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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】糸のデジタル染色のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   D06B 11/00 20060101AFI20240307BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240307BHJP
   B41F 17/10 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
D06B11/00 C
D06P5/30
B41F17/10 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020101964
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021014670
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】16/506,162
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・レオ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・シー・ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・エイ・ブチャー
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-532121(JP,A)
【文献】特開昭49-132392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00 - 23/00
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/00
D06J 1/00
D06P 1/00 - 7/00
B41F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸印刷システムであって、
糸を保持するためのソーススプールと、
インクを保持するためのインクタンクにそれぞれ流体接続された複数の印刷ヘッドであって、前記糸が前記ソーススプールから沿う搬送経路に沿って移動する際に、前記印刷ヘッドが、前記糸のセグメントにインクを導いて塗布するように位置付けられている、複数の印刷ヘッドと、
融着器と、
を備え、前記融着器は、
加熱要素に接続された第1のローラであって、前記印刷ヘッドが前記糸にインクを塗布した後に前記融着器が前記糸を受容するように位置付けられることにより、熱が前記インクを前記糸に融着させる、第1のローラと、
接触点で前記第1のローラに接触するように位置付けられた第2のローラと、を備え、
前記融着器は、前記接触点を通って前記糸を通過させるように位置付けられており、前記融着器は、前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って前記糸を引くように構成されており、
前記第1のローラ及び前記第2のローラが、動作中に、前記糸が、前記接触点を通過後に前記ローラのうちの1つの周りに巻かれ、前記接触点を再び通過するように構成されている、糸印刷システム。
【請求項2】
前記第1のローラ、前記第2のローラ、又は両方を回転させるように構成された駆動モータを更に備える、請求項1に記載の糸印刷システム。
【請求項3】
請求項1に記載の糸印刷システムであって、
コントローラと、
プログラミング命令を含有するメモリと、
を備え、前記プログラミング命令は、前記コントローラに、
第1のセグメント長及び第1の色を含むパターンを受信することと、
前記糸が前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って移動する際に、前記印刷ヘッドに前記第1の色のインクを前記糸の第1のセグメントに塗布することであって、前記糸の前記第1のセグメントが、前記第1のセグメント長に対応する長さを有する、塗布することと、
前記第1のセグメント長が前記印刷ヘッドを通過したときに、前記印刷ヘッドが前記第1の色の前記インクを前記糸に塗布することを停止することと、
