(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240307BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240307BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240307BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20240307BHJP
C08F 263/06 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/031
G03F7/029
G03F7/004 502
C08F263/06
(21)【出願番号】P 2020070985
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 星児
(72)【発明者】
【氏名】長井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 麻希
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104493(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/152153(WO,A1)
【文献】特開2009-265649(JP,A)
【文献】特開平10-060360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/004
G03F 7/031
G03F 7/029
C08F 263/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記分散剤が、(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を含有し、
前記光開始剤が、下記一般式(A)で表される化合物を含有する、感光性着色樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、COR
11、SR
11、CONR
12R
13又はCNを表し、
R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12及びR
13で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
21、R
22及びR
23で表される基の水素原子は、更に水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はカルボキシ基で置換されていてもよく、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22及びR
23で表される基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR
24-、-NR
24CO-、-NR
24COO-、-OCONR
24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-を酸素原子が隣り合わない条件で1~5個含んでいてもよく、
R
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23及びR
24で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、
R
3は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R
3で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R
3とR
7、及びR
3とR
8はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
3で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、SR
11、COR
14、CONR
15R
16、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
14、SCOR
11、OCSR
11、COSR
14、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、R
4とR
5、R
5とR
6、及びR
6とR
7はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
14、R
15及びR
16は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基を表し、R
14、R
15及びR
16で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R
8は、R
11、OR
11、SR
11、COR
11、CONR
12R
13、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
11、SCOR
11、OCSR
11、COSR
11、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、
kは、0又は1を表す。)
【請求項2】
前記光開始剤が、更に、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤が、下記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種を含有し、
下記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、下記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれる、請求項1又は2に記載の感光性着色樹脂組成物。
【化2】
(一般式(I)中、R
41は水素原子又はメチル基、A
1は2価の連結基、R
42及びR
43は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
42及びR
43が互いに結合して環構造を形成してもよい。
一般式(II)中、R
41’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には、(メタ)アクリレート由来の構成単位が含まれる。)
【化3】
(一般式(III)中、R
44は水素原子又はメチル基、A
3は2価の連結基、R
45はエチレン基又はプロピレン基、R
46は、水素原子、又は炭化水素基であり、mは3以上80以下の数を表す。
一般式(III’)中、R
44’は水素原子又はメチル基、A
3’は2価の連結基、R
47は炭素数が1~10のアルキレン基、R
48は炭素数が3~7のアルキレン基、R
49は、水素原子、又は炭化水素基であり、nは1以上40以下の数を表す。)
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤が、
下記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位及び(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体、並びに、当該ブロック共重合体の
下記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型ブロック共重合体の少なくとも1種を含有し、前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種の酸価が1~18mgKOH/gで、ガラス転移温度が30℃以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【化4】
(一般式(I)中、R
41
は水素原子又はメチル基、A
1
は2価の連結基、R
42
及びR
43
は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
42
及びR
43
が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤において、前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位が含まれる、請求項3に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤において、前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位(但し、mは19以上80以下の数を表す)が含まれる、請求項3に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
更に酸化防止剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項8】
前記光開始剤が、更に、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
光開始剤の全量に対して、前記一般式(A)で表される化合物の含有量は50質量%以上90質量%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項9】
素子基板上に直接カラーフィルタを形成する用途に用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物。
【請求項11】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項
1~8に記載の感光性着色樹脂組成物の硬化物である、カラーフィルタ。
【請求項12】
前記請求項
11に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの発達、特に携帯用パーソナルコンピュータの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。その際の光源としては、従来の冷陰極管のほか、白色発光の有機発光素子や白色発光の無機発光素子が利用される場合がある。有機発光表示装置では、色調整などのためにカラーフィルタを用いる。
【0003】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、基板と、基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように基板上に形成された遮光部とを有している。
カラーフィルタにおける着色層の形成方法としては、例えば、分散剤等により色材を分散してなる色材分散液にバインダー樹脂、光重合性化合物及び光開始剤を添加してなる着色樹脂組成物をガラス基板に塗布して乾燥後、フォトマスクを用いて露光し、現像を行うことによって着色パターンを形成し、加熱することによりパターンを固着して着色層を形成する。これらの工程を、各色ごとに繰り返してカラーフィルタを形成する。
【0004】
近年、カラーフィルタの高輝度化等の要求が高まりを見せる中で、従来と比べカラーフィルタの着色層における色材濃度が高くなることで、相対的に光重合に必要な成分が少なくなり、パターニングが難しくなってきている。さらにカラーフィルタの生産性を向上させるため、パターニングに必要な積算露光量を減少させることを求められており、パターニングに必要な硬化性をいかに確保するかが大きな課題となっている。
【0005】
着色層のパターニングに必要な硬化性を確保するため、カラーフィルタ用の着色樹脂組成物においては、高感度な光開始剤として、イルガキュア907等の比較的分子量が小さい光開始剤が用いられているが、昇華物によるフォトマスクや加熱炉の汚染等の原因となっていた。
そのため、特許文献1には、安定性に優れ、低昇華性であり、365nm等の近紫外光を効率よく吸収し活性化される高感度の光重合開始剤として、特定のオキシムエステル化合物を開示している。
また、高感度な光開始剤としては、例えば、特許文献2に、高反応性で、合成が容易、かつ取り扱いが容易な光開始剤として、特定のo-アシルオキシム化合物が開示されている。
さらに、特許文献3に、高感度な光開始剤として、特定のオキシムエステル化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2015/152153号公報
【文献】特開2000-80068号公報
【文献】特開2006-516246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、カラーフィルタはガラス基板上に形成されていたが、近年、素子基板上に直接カラーフィルタを形成することが求められてきている。
有機発光素子等の素子は、耐熱性が低いため、素子基板上に直接カラーフィルタを形成する製造工程での加熱処理は、90℃以下で行うことが好ましいとされている。通常のカラーフィルタ製造工程ではガラス基板上で230℃程度の加熱処理を行って着色層を硬化させるのに対して、90℃以下の加熱処理では、熱による着色層の硬化は進行しにくい。そのため、後工程で必要な耐溶剤性を着色層に持たせるためには、露光で十分に着色層を硬化させることが必要となる。露光による着色層の硬化を促進するためには、高感度な開始剤を使用することが考えられる。しかしながら、高感度な開始剤は線幅シフト量も大きくなる傾向があり、細線パターンを作製する場合に、想定したパターンサイズより大きくなる課題がある。更に、着色層に高感度な開始剤を含有させて、露光により硬化しても、90℃以下の加熱処理で必要な耐溶剤性を必ずしも得られなかった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、線幅シフト量を抑えつつ、低温加熱処理でも耐溶剤性が良好な着色層を形成可能な感光性着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記分散剤が、(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を含有し、
前記光開始剤が、下記一般式(A)で表される化合物を含有する。
【0010】
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、COR
11、SR
11、CONR
12R
13又はCNを表し、
R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12及びR
13で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
21、R
22及びR
23で表される基の水素原子は、更に水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はカルボキシ基で置換されていてもよく、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22及びR
23で表される基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR
24-、-NR
24CO-、-NR
24COO-、-OCONR
24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-を酸素原子が隣り合わない条件で1~5個含んでいてもよく、
R
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23及びR
24で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、
R
3は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R
3で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R
3とR
7、及びR
3とR
8はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
3で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、SR
11、COR
14、CONR
15R
16、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
14、SCOR
11、OCSR
11、COSR
14、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、R
4とR
5、R
5とR
6、及びR
6とR
7はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
14、R
15及びR
16は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基を表し、R
14、R
15及びR
16で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R
8は、R
11、OR
11、SR
11、COR
11、CONR
12R
13、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
11、SCOR
11、OCSR
11、COSR
11、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、
kは、0又は1を表す。)
【0011】
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0012】
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、線幅シフト量を抑えつつ、低温加熱処理でも耐溶剤性が良好な着色層を形成可能な感光性着色樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該感光性着色樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及び表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明に用いられるグラフト共重合体の構造の一例の一部を模式的に表した図である。
【
図5】
図5は、細線パターンの着色層の断面形状のテーパー角(θ1)を説明する概略図である。
【
図6】
図6は、着色層中の微小孔の断面形状のテーパー角(θ2)を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る感光性着色樹脂組成物、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0016】
I.感光性着色樹脂組成物
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記分散剤が、(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を含有し、
前記光開始剤が、下記一般式(A)で表される化合物を含有する。
【0017】
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、COR
11、SR
11、CONR
12R
13又はCNを表し、
R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12及びR
13で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
21、R
22及びR
23で表される基の水素原子は、更に水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はカルボキシ基で置換されていてもよく、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22及びR
23で表される基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR
24-、-NR
24CO-、-NR
24COO-、-OCONR
24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-を酸素原子が隣り合わない条件で1~5個含んでいてもよく、
R
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23及びR
24で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、
R
3は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R
3で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R
3とR
7、及びR
3とR
8はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
3で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、SR
