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特許7449804コンクリートのスランプ測定装置、及びコンクリートのスランプ測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】コンクリートのスランプ測定装置、及びコンクリートのスランプ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20240307BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N11/00 E
G01N33/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020125661
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021828
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岩城 圭介
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 智之
(72)【発明者】
【氏名】西脇 敬一
(72)【発明者】
【氏名】川又 篤
(72)【発明者】
【氏名】福岡 瑛莉奈
(72)【発明者】
【氏名】竹田 茂嗣
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 隆
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-43109(JP,U)
【文献】特開平7-52143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00-11/16
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリートのスランプ値を測定するコンクリートのスランプ測定装置であって、
前記フレッシュコンクリートが圧送される圧送路の管内圧力を、所定間隔を隔てて計測する少なくとも2つの圧力計と、
前記フレッシュコンクリートの流量を計測する流量計測手段と、
前記圧力計の間における単位長さあたりの管内圧力損失を、前記管内圧力に基づいて算出する圧力損失算出手段と、
前記管内圧力損失、及び前記フレッシュコンクリートの流量に基づいて、前記フレッシュコンクリートの前記スランプ値を取得するスランプ取得手段とを備えた
コンクリートのスランプ測定装置。
【請求項2】
前記スランプ取得手段は、
既知である流量、管内圧力損失、及びスランプ値の関係から予め求めた関係式に、前記流量計測手段から取得した前記流量、及び前記圧力損失算出手段で取得した前記管内圧力損失を適用して、前記フレッシュコンクリートのスランプ値を算出する構成である
請求項1に記載のコンクリートのスランプ測定装置。
【請求項3】
前記既知である流量、管内圧力損失、及びスランプ値の関係から予め求めた関係式は、
前記既知である流量と管内圧力損失との関係に基づいた流量の増分に対する管内圧力損失の増減割合を係数aとする下式の一次関数式である
【数1】
請求項2に記載のコンクリートのスランプ測定装置。
【請求項4】
フレッシュコンクリートのスランプ値を測定するコンクリートのスランプ測定方法であって、
前記フレッシュコンクリートが圧送される圧送路の管内圧力を、所定間隔を隔てた少なくとも2つの圧力計で計測する圧力計測工程と、
前記フレッシュコンクリートの流量を計測する流量計測工程と、
前記圧力計の間における単位長さあたりの管内圧力損失を、前記管内圧力に基づいて算出する圧力損失算出工程と、
前記管内圧力損失、及び前記フレッシュコンクリートの流量に基づいて、前記フレッシュコンクリートの前記スランプ値を取得するスランプ取得工程とを行う
コンクリートのスランプ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばフレッシュコンクリート(生コンクリート)が圧送されている圧送路から得られた情報に基づいて、フレッシュコンクリートのスランプ値を算出するようなコンクリートのスランプ測定装置、及びコンクリートのスランプ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場から出荷されたフレッシュコンクリートは、アジテータトラックから荷卸しされる現場において、品質管理のための検査が試料を採取して行われている。昨今では、このような品質管理のための検査を容易にする様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1は、フレッシュコンクリートの水分量を、試料を採取することなく測定できる装置を提案している。