を行わせるように構成されている、糸印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載の糸印刷システムであって、更なるプログラミング命令を更に備え、前記更なるプログラミング命令は、前記コントローラに、
前記パターンを使用して、第2のセグメント長及び第2の色を識別することと、
前記糸が前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って移動する際に、前記印刷ヘッドに前記第2の色のインクを前記糸の第2のセグメントに塗布することであって、前記糸の前記第2のセグメントが前記糸の前記第1のセグメントに隣接し、前記第2のセグメント長に対応する長さを有する、塗布することと、
前記第2のセグメント長が前記印刷ヘッドを通過したときに、前記印刷ヘッドが第2の色の前記インクを前記糸に塗布することを停止することと、を行わせるように構成されている、糸印刷システム。
【請求項5】
複数の角度のうちのいずれかで前記ソーススプールから前記糸を受容し、前記糸を前記搬送経路に導くように位置付けられ構成されたガイド構造体を更に備える、請求項1に記載の糸印刷システム。
【請求項6】
前記糸を前記融着器から受容し、前記糸をボビンの周囲に巻き付けるように位置付けられ構成された巻き取りスプールを更に備える、請求項1に記載の糸印刷システム。
【請求項7】
請求項1に記載の糸印刷システムであって、前記融着器が、
前記第1のローラに取り付けられた第1のフレーム要素と、
前記第2のローラに取り付けられた第2のフレーム要素と、
前記フレーム要素及びローラを互いに向かって引き寄せるために、前記第1のフレーム要素及び前記第2のフレーム要素に接続されたばねと、を更に備える、糸印刷システム。
【請求項8】
前記インクが、紫外線(UV)インクであり、前記システムが、前記印刷ヘッドと前記融着器との間に位置付けられ、かつ前記糸が前記融着器に入る前に前記糸に向かってUV光を導くように動作可能なUV光源を更に備える、請求項1に記載の糸印刷システム。
【請求項9】
前記融着器の少なくとも一部分の上に位置付けられ、かつ動作中に前記インクによって放出されたガスを前記融着器の領域内に保持するように構成されたシールドを更に備える、請求項1に記載の糸印刷システム。
【請求項10】
インクを糸に塗布する方法であって、
ソーススプールと、複数の印刷ヘッドと、コントローラと、接触点で接触して加熱要素に接続された一対のローラを備える融着器と、を備える糸印刷システムによって、
第1のセグメント長及び第1の色を含むパターンを受信することと、
前記糸が前記接触点を通過する際に、前記接触点で前記一対のローラから前記糸に力を加えることによって、前記印刷ヘッドのインク排出位置に対応する搬送経路に沿って前記ソーススプールから糸を通過させることと、
前記印刷ヘッドによって、前記糸が前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って移動する際に、前記第1の色のインクを前記糸の第1のセグメントに塗布することと、
インクを塗布された前記糸を前記融着器に搬送することと、
前記融着器によって、前記糸に熱を加えて、前記塗布されたインクを前記糸に融着させることと、を含
前記糸は、前記接触点から出た後に、前記ローラのうちの1つの周りに巻かれ、前記接触点を再び通過する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記コントローラによって、前記パターンを使用して、第2のセグメント長及び第2の色を識別することと、
前記印刷ヘッドによって、前記糸が前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って移動する際に、前記第2の色のインクを前記糸の第2のセグメントに塗布することと、を更に含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記システムが、巻き取りスプールを更に備え、
前記方法が、前記巻き取りスプールによって、前記糸を前記融着器から受容することと、前記糸をボビンの周囲に巻き付けることと、を更に含む、方法。
【請求項13】
糸印刷システムであって、
糸を保持するためのソーススプールと、
前記糸が前記ソーススプールから沿う搬送経路に沿って移動する際に、前記糸にインクを導いて塗布するようにそれぞれ位置付けられた、複数の印刷ヘッドと、
融着器であって、
第1の加熱要素に接続された第1のローラと、
接触点で第のローラに接触するように位置付けられた前記第2のローラと、を備え、
