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特許7449805モータ駆動制御装置およびモータユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置およびモータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240307BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20240307BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20240307BHJP
   H02H 11/00 20060101ALI20240307BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H03K17/16 H
H03K17/687 E
H02H11/00 130
H03K17/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020126541
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023540
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】小柴 敏和
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192317(JP,A)
【文献】特開2018-019520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0300987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H03K 17/16
H03K 17/687
H02H 11/00
H03K 17/08
H02P 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動させるための駆動制御信号を生成する制御回路と、
負荷駆動回路と、を備え、
前記負荷駆動回路は、
電源電圧が供給される電源端子と、
負荷に電力を与えるための駆動電圧が供給される駆動用電源端と、
前記電源端子と前記駆動用電源端との間に接続されたNチャネル型の保護用トランジスタを含む保護回路と、
前記駆動用電源端とグラウンド電位との間に配置され、入力された駆動制御信号に基づいて、前記負荷を駆動するインバータ回路と、
一方の端子が前記インバータ回路の出力端に接続されたキャパシタを含み、前記キャパシタの他方の端子に前記電源電圧を超える電圧を発生させ、その電圧を前記保護用トランジスタの制御電極に印加する昇圧部と、を有し、
前記インバータ回路は、前記駆動用電源端と前記グラウンド電位との間に直列に接続された2つの駆動用トランジスタを含むスイッチングレグを複数有し、
前記制御回路は、複数の前記スイッチングレグの前記駆動用トランジスタのスイッチング動作を制御して前記モータを駆動する負荷駆動モードと、一つの前記スイッチングレグの前記駆動用トランジスタのスイッチング動作を制御して前記昇圧部を駆動する昇圧モードとを有する
モータ駆動制御装置
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記昇圧部は、
前記電源端子と前記キャパシタの前記他方の端子との間に接続され、前記電源端子側から前記キャパシタ側へ電流を流す第1整流素子と、
前記キャパシタの前記他方の端子と前記保護用トランジスタの前記制御電極との間に接続され、前記キャパシタ側から前記保護用トランジスタの制御電極側へ電流を流す第2整流素子とを更に有する、
モータ駆動制御装置
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記保護回路は前記保護用トランジスタを2つ備え、
2つの前記保護用トランジスタは、前記電源端子と前記駆動用電源端とを結ぶ電源ライン上に互いに直列に接続されている
モータ駆動制御装置
【請求項4】
請求項2または3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記昇圧部は、
前記第1整流素子と前記キャパシタの前記他方の端子との間に接続された第1抵抗と、
前記キャパシタの前記一方の端子と前記インバータ回路の前記出力端との間に接続された第2抵抗と、を更に有する
モータ駆動制御装置
【請求項5】
請求項2または3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記昇圧部は、
前記第2整流素子と前記保護用トランジスタの前記制御電極との間に接続された抵抗を更に有する
モータ駆動制御装置
