IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中部電力株式会社の特許一覧

特許7449788流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置
<>
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図1
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図2
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図3
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図4
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図5
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図6
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図7
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図8
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図9
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図10
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図11
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図12
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図13
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図14
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図15
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図16
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図17
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図18
  • 特許-流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/30 20060101AFI20240307BHJP
   E02B 9/04 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01F1/30
E02B9/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020106278
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001829
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝臣
(72)【発明者】
【氏名】村井 寛人
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-232432(JP,A)
【文献】特開平10-068118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-9/02 等
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に流れる流砂との衝撃の大きさを表す検出信号を出力する加速度計と、
流砂の大きさの混合割合が異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と、単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを、複数個有しているデータベースと、
前記検出信号の波形を絶対値化してその波形を結ぶ包絡線を算出し、前記包絡線と所定時間枠とで囲まれた領域の時間積分値を演算する第1演算部と、
前記時間積分値に基づいて単位時間当たりの加速度の積分値を演算する第2演算部と、
入力された流砂の大きさ混合割合及び前記単位時間当たりの加速度の積分値に基づいて、前記データベースから、単位時間当たり流砂量を求める探索部を有する流砂量計測器。
【請求項2】
前記流砂の大きさ及び流砂の大きさ混合割合を入力する入力部を備える請求項1に記載の流砂量計測器。
【請求項3】
河川に流れる流砂との衝撃の大きさを表す検出信号を出力する加速度計と、
流砂の大きさが異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを、複数個有しているデータベースと、
前記検出信号の波形を絶対値化してその波形を結ぶ包絡線を算出し、前記包絡線と所定時間枠とで囲まれた領域の時間積分値を演算する第1演算部と、
前記時間積分値に基づいて単位時間当たりの加速度の積分値を演算する第2演算部と、
入力された流砂の大きさ及び前記単位時間当たりの加速度の積分値に基づいて、前記データベースから、単位時間当たり流砂量を求める探索部を有する流砂量計測器。
【請求項4】
前記流砂の大きさを入力する入力部を備える請求項1に記載の流砂量計測器。
【請求項5】
前記加速度計は、密閉された管内に固定された加速度センサを含む請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の流砂量計測器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の流砂量計測器が、さらに、前記単位時間当たり流砂量と取水制限閾値を比較判定する判定部を含むとともに、前記判定部の判定結果に応じてゲート駆動部を制御して取水口ゲートを開閉駆動する水力発電所の取水制御装置として構成されていて、
前記判定部は、前記単位時間当たり流砂量が、取水制限閾値を越えている場合は、取水口ゲートを閉じる取水制限信号を前記ゲート駆動部に出力する水力発電所の取水制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の流砂量計測器が、さらに、前記単位時間当たり流砂量と取水許容閾値とを比較判定する判定部を含むとともに、前記判定部の判定結果に応じてゲート駆動部を制御して取水口ゲートを開閉駆動する水力発電所の取水制御装置として構成されていて、