前記融着器は、前記印刷ヘッドが前記糸にインクを塗布した後に前記接触点で前記糸を受容するように位置付けられることによって、熱が前記インクを前記糸に融着させ、
前記融着器は、前記接触点を通って前記ソーススプールから前記搬送経路に沿って前記糸を引くように構成されている、融着器と、を備え
前記第1のローラ及び前記第2のローラが、動作中に、前記糸が、前記接触点を通過後に前記ローラのうちの1つの周りに巻かれ、前記接触点を再び通過するように構成されている、糸印刷システム。
【請求項14】
前記第1のローラ、前記第2のローラ、又は両方を回転させるように構成された駆動モータを更に備える、請求項13に記載の糸印刷システム。
【請求項15】
請求項13に記載の糸印刷システムであって、
コントローラと、
プログラミング命令を含有するメモリと、
を備え、前記プログラミング命令は、前記コントローラに、
第1のセグメント長、第1の色、第2のセグメント長及び第2の色を含むパターンを受信することと、
第1のセグメントが前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って移動する際に、前記印刷ヘッドに前記第1の色のインクを前記糸の前記第1のセグメントに塗布させることと、
前記第1のセグメント長が前記印刷ヘッドを通過したときに、前記印刷ヘッドが前記第1の色の前記インクを塗布することを停止することと、
第2のセグメントが前記印刷ヘッドを通過して前記搬送経路に沿って移動する際に、前記印刷ヘッドに前記第2の色のインクを前記糸の前記第2のセグメントに塗布させることと、
第2のセグメント長が前記印刷ヘッドを通過したときに、前記印刷ヘッドが第2の色の前記インクを塗布することを停止することと、
を行わせるように構成されている、糸印刷システム。
【請求項16】
前記糸を前記融着器から受容し、前記糸をボビンの周囲に巻き付けるように位置付けられ構成された巻き取りスプールを更に備える、請求項13に記載の糸印刷システム。
【請求項17】
請求項13に記載の糸印刷システムであって、前記融着器が、
前記第1のローラに取り付けられた第1のフレーム要素と、
前記第2のローラに取り付けられた第2のフレーム要素と、
前記フレーム要素及びローラを互いに向かって引き寄せるために、前記第1のフレーム要素及び前記第2のフレーム要素に接続されたばねと、を更に備える、糸印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プリンタは、様々な用途に長い間使用されており、最も典型的な用途は、紙などの二次元基材上にインク又はトナーを塗布することである。印刷技術(特に、インクジェット印刷技術)の最近の進歩は、円筒形物体上への印刷を含む三次元表面上への印刷を可能にしてきた。しかしながら、物体が布地である場合、物体に直接印刷することにより、望ましくない効果をもたらす可能性がある。物体が延伸し、個々の繊維が移動するにつれて、インクが個々の繊維に接触しなかった領域が現れる場合がある。加えて、布地が延伸するにつれて色境界が移動し得るので、布地に直接印刷する際に多色染めを得ることは困難であり得る。
【0002】
これに対処するために、個々のより糸の上へのインクの印刷を可能にする機構が開発されてきた。しかしながら、このような機械は、単色の糸を製造することに限定されることが多く、多くの場合において、特別に設計された印刷ヘッド及び/又は高価な硬化システム(紫外光を使用するシステムなど)を必要とする。
【0003】
したがって、上述の問題に対処する、糸に印刷するための改善された方法及びシステムが必要とされている。本文書は、これら及び/又は追加の問題に対処する方法及びシステムを説明する。
【発明の概要】
【0004】
様々な実施形態では、糸印刷システムは、糸を保持するためのソーススプール、並びにインクを保持するためのインクタンクにそれぞれ流体接続される印刷ヘッドのセットを含む。印刷ヘッドは、糸がソーススプールから沿う搬送経路に沿って移動する際に、糸のセグメントにインクを導いて塗布するように位置付けられている。システムはまた、加熱要素に接続された少なくとも第1のローラを備える融着器も含む。融着器は、印刷ヘッドが糸にインクを塗布した後に糸を受容するように位置付けられることによって、熱がインクを糸に融着させる。融着器はまた、接触点で第1のローラに接触するように位置付けられた第2のローラを含んでもよい。融着器は、接触点を通って糸を通過させるように位置付けられている。システムはまた、第1のローラ、第2のローラ、又は両方を回転させるように構成された駆動モータを含んでもよい。
【0005】
