(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータ駆動制御システム、およびファンシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20240307BHJP
【FI】
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2020083992
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】小柴 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝則
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-092927(JP,A)
【文献】特開2013-013257(JP,A)
【文献】特開2017-204989(JP,A)
【文献】特開2020-058199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P4/00
6/00-6/34
21/00-25/03
25/04
25/08-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子、第2端子、および第3端子と、
前記第1端子に入力された第1電源電圧に基づいて駆動電圧を生成し、前記第1電源電圧の供給が停止された場合に、前記第2端子に入力された第2電源電圧に基づいて前記駆動電圧を生成する駆動電圧生成回路と、
前記駆動電圧
を電源として動作し、モータの駆動に関する指令を含む駆動指令信号に基づいて駆動制御信号を生成するとともに、モータの駆動状態に関するモータ駆動情報信号を生成して、前記第3端子から出力する制御回路と、
前記制御回路によって生成された前記駆動制御信号に基づいて、前記モータに駆動信号を出力するモータ駆動回路と、を備え、
前記制御回路は、前記第1電源電圧を監視し、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出した場合に、前記モータ駆動情報信号として、前記モータの動作に関する履歴情報を前記第3端子から出力する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記第2端子は、前記駆動指令信号を入力するための入力端子であって、
前記制御回路は、前記第1電源電圧が供給されていることを検出し、かつ、前記第2端子に前記駆動指令信号が入力されている場合に、前記駆動指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成し、
前記駆動電圧生成回路は、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出し、かつ、前記第2端子にデューティ比が100%の前記駆動指令信号が入力されている場合に、前記駆動指令信号を前記第2電源電圧として用いて前記駆動電圧を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路は、前記第1電源電圧が供給されていることを検出した場合に、前記モータ駆動情報信号として、前記モータの回転速度に対応する回転速度信号を前記第3端子から出力し、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出した場合に、前記第3端子から出力する前記モータ駆動情報信号を、前記回転速度信号から前記履歴情報に切り替える
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路が制御不能な状態である場合に、前記制御回路が制御不能であることを示す制御不能信号を前記第3端子から前記モータ駆動情報信号として出力する制御不能信号生成回路を更に有し、
前記回転速度信号は、所定のデューティ比の信号であって、
前記制御不能信号は、前記回転速度信号と異なるデューティ比の信号である
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御不能信号生成回路は、発振回路であって、
前記制御不能信号生成回路は、前記制御回路が制御可能な状態である場合に発振動作を停止し、前記制御回路が制御不能な状態である場合に発振動作を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動電圧生成回路は、前記第1電源電圧に基づいて第1直流電圧を前記駆動電圧として生成して前記制御回路の電源端子に供給する第1電源回路と、前記第2電源電圧に基づいて第2直流電圧を前記駆動電圧として生成して前記電源端子に供給する第2電源回路とを有し、
前記第2電源回路は、前記第2電源電圧に基づいて前記第2直流電圧を生成するレギュレータ回路と、前記第1直流電圧を監視し、前記第1直流電圧が所定の閾値より大きい場合に前記レギュレータ回路の動作を停止させ、前記第1直流電圧が前記所定の閾値より小さい場合に前記レギュレータ回路の動作を可能にする電圧監視回路と、を含む
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記履歴情報は、前記モータが使用された程度を示す累積情報を含み、
前記累積情報は、前記モータの累積稼働時間の情報および前記モータの累積回転数の情報の少なくとも一方を含む
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記履歴情報は、前記モータの動作状態を示す動作状態情報を含み、
前記動作状態情報は、温度、前記モータの駆動電流、および前記駆動電圧のうち少なくとも一つの情報を含む
モータ駆動制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記履歴情報は、検出した異常の内容を示す異常検出情報を含み、
前記異常検出情報は、温度、前記モータの駆動電流、および前記駆動電圧に関する異常のうち少なくとも一つの情報を含む
モータ駆動制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記駆動指令信号として、パルス信号を前記モータ駆動制御装置の前記第2端子に出力するとともに、前記モータ駆動制御装置の前記第3端子から前記モータの回転速度に対応する回転速度信号が入力される上位装置と、を備え、
前記上位装置は、前記第3端子から前記回転速度信号が入力されていないことを検出した場合に、デューティ比の100%のパルス信号を前記第2端子に出力する
モータ駆動制御システム。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、
前記モータの回転力によって回転するインペラを含むファンと、
を備えるファンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータ駆動制御システム、およびファンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インペラをモータの回転力によって回転させるファン(ファンモータ)を搭載した情報処理装置(例えば、サーバ)等は、安定した動作を保証するために、固有の故障時間や期待寿命を考慮し、動作時間に合わせたメンテナンスや定期点検が必要である。
そこで、従来、モータの累積回転数や累積駆動時間などのモータの動作の履歴を示す情報を記憶し、その情報を情報出力経路より外部のコンピュータ(上位装置)に出力するモータ駆動制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ駆動制御装置には、過電流による電子部品の故障や電気火災事故を防止するために、モータやモータの駆動を統括的に制御するマイクロコントローラ等の制御回路の電力供給経路にヒューズが設けられているものがある。
【0005】
本願発明者らは、本願に先立って、特許文献1のような、累積回転数や累積駆動時間等のモータの動作の履歴を示す情報を外部機器に出力する機能を有する制御回路(マイクロコントローラ)を、電力供給経路にヒューズが設けられたモータ駆動制御装置に組み込むことを検討した。その検討の結果、以下に示す課題があることが明らかとなった。
【0006】
例えば、ヒューズを備えたモータ駆動制御装置において、モータに何等かの異常が発生し、電力供給経路に大電流が流れた場合を考える。この場合、大電流によってヒューズが溶断し、電源からモータおよび制御回路への電力供給が遮断される。これにより、モータのみならず、制御回路も動作が停止するため、モータの累積情報、動作状態情報、異常検出情報等のモータの動作に関する履歴情報を制御回路から読み出すことができない。その結果、ユーザーは、モータまたはモータ駆動制御装置において発生した異常の原因を特定することが困難となり、不具合を解決するために多大な時間を要するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、モータへの電力供給経路が遮断された場合であっても、モータの動作に関する履歴情報を外部に出力可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、第1端子、第2端子、および第3端子と、前記第1端子に入力された第1電源電圧に基づいて駆動電圧を生成し、前記第1電源電圧の供給が停止された場合に、前記第2端子に入力された第2電源電圧に基づいて前記駆動電圧を生成する駆動電圧生成回路と、前記駆動電圧の供給によって動作可能に構成され、モータの駆動に関する指令を含む駆動指令信号に基づいて駆動制御信号を生成するとともに、モータの駆動状態に関するモータ駆動情報信号を生成して、前記第3端子から出力する制御回路と、前記制御回路によって生成された前記駆動制御信号に基づいて、前記モータに駆動信号を出力するモータ駆動回路とを備え、前記制御回路は、前記第1電源電圧を監視し、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出した場合に、前記モータ駆動情報信号として、前記モータの動作に関する履歴情報を前記第3端子から出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、モータへの電力供給経路が遮断された場合であっても、モータの動作に関する履歴情報を外部に出力することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置1を備えたモータ駆動制御システム100の構成を示す図である。