【0003】
具体的には、特許文献1の装置は、フレッシュコンクリートが圧送される配管外周面から中性子線、及びガンマ線を照射し、中性子線の減衰率、及びガンマ線の減衰率に基づいて単位水量を算出することで、フレッシュコンクリートの水分量を測定するものである。
これにより、特許文献1の装置は、試料を採取することなく、水分量の測定を連続して行うことができるため、例えば、打設されるフレッシュコンクリートの全量検査を容易にできるとされている。
【0004】
ところで、フレッシュコンクリートの荷卸し時検査の一つとして、フレッシュコンクリートのスランプまたはスランプフローの測定がある。このスランプ値(スランプ、スランプフロー)測定は、日本産業規格のJISA1101の「コンクリートのスランプ試験方法」、またはJISA1150の「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じて行われている。
【0005】
しかしながら、日本産業規格によるスランプ値の測定方法では、試料を採取して行う必要があるため、その測定に手間がかかるだけでなく、フレッシュコンクリートのスランプ値を連続して測定することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-52143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、フレッシュコンクリートのスランプ値を、試料を採取することなく連続して測定できるコンクリートのスランプ測定装置、及びコンクリートのスランプ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、フレッシュコンクリートのスランプ値を測定するコンクリートのスランプ測定装置であって、前記フレッシュコンクリートが圧送される圧送路の管内圧力を、所定間隔を隔てて計測する少なくとも2つの圧力計と、前記フレッシュコンクリートの流量を計測する流量計測手段と、前記圧力計の間における単位長さあたりの管内圧力損失を、前記管内圧力に基づいて算出する圧力損失算出手段と、前記管内圧力損失、及び前記フレッシュコンクリートの流量に基づいて、前記フレッシュコンクリートの前記スランプ値を取得するスランプ取得手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記圧送路は、ポンプなどによってフレッシュコンクリートが圧送開始される部分から外部に放出される開口までの経路となる配管やホースなどのことをいう。
上記流量計測手段は、例えば流量計、またはフレッシュコンクリートを圧送するためのポンプピストンの速度に基づいて流量を算出する手段などのことをいう。
上記スランプ値は、スランプの値、またはスランプフローの値のことをいう。
【0010】
この発明によれば、コンクリートのスランプ測定装置は、例えば、フレッシュコンクリートが圧送されている圧送路から得られた情報に基づいて、フレッシュコンクリートのスランプ値を、試料を採取することなく取得することができる。
【0011】
さらに、コンクリートのスランプ測定装置は、フレッシュコンクリートのスランプ値を、試料を採取する場合に比べて遥かに短い時間間隔で取得することができる。
これにより、コンクリートのスランプ測定装置は、打設されるフレッシュコンクリートのスランプ値の全量検査を容易に行うことができる。
【0012】
この発明の態様として、前記スランプ取得手段は、既知である流量、管内圧力損失、及びスランプ値の関係から予め求めた関係式に、前記流量計測手段から取得した前記流量、及び前記圧力損失算出手段で取得した前記管内圧力損失を適用して、前記フレッシュコンクリートのスランプ値を算出する構成であってもよい。
この構成によれば、コンクリートのスランプ測定装置は、フレッシュコンクリートのスランプ値を、短い時間間隔で精度よく算出することができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記既知である流量、管内圧力損失、及びスランプ値の関係から予め求めた関係式は、前記既知である流量と管内圧力損失との関係に基づいた流量の増分に対する管内圧力損失の増減割合を係数aとする下式の一次関数式であってもよい。
【0014】
【数1】
この構成によれば、コンクリートのスランプ測定装置は、複雑な演算を用いることなく、フレッシュコンクリートのスランプ値を算出することができる。このため、コンクリートのスランプ測定装置は、フレッシュコンクリートのスランプ値を、より短い時間間隔で連続して算出することができる。
【0015】