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御回路は、前記保護用トランジスタを経由しない経路からの給電によって動作する
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項乃至の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、を備える
モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷駆動回路、モータ駆動制御装置、およびモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータを備えたモータユニット等の電子機器には、電源を電子機器に逆極性で接続した場合(電源逆接続時)に発生する異常電流による電子部品の故障や不具合を防止するために、保護回路が設けられている。
【0003】
近年、モータユニットは、モータの高性能化および高出力化に伴う消費電力の増加により、電源からモータに電力を供給するための電源ラインに挿入されるデカップリングコンデンサ(バイパスコンデンサ)の容量が増加傾向にある。そのため、モータユニットの保護機能として、上述した電源逆接続による電子部品の故障を防止する機能(以下、「電源逆接続保護機能」とも称する。)に加えて、電源投入時の突入電流を抑制する機能(以下、「突入電流抑制機能」とも称する。)が要求されるようになってきている。
【0004】
従来、電源逆接続保護機能および突入電流抑制機能を有する保護回路の多くは、正極側の電源ラインに2つのPチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を直列に接続した回路によって実現されていた。
【0005】
しかしながら、Pチャネル型MOSFETは、Nチャネル型MOSFETと比較して、大きなオン抵抗(低い電流定格)を有しているために発熱量が大きく、その上、製造プロセスが複雑かつチップ面積が大きいために高価である。また、近年、Pチャネル型MOSFETを供給するメーカが減少し、製品の選択肢が少なくなってきている実情もある。
【0006】
以上のような理由から、近年、Pチャネル型MOSFETの代わりにNチャネル型MOSFETを用いた保護回路が必要とされている。例えば、特許文献1乃至3には、Nチャネル型MOSFETを用いた保護回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-187578号公報
【文献】特開2007-82374号公報
【文献】特開2015-192317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、Nチャネル型MOSFETを用いた保護回路において、電源ラインに直列に接続されているNチャネル型MOSFETを完全にオンさせるためには、Nチャネル型MOSFETのゲート端子に電源電圧よりも高い電圧を印加する必要がある。そのため、特許文献1乃至3に示すように、電源ラインに接続する保護回路にNチャネル型MOSFETを採用した場合には、Nチャネル型MOSFETの駆動電圧を生成するための昇圧回路としてのチャージポンプ回路を別途設ける必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1乃至3に示すようにチャージポンプ回路を設けた場合、コスト削減を一つの目的としてPチャネル型MOSFETの代わりにNチャネル型MOSFETを採用したにも関わらず、結果的にコストが増加するという課題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解消するためのものであり、電子機器の保護機能をより低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な実施の形態に係る負荷駆動回路は、電源電圧が供給される電源端子と、負荷に電力を与えるための駆動電圧が供給される駆動用電源端と、前記電源端子と前記駆動用電源端との間に接続されたNチャネル型の保護用トランジスタを含む保護回路と、前記駆動用電源端とグラウンド電位との間に配置され、入力された駆動制御信号に基づいて、前記負荷を駆動するインバータ回路と、一方の端子が前記インバータ回路の出力端に接続されたキャパシタを有し、前記キャパシタの他方の端子に前記電源電圧を超える電圧を発生させ、その電圧を前記保護用トランジスタの制御電極に印加する昇圧部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、電子機器の保護機能をより低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る負荷駆動回路を備えたモータ駆動制御システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る負荷駆動回路の別の構成例を示す図である。