【
図2】第2電源回路15の回路構成例を示すブロック図である。
【
図3】制御回路21の内部構成例を示すブロック図である。
【
図4】制御不能信号生成回路20の回路構成例を示す図である。
【
図5A】モータ駆動制御装置1の出力端子P3から出力されるモータ駆動情報信号So(回転速度信号)の一例を示す図である。
【
図5B】モータ駆動制御装置1の出力端子P3から出力されるモータ駆動情報信号So(履歴情報)の一例を示す図である。
【
図5C】モータ駆動制御装置1の出力端子P3から出力されるモータ駆動情報信号So(制御不能信号)の一例を示す図である。
【
図6】モータ駆動制御システム100における主要な電圧および信号を示すタイミングチャートである。
【
図7A】モータ駆動制御システム100による処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図7B】モータ駆動制御システム100による処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0012】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、第1端子(P1)、第2端子(P2)、および第3端子(P3)と、前記第1端子に入力された第1電源電圧(Vdc)に基づいて駆動電圧(Vin)を生成し、前記第1電源電圧の供給が停止された場合に、前記第2端子に入力された第2電源電圧に基づいて前記駆動電圧を生成する駆動電圧生成回路(13)と、前記駆動電圧の供給によって動作可能に構成され、モータ(3)の駆動に関する指令を含む駆動指令信号(Sc)に基づいて駆動制御信号(Sd)を生成するとともに、モータの駆動状態に関するモータ駆動情報信号を生成して、前記第3端子から出力する制御回路(21)と、前記制御回路によって生成された前記駆動制御信号に基づいて前記モータに駆動信号を出力するモータ駆動回路(10)と、を備え、前記制御回路は、前記第1電源電圧を監視し、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出した場合に、前記モータ駆動情報信号として、前記モータの動作に関する履歴情報(300)を前記第3端子から出力することを特徴とする。
【0013】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記第2端子(P2)は、前記駆動指令信号(Sc)を入力するための入力端子であって、前記制御回路は、前記第1電源電圧が供給されていることを検出し、かつ、前記第2端子に前記駆動指令信号が入力されている場合に、前記駆動指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成し、前記駆動電圧生成回路は、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出し、かつ、前記第2端子にデューティ比が100%の前記駆動指令信号が入力されている場合に、前記駆動指令信号を前記第2電源電圧として用いて前記駆動電圧を生成してもよい。
【0014】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路は、前記第1電源電圧の供給が停止されていないことを検出した場合に、前記モータ駆動情報信号として、前記モータの回転速度に対応する回転速度信号を前記第3端子(P3)から出力し、前記第1電源電圧の供給が停止されたことを検出した場合に、前記第3端子から出力する前記モータ駆動情報信号を、前記回転速度信号から前記履歴情報に切り替えてもよい。
【0015】
〔4〕上記〔3〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路が制御不能な状態である場合に、前記制御回路が制御不能であることを示す制御不能信号を前記第3端子から前記モータ駆動情報信号として出力する制御不能信号生成回路(20)を更に有し、前記回転速度信号は、所定のデューティ比の信号であって、前記制御不能信号は、前記回転速度信号と異なるデューティ比の信号であってもよい。
【0016】
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御不能信号生成回路は発振回路であって、前記制御不能信号生成回路は、前記制御回路が制御可能な状態である場合に発振動作を停止し、前記制御回路が制御不能な状態である場合に発振動作を行ってもよい。
【0017】
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動電圧生成回路は、前記第1電源電圧に基づいて第1直流電圧を前記駆動電圧として生成して前記制御回路の電源端子に供給する第1電源回路(14)と、前記第2電源電圧に基づいて第2直流電圧を前記駆動電圧として生成して前記電源端子に供給する第2電源回路(15)とを有し、前記第2電源回路は、前記第2電源電圧に基づいて前記第2直流電圧を生成するレギュレータ回路(150)と、前記第1直流電圧を監視し、前記第1直流電圧が所定の閾値より大きい場合に前記レギュレータ回路の動作を停止させ、前記第1直流電圧が前記所定の閾値より小さい場合に前記レギュレータ回路の動作を可能にする電圧監視回路(151)と、を含んでもよい。
【0018】
〔7〕上記〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記履歴情報は前記モータが使用された程度を示す累積情報(301)を含み、前記累積情報は、前記モータの累積稼働時間および前記モータの累積回転数の少なくとも一方を含んでもよい。
【0019】
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記履歴情報は、前記モータの動作状態を示す動作状態情報(302)を含み、前記動作状態情報は、温度、前記モータの駆動電流、および前記駆動電圧のうち少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0020】
〔9〕上記〔1〕乃至〔8〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置において、前記履歴情報は、検出した異常の内容を示す異常検出情報(303)を含み、前記異常検出情報は、温度、前記モータの駆動電流、および前記駆動電圧に関する異常のうち少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0021】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御システム(100)は、上記〔1〕乃至〔9〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(1)と、パルス信号を前記駆動指令信号として前記モータ駆動制御装置の前記第2端子に出力するとともに、前記モータ駆動制御装置の前記第3端子から前記モータの回転速度に対応する回転速度信号が入力される上位装置(2)とを備え、前記上位装置は、前記第3端子から前記回転速度信号が入力されていないことを検出した場合に、デューティ比の100%のパルス信号を前記第2端子に出力することを特徴とする。
【0022】
〔11〕本発明の代表的な実施の形態に係るファンシステム(101)は、上記〔1〕乃至〔9〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(1)と、前記モータ(3)と、前記モータの回転力によって回転するインペラ(4)を含むファン(5)と、を備えることを特徴とする。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0024】
≪実施の形態≫
図1は、本発明の実施の形態に係るモータ駆動制御装置を備えたモータ駆動制御システムの構成を示す図である。
【0025】
図1に示されるモータ駆動制御システム100は、モータ3と、モータ3の駆動を制御するモータ駆動制御装置1と、モータ駆動制御装置1を制御する上位装置2とを備えている。例えば、モータ3の出力軸(図示せず)には、インペラ(羽根車)4が接続されており、モータ3とインペラ4とは、モータ3の回転力によってインペラ4を回転させて風を発生させるファン(ファンモータ)5を構成している。ファン5は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能であり、例えば、サーバ等の情報処理装置の他に、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載可能である。ファン5は、例えば、軸流ファンである。