前記判定部は、前記単位時間当たり流砂量が、取水許容閾値未満となった場合は、取水口ゲートを開ける取水許容信号を前記ゲート駆動部に出力する水力発電所の取水制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の流砂量計測器が、さらに、前記単位時間当たり流砂量と取水制限閾値及び取水許容閾値を比較判定する判定部とを含むとともに、前記判定部の判定結果に応じてゲート駆動部を制御して取水口ゲートを開閉駆動する水力発電所の取水制御装置として構成されていて、
前記判定部は、前記単位時間当たり流砂量が、取水制限閾値を越えている場合は、取水口ゲートを閉じる取水制限信号を前記ゲート駆動部に出力し、前記単位時間当たり流砂量が、前記取水許容閾値未満となった場合は、取水口ゲートを開ける取水許容信号を前記ゲート駆動部に出力する水力発電所の取水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流込み式水力発電所では、河川の水が取水口制水門を介して沈砂池などを経て水圧鉄管に送られる。そして、水圧鉄管の中を落下した水は水車を回転させて発電機を駆動する。
河川中には、流砂が混じっており、この流砂が大量に取水口から流込み式水力発電所内に侵入すると、発電所の設備が損傷する虞がある。そこで、例えば、河川水位を計測して、その計測値が閾値以上の場合には、所定の流砂量があるものと推定し、前記取水口制水門を閉じて発電を停止するようにしている。
【0003】
なお、特許文献1では、河川に圧電センサを配置して、この圧電センサが検出した出力信号に基づいて、河川の掃流砂の粒径を求める粒径判別装置が提案されている。この装置により、河川に流れる掃流砂の粒径及び所定時間に流れる掃流砂の分布の計測を可能としている。
【0004】
また、特許文献2では、河川に加速度計を配置して、流砂が衝突したときの加速度計が検出した信号に基づいて、流砂の粒度(質量)の推測を行う粒径分布推定装置が提案されている。
【0005】
特許文献3では、河川にFBG(ファイバーブラッググレーティング)センサを配置し、前記センサが出力したブラッグ波長の光信号に基づいて、土粒子の衝突によって生じるひずみ量をFBGアナライザが検出し、前記ひずみ量に基づいて土粒子管理・監視装置が土粒子の粒径及び流砂量を決定するようにしている。
【0006】
特許文献4では、河川に濁度計を配置し、取水口制水門が開放状態の場合に、濁度が濁度上限値以上になった場合、取水口制水門を閉鎖し、取水口制水門が閉鎖の場合に濁度が濁度下限値以下になった場合、取水口制水門を開放する流込み式水力発電所の取水制御装置で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-119792号公報
【文献】特許第4514730号公報
【文献】特開2010-276343号公報
【文献】特開2006-37354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多くの流込み式水力発電所では、河川の水位を計測するダム水位計の水位や、特許文献4に開示されている濁度の値に基づいて発電の停止を行うようにしている。
しかし、例えば、河川の水位を基準にした場合、河川に流れる流砂量自体が不明のため、実際には、発電を停止しなくてもよい流砂の状態にあるにもかかわらず、河川の水位が停止すべき範囲内であるために、発電所を停止することがある。また、発電所を停止しなければならない流砂の状態であるにもかかわらず、河川の水位が再発電すべき範囲であるために、再発電してしまったという問題がある。ここで、流砂量が分かれば、発電停止・発電再開の時期の精度の向上が期待できる。
【0009】
特許文献1、及び特許文献2は、掃流砂または流砂の粒径及びその分布等を計測するものであり、流砂量を測定することは目的としておらず、また、流砂量の計測については開示されていない。
【0010】
特許文献3の土粒子管理・監視装置においては、河川の流量、幅、勾配、及び粗度係数を含む基本流速の情報を予め設定するとともに、基本流速に従うFBGセンサに対する衝突角度、衝突位置、衝突速度の確率情報、及びSalution運動理論情報を記憶部に格納することにしている。このことから、特許文献3では、河川毎にその河川の流量、幅、勾配、及び粗度係数を含む基本流速の情報を設定して入力する必要があり、汎用性に欠ける。
【0011】
本発明の目的は、上記課題を解決して、汎用性があって、いずれの河川においても、流砂量の検出を可能とした流砂量計測器及び水力発電所の取水制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、本発明の流砂量計測器は、河川に流れる流砂との衝撃の大きさを表す検出信号を出力する加速度計と、流砂の大きさの混合割合が異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と、単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを、複数個有しているデータベースと、前記検出信号の波形を絶対値化してその波形を結ぶ包絡線を算出し、前記包絡線と所定時間枠とで囲まれた領域の時間積分値を演算する第1演算部と、前記時間積分値に基づいて単位時間当たりの加速度の積分値を演算する第2演算部と、入力された流砂の大きさ混合割合及び前記単位時間当たりの加速度の積分値に基づいて、前記データベースから、単位時間当たり流砂量を求める探索部を有するものである。
【0013】
また、前記流砂の直径及び流砂の大きさの割合を入力する入力部を備えることが望ましい。
また、本発明の流砂量計測器は、河川に流れる流砂との衝撃の大きさを表す検出信号を出力する加速度計と、流砂の大きさが異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを、複数個有しているデータベースと、前記検出信号の波形を絶対値化してその波形を結ぶ包絡線を算出し、前記包絡線と所定時間枠とで囲まれた領域の時間積分値を演算する第1演算部と、前記時間積分値に基づいて単位時間当たりの加速度の積分値を演算する第2演算部と、入力された流砂の大きさ及び前記単位時間当たりの加速度の積分値に基づいて、前記データベースから、単位時間当たり流砂量を求める探索部を有するものである。
【0014】
また、前記流砂の大きさを入力する入力部を備えることが好ましい。
また、前記加速度計は、密閉された管内に固定された加速度センサを含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明は、上記の流砂量計測器が、さらに、前記単位時間当たり流砂量と取水制限閾値を比較判定する判定部を含むとともに、前記判定部の判定結果に応じてゲート駆動部を制御して取水口ゲートを開閉駆動する水力発電所の取水制御装置として構成されていて、前記判定部は、前記単位時間当たり流砂量が、取水制限閾値を越えている場合は、取水口ゲートを閉じる取水制限信号を前記ゲート駆動部に出力するものである。
