(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】記録計
(51)【国際特許分類】
G01D 9/00 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01D9/00 A
(21)【出願番号】P 2020074910
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】坂口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】氏家 克俊
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-161294(JP,A)
【文献】特開2004-028583(JP,A)
【文献】特開2008-197753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 9/00-9/42,15/00-15/34
G08C 13/00-25/04
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象の物理量の変化を示す測定データを経時的に記録する記録計において、
前記記録計の本体
に搭載
され、前記記録計に使用するセンサと紐付けされた製造番号の情報を記憶した外部通信媒体から前記センサの製造番号の情報を取得するとともに、近距離無線が可能で作業者が所持する外部通信媒体から前記記録計を操作する作業者を特定する情報を取得する近距離無線モジュールと、
前記近距離無線モジュールにて取得した情報に基づいて前記センサの製造番号と前記記録計を操作する作業者とを紐付けて保存する記憶手段と、を備えたことを特徴とする記録計。
【請求項2】
被測定対象の物理量の変化を示す測定データを経時的に記録する記録計において、
前記記録計の本体に搭載され、多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定情報を外部通信媒体から取得
する近距離無線モジュールと、
前記近距離無線モジュールが取得したバッチ処理に関する設定情報に基づいてバッチ処理の設定変更を制御する制御手段
と、を備えたことを特徴とす
る記録計。
【請求項3】
前記近距離無線モジュールは、近距離無線通信が可能で作業者が所持する外部通信媒体が前記記録計に接近したときに、前記外部通信媒体との近距離無線通信により当該外部通信媒体を所持する作業者を特定する情報を取得し、
前記近距離無線モジュールにて取得した情報が前記記録計の使用可能な作業者と判断したときにログインを許可する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の記録計。
【請求項4】
前記近距離無線モジュールは、近距離無線通信が可能で作業者が所持する外部通信媒体が前記記録計に接近したときに、前記外部通信媒体との近距離無線通信により当該外部通信媒体を所持する作業者を特定する情報を取得し、
前記制御手段は、前記近距離無線モジュールにて取得した情報が前記記録計の使用可能な作業者と判断したときにログインを許可することを特徴とする請求項2に記載の記録計。
【請求項5】
前記近距離無線モジュールによる携帯型外部通信媒体との間の近距離無線通信にて前記携帯型外部通信媒体を正常認証したときに、前記近距離無線モジュールを介して前記携帯型外部通信媒体との間でデータ通信を行い、該データ通信の終了時に前記携帯型外部通信媒体の認証状態を解除する制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の記録計。
【請求項6】
前記制御手段は、前記近距離無線モジュールによる携帯型外部通信媒体との間の近距離無線通信にて前記携帯型外部通信媒体を正常認証したときに、前記近距離無線モジュールを介して前記携帯型外部通信媒体との間でデータ通信を行い、該データ通信の終了時に前記携帯型外部通信媒体の認証状態を解除することを特徴とする請求項2に記載の記録計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象の温度、電流、電圧などの物理量の変化を示すデータに基づく波形を記録する記録計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録計は、被測定対象の温度、電流、電圧などの物理量の変化を示すデータに基づく波形を記録するものとして従来より知られている。下記特許文献1には、被測定対象の温度、電流、電圧又は歪み等の物理量の変化を示す波形などを長尺状の記録紙に印字するアナログ式と、物理量の変化を示すデータをメモリに記憶して記憶したデータに基づく波形が表示装置の画面上に表示するディジタル方式の両方式を用いたハイブリッド型の記録計について開示されている。この記録計によれば、測定データがチャート紙にリアルタイムに印字されることでデータ改竄が防止できるというアナログ式の利点と、測定結果の最大値又は最小値などを示す特定のデータを容易に探索して表示画面上に表示が可能なディジタル方式の利点の両方を享受することができる。
【0003】