【0026】
モータ3およびインペラ4から成るファン5とモータ駆動制御装置1とは、一つのファンシステム101を構成している。また、本実施の形態では、一例として、ファン5がサーバ等の情報処理装置内に冷却装置として用いられているものとして説明する。
【0027】
上位装置(ホストデバイス)2は、モータ駆動制御装置1に駆動指令信号Scを出力することにより、モータ駆動制御装置1を介してモータ3の回転を制御するとともに、モータ駆動制御装置1からモータ3(ファン5)の駆動状態に関するモータ駆動情報信号Soを取得してモータ3(ファン5)の動作を監視する。後述するように、モータ駆動情報信号Soとしては、モータ3(ファン5)の回転状態を示す信号(例えばモータの回転速度に対応する回転速度信号)やモータの動作に関する履歴情報300等を例示することができる。上位装置2は、例えば、ファン5を搭載したサーバ内のCPU等のプログラム処理装置である。
【0028】
駆動指令信号Scは、モータ3の駆動に関する指令を含む信号である。駆動指令信号Scは、例えば、モータ3の目標回転速度(目標回転数)を指示する信号である。駆動指令信号Scは、例えば、モータ3の目標回転速度に対応したデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、駆動指令信号Scは、例えば、目標回転速度に対応する周波数のPFM信号やモータのトルクの目標値を示すトルク指令信号等、他の形式の信号であってもよい。
【0029】
上位装置2は、通常時において、例えば、目標回転速度に応じたデューティ比のPWM信号を駆動指令信号Scとして出力することにより、モータ駆動制御装置1に対して、目標回転速度でモータ3(ファン5)を回転させるように指示する。
【0030】
また、上位装置2は、モータ駆動制御装置1側(モータ3を含む)の異常を検知した場合に、後述するモータ3の履歴情報300を取得するために、モータ駆動制御装置1に対して指令を出す。上位装置2は、例えば、上位装置2から駆動指令信号Scを出力しているにも関わらず、モータ駆動制御装置1からモータ3の実回転速度に応じた回転速度信号がモータ駆動情報信号Soとして出力されない場合に、デューティ比が100%のPWM信号、すなわち直流電圧を駆動指令信号Scとして出力することにより、モータ駆動制御装置1に電源電圧(第2電源電圧)を供給して、モータ駆動制御装置1からモータ3の動作に関する履歴情報300を読み出せるようにする。
【0031】
このように、上位装置2は、駆動指令信号Scのデューティ比を変えることにより、モータ駆動制御装置1に対する指示を切り替える。
【0032】
モータ3は、例えば、ブラシレスDCモータである。本実施の形態において、モータ3は、U相、V相、およびW相の3相のコイルを有する3相ブラシレスDCモータである。モータ駆動制御装置1は、上位装置2からの駆動指令信号Scに応じて、例えば、モータ3を正弦波駆動により駆動するように構成されている。モータ駆動制御装置1は、モータ3に正弦波駆動信号を出力してモータ3のU相、V相、およびW相の各コイルLu,Lv,Lwに周期的に正弦波状の駆動電流を流すことにより、モータ3を回転させる。
【0033】
位置検出装置6は、モータ3のロータの回転に応じた位置検出信号Srを生成する装置である。位置検出装置6は、例えば、ホール(HALL)素子である。例えば、モータ3の各相(U相、V相、W相)にそれぞれ対応した3つのホール素子が、位置検出装置6として、モータ3の周辺に取り付けられている。
【0034】
具体的に、位置検出装置6としての3つのホール素子は、例えば、互いに略等間隔(例えば、隣り合うものと120度の間隔で)でモータ3のロータ(回転子)の周囲に配置されている。3つのホール素子は、それぞれロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を出力する。各ホール素子から出力されたホール信号は、位置検出信号Srとして制御回路21に入力される。後述するように、制御回路21は、位置検出信号Srとしてのホール信号を用いて、モータ3の回転位置や、回転数情報(FG信号など)などの情報を得ることでモータ3の回転状態を検出し、モータ3の駆動を制御することができる。
【0035】
なお、位置検出装置6として、このようなホール素子に代えて、例えば、エンコーダやレゾルバなどを設け、それらの検出信号を位置検出信号Srとして制御回路21に入力してもよい。
【0036】
モータ駆動制御装置1は、上位装置2からの指令に応じてモータ3の回転を制御するとともに、モータ3の動作に関する履歴情報300を記憶し、履歴情報300をモータ駆動情報信号Soとして上位装置2に出力する。
【0037】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、複数の外部端子、電力遮断回路8、保護回路9、モータ駆動回路10、駆動電圧生成回路13、電源電圧検出回路16、入出力信号変換回路17、温度センサ18、電流検出回路19、制御不能信号生成回路20、および制御回路21を有している。なお、
図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、
図1に示されたものに加えて他の構成要素を有していてもよい。
【0038】
複数の外部端子は、モータ駆動制御装置1と外部機器(例えば、上位装置2およびモータ3)とを接続するための端子である。
図1では、モータ駆動制御装置1の外部端子のうち、第1端子P1、第2端子P2、および第3端子Pが代表的に図示されている。
【0039】
第1端子P1は、モータ3およびモータ駆動制御装置1を駆動するための主電源としての第1電源電圧Vdc(直流電圧)が供給される電源端子である。以下、第1端子P1を「電源端子P1」とも称する。
【0040】
第2端子P2は、上位装置2等の外部機器から信号を入力するための入力端子である。例えば、上位装置2から出力された駆動指令信号Scが第2端子P2に入力される。以下、第2端子P2を「入力端子P2」とも称する。
【0041】
第3端子P3は、上位装置2等の外部機器に信号を出力するための出力端子である。例えば、モータ3(ファン5)の駆動状態に関するモータ駆動情報信号Soが、第3端子P3から上位装置2に出力される。以下、第3端子P3を「出力端子P3」とも称する。
【0042】
電源端子P1に入力された第1電源電圧Vdcは、電力遮断回路8と保護回路9とを経由して電力供給ラインLpに供給される。電力遮断回路8は、電源端子P1から電力供給ラインLpに定格を超えるような大電流が流れた場合に、電源端子P1から電力供給ラインLpへの電力供給を遮断する回路である。電力遮断回路8は、例えば、ヒューズである。
【0043】
保護回路9は、電力供給ラインLpから電源端子P1への電流の逆流を防止するための回路であり、例えば、ダイオード等を含んで構成されている。なお、保護回路9は、例えば、電力供給ラインLpの電圧を安定させるための安定化容量を含んでもよい。
電力遮断回路8と保護回路9とは、電源端子P1と電力供給ラインLpとの間に直列に接続されている。
【0044】
モータ駆動回路10は、後述する制御回路21から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ3に駆動信号を出力してモータ3を駆動する。モータ駆動回路10は、電力供給ラインLpから電力(第1電源電圧Vdc)が供給されることにより、動作可能に構成されている。モータ駆動回路10は、インバータ回路12及びプリドライブ回路11を有する。
【0045】
インバータ回路12は、プリドライブ回路11から出力された出力信号に基づいてモータ3に駆動信号を出力し、モータ3が備えるコイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路12は、例えば、電力供給ラインLpとグラウンド電位との間に後述する電流検出回路19を介して直列に接続された2つのスイッチ素子の直列回路の対(スイッチ素子Q1,Q2の対、スイッチ素子Q3,Q4の対、およびスイッチ素子Q5,Q6の対)が、各相(U相、V相、W相)のコイルLu,Lv,Lwにそれぞれ接続されている。具体的には、スイッチ素子Q1、Q2同士の接続点が、U相のコイルLuの一方の端子に接続され、スイッチ素子Q3、Q4同士の接続点が、V相のコイルLvの一方の端子に接続され、スイッチ素子Q5、Q6同士の接続点が、W相のコイルLwの一方の端子に接続されている。
【0046】
プリドライブ回路11は、制御回路21からの駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路12を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路12に出力する。
【0047】
駆動制御信号Sdは、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。具体的には、駆動制御信号Sdは、インバータ回路12の各スイッチ素子に対応する6種類のPWM信号を含む。
【0048】
