(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240307BHJP
G03B 17/55 20210101ALI20240307BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240307BHJP
H04N 23/52 20230101ALI20240307BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240307BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B17/55
G03B17/02
G02B7/02 A
G02B7/02 E
G02B7/02 Z
H04N23/52
G03B30/00
(21)【出願番号】P 2020121286
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 恭生
(72)【発明者】
【氏名】山本 明典
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
(72)【発明者】
【氏名】楳田 勝美
(72)【発明者】
【氏名】谷川 剛基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真也
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0239105(US,A1)
【文献】国際公開第2019/225745(WO,A1)
【文献】特開2004-325603(JP,A)
【文献】特開2019-168509(JP,A)
【文献】特開2017-138523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/14
G03B 17/55
G03B 30/00
H04N 23/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側にある第1レンズと、
前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、
前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、
ヒータを備えるフレキシブルプリント基板と、を有し、
前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および、前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、
前記第1収容部は、前記第1レンズの光軸方向の位置を規制する規制部を備え、
前記像側フランジ面は、前記フレキシブルプリント基板が配置される内周領域、および、前記規制部が当接する外周領域を備えることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、を備え、
前記平面部は、前記延伸部と繋がる繋ぎ部を備え、
前記第1収容部は、前記規制部の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部を備え、
前記繋ぎ部は、前記ザグリ部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記レンズホルダは、前記ザグリ部の内面において開口する貫通孔を備え、
前記延伸部は、前記貫通孔に挿入されることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記像側レンズ面に配置される透明導電膜を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部から径方向外側に突出する突出部を備え、
前記突出部は前記ザグリ部に配置され、
前記突出部に前記透明導電膜と電気的に接続される電極が配置されることを特徴とする請求項2または3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、
前記透明導電膜は、前記黒化膜の上に積層される腕部を備え、前記腕部を介して前記電極と接続されることを特徴とする請求項4に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記像側フランジ面に配置される金属薄膜を備え、
前記金属薄膜は、前記像側フランジ面の周方向の一部に配置され、
前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部から径方向外側に突出する突出部を備え、
前記突出部は前記ザグリ部に配置され、
前記金属薄膜の周方向の先端部は、前記突出部に配置される電極と接続されることを特徴とする請求項2または3に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、
前記黒化膜の上に前記金属薄膜が積層され、
前記金属薄膜の上に保護膜が積層され、前記金属薄膜は、前記先端部を除く全範囲が前記保護膜によって覆われ、
前記平面部は環状であり、前記保護膜の上に前記平面部が配置されることを特徴とする請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記規制部は、前記像側フランジ面に当接するレンズ座面を複数備え、