ところで、この種の従来の記録計において、例えば製造番号や作業者と関連付けた記録の保管を行う場合には、手書き入力やテキスト入力の機能を使い、キーやタッチ操作にて製造番号や作業者氏名を入力していた。
【0004】
また、従来の記録計において、多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定変更を行う場合には、キーやタッチ操作により、設定変更の都度必要な設定項目を変更していた。
【0005】
さらに、従来の記録計におけるログイン機能では、キーやタッチ操作にてIDやパスワードを入力していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の記録計では、上述した製造番号や作業者と関連付けた記録の保管、バッチ処理に関する設定変更、ログイン機能を実行するためには、キーやタッチ操作が必要不可欠であり、手間を要するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、キーやタッチ操作の手間を省いて所望の情報を取得することができる記録計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された記録計は、被測定対象の物理量の変化を示す測定データを経時的に記録する記録計において、
前記記録計の本体に搭載され、前記記録計に使用するセンサと紐付けされた製造番号の情報を記憶した外部通信媒体から前記センサの製造番号の情報を取得するとともに、近距離無線が可能で作業者が所持する外部通信媒体から前記記録計を操作する作業者を特定する情報を取得する近距離無線モジュールと、
前記近距離無線モジュールにて取得した情報に基づいて前記センサの製造番号と前記記録計を操作する作業者とを紐付けて保存する記憶手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載された記録計は、被測定対象の物理量の変化を示す測定データを経時的に記録する記録計において、
前記記録計の本体に搭載され、多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定情報を外部通信媒体から取得する近距離無線モジュールと、
前記近距離無線モジュールが取得したバッチ処理に関する設定情報に基づいてバッチ処理の設定変更を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載された記録計は、請求項1の記録計において、
前記近距離無線モジュールは、近距離無線通信が可能で作業者が所持する外部通信媒体が前記記録計に接近したときに、前記外部通信媒体との近距離無線通信により当該外部通信媒体を所持する作業者を特定する情報を取得し、
前記近距離無線モジュールにて取得した情報が前記記録計の使用可能な作業者と判断したときにログインを許可する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載された記録計は、請求項2の記録計において、
前記近距離無線モジュールは、近距離無線通信が可能で作業者が所持する外部通信媒体が前記記録計に接近したときに、前記外部通信媒体との近距離無線通信により当該外部通信媒体を所持する作業者を特定する情報を取得し、
前記制御手段は、前記近距離無線モジュールにて取得した情報が前記記録計の使用可能な作業者と判断したときにログインを許可することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に記載された記録計は、請求項1の記録計において、
前記近距離無線モジュールによる携帯型外部通信媒体との間の近距離無線通信にて前記携帯型外部通信媒体を正常認証したときに、前記近距離無線モジュールを介して前記携帯型外部通信媒体との間でデータ通信を行い、該データ通信の終了時に前記携帯型外部通信媒体の認証状態を解除する制御手段を備えたことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載された記録計は、請求項2の記録計において、
前記制御手段は、前記近距離無線モジュールによる携帯型外部通信媒体との間の近距離無線通信にて前記携帯型外部通信媒体を正常認証したときに、前記近距離無線モジュールを介して前記携帯型外部通信媒体との間でデータ通信を行い、該データ通信の終了時に前記携帯型外部通信媒体の認証状態を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の記録計のようなキーやタッチ操作の手間を省いて近距離無線モジュールが取得した情報に基づく各種制御(例えば記録計に使用するセンサの製造番号と記録計を操作する作業者とを紐付けた情報の記録保存、多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定変更、記録計を操作する作業員のログイン操作など)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る記録計のブロック構成図である。
【
