(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】手摺り構造体
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
E04F11/18
(21)【出願番号】P 2020070774
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】児玉 英士
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-139319(JP,A)
【文献】特開2001-040847(JP,A)
【文献】実開平07-023132(JP,U)
【文献】特開2003-027688(JP,A)
【文献】特開2001-299621(JP,A)
【文献】特開2000-145087(JP,A)
【文献】特開平09-111984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
A47K 17/02
A61H 3/00
B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の室内側に設けられた手摺りと、
前記手摺りを支持するブラケットと、
前記手摺りが前記壁の背面側に位置する収容状態と、前記手摺りが前記壁の室内側に位置する使用可能状態との間を移動するように、前記ブラケットを駆動させる駆動機構とを備え
、
前記駆動機構は、前記収容状態と前記使用可能状態との間で前記手摺りの状態を変えるときに前記ブラケットが通る駆動経路を定めるガイドと、前記ガイドに沿って前記ブラケットを移動させる駆動部とを備え、
前記ガイドには、壁面に沿って直線状に延びる第1部分、及び、前記第1部分の下端と連続し、前記第1部分から背面側に延び、前記第1部分と連続する部分において下側に凸な湾曲形状を有する第2部分を有するガイド孔が形成されており、
前記ブラケットは、前記ガイド孔内で移動可能に保持され、所定間隔で離れて配置された複数の被ガイド部を有する、手摺り構造体。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記使用可能状態にある前記ブラケットを、複数の高さ位置で停止させることができる、請求項1に記載の手摺り構造体。
【請求項3】
壁の室内側に設けられた手摺りと、
前記手摺りを支持するブラケットと、
前記手摺りが前記壁の背面側に位置する収容状態と、前記手摺りが前記壁の室内側に位置する使用可能状態との間を移動するように、前記ブラケットを駆動させる駆動機構とを備え、
前記ブラケットを前記収容状態から前記使用可能状態に移動させるときに前記ブラケット及び前記手摺りの少なくとも一方と接触して開状態となる蓋部材を備える
、手摺り構造体。
【請求項4】
前記蓋部材は、前記開状態から、前記収容状態にある前記ブラケット及び前記手摺りを室内側から隠す閉状態に向けて付勢する付勢部材を備える、請求項
3に記載の手摺り構造体。
【請求項5】
前記蓋部材は、閉状態において前記壁の室内側の面と面一になる、請求項
3又は
4に記載の手摺り構造体。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記使用可能状態から前記収容状態に移動するときに前記付勢部材に抗して前記蓋部材を開状態に移行させる、請求項
4に記載の手摺り構造体。
【請求項7】
前記ブラケットの背面側端部は、前記収容状態において前記壁と平行になる直線形状を有する、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の手摺り構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手摺り構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、商業施設等における人の活動空間において、人の歩行を補助するために壁面に手摺りを取り付けることが行われている。手摺りは壁面の所定の高さで支持されており、壁面から室内側に水平方向に突出する。手摺りが水平方向に突出すると、特に廊下のような幅が狭い空間では、空間がさらに狭くなってしまう。したがって、手摺りを収納できるようにし、空間が狭くならないようにする技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手摺り構造は、壁面に凹部を設け、凹部内に手摺りを有している。手摺りは、収容時には凹部内に折り畳まれる。手摺りは、使用時には水平軸周りに回転し、壁面から突出する。これにより、使用者が手摺りを掴める。