図3】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムによる動作の流れを示すシーケンス図である。
図4】本実施の形態に係るモータ駆動制御装置における主要な電圧と制御回路の動作内容を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0015】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る負荷駆動回路(102)は、電源電圧(Vdc)が供給される電源端子(P1)と、負荷(3)に電力を与えるための駆動電圧が供給される駆動用電源端(P7)と、前記電源端子と前記駆動用電源端との間に接続されたNチャネル型の保護用トランジスタ(Qa,Qb)を含む保護回路(15)と、前記駆動用電源端とグラウンド電位との間に配置され、入力された駆動制御信号号(Sd)に基づいて、前記負荷を駆動するインバータ回路(14)と、一方の端子が前記インバータ回路の出力端(Nu/Nv/Nw)に接続されたキャパシタ(C1)を有し、前記キャパシタの他方の端子に前記電源電圧を超える電圧を発生させ、その電圧を前記保護用トランジスタの制御電極に印加する昇圧部(16)と、を備えることを特徴とする。
【0016】
〔2〕上記〔1〕に記載の負荷駆動回路において、前記昇圧部は、前記電源端子と前記キャパシタの前記他方の端子との間に接続され、前記電源端子側から前記キャパシタ側へ電流を流す第1整流素子(D1)と、前記キャパシタの前記他方の端子と前記保護用トランジスタの前記制御電極との間に接続され、前記キャパシタ側から前記保護用トランジスタの制御電極側へ電流を流す第2整流素子(D2)とを更に有していてもよい。
【0017】
〔3〕上記〔2〕に記載の負荷駆動回路において、前記保護用トランジスタを2つ備え、2つの前記保護用トランジスタは、前記電源端子と前記駆動用電源端とを結ぶ電源ライン上に互いに直列に接続されていてもよい。
【0018】
〔4〕上記〔2〕または〔3〕に記載の負荷駆動回路において、前記昇圧部は、前記第1整流素子と前記キャパシタの前記他方の端子との間に接続された第1抵抗(R1)と、前記キャパシタの前記一方の端子と前記インバータ回路の前記出力端との間に接続された第2抵抗(R2)と、を更に有していてもよい。
【0019】
〔5〕上記〔2〕または〔3〕に記載の負荷駆動回路において、前記昇圧部は、前記第2整流素子と前記保護用トランジスタの前記制御電極との間に接続された抵抗(R3)を更に有していてもよい。
【0020】
〔6〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、前記駆動制御信号(Sd)を生成する制御回路(11)と、上記〔1〕乃至〔5〕の何れか一項に記載の負荷駆動回路(102)とを備え、前記負荷がモータ(3)であることを特徴とする。
【0021】
〔7〕上記〔6〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記負荷駆動回路は、前記駆動用電源端と前記グラウンド電位との間に直列に接続された2つの駆動用トランジスタ(Q1とQ2、Q3とQ4、Q5とQ6)を含むスイッチングレグ(SWu,SWv,SWw)を複数有し、前記制御回路は、複数の前記スイッチングレグの前記駆動用トランジスタ(Q1~Q6)のスイッチング動作を制御して前記モータを駆動する負荷駆動モードと、一つの前記スイッチングレグ(SWw)の前記駆動用トランジスタ(Q5,Q6)のスイッチング動作を制御して前記昇圧部を駆動する昇圧モードとを有していてもよい。
【0022】
〔8〕上記〔6〕または〔7〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御回路は、前記保護用トランジスタを経由しない経路からの給電によって動作してもよい。
【0023】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(101)は、上記〔6〕乃至〔8〕の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置(1)と、前記モータ(3)と、を備えることを特徴とする。
【0024】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0025】
≪実施の形態≫
図1は、本発明の実施の形態に係る負荷駆動回路を備えたモータ駆動制御システムの構成を示す図である。
【0026】
図1に示されるモータ駆動制御システム100は、駆動対象の負荷の一例としてのモータ3と、モータ3を駆動する負荷駆動回路102を含むモータ駆動制御装置1と、モータ駆動制御装置1を制御する上位装置2とを備えている。