また、この発明は、フレッシュコンクリートのスランプ値を測定するコンクリートのスランプ測定方法であって、前記フレッシュコンクリートが圧送される圧送路の管内圧力を、所定間隔を隔てた少なくとも2つの圧力計で計測する圧力計測工程と、前記フレッシュコンクリートの流量を計測する流量計測工程と、前記圧力計の間における単位長さあたりの管内圧力損失を、前記管内圧力に基づいて算出する圧力損失算出工程と、前記管内圧力損失、及び前記フレッシュコンクリートの流量に基づいて、前記フレッシュコンクリートの前記スランプ値を取得するスランプ取得工程とを行うことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、コンクリートのスランプ測定方法は、例えば、フレッシュコンクリートが圧送されている圧送路から得られた情報に基づいて、フレッシュコンクリートのスランプ値を、試料を採取することなく取得することができる。
【0017】
さらに、コンクリートのスランプ測定方法は、フレッシュコンクリートのスランプ値を、試料を採取する場合に比べて遥かに短い時間間隔で取得することができる。
これにより、コンクリートのスランプ測定方法は、打設されるフレッシュコンクリートのスランプ値の全量検査を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、フレッシュコンクリートのスランプ値を、試料を採取することなく連続して測定できるコンクリートのスランプ測定装置、及びコンクリートのスランプ測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】コンクリートのスランプ測定装置における構成を示す構成図。
図2】コンクリートのスランプ測定装置における内部構成を示すブロック図。
図3】コンクリートのスランプ測定装置における処理動作を示すフローチャート。
図4】流量と管内圧力損失との関係を説明する説明図。
図5】125A(5B)管におけるスランプ値の算出式を説明する説明図。
図6】流量及び管内圧力損失の組み合わせに対応するスランプ値の一覧を示す概略図。
図7】別の流量と管内圧力損失との関係を示す関係図。
図8】別の実施形態におけるコンクリートのスランプ測定装置の構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態におけるコンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートが圧送されている配管から得られた情報に基づいて、生コンクリートのスランプ値を算出する装置である。このようなコンクリートのスランプ測定装置1について、図1から図3を用いて説明する。
なお、図1はコンクリートのスランプ測定装置1の構成図を示し、図2はコンクリートのスランプ測定装置1のブロック図を示し、図3はコンクリートのスランプ測定装置1における処理動作のフローチャートを示している。
【0021】
まず、生コンクリートCは、図1に示すように、コンクリートポンプ車のホッパに接続された配管Hの内部を流動している。なお、生コンクリートCは、コンクリートポンプ車のポンプ(ピストン式またはスクイズ式)によって、配管Hの内部を圧送されている。
【0022】
コンクリートのスランプ測定装置1は、作業者の操作を受け付けると、各種処理動作を開始するように構成されている。
具体的には、コンクリートのスランプ測定装置1は、図1に示すように、配管Hに装着された上流圧力計2、及び下流圧力計3と、配管Hの外周面に装着された1つの流量計4と、生コンクリートCの品質異常を報知する報知部5と、これらの動作を制御する装置本体10とで構成されている。
【0023】
上流圧力計2は、図1及び図2に示すように、生コンクリートCの流動方向Fにおける上流側に配置されるとともに、装置本体10に電気的に接続されている。なお、上流圧力計2は、配管Hにおけるホッパに近い位置に配置されることが望ましい。
この上流圧力計2は、配管Hの内部圧力(以下、上流管内圧力と呼ぶ)を検出する機能と、検出した上流管内圧力を示す情報を装置本体10に出力する機能とを有している。
【0024】
また、下流圧力計3は、図1及び図2に示すように、上流圧力計2よりも流動方向Fの下流側に所定間隔を隔てて配置されるとともに、装置本体10に電気的に接続されている。
この下流圧力計3は、上流圧力計2よりも流動方向Fの下流側において、配管Hの内部圧力(以下、下流管内圧力と呼ぶ)を検出する機能と、検出した下流管内圧力を示す情報を装置本体10に出力する機能とを有している。
なお、上流圧力計2、及び下流圧力計3は、それぞれ配管Hに設けた装着孔(符号省略)に装着されるとともに、その先端が配管Hの内部に露出している。
【0025】
また、流量計4は、例えば、超音波ドップラー式流量計のように、生コンクリートCの流量を非接触で測定可能な計測器で構成されている。この流量計4は、図1及び図2に示すように、上流圧力計2と下流圧力計3との間に配置されるとともに、装置本体10に電気的に接続されている。