前記レンズ座面のうちの2つは、前記ザグリ部に対して周方向の一方側で隣り合う位置、および、前記ザグリ部に対して周方向の他方側で隣り合う位置に配置されることを特徴とする請求項2から7の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記規制部は、前記ザグリ部の径方向外側において周方向に延びる外縁部を備えることを特徴とする請求項2から8の何れか一項に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記規制部は環状であり、前記第1レンズの外周縁と全周で対向することを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズを光軸上に配置したレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光学機器に用いられるレンズユニットが開示される。特許文献1のレンズユニットは、光軸上に配置される複数のレンズと、複数のレンズを保持するレンズホルダとを備える。レンズホルダは、鏡筒(レンズ鏡筒)と、鏡筒を覆うケース(フロントケース)とを一体に成形した成形品である。複数のレンズのうちで最も被写体側に位置する第1レンズと鏡筒との隙間は、Oリングによって封止される。
【0003】
特許文献1のレンズユニットは、屋外での使用の際にレンズユニット内で結露が発生することを抑制するため、レンズユニットの内部にヒータが配置される。ヒータは、熱伝導性を有する環状のフレキシブルプリント基板(口径板)の表面に配置した電熱線である。電熱線に通電して発熱させることにより、レンズの周囲の温度を上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ヒータを備えたフレキシブルプリント基板は、第1レンズの外周部に設けられた環状の平坦面に接している。第1レンズの平坦面は、内周部が第2レンズの外周部と対向し、外周部が鏡筒(第1レンズを収容する収容部の底面)と対向する。このように、第1レンズと鏡筒との間、および、第1レンズと第2レンズとの間にフレキシブルプリント基板が介在する構造では、第1レンズの光軸方向の位置精度がフレキシブルプリント基板の厚み公差の影響を受ける。また、フレキシブルプリント基板は押圧されると潰れるため、潰れ量の分、厚みのばらつきが増大する。従って、第1レンズの光軸方向の位置精度が低下し、レンズユニットの光学性能がばらつくという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、レンズユニットの内部にヒータを配置したことに起因する、レンズの光軸方向の位置精度の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、最も物体側にある第1レンズと、前記第1レンズに対して像側に配置される第2レンズと、前記第1レンズを収容する第1収容部、および、前記第2レンズを収容する第2収容部を備えるレンズホルダと、ヒータを備えるフレキシブルプリント基板と、を有し、前記第1レンズは、物体側レンズ面、像側レンズ面、および、前記像側レンズ面を囲む像側フランジ面を備え、前記第1収容部は、前記第1レンズの光軸方向の位置を規制する規制部を備え、前記像側フランジ面は、前記フレキシブルプリント基板が配置される内周領域、および、前記規制部が当接する外周領域を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1レンズの像側フランジ面にヒータを備えるフレキシブルプリント基板が配置されるので、第1レンズの周囲の温度を上昇させることができる。従って、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、本発明では、レンズホルダに規制部が設けられており、像側フランジ面の外周領域が規制部に当接す
る。このように、第1レンズがレンズホルダに直接当接する構造にすることで、像側フランジ面に配置されるフレキシブルプリント基板の厚み公差のばらつきが第1レンズの位置精度に影響することを回避できる。従って、フレキシブルプリント基板を像側フランジ面に配置したことによる、第1レンズの位置精度の低下を回避できる。
【0009】
本発明において、前記フレキシブルプリント基板は、前記像側フランジ面に沿う平面部と、径方向外側へ延びる延伸部と、を備え、前記平面部は、前記延伸部と繋がる繋ぎ部を備え、前記第1収容部は、前記規制部の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部を備え、前記繋ぎ部は、前記ザグリ部に配置されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板を外部に引き出すための延伸部とヒータを配置するための平面部とを繋ぐ繋ぎ部が規制部と干渉することを回避できる。従って、第1レンズの位置精度の低下を回避でき、レンズユニットの光学性能のばらつきを抑制できる。
【0010】
本発明において、前記レンズホルダは、前記ザグリ部の内面において開口する貫通孔を備え、前記延伸部は、前記貫通孔に挿入されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板を外部に引き出すために設けた延伸部が規制部と干渉することを回避できる。また、延伸部を貫通孔に通す際に屈曲させて貫通孔の内部で保持できる。あるいは、接着剤等により延伸部を貫通孔に固定することもできる。従って、外部に引き出された延伸部が引っ張られたとしても、その応力が繋ぎ部および平面部に伝わりにくい。
【0011】
本発明において、前記像側レンズ面に配置される透明導電膜を備え、前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部から径方向外側に突出する突出部を備え、前記突出部は前記ザグリ部に配置され、前記突出部に前記透明導電膜と電気的に接続される電極が配置されることが好ましい。このようにすると、透明導電膜に通電して発熱させることにより、第1レンズを直接加温できる。従って、結露の発生を抑制できる。また、フレキシブルプリント基板を用いて透明導電膜へ給電できるため、レンズユニットの内部で配線が複雑化することを回避できる。さらに、透明導電膜との接続用の電極は、ザグリ部に収容される突出部に配置されているので、レンズホルダと第1レンズとの間に電極が挟まれることを回避できる。これにより、電極を構成する導電体のパターンが潰されて短絡するなどの不具合が発生するおそれを少なくすることができる。
