔42aの端部が延びている。このため、第1ストッパ用孔42aの円周方向の長さを長くすることができる。すなわち、スプリングシートに凹部がなく、窓孔の端面が1つの平面で形成されている場合(突出部がない場合)に比較して、入力側プレート21とハブフランジ40との捩り角度を大きくすること(すなわち、広角化)が可能になる。
【0093】
(4)第2ストッパ用孔42bの第1窓孔41a側の端部が、第1窓孔41aに連通している。このため、第2ストッパ用孔42bの円周方向の長さを長くすることができ、入力側プレート21とハブフランジ22との捩り角度を大きくすることが可能になる。
【0094】
(5)以上と同じ理由により、フランジ40の第1窓孔41aの両側のストッパ用孔42a,42bを互いに近づけることができる。この結果、第1窓孔41aの両側のストップピン24の間の角度を90°に近づけることができ、入力側プレート21及びハブフランジ22の強度の不均一性を抑えることができる。
【0095】
(6)第1窓孔41aの一方の端部は第1ストッパ用孔42aと連通していないので、フランジ40の強度の低下を抑えることができる。
【0096】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0097】
(a)前記実施形態では、3段の捩り特性を有するダンパ装置に本発明を適用したが、2段の捩り特性を有する装置にも、本発明を同様に適用することができる。この場合は、前記実施形態における第2窓部21b、第2窓孔41b、及び樹脂部材48が不要になる。
【0098】
(b)前記実施形態では、大コイルスプリング47の両端部にスプリングシート71,72を設けたが、これらのスプリングシートはなくてもよい。さらに、大コイルスプリング47の一方の端部にのみスプリングシートを設けてもよい。
【0099】
(c)弾性部材の構成は、2つのコイルスプリング及び2つの樹脂部材に限定されない。例えば、すべての弾性部材をコイルスプリングにしてもよく、また個数は限定されない。
【0100】
(d)前記実施形態では、本発明をトルクリミッタ付きダンパ装置に適用したが、他のダンパ装置にも同様に適用することができる。
【0101】
(e)捩り特性は図11に示した特性に限定されない。
【符号の説明】
【0102】
21 入力側プレート(第1回転体)
22 ハブフランジ(第2回転体)
24 ストップピン
30 ハブ
30a 歯(第1係合部)
30b 突起部(支持部)
40 フランジ
41a 第1窓孔
42a 第1ストッパ用孔(第1切欠)
42b 第2ストッパ用孔(第2切欠
3a 係合孔(第2係合部)
43b 保持用切欠
45 ストッパ機構
47 大コイルスプリング(第1及び第3主弾性部材)
48 樹脂部材(第2及び第4主弾性部材)
50 プリダンパ
53,54 第1及び第2小コイルスプリング(第1及び第2副弾性部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11