様々な実施形態において、糸印刷システムは、コントローラと、印刷エンジンと、コントローラに糸印刷プロセスを実施させるように構成されたプログラミング命令を含有するメモリと、を含む。このプロセスでは、システムは、第1のセグメント長及び第1の色を含むパターンを受信させるように、印刷エンジンに、糸が印刷ヘッドを通過して搬送経路に沿って移動する際に、印刷ヘッドに第1の色のインクを糸の第1のセグメントに塗布させるように命令する。糸の第1のセグメントは、第1のセグメント長に対応する長さを有する。システムは、第1のセグメント長が印刷ヘッドを通過したときに、印刷ヘッドが第1の色のインクを糸に塗布することを停止させる。
【0006】
いくつかの実施形態では、コントローラはまた、第2のセグメント長及び第2の色を識別するためにパターンを使用してもよい。コントローラはまた、糸が印刷ヘッドを通過して搬送経路に沿って移動する際に、印刷エンジンに、印刷ヘッドに第2の色のインクを糸の第2のセグメントに塗布させるように命令してもよい。糸の第2のセグメントは、糸の第1のセグメントに隣接し、第2のセグメント長に対応する長さを有する。システムは、第2のセグメント長が印刷ヘッドを通過したときに、印刷ヘッドが第2の色のインクを糸に塗布することを停止させる。
【0007】
任意選択的に、システムは、様々な角度のうちのいずれかでスプールから糸を受容するように位置付けられ構成されたガイド構造体を含んでもよい。ガイド構造体は、スプールから搬送経路へと糸を導くことができる。システムはまた、糸を融着器から受容し、糸をボビンの周囲に巻き付けるように位置付けられ構成された巻き取りスプールを含んでもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、融着器は、第1の印刷ローラに取り付けられた第1のフレーム要素と、第2の印刷ローラに取り付けられた第2のフレーム要素と、フレーム要素及びローラを互いに向かって引き寄せるために第1のフレーム要素及び第2のフレーム要素に接続されたばねと、を含んでもよい。したがって(又は別の方法で)、融着器は、印刷ヘッドを通過して搬送経路に沿って糸を引くように構成されてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、システムは、紫外線(UV)インクを使用してもよい。そうである場合、システムは、印刷ヘッドと融着器との間に位置付けられ、かつ糸が融着器に入る前にUV光を糸に向かって導くように動作可能なUV光源を含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、シールドが、融着器の少なくとも一部の上に位置付けられてもよい。融着器は、動作中に融着器の領域内でインクによって放出されたガスを保持するように動作可能である。
【0011】
いくつかの実施形態では、ソーススプールと、複数の印刷ヘッドと、コントローラと、加熱要素に接続された少なくとも1つのローラを含む融着器と、を含む糸印刷システムは、第1のセグメント長及び第1の色を含むパターンを受信する。システムは、印刷ヘッドのインク排出位置に対応する搬送経路に沿ってソーススプールから糸を通過させる。印刷ヘッドは、糸が印刷ヘッドを通過して搬送経路に沿って移動する際に、インクの1つ以上の色を、糸の1つ以上のセグメントに塗布する。次いで、システムは、インクが塗布された糸を融着器へと搬送する。融着器は、糸に熱を加えて、塗布されたインクを糸に融着させる。融着器のローラは、糸が接触点を通過する際に、接触点で糸に力を加えることなどによって、搬送経路に沿って糸を引いてもよい。システムはまた、巻き取りスプールを含んでもよく、そうである場合、巻き取りスプールは、糸を融着器から受容し、ボビンの周囲に糸を巻き付ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】糸をデジタル的に染色するための印刷システムの様々な例示的な要素を示す斜視図である。
図2図1の印刷システムの上面図である。
図3図1のシステムに含まれ得る例示的な融着器の構成要素を示す。
図4】糸を染色するプロセスのフロー図である。
図5】本文書に説明される様々な方法及びシステムを制御するための1つ以上の電子デバイスの様々な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示で使用される様々な用語は、この発明を実施するための形態の最後に定義される。
【0014】