【0012】
本発明において、前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、前記透明導電膜は、前記黒化膜の上に積層される腕部を備え、前記腕部を介して前記電極と接続されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板が黒化膜と重なるので、フレキシブルプリント基板を配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面を透過する光によるゴーストを黒化膜によって抑制できる。また、像側フランジ面に光を拡散させるための凹凸(シボ)を形成した場合は、黒化膜によって凹凸(シボ)が埋まって平滑化される。従って、像側フランジ面に透明導電膜の腕部を形成しやすい。また、像側フランジ面にフレキシブルプリント基板上の電極と接続される取り出し電極を形成しやすい。
【0013】
本発明において、前記像側フランジ面に配置される金属薄膜を備え、前記金属薄膜は、前記像側フランジ面の周方向の一部に配置され、前記フレキシブルプリント基板は、前記平面部から径方向外側に突出する突出部を備え、前記突出部は前記ザグリ部に配置され、前記金属薄膜の周方向の先端部は、前記突出部に配置される電極と接続される構成を採用することもできる。このようにすると、金属薄膜によって第1レンズの像側フランジ面を直接加温できる。また、像側レンズ面に導電膜を形成する場合と比較して、ゴーストの発生等による光学性能への影響を少なくすることができる。
【0014】
この場合に、前記像側フランジ面に形成される黒化膜を備え、前記黒化膜の上に前記金
属薄膜が積層され、前記金属薄膜の上に保護膜が積層され、前記金属薄膜は、前記先端部を除く全範囲が前記保護膜によって覆われ、前記平面部は環状であり、前記保護膜の上に前記平面部が配置されることが好ましい。このようにすると、フレキシブルプリント基板が黒化膜と重なるので、フレキシブルプリント基板を配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面を透過する光によるゴーストを黒化膜によって抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。また、金属薄膜の上に保護膜が積層されているので、金属薄膜を保護できる。特に、高温高湿状態になると金属薄膜が酸化してクラックが発生して抵抗値が変化するおそれがあるが、保護膜を設けることによってクラックの発生を抑制できる。従って、抵抗値の変化を抑制でき、発熱量の変化を抑制できる。また、フレキシブルプリント基板を第1レンズに配置する際に、平面部を固定する固定面として保護膜を使用することが可能である。
【0015】
本発明において、前記規制部は、前記像側フランジ面に当接するレンズ座面を複数備え、前記レンズ座面のうちの2つは、前記ザグリ部に対して周方向の一方側で隣り合う位置、および、前記ザグリ部に対して周方向の他方側で隣り合う位置に配置されることが好ましい。このようにすると、ザグリ部の側に第1レンズが傾くことを抑制できる。従って、レンズユニットの光学性能の低下を抑制できる。
【0016】
本発明において、前記規制部は、前記ザグリ部の外周側において周方向に延びる外縁部を備えることが好ましい。このようにすると、外縁部によってOリングなどのシール材を支持できる。従って、ザグリ部を設けたことによってシール性が低下することを回避できる。
【0017】
本発明において、前記規制部は環状であり、前記第1レンズの外周縁と全周で対向することが好ましい。このようにすると、第1レンズの外周縁とレンズホルダとの間に配置されるOリングなどのシール材を全周で支持できる。従って、シール性が低下するおそれが少ない。また、レンズ座面を周方向に均等に配置できるため、第1レンズが傾くおそれが少ない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1レンズの像側フランジ面にヒータを備えるフレキシブルプリント基板が配置されるので、第1レンズの周囲の温度を上昇させることができる。従って、レンズユニットの内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、本発明では、レンズホルダに規制部が設けられており、像側フランジ面の外周領域が規制部に当接する。このように、第1レンズがレンズホルダに直接当接する構造にすることで、像側フランジ面に配置されるフレキシブルプリント基板の厚み公差のばらつきが第1レンズの位置精度に影響することを回避できる。従って、フレキシブルプリント基板を像側フランジ面に配置したことによる、第1レンズの位置精度の低下を回避でき、レンズユニットの光学性能のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズユニットの断面図である。
【
図2】
図1のレンズユニットの分解断面斜視図である。
【
図4】レンズホルダの平面図、および、第1レンズおよびOリングを取り外したレンズユニットの平面図である。
【
図5】第1レンズに配置されるヒータ膜、取り出し電極、および黒化膜の説明図である。
【
図7】像側フランジ面におけるフレキシブルプリント基板および取り出し電極の配置を示す説明図である。
【
図9】第1レンズに配置される金属薄膜、保護膜、および黒化膜の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したレンズユニットの実施形態を説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るレンズユニット1の断面図である。