そして、流量計4は、配管Hの内部を流動する生コンクリートCの流量を検出する機能と、検出した流量を示す情報を装置本体10に出力する機能とを有している。
【0026】
また、報知部5は、図1及び図2に示すように、例えば、ランプやスピーカーなどで構成され、装置本体10に電気的に接続されている。この報知部5は、生コンクリートCのスランプ値が許容範囲を超えた場合、装置本体10からの報知信号に基づいて、生コンクリートCの品質異常を報知する機能を有している。
【0027】
例えば、ランプで構成された報知部5の場合、報知部5は、報知信号に基づいて、点灯することで、生コンクリートCの品質異常を報知する。あるいは、スピーカーで構成された報知部5の場合、報知部5は、音声案内を出力することで、生コンクリートCの品質異常を報知する。
【0028】
また、装置本体10は、図2に示すように、表示部11、操作部12、記憶部13、上流圧力計接続部14、下流圧力計接続部15、流量計接続部16、報知出力部17、及びこれらの動作を制御する制御部18とで構成されている。
【0029】
表示部11は、液晶ディスプレイなどで構成され、各種情報を表示する機能を有している。なお、この表示部11には、例えば、各種情報の入力を促す入力画面、スランプ値の時間的変化を示す画面、及び品質異常の報知を示す画面などが表示される。
操作部12は、キーボードなどで構成され、作業者による入力操作を受け付ける機能と、受け付けた入力内容を示す情報を制御部18に出力する機能とを有している。
【0030】
記憶部13は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この記憶部13は、上流圧力計2と下流圧力計3との間の水平換算距離L(図1参照)、スランプ値の許容範囲、各種処理の実行プログラム、及び作業者が入力した各種パラメータなどを記憶している。
【0031】
なお、水平換算距離Lは、例えば、公益社団法人土木学会発行の「コンクリートライブラリー135号コンクリートのポンプ施工指針[2012年版]」で開示されている方法に基づいて、配管Hの径、長さ、及びルートから算定するものとする。また、スランプ値の許容範囲は、日本産業規格の規格に準じた許容範囲が、生コンクリートの各種配合ごとに設定されている。
【0032】
また、上流圧力計接続部14は、上流圧力計2が電気的に接続される部分である。この上流圧力計接続部14は、上流圧力計2が出力した上流管内圧力を示す情報の入力を受け付ける機能と、取得した上流管内圧力を示す情報を制御部18に出力する機能とを有している。
また、下流圧力計接続部15は、下流圧力計3が電気的に接続される部分である。この下流圧力計接続部15は、下流圧力計3が出力した下流管内圧力を示す情報の入力を受け付ける機能と、取得した下流管内圧力を示す情報を制御部18に出力する機能とを有している。
【0033】
また、流量計接続部16は、流量計4が電気的に接続される部分である。この流量計接続部16は、流量計4に各種信号を出力する機能と、流量計4が出力した生コンクリートCの流量を示す情報の入力を受け付ける機能と、取得した生コンクリートCの流量を示す情報を制御部18に出力する機能とを有している。
報知出力部17は、制御部18の指示によって、報知部5に報知信号を出力する機能を有している。
【0034】
制御部18は、例えば、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。この制御部18は、上流圧力計2、下流圧力計3、流量計4、及び報知部5との各種信号の授受に係る処理機能と、生コンクリートCのスランプ値の算出に係る各種処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0035】
次に、上述した構成のコンクリートのスランプ測定装置1において、作業者による操作によって、生コンクリートCの圧送が開始された際の処理動作について、図3を用いて説明する。
なお、上流圧力計2、及び下流圧力計3は、生コンクリートCの圧送が開始されると、配管Hの管内圧力を常時監視して、それぞれ上流管内圧力を示す情報、及び下流管内圧力を示す情報を装置本体10に連続して出力している。
【0036】
生コンクリートCの圧送開始を確認した作業者による入力操作によって、スランプ値測定を開始すると、装置本体10の制御部18は、図3に示すように、上流圧力計2、及び下流圧力計3による管内圧力計測と、流量計4による生コンクリートCの流量計測とを開始する(ステップS101)。
【0037】
具体的には、制御部18は、生コンクリートCの圧送が開始されると、上流圧力計2が出力した上流管内圧力を示す情報、及び下流圧力計3が出力した下流管内圧力を示す情報の取得を開始する。
【0038】
さらに、制御部18は、超音波を照射させて流量の計測を開始させる開始信号を、流量計4に出力する。