プリドライブ回路11は、例えば、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路12の各スイッチ素子を駆動する6種類の駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを生成して出力する。これらの駆動信号がインバータ回路12に入力されることにより、インバータ回路12を構成するそれぞれのスイッチ素子がオン、オフ動作を行う。これにより、モータ3の各相に電力供給ラインLpから電力が供給される。
【0049】
駆動電圧生成回路13は、制御回路21の電源としての駆動電圧Vinを生成する回路である。駆動電圧生成回路13は、電源端子P1に入力された第1電源電圧Vdcに基づいて駆動電圧Vinを生成し、第1電源電圧Vdcの供給が停止された場合に、入力端子P2に入力された第2電源電圧に基づいて駆動電圧Vinを生成する。具体的には、駆動電圧生成回路13は、第1電源電圧Vdcの供給が停止しているときに、入力端子P2にデューティ比が100%の駆動指令信号Scが入力された場合に、その駆動指令信号Scを第2電源電圧として用いて駆動電圧Vinを生成する。なお、制御回路21が動作する電圧範囲であれば、第1電源電圧Vdcに基づいて生成する駆動電圧Vinと第2電源電圧に基づいて生成する駆動電圧Vinは異なっていてもよい。例えば、第2電源電圧に基づいて生成する駆動電圧Vinは、第1電源電圧Vdcに基づいて生成する駆動電圧Vinよりも低い。
【0050】
例えば、駆動電圧生成回路13は、第1電源回路14と第2電源回路15とを有する。第1電源回路14は、入力端子Pv1と出力端子Pvo1を有し、電力供給ラインLpから入力端子Pv1に供給された第1電源電圧Vdcに基づいて第1直流電圧を生成し、出力端子Pvo1から駆動電圧Vinとして出力する。第1電源回路14は、例えば、入力端子Pv1に供給された第1電源電圧Vdcを降圧して第1直流電圧を生成するレギュレータ回路(シリーズレギュレータまたはスイッチングレギュレータ)である。
【0051】
第2電源回路15は、入力端子Pv2と出力端子Pvo2を有する。第2電源回路15は、上位装置2から入力端子P2を介して入力端子Pv2に入力された駆動指令信号Sc(第2電源電圧)に基づいて第2直流電圧を生成し、出力端子Pvo2から駆動電圧Vinとして出力する回路である。第2電源回路15は、第1電源回路14から出力される第1直流電圧を監視し、第1直流電圧が所定の閾値以上である場合に第2直流電圧の出力を停止し、第1直流電圧が所定の閾値より低い場合に第2直流電圧を駆動電圧Vinとして出力する。
【0052】
図2は、第2電源回路15の回路構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、第2電源回路15は、例えば、レギュレータ回路150、電圧監視回路151、入力端子Pv2、および出力端子Pvo2を有する。
【0053】
レギュレータ回路150は、例えば、シリーズレギュレータまたはスイッチングレギュレータである。例えば、レギュレータ回路150は、端子INに供給された直流電圧(第2電源電圧としての駆動指令信号Sc)を降圧して第2直流電圧を生成し、端子OUTに出力する。レギュレータ回路150は、例えば、全ての回路素子がパッケージ化された半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)として実現されている。レギュレータ回路150の端子OUTから出力された第2直流電圧は、ダイオードD91を経由して出力端子Pvo2から出力される。
【0054】
レギュレータ回路150は、第2直流電圧の生成の可否を制御するためのイネーブル端子ENを有している。例えば、イネーブル端子ENにハイレベルの電圧が入力されている場合に、レギュレータ回路150は動作可能となり、端子INに供給された直流電圧(第2電源電圧)から第2直流電圧を生成して端子OUTに出力する。一方、イネーブル端子ENにローレベルの電圧が入力されている場合に、レギュレータ回路150は動作不能となり、端子OUTへの第2直流電圧の出力を停止する。
【0055】
電圧監視回路151は、第1電源回路14から出力される第1直流電圧を監視し、第1直流電圧が所定の閾値を超えている場合に、レギュレータ回路150の動作を停止させ、第1直流電圧が所定の閾値より低い場合に、レギュレータ回路150の動作を可能にする。電圧監視回路151は、例えば、ボルテージディテクタであり、全ての回路素子がパッケージ化された半導体集積回路装置(IC)として実現されている。
【0056】
具体的には、電圧監視回路151は、電圧監視用端子VINと信号出力用端子VOUTを有する。電圧監視用端子VINは第2電源回路15の出力端子Pvo2に接続され、信号出力用端子VOUTは、レギュレータ回路150のイネーブル端子ENに接続されている。また、信号出力用端子VOUTは、イネーブル端子ENとともに抵抗R91を介して入力端子Pv2に接続されている。
【0057】
通常動作時、すなわち第1電源回路14から第1直流電圧が出力されているとき、電圧監視回路151の入力端子VIN(出力端子Pvo2)に入力される電圧は所定の閾値より高くなる。この場合、電圧監視回路151は、出力端子VOUTをローレベルにする。これにより、レギュレータ回路150のイネーブル端子ENがローレベルとなり、レギュレータ回路150は電圧出力を停止する。
【0058】
一方、異常発生時、すなわち、ヒューズが溶断する等によって、モータ駆動制御装置1への第1電源電圧Vdcの供給が遮断された時、電圧監視回路151の電圧監視用端子VIN(出力端子Pvo2)に入力される電圧は所定の閾値より低くなる。この場合、電圧監視回路151は、信号出力用端子VOUTをハイインピーダンス状態にする。これにより、レギュレータ回路150のイネーブル端子ENは、抵抗91によってハイレベルとなり、レギュレータ回路150は、端子INに供給された直流電圧(第2電源電圧としての駆動指令信号Sc)から第2直流電圧を生成して出力端子Pvo2に出力する。
【0059】
以上のように、駆動電圧生成回路13は、モータ駆動制御装置1に第1電源電圧Vdcが供給されている場合には、第1電源電圧Vdcに基づいて生成した第1直流電圧を駆動電圧Vinとして制御回路21に供給し、モータ駆動制御装置1に第1電源電圧Vdcが供給されていな場合には、第2電源電圧としての駆動指令信号Sc(デューティ比が100%のPWM信号)に基づいて生成した第2直流電圧を駆動電圧Vinとして制御回路21に供給する。
【0060】
電源電圧検出回路16は、第1電源電圧Vdcを検出するための回路である。電源電圧検出回路16は、例えば、電力供給ラインLpとグラウンド電位との間に直列に接続された複数の抵抗を含む抵抗分圧回路によって実現されている。電源電圧検出回路16は、第1電源電圧Vdcを分圧し、電源検出信号Sdcとして制御回路21に入力する。換言すれば、電源電圧検出回路16は、制御回路21(例えば、マイクロコントローラ)が第1電源電圧Vdcを監視することができるように、第1電源電圧Vdcを、制御回路21に入力可能な電圧に変換する(低下させる)回路である。
【0061】
入出力信号変換回路17は、モータ駆動制御装置1内の制御回路21と外部機器である上位装置2との間の通信を行うためのインターフェース回路である。入出力信号変換回路17は、例えば、入力信号の信号レベルを変換して出力するレベルシフト回路である。例えば、入出力信号変換回路17は、上位装置2から入力端子P2に入力された駆動指令信号Scの信号レベルを制御回路21(例えば、マイクロコントローラ)に入力可能な電圧まで低下させて、制御回路21に入力する。また、入出力信号変換回路17は、例えば、制御回路21から出力されたモータ駆動情報信号Soの信号レベルを上位装置2が認識可能な電圧まで上昇させて、出力端子P3から出力する。
【0062】
温度センサ18は、モータ3およびモータ駆動制御装置1の周辺の温度を測定する部品である。温度センサ18は、例えば、サーミスタを含む。温度センサ18は、測定した温度に応じた電圧を生成し、温度検出信号として制御回路21に入力する。
【0063】
電流検出回路19は、モータ3の駆動電流を検出するための回路である。電流検出回路19は、例えば、抵抗Rsを含む。抵抗Rsは、電力供給ラインLpとグラウンド電位との間に、インバータ回路12と直列に接続されている。電流検出回路19は、モータ3のコイルLu,Lv,Lwに流れる電流を抵抗Rsによって電圧に変換し、電流検出信号として制御回路21に入力する。
【0064】
制御回路21は、モータ駆動制御装置1の動作を統括的に制御するための回路である。本実施の形態において、制御回路21は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置であり、例えば、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
【0065】
制御回路21は、制御回路21とモータ駆動回路10とが一つの半導体集積回路装置(IC)としてパッケージ化された構成であってもよいし、制御回路21とモータ駆動回路10とが個別の集積回路装置として夫々パッケージ化された構成であってもよい。
【0066】