図1及び図2は、糸をデジタル的に染色するための印刷システム10の例示的な要素を示す。図1は、印刷システム要素の斜視図であり、一方で、図2は、同じ要素の上面図を提供する。以下で更に詳細に説明するように、印刷システム10は、単一の糸が糸の長さに沿って複数の色を組み込み得るように、糸上への直接印刷を提供するように構成される。システムは、印刷ヘッド12のセットを含み、これは、図示されているように、複数の色の従来の又はカスタマイズされたインクジェット印刷ヘッドであり得る。図示の実施形態では、システムは、4つの印刷ヘッド12を含み、これらの印刷ヘッドのそれぞれは、単一の色のインクを含有するインクタンクに流体接続されている。図1では、例示のために例示的なインクタンク14Aがヘッドとは別個に示されているが、実際には、タンクは、インクタンク14Bと共に示されるように各ヘッドに流体接続されている。CMYK色配置では、各印刷ヘッドが単一の色のインクを排出するように、4つの印刷ヘッド及び4つのタンクが提供される。例えば、典型的な色印刷配置では、4つの印刷ヘッドが提供され、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック(CMYK)インクのそれぞれに対して1つの印刷ヘッドが用いられるので、4つの印刷ヘッドは共にインクの様々な組み合わせを印刷して、少なくとも256色の色域をもたらすことができる。しかしながら、他の数の印刷ヘッド及びインクタンク、並びに他の色の組み合わせが可能であり、本開示の範囲内に含まれることが意図される。任意選択的に、いくつかのインクタンクは、熱が加えられたときに色を変えることができる熱変色性インクを含有してもよい。
【0015】
印刷ヘッド12は、糸16が行の下で引かれ得るように行に配置されるので、糸が各印刷ヘッド12の下を通過する際に、ヘッドのいずれか又は全てからのインクが糸16に塗布されてもよい。印刷ヘッド12は、追加で示される他の要素を有する従来のインクジェットプリンタの要素であってもよく、又はこれらは、図示される糸印刷要素と共に具体的に設計された印刷システムの一部であってもよい。印刷ヘッドは、コントローラから信号を受信し、当業者に既知の印刷エンジンなどのコントローラの信号に応答して印刷ヘッドを動作させることができる印刷エンジン17の構成要素であってもよい。
【0016】
図1及び図2に示されるように、スプール11は、ソース糸が供給されるホルダとして提供される。染色されるソース糸16Aの供給物は、スプール11の周囲に巻き付けられる。スプール11は、印刷ヘッド12によってソース糸16Aに塗布されたときに複数の異なる色が見えることを可能にする任意の適切な色(白色など)のソース糸を含有してもよい。円筒形スプール11が図示されているが、ソース糸16Aは、多側面スプール(例えば、5つの側面、6つの側面、又はより多くの側面を有するスプール)、円錐形状構造体、砂時計形状構造体、糸が格納されるリム(ホイールに類似する)を含むスプール、又は他の配置などの他の構成で格納されてもよいことが理解される。
【0017】
ガイド構造体18は、スプール11と印刷ヘッド12との間に位置付けられ、ソース糸16Aを受容し、各印刷ヘッド12のインク排出位置に対応するレベル及び位置で搬送経路に沿ってソース糸16Aを位置付ける。ガイド構造体は、図示のようなガイドホイールを有する支柱、経路構造体、又は様々な角度でスプールから糸を受容することができ、かつ糸を単一の出力位置に位置付けることができる別の配置であってもよい。
【0018】
印刷ヘッドがソース糸に向かってインクを排出することができるように、ソース糸16Aは、印刷ヘッド12の下に引かれる。システムは、印刷ヘッドの後に位置付けられた巻出機(図示せず)を含んでもよく、又はシステムの他の構成要素は、印刷ヘッド12を通過して糸を移動させる引張力を提供してもよい。図1の実施形態では、融着器20が、以下に説明するように糸を引く。印刷ヘッド12からのインクは、ソース糸16Aの外周に吸収され、かつ/又はこれを取り囲むことができ、ソース糸16Aを、全ての方向から可視の印刷色(複数可)を有する染色された糸16Bに変換することができる。印刷ヘッド12は、ソース糸16Aの上方に位置付けられるように図示されているが、代替的な構成では、印刷ヘッド12は、限定されるものではないが、糸の側方又は糸の下からを含む別の方向から、インクが糸に向かって排出され得る位置において糸経路に対して位置付けられてもよい。インクは糸に浸され、糸を着色する。
【0019】