この際、流量計4は、開始信号に基づいて、配管Hの内部へ向けて、超音波を連続して照射するとともに、配管Hの内部で反射した超音波を連続して受信する。そして、流量計4は、ドップラー効果に基づいて、生コンクリートCの流量を算出するとともに、流量を示す情報として装置本体10に出力する。
【0039】
開始信号を出力すると、制御部18は、図3に示すように、上流管内圧力を示す情報、下流管内圧力を示す情報、及び生コンクリートCの流量を示す情報を取得したか否かを判定する(ステップS102)。
【0040】
上流管内圧力を示す情報、下流管内圧力を示す情報、及び生コンクリートCの流量を示す情報を取得した場合(ステップS102:Yes)、制御部18は、取得した情報に基づいて、水平菅単位長さあたりの管内圧力損失PLを算出する(ステップS103)。
【0041】
具体的には、制御部18は、上流管内圧力を示す情報を上流管内圧力P1とし、下流管内圧力を示す情報を下流管内圧力P2とし、生コンクリートCの流量を示す情報を流量Qとして一時記憶する。
【0042】
さらに、制御部18は、上流圧力計2と下流圧力計3との間の水平換算距離Lを記憶部13から読み出して、一時記憶する。
その後、制御部18は、上流管内圧力P1と下流管内圧力P2との差分を、水平換算距離Lで除算して、水平菅単位長さあたりの管内圧力損失PL(以下、単に管内圧力損失PLと呼ぶ)を算出する。
【0043】
管内圧力損失PLを算出すると、制御部18は、図3に示すように、流量Qと管内圧力損失PLとを用いて、生コンクリートCのスランプ値SLを算出する(ステップS104)。
より詳しくは、制御部18は、生コンクリートCのスランプ値SLを、一次関数式である次の式1に基づいて算出する。
【0044】
【数2】
ここで、係数a、係数b、及び切片cは、流量Q、管内圧力損失PL、及びスランプ値SLの既知の関係から得られた値、換言すると、生コンクリートCの配合、配管Hの径、及びポンプ性能によって決まる値である。このため、式1の係数a、係数b、及び切片cは、予め算定され、かつ記憶部13に記憶されている。なお、この式1については、後ほど詳述する。
【0045】
生コンクリートCのスランプ値SLを取得すると、制御部18は、スランプ値SLの許容範囲を記憶部13から読み出して、生コンクリートCのスランプ値SLが、スランプ値の許容範囲内か否かを判定する(ステップS105)。
【0046】
生コンクリートCのスランプ値SLが許容範囲内であれば(ステップS105:Yes)、制御部18は、処理をステップS101に戻し、作業者の操作によって生コンクリートCの圧送が停止するまで、ステップS101から後述するステップS106の処理を繰り返す。
【0047】
一方、ステップS105において、生コンクリートCのスランプ値SLが許容範囲内でない場合(ステップS105:No)、制御部18は、エラー処理を開始する(ステップS106)。
【0048】
例えば、制御部18は、ポンプの動作を制御する装置に対して停止信号を出力し、生コンクリートCの圧送を停止させるとともに、報知部5に報知信号を出力して、生コンクリートCの品質異常を報知させる。
この場合、制御部18は、作業者による停止操作を受け付けるまで、報知信号を報知部5に出力し、停止操作を受け付けた場合、処理を終了する。
【0049】
また、図3のステップS102において、上流管内圧力を示す情報、下流管内圧力を示す情報、及び生コンクリートCの流量を示す情報を取得していない場合(ステップS102:No)、制御部18は、処理をステップS101に戻して、上流管内圧力を示す情報、下流管内圧力を示す情報、及び生コンクリートCの流量を示す情報を取得するまで待機する。
【0050】
次に、上述のステップS104で用いた式1について、図4から図6を用いて詳述する。
なお、図4は流量Qと管内圧力損失PLとの関係を説明する説明図であり、図4(a)は125A(5B)管における流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係を示し、図4(b)は150A(6B)管における流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係を示している。
【0051】
さらに、図5は125A(5B)管におけるスランプ値の算出式を説明する説明図であり、図5(a)は流量Qと管内圧力損失PLの既知の関係を示し、図5(b)は切片Nとスランプ値SLとの関係を示している。
加えて、図6は、流量Q及び管内圧力損失PLの組み合わせに対応するスランプ値SLの一覧を示している。
【0052】