11、COR
14、CONR
15R
16、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
14、SCOR
11、OCSR
11、COSR
14、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、R
4とR
5、R
5とR
6、及びR
6とR
7はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
14、R
15及びR
16は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基を表し、R
14、R
15及びR
16で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R
8は、R
11、OR
11、SR
11、COR
11、CONR
12R
13、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
11、SCOR
11、OCSR
11、COSR
11、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、
kは、0又は1を表す。)
【0018】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、分散剤として、前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を用い、且つ、光開始剤として前記一般式(A)で表される化合物を含有するため、線幅シフト量を抑えつつ、露光後に低温加熱処理を行った場合でも耐溶剤性が良好な着色層を形成することができる。このような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
【0019】
低温加熱処理でも耐溶剤性が良好な着色層を形成するためには、着色層の硬化状態を着色層中で均一にする必要があるが、開始剤とその他の成分との相溶性が硬化状態に影響すると考えられる。感光性樹脂着色組成物においては、色材を均一に分散させるために、通常、分散剤を含む。本発明で用いられる開始剤を使用しても、使用する分散剤によっては、線幅シフトが大きくなったり、低温加熱処理で十分な耐溶剤性を有する着色層が得られない場合があった。開始剤とその他成分との相溶性が低いと、開始剤が着色層表面に偏在しやすくなり、着色層表面でより硬化が進んで線幅シフトが大きくなると考えられる。
それに対して、本発明の感光性樹脂組成物では、分散剤として、前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を用い、且つ、光開始剤として前記一般式(A)で表される化合物を含有するため、開始剤とその他成分との相溶性が良好になり、開始剤が着色層中に均一に存在し易くなる。そのため、表面だけ硬化が進んで線幅シフトが大きくなるのが抑制され、着色層が均一に硬化することで未反応成分が減少し、着色層の内部応力も小さくなるため、溶剤に浸漬した時の着色層の変化が小さくなると推定される。前記分散剤と光開始剤の組み合わせにより低温加熱処理でも十分な耐溶剤性が得られることから、主には、光開始剤と光重合性化合物及び分散剤、分散剤と光重合性化合物との相溶性が高いことに起因すると推定される。
さらに前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤が、溶剤親和性部が枝分かれしたグラフト共重合体や酸価を有する共重合体である場合には、開始剤およびその他の成分との相溶性がより向上し、開始剤を膜中に均一に安定して保つことが可能となって耐溶剤性も向上すると推定される。
【0020】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、少なくとも色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明に係る感光性着色樹脂組成物の各成分について、本発明の特徴的な組み合わせである分散剤と光開始剤から順に詳細に説明する。
【0021】
<分散剤>
本発明においては、分散剤として、(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を用いる。
(メタ)アクリレート共重合体系分散剤とは、共重合体であって、少なくとも(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む分散剤をいう。
(メタ)アクリレート共重合体系分散剤は、色材吸着部位として機能する構成単位と、溶剤親和性部位として機能する構成単位とを含有する共重合体であることが好ましく、溶剤親和性部位として機能する構成単位に少なくとも(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むことが好ましい。
【0022】
色材吸着部位として機能する構成単位は、(メタ)アクリレート由来の構成単位と共重合可能なエチレン性不飽和モノマー由来の構成単位を挙げることができる。色材吸着部位としては、酸性基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位であってもよいし、塩基性基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位であってもよい。
塩基性基含有エチレン性不飽和モノマー由来の構成単位としては、下記一般式(I)で表される構成単位が、分散性に優れている点から好ましい。
【0023】
【化3】
(一般式(I)中、R
41は水素原子又はメチル基、A
1は2価の連結基、R
42及びR
43は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
42及びR
43が互いに結合して環構造を形成してもよい。)
【0024】
一般式(I)において、A1は、2価の連結基である。2価の連結基としては、例えば、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、水酸基を有する、直鎖、分岐又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、-NHCOO-基、エーテル基(-O-基)、チオエーテル基(-S-基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に-CONH-が含まれる場合、-COが主鎖の炭素原子側で-NHが側鎖の窒素原子側であっても良いし、反対に、-NHが主鎖の炭素原子側で-COが側鎖の窒素原子側であっても良い。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるA1は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることがより好ましい。
【0025】
R42及びR43における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数は、1~18が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素原子数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、上記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた構造を有するか、上記炭化水素基中の水素原子がヘテロ原子を含む置換基で置き換えられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0026】
R42及びR43が互いに結合して環構造を形成しているとは、R42及びR43が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。R42及びR43が形成する環構造にヘテロ原子が含まれていても良い。環構造は特に限定されないが、例えば、ピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、中でも、R42及びR43が各々独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基、フェニル基であるか、又は、R42及びR43が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましい。
【0028】
上記一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
重合体において、一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
【0029】
また、色材吸着部位として機能する構成単位としては、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成してもよい(以下、このような共重合体を、塩型共重合体と称することがある)。
前記有機酸化合物としては、中でも、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(3)で表される化合物が好ましく、前記ハロゲン化炭化水素としては、中でも、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。すなわち、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種としては、下記一般式(1)~(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物を好ましく用いることができる。
【0030】
【化4】
(一般式(1)において、R
aは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
eを表し、R
eは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R
b、R
b’、及びR
b”はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
fを表し、R
fは、置換基を有してもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R
c及びR
dはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは-O-R
eを表し、R
eは、炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1~4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R
c及びR
dの少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【0031】
前記一般式(1)~(3)の各符号については、国際公開第2016/104493号の記載と同様であって良い。
前記有機酸化合物がフェニルホスホン酸やフェニルホスフィン酸等の酸性有機リン化合物であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。このような分散剤に用いられる有機酸化合物の具体例としては、例えば、特開2012-236882号公報等に記載の有機酸化合物が好適なものとして挙げられる。
また、前記ハロゲン化炭化水素としては、臭化アリル、塩化ベンジル等のハロゲン化アリル及びハロゲン化アラルキルの少なくとも1種であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。
【0032】
塩型共重合体において、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成しているものであることから、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対して、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の合計を0.01モル以上とすることが好ましく、0.05モル以上とすることがより好ましく、0.1モル以上とすることがさらに好ましく、0.2モル以上とすることが特に好ましい。上記下限値以上であると、塩形成による色材分散性向上の効果が得られやすい。同様に、1モル以下とすることが好ましく、0.8モル以下とすることがより好ましく、0.7モル以下とすることがさらに好ましく、0.6モル以下とすることが特に好ましい。上記上限値以下であると現像密着性や溶剤再溶解性に優れたものとすることができる。
なお、有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、その合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0033】
塩型共重合体の調製方法としては、塩形成前の共重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0034】
前記一般式(I)で表される構成単位を有する共重合体は、分散性及び分散安定性の点から、前記一般式(I)で表される構成単位を有し、グラフトポリマー鎖に(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するグラフト共重合体、及び、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むBブロックとを有するブロック共重合体、の少なくとも1種であることがより好ましい。
以下、前記グラフト共重合体、及び、前記ブロック共重合体について、順に説明する。
【0035】
前記一般式(I)で表される構成単位を有し、グラフトポリマー鎖に(メタ)アクリレート由来の構成単位を有するグラフト共重合体としては、前記一般式(I)で表される構成単位と下記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体、並びに、当該グラフト共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型グラフト共重合体の少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
【化5】
(一般式(II)中、R
41’は水素原子又はメチル基、A
2は直接結合又は2価の連結基、Polymerはポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には、(メタ)アクリレート由来の構成単位が含まれる。)
【0037】
前記一般式(II)において、A2は、直接結合又は2価の連結基である。A2における2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合由来の炭素原子とポリマー鎖を連結可能であれば、特に制限はない。A2における2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。
中でも、分散性の点から、一般式(II)におけるA2は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基と、炭素原子数1~10のアルキレン基とを含む2価の連結基であることがより好ましい。
【0038】
前記一般式(II)において、Polymerは、ポリマー鎖を表し、当該ポリマー鎖の構成単位には、(メタ)アクリレート由来の構成単位が含まれる。グラフト共重合体は、特定のポリマー鎖を有する前記一般式(II)で表される構成単位を有することにより、溶剤親和性が良好になり、色材の分散性及び分散安定性が良好なものとなり、且つ、後述の光開始剤との相溶性も良好になる。
当該ポリマー鎖の構成単位としては、下記一般式(IV)で表される構成単位が挙げられる。
【0039】
【化6】
(一般式(IV)中、R
44”は水素原子又はメチル基、A
4は2価の連結基、R
50は、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基である。)
【0040】
A4の2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。本発明においては、(メタ)アクリレート由来の構成単位として、一般式(IV)中のA4が-COO-基を含む2価の連結基である一般式(IV)で表される構成単位が、少なくとも含まれる。カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(IV)におけるA4は、-CONH-基を含む2価の連結基を含んでいてもよい。
【0041】
R50における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びアラルキル基やアルキル置換アリール基等のこれらの組み合わせが挙げられる。R50における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基としては、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基やアルキル置換アリール基等のこれらの組み合わせが挙げられる。
前記炭素数1~18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。アルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、更に1~6が好ましい。
前記炭素数2~18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。アルケニル基の炭素数は、2~12が好ましく、更に2~8が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6~24が好ましく、更に6~12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7~20が好ましく、更に7~14が好ましい。
また、前記アリール基やアラルキル基等の芳香環には、置換基として炭素数1~30の直鎖状、分岐状のアルキル基が結合していても良い。
【0042】
R50における炭化水素基としては、中でも、分散安定性の点から、炭素数1~18のアルキル基、アルキル基が置換されていても良い炭素数6~12のアリール基、及び、アルキル基が置換されていても良い炭素数7~14のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、アルキル基が置換されていても良いフェニル基及びベンジル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0043】
炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、例えば、炭化水素基の炭素鎖中に、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-、-S-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-等の連結基が含まれる構造が挙げられる。
また、当該炭化水素基は、前記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基を有しても良く、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基等が挙げられる。
【0044】
また、R50におけるヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基としては、炭化水素基においてヘテロ原子を含む連結基を介して末端にアルケニル基等の重合性基が付加された構造であっても良い。例えば、一般式(IV)で表される構成単位が(メタ)アクリル酸由来の構成単位にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたような構造であっても良い。すなわち、一般式(IV)における-A4-R50の構造が、-COO-CH2CH(OH)CH2-OCO-CR=CH2(ここで、Rは水素原子又はメチル基)で示される構造であっても良い。また、一般式(IV)で表される構成単位がヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位に2-イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートを反応させたような構造であっても良い。すなわち、一般式(IV)におけるR50が、-R’-OCONH-R”-OCO-CR=CH2(ここで、R’及びR”はそれぞれ独立にアルキレン基、Rは水素原子又はメチル基)で示される構造であっても良い。
【0045】