【0016】
また、本発明は、上記の流砂量計測器が、さらに、前記単位時間当たり流砂量と取水許容閾値とを比較判定する判定部とを含むとともに、前記判定部の判定結果に応じてゲート駆動部を制御して取水口ゲートを開閉駆動する水力発電所の取水制御装置として構成されていて、前記判定部は、前記単位時間当たり流砂量が、取水許容閾値未満となった場合は、取水口ゲートを開ける取水許容信号を前記ゲート駆動部に出力するものである。
【0017】
また、本発明は、上記の流砂量計測器が、さらに、前記単位時間当たり流砂量と取水制限閾値及び取水許容閾値を比較判定する判定部とを含むとともに、前記判定部の判定結果に応じてゲート駆動部を制御して取水口ゲートを開閉駆動する水力発電所の取水制御装置として構成されていて、前記判定部は、前記単位時間当たり流砂量が、取水制限閾値を越えている場合は、取水口ゲートを閉じる取水制限信号を前記ゲート駆動部に出力し、前記単位時間当たり流砂量が、前記取水許容閾値未満となった場合は、取水口ゲートを開ける取水許容信号を前記ゲート駆動部に出力するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、汎用性があって、いずれの河川においても、流砂量の検出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態の流砂量計測器の電気ブロック図。
図2】試験装置の略体説明図。
図3】流砂をマイクロフォンで計測した出力値の波形図。
図4】流砂を加速度計で計測した出力値の波形図。
図5】(a)は流砂量の時間変化を示すグラフ、(b)は前記流砂量に対する加速度計の出力波形のグラフ。
図6】(a)は図4における流砂量の説明図、(b)は図4の流砂量に対応する加速度の積分値の説明図。
図7】(a)は径4mmのガラスビーズが当たったときの加速度計の出力信号の波形図、(b)は径2mmのガラスビーズが当たったときの加速度計の出力信号の波形図。
図8】(a)は径1mmのガラスビーズが当たったときの加速度計の出力信号の波形図、(b)は径0.6mmのガラスビーズが当たったときの加速度計の出力信号の波形図。
図9】(a)は珪砂1号が当たったときの加速度計の出力信号の波形図、(b)は珪砂3号が当たったときの加速度計の出力信号の波形図。
図10】珪砂5号が当たったときの加速度計の出力信号の波形図。
図11】単粒径を別々に投入した場合の単位時間当たりの加速度計の出力値の積分値と、単位時間当たり流砂量の関係を示す特性図。
図12】粒径が異なる珪砂を混合した場合の単位時間当たりの加速度計の出力値の積分値と、単位時間当たり流砂量の関係を示す特性図。
図13】データベースの説明図。
図14】流砂量演算装置が実行する計測プログラムのフローチャート。
図15】第2実施形態の流砂量計測器、及び取水制御装置の電気ブロック図。
図16】第2実施形態の水力発電所の取水制御装置において、取水口ゲートを開けた状態の略体説明図。
図17】第2実施形態の水力発電所の取水制御装置において、取水口ゲートを閉じた状態の略体説明図。
図18】取水制御装置が実行する判定プログラムのフローチャート。
図19】流込み式水力発電所での河川流量と発電使用水量の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態の流砂量計測器10を図1図13を参照して説明する。
流砂量計測器10は、加速度計20及び流砂量演算装置30とを備えている。加速度計20は、加速度センサ22が、収納ケース24内に収納されている。収納ケース24の材質及び構造は、限定するものではないが、河川内に配置されるため、水密構造であるとともに、流砂が当たっても破損しないものが好ましい。例えば、収納ケース24は、金属、合成樹脂等の材質が好ましい。本実施形態では、収納ケース24は、円形等の管材からなり、両端が蓋26により水密状に閉塞されている。加速度センサ22は、収納ケース24の内面に対して一体に固定されていて、収納ケース24に、流砂が当たったときの衝撃が、加速度センサ22に伝達可能としている。加速度センサ22の出力信号は、信号線28を介して、流砂量演算装置30に電気的に接続されている。
【0021】
流砂量演算装置30は、CPU(中央処理装置)31、RAM、ROM(ともに図示しない)及び記憶装置32などを有するコンピュータからなり、予めROMや記憶装置32に記憶させておいた計測プログラムをRAMに読み込んで実行することで後述する各部の機能が実現される。すなわち、流砂量演算装置30は、前記計測プログラムに基づいて、第1演算部33、第2演算部34、及び探索部35の機能を実現する。また、記憶装置32には、データベースが記憶されている。
【0022】
流砂量演算装置30には、入力部37が接続されている。入力部37は、キーボード、マウス等からなる。入力部37により流砂の大きさが異なる毎にその混合割合を流砂量演算装置30に入力可能としている。
【0023】
<データベースについて>
データベースについて説明する。データベースは、粒径の大きさが異なる流砂の混合割合毎に、単位時間当たりの加速度計20の出力信号の積分値(すなわち、単位時間当たりの加速度の積分値)と、単位時間当たりの加速度計20を通過した流砂量とが対応付けられている。そして、粒径の大きさが異なる流砂の混合割合及び単位時間当たりの加速度の積分値に基づいて当該加速度の積分値に対応する単位時間当たりの加速度計20を通過した流砂量の探索を可能としている。データベースについては、図13を参照して、さらに詳述する。
【0024】
<試験について>
この両者の積分値には、固有の関係があることを説明する。
図2は、試験装置が示されている。試験装置は、流砂量の時間変化と、加速度計20の出力信号の時間変化との関係を得るためのものである。
【0025】
図2に示すように試験装置は、砂Sを貯留するホッパ110、ホッパ110から投入された砂Sと給水された水Wとを溜める貯留水槽112、貯留水槽112の下部に一体に連結されるとともに、加速度計20を水Wの流れと直交する方向に配置した流路管114、及び流路管114の下部に一体に連結された砂回収水槽116を備えている。貯留水槽112からは、水W及び砂Sが自身の重量で流路管114内を流れるようにされている。加速度計20は、流路管114を流れる砂S(すなわち、流砂)が当たると、当たったときの衝撃を検出した検出信号を、図1に示す流砂量演算装置30に出力するようにされている。なお、説明の便宜上、検出信号を出力信号ということがある。
【0026】
砂回収水槽116に貯留された水Wは、砂回収水槽116の下方に設けられた地下水槽118に流れるようにされている。また、地下水槽118内の水Wは、水中ポンプ120により高架水槽122に揚水された後、流量コントロールバルブ124を備えた給水管126を介して貯留水槽112に戻る。高架水槽122の水位は、貯留水槽112の水位よりも常に高くされるように水中ポンプ120が駆動されることにより制御される。