本実施形態の式1は、流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係から求めた関係式である。なお、流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係としては、例えば、公益社団法人土木学会発行の「コンクリートライブラリー135号コンクリートのポンプ施工指針[2012年版]」で開示されているものを用いている。
【0053】
具体的には、既知である流量Qと管内圧力損失PLとの関係は、図4に示すように、流量Qの増加に対して管内圧力損失PLが比例関係にあるため、次の式2の関係式で表せる。
【0054】
【数3】
この式2において、流量Qの増分に対する管内圧力損失PLの増減割合である係数aは、図4(a)、及び図4(b)に示すように、同一配管であれば、スランプ値SLに関わらず一定である。一方、切片Nは、スランプ値SLごとに異なる値となっている。
【0055】
ここで、同一配管における切片Nとスランプ値SLとの関係は、図5(b)に示すように、切片Nの増加に対してスランプ値SLが比例関係にあるため、次の式3の関係式で表せる。
【0056】
【数4】
この式3のNに、上述の式2の切片Nを代入することで、本実施形態は、上述の式1を得ることができる。
【0057】
引き続き、一例として、上述の式1における係数a、係数b、及び切片cを特定する流れを、図5(a)に示すような125A(5B)管における流量Qと管内圧力損失PLとの関係を用いて説明する。
【0058】
まず、試料を採取して測定したスランプ値SLが21cmとなる生コンクリートCの場合、既知である流量Qと管内圧力損失PLとの関係は、図5(a)に示すように、PL=aQ+N=0.000245Q+0.008で表すことができる。
【0059】
同様に、試料を採取して測定したスランプ値SLが18cmとなる生コンクリートCの場合、流量Qと管内圧力損失PLとの関係は、PL=aQ+N=0.000245Q+0.0021で表すことができる。
また、試料を採取して測定したスランプ値SLが15cmとなる生コンクリートCの場合、流量Qと管内圧力損失PLとの関係は、PL=aQ+N=0.000245Q+0.0034で表すことができる。
【0060】
また、試料を採取して測定したスランプ値SLが12cmとなる生コンクリートCの場合、流量Qと管内圧力損失PLとの関係は、PL=aQ+N=0.000245Q+0.0047で表すことができる。
【0061】
つまり、配管Hが125A(5B)管の場合、流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係は、傾き(係数a)を0.000245とする下式の一次関数で表すことができる。
PL=0.000245Q+N
この際、切片Nは、スランプ値SLによって変動する値となる。
【0062】
そこで、図5(a)に示した流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係から、切片Nとスランプ値SLとの関係を求めると、切片Nとスランプ値SLとの既知の関係は、図5(b)に示すように、下式の一次関数で表すことができる。
SL=bN+c=-2307.7N+22.846
【0063】
このSL=-2307.7N+22.846のNに、上述したPL=0.000245Q+Nを変形したN=PL-0.000245Qを代入すると、下式が得られる。
SL=-2307.7(PL-0.000245Q)+22.846
【0064】
つまり、配管Hが125A(5B)管の場合、上述の式1における係数a、係数b、及び切片cは、係数aが0.000245となり、係数bが-2307.7となり、切片cが22.846となる。
このようにして、配管Hが125A(5B)管の場合における係数a、係数b、及び切片cを、流量Qと管内圧力損失PLの既知の関係に基づいて予め算定し、記憶部13に記憶させている。
【0065】
そして、係数a、係数b、及び切片cを、図3のステップS104における式1に適用することで、配管Hの内部を流動する生コンクリートCのスランプ値SLの推定値を算出している。
なお、上述の125A(5B)管の場合、流量Qと管内圧力損失PLとの組み合わせに対応するスランプ値SLを算出すると、図6のような一覧表を得ることができる。
【0066】
以上のように、生コンクリートCのスランプ値SLを測定するコンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートCが圧送される配管Hの管内圧力を、所定間隔を隔てて計測する少なくとも2つの上流圧力計2、及び下流圧力計3と、生コンクリートCの流量Qを計測する流量計4とを備えている。
【0067】
さらに、コンクリートのスランプ測定装置1は、上流圧力計2、及び下流圧力計3の間における単位長さあたりの管内圧力損失PLを、管内圧力に基づいて算出する制御部18と、管内圧力損失PL、及び生コンクリートCの流量Qに基づいて、生コンクリートCのスランプ値SLを取得する制御部18とを備えたものである。