制御回路21は、駆動電圧生成回路13からの電力供給により、動作可能に構成されている。すなわち、制御回路21は、駆動電圧Vinを電源として動作する。制御回路21には、上位装置2から出力された駆動指令信号Scと、位置検出装置6から出力された位置検出信号Srと、電源電圧検出回路16から出力された電源検出信号Sdcと、電流検出回路19から出力された電流検出信号と、温度センサ18から出力された温度検出信号とが入力される。制御回路21は、これらの入力信号に基づいて、各種の演算処理および信号処理を行うことにより、以下に示す主な3つの機能を実現する。具体的に、制御回路21は、モータ駆動制御機能と、履歴生成記憶機能と、履歴出力機能とを有している。
【0067】
モータ駆動制御機能は、モータ3を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成してモータ駆動回路10に出力することによりモータ3の駆動を制御する機能である。具体的に、制御回路21は、駆動指令信号Scと、位置検出信号Srと、電流検出回路19から出力された電流検出信号と、温度センサ18から出力された温度検出信号とに基づいて、モータ3を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成してモータ駆動回路10に出力する。制御回路21は、例えば、入力端子P2に駆動指令信号Scが入力されている場合に、駆動指令信号Scのデューティ比で指定された目標回転速度でモータ3が回転するように駆動制御信号Sdを生成するとともに、モータ3の実際の回転速度(実回転速度)に対応する回転速度信号を生成し、モータ駆動情報信号Soとして出力端子P3に出力する。
【0068】
履歴生成記憶機能は、各種監視情報をもとに、履歴情報300を生成して内部に記憶する機能である。具体的には、制御回路21は、監視情報である、駆動電圧Vinと、駆動指令信号Scと、位置検出信号Srと、電流検出回路19から出力された電流検出信号と、温度センサ18から出力された温度検出信号と、電源電圧検出回路16から出力された電源検出信号Sdcとに基づいて、累積情報301、動作状態情報302、異常検出情報303などの履歴情報300を適宜生成し、制御回路21の内部に記憶する。
【0069】
履歴出力機能は、モータ駆動制御装置1の主電源である第1電源電圧Vdcの供給状態を監視し、第1電源電圧Vdcの供給が停止した場合に、記憶している履歴情報300を外部機器(例えば、上位装置2)に出力する機能である。具体的に、制御回路21は、電源検出信号Sdcに基づいて第1電源電圧Vdcを監視し、第1電源電圧Vdcの供給が停止されたことを検出した場合に、出力端子P3から出力するモータ駆動情報信号Soを、回転速度信号から履歴情報300に切り替える。
以下、上述した各機能を実現するための制御回路21の機能ブロック構成について、図を用いて具体的に説明する。
【0070】
図3は、制御回路21の内部構成例を示すブロック図である。
図3に示されるように、制御回路21は、上述した各機能を実現するための機能ブロックとして、駆動指令取得部22、駆動制御信号生成部23、回転速度信号生成部24、電流測定部25、温度測定部26、電源監視部27、履歴情報管理部28、動作状態判定部29、記憶部30、および出力切替部31を含んでいる。これらの機能ブロックは、上述したMCU内のCPUがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算処理を実行し、その処理結果に基づいてA/D変換回路や入出力インターフェース回路等の周辺回路を制御することによって、実現される。
【0071】
駆動指令取得部22は、上位装置2から出力された駆動指令信号Scから、指示内容を取得する機能部である。例えば、駆動指令取得部22は、駆動指令信号ScであるPWM信号のデューティ比を解析することにより、上位装置2から指定されたモータ3の目標回転速度の情報を取得し、駆動制御信号生成部23に与える。
【0072】
駆動制御信号生成部23は、駆動指令取得部22から与えられた目標回転速度と、回転速度信号生成部24によって生成された回転速度信号と、電流測定部25によって測定されたモータ3の駆動電流の測定値と、電源監視部27によって検出された第1電源電圧Vdcの電圧値に基づいて、PWM信号としての駆動制御信号Sdを生成する。例えば、駆動制御信号生成部23は、駆動指令信号Scで指定された目標回転速度でモータ3が回転するようにデューティ比を調整したPWM信号を生成し、駆動制御信号Sdとしてモータ駆動回路10に出力する。
【0073】
回転速度信号生成部24は、位置検出装置6から出力された位置検出信号Srに基づいて、モータ3の回転速度に応じた周波数の回転速度信号(FG信号)を生成する機能部である。例えば、回転速度信号生成部24は、位置検出信号Srとしての3相のホール信号を合成して回転速度信号(FG信号)を生成する。回転速度信号(FG信号)は、例えば、所定のデューティ比の信号であり、より具体的には、デューティ比が約50%のパルス信号である。
【0074】
出力切替部31は、制御回路21から出力する信号を切り替えるための機能部である。出力切替部31は、回転速度信号生成部24によって生成された回転速度信号(FG信号)と後述する履歴情報300の何れか一方を選択し、モータ駆動情報信号Soとして、入出力信号変換回路17を介して出力端子P3に出力する。出力切替部31は、モータ3およびモータ駆動制御装置1が正常に動作している通常動作時において、回転速度信号生成部24によって生成された回転速度信号(FG信号)を選択し、モータ駆動情報信号Soとして出力するように設定されている。また、出力切替部31は、後述する履歴情報管理部28からの制御により、履歴情報300を選択し、モータ駆動情報信号Soとして出力する。
【0075】
電流測定部25は、電流検出回路19によって検出された電流検出信号に基づいて、モータ3の駆動電流(コイルLu,Lv,Lwに流れる電流)を測定し、測定値を出力する機能部である。温度測定部26は、温度センサ18によって検出された温度検出信号に基づいて温度を測定し、測定値を出力する機能部である。電流測定部25および温度測定部26は、例えば、電流検出回路19および温度センサ18から出力された電圧をデジタル信号に変換するA/D変換回路によって実現することができる。
【0076】
電源監視部27は、電源電圧検出回路16から出力された電源検出信号Sdcに基づいて、第1電源電圧Vdcの供給状態を監視する機能部である。電源監視部27は、電源検出信号Sdcとしての直流電圧が所定の閾値を超える場合に、第1電源電圧Vdcが電力供給ラインLpに供給されていると判定し、検出した第1電源電圧Vdcの電圧値を履歴情報管理部28及び駆動制御信号生成部23に出力する。電源検出信号Sdcとしての直流電圧が所定の閾値を超えていない場合に、第1電源電圧Vdcが電力供給ラインLpに供給されていないと判定し、第1電源電圧Vdcが喪失しているという情報を履歴情報管理部28及び駆動制御信号生成部23に出力する。電源監視部27は、例えば、電源検出信号Sdcとしての直流電圧をデジタル信号に変換するA/D変換回路と、デジタル信号に変換された電圧値と閾値とを比較する比較部とによって実現することができる。比較部は、例えば、CPUのプログラム処理によって実現される。
【0077】
動作状態判定部29は、制御回路21が正常に動作可能か否かを判定する機能部である。例えば、制御回路21に駆動電圧Vinが供給されているとき、動作状態判定部29は、制御回路21が正常に動作可能と判定し、制御回路21の端子Pm0(例えば、マイクロコントローラの出力ピン)をハイレベル(例えば、駆動電圧Vin)にする。一方、例えば、制御回路21に駆動電圧Vinが供給されていないとき、動作状態判定部29は、例えば、端子Pm0をハイインピーダンス状態にする。
【0078】
履歴情報管理部28は、モータの動作に関する履歴情報300を生成して記憶部30に記憶するとともに、必要に応じて、記憶部30から履歴情報300を読み出して外部(上位装置2)に出力する機能部である。
【0079】
記憶部30は、履歴情報管理部28によって生成された履歴情報300を記憶するための機能部である。記憶部30には、履歴情報300の他に、上述した制御回路21の各機能を実現するための各種データ処理に必要なパラメータ等も記憶されている。記憶部30は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置の記憶領域によって実現されており、モータ駆動制御装置1の電源がオフ状態であっても、上述の履歴情報300や各種パラメータ等が消失することはない。
【0080】
履歴情報管理部28は、履歴情報300として、例えば、累積情報301、動作状態情報302、および異常検出情報303を生成する。
【0081】
累積情報301は、モータ3が使用された程度を示す情報である。累積情報301には、例えば、モータ3の累積回転数、累積動作時間、累積起動回数のうち少なくとも一つの情報が含まれる。
【0082】
履歴情報管理部28は、例えば、回転速度信号生成部24によって生成されたFG信号に基づいてモータ3の単位時間当たりのモータ3の回転数を算出し、その回転数を積算することにより、モータ3の累積回転数を算出して記憶部30に記憶する。また、履歴情報管理部28は、モータ3の回転速度毎に動作時間を計測して積算し、積算した回転速度毎の動作時間に基づいてモータ3の累積動作時間を算出して記憶部30に記憶する。更に、履歴情報管理部28は、例えば、動作状態判定部29による判定結果に基づいて、駆動電圧Vinが印加された回数をカウントし、その回数を積算して累積起動回数として記憶部30に記憶する。
【0083】