一般式(IV)で表される構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド鎖の繰り返し単位数が19未満のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等由来の構成単位を有するものが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明において、前記R50としては、中でも、後述する有機溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、色材分散液に使用する有機溶剤に合わせて適宜選択されれば良い。具体的には、例えば前記有機溶剤が、色材分散液の有機溶剤として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系、アルコール系などの有機溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ヒドロキシエチル基、フェノキシエチル基、アダマンチル基、メトキシポリエチレングリコール基、メトキシポリプロピレングリコール基、ポリエチレングリコール基等が好ましい。
【0047】
前記グラフト共重合体は、前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、下記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれることが、感光性樹脂組成物の現像時間の短縮化、及び感光性着色樹脂組成物の硬化物の耐溶剤性が更に良好になる点から好ましい。
下記一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位は、前記一般式(IV)で表される構成単位に包含される構成単位である。
【0048】
【化7】
(一般式(III)中、R
44は水素原子又はメチル基、A
3は2価の連結基、R
45はエチレン基又はプロピレン基、R
46は、水素原子、又は炭化水素基であり、mは3以上80以下の数を表す。
一般式(III’)中、R
44’は水素原子又はメチル基、A
3’は2価の連結基、R
47は炭素数が1~10のアルキレン基、R
48は炭素数が3~7のアルキレン基、R
49は、水素原子、又は炭化水素基であり、nは1以上40以下の数を表す。)
【0049】
A3の2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(III)におけるA3は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましく、-COO-基であることがより更に好ましい。
【0050】
前記mは、エチレンオキシド鎖又はプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数を表し、3以上の数を表すが、中でも水染み発生抑制の点から、19以上であることが好ましく、21以上であることがより好ましい。なお、水染みとは、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生するこの現象をいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。感光性樹脂組成物の硬化膜の水染みの原因としては、硬化膜内への吸水が挙げられる。硬化膜中のアルカリ可溶性樹脂はカルボキシ基等の酸性基を有しているため吸水しやすい。また、当該酸性基が、現像時にアルカリ現像液に典型的に含まれるアルカリ金属と金属塩を形成することにより吸水性がより高まると考えられる。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、アルカリ金属などの金属と錯生成することで捕捉可能である。ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位数が大きくなるにつれて、錯生成定数は増加し、金属分子の捕捉能が増加するため、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ金属塩形成を抑制し、硬化膜内への吸水が抑制できると推測される。また、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子は、感光性樹脂組成物中に含まれるアルカリ可溶性樹脂のカルボキシ基等の酸性基と、水素結合によって相互作用することによって、酸性基のアルカリ金属塩形成を抑制し、硬化膜内への吸水が抑制できると推測される。
前記mが19以上の場合には、
図4に示されるように、前記グラフト共重合体11は、一般式(I)で表される構成単位21と一般式(II)で表される構成単位22とを有する主鎖部分12を含有し、前記一般式(I)で表される構成単位21が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種23とが塩を形成していても良く、前記一般式(II)で表される構成単位22はポリマー鎖24において、特定の繰り返し数を有するポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖26を含む一般式(III)で表される構成単位25が含まれる。本発明に用いられる特定のグラフト共重合体においては、このようにグラフトしているポリマー鎖24の構成単位に、特定の繰り返し数を有するポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖を有する構成単位25が含まれ、グラフトしているポリマー鎖24自体が枝分かれ構造を有する。その結果、分散剤の金属捕捉部の比表面積が大きくなることと相俟って、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖に含まれる酸素原子による金属捕捉の作用が顕著になり、吸水抑制効果が向上し、吸水による水染み発生が抑制できると推定される。これらの硬化膜内への吸水抑制作用によって、吸水による水染みの発生を抑制できると推測される。
一方、mの上限値は80以下であるが、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、50以下であることが好ましい。
【0051】
R46における炭化水素基としては、前記R50における炭化水素基と同様であって良い。
R46における炭化水素基としては、中でも、分散安定性や相溶性の点から、炭素数1~18のアルキル基、アルキル基が置換されていても良い炭素数6~12のアリール基、及び、アルキル基が置換されていても良い炭素数7~14のアラルキル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ノニル基、n-ラウリル基、n-ステアリル基、アルキル基が置換されていても良いフェニル基及びベンジル基からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0052】
また、前記一般式(III’)中、A3’の2価の連結基としては、例えば、前記A1における2価の連結基と同様のものが挙げられる。中でも、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、一般式(III’)におけるA3’は、-CONH-基又は-COO-基を含む2価の連結基であることが好ましく、-CONH-基又は-COO-基であることがより好ましく、-COO-基であることがより更に好ましい。
前記一般式(III’)において、R47は炭素数が1~10のアルキレン基であるが、中でも炭素数が2~8のアルキレン基であることが、溶剤再溶解性の点から好ましい。
R48は炭素数が3~7のアルキレン基であるが、中でも炭素数が3~5のアルキレン基、更に炭素数が5のアルキレン基であることが基材密着性の点から好ましい。
R49は、水素原子、又は炭化水素基であり、前記R49における炭化水素基としては、前記R46における炭化水素基と同様であって良い。
【0053】
前記一般式(III’)における前記nはエステル鎖の繰り返し単位数を表し、1以上の数を表すが、中でも現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、2以上であることが好ましく、更に3以上であることが好ましい。
一方、nの上限値は40以下であるが、カラーフィルタ用途に使用される有機溶剤への溶解性の点から、20以下であることが好ましい。
【0054】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位が含まれることが、酸素原子による溶剤親和性部の作用がより顕著になり、感光性樹脂組成物の現像時間の短縮化、及び耐溶剤性が向上する点から好ましい。
【0055】
中でも、水染み抑制効果が向上し、耐溶剤性が向上し、且つ現像残渣抑制効果が向上する点から、前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有することがより好ましく、mが19以上50以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種と、mが3以上8以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有することがよりさらに好ましい。
【0056】
前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を含有する場合、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、水染み抑制効果の点から、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましく、一方で、溶剤再溶解性、及び水染み抑制効果の点から、75質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより更に好ましい。
【0057】
前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種とを組み合わせて含有する場合、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、20質量%以上であることが好ましい。一方で、溶剤再溶解性の点から、前記ポリマー鎖において、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
また、前記ポリマー鎖において、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位との混合割合は、現像残渣抑制効果向上の点から、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位と、mが3以上10以下の前記一般式(III)で表される構成単位との合計を100質量部とした時に、mが19以上80以下の前記一般式(III)で表される構成単位の合計が3質量部以上であることが好ましく、6質量部以上であることがより好ましく、80質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
分散安定性、高コントラスト化、現像時間の短縮化、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位の合計割合は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがより更に好ましい。前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位の合計割合は、溶剤再溶解性の点から、前記ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがより更に好ましい。
【0059】
前記ポリマー鎖において、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位を包含する前記一般式(IV)で表される構成単位は、1種単独でも良いが、2種以上混合されていても良い。
色材の分散性及び分散安定性の点から、前記一般式(IV)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。一方で、分散安定性、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、前記ポリマー鎖において、前記一般式(IV)で表される構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、100質量%であってもよい。
中でも(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計割合は、分散安定性及び耐溶剤性、開始剤との相溶性の点から、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一方で、分散安定性、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、前記ポリマー鎖において、(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計割合は、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、100質量%であってもよい。
【0060】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖の構成単位には、前記一般式(III)で表される構成単位及び前記一般式(III’)で表される構成単位を包含する前記一般式(IV)で表される構成単位の他に、その他の構成単位を含んでいても良い。
その他の構成単位としては、前記一般式(IV)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体由来の構成単位を挙げることができる。
その他の構成単位を誘導するモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
【0061】
前記グラフト共重合体の前記一般式(II)で表される構成単位中のポリマー鎖において、その他の構成単位の合計割合は、本発明の効果の点から、当該ポリマー鎖の全構成単位を100質量%とした時に、30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
Polymerにおけるポリマー鎖の質量平均分子量Mwは、色材の分散性及び分散安定性の点から、2000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、4000以上であることがより更に好ましく、15000以下であることがより好ましく、12000以下であることがより更に好ましい。
前記範囲であることにより、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることにより、溶剤の塗膜への侵入や色材への到達を抑制することができると共に、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖が含まれる場合には、酸素原子による相互作用が顕著になり、現像時間の短縮化、耐溶剤性の向上の作用、更には水染み発生抑制及び現像残渣の発生抑制効果を良好にすることができる。
【0063】
また、Polymerにおけるポリマー鎖は、目安として、組み合わせて用いられる有機溶剤に対して、23℃における溶解度が20(g/100g溶剤)以上であることが好ましい。
当該ポリマー鎖の溶解性は、グラフト共重合体を調製する際のポリマー鎖を導入する原料が前記溶解度を有することを目安にすることができる。例えば、グラフト共重合体にポリマー鎖を導入するために、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含む重合性オリゴマー(マクロモノマー)を用いる場合、当該重合性オリゴマーが前記溶解度を有すれば良い。また、エチレン性不飽和二重結合を有する基を含むモノマーにより共重合体が形成された後に、共重合体中に含まれる反応性基と反応可能な反応性基を含むポリマー鎖を用いて、ポリマー鎖を導入する場合、当該反応性基を含むポリマー鎖が前記溶解度を有すれば良い。
【0064】
前記グラフト共重合体において、前記一般式(I)で表される構成単位は、3~60質量%の割合で含まれていることが好ましく、6~45質量%がより好ましく、9~30質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(I)で表される構成単位が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の色材との親和性部の割合が適切になり、かつ有機溶剤に対する溶解性の低下を抑制できるので、色材に対する吸着性が良好となり、優れた分散性、及び分散安定性が得られる。
一方、前記グラフト共重合体において、前記一般式(II)で表される構成単位は、40~97質量%の割合で含まれていることが好ましく、55~94質量%がより好ましく、70~91質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の一般式(II)で表される構成単位が前記範囲内にあれば、グラフト共重合体中の溶剤親和性部の割合が適切になって、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、分散剤の溶剤親和性部の比表面積が大きくなることにより、溶剤の塗膜への侵入や色材への到達を抑制することができると共に、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖が含まれる場合には、酸素原子による相互作用が顕著になり、現像時間の短縮化、耐溶剤性の向上の作用、更には水染み発生抑制及び現像残渣の発生抑制効果を良好にすることができる。
【0065】
本発明に用いられる前記グラフト共重合体は、本発明の効果が損なわれない範囲内で、前記一般式(I)で表される構成単位及び前記一般式(II)で表される構成単位以外に、更に他の構成単位を有していても良い。他の構成単位としては、前記一般式(I)で表される構成単位を誘導するエチレン性不飽和二重結合含有モノマー等と共重合可能な、エチレン性不飽和二重結合含有モノマーを適宜選択して共重合し、他の構成単位を導入することができる。
前記一般式(I)で表される構成単位と共重合されている他の構成単位としては、例えば、前記一般式(IV)で表される構成単位等が挙げられる。
なお、前記構成単位の含有割合は、製造時には、グラフト共重合体を合成する際の、前記一般式(I)で表される構成単位、前記一般式(II)で表される構成単位、及び前記一般式(IV)で表される構成単位等を誘導するモノマーの仕込み量から算出される。
【0066】
また、前記グラフト共重合体の質量平均分子量Mwは、分散性及び分散安定性の点から、4000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、8000以上であることがより更に好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、50000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましい。
なお、本発明において質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー製)として行われたものである。
【0067】
(グラフト共重合体の製造方法)
本発明において、前記グラフト共重合体の製造方法としては、前記一般式(I)で表される構成単位と、前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造することができる方法であればよく、特に限定されない。前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造する場合、例えば、下記一般式(Ia)で表されるモノマーと、前記ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなる重合性オリゴマー(マクロモノマー)とを共重合成分として含有して共重合し、グラフト共重合体を製造する方法が挙げられる。
必要に応じて更にその他のモノマーも用い、公知の重合手段を用いてグラフト共重合体を製造することができる。
【0068】
【化8】
(一般式(Ia)中、R
41、A
1、R
42及びR
43は、一般式(I)と同様である。)
【0069】
また、前記一般式(I)で表される構成単位と前記一般式(II)で表される構成単位とを有するグラフト共重合体を製造する場合、前記一般式(Ia)で表されるモノマーとその他のエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むモノマーとを付加重合して共重合体が形成された後に、共重合体中に含まれる反応性基と反応可能な反応性基を含むポリマー鎖を用いて、ポリマー鎖を導入しても良い。具体的には例えば、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基を有する共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基を含むポリマー鎖とを反応させて、ポリマー鎖を導入したものであっても良い。