【0068】
そのため、コンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートCが圧送されている配管Hから得られた情報に基づいて、生コンクリートCのスランプ値SLを、試料を採取することなく取得することができる。
【0069】
さらに、コンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートCのスランプ値SLを、試料を採取する場合に比べて遥かに短い時間間隔で取得することができる。
これにより、コンクリートのスランプ測定装置1は、打設される生コンクリートCのスランプ値SLの全量検査を容易に行うことができる。
【0070】
また、制御部18は、既知である流量Q、管内圧力損失PL、及びスランプ値SLの関係から予め求めた関係式(式1)に、流量計4から取得した流量Q、及び制御部18で取得した管内圧力損失PLを適用して、生コンクリートCのスランプ値SLを算出する構成である。
この構成によれば、コンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートCのスランプ値SLを、短い時間間隔で精度よく算出することができる。
【0071】
また、既知である流量Q、管内圧力損失PL、及びスランプ値SLの関係から予め求めた関係式は、既知である流量Qと管内圧力損失PLとの関係に基づいた流量Qの増分に対する管内圧力損失PLの増減割合を係数aとする式1の一次関数式である。
【0072】
この構成によれば、コンクリートのスランプ測定装置1は、複雑な演算を用いることなく、生コンクリートCのスランプ値SLを算出することができる。このため、コンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートCのスランプ値SLを、より短い時間間隔で連続して算出することができる。
【0073】
また、生コンクリートCのスランプ値SLを測定するコンクリートのスランプ測定方法は、まず、生コンクリートCが圧送される配管Hの管内圧力を、所定間隔を隔てた少なくとも2つの上流圧力計2、及び下流圧力計3で計測する圧力計測工程と、生コンクリートCの流量Qを計測する流量計測工程とを行う。
【0074】
その後、コンクリートのスランプ測定方法は、上流圧力計2、及び下流圧力計3の間における単位長さあたりの管内圧力損失PLを、管内圧力に基づいて算出する圧力損失算出工程と、管内圧力損失PL、及び生コンクリートCの流量Qに基づいて、生コンクリートCのスランプ値SLを取得するスランプ取得工程とを行うものである。
【0075】
そのため、コンクリートのスランプ測定方法は、生コンクリートCが圧送されている配管Hから得られた情報に基づいて、生コンクリートCのスランプ値SLを、試料を採取することなく取得することができる。
【0076】
さらに、コンクリートのスランプ測定方法は、生コンクリートCのスランプ値SLを、試料を採取する場合に比べて遥かに短い時間間隔で取得することができる。
これにより、コンクリートのスランプ測定方法は、打設される生コンクリートCのスランプ値SLの全量検査を容易に行うことができる。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のフレッシュコンクリートは、実施形態の生コンクリートCに対応し、
以下同様に、
圧送路は、配管Hに対応し、
管内圧力は、上流管内圧力P1、及び下流管内圧力P2に対応し、
少なくとも2つの圧力計は、上流圧力計2、及び下流圧力計3に対応し、
流量計測手段は、流量計4に対応し、
圧力損失算出手段、及びスランプ取得手段は、制御部18に対応し、
既知である流量、管内圧力損失、及びスランプ値の関係から予め求めた関係式は、式1に対応し、
圧力計測工程、及び流量計測工程は、ステップS101に対応し、
圧力損失算出工程は、ステップS103に対応し、
スランプ取得工程は、ステップS104に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0078】
例えば、上述した実施形態において、作業者の操作によってスランプ値の測定を開始するコンクリートのスランプ測定装置1としたが、これに限定せず、コンクリートポンプ車のポンプの動作を制御する装置に接続されるとともに、ポンプの作動を示す信号を受け付けるとスランプ値測定を開始するコンクリートのスランプ測定装置であってもよい。あるいは、コンクリートのスランプ測定装置1の制御部18がポンプの動作も制御する構成であってもよい。
【0079】
また、報知部5を備えたコンクリートのスランプ測定装置1としたが、これに限定せず、報知部5を備えていないコンクリートのスランプ測定装置であってもよい。さらに、この場合、エラー処理(図3のステップS106)をスキップしてもよい。