【0027】
例えば、モータ3の出力軸(図示せず)には、インペラ(羽根車)4が接続されており、モータ3とインペラ4とは、モータ3の回転力によってインペラ4を回転させて風を発生させるファン(ファンモータ)5を構成している。
【0028】
ファン5は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能であり、例えば、サーバ等の情報処理装置の他に、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載可能である。ファン5は、例えば、軸流ファンである。
【0029】
モータ3とモータ駆動制御装置1とは、一つのモータユニット101を構成している。
【0030】
上位装置2(ホストデバイス)は、例えば、ファン5を搭載したサーバ内のCPU等のプログラム処理装置である。上位装置2は、モータ駆動制御装置1に駆動指令信号Scを出力することにより、モータ駆動制御装置1を介してモータ3の回転を制御するとともに、モータ駆動制御装置1からモータ3(ファン5)の駆動状態に関するモータ駆動情報信号Soを取得してモータ3(ファン5)の動作を監視する。後述するように、モータ駆動情報信号Soとしては、モータ3(ファン5)の回転状態を示す信号(例えばモータの回転速度に対応する回転速度信号)等を例示することができる。
【0031】
駆動指令信号Scは、モータ3の駆動に関する指令を含む信号である。駆動指令信号Scは、例えば、モータ3の目標回転速度(目標回転数)を指示する指令を含む。例えば、駆動指令信号Scは、モータ3の目標回転速度に対応したデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、駆動指令信号Scは、目標回転速度に対応する周波数を有するPFM信号やモータのトルクの目標値を示すトルク指令信号等、他の形式の信号であってもよい。
【0032】
上位装置2は、通常時において、例えば、目標回転速度に応じたデューティ比のPWM信号を駆動指令信号Scとして出力することにより、モータ駆動制御装置1に対して、目標回転速度でモータ3(ファン5)を回転させるように指示する。
【0033】
また、上位装置2は、モータ駆動制御装置1からモータ3の実回転速度に応じた回転速度信号をモータ駆動情報信号Soとして取得することにより、モータ3の動作状態を監視する。
【0034】
モータ3は、例えば、ブラシレスDCモータである。本実施の形態において、モータ3は、例えば、U相、V相、およびW相の3相のコイルを有する3相ブラシレスDCモータである。
【0035】
位置検出装置6は、モータ3のロータの回転に応じた位置検出信号を生成する装置である。位置検出装置6は、例えば、ホール(HALL)素子である。例えば、モータ3の各相(U相、V相、W相)にそれぞれ対応した3つのホール素子が、位置検出装置6として、互いに略等間隔(例えば、隣り合うものと120度の間隔で)でモータ3のロータ(回転子)の周囲に配置されている。3つのホール素子は、それぞれロータの磁極を検出し、ロータの回転に応じて電圧が変化するホール信号を生成し、出力する。各ホール素子から出力されたホール信号は、位置検出信号Srとして制御回路11に入力される。制御回路11は、ホール信号を用いて、モータ3の回転位置や、回転数情報(FG信号など)などの情報を得ることでモータ3の回転状態を検出し、モータ3の駆動を制御することができる。
【0036】
なお、位置検出装置6として、このようなホール素子に代えて、例えば、エンコーダやレゾルバなどを設け、それらの検出信号を位置検出信号Srとして制御回路11に入力してもよい。また、位置センサレス方式で制御回路11がモータ3の駆動制御を行う場合には、位置検出装置6を設けなくてもよい。
【0037】
モータ駆動制御装置1は、上位装置2からの指令に応じてモータ3の回転を制御する。例えば、モータ駆動制御装置1は、上位装置2からの駆動指令信号Scに応じて、モータ3に正弦波駆動信号を出力してモータ3のU相、V相、およびW相の各コイルLu,Lv,Lwに周期的に正弦波状の駆動電流を流すことにより、モータ3を回転させる。
【0038】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、複数の外部端子、制御回路11、モータ駆動回路12、電力遮断回路18、保護回路15、昇圧部16、電源回路17、および電流検出回路19を有している。なお、図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、図1に示されたものに加えて他の構成要素を有していてもよい。
【0039】