【0005】
しかしながら特許文献1に記載された構造は、使用者が自身で手摺りを使用可能状態又は収容状態にする必要があり、例えば歩行困難者にとって状態を移行させる作業が困難な場合があった。
【0006】
本開示は、使用者の手が自ら手摺りを動かさなくても、手摺りを使用可能状態と収容状体との間で移行させられる手摺り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、壁の室内側に設けられた手摺りと、手摺りを支持するブラケットと、手摺りが壁の背面側に位置する収容状態と、手摺りが壁の室内側に位置する使用可能状態との間を移動するように、ブラケットを駆動させる駆動機構とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による手摺り構造体を示す斜視図である。
【
図8】手摺りが収容状態にあるときの手摺り構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態による手摺り構造体について説明する。実施形態の手摺り構造体は、例えば廊下の側壁面に取り付けられており、使用時には手摺りが壁面から室内側に突出している。使用していない時には手摺りは壁面の背面側に収容される。
【0010】
以下の説明において、方向を示すために室内側及び背面側の用語を用いることがある。室内側とは廊下の側部を定める壁に対して室内側を意味し、背面側とは壁に対して室内側とは逆側を意味する。
【0011】
図1は、実施形態による手摺り構造体を示す斜視図である。同図では、壁面と手摺り構造体との位置関係を明確にするために壁面の一部を切り出して示す。
図1に示すように手摺り構造体100は、手摺り102と、手摺り102を支持する一対のブラケット104とを備える。手摺り102は、平坦な壁106に沿ってほぼ水平に延びる長尺部材である。同図では角型の手摺り102を示しているが、手摺り102の断面形状はどのようなものであってもよい。
【0012】
一対のブラケット104は、所定形状の金属プレートにより構成される。一対のブラケット104は、各々手摺り102の両端に固定される。一対のブラケット104は手摺り102と一体とされる。一対のブラケット104は同一の形状を有する。一対のブラケット104は、手摺り102の軸方向長さと略同一の間隔をもって配置される。ブラケット104は、壁106に形成されたスリット112から室内F側に突出する。スリット112は、壁106を貫通し鉛直方向に延びる。ブラケット104は、スリット112を通して壁106から室内F側に垂直に突出する。ブラケット104の室内F側の端部には、手摺り102が固定される。ブラケット104の数は幾つであってもよく、手摺り102の軸方向長さが長い場合には複数設けてもよい。
【0013】
ブラケット104は、スリット112内で鉛直方向に沿って駆動される。スリット112は、ブラケット104と対応付けられており、ブラケット104の数だけスリット112が設けられる。スリット112の下端には開口108が形成され、スリット112と開口108は連続する。開口108は、蓋部材110により覆われている。開口108は、スリット112の間で延びる長方形状を有する。蓋部材110は、開口108と略同一の大きさを有し、蓋部材110の閉状態において室内F側から開口108の背面B側が見えないよう、開口108を覆う。
【0014】
図1では、手摺り102が使用可能状態にあり、この状態では手摺り102が壁106よりも室内F側にあり使用者が手摺り102を掴める。使用可能状態の詳細については後述する。
【0015】
図2は、
図1のA-A断面における断面図である。
図3は、手摺り構造体の正面図である。
図3は、壁を取り除いた状態で手摺り構造体を室内側から見た状態を示す。手摺り構造体100は、上述した構成に加えて1対のアクチュエータ114と、ガイドとしての2対のスライドプレート116とを備える。2対のスライドプレート116は、手摺り102の軸方向に離れて配置され、各々のスライドプレート116の対は、手摺り102の軸方向端部付近に配置される。
【0016】
2対のスライドプレートのそれぞれの対は同一の構成を有するため、以下では、「スライドプレートの対」と総称して詳細な説明を行うことがある。また、スライドプレートの対をなす2枚のスライドプレートは同一の構成を有するため、以下では「スライドプレート」と総称して詳細な説明を行うことがある。
【0017】