また、上流圧力計2、下流圧力計3、及び流量計4を配管Hに配置したが、これに限定せず、生コンクリートCが圧送される圧送路であれば、可撓性を有するホースなどに配置してもよい。
【0080】
また、上流圧力計2、及び下流圧力計3の2つの圧力計を備えたコンクリートのスランプ測定装置1としたが、これに限定せず、少なくとも2つ以上の圧力計を備えていればよく、例えば、3つの圧力計を備えたコンクリートのスランプ測定装置1であってもよい。
【0081】
また、図3のステップS104において、式1を用いてスランプ値SLを算出したが、これに限定せず、例えば、図6に示した流量Q及び管内圧力損失PLの組み合わせに対応するスランプ値の一覧を用いて、スランプ値SLを推定してもよい。
【0082】
より詳しくは、コンクリートのスランプ測定装置1は、図6に示した流量Q及び管内圧力損失PLの組み合わせに対応するスランプ値の一覧を予め記憶部13に記憶する。そして、図3のステップS104において、流量Q及び管内圧力損失PLの組み合わせに対応するスランプ値の一覧から、流量計4から取得した流量QとステップS103で算出した管内圧力損失PLとに対応するスランプ値を抽出し、これをスランプ値SLの推定値として取得してもよい。
【0083】
また、別の流量Qと管内圧力損失PLとの関係図を示す図7のように、流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係が、傾き(係数a)、及び切片Nが異なる一次関数式となる場合、既知の傾き(係数a)、及び切片Nの間を、それぞれ補完する関係式から未知の傾き(係数a)、及び切片Nを算出してもよい。
これにより、コンクリートのスランプ測定装置1、及びコンクリートのスランプ測定方法は、より精度よく生コンクリートCのスランプ値SLを算出することができる。
【0084】
また、流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係として、公益社団法人土木学会発行の「コンクリートライブラリー135号コンクリートのポンプ施工指針[2012年版]」で開示されている流量Qと管内圧力損失PLとの関係を用いたが、これに限定せず、独自に得た既知の関係であってもよい。
【0085】
例えば、流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係は、実際に、生コンクリートの配合などを変化させて測定したデータに基づいて得たものであってもよい。あるいは、過去の実績データから得られたものであってもよい。
このような流量Qと管内圧力損失PLとの既知の関係を用いることで、コンクリートのスランプ測定装置1は、さらに精度よく生コンクリートCのスランプ値SLを算出することができる。
【0086】
また、流量Qと管内圧力損失PLとの関係に基づいて、生コンクリートCのスランプフローの値をスランプ値として算出してもよい。さらに、流量Qと管内圧力損失PLとの関係を、生コンクリートCの圧送性を示すポンパビリティの新たな指標として提案してもよい。
【0087】
また、生コンクリートCのスランプ値SLを算出するコンクリートのスランプ測定装置1としたが、これに限定せず、スランプ値SLに加えて、生コンクリートCの水分量や空気量などを算出できるコンクリートのスランプ測定装置であってもよい。
【0088】
例えば、別の実施形態におけるコンクリートのスランプ測定装置1の構成図を示す図8のように、上流圧力計2よりも流動方向Fの上流側に中性子水分計6を備え、上流圧力計2と流量計4との間にガンマ線密度計7を備えたコンクリートのスランプ測定装置1であってもよい。
【0089】
なお、中性子水分計6は、図8に示すように、中性子線を照射する線源部6aと、照射された中性子線を検出する検出部6bとで構成されているものとする。一方、ガンマ線密度計7は、ガンマ線を照射する線源部7aと、照射されたガンマ線を検出する検出部7bとで構成されているものとする。
【0090】
そして、コンクリートのスランプ測定装置1は、中性子線の減衰率、及びガンマ線の減衰率から生コンクリートCの単位水量を算出する。このように、コンクリートのスランプ測定装置1は、生コンクリートCのスランプ値SLに加えて、生コンクリートCの水分量を算出することで、生コンクリートCの全量検査をより効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1…コンクリートのスランプ測定装置
2…上流圧力計
3…下流圧力計
4…流量計
18…制御部
C…生コンクリート
H…配管
P1…上流管内圧力
P2…下流管内圧力
PL…単位長さあたりの管内圧力損失
Q…流量
SL…スランプ値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8