ここで、モータ3を負荷と考えた場合、モータ駆動回路12(プリドライブ回路12及びインバータ回路14を含む)、保護回路15、および昇圧部16は、一つの負荷駆動回路102を構成している。
【0040】
複数の外部端子は、モータ駆動制御装置1と外部機器(例えば、上位装置2およびモータ3)とを接続するための端子である。図1では、モータ駆動制御装置1の外部端子のうち、端子P1~P6が代表的に図示されている。
【0041】
端子P1は、モータ3およびモータ駆動制御装置1を駆動するための主電源としての電源電圧Vdc(直流電圧)が供給される電源端子である。以下、端子P1を「電源端子P1」とも称する。
【0042】
端子P2は、上位装置2等の外部機器から信号を入力するための入力端子である。例えば、上位装置2から出力された駆動指令信号Scが端子P2に入力される。
【0043】
端子P3は、上位装置2等の外部機器に信号を出力するための出力端子である。例えば、モータ3(ファン5)の駆動状態に関するモータ駆動情報信号Soが、端子P3から上位装置2に出力される。
【0044】
端子P4~P6は、モータ3を駆動するための出力端子である。端子P4~P6は、モータ3の各相に対応して設けられている。例えば、端子P4はU相のコイルLuの一端に接続され、端子P5はV相のコイルLvの一端に接続され、端子P6はW相のコイルLwの一端に接続されている。
【0045】
電源端子P1に入力された電源電圧Vdcは、電力遮断回路18と保護回路15とを経由して電源ラインLpを通じて、駆動用電源端P7に供給される。駆動用電源端P7は、モータ駆動回路12に対して、負荷に電力を与えるための駆動電圧を供給するための電力供給経路の端部である。電源ラインLpは、モータ駆動回路12を介してモータ3を駆動するための電力を供給する電力供給経路であり、例えば配線である。電源ラインLpには、駆動用電源端P7の電位を安定させるための安定化容量としてのキャパシタC5,C6が接続されている。なお、電力遮断回路18と保護回路15については後述する。
【0046】
電源回路17は、制御回路11の電源電圧としての駆動電圧Vinを生成する回路である。電源回路17は、例えば、シリーズレギュレータ回路またはスイッチングレギュレータ回路であり、電源端子P1から電力遮断回路18およびダイオードD5を経由して供給された電源電圧Vdc(例えば12V)を降圧して直流の駆動電圧Vin(例えば5V)を生成し、電源電圧として制御回路11に供給する。
【0047】
制御回路11は、モータ駆動制御装置1の動作を統括的に制御するための回路である。本実施の形態において、制御回路11は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置であり、例えば、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
【0048】
なお、制御回路11とモータ駆動回路12とは、一つの半導体集積回路装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化された構成であってもよいし、制御回路11とモータ駆動回路12とは、個別の集積回路装置として夫々パッケージ化された構成であってもよい。
【0049】
制御回路11は、電源回路17からの電力供給により、動作可能に構成されている。すなわち、制御回路11は、駆動電圧Vinを電源として動作する。
【0050】
制御回路11は、モータ3を駆動させるための駆動制御信号Sdを生成してモータ駆動回路12に出力することによりモータ3の駆動を制御する。制御回路11には、上位装置2から出力された駆動指令信号Scと、位置検出装置6から出力された位置検出信号Srと、電流検出回路19から出力された電流検出信号とが入力される。なお、制御回路11には、上述の信号の他に、温度センサからの温度検出信号等が入力されてもよい。制御回路11は、入力された駆動指令信号Sc、位置検出信号Sr、および電流検出信号等に基づいて各種の演算処理および信号処理を行うことにより、駆動制御信号Sdを生成し、モータ駆動回路12に出力する。
【0051】
制御回路11は、端子P2に駆動指令信号Scが入力されている場合に、駆動指令信号Scのデューティ比で指定された目標回転速度でモータ3が回転するように駆動制御信号Sdを生成するとともに、モータ3の実際の回転速度(実回転速度)に対応する周波数を有する回転速度信号(例えば、FG(Frequency Generator)信号)を生成し、モータ駆動情報信号Soとして端子P3に出力する。
【0052】
駆動制御信号Sdは、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。具体的には、駆動制御信号Sdは、後述するインバータ回路14の各駆動用トランジスタQ1~Q6スイッチ素子に対応する6種類のPWM信号を含む。
【0053】