例えば、側鎖にグリシジル基を有する共重合体に、末端にカルボキシル基を有するポリマー鎖を反応させたり、側鎖にイソシアネート基を有する共重合体に、末端にヒドロキシ基を有するポリマー鎖を反応させたりして、ポリマー鎖を導入することができる。
なお、前記重合においては、重合に一般的に用いられる添加剤、例えば重合開始剤、分散安定剤、連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0070】
次に、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと、(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むBブロックとを有するブロック共重合体を説明する。
本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
【0071】
Aブロックは色材吸着部位として機能するブロックであり、少なくとも前記一般式(I)で表される構成単位を含む。当該ブロック共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型ブロック共重合体であってもよい。
Aブロックは、本発明の目的を達成する範囲で、一般式(I)で表される構成単位以外の構成単位を有するものであってもよく、一般式(I)で表される構成単位と共重合可能な構成単位であれば含有することができる。具体的には例えば、前記一般式(IV)で表される構成単位等が挙げられる。
塩形成前のブロック共重合体におけるAブロック中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、Aブロックの全構成単位の合計質量に対して、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。一般式(I)で表される構成単位の割合が高いほど、色材への吸着力が向上し、ブロック共重合体の分散性、及び分散安定性が良好となるからである。なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するAブロックを合成する際の仕込み質量から算出される。
【0072】
また、塩形成前のブロック共重合体中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、分散性、及び分散安定性が良好となる点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。なお、上記ブロック共重合体における各構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
なお、一般式(I)で表される構成単位は、色材との親和性を有すればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0073】
Bブロックは溶剤親和性部位として機能するブロックであり、少なくとも(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む。
(メタ)アクリレート由来の構成単位としては、前記と同様であって良い。
Bブロックとしては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な、不飽和二重結合を有するモノマーの中から、溶剤親和性を有するように溶剤に応じて適宜選択して用いられることが好ましい。目安として、組み合わせて用いられる溶剤に対して、共重合体の23℃における溶解度が20(g/100g溶剤)以上となるように、Bブロックを導入することが好ましい。Bブロック部を構成する構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
Bブロックに含まれる構成単位としては、例えば、前記一般式(IV)で表される構成単位等が挙げられる。
【0074】
本発明の分散剤として用いられるブロック共重合体において、前記一般式(I)で表される構成単位のユニット数mと、溶剤親和性のブロック部を構成する他の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01以上1以下の範囲内であることが好ましく、0.05以上0.7以下の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0075】
本発明の分散剤として用いられるブロック共重合体の中でも、前記一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位及び(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体、並びに、当該ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と有機酸化合物及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成した塩型ブロック共重合体の少なくとも1種を含有し、前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種の酸価が1~18mgKOH/gで、ガラス転移温度が30℃以上であることが、本発明で用いられる特定の開始剤との組み合わせにおいて耐溶剤性を向上し、且つ、現像残渣の発生が抑制される点から好ましい。
この場合のBブロックは、(メタ)アクリレート由来の構成単位を必須成分として含むが、国際公開第2016/104493号のBブロックと同様であってよい。
【0076】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、一般式(I)で表される構成単位を有するモノマーと共重合可能で、不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0077】
塩形成前のブロック共重合体中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05質量%以上4.5質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以上3.7質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果が発現され、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、上記特定の酸価となればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0078】
また、ブロック共重合体のBブロック中に、水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれることが、現像密着性を向上する点から好ましい。Bブロック中に、水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合には、更に現像速度も向上する。なお、ここでの水酸基は、脂肪族炭化水素に結合したアルコール性水酸基をいう。
【0079】
水酸基含有モノマー由来の構成単位としては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と水酸基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε-カプロラクトン1モル付加物、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
現像密着性が向上する点から、中でも、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0080】
塩形成前のブロック共重合体中、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより更に好ましく、4質量%以上であることが特に好ましい。上記下限値以上であると現像密着性が好ましいものとすることができる。同様に、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより更に好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。上記上限値以下であると他の有用なモノマーの導入比率を上げられる点から好ましいものとすることができる。なお、上記構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
【0081】
前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種の酸価は、現像残渣の抑制効果の点から、下限としては、1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種の酸価は、現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる点から、上限としては、18mgKOH/g以下であることが好ましく、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種の酸価は、国際公開第2016/104493号に記載の方法で求めることができる。
【0082】
前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種のガラス転移温度は、現像密着性の点から30℃以上であることが好ましく、中でも32℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。一方、精秤が容易など、使用時の操作性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
前記ブロック共重合体並びに塩型ブロック共重合体の少なくとも1種のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することにより求める。ガラス転移温度を示すピークが2つ以上見られる場合には、ピーク面積、すなわち、得られたチャートのベースラインから突出した部分の面積が最も大きいピークをガラス転移温度の代表値とする。
【0083】
前記ブロック共重合体の質量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000以上20000以下であることが好ましく、2000以上15000以下であることがより好ましく、更に3000以上12000以下であることがより好ましい。
ここで、質量平均分子量は(Mw)、前記と同様に測定することができる。
【0084】
また、(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計割合は、分散安定性及び耐溶剤性、開始剤との相溶性の点から、ブロック共重合体におけるBブロック中の全構成単位を100質量%とした時に、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。一方で、分散安定性、及び優れた耐溶剤性を同時に満たす点から、(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計割合は、当該Bブロック中の全構成単位を100質量%とした時に、100質量%であってもよい。Bブロック中に前記カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含む場合には、(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計割合は、Bブロック中の前記カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位とは異なる全構成単位を100質量%とした時に、100質量%であってもよい。
【0085】
また、塩形成前のブロック共重合体中、上記一般式(IV)で表される構成単位の含有割合は、色材分散性を向上する点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、40~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。なお、上記構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
【0086】
前記一般式(I)で表される構成単位を含む(メタ)アクリレート系共重合体は、アミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である共重合体が、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
アミン価が上記範囲内であることにより、粘度の経時安定性や耐熱性に優れると共に、アルカリ現像性や、溶剤再溶解性にも優れている。本発明において、前記一般式(I)で表される構成単位を含む(メタ)アクリレート系共重合体のアミン価は、中でも、アミン価が80mgKOH/g以上であることが好ましく、90mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、前記一般式(I)で表される構成単位を含む(メタ)アクリレート系共重合体のアミン価は、110mgKOH/g以下であることが好ましく、105mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS-K7237に定義された方法により測定することができる。当該方法により測定した場合には、分散剤中の有機酸化合物と塩形成しているアミノ基であっても、通常、当該有機酸化合物が解離するため、分散剤として用いられるブロック共重合体そのもののアミン価を測定することができる。
【0087】
分散剤における共重合体中の各構成単位の含有割合(モル%)は、製造時には原料の仕込み量から求めることができ、また、NMR等の分析装置を用いて測定することができる。また、分散剤の構造は、NMR、各種質量分析等を用いて測定することができる。また、分散剤を必要に応じて熱分解等により分解し、得られた分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF-SIMS等を用いて求めることができる。
【0088】
本発明において、分散剤としては、前記(メタ)アクリレート共重合体系分散剤の少なくとも1種を用い、その含有量は、用いる色材の種類、更に後述する感光性着色樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定される。
分散剤の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して2質量%~30質量%で配合するのが好ましく、特に3質量%~25質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2質量%~25質量%、より好ましくは3質量%~20質量%の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、後述する溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0089】
<光開始剤>
本発明の感光性着色樹脂組成物における光開始剤は、下記一般式(A)で表される化合物を含有する。下記一般式(A)で表される化合物である光開始剤を含有することから、前記特定の分散剤との組み合わせによって、開始剤が着色層中に均一に存在し易くなり、表面だけ硬化が進んで線幅シフトが大きくなるのが抑制され、着色層が均一に硬化することで塗膜の硬化性が向上することによって、感光性着色樹脂組成物の硬化物の耐溶剤性が良好になると考えられる。
【0090】
(下記一般式(A)で表される化合物)
本発明に用いられる下記一般式(A)で表されるオキシムエステル化合物には、オキシムの二重結合による幾何異性体が存在するが、これらを区別するものではない。即ち、本明細書において、下記一般式(A)で表わされる化合物、並びに後述する該化合物の好ましい形態である下記一般式(B)で表わされる化合物及びその例示化合物は、両方の混合物又はどちらか一方を表すものであり、異性体を示した構造に限定するものではない。
【0091】
【化9】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、COR
11、SR
11、CONR
12R
13又はCNを表し、
R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12及びR
13で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
21、R
22及びR
23で表される基の水素原子は、更に水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はカルボキシ基で置換されていてもよく、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22及びR
23で表される基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR
24-、-NR
24CO-、-NR
24COO-、-OCONR
24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-を酸素原子が隣り合わない条件で1~5個含んでいてもよく、
R
24は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、
R
11、R
12、R
13、R
21、R
22、R
23及びR
24で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、
R
3は、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環基を表し、R
3で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、また、R
3とR
7、及びR
3とR
8はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
3で表される基の水素原子は、更にR
21、OR
21、COR
21、SR
21、NR
22R
23、CONR
22R
23、-NR
22-OR
23、-NCOR
22-OCOR
23、NR
22COR
21、OCOR
21、COOR
21、SCOR
21、OCSR
21、COSR
21、CSOR
21、水酸基、ニトロ基、CN、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、
R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、SR
11、COR
14、CONR
15R
16、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
14、SCOR
11、OCSR
11、COSR
14、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、R
4とR
5、R
5とR
6、及びR
6とR
7はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよく、
R
14、R
15及びR
16は、水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基を表し、R
14、R
15及びR
16で表される基のアルキル部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、R
8は、R
11、OR
11、SR
11、COR
11、CONR
12R
13、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
11、SCOR
11、OCSR
11、COSR
11、CSOR
11、水酸基、CN又はハロゲン原子を表し、
kは、0又は1を表す。)
【0092】
上記一般式(A)中の、R3、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23及びR24で表される炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル等が挙げられる。
【0093】
上記一般式(A)中の、R3、R11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される炭素原子数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナンスレニル、上記アルキル基で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アンスリル等が挙げられる。
【0094】
上記一般式(A)中の、R3、R11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される炭素原子数7~30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、フェニルエチル等が挙げられる。