【0027】
図3は、比較例となる図示しないマイクロフォン(水中マイク)を同じ試験装置の流路管114に配置して、試験した場合のマイクロフォンの出力信号を示している。詳しくは、図3は、径4mm、1kgの砂Sと、40L/sの流水を投入した場合に、流砂がマイクロフォンに当たったときのマイクロフォンの出力信号である。
【0028】
マイクロフォンは、加速度計20の収納ケース24と同じ大きさの管材で覆って配置した。図3に示すように、流砂が当たっていない時間帯T1と、流砂が当たっている時間帯T2とでは、出力信号の振幅は、流砂が当たっている時間帯T2の方が大きくなる。
【0029】
一方、図4は、図2に示すように、加速度計20を流路管114に配置し、径2mm、1kgの砂Sと、40L/sの流水を投入した場合に、流砂が加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号を表している。
【0030】
図4に示すように流砂が当たっていない時間帯T1と、流砂が当たっている時間帯T2とでは、出力信号の振幅は、流砂が当たっている時間帯T2の方が大きくなるが、特徴的なのは、加速度計20の方が図3のマイクロフォンの場合に比して、流砂が当たっていない場合の信号の振幅は、極端に小さい。そして、流砂が当たっている時間帯T2において、その末期には、流砂の当たる頻度が少なくなるとその振幅の収束状況を明確に把握することが可能となる。これに対して、図3のマイクロフォンの場合は、流砂が当たっている時間帯T2において、その末期には、流砂の当たる頻度が少なくなると、振幅が小さくなりノイズに邪魔されて、その流砂の検出が難しいものとなっている。図4において、矢印は当たっている時間帯後の出力信号の振幅の収束を示している。
【0031】
<流砂量と加速度計の出力信号との関係>
図5(a)は、前記試験装置において、加速度計20が配置された検出箇所を通過した流砂量の時間変化を表している。また、図5(b)は、図5(a)で測定したときの流砂量に対する加速度計の出力波形のグラフを示している。
【0032】
図6(a)は、図5(a)と同じ加速度計20の出力信号において、Δtの期間中のハッチング領域の面積は、この期間中に通過した流砂量(g)になる。この通過した流砂量(g)をΔtで除すると、単位時間当たり流砂量(mg/s)が得られる。
【0033】
一方、図6(b)は、図5(b)の出力信号をAとしたとき、|A|にして、すなわち、出力信号の0以下の負値を正値に反転した波形とし、その波形のピーク値を包絡線Hで結んだものである。
【0034】
Δtの期間中において、包絡線Hを上限とするハッチング領域の面積は、この期間中における加速度の時間積分値になる。この加速度の時間積分値をΔtで除すると、単位時間当たりの加速度の積分値になる。
【0035】
この単位時間当たり流砂量(mg/s)と単位時間当たりの加速度の積分値とを関連付けすることにより、データベースが得られることになる。
<試験データについて>
試験データの例について説明する。
【0036】
前記試験装置を使用して、径が異なるガラスビーズ、及び大きさが異なる珪砂を流砂として、水Wとともに流した場合の加速度計20の出力信号の例が、図7(a)、図7(b)、図8(a)、図8(b)、図9(a)、図9(b)、図10に示されている。
【0037】
図7(a)は、径が4mm、2kgのガラスビーズを60L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。図7(b)は、径が2mm、2kgのガラスビーズを60L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。図8(a)は、径が1mm、2kgのガラスビーズを60L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。図8(b)は、径が0.6mm、2kgのガラスビーズを60L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。
【0038】
図9(a)は、4.3mm程度の大きさのものを主に有している珪砂1号の2kgを40L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。図9(b)は、1.6mm程度の大きさのものを主に有している珪砂3号の2kgを40L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。
【0039】
図10は、0.5mm程度の大きさのものを主に有している珪砂5号の2kgを40L/sの流量で通水した際、ガラスビーズが加速度計20に当たったときの加速度計20の出力信号の波形図である。
【0040】
さらに、前記径の異なるガラスビーズ及び前記各号の珪砂について、水の流量を複数回変更した上で、前記径の異なるガラスビーズ及び前記各号の珪砂が加速度計20に当たったときの加速度計の出力信号(出力値)を得る。
【0041】
上記のように取得した、前記径の異なるガラスビーズ及び前記各号の珪砂に係る出力信号(出力値)Aを|A|にして、その波形のピーク値を包絡線Hで結び、加速度が検出された検出開始時から検出終了時までの時間中における包絡線で囲まれる領域の加速度の時間積分値を算出する。そして、この加速度の時間積分値を加速度が検出された検出開始時から検出終了時までの時間で除して、単位時間当たりの加速度の積分値を求める。
【0042】
一方で、加速度計20の各計測と合わせて前記ガラスビーズ及び珪砂の流砂量を計測する。この流砂量の計測方法は、例えば、ガラスビーズ及び珪砂が当たった検出開始時刻から検出が不能となった検出終了時刻までの期間に投入したガラスビーズ及び珪砂の量に基づいて算出するが、この方法に限定するものではない。
【0043】
この期間中に通過した流砂量を検出開始時刻から検出が不能となった検出終了時刻までの期間で除すると、単位時間当たり流砂量(mg/s)を得る。
図11は、上記のようにして得られた単位時間当たりの加速度の積分値を縦軸にし、単位時間当たり流砂量を横軸にして、上記試験で得られたデータをプロットしたものである。
【0044】
図11に示すように、ガラスビーズ4mm及び珪砂1号(大きさ4.3mm)での試験データがプロットされた群は、1つのグループにまとめることができ、図11では、「4mmのグループ」としている。また、ガラスビーズ2mm及び珪砂3号(大きさ1.6mm)の試験データがプロットされた群は、1つのグループにまとめることができ、図11では、「2mmのグループ」としている。また、ガラスビーズ1mmの試験データがプロットされた群は、「1mmのグループ」としてまとめることができる。また、ガラスビーズ0.6mm及び珪砂5号(大きさ0.5mm)の試験データがプロットされた群は、1つのグループにまとめることができ、図11では、「0.6mmのグループ」としている。
【0045】