図1において、Lはレンズユニット1の光軸である。Laは光軸L方向の一方側であり、レンズユニット1の物体側(被写体側)である。Lbは光軸L方向の他方側であり、レンズユニット1の像側である。レンズユニット1は、光軸Lに沿って1列に並ぶ複数のレンズと、複数のレンズを保持するレンズホルダ2を備える。複数のレンズは、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、第5レンズL5、第6レンズL6を備える。第2レンズL2と第3レンズL3との間には遮光板L7が配置され、第3レンズL3と第4レンズL4との間には絞りL8が配置される。
【0022】
複数のレンズのうち、最も物体側Laに位置する第1レンズL1、および、第4レンズL4はガラスレンズである。第4レンズL4は、枠状のホルダ3に固定された状態でレンズホルダ2の内側に配置される。第2レンズL2、第3レンズL3、第5レンズL5、第6レンズL6はプラスチックレンズである。最も像側Lbに位置する第6レンズL6と第5レンズL5は、接合レンズL9を構成している。なお、レンズホルダ2に保持されるレンズの数および構成は、上記の数および構成に限定されるものではない。
【0023】
レンズホルダ2は樹脂製である。レンズホルダ2は、第1レンズL1を保持する第1収容部4と、第1収容部4の像側Lbに配置される第2収容部5と、第2収容部5の外周側を囲むレンズケース6を備える。レンズケース6は、第1収容部4の外周端部から像側Lbへ延びている。第2収容部5には、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および、第6レンズL6)が保持される。
【0024】
図2は、
図1のレンズユニット1の分解断面斜視図である。
図3は、レンズホルダ2の斜視図である。
図4(a)はレンズホルダ2の平面図であり、
図4(b)は、第1レンズL1およびOリング7を取り外したレンズユニット1の平面図である。
図3、
図4は、
図1のA-A位置より上の部分(カシメ部45)の図示を省略した図である。
図1、
図2に示すように、レンズホルダ2には、第1収容部4の内周面を基準として第1レンズL1が配置される。また、第2収容部5の内周面を基準として第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズL5および、第6レンズL6)が配置される。
【0025】
第1レンズL1は、第1収容部4の底部に形成されたレンズ座面40を基準として光軸L方向に位置決めされる。
図1、
図3に示すように、第1収容部4の底部は、第2収容部5の外周面に繋がる環状接続部41と、環状接続部41の外周側において物体側Laへ突出した環状の規制部42と、規制部42の外周縁から物体側Laへ立ち上がる周壁部43を備える。
【0026】
図3、
図4に示すように、規制部42は、物体側Laを向く環状端面44からわずかに突出した突出部を複数位置に備えており、各突出部の先端面がレンズ座面40になっている。本形態では、光軸Lを中心として略等角度間隔の4か所にレンズ座面40が設けられている。第1レンズL1の外周部分はレンズ座面40に当接しており、周壁部43の先端に設けられたカシメ部45によって第1レンズL1がカシメ固定される。第1レンズL1
と第1収容部4との隙間は、Oリング7によって封止される。
【0027】
図1、
図2に示すように、第2収容部5は、第1収容部4の環状接続部41に繋がる筒部51と、光軸L方向に延びる筒部51の像側Lbの端部に設けられた底部52を備える。第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4、および接合レンズL9(第5レンズLおよび、第6レンズL6)は、第2収容部5の底部52に形成されたレンズ座面50(
図3、
図4(a)参照)を基準として光軸L方向に位置決めされる。
【0028】
第2収容部5の底部52は、物体側Laを向く環状底面53からわずかに突出した突出部を複数位置に備えており、各突出部の先端面がレンズ座面50になっている。
図4(a)に示すように、本形態では、光軸Lを中心として略等角度間隔の3か所にレンズ座面50が設けられている。また、第2収容部5は、環状底面53の内周側において像側Lbに所定深さで凹んだ凹部54と、凹部54の中央に設けられた円形の開口部55とを備える。
【0029】
接合レンズL9は、第5レンズL5の外周部分がレンズ座面50に当接することによって光軸L方向に位置決めされている。最も像側Lbに配置される第6レンズL6は凹部54の内側に収容されているが、凹部54の内面に接触しておらず、第5レンズL5を介して光軸L方向に位置決めされている。
【0030】
接合レンズL9の物体側Laに位置する第4レンズL4は、ホルダ3に保持されており、ホルダ3は第5レンズL5の外周部分と光軸L方向に当接する。また、第4レンズL4の物体側Laに位置する第3レンズL3の外周部分は、絞りL8を介してホルダ3の外周部分と光軸L方向に当接する。さらに、第3レンズL3の物体側Laに位置する第2レンズL2の外周部分は、遮光板L7を介して第3レンズL3の外周部分と光軸L方向に当接する。従って、第2レンズL2、第3レンズL3、第4レンズL4は、いずれも、レンズ座面50を基準として光軸L方向に位置決めされる。第2レンズL2は、筒部51の物体側Laの端部に設けられたカシメ部56によってカシメ固定される。
【0031】
(透明導電膜)
レンズユニット1は、第1レンズL1の表面に配置される透明導電膜16を備える。透明導電膜16は、通電により発熱する抵抗体であり、第1レンズL1を直接加温するヒータである。
図1、
図2に示すように、第1レンズL1は、物体側Laに凸の物体側レンズ面11と、物体側Laに凹の像側レンズ面12と、像側レンズ面12の外周側を囲む像側フランジ面13と、像側フランジ面13の外周側で物体側Laに凹む環状段部14を備える。像側フランジ面13は、光軸Lに対して垂直な環状の平坦面である。環状段部14には、Oリング7が配置される。
【0032】
図5は、第1レンズL1に配置される透明導電膜16、取り出し電極17A、17B、および黒化膜15の説明図である。