【0095】
上記一般式(A)中の、R3、R11、R12、R13、R21、R22、R23、及びR24で表される炭素原子数2~20の複素環基としては、例えば、ピリジル、ピリミジル、フリル、チエニル、テトラヒドロフリル、ジオキソラニル、ベンゾオキサゾール-2-イル、テトラヒドロピラニル、ピロリジル、イミダゾリジル、ピラゾリジル、チアゾリジル、イソチアゾリジル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、ピペリジル、ピペラジル、モルホリニル等の5~7員複素環が挙げられる。
上記一般式(A)中の、R4とR5、R5とR6及びR6とR7並びにR3とR7及びR3とR8が一緒になって形成し得る環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5~7員環が好ましく挙げられる。
【0096】
また、上記一般式(A)中の、R4、R5、R6、R7及びR8で表されるハロゲン原子、並びに上記一般式(A)中の、R3、R11、R12、R13、R21、R22及びR23を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0097】
上記一般式(A)中の、R11、R12、R13、R21、R22及びR23で表される基のアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24CO-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-を酸素原子が隣合わない条件で1~5個含んでいてもよく、この時含まれる2価の基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して含まれ得る基の場合は2個以上連続して含まれていてもよい。
【0098】
また、上記一般式(A)中の、R11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される基のアルキル(アルキレン)部分は、分岐側鎖があってもよく、環状アルキルであってもよい。
上記一般式(A)で表される化合物の中でも、R3が縮合していてもよい芳香族環であるもの、あるいは下記一般式(B)で表される化合物は、感度が高く、製造が容易であるため好ましい。
【0099】
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8及びkは、上記一般式(I)と同じであり、R
31、R
32、R
33、R
34及びR
35は、それぞれ独立に、R
11、OR
11、SR
11、COR
11、CONR
15R
16、NR
12COR
11、OCOR
11、COOR
14、SCOR
11、OCSR
11、COSR
14、CSOR
11、水酸基、ニトロ基、CN又はハロゲン原子を表し、R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34及びR
34とR
35はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
【0100】
R31とR32、R32とR33、R33とR34及びR34とR35が一緒になって形成する環の例としては、R4とR5、R5とR6及びR6とR7並びにR3とR7及びR3とR8が一緒になって形成し得る環の例として上記で挙げたものと同様の環が挙げられる。
【0101】
上記一般式(A)及び(B)において、R1として炭素原子数1~12のアルキル基又は炭素原子数7~15のアリールアルキル基、R11が炭素原子数6~12のアリール基、炭素原子数1~8のアルキル基であるものが、溶媒溶解性が高いので好ましく、R2としてメチル基、エチル基又はフェニル基であるものが反応性が高いので好ましく、R4~R7として水素原子又はシアノ基、特に水素原子であるものが合成が容易なので好ましく、R8として水素原子であるものが合成が容易なので好ましく、kは1であるのが、感度が高いので好ましく、上記一般式(B)において、R31~R35のうち少なくとも1つがニトロ基、CN、ハロゲン原子、COR11であり、R11が炭素原子数6~12のアリール基、炭素原子数1~8のアルキル基であるものが感度が高いので好ましく、R31~R35のうち少なくとも1つがニトロ基、CN又はハロゲン原子であるものがより好ましく、R33がニトロ基、CN又はハロゲン原子であるものが特に好ましい。
【0102】
上記一般式(A)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。また、国際公開2015/152153号公報に記載されている、化合物No.1~No.212が挙げられる。
【0103】
【0104】
上記一般式(A)で表される化合物は、例えば、国際公開2015/152153号公報を参照し、使用する材料に応じて溶剤、反応温度、反応時間、精製方法等を適宜選択することにより、合成できる。また、市販品を適宜入手して用いても良い。
【0105】
(その他の光開始剤)
本発明の感光性着色樹脂組成物における光開始剤は、前記一般式(A)で表されるオキシムエステル系光開始剤を含有するが、感度をより良好に調整する点から、更に前記一般式(A)で表される化合物とは異なる光開始剤を含有してもよい。なお、本発明の感光性着色樹脂組成物に用いられるその他の光開始剤には、光重合開始剤の他に、連鎖移動剤が含まれる。
中でも、本発明の感光性着色樹脂組成物における光開始剤は、前記一般式(A)で表される化合物の他に、更に、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが、着色層のパターニング時に、同時に着色層に所望の微小孔を形成する際に、微小孔内の現像残渣が抑制され、微小孔の断面形状が良好になる点から好ましい。すなわち、着色層形成のため、より高感度な光開始剤を使用する場合、ラジカル発生後、未露光部までラジカルが移動してしまい、露光部分の内部にある未露光部の形状を保ちつつ、かつ未露光部周辺部を寸法精度の悪化なく形成することは困難である。前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種は、塗膜の中間から深部を硬化させる性質を有し、塗膜表面のみの硬化を抑制し易い。
そのため、前記一般式(A)で表される化合物の他に、更に、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて含有すると、良好な感度を維持しつつ、塗膜の表面から深部までバランス良く硬化させることが可能となって、微小孔の断面形状の制御が可能になり、微小孔の断面形状のテーパー角(θ2)(
図6参照)が90°未満となり良好になる。
また、前記一般式(A)で表される化合物の他に、更に、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種を組み合わせて含有すると、未露光部の感度を良好に制御できるようになり、微小孔内の現像残渣抑制効果が高くなる。
【0106】
その他の光開始剤として、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤を用いる場合には、前述の微小孔の断面形状が良好になる、現像残渣が抑制される効果に加えて、更に、細線パターンを形成する際に、断面形状が良好になりやすい点から好ましい。
前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤としては、例えば、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特表2010-527339号公報、特表2010-527338号公報、特開2013-041153号公報等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。
当該前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤としては、感度が向上する点から、カルバゾール骨格、ジフェニルスルフィド骨格又はフルオレン骨格を有するものが好ましい。カルバゾール骨格又はジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤は、前記一般式(A)で表される化合物との組み合わせにより感度が向上しやすく、着色層の断面形状の点からも好ましい。
【0107】
カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、例えば、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(例えば、イルガキュアOXE02、BASF社製)、メタノン,[8-[[(アセチルオキシ)イミノ][2-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]-11-(2-エチルヘキシル)-11H-ベンゾ[a]カルバゾール-5-イル]-,(2,4,6-トリメチルフェニル)(例えば、イルガキュアOXE-03、BASF製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(1,3-ジオキソラン,4-(2-メトキシフェノキシ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ-2-メチルフェニル]-,o-アセチルオキシム、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(例えば、TR-PBG-304、常州強力電子新材料社製)、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[2-(2-ピリミジニルチオ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,2-シクロヘキシル-1-[2-(2-ピリミジニルオキシ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、エタノン,2-シクロヘキシル-1-[2-(2-ピリミジニルチオ)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、1-オクタノン,1-[4-[3-[1-[(アセチルオキシ)イミノ]エチル]-6-[4-[(4,6-ジメチル-2-ピリミジニル)チオ]-2-メチルベンゾイル]-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル]-,1-(o-アセチルオキシム)(例えば、EXTA-9、ユニオンケミカル製)、市販品としてはADEKA OPT-N-1919(ADEKA社製)、アデカアークルズNCI-831(ADEKA社製)等が挙げられる。
カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、1-プロパノン,3-シクロペンチル-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)(例えば、TR-PBG-304、常州強力電子新材料社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(例えば、イルガキュアOXE02、BASF社製)、または、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ-2-メチルフェニル]-,o-アセチルオキシムを用いることが、感度が高い点から好ましい。
【0108】
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、例えば、下記化学式(C-1)で表されるオキシムエステル化合物、1,2-オクタジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム](例えば、イルガキュアOXE01、BASF社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロペンチル-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム](例えば、TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロペンチル-1-[4-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニルチオ]フェニル]-,2-(o-アセチルオキシム]、1-ペンタノン,1-[4-[4-(2-ベンゾフラニルカルボニル)フェニルチオ]フェニル]-4-メチル,1-(o-アセチルオキシム)、市販品としてはTR-PBG-3057(常州強力電子新材料社製)、アデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、イルガキュアOXE04(BASF社製)等が挙げられる。
【0109】
【0110】
フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、国際公開2018/062105号公報に記載の一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物(下記一般式(D)で表されるオキシムエステル化合物)が挙げられる。下記一般式(D)で表されるオキシムエステル化合物は、国際公開2018/062105号公報に記載の一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と同様であって良い。
【0111】
【化13】
(一般式(D)において、R
a及びR
bはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R
cは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基であり、Zは、水素原子又は-(C=O)R
dであり、R
dは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、R
eは、炭素数1~10の炭化水素基である。)
【0112】
フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤としては、下記化合物(D-1)で表される化合物がより好適なものとして挙げられる。また、市販品としては、例えば、TR-PBG-365(常州強力電子新材料社製)を挙げることができる。
【0113】
【0114】
α-アミノケトン系光開始剤としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379EG、BASF社製)等が挙げられる。
α-アミノケトン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、及び、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノンが、微小孔内の現像残渣が抑制され、微小孔の断面形状を良好にする点からより好ましい。
【0115】
ビイミダゾール系光開始剤としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
ビイミダゾール系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、 2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールを用いることが、微小孔内の現像残渣が抑制され、微小孔の断面形状を良好にする点から好ましい。
【0116】
チオキサントン系光開始剤としては、例えば、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等が挙げられる。
チオキサントン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンを用いることが、微小孔内の現像残渣が抑制され、微小孔の断面形状を良好にする点から好ましい。
【0117】
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤は、熱による黄変が少ないという性質を有するため、輝度向上に適しているものの、一般的に感度が低く十分な硬化性が得られない場合がある。しかしながら、前記一般式(A)で表される化合物と組み合わせると全体的な塗膜硬化性を向上し、微小孔内の現像残渣が抑制され、微小孔の断面形状を良好にする点から好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、例えば、ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、3,4-ジメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-エチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドが、塗膜硬化性が向上する点から好ましい。
【0118】
メルカプト系連鎖移動剤は、反応の遅いラジカルからラジカルを受け取り、反応を早めるという性質を有し、全体的な塗膜硬化性を向上し、微小孔内の現像残渣が抑制され、微小孔の断面形状を良好にする点から好ましい。
メルカプト系連鎖移動剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾイミダゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、およびテトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
メルカプト系連鎖移動剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2-メルカプトベンゾチアゾールが、反応速度が向上する点から好ましい。
【0119】
本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の合計含有量は、本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上12.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時に溶出することを抑制し、耐溶剤性が良好になり、一方上記上限値以下であると、線幅シフトが抑制され、得られる着色層の黄変による輝度の低下を抑制できる。
なお、固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
また、本発明の感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の合計含有量は、アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマーと開始剤の合計に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上15質量%以下の範囲内である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時に溶出することを抑制し、耐溶剤性が良好になり、一方上記上限値以下であると、線幅シフトが抑制され、得られる着色層の黄変による輝度の低下を抑制できる。
【0120】
前記光開始剤が、前記一般式(A)で表される化合物と、前記その他の光開始剤とを含有する場合、光開始剤の全量に対して、前記一般式(A)で表される化合物の含有量は、線幅シフトの抑制、耐溶剤性の向上、微小孔内の現像残渣抑制、微小孔の断面形状の点から、10質量%以上98質量%以下であることが好ましく、20質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上95質量%以下であることが更に好ましく、線幅シフトの抑制、耐溶剤性の向上、微小孔内の現像残渣抑制、微小孔の断面形状の点から、50質量%以上90質量%以下であることがより更に好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。
【0121】
<色材>
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料、染料の造塩化合物等を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0122】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、185、及びC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265、269、272、291;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0123】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0124】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明に係る色材分散液を後述する感光性着色樹脂組成物として遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0125】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与したり、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料が挙げられる。