図2】本発明に係る記録計の外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る記録計を含む製造システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る記録計と携帯型外部通信媒体との間でデータ通信を行うための処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本実施の形態の記録計は、被測定対象の測定データを経時的に記録するものである。具体的には、
図2に示すように、記録計1の本体1aに複数チャンネルの端子部2を備え、この複数チャンネルの端子部2に不図示のセンサ(例えば熱電対や測温抵抗体など)を接続し、各センサからの信号を取り込んで複数チャンネルの測定データとして記録し、この記録した測定データを表示画面に表示する。
【0018】
なお、被測定対象の測定データとは、被測定対象の物理量の変化を示すデータであり、例えば温度、電流、電圧などのデータを総称するものである。
【0019】
記録計1は、
図1に示すように、設定手段11、入出力手段12、近距離無線モジュール13、通信手段14、制御手段15、記憶手段16、表示手段17を備えている。
【0020】
設定手段11は、例えば記録計の本体の所定箇所(例えば本体の前面)に配置されてオペレータが手動操作する設定キーや操作キーの他、表示手段17の表示画面上のタッチキーなどで構成される。設定手段11は、例えば使用するセンサの種類(例えば熱電対の場合は、K熱電対、E熱電対、J熱電対、T熱電対)の設定、測定データの収録開始/停止、測定データの取り込み時間間隔である記録間隔の設定、警報を出力する上下限警報値の設定、表示手段17の表示画面に表示する測定データのチャンネル数の設定、各チャンネルの測定レンジを示すスケールの範囲の設定、各チャンネルの表示色の設定など、記録計を駆動する上で必要な各種設定を行う際に操作し、操作された各種設定信号を制御手段15に出力する。
【0021】
入出力手段12は、I/Oインターフェースであり、例えば熱電対や測温抵抗体などのセンサからの信号の他、設定信号や電圧信号などの各チャンネルへの各種入力信号を入力する。また、入出力手段12は、制御手段15の制御により、LANケーブルを介して不図示の外部装置に測定データを出力したり、入出力手段12を介して外部に警報信号を出力する。
【0022】
近距離無線モジュール13は、近距離無線通信(NFC:Near field communication)が可能なモジュールとして記録計1の本体1aに搭載され、外部通信媒体18との間の近距離無線通信により所望の情報を取得する。具体的に、近距離無線モジュール13は、記録計1に使用するセンサと紐付けされた製造番号の情報を記憶した外部通信媒体18(例えばセンサに事前に取り付けられるRFID(radio frequency identifier)タグなど)から近距離無線通信によりセンサの製造番号の情報を取得する。また、近距離無線モジュール13は、近距離無線が可能で作業者が所持する外部通信媒体18(例えば社員証など)から作業者を特定する情報(例えば氏名、性別、年齢、所属部署など)を取得したり、多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定情報を外部通信媒体18(例えばスマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末、ノートパソコン、NFCカードなど)から取得する。さらに、近距離無線モジュール13は、近距離無線通信が可能で作業者が所持する外部通信媒体18(例えばNFC内蔵の社員証など)が記録計1に接近したときに、外部通信媒体18との近距離無線通信により作業者を特定する情報を取得する。また、近距離無線モジュール13は、携帯型外部通信媒体19(例えばスマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末、ノートパソコン、NFCカードなど)との間で近距離無線通信を行い、各種データ(例えば識別コードの処理内容に基づく更新データや日報データなど)を送受信する。これら外部通信媒体18や携帯型外部通信媒体19から近距離無線モジュール13にて取得した情報は制御手段15に出力される。
【0023】
通信手段14は、制御手段15の制御により、外部機器(例えば
図3の記録計1の上位に接続される管理装置22や記録計1の下位に接続される調節計23A)との間で通信を行い、各種データ(例えば
図3の製造システム21における温度センサ27A,27B,27Cの測定値/設定値/出力値、電力制御器24A,24B,24Cの電圧値/電力値/電流値/抵抗値など)を送受信する。
【0024】
制御手段15は、例えば各部を統括制御するCPUなどのマイクロプロセッサで構成され、設定手段11にて設定された各種設定情報と記憶手段16に格納された各種処理プログラムに基づく各チャンネルの測定データの収録および処理として、例えば各チャンネルの入力信号を入出力手段12から取り込む制御、外部機器(
図3の管理装置22、調節計23A,23B,23C)に接続されるセンサ(例えば
図3の温度センサ27A,27B,27C)の測定値/設定値/出力値、