動作状態情報302は、モータ3の動作状態を示す情報である。動作状態情報302には、例えば、モータ周辺の温度、モータ3の駆動電流、モータ3の回転数、および駆動電圧Vinのうち少なくとも一つの情報が含まれる。
【0084】
履歴情報管理部28は、例えば、単位時間毎に、温度測定部26による温度の測定結果を記憶部30に記憶する。履歴情報管理部28は、例えば、FG信号に基づいて単位時間当たりの回転数(回転速度)を記憶部30に記憶する。履歴情報管理部28は、例えば、単位時間に、電流測定部25によるモータ3の駆動電流の測定結果を記憶部30に記憶する。また、履歴情報管理部28は、例えば、単位時間毎に、駆動電圧Vinの値を記憶部30に記憶する。
【0085】
異常検出情報303は、モータ駆動制御装置1またはモータ3において発生した異常の内容を示す情報である。異常検出情報303には、異常な温度を検出したことを示す温度異常履歴、モータ3の駆動電流が異常値(例えば、過電流)となったことを検出したことを示す駆動電流異常履歴、モータ3の電圧(第1電源電圧Vdc)や駆動電圧Vinが異常値となったことを検出したことを示す電圧異常履歴の少なくとも一つの情報が含まれる。
【0086】
履歴情報管理部28は、例えば、温度測定部26によって測定された温度が予め設定された閾値を超えた場合に、モータ3周辺の温度が異常になったことを温度異常履歴として記憶部30に記憶する。履歴情報管理部28は、例えば、電流測定部25によって測定されたモータ3の駆動電流が予め設定された閾値を超えた場合に、過電流が発生したことを駆動電流異常履歴として記憶部30に記憶する。履歴情報管理部28は、例えば、電源監視部27によって第1電源電圧Vdcの供給の停止が検出された場合に、第1電源電圧Vdcの遮断が発生したことを電圧異常履歴として記憶部30に記憶するとともに、駆動電圧Vinが予め設定された閾値を超えた場合に、駆動電圧Vinが過電圧になったことを電圧異常履歴として記憶部30に記憶する。
【0087】
履歴情報管理部28は、出力切替部31を制御することにより、履歴情報300を出力端子P3から出力させる。具体的には、履歴情報管理部28は、モータ3およびモータ駆動制御装置1に異常が発生した場合に、出力切替部31を制御することにより、モータ駆動情報信号Soとして出力端子P3から出力させる信号を回転速度信号(FG信号)から履歴情報300に切り替える。例えば、電源監視部27によって第1電源電圧Vdcの供給が停止されたことが検出された場合に、履歴情報管理部28は、異常が発生したと判定し、記憶部30から履歴情報300を読み出すとともに出力切替部31を制御して、履歴情報300をモータ駆動情報信号Soとして出力端子P3から出力させる。
【0088】
制御不能信号生成回路20は、制御回路21が制御不能状態である場合に、制御回路21が制御不能状態であることを示す制御不能信号をモータ駆動情報信号Soとして出力端子P3に出力する回路である。具体的に、制御不能信号生成回路20は、制御回路21の端子Pm0の状態に応じて、動作の可否が制御される。上述したように、制御回路21が正常に動作可能な場合には、動作状態判定部29が制御回路21の端子Pm0をハイレベルとし、制御回路21が正常に動作不能な場合には、動作状態判定部29が制御回路21の端子Pm0をハイインピーダンス状態にする。そこで、例えば、制御回路21の端子Pm0がハイレベルの電圧(例えば、Vin)である場合に、制御不能信号生成回路20は、制御回路21が制御動作可能状態(動作可能な状態)であると判定し、制御不能信号を出力しない。一方、制御回路21の端子Pm0がハイインピーダンス状態である場合には、制御不能信号生成回路20は、制御回路21が制御不能状態であると判定し、制御不能信号を出力端子P3に出力する。制御不能信号は、モータ駆動情報信号Soとして、出力端子P3から上位装置2に出力される。
【0089】
図4は、制御不能信号生成回路20の回路構成例を示す図である。
【0090】
制御不能信号生成回路20は、例えば、発振回路である。具体的には、
図4に示すように、制御不能信号生成回路20は、信号出力端子Pos、イネーブル端子Pis、およびスイッチSWと、発振回路180とを備えている。信号出力端子Posは、モータ駆動制御装置1の出力端子P3に接続されている。なお、信号出力端子Pos(出力端子P3)に接続される上位装置2の外部端子は、上位装置2の内部においてプルアップされている。イネーブル端子Pisは、制御回路21の端子Pm0に接続されている。
【0091】
発振回路180は、トランジスタ(例えば、NPNトランジスタ)Q92、トランジスタ(例えば、PNPトランジスタ)Q93、抵抗R92~R94、およびキャパシタC93を有する。トランジスタQ92のコレクタ電極が信号出力端子Posに接続され、トランジスタQ92のエミッタ電極がグラウンド電位に接続されている。抵抗R93と抵抗94とが信号出力端子Posとグラウンド電位との間に直列に接続されている。抵抗92の一方の端子は信号出力端子Posに接続されている。
【0092】
キャパシタC93の一方の端子は、抵抗92の他方の端子に接続され、キャパシタC93の他方の端子はグラウンド電位に接続されている。トランジスタQ93のベース電極は抵抗93と抵抗94とが接続されるノードに接続され、トランジスタQ93のコレクタ電極はトランジスタQ92のベース電極に接続されている。トランジスタQ93のエミッタ電極は、抵抗92とキャパシタC93とが接続されるノードに接続されている。
【0093】
スイッチSWは、イネーブル端子Pisがハイレベルであるときオン状態となって発振回路180を動作不能(ディセーブル)状態にし、イネーブル端子Pisがハイインピーダンス状態の場合にオフ状態となって発振回路180を動作可能(イネーブル)状態にする。スイッチSWは、例えば、トランジスタ(例えば、NPNトランジスタ)Q94と抵抗R1,R2を含む。トランジスタQ94のコレクタ電極はトランジスタQ92のベース電極とトランジスタQ93のコレクタ電極とに接続され、トランジスタQ94のエミッタ電極はグラウンド電位に接続されている。抵抗R2の一方の端子はイネーブル端子Pisに接続され、抵抗R2の他方の端子はトランジスタQ94のベース電極に接続されている。抵抗R1の一方の端子はトランジスタQ94のベース電極に接続され、抵抗R1の他方の端子はグラウンド電位に接続されている。
【0094】
図4に示す回路構成によれば、制御回路21が動作可能な状態であるとき、すなわちイネーブル端子Pisに接続される制御回路21の端子Pm0がハイレベル(例えば、Vin)であるとき、トランジスタQ94がオンし、トランジスタQ92がオフする。これにより、発振回路180は発振動作を停止し、信号出力端子Posは、出力端子P3に接続されている他の回路(上位装置2と入出力信号変換回路17)に応じた電圧となる。
【0095】
一方、制御回路21が制御不能な状態であるとき、すなわちイネーブル端子Pisに接続される制御回路21の端子Pm0がハイインピーダンス状態であるとき、抵抗R1のプルダウンにより、トランジスタQ94がオフする。これにより、発振回路180は発振動作が可能な状態となり、発振回路180は、電圧が周期的に変化する信号(周期信号)を生成し、制御不能信号として信号出力端子Posから出力する。制御不能信号は、モータ駆動情報信号Soとしてモータ駆動制御装置1の出力端子P3から上位装置2に入力される。
【0096】
ここで、発振回路180から出力される周期信号としての制御不能信号は、モータ駆動制御装置1およびモータ3が正常に動作しているときに出力端子P3からモータ駆動情報信号Soとして出力される回転速度信号(パルス信号)と異なるデューティ比であることが好ましい。例えば、回転速度信号のデューティ比が約50%のパルス信号である場合、制御不能信号のデューティ比が50%以外の値(例えば、デューティ比が10~30%または70%~90%)になるように、発振回路180の回路定数(抵抗R92~R94、キャパシタC93の値)を設定することが好ましい。
【0097】
これによれば、本実施の形態のように、一つの出力端子P3から、モータ駆動情報信号Soとして回転速度信号(パルス信号)と制御不能信号を切り換えて出力した場合であっても、上位装置2は、モータ駆動情報信号Soのデューティ比に基づいて、回転速度信号(パルス信号)と制御不能信号とを区別して認識することが可能となる。
【0098】
図5A~
図5Cは、モータ駆動制御装置1の出力端子P3から出力されるモータ駆動情報信号Soの一例を示す図である。
【0099】
図5Aには、モータ3およびモータ駆動制御装置1が正常に動作しているとき(通常動作時)のモータ駆動情報信号Soの一例が示されている。
図5Bには、第1電源電圧Vdc喪失時、例えば、過電流の発生により電力遮断回路8としてのヒューズが溶断したときのモータ駆動情報信号Soの一例が示されている。
図5Cには、制御回路21が制御不能状態である時、例えば、制御回路21への駆動電圧Vinの供給が停止したときのモータ駆動情報信号Soの一例が示されている。
【0100】
通常動作時には、上位装置2から指定された目標回転速度でモータ3が回転するので、制御回路21(回転速度信号生成部24)が回転速度信号(FG信号)を生成する。このとき、制御回路21が正常に動作可能な状態であるので、制御不能信号生成回路20(発振回路)に接続されている、制御回路21の端子Pm0はハイレベルとなる。そのため、制御不能信号生成回路20(発振回路)は発振動作を停止し、出力端子P3に信号を出力しない。したがって、モータ3およびモータ駆動制御装置1が正常に動作しているとき(通常動作時)には、