染色された糸16Bは、印刷ヘッド12から出ると、融着器20に引き寄せられる。図3に示されるように、融着器20は、1対のローラ23A、23Bを含み、そのうちの一方が時計回りに回転し、そのうちの他方が反時計回りに回転することにより、2つのローラ23A、23B間の接触点33は、染色された糸16Bが印刷ヘッドを出た後にそれを受容し、接触点33で経路を通して糸を引くように位置付けられている。融着器の2つのローラは、接触点で糸に圧力を加えることによって糸を引くことが生じるように、互いに押し付けられてもよい。この圧力は、例えば、各ローラがフレーム要素25A、25Bによって支持され、フレーム要素が、ばね28によって、又はフレーム要素25A、25B(したがってまた、ローラ23A、23B)を互いに向かって引く他の構造体によって、一緒に引かれる場合に生じ得る。ローラ23A、3Bは、より多くの力を糸に加えることを可能にするために、シリコーンなどの圧縮性材料で作製された外層を含んでもよい。任意選択的に、2つのローラ間の接触点を通過後、染色された糸16Cは、接触点を出て、ローラのうちの1つ(例えば、23A)の周りに巻かれ、接触点を再び通過してもよい。これは、より多くの引張力を提供し、ローラ23Aとローラ23Bとの間の糸の滑りを低減するのに役立つ。
【0020】
ローラの少なくとも1つ、場合によっては両方が、ローラを回転させる駆動モータに接続されてもよい。図1及び図2に戻ると、ローラの少なくとも1つ、場合によっては両方が、電源に電気的に接続され、かつローラを加熱するように機能する加熱要素21に接続されてもよく、又はその加熱要素を含んでもよい。融着器20によって生成された熱と圧力との組み合わせにより、染色された糸が融着器20を通過する際に、染色された糸16B上にインクを融着させる。糸が熱変色性インクでコーティングされた場合、融着器はまた、インクの熱変色特性に従ってインクの色を変化させることもできる。任意選択的に、塗布されたインクが紫外線(UV)インクである場合、糸16Bが融着器20に入る前に、糸16Bを光及び糸16Bへのインクに露出するために、入口に又入口の前に、UV光源(図3で40として表される)を位置付けてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、光による硬化を必要としない他の種類のインク(染料昇華インクなど)を使用してもよいように、UV光源は任意選択的である。
【0021】
また任意選択的に、図3に示すように、シールド42が、硬化及び/又は融着プロセス中にインクによって放出されたガスを保持するために、融着器及び/又はUV硬化領域の上方又は周囲に位置付けられてもよい。シールド42は、硬化/融着が完了するまで、糸の周囲の硬化又は融着領域内に放出されたガスを保持するのに役立ち、したがって、糸へのインクのより完全な塗布を促進する。
【0022】
染色された糸が融着器20から出た後、染色された糸は、シャトル又は他のデバイスを介して、機械が製造する布地に組み込まれる刺繍機の取入れ口に送達されてもよい。代替的に、図1及び図2に示されるように、染色された糸は、巻き取りスプール22によって受容されてもよく、この巻き取りスプールは、染色された糸を格納用のボビンの周囲に引き寄せるためにモータによって駆動され、回転される。
【0023】
印刷システム10の構成要素の一部又は全ては、基材30によって支持されてもよい。基材30の一部又は全部はまた、糸を越えて通過する又は糸から落下する、インクヘッドによって排出される任意のオーバースプレー又はインクを捕捉するように機能してもよい。
【0024】
図4は、上記のような印刷システムがデジタル的に糸を染色することができる方法を示す。印刷ヘッド、融着器及び/又は巻き取りスプールを駆動するモータ、並びに加熱要素などの印刷システムの様々な要素は、コントローラによって制御されてもよい。コントローラは、プロセッサと、信号を印刷システム構成要素に送信する通信デバイスと、を有する1つ以上の電子デバイスを含み、したがって、信号に従ってシステム構成要素を動作させる。このような電子デバイスの構成要素は、図5に関連して以下で説明される。図4で説明されるように、システムのプロセッサは、パターンを含有するデジタルファイル又は命令を受信するか又はそれにアクセスする(ステップ401)。パターンは、印刷システムが糸に色(複数可)を塗布するために使用するパラメータのセットである。パターンは、糸の1つ以上の連続したセグメントを識別することができ、そのそれぞれは、長さによって画定される。システムは、1つ以上の構成要素の回転(例えば、融着器ロールの回転など)によって、又は別の手段によって、実際の測定された長さに基づいて各糸セグメントの長さを決定することができる。パターンはまた、各セグメントに塗布される色を識別する。