スライドプレートの対をなす2枚のスライドプレート116は、所定間隔を持って配置される。2枚のスライドプレート116の間には、ブラケット104が配置される。スライドプレート116は、壁106の背面B側に固定され、壁106の背面側から垂直に延びる。スライドプレート116の対は、図示せぬ固定手段によりスリット112の背面側に、スリット112を挟むように固定される。つまりスリット112と、2枚のスライドプレート116の間の隙間は連続する。
図2に示す状態におけるスライドプレート116の鉛直方向の長さは、壁106のスリット112よりも長い。スライドプレート116には、ガイド孔118が形成される。ガイド孔118は、ブラケット104の駆動経路を定め、かつブラケット104の向きを制御する。ガイド孔118は、スライドプレート116を貫通する。ガイド孔118は、鉛直方向に沿って直線状に延びる第1部分120と、第1部分120の下端から背面B側に延びる第2部分122とを備える。第1部分120と第2部分122は連続する。第2部分122は、下側かつ室内F側に凸な湾曲形状を有する。したがってガイド孔118は、側面視したときに略J字形状の駆動経路を有する、ということもできる。ガイド孔118の側面は、滑らかに形成される。
【0018】
ブラケット104は、壁106の背面B側に配置されるブラケット本体104aと、手摺り102が使用可能状態にあるときに、ブラケット本体104aから室内F側に向けて延びる支持部104bとを備える。ブラケット本体104aは、鉛直方向に所定長さを有し、側面視したときにブラケット本体104aの下側、かつ背面側の端部104c(以下、単に「背面側端部104c」という)は、鉛直方向に対して傾斜して直線状に延びる。より具体的には背面側端部104cは、下方に向かうにつれて室内F側に向かって延びる。ブラケット本体104aには、複数の被ガイド部124,126が形成される。また、側面視したときにブラケット104の下側、かつ前面側の端部104d(以下、単に「室内側端部104d」という)は、鉛直方向に対して傾斜して直線状に延びる。より具体的には室内側端部104dは、下方に向かうにつれて背面B側に向かって延びる。したがって、ブラケット104の下部は側面視したときは略V字形状を有する。ブラケット104が第1部分120に沿って駆動される間、ブラケット104の略V字形状の背面側端部104cはスリット112から室内F側に出ず、室内側端部104dの一部がスリット112から室内側に出る。
【0019】
複数の被ガイド部124,126は、ブラケット104を挟む2枚のスライドプレート116のそれぞれのガイド孔118に挿入される。ブラケット104は、一方の主面に2つの被ガイド部124,126を備え、他方の主面に2つの被ガイド部124,126を備える。被ガイド部124,126は、ブラケット本体104aの主面から垂直に円柱状の突起であり、その直径はガイド孔118の幅よりも僅かに小さい。
図2においては、幅方向からブラケット104を示しているため、一方の主面側に形成された2つの被ガイド部124,126のみを図示している。しかしながら、図示している被ガイド部124の裏側(他方の主面側)には同一形状の被ガイド部124が設けられており、被ガイド部126の裏側には同一形状の被ガイド部126が設けられている。つまり、2つの被ガイド部124、及び2つの被ガイド部126は、それぞれブラケット104を室内F側から見たときにブラケット104を貫通して延びるように見える。2つの被ガイド部124,126は、ブラケット104の長さ方向に離れて配置される。図示の例では、被ガイド部124はブラケット104の上側に配置され、被ガイド部126はブラケット104の下側に配置される。各々の主面に形成された2つの被ガイド部124,126は、
図2に示す状態のブラケット104の上側、及び下側に各々形成される。ブラケット104は、被ガイド部124,126がガイド孔118に沿って駆動されることで壁106に沿って移動する。
【0020】
上側に形成された被ガイド部124のうち、手摺り構造体の幅方向内側に形成された2つの被ガイド部124は、連結部材130を介して互いに接続される。連結部材130は、シャフト130aを備え、シャフト130aは2つの被ガイド部124の先端同士を接続する。これにより2つのブラケット104を同じ高さに保て、手摺り102が傾斜するのを抑制できる。
【0021】