図11に示すように、これらのグループは、単位時間当たりの加速度の積分値が大きくなるほど、単位時間当たり流砂量が大きくなり、流砂の径等の大きさ毎に、回帰曲線(流砂量曲線)をモデル化することが可能となっている。
【0046】
また、珪砂1号、3号の単独、または珪砂1号、3号、5号を異なる混合割合で混合して、前記試験装置でデータを取得し、これらのデータに基づいて、上記と同様に単位時間当たりの加速度の積分値、及び、単位時間当たり流砂量を算出した。図12は、得られた単位時間当たりの加速度の積分値を縦軸にし、単位時間当たり流砂量を横軸にして、各データをプロットしたものである。
【0047】
図12でプロットした試験は、「珪砂1号のみ」、「珪砂3号のみ」、「珪砂1号と3号を3:1で混合」、「珪砂1号と3号を1:1で混合」、及び「珪砂1号と3号を1:3で混合」を含む。また、図12でプロットした試験は、「珪砂1号、3号、5号を1:1:1で混合」、「珪砂1号、3号、5号を1:1:3で混合」、「珪砂3号と5号を1:1で混合」、及び「珪砂3号と5号を1:3で混合」を含む。
【0048】
図12のプロットした試験結果では、グループGa、Gbに区別できる。
グループGaは、「珪砂1号のみ」、「珪砂1号と3号を3:1で混合」、「珪砂1号と3号を1:1で混合」、「珪砂1号と3号を1:3で混合」、「珪砂1号、3号、5号を1:1:1で混合」、及び「珪砂1号、3号、5号を1:1:3で混合」の珪砂1号が含まれたグループである。
【0049】
グループGbは、「珪砂3号のみ」、「珪砂3号と5号を1:1で混合」、及び「珪砂3号と5号を1:3で混合」の珪砂1号が混合されず、珪砂3号が含まれるグルーブである。
【0050】
図12に示すように、グループGa、Gbのそれぞれは、単位時間当たりの加速度の積分値が大きくなるほど、単位時間当たり流砂量が大きくなり、流砂の径等の大きさ毎に、回帰曲線(流砂量曲線)をモデル化することが可能となっている。
【0051】
また、このように大きさが異なる珪砂が混合された場合、単位時間当たり流砂量は、混合されたものの中で最も大きな珪砂の影響を受けることを読み取ることができる。
上記の試験結果に基づいて、本実施形態のデータベースでは、流砂の大きさ順に複数段階にレベル化されている。レベルの幅は、限定するものではないが、例えば、1~10mmの間の任意の数値毎にレベル化してもよい。流砂の大きさは、たとえば、粒径であるが、粉末や顆粒の大きさを測る値であるメッシュ値等の値であってもよい。
【0052】
例えば、レベルの幅を、1mm毎に4段階にレベル化している場合、a1<a2<a3<a4とする。a1≦1mm以下とした場合、1mm<a2≦2mm、2mm<a3≦3mm、3mm≦a4とする。
【0053】
図13に示す例では、レベルa1~a4における割合をそれぞれb1、b2、b3、b4(%)で表し、それぞれ10%単位でその割合が設定されている。
同図では、b4が70%、b3が20%、b2が10%、b1が0%のときにおける、単位時間当たり加速度の積分値(縦軸)と単位時間当たり流砂量(横軸)のテーブルが示されている。このようにして、データベースは、流砂の大きさの混合割合が異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と、単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを複数個有している。
【0054】
(実施形態の作用)
次に、加速度計20が河床等の河川内に配置された流砂量計測器10の作用を説明する。図14は、流砂量演算装置30のCPU31が、計測プログラムに従って実行されるフローチャートである。
【0055】
S20では、CPU31(第1演算部33)は、加速度計20から所定時間毎に入力された所定時間毎の出力信号Aを|A|にして、その波形のピーク値を結ぶ包絡線を算出する。なお、前記包絡線の算出方法は、限定するものではなく、周知の技術を用いればよい。例えば、包絡線を二乗平均(RMS)、ヒルベルト包絡等により算出してもよい。本実施形態では、ピーク包絡線を算出するようにしている。
【0056】
続いて、CPU31(第1演算部33)は、算出した包絡線と、所定時間枠とで囲まれた領域の加速度の時間積分値を演算する(図6(b)参照)。
S30では、CPU31(第2演算部34)は、前記加速度の時間積分値に基づいて前記所定時間枠で除して単位時間当たり加速度の積分値を演算する。
【0057】
S40では、CPU31(探索部35)は、入力部37から入力された河川の流砂の大きさの混合割合と、前記単位時間当たり加速度の積分値に基づいて、データベースから、単位時間当たり流砂量を探索し、探索結果である流砂量を前記検出信号に基づいて出力する前記流砂量として図示しないディスプレイ、或いはプリンタ等に出力する。
【0058】
なお、入力部37から入力する河川の流砂の大きさの混合割合は、河川内に配置された加速度計20の近傍に配置した河川水を、加速度計20が検出している時間と同じ時間枠で、取水して、得られた流砂に基づいてその混合割合を、掃流砂または流砂の粒径及びその分布等を計測する公知の分布計等で計測したものである。入力部37では、例えば、前記レベルa1~a4の場合、その割合がそれぞれb1、b2、b3、b4で入力される。
【0059】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の流砂量計測器10は、河川に流れる流砂との衝撃の大きさを表す検出信号を出力する加速度計20を備えている。また、流砂量計測器10は、流砂の大きさの混合割合が異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と、単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを、複数個有しているデータベースを有している。
【0060】
また、流砂量計測器10は、検出信号を絶対値化した波形を結ぶ包絡線と、所定時間枠とで囲まれた領域の時間積分値を演算する第1演算部33と、時間積分値に基づいて単位時間当たりの加速度の積分値を演算する第2演算部34を備えている。また、流砂量計測器10は、入力された流砂の大きさ混合割合及び単位時間当たりの加速度の積分値に基づいて、データベースから、単位時間当たり流砂量を求める探索部35を備えている。
【0061】
この結果、汎用性があって、いずれの河川においても、流砂量の検出ができる。
(2)本実施形態の流砂量計測器10は、流砂の大きさ及び流砂の大きさ混合割合を入力する入力部37を備える。上記構成により、データベースから求める単位時間当たり流砂量を求めることが可能となる。
【0062】
(3)また、本実施形態では、加速度計20は、密閉された管内に固定された加速度センサ22を含む。この結果、加速度センサ22を、河川等の水内に支障なく配置することが可能となる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、流込み式水力発電所240の取水制御装置200を図15図18を参照して説明する。