図5(a)~
図5(d)は、第1レンズL1を像側Lbから見た平面図である。
図5(a)は、黒化膜15の平面形状を示し、
図5(b)は、透明導電膜16の平面形状を示し、
図5(c)は、取り出し電極17A、17Bの平面形状を示す。
図5(d)は、透明導電膜16、取り出し電極17A、17B、および黒化膜15が像側レンズ面12および像側フランジ面13に積層された状態を示す。
【0033】
像側フランジ面13は光拡散面であり、全面に微細な凹凸(シボ)が形成されている。本形態では、像側フランジ面13には、黒化膜15が形成される。黒化膜15は、例えば、墨塗りを施すことにより形成される。第1レンズL1は、微細な凹凸(シボ)によって光を拡散し、且つ、墨塗りによって光を吸収するため、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。
図5(a)に示すように、黒化膜15は、像側フランジ面13の略全体に形
成されている。
【0034】
透明導電膜16は、像側レンズ面12に配置される。本形態では、透明導電膜16はITO膜である。像側レンズ面12に対する透明導電膜16の成膜工程は、像側フランジ面13に黒化膜15を形成した後に行う。レンズユニット1では、透明導電膜16への通電によって像側レンズ面12を均一に発熱させる。透明導電膜16への給電は、像側フランジ面13に配置される取り出し電極17A、17Bを介して行う。
【0035】
図5(b)に示すように、透明導電膜16は、像側フランジ面13に配置される2本の腕部16A、16Bを備える。腕部16A、16Bは、像側レンズ面12の外周縁から径方向で反対側の2方向に延びている。取り出し電極17A、17Bは、光軸Lを中心として点対称に配置される。取り出し電極17Aは、腕部16Aの先端を中心として周方向に円弧状に延びている。腕部16A、16Bは、および取り出し電極17A、17Bは、黒化膜15の上に積層される。
【0036】
(フレキシブルプリント基板)
図1、
図2に示すように、レンズユニット1は、フレキシブルプリント基板8を備える。フレキシブルプリント基板8は、第1レンズL1と第2レンズL2の間から径方向外側に延びて略直角に屈曲され、レンズホルダ2の第1収容部4に形成された貫通孔46に通されて、レンズホルダ2の像側Lbへ引き出されている。
【0037】
フレキシブルプリント基板8には、透明導電膜16への給電用の給電配線85および電極84が配置される。また、フレキシブルプリント基板8には、ヒータ9が配置される。すなわち、本形態では、第1レンズL1およびフレキシブルプリント基板8の2か所に、それぞれ、発熱部(ヒータ)が設けられている。
【0038】
図6は、フレキシブルプリント基板8の平面図である。フレキシブルプリント基板8は、像側フランジ面13に沿う環状の平面部81と、平面部81から径方向外側に向かって直線状に延びる延伸部82と、延伸部82の周方向の両側において平面部81から径方向外側に突出する突出部83を備える。平面部81には、ヒータ9が配置される。ヒータ9が配置される領域は、例えば、
図6において破線で囲んだ領域Bである。領域Bには、通電により発熱する導電材のパターン(図示省略)が形成される。
【0039】
フレキシブルプリント基板8の突出部83には、第1レンズL1に設けられた取り出し電極17A、17Bに電気的に接続される電極84が配置される。また、延伸部82には、電極84およびヒータ9に接続される給電配線85が配置される。より詳細には、突出部83は、延伸部82の周方向の一方側に配置される第1突出部83Aと、延伸部82の周方向の他方側に配置される第2突出部83Bを備える。電極84は、第1突出部83Aに配置される第1電極84Aと、第2突出部83Bに配置される第2電極84Bを備える。給電配線85は、第1電極84Aと繋がる第1給電配線85Aと、第2電極84Bと繋がる第2給電配線85Bを備える。第1電極84Aと第2電極84Bの一方は正の電極であり、第1電極84Aと第2電極84Bの他方は負の電極である。
【0040】
フレキシブルプリント基板8の平面部81は、延伸部82の径方向内側に配置される繋ぎ部86と、繋ぎ部86の周方向の両側において周方向に延びる円弧部87を備える。円弧部87は、繋ぎ部86を介して延伸部82と接続される。突出部83は、繋ぎ部86の周方向の両側において、円弧部87から径方向外側へ突出する。
【0041】
第1給電配線85Aと第2給電配線85Bは、延伸部82において電気的に絶縁された状態で略平行に延びており、繋ぎ部86において周方向で反対側へ延びている。周方向の
一方側へ延びる第1給電配線85Aは、第1突出部83Aに向けて径方向外側へ延びて第1電極84Aに接続される。また、周方向の他方側へ延びた第2給電配線85Bは、第2突出部83Bに向けて径方向外側へ延びて第2電極84Bに接続される。なお、
図6では、電極84および給電配線85の配置領域のみを図示しており、電極84および給電配線85の詳細な構成は図示を省略している。電極84は、突出部83に配置されていればよく、その配置領域は
図6に示す領域に限定されるものではない。また、給電配線85の配置領域も、
図6に示す領域に限定されるものではない。
【0042】
フレキシブルプリント基板8は、ポリイミドなどの樹脂フィルムからなる可撓性基板80Aと、可撓性基板80AにCuなどの導電材によって形成される配線や電極などのパターンを備える。本形態では、可撓性基板80Aには、透明導電膜16に通電するための電極84、透明導電膜16およびヒータ9に給電するための給電配線85、および、ヒータ9として機能する導電材のパターンが形成される。可撓性基板80Aの表面には、導電材のパターンを覆うようにオーバーコートが施される。また、導電材のパターンの一部は、オーバーコートが施されずに露出した状態になっている。例えば、透明導電膜16に電気的に接続するための電極84は、オーバーコートによって覆われていない。
【0043】