一対のアクチュエータ114は、連結部材130に接続され、連結部材130を移動させる。この実施形態では、アクチュエータ114がブラケット104を駆動させる駆動部として作用する。またこの実施形態では、アクチュエータ114、連結部材130、スライドプレート116及びブラケット104が駆動機構を構成する。アクチュエータ114は、シリンダ114aとシャフト114bと、操作部Rを備える。アクチュエータ114は、操作部Rを介して例えば下側のシリンダ114aに内蔵されたボールネジをモータにより回転駆動させることで、上側のシャフト114bを軸方向に移動させる。シリンダ114aは、下端近傍に支持部114cを備え、支持部114cにより、手摺り構造体100の幅方向に延びる水平軸周りに揺動可能に支持される。シャフト114bの先端には連結部材130のコネクタ130bが取り付けられる。コネクタ130bにはシャフト130aが挿入され、シャフト130aはコネクタ130bに対して回転自在に支持される。アクチュエータ114は、シリンダ114a内のモータを駆動させることでボールネジを駆動し、シャフト114bを上方向又は下方向に伸縮させる。これにより、被ガイド部124がガイド孔118に沿って移動し、ブラケット104が駆動される。アクチュエータ114としては、他の駆動機構を使用してもよい。ただし、アクチュエータ114としては、シャフト114bの状態(伸張状態)を維持するときに発熱しないものを用いることが好ましい。
【0022】
操作部Rは、例えば壁106に埋め込まれる等、使用者がアクセスし易い位置に設けられる。操作部Rに替えて、人感センサ等により人の存在を検知し、検知結果に応じてアクチュエータ114を駆動させる構成を採用してもよい。つまり、アクチュエータ114を制御する手段としては、アクチュエータ114に駆動指令を入力可能な駆動指令入力部であれば人が操作するもの又は各種センサを用いて人等を検知するもの等どのようなものであってもよい。
【0023】
蓋部材110は、壁106と面一な蓋本体110aと、蓋本体110aを付勢する付勢部材110bを備える。壁106には蓋本体110aと略同一寸法の開口108が形成される。開口108は、手摺り102よりも広い幅を有し、スリット112と連続する。開口108の高さは、手摺り102の高さよりも大きく、手摺り102を壁106の室内F側から背面B側に通過させられるよう設定される。蓋本体110aは、閉じた状態において開口108内に位置する。蓋本体110aは、下部が付勢部材110bと連結され、上部が自由端として形成されている。付勢部材110bは、壁面の背面側に固定された台座128上に配置される。付勢部材110bは、例えば手摺り構造体100の幅方向に延びる捻りコイルバネにより構成される。付勢部材110bの一端は蓋本体110aに固定され、他端は台座128上に固定される。付勢部材110bは、蓋本体110aが垂直な姿勢を保つよう蓋本体110aを付勢する。
【0024】
蓋部材110は、ブラケット104の駆動に伴って開閉させられる。具体的には蓋部材110は、外力が加えられていない状態では付勢部材110bにより閉状態に維持される。閉状態において蓋部材110は、蓋部材110の室内F側の面が壁106と略面一になり、室内F側から蓋部材110の背面B側を隠す。蓋本体110aにブラケット104に押されると、蓋部材110は付勢部材110bに抗して室内F側に開く。これにより、開口108が露出し、開口108を通ってブラケット104及び手摺り102が壁106の室内F側から背面B側に、又は壁106の背面B側から室内F側に移動可能になる。
【0025】
以下、手摺り構造体100の作用について説明する。
【0026】
図4及び
図5は、手摺り構造体の側断面図である。具体的には
図4及び
図5は、A-A断面における手摺り構造体の側断面を示し、ブラケット及び手摺りの動作を明確にするために一部の構成を省略している。
図4及び
図5では、ブラケット及び手摺りを破線で示す。また、
図4は、手摺りが使用可能状態にあるのを示し、
図5は、手摺りが使用可能状態から収容状態に移行している状態を示す。
【0027】
図4に示すように、手摺り102が使用可能状態にあるとき、手摺り102は壁106の室内F側にあり、スリット112から室内F側に突出する支持部104bにより支持される。手摺り102は、ブラケット104及び連結部材130を介してアクチュエータ114(
図2等参照)により支持される。また、蓋部材110により開口108を覆うことで、室内F側から見た壁106は略面一な平らな壁面となる。アクチュエータ114は、手摺りに人の体重がかけられてもブラケット104及び手摺り102の位置を保持する。ブラケット104は、ブラケット104の長手方向に沿って離れた位置に配置された上側の被ガイド部124及び下側の被ガイド部126によりガイド孔118内に保持されているため、人が手摺り102に寄りかかっても回転せず、現在の姿勢を維持する。したがって、ガイド孔118及び被ガイド部124,126は、使用可能状態における手摺り102の姿勢維持機構としても機能する。