図3の電力制御器24A,24B,24Cの電圧値/電力値/電流値/抵抗値などの各種データや携帯型外部通信媒体19(例えばスマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末、ノートパソコン、NFCカードなど)との間の各種データの送受信制御、各チャンネルの入力信号を測定データとして記憶手段16に記憶する制御、表示手段17の表示画面に対する各チャンネルの測定データの表示制御などを行う。
【0025】
また、制御手段15は、近距離無線モジュール13が外部通信媒体18から取得した情報に基づいて認証処理を含む各種制御を行う。具体的に、制御手段15は、近距離無線モジュール13が外部通信媒体18から取得した情報として、記録計1に使用するセンサ(例えば
図3の温度センサ27A,27B,27C)の製造番号と記録計1を操作する作業者を特定する情報とを紐付けて記憶手段16に保存する。また、制御手段15は、近距離無線モジュール13が外部通信媒体18から取得した情報(多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定情報)に基づいてバッチ処理に関する設定変更を制御する。さらに、制御手段15は、外部通信媒体18から近距離無線モジュール13にて取得した情報(作業者を特定する情報)が記録計1の使用可能な作業者と判断したときにログインを許可する。また、制御手段15は、携帯型外部通信媒体19(例えばスマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末、ノートパソコン、NFCカードなど)の識別コードの認証処理、携帯型外部通信媒体19の識別コードを正常認証したときの通信プログラムの起動処理、携帯型外部通信媒体19との間のデータ通信、通信プログラムの終了処理、データ加工処理などを制御する。
【0026】
記憶手段16は、例えばROM、RAMなどで構成され、データ収録の処理に関する各種処理プログラム、正常認証した携帯型外部通信媒体19との間でデータ通信を行うための通信プログラムなどを記憶する。また、記憶手段16には、入出力手段12から入力される各チャンネルの入力信号を測定データとして記憶する。さらに、記憶手段16は、近距離無線モジュール13が取得した記録計1に使用するセンサ(例えば
図3の温度センサ27A,27B,27C)の製造番号と記録計1を操作する作業者を特定する情報とを紐付けして記憶する。また、記憶手段16は、近距離無線モジュール13が取得したバッチ処理に関する設定情報を記憶する。なお、記憶手段16は、各チャンネルの測定データを記憶する媒体として、記録計1の本体1aに着脱可能なメモリカードや外部記憶装置などの外部記憶媒体を含む。
【0027】
表示手段17は、例えば液晶表示器、エレクトロルミネセンス(EL:Electroluminescence )などの表示器や設定手段11を兼ねたタッチパネルで構成され、制御手段15にて表示内容が制御される。具体的には、入出力手段12を介して取り込んだ各チャンネルの測定データのトレンド表示、近距離無線モジュール13や通信手段14を介して受信した各種データの表示の他、各種設定画面などの表示を行う。
【0028】
ここで、
図3は上述した記録計1を含む製造システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図3の製造システム21の記録計1には、管理装置22(外部機器)が通信手段14を介して記録計1と通信可能に上位に接続され、調節計23A(外部機器)が通信手段14を介して記録計1と通信可能に下位に接続される。また、調節計23Aの下位には調節計23Bが接続され、調節計23Bの下位には調節計23Cが接続される。すなわち、
図3の製造システム21では、1台の記録計1に対し、3組の調節計23A,23B,23Cが外部機器としてディジーチェーン接続されている。そして、調節計23Aには、電力制御器24Aを介して製造装置25内のヒータ26Aが接続されるとともに、製造装置25内の温度センサ27Aが接続される。同様に、調節計23Bには、電力制御器24Bを介して製造装置25内のヒータ26Bが接続されるとともに、製造装置25内の温度センサ27Bが接続され、調節計23Cには、電力制御器24Cを介して製造装置25内のヒータ26Cが接続されるとともに、製造装置25内の温度センサ27Cが接続される。
【0029】
そして、上述した製造システム21によれば、記録計1が外部機器としての管理装置22や調節計23Aとの間で通信手段14を介して通信を行い、設定値や測定値を随時確認したり、設定をしたりすることができる。また、
図3の製造システム21のように、設定する装置やパラメータが増えてくると、外部通信媒体18(スマホ、タブレットなど)でパラメータを設定し、記録計1の通信手段14を介して多種類の装置へデータを転送できることのメリットを高めることができる。また、作業者の熟練度や役割に応じてアクセスできる事項を限定した設定を複数用意することで、誤った設定が行われることを防止することができる。さらに、NFC機能を画面の背後に内蔵した表示装置もあり、部品を装置前面に配置する場合でも場所を取らないため、操作キーやメモリカードの挿入スロットを無くし、表示画面を大きくした記録計が作りやすくなる。