図5Aに示すように、回転速度信号(FG信号)が、モータ駆動情報信号Soとして、出力端子P3から出力される。
【0101】
第1電源電圧Vdc喪失時には、モータ3の回転が停止し、第1電源回路14は入力電圧Vinを生成することができない。このとき、上位装置2からデューティ比が100%の駆動指令信号Scがモータ駆動制御装置1に入力されることにより、第2電源回路15が駆動指令信号Scを第2電源電圧として用いて駆動電圧Vinを生成する。これにより、制御回路21は、第1電源電圧Vdc喪失時においても動作可能な状態となり、制御回路21の端子Pm0はハイレベルとなる。これにより、制御不能信号生成回路20(発振回路)は発振動作を停止し、出力端子P3に信号を出力しない。一方、制御回路21は、回転速度信号の出力を停止して、記憶部30から読み出した履歴情報300を出力する。したがって、第1電源電圧Vdc喪失時には、
図5Bに示すように、出力端子P3から履歴情報300が、モータ駆動情報信号Soとして出力される。このとき、制御回路21は、例えば、履歴情報300をシリアル信号として出力する。
【0102】
制御回路21が制御不能である時には、制御回路21は、回転速度信号(FG信号)および履歴情報300のどちらも出力することができず、制御回路21の端子Pm0は、ハイインピーダンス状態となっている。そのため、制御不能信号生成回路20(発振回路)は発振動作が可能な状態となり、出力端子P3に制御不能信号を出力する。したがって、制御回路21が制御不能である時には、
図5Cに示すように、制御不能信号が、モータ駆動情報信号Soとして、モータ駆動制御装置1から上位装置2に出力される。ここで、制御不能信号(周期信号)は、例えば、通常動作時の回転速度信号(FG信号)とは異なるデューティ比の周期信号である。
【0103】
次に、本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100の動作について図を用いて説明する。
【0104】
図6は、モータ駆動制御システム100における主要な電圧と信号を示すタイミングチャートである。
図7Aおよび
図7Bは、モータ駆動制御システム100による処理の流れを示すシーケンス図である。
【0105】
例えば、ファン5を含むモータ駆動制御システム100を搭載したサーバ等の情報処理装置(上位装置2)が起動すると、第1電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1の電源端子P1に供給され、モータ駆動制御装置1の駆動電圧生成回路13が起動する(ステップS1)。具体的には、
図6の時刻t0において、第1電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1内の電力供給ラインLpに供給されることにより、駆動電圧生成回路13が起動する。
【0106】
次に、例えば、
図6の時刻t1において、駆動電圧生成回路13が、第1電源回路14によって第1電源電圧Vdcから駆動電圧Vinを生成し、制御回路21に供給する(ステップS2)。これにより、制御回路21が起動する。
【0107】
起動した制御回路21は、駆動電圧Vinが供給されることにより制御可能な状態となり、動作状態判定部29によって端子Pm0をハイレベルにする。これにより、制御不能信号生成回路20の発振動作が停止し、モータ駆動制御装置1の出力端子P3から、モータ駆動情報信号Soとしての回転速度信号または履歴情報300の出力が可能となる(ステップS3)。また、このとき、制御回路21において、電源監視部27が、第1電源電圧Vdcが供給されていることを検出する(ステップS3A)。履歴情報管理部28は、電源監視部27による第1電源電圧Vdcの供給の検出に応じて、履歴情報300ではなく回転速度信号を出力端子P3から出力するように出力切替部31を切り替える。
【0108】
次に、上位装置2としての、サーバ内のプログラム処理部(CPU)は、サーバの動作状態に応じた適切な回転速度でモータ3(ファン5)を回転させるように、モータ駆動制御装置1に指令を出す(ステップS4)。具体的には、
図6に示す時刻t2において、上位装置2は、目標回転速度に対応するデューティ比のPWM信号を生成し、駆動指令信号Scとしてモータ駆動制御装置1の入力端子P2に入力する。
【0109】
モータ駆動制御装置1において、駆動指令信号Scが入力されると、制御回路21が駆動指令信号Scで指定された目標回転速度でモータが回転するように駆動制御信号Sdを生成し、モータ駆動回路10に出力する。モータ駆動回路10は、駆動制御信号Sdに基づいてモータ3を回転させる(ステップS5)。モータ3が回転を始めると、
図6に示すように、制御回路21における回転速度信号生成部24が位置検出装置6からのホール信号に基づいて回転速度信号(FG信号)を生成し、出力切替部31が回転速度信号を出力端子P3から上位装置2に出力する(ステップS6)。これにより、上位装置2は、モータ3の回転状態を把握することができる。
【0110】
また、このとき、制御回路21において、履歴情報管理部28が、駆動電圧Vinと、駆動指令信号Scと、位置検出信号Srと、電流検出回路19から出力された電流検出信号と、温度センサ18から出力された温度検出信号と、電源電圧検出回路16から出力された電源検出信号Sdcとに基づいて、履歴情報300を生成して記憶部30に記憶する(ステップS7)。
【0111】
なお、上位装置2は、システム(サーバ)の状態に応じてファン5の回転速度を変更する場合には、デューティ比を変更した駆動指令信号Scを新たに送信する。この場合、モータ駆動制御装置1は、変更後の駆動指令信号Scに基づいて、上記と同様の手法により、モータ3の回転速度を調整する。
【0112】
その後、例えば、
図6の時刻t3において、何らかの原因でモータ3に過電流が発生し、電力遮断回路8としてのヒューズが溶断して、モータ駆動制御装置1への第1電源電圧Vdcの供給が停止したとする(ステップS8)。
【0113】
このとき、モータ駆動制御装置1の入力端子P2には、上位装置2から目標回転速度に対応するデューティ比の駆動指令信号Scが入力されているので、駆動電圧生成回路13は、駆動指令信号Scを第2電源電圧として、適切な駆動電圧Vinを生成することができない。そのため、適切な駆動電圧Vinが生成されず、制御回路21は、動作を停止する(ステップS9)。これにより、制御回路21からの回転速度信号の出力が停止する(ステップS10)。
【0114】
上位装置2は、駆動指令信号Scを出力しているにも関わらず、回転速度信号が入力されないことを検出した場合には、モータ駆動制御装置1側に異常が発生したと判定する(ステップS11)。次に、上位装置2は、通常の駆動指令信号Scの出力を停止し、例えば、
図6の時刻t4において、デューティ比が100%のPWM信号(DC信号)を駆動指令信号Scとして新たに出力する(ステップS12)。
【0115】
デューティ比が100%の駆動指令信号Scを受信したモータ駆動制御装置1の駆動電圧生成回路13は、例えば、
図6の時刻t5において、喪失した第1電源電圧Vdcの代わりに、駆動指令信号Scを第2電源電圧として駆動電圧Vinを生成し、制御回路21に供給する(ステップS13)。これにより、制御回路21が動作可能な状態に復帰する(ステップS14)。なお、このとき、モータ3には第1電源電圧Vdcが供給されていないため、モータ3は依然として駆動できない。
【0116】
復帰した制御回路21において、電源監視部27は、第1電源電圧Vdcが供給されていないことを検知する(ステップS15)。履歴情報管理部28は、電源監視部27の検知結果に応じて出力切替部31を制御することにより、例えば、
図6の時刻t6において、記憶部30から履歴情報300を読み出し、例えば、シリアル信号に変換して、出力端子P3からモータ駆動情報信号Soとして上位装置2に出力する(ステップS16)。これにより、上位装置2は、異常発生前(第1電源電圧Vdcの遮断前)のモータ3の動作履歴を知ることが可能となる。
【0117】
その後、時刻t7において、例えば、何等かの原因で駆動電圧Vinの供給が停止し、制御回路21の動作が停止したとする(ステップS17)。この場合、制御回路21は、動作不可能な状態、すなわち制御不能な状態となる(ステップS18)。これにより、制御回路21の端子Pm0がハイインピーダンス状態になるため、制御不能信号生成回路20の発振動作が可能となる。そして、例えば、時刻t8において、制御不能信号生成回路20は、制御不能信号をモータ駆動情報信号Soとして出力端子P3から上位装置2に出力する(ステップS19)。これにより、上位装置2は、モータ駆動制御装置1の制御回路21が制御不能な状態であることを知ることができる。
【0118】
以上、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1は、電源端子P1に入力された第1電源電圧Vdcに基づいて制御回路21を駆動するための駆動電圧Vinを生成し、第1電源電圧Vdcの供給が停止した場合に、入力端子P2に入力された第2電源電圧に基づいて駆動電圧Vinを生成する駆動電圧生成回路13を備えている。
【0119】
これによれば、上述したように、例えば、過電流の発生によってヒューズが溶断し、主電源としての第1電源電圧Vdcのモータ駆動制御装置1へ供給が遮断された場合であっても、第1電源電圧Vdcとは異なる第2電源電圧に基づいて駆動電圧Vinを生成することができるので、制御回路21を動作可能な状態にすることができる。