【0028】
人が手摺りを掴んでいない状態で、シャフト114bを伸ばすと、被ガイド部124が上側に押される。これにより、ブラケット104はガイド孔118の第1部分120に沿って壁106と平行に上向き(矢印A参照)に駆動される。一方で、シャフト114bを短くすると、被ガイド部124が、アクチュエータ114の作用及び重力により下向き(矢印C参照)に駆動される。これにより、ブラケット104はガイド孔118の第1部分120に沿って壁106と平行に下向きに駆動される。このように手摺り構造体100によれば、手摺り102が使用可能状態にあるときに手摺り102の高さを自由に調整できる。
【0029】
図5に示すように手摺り102を収容状態に移行させるとき、アクチュエータ114のシャフト114b(
図2参照)を短くする。下側にある被ガイド部126がガイド孔118の第1部分120から第2部分122に入ると、下側にある被ガイド部126が背面側に移動し始め、ブラケット104が上側にある被ガイド部124を中心に矢印D方向に回転し始める。これにより手摺り102が下側に移動しながら背面側に向けて回転し始める。この状態のブラケット104及び手摺りは
図5において破線で示す。アクチュエータ114を駆動し続けると、ブラケット104は被ガイド部124を中心にさらに矢印D方向に回転し、被ガイド部126が第2部分122の端部付近に到達したときに手摺り102及びブラケット104は収容状態となる。この状態のブラケット104及び手摺りは
図5において一点破線で示す。この状態において手摺り102及びブラケット104は、蓋部材110の背面B側にある収容空間Sに収容されている、ということもできる。
【0030】
手摺り構造体100では、連続する第1部分120及び第2部分122を有するガイド孔118、及び2つの被ガイド部124,126を用いることで手摺り102を下向きに移動させながら回転させられる。ブラケット104は、スライドプレート116に対して、離れた位置にある被ガイド部124,126により2点支持することで実現される。つまり、ブラケット104を側面視したときに2点よりも多い位置でブラケット104をスライドプレート116に対して保持すると、ブラケット104をスライドプレート116に対して回転させられないか、仮に回転させられたとしても複雑な機構が必要になる。一方でブラケット104をスライドプレート116に対して1点で支持すると、使用可能状態において、及び使用可能状態から収容状態に移行させている過程においてブラケット104の回転を抑制できなくなる。これに対して、ブラケット104を側面視したときに2点でブラケット104をスライドプレート116に対して保持し、湾曲した第2部分122に沿って移動させることで、ブラケット104の姿勢を保持しながら、ブラケット104を回転させられる。また、アクチュエータ114のような直線運動を行う機構のみでブラケット104を移動させながら回転させられる。
【0031】
図6は、
図1のA-A断面における断面図であり、手摺りを収容する過程を示す。
図7は、
図1のA-A断面における断面図であり、手摺りが収容状態にあるのを示す。
図6及び
図7では、上述したブラケット及び手摺りの動作に加えて蓋部材の動作を示す。
図6に示すように、ブラケット104を移動させているときにブラケット104の室内側端部104dが蓋本体110aの自由端に接触すると、蓋本体110aは室内側端部104dの傾斜により室内F側に回転させられる。これにより蓋部材110が開状態になり、開口108が露出する。開口108が露出すると、手摺り102が開口108を通して壁106の背面B側に移動できるようになる。
【0032】
アクチュエータ114を駆動し続けると、ブラケット104の上側の被ガイド部124がガイド孔118の第2部分122に入り、ブラケット104及び手摺り102がさらに回転する。これにより手摺り102がさらに背面側に移動する。下側の被ガイド部126が第2部分122の端部付近に到着すると、手摺り102は収容状態(
図7参照)となる。蓋部材110は、手摺りが背面B側に移動するにしたがって、付勢部材110bの付勢力により垂直な姿勢に近付く。収容状態においては、手摺り102及びブラケット104は壁106の背面B側に収容される。収容状態においては蓋部材110により開口108が覆われるため、開口108を通して背面B側の手摺り102及びブラケット104を視認できない。
【0033】