【0030】
なお、
図3の製造システム21では、3組の調節計23A,23B,23Cを備えた構成を図示して説明したが、図示の構成に限定されるものではない、また、調節計の組数についても限定されるものではなく、例えば1組や2組の調節計を備えた構成、さらには4組以上の調節計を備えた構成とし、各組の調節計に対してヒータを制御する電力制御器と温度センサが接続された構成であってもよい。さらに、調節計に接続されるセンサも温度センサに限定されるものではなく、製造装置25の測定対象に応じて例えば湿度センサ、圧力センサなどの各種センサから適宜選択して接続することができる。
【0031】
ところで、IATF16949などの規格では、熱電対の交換周期が定められており、熱電対の使用回数や所定温度以上の使用回数が交換周期の基準となっている。そして、これらを判定するための作業温度履歴は記録計に保管され、記録計に管理機能をもたせたり、ネットワークで管理システムにデータを送ることもできるが、記録計では、データ保管容量、画面表示の大きさなどで、必ずしも使い勝手がよいとは言えない。また、管理システムでは、装置間の配線や通信ネットワーク設備などでコストがかかる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、コストを削減し、使い勝手をよくするため、携帯型外部通信媒体19(例えばスマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末、ノートパソコン、NFCカードなど)に必要なデータを取り込み、携帯型外部通信媒体19と記録計1との間で通信を行い、作業履歴を作成して管理している。
【0033】
ここで、記録計1と携帯型外部通信媒体19との間でデータ通信を行うための処理手順のフローチャートを
図4に示す。以下、
図4に基づいてデータ通信の処理手順について説明する。
【0034】
まず、携帯型外部通信媒体19の認証処理(ST1)として、識別コード(バーコードやQRコード(登録商標))が印刷された携帯型外部通信媒体19(例えばNFCカード)または識別コードを表示させた携帯型外部通信媒体19(例えばスマートフォンなどの携帯端末、タブレット端末、ノートパソコンなど)を記録計1に近づけ、記録計1に搭載された近距離無線モジュール13にて携帯型外部通信媒体19の識別コードを受信し、携帯型外部通信媒体の識別コードの認証を行う。
【0035】
携帯型外部通信媒体19の識別コードを正常認証すると、通信プログラム起動処理(ST2)として、識別コードに記載された処理内容(例えば過去12時間とか前回取得後から現時点までの更新データの取得)や所定形式の日報データの出力など)を実行するプログラムを記録計1で起動する。
【0036】
記録計1でプログラムが起動すると、記録計1と携帯型外部通信媒体19との間で近距離無線モジュール13を介してデータ通信を行う(ST3)。
【0037】
そして、データ通信が終了すると、通信プログラム終了処理(ST4)として、記録計1のプログラムを終了して携帯型外部通信媒体19の認証状態を解除し、必要に応じてデータ加工処理を実行する(ST5)。データ加工処理としては、例えば携帯型外部通信媒体19で受信したデータに基づいて、日報などの作業履歴を作成する。なお、識別コードで出力形式を指定して、記録計1が報告書を出力する場合にはデータ加工処理が不要となる。
【0038】
ところで、上述した実施の形態では、被測定対象の温度、電流、電圧などの物理量の変化を示す測定データに基づく波形を表示画面に表示するディジタル方式の記録計1を図示して説明したが、物理量の変化を示す波形などを長尺状の記録紙に印字するアナログ方式の記録計や、ディジタル方式とアナログ方式の両方式を用いたハイブリッド型の記録計であってもよい。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、近距離無線モジュール13や通信手段14が外部通信媒体18、携帯型外部通信媒体19、外部機器から取得した情報に基づく各種制御として、記録計1に使用するセンサの製造番号と記録計1を操作する作業者とを紐付けた情報の記録保存、多品種の製品を製造するラインにおける品種別のバッチ処理に関する設定変更、記録計1を操作する作業員のログイン操作、携帯型外部通信媒体19との間のデータ通信やデータ通信に基づく作業履歴の作成処理などを行うことができ、従来の記録計のようなキーやタッチ操作の手間を省くことができる。
【0040】
以上、本発明に係る記録計の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 記録計
1a 本体
2 端子部
11 設定手段
12 入出力手段
13 近距離無線モジュール
14 通信手段
15 制御手段
16 記憶手段
17 表示手段
18 外部通信媒体
19 携帯型外部通信媒体
21 製造システム
22 管理装置
23A,23B,23C 調節計
24A,24B,24C 電力制御器
25 製造装置
26A,26B,26C ヒータ
27A,27B,27C 温度センサ