【0120】
また、制御回路21は、第1電源電圧Vdcの供給が停止したことを検出した場合に、制御回路21の内部に記憶しているモータ3(ファン5)の駆動に関する履歴情報300をモータ駆動情報信号Soとして出力端子P3から出力する。
【0121】
これによれば、主電源である第1電源電圧Vdcの供給が停止してモータ3を駆動することができない状況になったとしても、上位装置2等の外部機器は、制御回路21から履歴情報300を取得することができる。
【0122】
このように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、モータ3への電力供給経路が遮断された場合であっても、モータ3の動作に関する履歴情報を外部に出力できるので、ユーザーは、モータ3(ファン5)において発生した異常の原因を特定することが容易となる。これにより、モータ駆動制御装置1における不具合を解決するための時間の短縮が期待できる。
【0123】
また、入力端子P2は、モータの駆動に関する指令を含む駆動指令信号Scを入力するための端子であって、第1電源電圧Vdcが供給されている場合に、制御回路21は、駆動指令信号Scに基づいて駆動制御信号Sdを生成する。一方、第1電源電圧Vdcの供給が停止し、入力端子P2にデューティ比が100%の駆動指令信号Scが入力されている場合には、駆動電圧生成回路13は、駆動指令信号Scを第2電源電圧として用いて駆動電圧Vinを生成する。
【0124】
これによれば、第2電源電圧を入力するための外部端子を別途設ける必要がないので、電源冗長化に伴うモータ駆動制御装置1の製造コストを抑えることが可能となる。また、上位装置2から出力されるデューティ比が100%の駆動制御信号Sdを第2電源電圧として用いることにより、第2電源電圧を生成するための電源装置を別途設ける必要がないため、モータ駆動制御システム100の構成を簡素化することができる。
【0125】
なお、第1電源電圧の遮断時には、制御回路21が履歴情報300を記憶部30から読み出して外部に出力するのに十分な電力が制御回路21に供給されていればよく、モータ3を駆動するための大きな電力は不要である。すなわち、第2電源電圧は、第1電源電圧Vdcと同等の電力供給能力である必要はない。したがって、上位装置2から出力される駆動指令信号Scであっても第2電源電力として十分に利用することが可能である。
【0126】
また、制御回路21は、モータの回転速度に対応する回転速度信号を出力端子P3からモータ駆動情報信号Soとして出力し、第1電源電圧Vdcの供給が停止されたことを検出した場合に、出力端子P3から出力するモータ駆動情報信号Soを回転速度信号から履歴情報300に切り替える。
【0127】
これによれば、履歴情報300を出力するための外部端子をモータ駆動制御装置1と上位装置2の双方にそれぞれ別途設ける必要がないので、モータ駆動制御システムの構成をより簡素化することができる。
【0128】
また、モータ駆動制御装置1は、制御回路21が制御不能な状態である場合に、制御回路21が制御不能であることを示す制御不能信号を出力する制御不能信号生成回路20を備えている。これによれば、上位装置2は、制御回路21が制御不能な状態に陥っていることを認識することができる。
【0129】
また、制御不能信号は、回転速度信号(FG信号)と異なるデューティ比の信号であり、モータ駆動情報信号Soとして出力端子P3から出力される。これによれば、上位装置2は、同じ端子から入力される制御不能信号を回転速度信号と区別して認識することができる。また、制御不能信号の通信を行うための外部端子をモータ駆動制御装置1と上位装置2の双方にそれぞれ別途設ける必要がないので、モータ駆動制御システムの構成をより簡素化することができる。
【0130】
また、制御不能信号生成回路20は、発振回路であって、制御回路21が制御可能な状態である場合に発振動作を停止し、制御回路が制御不能な状態である場合に発振動作を行う。これによれば、回転速度信号(FG信号)と異なるデューティ比の信号を生成することが容易となる。また、制御回路21が制御可能な状態である場合には、出力端子P3から出力される回転速度信号や履歴情報300に悪影響を与えることを防止することができる。
【0131】
更に、本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100において、上位装置2は、モータ駆動制御装置1の入力端子P2に駆動指令信号Scとして所定のデューティ比のパルス信号を出力しているときに、モータ駆動制御装置1の出力端子P3から回転速度信号が出力されていないことを検出した場合には、駆動指令信号Scとしてデューティ比が100%のパルス信号を入力端子P2に出力する。
【0132】
これによれば、第1電源電圧Vdcが遮断されてモータ駆動制御装置1が動作停止状態となり、回転速度信号が出力不能になった場合に、上位装置2が第2電源電圧としての駆動指令信号Scをモータ駆動制御装置1に供給するので、制御回路21を動作可能な状態に速やかに復帰させることができる。これにより、上位装置2は、モータ駆動制御装置1の異常発生直後に、モータ3の履歴情報300を取得することが可能となる。
【0133】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0134】
例えば、上記実施の形態において、モータ駆動制御装置1における保護回路9、電源電圧検出回路16、入出力信号変換回路17、温度センサ18、および電流検出回路19の設置の有無は、モータ駆動制御装置1の用途や仕様に応じて適宜変更することができる。例えば、上位装置2が入出力可能な信号レベルと制御回路21が入出力可能な信号レベルが同一である場合には、入出力信号変換回路17を設けることなく、入力端子P2と出力端子P3を介して上位装置2と制御回路21との間で信号の送受信を行ってもよい。
【0135】
また、上述の実施の形態では、第2電源電圧は、駆動指令信号Scが入力する第2端子から入力されるようにしているが、入力する端子は第2端子に限定する必要はなく、別の端子から入力するようにしてもよい。
【0136】
また、上述の実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータの相数は、3相に限られない。また、ホール素子の数は、3個に限られない。
【0137】
上記実施の形態において、モータの回転速度の検出方法は特に限定されない。例えば、ホール素子を用いないセンサレス方式とし、モータの逆起電力に基づいて回転速度を検出するようにしてもよい。また、モータの駆動方式は、正弦波駆動方式に限定されない。例えば、矩形波駆動方式や、台形波、あるいは、正弦波に特殊な変調をかけた駆動方式に適用することもできる。
【0138】
上記実施の形態において、モータ3の種類は特に限定されない。例えば、モータ3は、ブラシレスDCモータに限定されず、ステッピングモータであってもよい。
【0139】
また、制御回路21は、上述に示されるような回路構成に限定されない。制御回路21は、本発明の目的にあうように構成された、様々な回路構成を適用することができる。
【0140】
上述のタイミングチャートやシーケンス図は一例であって、これらに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【0141】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウエアによって行われるようにしても、ハードウェア回路を用いて行われるようにしてもよい。すなわち、モータ駆動制御装置1の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウエアによる処理により実現されるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…モータ駆動制御装置、2…上位装置(ホストデバイス)、3…モータ、4…インペラ(羽根車)、5…ファン(ファンモータ)、6…位置検出装置、8…電力遮断回路、9…保護回路、10…モータ駆動回路、11…プリドライブ回路、12…インバータ回路、13…駆動電圧生成回路、14…第1電源回路、15…第2電源回路、16…電源電圧検出回路、17…入出力信号変換回路、18…温度センサ、19…電流検出回路、20…制御不能信号生成回路、21…制御回路、22…駆動指令取得部、23…駆動制御信号生成部、24…回転速度信号生成部、25…電流測定部、26…温度測定部、27…電源監視部、28…履歴情報管理部、29…動作状態判定部、30…記憶部、31…出力切替部、100…モータ駆動制御システム、101…ファンシステム、150…レギュレータ回路、151…電圧監視回路、180…発振回路、300…履歴情報、301…累積情報、302…動作状態情報、303…異常検出情報、SW…スイッチ、Lp…電力供給ライン、Sc…駆動指令信号,第2電源電圧、Sd…駆動制御信号、Sdc…電源検出信号、So…モータ駆動情報信号、Sr…位置検出信号、Vdc…第1電源電圧、Vin…駆動電圧(第1直流電圧,第2直流電圧)、P1…電源端子(第1端子)、P2…入力端子(第2端子)、P3…出力端子(第3端子)、Pv1,Pv1…入力端子、Pvo1,Pvo2…出力端子、Pm0…端子、Pis…イネーブル端子、Pos…信号出力端子。