フレキシブルプリント基板8は、突出部83と周方向で隣り合う部位を径方向内側に向かって直線状に切り欠いた第1切欠き部88を備える。より詳細には、第1切欠き部88は、第1突出部83Aと延伸部82との間、および、第2突出部83Bと延伸部82との間の2か所に設けられている。第1切欠き部88を設けることにより、第1突出部83Aおよび第2突出部83Bの反りが抑制される。また、電極84と給電配線85が短絡しにくい。
【0044】
また、フレキシブルプリント基板8は、繋ぎ部86の内周縁を径方向外側に向かって直線状に切り欠いた第2切欠き部89を備える。第2切欠き部89は、延伸部82の周方向の略中央に位置しており、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bの間に配置される。第2切欠き部89を設けることにより、繋ぎ部86の反りが抑制されるとともに、第1給電配線85Aと第2給電配線85Bとが短絡しにくい。
【0045】
本形態では、第1切欠き部88および第2切欠き部89は、接着剤塗布溝として使用される。レンズユニット1を組み立てる際は、第1切欠き部88および第2切欠き部89に配置した接着剤により、フレキシブルプリント基板8が像側フランジ面13に固定される。
【0046】
図7は、像側フランジ面13におけるフレキシブルプリント基板8および取り出し電極17A、17Bの配置を示す説明図である。
図7に示すように、フレキシブルプリント基板8の平面部81を像側フランジ面13に固定する際、像側フランジ面13の中心と平面部81の中心とを一致させるように平面部81を位置決めする。平面部81の形状は、レンズユニット1の光学性能に影響を与えるおそれが少ない形状に設定されている。本形態では、平面部81の内径D1は、像側フランジ面13の内径D2よりも所定寸法(例えば、0.4mm)大きい。従って、平面部81の内周縁が像側レンズ面12の内側にはみ出して光学性能を低下させるおそれが少ない。
【0047】
像側フランジ面13に平面部81を固定する際、2つの取り出し電極17A、17Bの周方向の隙間の中央に延伸部82の幅方向の中心に設けられた第2切欠き部89を配置するように、平面部81を周方向に位置決めする。これにより、第1電極84Aと取り出し電極17Aとが重なり、第2電極84Bと取り出し電極17Bとが重なる。従って、腕部16A、16Bおよび取り出し電極17A、17Bを介して、透明導電膜16に給電配線85が電気的に接続される。
【0048】
本形態では、取り出し電極17A、17Bが周方向に延びているため、取り出し電極17Aへの給電位置と取り出し電極17Bへの給電位置とを近づけることができる。従って、取り出し電極17A、17Bとの接続用の第1電極84Aと第2電極84Bを延伸部82の近くに集約して配置できる。これにより、延伸部82と第1電極84Aおよび第2電極84Bとの間に設ける給電配線85を短く、且つ、単純な形状にすることができる。
【0049】
(第1レンズの光軸L方向の位置決め)
図8は、レンズユニット1の部分拡大断面図であり、
図4(b)のC-C位置で切断した図である。
図8に示すように、レンズホルダ2は、第1収容部4の底面から物体側Laに突出する規制部42を備えており、第1レンズL1の像側フランジ面13は、規制部42の先端に設けられたレンズ座面40に当接する外周領域13Aを備える。また、像側フランジ面13は、外周領域13Aの内周側に位置する内周領域13Bを備えており、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、内周領域13Bに配置される。
【0050】
第1レンズL1を第1収容部4に装着すると、
図4(b)、
図8に示すように、像側フランジ面13の内周領域13Bに配置された平面部81は、規制部42の内周側に配置される。従って、平面部81は、規制部42と干渉することはなく、第1レンズL1とレンズホルダ2との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれることはない。本形態では、第1レンズL1の光軸L方向の位置は、像側フランジ面13の外周領域13Aとレンズ座面40とが直接当接することによって規定される。
【0051】
図8に示すように、フレキシブルプリント基板8の平面部81は、第2レンズL2の外周縁を固定するカシメ部56よりも径方向外側まで延びている。本形態では、カシメ部56と像側フランジ面13の内周領域13Bとの光軸L方向の隙間Sは、フレキシブルプリント基板8の厚みよりも大きい。従って、平面部81は、カシメ部56と干渉することはなく、第1レンズL1とカシメ部56との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれることはない。
【0052】
(ザグリ部)
図2、
図3、
図4に示すように、第1収容部4は、規制部42の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部47を備える。
図4(b)に示すように、フレキシブルプリント基板8の延伸部82および突出部83は、ザグリ部47に配置される。また、
図2に示すように、延伸部82は、径方向外側へ延びる途中で像側Lbに曲げられて、ザグリ部47の底面に開口するスリット状の貫通孔46に挿入される。従って、延伸部82および突出部83は、規制部42と干渉しない。なお、延伸部82は、可撓性基板80Aに固定される補強板80Bを備えていてもよい。補強板80Bを備える場合、補強板80Bは、貫通孔46に配置される。
【0053】
図1、
図2に示すように、貫通孔46は、第1収容部4の底部を光軸L方向に貫通しており、第2収容部5の筒部51とレンズケース6との隙間に連通している。レンズケース6の内周面は、貫通孔46の径方向外側の縁に沿う形状に凹んでいる。貫通孔46に挿入された延伸部82は、レンズケース6の内周面と筒部51の外周面との隙間を通って、レンズホルダ2の像側Lbに引き出されている。