染料の造塩化合物としては、染料がカウンターイオンと塩を形成した化合物をいい、例えば、塩基性染料と酸との造塩化合物、酸性染料と塩基との造塩化合物が挙げられ、溶剤に可溶性の染料を公知のレーキ化(造塩化)手法を用いて、溶剤に不溶化したレーキ顔料も包含する。
本発明においては、染料及び染料の造塩化合物から選ばれる少なくとも一種を含む色材と、前記本発明の分散剤とを組み合わせて用いることにより当該色材の分散性や分散安定性を向上することができる。
【0126】
前記染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0127】
中でも、色材が、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料、クマリン染料、シアニン染料、及びこれらの染料の造塩化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、前記分散剤を用いることによる色材の昇華乃至析出を抑制する効果が高く、高輝度な着色層を形成可能である点から好ましい。また、前記色材としては、中でも、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料、銅フタロシアニン顔料、亜鉛フタロシアニン顔料、キノフタロン染料よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0128】
ジケトピロロピロール顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド254、255、264、272、291、及び下記一般式(i)で表されるジケトピロロピロール顔料が挙げられ、中でもC.I.ピグメントレッド254、272、291、及び下記一般式(i)においてR21及びR22がそれぞれ4-ブロモフェニル基であるジケトピロロピロール顔料から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0129】
【化15】
(一般式(i)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立に、4-クロロフェニル基、又は4-ブロモフェニル基である。)
【0130】
キノフタロン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
銅フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられ、中でも、C.I.ピグメントブルー15:6が好ましい。
亜鉛フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン58、59等が挙げられる。
キノフタロン染料としては、例えば、C.I.ディスパースイエロー54、64、67、134、149、160、C.I.ソルベントイエロー114、157等が挙げられ、中でも、C.I.ディスパースイエロー54が好ましい。
【0131】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明に係る感光性着色樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0132】
また、感光性着色樹脂組成物中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10~100nmの範囲内であることが好ましく、15~60nmの範囲内であることがより好ましい。
感光性着色樹脂組成物中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、感光性着色樹脂組成物に用いられている溶剤で、感光性着色樹脂組成物をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0133】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0134】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3質量%~65質量%、より好ましくは4質量%~60質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0μm~5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の合計含有量は、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15質量%~65質量%、より好ましくは25質量%~60質量%の割合で配合することが好ましい。
【0135】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
【0136】
アルカリ可溶性樹脂としては、従来公知のアルカリ可溶性樹脂を適宜選択して用いることができ、例えば、国際公開2016/104493号公報に記載のアルカリ可溶性樹脂を適宜選択して用いることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられ、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂が好適に用いられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0137】
感光性着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアルカリ現像性が得られ、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制できる。
【0138】
<光重合性化合物>
感光性着色樹脂組成物において用いられる光重合性化合物は、前記光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が好適に用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0139】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能(メタ)アクリレートが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0140】
感光性着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量は、特に制限はないが、感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して光重合性化合物は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。光重合性化合物の含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時の溶出を抑制でき、線幅シフトが抑制され、耐溶剤性が良好になり、また、光重合性化合物の含有量が上記上限値以下であるとアルカリ現像性が十分である。
感光性着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量と前記光開始剤との含有割合は、線幅シフトが抑制され、耐溶剤性が良好になる点、更には、現像残渣の抑制効果、微小孔の断面形状が向上する点から、上記光重合性化合物100質量部に対して、前記光開始剤の合計含有割合が5質量部以上であることが好ましく、更に10質量部以上であることが好ましく、40質量部以下であることが好ましく、更に30質量部以下であることが好ましい。
【0141】
<溶剤>
本発明に用いられる溶剤としては、感光性着色樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0142】
本発明に係る感光性着色樹脂組成物において、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含む感光性着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55質量%~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65質量%~88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0143】
<その他の成分>
本発明の感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0144】
本発明の感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含むものであることが、線幅シフト量の抑制の点から好ましい。本発明の感光性着色樹脂組成物は、前記一般式(A)で表される化合物と組み合わせて酸化防止剤を含むことにより、硬化膜を形成する際に硬化性を損なうことなく過度なラジカル連鎖反応を制御できるため、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する。また、耐熱性を向上することができ、露光及びポストベーク後の輝度低下を抑制できるため輝度を向上することができる。
本発明に用いられる酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点、及び耐熱性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。国際公開第2014/021023号に記載されているような潜在性酸化防止剤であっても良い。
【0145】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0146】
酸化防止剤の配合量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、酸化防止剤が0.1質量部~10.0質量部であることが好ましく、0.5質量部~5.0質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点、及び耐熱性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0147】
また、酸化防止剤の配合量としては、前記一般式(A)で表される化合物を含む前記オキシムエステル系光開始剤の合計量100質量部に対して、酸化防止剤が1質量部~250質量部であることが好ましく、3質量部~80質量部であることがより好ましく、5質量部~45質量部であることがより更に好ましい。上記範囲内であれば、上記組み合わせの効果に優れている。
【0148】
またシランカップリング剤としては、例えばKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-903、KBE-903、KBM573、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-303、KBM-802、KBM-803、KBE-9007、X-12-967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。中でもSiN基板の密着性の点からメタクリル基、アクリル基を有するKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103が好ましい。
【0149】
シランカップリング剤の含有量としては、感光性着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、シランカップリング剤が0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上、上記上限値以下であれば、基板密着性に優れている。
【0150】
<感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明の感光性着色樹脂組成物の製造方法は、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤と、所望により用いられる各種添加成分とを含有し、色材が分散剤により溶剤中に均一に分散されうる方法であることがコントラストを向上する点から好ましく、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該樹脂組成物の調製方法としては、例えば、(1)まず溶剤中に、色材と、分散剤とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を混合する方法;(2)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し混合する方法;(3)溶剤中に、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、色材を加えて分散する方法;(4)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、更にアルカリ可溶性樹脂と、溶剤と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を添加し、混合する方法;などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(1)及び(4)の方法が、色材の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。
【0151】
色材分散液を調製する方法は、従来公知の分散方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、(1)予め、分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで必要に応じて有機酸化合物を混合して分散剤が有するアミノ基と有機酸化合物との塩形成させる。これを色材と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(2)分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで、色材及び必要に応じて有機酸化合物と、更に必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(3)分散剤を溶剤に混合、攪拌し、分散剤溶液を調製し、次いで、色材及び必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散液としたのちに、必要に応じて有機酸化合物を添加する方法などが挙げられる。
【0152】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm~2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10mm~1.0mmである。
【0153】
<用途>
本発明に係る感光性着色樹脂組成物は、線幅シフト量を抑えつつ、低温加熱処理でも耐溶剤性が良好であることから、カラーフィルタ用途に好適に用いることができ、中でも有機EL素子等、耐熱性が低い素子が形成された基板上に直接カラーフィルタを形成する用途等に好適に用いることができる。
【0154】
III.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である。
【0155】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0156】
<着色層>
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係る感光性着色樹脂組成物の硬化物である着色層である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1~5μmの範囲であることが好ましい。
【0157】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明の感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0158】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0159】
<遮光部>
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0160】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2~0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5~2μm程度で設定される。
【0161】
<基板>
基板としては、後述する透明基板、シリコン基板、及び、透明基板又はシリコン基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm~1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0162】
IV.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0163】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置が挙げられる。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0164】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0165】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0166】
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有する有機発光表示装置が挙げられる。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0167】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0168】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
塩形成前の共重合体の質量平均分子量(Mw)は、前述の本発明の明細書に記載した測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0169】
(合成例1:ブロック共重合体1の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.75質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム6.1質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.4質量部、イソ酪酸メチル1.2質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)9質量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)13.4質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)7.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)47.5質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)22.6質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。ヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体を得た。(アミン価 95mgKOH/g、酸価 0mgKOH/g)重量平均分子量Mwは7600であった。
【0170】
(合成例2:ブロック共重合体2の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1-エトキシエチル(EEMA)2.2質量部、メタクリル酸2-(トリメチルシリルオキシ)エチル(TMSMA) 29.1質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)12.8質量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)13.7質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)17.5質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)26.7質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とし、TMSMA由来の構成単位を脱保護してメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体2(アミン価 95mgKOH/g、酸価 8mgKOH/g、Tg38℃)を得た。重量平均分子量Mwは7730であった。