【0064】
図15に示すように、取水制御装置200は、加速度計20A、20Bが接続された判定装置40にて構成されている。加速度計20A、20Bを備える判定装置40は、流砂量計量器に相当する。判定装置40は、取水口ゲート60を開閉駆動するゲート駆動部50を制御する。
【0065】
判定装置40はCPU(中央処理装置)41、RAM、ROM(ともに図示しない)及び記憶装置42などを有するコンピュータからなり、予めROMや記憶装置42に記憶させておいた判定プログラムをRAMに読み込んで実行することで後述する各部の機能が実現される。すなわち、判定装置40は、前記判定プログラムに基づいて、第1演算部43、第2演算部44、探索部45及び判定部46の機能を実現する。
【0066】
また、記憶装置42には、データベースが記憶されている。第1演算部43、第2演算部44、探索部45及び前記データベースは、第1実施形態の第1演算部33、第2演算部34、探索部35及びデータベースと同様に構成され、または機能する。また、判定装置40には、入力部としてのインターフェィス47が設けられている。
【0067】
加速度計20A、20Bは、第1実施形態の加速度計20と同様に構成されている。
なお、流込み式水力発電所240では、河川205からの水は、図16に示すように、取水口ゲート60が開けられているときは取水口206を介して沈砂池210に流れ込む。図示はしないが、沈砂池210は、取水口206よりも幅が拡げられているため、流速が落ちて、水とともに流れる砂が底に沈殿する。次に、水は、導水路212から水槽220に送られる。水槽220は発電に先立ち一時的に水を貯えるためのもので、ここでも流速が低下するため残存した砂が沈殿する。水槽220に貯えられた水は、斜面に設置された水圧鉄管230の中を落下して流込み式水力発電所240の図示しない水車を回し、図示しない放水路から河川に戻される。また、前記水車は図示しない発電機を駆動して電力を発生する。
【0068】
図16に示すように、加速度計20Aは、河川205において、取水口206近傍に流れる流砂量の検出のために、取水口206の取水口ゲート60よりも河川側に配置されている。加速度計20Bは、取水口ゲート60から流れる流砂量を検出するために、取水口206において取水口ゲート60よりも沈砂池210側に配置されている。
【0069】
図15に示すように判定装置40には、インターフェィス47を介して、流砂分布計測装置70A、70Bがそれぞれ電気的に接続されている。図16に示すように流砂分布計測装置70A,70Bには、検出器80A、80Bが電気的に接続されている。インターフェィス47は、入力部に相当する。
【0070】
検出器80A、80Bは、例えば、耐水型圧電センサであって、流砂が当たったときの、音響情報を解析する流砂分布計測装置70A、70Bにそれぞれ電気的に接続されている。検出器80A、80Bは、加速度計20A、20Bの近傍にそれぞれ配置されている。流砂分布計測装置70A、70Bは、これらの音響情報を解析することにより、すなわち、土石粒子の流送に対応する固有の周波数帯域域の信号のみをフィルタにより通過させる。そして、流砂分布計測装置70A、70Bは、通過してきた特定の音響情報の数を信号強度毎に計数するマルチチャンネルカウンタ部等を備えていることにより、流砂の粒径の分布、すなわち、流砂の大きさ混合割合(すなわち、粒径分布)の計測が可能となっている。なお、この方法は、例えば、実開平05-52972号公報で公知のため、詳細な説明は省略する。なお、粒径の分布を測定する装置は、この方法に限定するものではなく、他の公知装置で行ってもよい。
【0071】
なお、本実施形態の取水制御装置200の構成中、加速度計20A、20B、判定装置40の記憶装置42、第1演算部43、第2演算部44、探索部45及びインターフェィス47は、流砂量計測器を構成する。
【0072】
(第2実施形態の作用)
次に、取水制御装置200の作用を図18のフローチャートを参照して説明する。
図18のフローチャートは、判定装置40のCPU41により、判定プログラムに従って、所定周期で実行される。
【0073】
(S110)
S110では、CPU41は、取水口ゲート状態を示すフラグを設定する。すなわち、取水口ゲート60が開位置に位置するとオン信号を判定装置40に出力る開位置リミットスイッチ(図示しない)と、取水口ゲート60が閉位置に位置するとオン信号を判定装置40に出力する閉位置リミットスイッチ(図示しない)が設けられている。
【0074】
判定装置40のCPU41は、開位置リミッスイッチからのオン信号を入力すると、状態識別フラグFを「1」に設定し、閉位置リミットスイッチからのオン信号を入力すると、状態識別フラグFを「0」に設定する。
【0075】
(S120~S140)
次のS120~S140の処理は、状態識別フラグFが「0」の場合と「1」の場合とでは、単位時間当たり流砂量Rを算出する場合のデータの取得先が異なるため、場合を分けて説明する。
【0076】
<1.状態識別フラグFが「0」の場合>
S120では、CPU41(第1演算部43)は、加速度計20Aから所定時間毎に入力された所定時間毎の出力信号Aを|A|にして、その波形のピーク値を結ぶ包絡線を算出する。なお、前記包絡線の算出方法は、第1実施形態と同様である。続いて、CPU41(第1演算部43)は、算出した包絡線と、所定時間枠とで囲まれた領域の加速度の時間積分値を演算する。
【0077】
S130では、CPU41(第2演算部44)は、前記加速度の時間積分値に基づいて前記所定時間枠で除して単位時間当たり加速度の積分値を演算する。
S140では、CPU41(探索部45)は、インターフェィス47を介して流砂分布計測装置70Aから入力された河川205の流砂の大きさの混合割合と、前記単位時間当たり加速度の積分値に基づいて、データベースから、単位時間当たり流砂量Rを探索して取得する。流砂分布計測装置70Aから入力された河川205の流砂の大きさの混合割合は、加速度計20Aから所定時間毎に入力された所定時間毎の出力信号Aと同じ時刻で取得されたものである。
【0078】
ここで、流砂分布計測装置70Aから河川205の流砂の大きさの混合割合を取得する理由は、現状の河川205での単位時間当たりの流砂量Rの流砂に流込み式水力発電所240の設備が損傷することがない粒径が含まれているか否かを知るためである。すなわち、現状の河川205での流砂の流砂分布(粒径分布)及び流砂量を精度よく把握し、水車ランナや水圧鉄管230の摩耗等、流込み式水力発電所240の設備に悪影響を与える流砂分布(粒径分布)及び流砂量であるか否かを知り、発電を再開してよいかを判断するためである。
【0079】
<2.状態識別フラグFが「1」の場合>