【0054】
本形態では、延伸部82は貫通孔46に固定されていないが、貫通孔46に接着剤を配置して、接着剤によって延伸部82を貫通孔46に固定することもできる。この場合には、貫通孔46の内周面に凹凸を形成しておくことにより、接着面積を増やすことができ、延伸部82の固定強度を高めることができる。
【0055】
規制部42は、ザグリ部47の径方向外側において周方向に延びる外縁部48を備える。外縁部48は、ザグリ部47の周方向の両側に設けられたレンズ座面40と繋がっている。従って、本形態では、規制部42は全体として環状であり、第1レンズL1の外周縁と全周で対向する。従って、第1レンズL1の外周縁に配置されるOリング7は、全周で規制部42に支持されるので、ザグリ部47の内側にOリング7が落ち込んでシール性が低下することが回避される。
【0056】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のレンズユニット1は、最も物体側Laにある第1レンズL1と、第1レンズL1に対して像側Lbに配置される第2レンズL2と、第1レンズL1を収容する第1収容部4、および、第2レンズL2を収容する第2収容部5を備えるレンズホルダ2と、ヒータ9を備えるフレキシブルプリント基板8を有する。第1レンズL1は、物体側レンズ面11、像側レンズ面12、および、像側レンズ面12を囲む像側フランジ面13を備える。第1収容部4は、第1レンズL1の光軸L方向の位置を規制する規制部42を備える。像側フランジ面13は、フレキシブルプリント基板8が配置される内周領域13B、および、規制部42が当接する外周領域13Aを備える。
【0057】
本形態のレンズユニット1は、第1レンズL1の像側フランジ面13にヒータ9を備えたフレキシブルプリント基板8が配置されるので、第1レンズL1の周囲の温度を上昇させることができる。従って、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、第1レンズL1の外周領域13Aがレンズホルダ2に設けられた規制部42に直接当接しており、第1レンズL1とレンズホルダ2との間にフレキシブルプリント基板8が挟まれていない。従って、フレキシブルプリント基板8の厚み公差のばらつきが第1レンズL1の位置精度に影響することを回避できる。よって、第1レンズL1の位置精度の低下を回避でき、光学性能のばらつきを抑制できる。
【0058】
本形態のフレキシブルプリント基板8は、像側フランジ面13に沿う平面部81と、径方向外側へ延びる延伸部82を備えており、平面部81は、延伸部82と繋がる繋ぎ部86を備える。第1収容部4は、規制部42の内周縁から径方向外側に凹んだザグリ部47を備え、繋ぎ部86は、ザグリ部47に配置される。従って、フレキシブルプリント基板8を外部に引き出すための延伸部82と、ヒータ9を配置するための平面部81とを繋ぐ繋ぎ部86を、規制部42と干渉しないように配置できる。よって、像側フランジ面13にフレキシブルプリント基板8を配置したことによる、第1レンズL1の位置精度の低下を回避できる。
【0059】
本形態では、第1レンズL1の像側レンズ面12に配置される透明導電膜16(導電膜)を備える。フレキシブルプリント基板8は、平面部81から径方向外側に突出する突出部83を備える。突出部83はザグリ部47に配置される。また、突出部83に透明導電膜16と電気的に接続される電極84が配置される。従って、本形態では、透明導電膜16を発熱させて第1レンズL1のレンズ面を直接加温できるので、結露の発生を抑制できる。また、フレキシブルプリント基板8を用いて透明導電膜16へ給電できるため、レンズユニット1の内部で配線が複雑化することを回避できる。さらに、透明導電膜16との接続用の電極84は、ザグリ部47に収容される突出部83に配置されているので、レンズホルダ2と第1レンズL1との間に電極84が挟まれることを回避できる。従って、電極84を構成する導電体のパターンが潰されて短絡するなどの不具合が発生するおそれが少ない。
【0060】
本形態では、フレキシブルプリント基板8が配置される像側フランジ面13は、黒化膜15が形成されている。従って、フレキシブルプリント基板8に黒化膜15が重なっているので、フレキシブルプリント基板8を配置したことによる光学性能への影響が少ない。
また、像側フランジ面13を透過する光によるゴーストを黒化膜15によって抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。また、本形態では、透明導電膜16は、黒化膜15の上に積層される腕部16A、16Bを備え、腕部16A、16Bを介して電極84と接続される。このように、黒化膜15の上に透明導電膜16を形成すれば、透明導電膜16を形成しやすい。例えば、像側フランジ面13に光を拡散させるための凹凸(シボ)を形成した場合は、黒化膜15によって凹凸(シボ)が埋まって平滑化される。従って、像側フランジ面13に透明導電膜16の腕部16A、16Bを容易に形成できる。
【0061】
本形態では、規制部42は、像側フランジ面13に当接するレンズ座面40を複数備えており、レンズ座面40のうちの2つは、ザグリ部47に対して周方向の一方側で隣り合う位置、および、ザグリ部47に対して周方向の他方側で隣り合う位置に配置される。このように、ザグリ部47の両側で第1レンズL1を支持することにより、ザグリ部47の側に第1レンズL1が傾くことを回避できる。従って、レンズユニット1の光学性能の低下を抑制できる。
【0062】
本形態では、規制部42は環状であり、第1レンズL1の外周縁と全周で対向する。従って、第1レンズL1の外周縁とレンズホルダ2との間に配置されるOリング7などのシール材を全周で支持できるため、シール性が低下するおそれが少ない。また、規制部42を環状にすることで、レンズ座面40を周方向に均等に配置できる。従って、第1レンズL1が傾くことを回避でき、レンズユニット1の光学性能の低下を抑制できる。