モータ駆動回路12は、制御回路11から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ3を駆動する回路である。モータ駆動回路12は、電源ラインLpを通じて駆動用電源端P7に電力(電源電圧Vdc)が供給されることにより、動作可能に構成されている。具体的には、モータ駆動回路12は、インバータ回路14及びプリドライブ回路13を有する。
【0054】
インバータ回路14は、駆動用電源端P7とグラウンド電位との間に配置され、入力された駆動制御信号Sdに基づいて、負荷を駆動する回路である。具体的には、インバータ回路14は、直列に接続された2つの駆動用トランジスタを含むスイッチングレグを少なくとも一つ有し、入力された駆動制御信号Sdに基づいて、2つの駆動用トランジスタが交互にオン・オフ動作(スイッチング動作)を行うことにより、負荷としてのモータ3を駆動する回路である。
【0055】
具体的には、インバータ回路14は、モータ3のU相、V相、およびW相にそれぞれ対応するスイッチングレグSWu,SWv,SWwを有する。図1に示すように、各スイッチングレグSWu,SWv,SWwは、駆動用電源端P7とグラウンド電位との間に電流検出回路19を介して直列に接続された2つの駆動用トランジスタQ1とQ2,Q3とQ4,Q5とQ6を有している。
【0056】
ここで、駆動用トランジスタQ1,Q3,Q5は、例えば、Pチャネル型のMOSFETであり、駆動用トランジスタQ2,Q4,Q6は、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。なお、駆動用トランジスタQ1~Q6は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の種類のパワートランジスタであってもよい。
【0057】
具体的には、スイッチングレグSWuは、互いに直列に接続された駆動用トランジスタQ1,Q2と、駆動用トランジスタQ1と駆動用トランジスタQ2とが共通に接続される点(以下、スイッチングレグSWuの「中間点」とも称する。)であって、端子P4を介して負荷としてのコイルLuの一端に接続される出力端Nu(インバータ回路14の出力端の一つ)とを有する。
【0058】
例えば、駆動用トランジスタQ1の第1主電極としてのソース電極が電源ラインLpに接続され、駆動用トランジスタQ1の第2主電極としてのドレイン電極が端子P4(出力端Nu)に接続されている。また、駆動用トランジスタQ2の第1主電極としてのソース電極が電流検出回路19を介してグラウンド電位に接続され、駆動用トランジスタQ2の第2主電極としてのドレイン電極が端子P4(出力端Nu)に接続されている。
【0059】
スイッチングレグSWvは、互いに直列に接続された駆動用トランジスタQ3,Q4と、駆動用トランジスタQ3と駆動用トランジスタQ4とが共通に接続される点(以下、スイッチングレグSWvの「中間点」とも称する。)であって、端子P5を介して負荷としてのコイルLvの一端に接続される出力端Nv(インバータ回路14の出力端の一つ)とを有する。
【0060】
例えば、駆動用トランジスタQ3の第1主電極としてのソース電極が電源ラインLpに接続され、駆動用トランジスタQ3の第2主電極としてのドレイン電極が端子P5(出力端Nv)に接続されている。また、駆動用トランジスタQ4の第1主電極としてのソース電極が電流検出回路19を介してグラウンド電位に接続され、駆動用トランジスタQ4の第2主電極としてのドレイン電極が端子P5(出力端Nv)に接続されている。
【0061】
スイッチングレグSWwは、互いに直列に接続された駆動用トランジスタQ5,Q6と、駆動用トランジスタQ5と駆動用トランジスタQ6とが共通に接続される点(以下、スイッチングレグSWwの「中間点」とも称する。)であって、端子P6を介して負荷としてのコイルLwの一端に接続される出力端Nw(インバータ回路14の出力端の一つ)とを有する。
【0062】
例えば、駆動用トランジスタQ5の第1主電極としてのソース電極が電源ラインLpに接続され、駆動用トランジスタQ5の第2主電極としてのドレイン電極が端子P6(出力端Nw)に接続されている。また、駆動用トランジスタQ6の第1主電極としてのソース電極が電流検出回路19を介してグラウンド電位に接続され、駆動用トランジスタQ6の第2主電極としてのドレイン電極が端子P6(出力端Nw)に接続されている。
【0063】
プリドライブ回路13は、制御回路11からの出力された駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路14を駆動するための駆動信号を生成する。例えば、プリドライブ回路13は、駆動制御信号Sdに基づいて、インバータ回路14の各駆動用トランジスタQ1~Q6の制御電極(ゲート電極)を駆動するのに十分な電力を供給する6種類の駆動信号Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlを生成する。