印刷システムは、セグメント及びそのセグメントの色をパターンから識別し(ステップ402)、次いで、印刷システムの構成要素に、ソーススプールから、印刷ヘッドを通過して、及び融着器に向かって糸を引かせる。印刷システムは、識別された色をセグメントにもたらす1つ以上のインクの組み合わせを塗布するように印刷ヘッドに命令し(ステップ403)、次いで、糸セグメントを、融着器を通って引き寄せ続け(ステップ405)、インクを糸に融着させる。システムは、融着器の温度、滞留時間、糸の移動速度、又はパターンファイル内の定義された規則若しくはパラメータに基づいた他のパラメータを変化させてもよい。例えば、システムは、事前に定義される糸材料に基づいて必要とされる糸の種類、延伸特性、インクの量、インクの種類などに基づいて、任意のそのようなパラメータを決定又は選択することができる。この情報は、システムのコントローラに、糸の速度、印刷持続時間、及び融着器ステーション温度、並びに露出レベルを調整させることができる。パターン化された画像は、製織設備の糸縫い密度(1インチ当たりの糸数)に基づいて決定されてもよい。
【0025】
特定の糸セグメントの終端部が印刷ヘッドを通過しようとしていると、システムは、次のセグメントがパターン内にあるかどうかを決定する(ステップ404)。そうである場合、システムは、第1の色のインクをそのセグメントに塗布することを停止し、次いで、追加のセグメント用のインクを識別し、追加のセグメントにインクを塗布し、インクを追加のセグメントに融着させるプロセスを繰り返す。このプロセスは、インクがパターンの全てのセグメントに塗布されるまで継続する。このようにして、印刷システムは、異なる色の2つ以上のセグメントを有する多色より糸を製造することができる。
【0026】
プロセスが完了すると、印刷システムは、染色された糸を巻き取りスプール上にロールするか、又は糸を布地製織システムのシャトルに通す(工程406)。
【0027】
図5は、システムのコントローラなどの、システムの電子構成要素のいずれかに含まれ得る内部ハードウェアの一例を示す。電気バス700は、ハードウェアの他の例示された構成要素を相互接続する情報ハイウェイとして機能する。プロセッサ705は、プログラミング命令を実行するために必要な計算及び論理演算を実行するように構成された、システムの中央処理デバイスである。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「プロセッサ」及び「処理デバイス」は、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、グラフィック処理ユニット(graphics processing unit、GPU)、リモートサーバ、又はこれらの組み合わせなどの一連の演算を集合的に実行するプロセッサのセット内の単一のプロセッサ又は任意の数のプロセッサを指し得る。読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、ハードドライブ、及び電子データを記憶することが可能な他のデバイスは、メモリデバイス710の例を構成する。メモリデバイスは、データ及び/又は命令が記憶される単一のデバイス又はデバイスの集合を含んでもよい。
【0028】
任意選択のディスプレイインターフェース730は、バス700からの情報が、視覚的、グラフィック的、又は英数字形式でディスプレイデバイス745上に表示されることを可能にしてもよい。オーディオインターフェース及びオーディオ出力(スピーカーなど)も提供されてもよい。外部デバイスとの通信は、無線アンテナ、RFIDタグ、及び/又は短距離又はニアフィールド通信送受信機などの様々な通信デバイス740を使用して行われてもよく、これらのそれぞれは、任意選択的に、1つ以上の通信システムを介してデバイスの他の構成要素と通信可能に接続してもよい。通信デバイス740は、インターネット、ローカルエリアネットワーク、又はセルラー電話データネットワークなどの通信ネットワークに通信可能に接続されるように構成されてもよい。
【0029】
ハードウェアはまた、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチスクリーン、タッチパッド、リモートコントロール、ポインティングデバイス、動画入力デバイス、及び/又はオーディオ入力デバイスなどの入力デバイス750からのデータの受信を可能にするユーザインターフェースセンサ755を含んでもよい。データはまた、スキャナ又はカメラなどの画像取込デバイス720から受信されてもよい。