【0063】
本形態では、規制部42は、ザグリ部47の外周側において周方向に延びる外縁部48を備える。従って、外縁部48によってOリング7を支持できるため、ザグリ部47の内側にOリング7が落ち込んでシール性が低下することを回避できる。
【0064】
(変形例)
(1)上記形態では、像側レンズ面12にヒータとして機能する透明導電膜16が設けられているが、透明導電膜16を設けなくてもよい。この場合には、像側フランジ面13に取り出し電極17A、17Bを設ける必要はない。また、フレキシブルプリント基板8には、透明導電膜16への給電用の電極84を設ける必要はない。
【0065】
(2)上記形態では、フレキシブルプリント基板の平面部81は環状であるが、平面部81の周方向の一部が欠けた形状であってもよい。
【0066】
(3)上記形態は、第1レンズL1を直接加温する導電膜として、ITO膜などの透明導電膜16を第1レンズL1の像側面(像側レンズ面12、像側フランジ面13)に配置する構成であったが、第1レンズL1の像側面に他の導電膜を配置する構成を採用することもできる。
図9は、第1レンズL1に配置される金属薄膜18、保護膜19、および黒化膜15の説明図である。
図9(a)~
図9(d)は、第1レンズL1を像側Lbから見た平面図である。
図9(a)は、黒化膜15の平面形状を示し、
図9(b)は、金属薄膜18の平面形状を示し、
図9(c)は、保護膜19の平面形状を示す。
図9(d)は、金属薄膜18、保護膜19、および黒化膜15が像側フランジ面13に積層された状態を示す。
【0067】
金属薄膜18は導電膜であり、第1レンズL1の像側フランジ面13に配置される。金属薄膜18は、例えば、NiFe膜、Ni膜またはCr膜、Ni膜とCr膜を積層した積層膜、等からなる。金属薄膜18は、黒化膜15の上に積層される。
図9(b)に示すように、金属薄膜18は、像側フランジ面13の周方向の一部に配置される。本形態では、金属薄膜18は、像側フランジ面13において円弧状に延びており、C字状の平面形状を
している。金属薄膜18の周方向の一方側の先端部18A、および、金属薄膜18の周方向の他方側の先端部18Bは、所定の隙間を開けて周方向に対向している。
【0068】
保護膜19は、水分透過性が低く、金属薄膜18を水分から保護できる。保護膜19は、例えば、SiO2膜などの非導電膜を用いることが好ましい。保護膜19は、金属薄膜18の上に積層される。
図9(c)に示すように、保護膜19は、金属薄膜18と同様にC字状の平面形状をしている。保護膜19は、像側フランジ面13の内周縁から外周縁までの径方向の全範囲に拡がっているが、保護膜19が設けられている角度範囲は、金属薄膜18が設けられている角度範囲よりも小さい。従って、
図9(d)に示すように、金属薄膜18は、先端部18A、18Bを除く全範囲が保護膜19によって覆われている。
【0069】
レンズユニット1では、金属薄膜18への通電によって像側フランジ面13を発熱させる。金属薄膜18への給電は、保護膜19から露出した先端部18A、18Bを介して行う。フレキシブルプリント基板8の平面部81を像側フランジ面13に配置された保護膜19の上に配置すると、平面部81から突出する突出部83に設けられた電極84は、金属薄膜18の先端部18A、18Bに接触する。従って、電極84を介して金属薄膜18に通電される。
【0070】
このように、
図9に示す変形例では、金属薄膜18によって第1レンズの像側フランジ面13を直接加温できるので、レンズユニット1の内部で結露して光学性能が低下することを抑制できる。また、像側レンズ面12に透明導電膜16を形成する場合と比較して、ゴーストの発生等による光学性能への影響を少なくすることができる。
【0071】
また、
図9に示す変形例では、上記形態と同様に、フレキシブルプリント基板8が黒化膜15と重なるので、フレキシブルプリント基板8を配置したことによる光学性能の低下を抑制できる。また、像側フランジ面13を透過する光によるゴーストを黒化膜15によって抑制できるので、ゴーストによる光学性能の低下を抑制できる。また、保護膜19によって金属薄膜18を保護できるので、耐環境性を高めることができる。特に、高温高湿状態になると金属薄膜18が酸化してクラックが発生して抵抗値が変化するおそれがあるが、保護膜19で金属薄膜18を保護することにより、クラックの発生を抑制できる。従って、金属薄膜18の抵抗値の変化を抑制でき、発熱量のばらつきを抑制できる。また、フレキシブルプリント基板8を第1レンズに配置する際に、平面部81を固定する固定面として保護膜19を使用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…レンズユニット、2…レンズホルダ、3…ホルダ、4…第1収容部、5…第2収容部、6…レンズケース、7…Oリング、8…フレキシブルプリント基板、9…ヒータ、11…物体側レンズ面、12…像側レンズ面、13…像側フランジ面、13A…外周領域、13B…内周領域、14…環状段部、15…黒化膜、16…透明導電膜、16A、16B…腕部、17A、17B…電極、18…金属薄膜、18A、18B…先端部、19…保護膜、40…レンズ座面、41…環状接続部、42…規制部、43…周壁部、44…環状端面、45…カシメ部、46…貫通孔、47…ザグリ部、48…外縁部、50…レンズ座面、51…筒部、52…底部、53…環状底面、54…凹部、55…開口部、56…カシメ部、80A…可撓性基板、80B…補強板、81…平面部、82…延伸部、83…突出部、83A…第1突出部、83B…第2突出部、84…電極、84A…第1電極、84B…第2電極、85…給電配線、85A…第1給電配線、85B…第2給電配線、86…繋ぎ部、87…円弧部、88…第1切欠き部、89…第2切欠き部、L…光軸、La…物体側、Lb…像側、L1…第1レンズ、L2…第3レンズL3…第3レンズ、L4…第4レンズ、L5…第5レンズ、L6…第6レンズ、L7…遮光板、L8…絞り、L9…接合レンズ、S…隙間