【0171】
(合成例3:塩型ブロック共重合体3の合成)
合成例1と同様にして、ブロック共重合体1を合成した。
得られたブロック共重合体1の50質量部を、PGMEA102質量部に溶解した。そこへ塩化ベンジル3.2質量部を加え、90℃で12時間反応させて、塩型ブロック共重合体3のPGMEA溶液(固形分35%)を得た。
【0172】
(合成例4:塩型ブロック共重合体4の合成)
合成例2と同様にして、ブロック共重合体2を合成した。
得られたブロック共重合体2の50質量部を、PGMEA102質量部に溶解した。そこへ塩化ベンジル3.2質量部を加え、90℃で12時間反応させて、塩型ブロック共重合体4のPGMEA溶液(固形分35%)を得た。
【0173】
(合成例5:グラフト共重合体5の合成)
(1)マクロモノマーAの製造
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)70.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。一般式(III)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 1005 MA W、一般式(III)中のR
44はCH3、A3はCOO、R
45はエチレン基、R
46はCH3、m=22)2.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)98.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74質量部、ジラウリン酸ジオクチルすず0.125g、p-メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA30質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーAの50%溶液を得た。得られたマクロモノマーAを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N-メチルピロリドン、0.01モル/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)4000、分子量分布(Mw/Mn)1.6であった。
【0174】
(2)グラフト共重合体5の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA63.1質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。前記マクロモノマーA溶液141質量部(有効固形分70.5質量部)、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMMA)29.5質量部、n-ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA49.4質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA6.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体Aの35.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体5は、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)10500であった。なおアミン価は105mgKOH/gであった。
【0175】
(合成例6:グラフト共重合体6の合成)
(1)マクロモノマーBの製造
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)70.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。一般式(III)で表される構成単位を誘導する、PEG鎖を有するモノマー(Evonik製、商品名:VISIOMER MPEG 1005 MA W、一般式(III)中のR
44はCH3、A3はCOO、R
45はエチレン基、R
46はCH3、m=22)6.0質量部、トリエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート(東京化成工業製、m=3)69.0質量部、メタクリル酸メチル(MMA)25.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74質量部、ジラウリン酸ジオクチルすず0.125g、p-メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA30質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーBの50%溶液を得た。得られたマクロモノマーBを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N-メチルピロリドン、0.01モル/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)5800、分子量分布(Mw/Mn)1.6であった。
【0176】
(2)グラフト共重合体6の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA63.1質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。前記マクロモノマーB溶液141質量部(有効固形分70.5質量部)、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMMA)29.5質量部、n-ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA49.4質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA6.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体6の35.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体6は、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)10000であった。なおアミン価は105mgKOH/gであった。
【0177】
(合成例7:グラフト共重合体7の合成)
(1)マクロモノマーCの製造
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA30.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。MMA25.0質量部、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(商品名;プラクセルFM5、株式会社ダイセル製、カプロラクトン鎖繰り返し数n=5)(PCL-FM5)75.0質量部、メルカプトプロピオン酸7.0質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。冷却後、この反応溶液をテトラヒドロフラン(THF)200質量部で希釈し、ヘキサン3000質量部で再沈澱することで、白色粉末106.0質量部を得た。次に、この白色粉末50.0質量部に、PGMEA50.0質量部、グリシジルメタクリレート(GMA)3.7質量部、N,N-ジメチルドデシルアミン0.15質量部及びp-メトキシフェノール0.1質量部を加え、空気バブリングを行いながら110℃にて、24時間攪拌した。冷却後、この反応溶液を、ヘキサン3000質量部で再沈澱することで、マクロモノマーCを52.0質量部得た。
得られたマクロモノマーCの重量平均分子量(Mw)は6300、分子量分布(Mw/Mn)1.6であった。
【0178】
(2)グラフト共重合体7の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA63.1質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。前記マクロモノマーCをPGMEAに溶解させた溶液141質量部(有効固形分70.5質量部)、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMMA)29.5質量部、n-ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA49.4質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA6.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体7の35.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体7は、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)13000であった。なおアミン価は105mgKOH/gであった。
【0179】
(合成例8:塩型グラフト共重合体8の合成)
合成例5と同様にして、グラフト共重合体5を合成した。
得られたグラフト共重合体5の50質量部を、PGMEA102質量部に溶解した。そこへ塩化ベンジル3.2質量部を加え、90℃で12時間反応させて、塩型ブロック共重合体8のPGMEA溶液(固形分35%)を得た。
【0180】
(合成例9:塩型グラフト共重合体9の合成)
合成例6と同様にして、グラフト共重合体6を合成した。
得られたグラフト共重合体6の50質量部を、PGMEA102質量部に溶解した。そこへ塩化ベンジル3.2質量部を加え、90℃で12時間反応させて、塩型ブロック共重合体9のPGMEA溶液(固形分35%)を得た。
【0181】
(合成例10:塩型グラフト共重合体10の合成)
合成例7と同様にして、グラフト共重合体7を合成した。
得られたグラフト共重合体7の50質量部を、PGMEA102質量部に溶解した。そこへ塩化ベンジル3.2質量部を加え、90℃で12時間反応させて、塩型ブロック共重合体10のPGMEA溶液(固形分35%)を得た。
【0182】
(調製例1:アルカリ可溶性樹脂Aの調製)
重合槽に、PGMEAを300質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸2-フェノキシエチル(PhEMA)90質量部、MMA54質量部、メタクリル酸(MAA)36質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n-ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p-メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)20質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A溶液(重量平均分子量(Mw)8500、酸価75mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0183】
(製造例1:色材分散液R(1)の製造)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA64.9質量部、調製例1のアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)13.5質量部、合成例1のブロック共重合体1のPGMEA溶液(固形分35質量%)9.2質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.39質量部を加え、室温で30分攪拌した。
そこへ、C.I.ピグメントレッド177(PR177)を9.6質量部、C.I.ピグメントレッド254(PR254)を2.4質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、色材分散液R(1)を得た。なお、ブロック共重合体1は、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型ブロック共重合体1となっている。
【0184】
(製造例2:色材分散液R(2)の製造)
製造例1の色材分散液R(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1を、合成例2のブロック共重合体2に変更した以外は、製造例1の色材分散液R(1)と同様にして、色材分散液R(2)を得た。なお、色材分散液R(2)においてブロック共重合体2は、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型ブロック共重合体2となっている。
【0185】
(製造例3:色材分散液R(3)の製造)
製造例1の色材分散液R(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1を、合成例5のグラフト共重合体5に変更した以外は、製造例1の色材分散液R(1)と同様にして、色材分散液R(3)を得た。なお、色材分散液R(3)においてグラフト共重合体5は、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型グラフト共重合体5となっている。
【0186】
(製造例4:色材分散液R(4)の製造)
製造例1の色材分散液R(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1を、合成例6のグラフト共重合体6に変更した以外は、製造例1の色材分散液R(1)と同様にして、色材分散液R(4)を得た。なお、色材分散液R(4)においてグラフト共重合体6は、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型グラフト共重合体6となっている。
【0187】
(製造例5:色材分散液R(5)の製造)
製造例1の色材分散液R(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1を、合成例7のグラフト共重合体7に変更した以外は、製造例1の色材分散液R(1)と同様にして、色材分散液R(5)を得た。なお、色材分散液R(5)においてグラフト共重合体7は、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型グラフト共重合体7となっている。
【0188】
(実施例1:感光性着色樹脂組成物R-1の製造)
製造例1で得られた色材分散液R(1)を35.7質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)を3.52質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-305、東亞合成(株)社製)を5.64質量部、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を0.45質量部(アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマーと開始剤の合計に対して6質量%)、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR-08MH、DIC(株)製)を0.03質量部、PGMEAを54.66質量部加え、感光性着色樹脂組成物R-1を得た。
【0189】
(実施例2~8:感光性着色樹脂組成物R-2~R-8の製造)
実施例1において、表1に示したように開始剤の種類と量を変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-2~R-8を得た。
【0190】
(実施例9~12:感光性着色樹脂組成物R-9~R-12の製造)
実施例1において、表1に示したように、色材分散液R(1)を、色材分散液R(2)、R(3)、R(4)、又はR(5)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-9~R-12を得た。
【0191】
(実施例13:感光性着色樹脂組成物R-13の製造)
製造例1で得られた色材分散液R(1)を35.7質量部、調製例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を3.49質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM-305、東亞合成(株)社製)を5.58質量部、化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を0.45質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR-08MH、DIC(株)製)を0.03質量部、酸化防止剤Irganox1010を0.07質量部(アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマーと開始剤の合計に対して1.0質量%)、PGMEAを54.68質量部加え、感光性着色樹脂組成物R-13を得た。
【0192】
(製造例6:色材分散液G(1)の製造)
製造例1の色材分散液R(1)の製造において、C.I.ピグメントレッド177(PR177)9.6質量部と、C.I.ピグメントレッド254(PR254)2.4質量部の代わりに、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)8.4質量部と、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)3.6質量部に変更した以外は、製造例1の色材分散液R(1)と同様にして、色材分散液G(1)を得た。なお、色材分散液G(1)においてブロック共重合体1は、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型ブロック共重合体1となっている。
【0193】
(製造例7~10:色材分散液G(2)~G(5)の製造)
製造例6の色材分散液G(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1をそれぞれ、合成例2のブロック共重合体2、合成例5のグラフト共重合体5、合成例6のグラフト共重合体6、又は、合成例7のグラフト共重合体7に変更した以外は、製造例6の色材分散液G(1)と同様にして、色材分散液G(2)、G(3)、G(4)又はG(5)を得た。
なお、色材分散液G(2)~G(5)においてブロック共重合体2、グラフト共重合体5、6、及び7はそれぞれ、フェニルホスホン酸によって塩形成され、塩型ブロック共重合体2、塩型グラフト共重合体5、6、及び7となっている。
【0194】
(実施例14:感光性着色樹脂組成物G-1の製造)
実施例1において、製造例1で得られた色材分散液R(1)を、製造例6で得られた色材分散液G(1)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-1を得た。
【0195】
(実施例15~21:感光性着色樹脂組成物G-2~G-8の製造)
実施例14において、表2に示したように開始剤の種類と量を変更した以外は、感光性着色樹脂組成物G-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-2~G-8を得た。
【0196】
(実施例22~25:感光性着色樹脂組成物G-9~G-12の製造)
実施例14において、表2に示したように、色材分散液G(1)を、色材分散液G(2)、G(3)、G(4)、又はG(5)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物G-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-9~G-12を得た。
【0197】
(実施例26:感光性着色樹脂組成物G-13の製造)
実施例13において、製造例1で得られた色材分散液R(1)を、製造例6で得られた色材分散液G(1)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-13を得た。
【0198】
(製造例11:色材分散液B(1)の製造)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA64.9質量部、調製例1のアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)13.5質量部、合成例3の塩型ブロック共重合体3のPGMEA溶液(固形分35質量%)9.2質量部を入れ攪拌した。