S120では、CPU41(第1演算部43)は、加速度計20Bから所定時間毎に入力された所定時間毎の出力信号Aを|A|にして、その波形のピーク値を結ぶ包絡線を算出する。なお、前記包絡線の算出方法は、第1実施形態と同様である。続いて、CPU41(第1演算部43)は、算出した包絡線と、所定時間枠とで囲まれた領域の加速度の時間積分値を演算する。
【0080】
S130では、CPU41(第2演算部44)は、前記加速度の時間積分値に基づいて前記所定時間枠で除して単位時間当たり加速度の積分値を演算する。
S140では、CPU41(探索部45)は、インターフェィス47を介して流砂分布計測装置70Bから入力された取水口ゲート60よりも取水口206下流における流砂の大きさの混合割合と、前記単位時間当たり加速度の積分値に基づいて、データベースから、単位時間当たり流砂量Rを探索して取得する。流砂分布計測装置70Bから入力された取水口206を通過する流砂の大きさの混合割合は、加速度計20Bから所定時間毎に入力された所定時間毎の出力信号Aと同じ時刻で取得されたものである。
【0081】
ここで、流砂分布計測装置70Bから取水口ゲート60よりも取水口206下流における流砂の大きさの混合割合を取得する理由は、下記のとおりである。すなわち、取水口ゲート60よりも取水口206を通過する流砂分布(粒径分布)及び流砂量を精度よく把握し、水車ランナや水圧鉄管230の摩耗等、流込み式水力発電所240の設備に悪影響を与える流砂分布(粒径分布)及び流砂量であるか否かを知り、発電を停止するべきか否かを判断するためである。
【0082】
(S150)
S150では、CPU41は、状態識別フラグFが「0」か、否かを判定する。そして、CPU41は、状態識別フラグFが「0」の場合は、S160に移行し、状態識別フラグFが「1」の場合は、S190に移行する。
【0083】
(S160)
S160では、CPU41(判定部46)は、単位時間当たりの流砂量Rが取水許容閾値RO未満か否かを判定する。CPU41は、単位時間当たりの流砂量Rが取水許容閾値RO未満である場合には、S170に移行し、単位時間当たりの流砂量Rが取水許容閾値RO以上である場合には、S110にリターンして、取水口ゲート60の閉状態を保持する。
【0084】
(S170)
S170では、CPU41(判定部46)は、取水口ゲート60を開ける取水許容信号をゲート駆動部50に出力する。ゲート駆動部50は、取水許容信号に応じて、取水口ゲート60を開ける。
【0085】
(S180)
S180では、CPU41は、状態識別フラグFを「1」にセットして、S110にリターンする。
【0086】
(S190)
S190では、CPU41(判定部46)は、単位時間当たりの流砂量Rが取水制限閾値RCを越えているか否かを判定する。なお、本実施形態では、取水許容閾値RO<取水制限閾値RCとしている。CPU41は、単位時間当たりの流砂量Rが取水制限閾値RCを越えている場合には、S200に移行し、単位時間当たりの流砂量Rが取水制限閾値RC以下である場合には、S110にリターンして、取水口ゲート60の開状態を保持する。
【0087】
なお、本実施形態では、取水許容閾値ROと取水制限閾値RCの大小関係は、取水許容閾値RO<取水制限閾値RCに限定するものではなく、同一の値でもよく、或いは取水許容閾値RO>取水制限閾値RCとしてもよい。
【0088】
(S200)
CPU41(判定部46)は、単位時間当たりの流砂量Rが取水制限閾値RCを越えている場合、取水口ゲート60を閉じる取水制限信号をゲート駆動部50に出力する。ゲート駆動部50は、取水制限信号に応じて、取水口ゲート60を閉じる。
【0089】
(S210)
S210では、CPU41は、状態識別フラグFを「0」にリセットして、S110にリターンする。
【0090】
本実施形態では、下記の特徴を有する。
(1)本実施形態の水力発電所の取水制御装置200は、いずれの河川においても、流砂量の検出を可能とした流砂量計測器を含む。そして、取水制御装置200の判定部46は単位時間当たり流砂量Rが取水制限閾値RCを越えている場合、取水口ゲート60を閉じる取水制限信号をゲート駆動部50に出力する。また、判定部46は単位時間当たり流砂量Rが取水許容閾値RO未満となった場合は、取水口ゲート60を開ける取水許容信号をゲート駆動部50に出力する。
【0091】
この結果、本実施形態では、汎用性があって、いずれの河川においても、流砂量の検出ができて、流込み水力発電所の取水口ゲートの開閉を行うことが可能となる。
図19は、流込み式水力発電所240を有する河川の上流域で雨量が降った場合の、河川流量の変化の一例が示されている。
【0092】
図19において、最大取水量R10は、流込み式水力発電所240が発電する際に許可されている最大の流量である。
経験的な判定流量R11は、河川の水量が多くなりつつある場合、河川の水とともに流れてくる流砂(土砂)も多くなることを監視者が経験的に予想する量であり、これ以上を取水すると水力発電所の設備が損傷するものとして、取水口ゲート60が閉じられる。経験的な判定流量R11は、誤差もあるため、安全代分が見込まれている。
【0093】
経験的な判定流量R12は、河川の水量が少なくなりつつある場合、河川の水とともに流れてくる流砂(土砂)も少なくなることを監視者が経験的に予想する量であり、水力発電所の設備が損傷しないものとして取水口ゲート60が開けられる。経験的な判定流量R12は、誤差もあるため、安全代分が見込まれている。
【0094】
この結果、従来は、経験的な判定流量R11に基づいて取水口ゲート60が閉じられる時刻t1までの最大取水量R10以下の河川水量の領域と、経験的な判定流量R12に基づいて取水口ゲート60が開けられる時刻t2からの最大取水量R10以下の河川水量が発電使用水量となる。上記の監視者が経験的に予想する量は、前述したように誤差も予想されることと、かつ、河川に流れる水の状況にも影響を受けるため、一定とはならず、変動する値である。
【0095】
これに対して、判定河川流量R21は、取水制限閾値RCに基づいて算出される河川流量であって、単位時間当たり流砂量Rが取水制限閾値RCを超えた場合に、取水口ゲート60が閉じられるときの河川流量である。
【0096】
すなわち、単位時間当たりの流砂量Rは、河川流量と関係することが多く、河川流量が多くなるほど、単位時間当たりの流砂量も増加する傾向にあるが、従来の河川流量から経験的に流砂量を推定するものでは安全代分が見込まれている。これに対して、本実施形態では、従来はt1で取水停止されていたものをt11へ取水時間を延長することが可能となる。図19は、このような事例の場合について図示している。
【0097】
従って、図19に示すように、判定河川流量R21は、経験的な判定流量R11よりも大きな値となる。
また、判定河川流量R22は、取水許容閾値ROに基づいて算出される河川流量であって、単位時間当たり流砂量Rが取水許容閾値RO未満となった場合に、取水口ゲート60が開けられるときの河川流量である。
【0098】