【0030】
本文書で使用される際、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数の指示内容を含む。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される際、用語「備える(comprising又はcomprises)」は、「限定するものではないが、含む(including又はincludes)」を意味する。
【0031】
本文書では、「第1の」及び「第2の」などの用語が名詞を修飾するために使用される場合、そのような使用は、単に1つの項目を別の項目と区別することを意図するものであり、具体的に記載されない限り、連続的な順序を必要とすることを意図するものではない。
【0032】
本文書で使用される場合、「頂部」及び「底部」、「上部」及び「下部」、又は「前部」及び「後部」などの用語は、絶対的な配向性を有することを意図するものではなく、代わりに、互いに対する様々な構成要素の相対的位置を説明することを意図する。例えば、構成要素が一部分をなすデバイスが第1の方向に配向されている場合、第1の構成要素は「上部」構成要素であってもよく、第2の構成要素は「下部」構成要素であってもよい。構成要素の相対的な配向性は逆であってもよく、又は構成要素は、構成要素を含有する構造の配向性が変更される場合には、同じ平面上にあってもよい。請求項は、そのような構成要素を含有するデバイスの全ての配向性を含むことを意図する。
【0033】
本文書で使用される際、用語「糸」は、単一のより糸又は複数のより糸、ひも、織り糸、及び/又はモノフィラメントなどの繊維糸を指す。
【0034】
用語「コントローラ」、「コンピュータ」、及び「コンピューティングデバイス」は、プロセッサ及びメモリを含むデバイス又はシステムを指す。各デバイスは、それ自体のプロセッサ及び/又はメモリを有してもよく、あるいはプロセッサ及び/又はメモリは、仮想機械又はコンテナ構成のように他のデバイスと共有されてもよい。メモリは、プロセッサによって実行されるとき、電子デバイスに、プログラミング命令に従って1つ以上の動作を実行させるプログラミング命令を含有するか、又は受信する。コンピューティングデバイスの例としては、パーソナルコンピュータ、サーバ、メインフレーム、仮想機械、コンテナ、スマートフォンなどのモバイル電子デバイス、インターネット接続されたウェアラブル、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、並びにモノのインターネット構成で通信することができる機器及び他のデバイスが挙げられる。クライアント-サーバ構成では、クライアントデバイス及びサーバが電子デバイスであり、サーバは、1つ以上の通信ネットワーク内の1つ以上の通信リンクを介してクライアントデバイスがアクセスする命令及び/又はデータを含有する。仮想機械構成では、サーバは電子デバイスであってもよく、各仮想機械又はコンテナもまた、電子デバイスと見なすことができる。上記の考察において、クライアントデバイス、サーバデバイス、仮想機械又はコンテナは、簡潔さのために単に「デバイス」と称されてもよい。電子デバイスに含まれ得る追加の要素は、図5に関連して上述されている。
【0035】
用語「プロセッサ」及び「処理デバイス」は、プログラミング命令を実行するように構成された電子デバイスのハードウェア構成要素を指す。特に明記する場合を除いて、単数形の用語「プロセッサ」及び「処理デバイス」は、単一の処理デバイスの実施形態、及び複数の処理デバイスが一緒に又は集合的にプロセスを実行する実施形態の両方を含むことが意図される。
【0036】
「メモリ」、「メモリデバイス」、「データストア」、「データ記憶設備」などの用語はそれぞれ、コンピュータ可読データ、プログラミング命令、又はその両方が記憶される非一時的なデバイスを指す。特に明記する場合を除いて、「メモリ」、「メモリデバイス」、「データストア」、「データ記憶設備」などの用語は、単一のデバイスの実施形態、複数のメモリデバイスがデータ又は命令のセットを一緒に又は集合的に記憶する実施形態、並びにそのようなデバイス内の個々のセクタを含むことが意図される。
【0037】
上記の特徴及び機能、並びに代替物は、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされてもよい。様々な代替物、修正、変形、又は改善が当業者によって行われてもよく、これらのそれぞれはまた、開示される実施形態によって包含されることを意図される。
図1
図2
図3
図4
図5