そこへ、C.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)を9.6質量部、C.I.ピグメントバイオレット23(PV23)を2.4質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、色材分散液B(1)を得た。
【0199】
(製造例12~15:色材分散液B(2)~B(5)の製造)
製造例11の色材分散液B(1)の製造において、合成例3の塩型ブロック共重合体3のPGMEA溶液をそれぞれ、合成例4の塩型ブロック共重合体4のPGMEA溶液、合成例8の塩型グラフト共重合体8のPGMEA溶液、合成例9の塩型グラフト共重合体9のPGMEA溶液、又は、合成例10の塩型グラフト共重合体10のPGMEA溶液に変更した以外は、製造例11の色材分散液B(1)と同様にして、色材分散液B(2)、B(3)、B(4)又はB(5)を得た。
【0200】
(実施例27:感光性着色樹脂組成物B-1の製造)
実施例1において、製造例1で得られた色材分散液R(1)を、製造例11で得られた色材分散液B(1)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-1を得た。
【0201】
(実施例28~34:感光性着色樹脂組成物B-2~B-8の製造)
実施例27において、表3に示したように開始剤の種類と量を変更した以外は、感光性着色樹脂組成物B-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-2~B-8を得た。
【0202】
(実施例35~38:感光性着色樹脂組成物B-9~B-12の製造)
実施例27において、表3に示したように、色材分散液B(1)を、色材分散液B(2)、B(3)、B(4)、又はB(5)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物B-1と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-9~B-12を得た。
【0203】
(実施例39:感光性着色樹脂組成物B-13の製造)
実施例1において、製造例1で得られた色材分散液R(1)を、製造例11で得られた色材分散液B(1)に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-13を得た。
【0204】
(実施例40~52:感光性着色樹脂組成物R-14~R-26の製造)
実施例1~13においてそれぞれ、表4に示したように、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を、前記化学式(A-2)で表されるオキシムエステル化合物に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1~R-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-14~R-26を得た。
【0205】
(実施例53~65:感光性着色樹脂組成物G-14~G-26の製造)
実施例14~26においてそれぞれ、表5に示したように、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を、前記化学式(A-2)で表されるオキシムエステル化合物に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物G-1~G-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物G-14~G-26を得た。
【0206】
(実施例66~78:感光性着色樹脂組成物B-14~B-26の製造)
実施例27~39においてそれぞれ、表6に示したように、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を、前記化学式(A-2)で表されるオキシムエステル化合物に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物B-1~B-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物B-14~B-26を得た。
【0207】
(実施例79~84:感光性着色樹脂組成物R-27~R-32の製造)
実施例1及び9~13においてそれぞれ、表7に示したように、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を、前記化学式(A-3)で表されるオキシムエステル化合物に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1及びR-9~R-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-27~R-32を得た。
【0208】
(実施例85~90:感光性着色樹脂組成物R-33~R-38の製造)
実施例1及び9~13においてそれぞれ、表7に示したように、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を、前記化学式(A-4)で表されるオキシムエステル化合物に変更した以外は、感光性着色樹脂組成物R-1及びR-9~R-13と同様にして、感光性着色樹脂組成物R-33~R-38を得た。
【0209】
(比較例1~3:感光性着色樹脂組成物CR-1、CG-1及びCB-1の製造)
実施例1、実施例14、又は実施例27において、表7に示したように、前記化学式(A-1)で表されるオキシムエステル化合物を、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE02、BASF社製)に変更した以外は、実施例1、実施例14、又は実施例27と同様にして、感光性着色樹脂組成物CR-1、CG-1及びCB-1を製造した。
【0210】
(比較製造例1及び2:色材分散液CR(1)及びCR(2)の製造)
製造例1の色材分散液R(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1をそれぞれ、表7に示すように、アジスパーPB821(PB821、味の素ファインテクノ(株)製,ポリエステル系分散剤、固形分30質量%)、又は、Disperbyk-161(BYK-161、ビックケミー製,ウレタン系分散剤、固形分30質量%)に変更し、固形分がブロック共重合体1と同じ質量部となるようにそれぞれ用い、フェニルホスホン酸は添加せず、分散液の固形分が製造例1と同じになるようにPGMEA量を調整した以外は、製造例1の色材分散液R(1)と同様にして、色材分散液CR(1)及びCR(2)を得た。
【0211】
(比較製造例3及び4:色材分散液CG(1)及びCG(2)の製造)
製造例6の色材分散液G(1)の製造において、合成例1のブロック共重合体1をそれぞれ、表7に示すように、アジスパーPB821(PB821、味の素ファインテクノ(株)製,ポリエステル系分散剤、固形分30質量%)、又は、Disperbyk-161(BYK-161、ビックケミー製,ウレタン系分散剤、固形分30質量%)に変更し、固形分がブロック共重合体1と同じ質量部となるようにそれぞれ用い、フェニルホスホン酸は添加せず、 分散液の固形分が製造例6と同じになるようにPGMEA量を調整した以外は、製造例6の色材分散液G(1)と同様にして、色材分散液CG(1)及びCG(2)を得た。
【0212】
(比較製造例5及び6:色材分散液CB(1)及びCB(2)の製造)
製造例11の色材分散液B(1)の製造において、合成例3の塩型ブロック共重合体3のPGMEA溶液(固形分35質量%)をそれぞれ、表7に示すように、アジスパーPB821(PB821、味の素ファインテクノ(株)製,ポリエステル系分散剤、固形分30質量%)、又は、Disperbyk-161(BYK-161、ビックケミー製,ウレタン系分散剤、固形分30質量%)に変更し、固形分がブロック共重合体1と同じ質量部となるようにそれぞれ用い、分散液の固形分が製造例11と同じになるようにPGMEA量を調整した以外は、製造例11の色材分散液B(1)と同様にして、色材分散液CB(1)及びCB(2)を得た。
【0213】
(比較例4~5:感光性着色樹脂組成物CR-2、CR-3の製造)
実施例1において、色材分散液R(1)を、それぞれ表7に示したように、色材分散液CR(1)、又はCR(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、感光性着色樹脂組成物CR-2又はCR-3を製造した。
【0214】
(比較例6~7:感光性着色樹脂組成物CG-2、CG-3の製造)
実施例14において、色材分散液G(1)を、それぞれ表7に示したように、色材分散液CG(1)、又はCG(2)に変更した以外は、実施例14と同様にして、感光性着色樹脂組成物CG-2又はCG-3を製造した。
【0215】
(比較例8~9:感光性着色樹脂組成物CB-2、CB-3の製造)
実施例27において、色材分散液B(1)を、それぞれ表7に示したように、色材分散液CB(1)、又はCB(2)に変更した以外は、実施例27と同様にして、感光性着色樹脂組成物CB-2又はCB-3を製造した。
【0216】
[評価方法]
各実施例及び各比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて硬化塗膜が厚さ3.0μmとなるように塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥しガラス基板上に塗膜を形成した。この塗膜に、開口寸法90μm×300μmの独立細線内の中央に20μm×20μmのクロムマスクを配置したパターンフォトマスク(クロムマスク)を介して、超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm2の紫外線で露光することにより、ガラス基板上に露光後塗膜を形成した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、微小孔を有する独立細線パターン状の塗膜を得た。その後、90℃のクリーンオーブンで25分間ポストベークすることにより、微小孔を有する独立細線パターン状の着色層を形成した。得られた着色層について下記評価を行った。
【0217】
<線幅シフト量評価>
露光時に使用したクロムマスクの開口幅90μmに当たる部分の着色層の細線パターンの幅を光学顕微鏡で5箇所測定し、線幅の平均値と目標とする線幅の差により、線幅シフト量を評価した。
(線幅シフト量評価基準)
A:目標とする線幅に対して差が1.5μm以内
B:目標とする線幅に対して差が1.5μm超過3.0μm以内
C:目標とする線幅に対して差が3.0μm超過4.0μm以内
D:目標とする線幅に対して差が4.0μm超過
評価結果がBであれば線幅シフト量は良好であり、評価結果がAであれば線幅シフト量に優れている。
【0218】
<耐溶剤性(耐PGME)評価>
得られた着色層の膜厚を測定した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に10分間浸漬した後、風乾し、再び膜厚を測定した。なお、膜厚測定には、触針式段差膜厚計「P-15Tencor」(Instruments製)を用いた。溶剤浸漬後膜厚/溶剤浸漬前膜厚を×100を、残膜率として算出した。
(耐溶剤性評価基準)
A:溶剤浸漬後の残膜率が98%以上
B:溶剤浸漬後の残膜率が96%以上98%未満
C:溶剤浸漬後の残膜率が94%以上96%未満
D:溶剤浸漬後の残膜率が94%未満
評価結果がBであれば耐溶剤性は良好であり、評価結果がAであれば耐溶剤性に優れている。
【0219】
<細線パターン状の着色層の断面形状評価>
得られた独立細線パターン状の着色層の厚み方向断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)島津製作所製、super scan model 220、倍率10000倍)により観察し、下記評価基準により、着色層の断面形状のテーパー角(θ1)(
図5参照)について評価した。
(パターン状着色層の断面形状の評価基準)
A:テーパー角(θ1)が15度以上70度未満
B:テーパー角(θ1)が70度以上90度未満
C:テーパー角(θ1)が90度以上100度未満
D:テーパー角(θ1)が100度以上
評価結果がBであれば着色層の断面形状は良好であり、評価結果がAであれば着色層の断面形状に優れている。
【0220】
<微小孔の断面形状>
前記微小孔の着色層の厚み方向断面形状を、走査型電子顕微鏡((株)島津製作所製、super scan model 220、倍率10000倍)により観察し、下記評価基準により、微小孔の断面形状のテーパー角(θ2)(
図6参照)について評価した。
(微小孔の断面形状の評価基準)
A: テーパー角(θ2)が15度以上70度未満
B:テーパー角(θ2)が70度以上90度未満
C:テーパー角(θ2)が90度以上100度未満
D:テーパー角(θ2)が100度以上
評価結果がBであれば微小孔の断面形状は良好であり、評価結果がAであれば微小孔の断面形状に優れている。
【0221】
<微小孔内の残渣>
前記微小孔を、走査型電子顕微鏡((株)島津製作所製、super scan model 220、倍率5000倍)により観察し、下記評価基準により、微小孔内の残渣について評価した。
(微小孔内の残渣の評価基準)
A:残渣が全く観察されない。
B:孔内の端部にのみ、わずかに残渣が観察される。
C:孔内全体にわたって、わずかに残渣が観察される
D:孔内全体にわたって、多くの残渣が観察される
評価結果がBであれば微小孔内の残渣は良好であり、評価結果がAであれば微小孔内の残渣に優れている。
【0222】
<現像残渣抑制評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、ガラス基板上に着色層を形成した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像させた後に純水で洗浄することで現像処理した。現像後の上記着色層の形成部を、目視により観察した後、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ社製、商品名トレシーMKクリーンクロス)で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。
(現像残渣抑制評価基準)
A:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
B:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
C:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
D:目視により現像残渣が確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
評価結果がBであれば現像残渣抑制効果は良好であり、評価結果がAであれば現像残渣抑制効果に優れている。
【0223】
<水染み抑制評価>
実施例及び比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、それぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」、厚み0.7mmで100mm×100mm)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.0μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて60℃で3分間乾燥し、フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて30mJ/cm2の紫外線を全面照射することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。次いで、0.05wt%カリウム(KOH)を現像液として60秒間シャワー現像させた後に純水で洗浄することで現像処理し、洗浄後の基板を10秒間回転させ水を遠心除去した直後に、下記のように純水の接触角を測定して水染みを評価した。
純水の接触角の測定は、前記水を遠心除去した直後の着色層表面に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測した。測定装置は、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定した。
(水染み抑制評価基準)
A:接触角70度以上
B:接触角50度以上70度未満
C:接触角30度以上50度未満
D:接触角30度未満
水染み抑制評価基準がA又はBであれば、実用上使用できるが、評価結果がAであればより効果が優れている。
【0224】
なお、表1~表7において、前記一般式(A)で表される化合物と、前記一般式(A)で表される化合物とは異なる、その他開始剤は、それぞれ以下のとおりである。
<前記一般式(A)で表される化合物>
・A-1:前記化学式(A-1)で表される化合物
・A-2:前記化学式(A-2)で表される化合物
・A-3:前記化学式(A-3)で表される化合物
・A-4:前記化学式(A-4)で表される化合物
<その他開始剤>
・開始剤1:カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤、商品名アデカアークルズNCI-831、ADEKA社製
・開始剤2:α-アミノケトン系光開始剤、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(商品名イルガキュア369、BASF社製)
・開始剤3:α-アミノケトン系光開始剤、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名イルガキュア907、BASF社製)
・開始剤4: メルカプト系連鎖移動剤、2-メルカプトベンゾチアゾール(東京化成工業社製)
・開始剤5:ビイミダゾール系光開始剤、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール (黒金化成社製)
・開始剤6:チオキサントン系光開始剤、2,4-ジエチルチオキサントン(商品名DOUBLECURE DETX、Double BondChemical製)
・開始剤7:アシルフォスフィン系光開始剤、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名イルガキュア819、BASF社製)
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
[結果のまとめ]
光開始剤として、本発明で特定された一般式(A)で表される化合物を用いなかった比較例1~3の比較感光性着色樹脂組成物は、線幅シフト量が大きく、低温加熱処理による耐溶剤性が悪かった。
光開始剤として、本発明で特定された一般式(A)で表される化合物を用いても、分散剤としてポリエステル系分散剤やウレタン系分散剤を用いた比較例4~9の比較感光性着色樹脂組成物は、線幅シフト量が大きくなり、低温加熱処理による耐溶剤性が悪かった。
それに対して、光開始剤として、少なくとも一般式(A)で表される化合物を用い、分散剤として(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を組み合わせた実施例1~90の感光性着色樹脂組成物では、線幅シフト量を抑えつつ、低温加熱処理でも耐溶剤性が良好な着色層を形成可能であることが示された。
実施例の中では、光開始剤が、更に、前記一般式(A)で表される化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有すると、微小孔の断面形状が良好になり、微小孔内の残渣が抑制されることが示された。
また、分散剤として、酸価が1~18mgKOH/gで、ガラス転移温度が30℃以上である(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を用いると、前記一般式(A)で表される化合物との組み合わせにおいて耐溶剤性を向上し、且つ、現像残渣の発生が抑制されることが示された。
また、分散剤として、グラフト共重合体であって、グラフトポリマー鎖の構成単位に、一般式(III)で表される構成単位及び下記一般式(III’)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種の構成単位が含まれる(メタ)アクリレート共重合体系分散剤を用いると、前記一般式(A)で表される化合物との組み合わせにおいて耐溶剤性を向上することが示された。中でもグラフトポリマー鎖の構成単位に、前記一般式(III)で表される構成単位(但し、mは19以上80以下の数を表す)を含むと、水染み発生の抑制効果が向上することも示された。
更に、酸化防止剤を添加すると、線幅シフト量が良好になることも示された。
【符号の説明】
【0233】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
5 微小孔
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置