すなわち、単位時間当たりの流砂量Rは、河川流量と関係することが多く、河川流量が少なくなるほど、単位時間当たりの流砂量も減少する傾向にあるが、従来の河川流量から経験的に流砂量を推定するものでは安全代分が見込まれており、従来はt2で取水開始されていたものをt21へ取水時間を延長することが可能となる。図19は、このような事例の場合について図示している。
【0099】
また、従来の河川流量から経験的に流砂量を推定するものとは異なり、流砂量計測器を用いて直接的に流砂量を把握できるため、より適切な設備運用・維持管理が可能となる。
判定河川流量R22は、試験等により、得ることが可能であり、取水許容閾値ROから一義的に取得できる値である。取水許容閾値ROに基づいて取得できる判定河川流量R22は、図19に示すように、経験的な判定流量R12よりも、前記誤差を少なくすることができる。
【0100】
従って、図19に示すように、判定河川流量R22は、経験的な判定流量R12よりも大きな値となる。
この結果、本実施形態では、判定河川流量R21に基づいて取水口ゲート60が閉じられる時刻t11までの最大取水量R10以下の河川水量の領域と、判定河川流量R22に基づいて取水口ゲート60が開けられる時刻t21からの最大取水量R10以下の河川水量の領域が発電使用水量となる。
【0101】
従って、図19に示すように、従来と比較して、ハッチングで示されている領域の分を発電使用量として増加させることができる。すなわち、発電停止及び発電再開の精度向上により、発電ロスを減らし、発電量を増加させることができる。また、流砂量計測器を用いて直接的に流砂量を把握できるため、より適切な設備運用・維持管理が可能となる。
【0102】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0103】
・第1実施形態の流砂量計測器10は、流砂の大きさ及び流砂の大きさ混合割合を入力する入力部37を備えるようにした。これに代えて、同じ大きさの流砂のみが河川等に流れる場合には、流砂の大きさを入力する入力部に代えてもよい。この場合は、データベースは、流砂の大きさが異なる毎に、単位時間当たり加速度の積分値と単位時間当たり流砂量とが関連付けされた組合せを、複数個有していればよい。
【0104】
・第2実施形態では、加速度計20A、20Bを設けたが、いずれか一方を省略して、残った他方の加速度計の検出信号に基づいて、判定装置40は、ゲート駆動部50を開閉制御してもよい。この場合、流砂分布計測装置70A、70B及び検出器80A、80Bについても同様にいずれか一方を省略してよい。
【0105】
この場合、加速度計20A、流砂分布計測装置70A及び検出器80Aを省略した場合は、加速度計20Bでは取水停止の判定はできるが、取水再開(取水口ゲート開)の判定ができなくなるが、これを操作者が判定して取水再開を行えばよい。
【0106】
また、加速度計20B、流砂分布計測装置70B及び検出器80Bを省略した場合は、例えば、加速度計20B、流砂分布計測装置70B及び検出器80Bの代わりに、加速度計20A及び流砂分布計測装置70Aの出力信号に基づいて、ゲート駆動部50を閉制御するようにしてもよい。或いは、これを操作者が判定してゲート駆動部50を閉制御するようにしてもよい。
【0107】
・第2実施形態では、図15に示す判定装置40の外部に、流砂分布計測装置70A、70Bがそれぞれ電気的に接続したが、流砂分布計測装置70A、70Bの機能を判定装置40が具備していてもよい。この場合、検出器80A、80Bがインターフェィス47に電気的に接続されている。インターフェィス47は、入力部に相当する。
【0108】
・また、第2実施形態では、単体の判定装置40が単位時間当たり流砂量と取水制限閾値RCの比較判定と、単位時間当たり流砂量と取水許容閾値ROの比較判定を行うようにした。
【0109】
これに代えて、加速度計20A及び流砂分布計測装置70Aが電気的に接続される判定装置と、加速度計20B及び流砂分布計測装置70Bが電気的に接続される判定装置とをそれぞれ設けてもよい。
【0110】
この場合、加速度計20A及び流砂分布計測装置70Aが電気的に接続される判定装置の判定部46は、単位時間当たり流砂量が、取水制限閾値RCを越えている場合、取水口ゲート60を閉じる取水制限信号をゲート駆動部50に出力するものとする。
【0111】
また、加速度計20B及び流砂分布計測装置70Bが電気的に接続される判定装置の判定部46は、単位時間当たり流砂量が、取水許容閾値RO未満となった場合は、取水口ゲート60を開ける取水許容信号をゲート駆動部50に出力するものとする。
【0112】
・第2実施形態において、インターフェィス47の代わりに第1実施形態と同様に入力キーボード等の入力部を設けても良い。この場合は、第1実施形態と同様に入力部を操作して、流砂分布計測装置70A、70Bが出力した流砂の大きさの混合割合を入力すればよい。
【0113】
・第2実施形態において、流砂分布計測装置70A、70B、及び検出器80A、80Bを省略してもよい。この場合、図18のS140では、CPU41(探索部45)は、単位時間当たり加速度の積分値に基づいて、データベースから、単位時間当たり流砂量Rを探索して取得するものとする。
【0114】
・また、第2実施形態において、流砂分布計測装置70A、70B、及び検出器80A、80B、並びに、加速度計20A、20Bのいずれか一方を省略して、残った他方の加速度計の検出信号に基づいて、判定装置40は、ゲート駆動部50を開閉制御してもよい。
【0115】
この場合、加速度計20A、流砂分布計測装置70A、及び検出器80Aを省略した場合は、加速度計20Bでは取水停止の判定はできるが、取水再開(取水口ゲート開)の判定ができなくなるが、これを操作者が判定して取水再開を行えばよい。
【0116】
また、加速度計20B、流砂分布計測装置70B及び検出器80Bを省略した場合は、加速度計20Aの出力信号に基づいて、ゲート駆動部50を閉制御するようにしてもよい。或いは、これを操作者が判定してゲート駆動部50を閉制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…流砂量計測器
20、20A、20B…加速度計、
22…加速度センサ
30…流砂量演算装置
31…CPU
32…記憶装置
33…第1演算部
34…第2演算部
35…探索部
37…入力部
40…判定装置
41…CPU
42…記憶装置
43…第1演算部
44…第2演算部
45…探索部
46…判定部
47…インターフェィス
50…ゲート駆動部
60…取水口ゲート
70A、70B…流砂分布計測装置
80A、80B…検出器
200…取水制御装置
205…河川
206…取水口
210…沈砂池
212…導水路
220…水槽
230…水圧鉄管
240…流込み式発電所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19