手摺り102を収容状態から使用可能状態に移行させる場合、操作部Rを操作してアクチュエータ114を駆動する。アクチュエータ114が駆動すると、シャフト114bが延びる。これにより、被ガイド部124,126がガイド孔118に沿って第1部分120に向けて押される。アクチュエータ114を駆動し続けると、手摺り102が蓋本体110aの背面B側に接触し、蓋本体110aを室内側に押す。これにより開口108が露出し、手摺り102が開口108を通して室内F側に移動できるようになる。上側及び下側の被ガイド部124,126が第1部分120に到着すると、ブラケット104はそれ以上室内F側へ移動しなくなり、上側にのみ移動する。ブラケット104が上側に移動すると、蓋本体110aは室内側端部104dに沿って閉じ、ブラケット104から離れたときに閉状態になる。
【0034】
図8は、手摺りが収容状態にあるときの手摺り構造体の斜視図である。収容状態では、手摺り102及びブラケット104は壁106の背面にあり、かつ蓋部材110は、閉状態にある。したがって、室内F側から壁106を見たときに壁106の背面B側の手摺り102、ブラケット104、及びアクチュエータ114等の駆動機構は隠れる。したがって、手摺り102が収容状態にあるときには、室内F側の壁106と蓋部材110の表面を面一にでき、壁106の美観を向上させられる。また、手摺り102が
図1に示す使用可能状態にある場合でも、手摺り102及びブラケット104以外の部品が室内F側からは見えず、壁106と蓋部材110の表面は面一である。したがって、手摺り構造体100によれば使用可能状態及び収容状態の両方の状態において、壁106の美観を向上させられる。
【0035】
このように手摺り構造体100によれば、使用者の手が自ら手摺り102を動かさなくても、手摺り102を容易に使用可能状態と収容状態との間で移行させられる。また手摺り構造体100によれば、手摺り102の高さを容易に調整できる。手摺り102の高さはアクチュエータ114の駆動量により調整可能である。したがって、手摺り102の高さを複数の高さ位置で停止させ、高さを調整できる。また、蓋部材110により開口108を覆うことで美観が損なわれない。また、手摺り102を収容状態に移行させる動作と連動させて蓋部材110を開閉できるため、蓋部材110が手摺り102の移動を妨げない。
【0036】
また収容状態においては、ブラケット104の背面側端部104cは、壁106と略平行な状態になる。仮に背面側端部104cを直線状にせず、背面側に膨出させると、収容状態におけるブラケット104の前後方向の長さが長くなる。これに対して背面側端部104cを直線状にし、壁106と平行になるように設計することで、手摺り構造体100の前後方向における厚みを薄くできる。なお、背面側端部104cと壁106とが平行であるとは、両者が完全に平行な場合に加えて、両者が多少の角度(約1~20度前後)の角度を有しており略平行な場合をも含むものとする。
【0037】
また、略J字状のガイド孔118及び所定間隔をもって配置された被ガイド部124,126を用いることにより、使用可能状態において手摺り102の回転を抑制できる。また、スライドプレート116に対してブラケット104を2点支持することで、手摺り102を収容状態及び使用可能状態の間でスムーズに移行させられる。また、この構成により、直線運動のみを行うアクチュエータ114を用いて手摺り102の状態を移行させられる。したがって、手摺り構造体100の駆動機構及びその動作が簡潔なものになり、メンテナンス等を容易に行えるようになる。
【0038】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、実施形態の各構成は本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0039】
実施形態では、蓋部材110をブラケットにより押して蓋部材110を開状態にすることとしたが、手摺り102により蓋部材110を押してもよい。
【0040】
ガイド孔118の形状は略J字形状でなくても良く、第2部分122が直線状に形成されていてもよい。
【0041】
実施形態では、手摺り102を下側から上側に移動させて収容状態から使用可能状態にすることとした。しかしながら手摺り102を上側から下側に移動させて収容状態から使用可能状態に移行させてもよい。また、手摺り102を鉛直方向に延びる構成とし、手摺り102が水平方向に移動して収容状態と使用可能状態との間を移行してもよい。
【符号の説明】
【0042】
100 手摺り構造体、 102 手摺り, 104 ブラケット, 104c 背面側端部, 110 蓋部材, 114 アクチュエータ, 116 スライドプレート, 118 ガイド孔, 120 第1部分, 122 第2部分, 124 被ガイド部, 126 被ガイド部