【0064】
これらの駆動信号がインバータ回路14の各駆動用トランジスタQ1~Q6のゲート電極に入力されることにより、各駆動用トランジスタQ1~Q6がオン・オフ動作(スイッチング動作)を行う。例えば、各スイッチングレグSWu,SWv,SWwの上側アームの駆動用トランジスタQ1,Q3,Q5と下側アームの駆動用トランジスタQ2,Q4,Q6とは、交互にオン・オフ動作を行う。これにより、モータ3の各相に駆動用電源端P7から電力が供給され、モータ3が回転する。
【0065】
電流検出回路19は、モータ3の駆動電流を検出するための回路である。電流検出回路19は、例えば、抵抗Rsを含む。抵抗Rsは、例えば、駆動用電源端P7とグラウンド電位との間にインバータ回路14と直列に接続されている。電流検出回路19は、モータ3のコイルLu,Lv,Lwに流れる電流を抵抗Rsによって電圧に変換し、電流検出信号として制御回路11に入力する。
【0066】
電力遮断回路18は、電源端子P1から電源ラインLpに定格を超えるような大電流が流れた場合に、電源端子P1から電源ラインLpへの電力供給を遮断する回路である。電力遮断回路18は、例えば、ヒューズである。
【0067】
保護回路15は、電源端子P1からモータ駆動制御装置1の内部回路に異常電流が流れることによる電子部品の故障や不具合を防止するための回路である。保護回路15は、電源逆接続保護機能と突入電流抑制機能を有している。
【0068】
具体的には、保護回路15は、電源端子P1と駆動用電源端P7との間を結ぶ電源ラインLp上に設けられた接続された保護用トランジスタQa,Qbを有する。保護回路15は、更に、キャパシタC2を有していてもよい。
【0069】
保護用トランジスタQaは、突入電流抑制機能を実現するための素子であり、保護用トランジスタQbは、電源逆接続保護機能を実現するための素子である。保護用トランジスタQa,Qbは、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。
【0070】
保護用トランジスタQa,Qbは、電源ラインLp上に互いに直列に接続されている。具体的には、保護用トランジスタQaの第1主電極としてのソース電極は、保護用トランジスタQbの第1主電極としてのソース電極に接続され、保護用トランジスタQaの第2主電極としてのドレイン電極は、電力遮断回路18(ヒューズ)を経由して電源端子P1に接続され、保護用トランジスタQbの第2主電極としてのドレイン電極は、駆動用電源端P7に接続されている。保護用トランジスタQa,Qbの制御電極としてゲート電極は、昇圧部16に共通に接続されている。キャパシタC2は、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電圧の変化を緩やかにするための素子であり、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極とソース電極との間に接続されている。
【0071】
昇圧部16は、保護回路15の保護用トランジスタQa,Qbを駆動するための電圧を生成する回路である。昇圧部16は、一方の端子がインバータ回路14の出力端の一つ(具体的には、スイッチングレグSWu,SWv,SWwの何れか一つの中間点)に接続されたキャパシタC1を有し、キャパシタC1の他方の端子に電源電圧Vdcを超える電圧を発生させ、その電圧を保護用トランジスタQa,Qbの制御電極(ゲート電極)に印加する。
【0072】
昇圧部16は、キャパシタC1が接続されたスイッチングレグととともにチャージポンプ回路を構成している。具体的には、昇圧部16は、キャパシタC1と接続されたスイッチングレグの駆動用トランジスタQ1とQ2、Q3とQ4、Q5とQ6のいずれかのスイッチング動作に応じて、キャパシタC1の一方の端子の電圧が駆動用電源端P7の電位とグラウンド電位との間で継続的に切り替わることにより、キャパシタC1の他方の端子に電源電圧Vdcを超える電圧を発生させ、その電圧を保護用トランジスタQa,Qbの制御電極(ゲート電極)に印加する。
【0073】
より具体的には、昇圧部16は、第1整流素子D1、第2整流素子D2、キャパシタC1、および抵抗R1,R2を有している。
【0074】
キャパシタC1の一方の端子は、スイッチングレグSWu,SWv,SWwの何れか一つの出力端Nu,Nv,Nwに接続され、キャパシタC1の他端は、第1整流素子D1と第2整流素子D2とに共通に接続されている。本実施の形態では、一例として、キャパシタC1の一端が、抵抗R2を介してW相のスイッチングレグSWwの出力端Nw(端子P6)に接続されているものとして説明するが、これに限られない。例えば、キャパシタC1の一端は、U相のスイッチングレグSWuの出力端Nu(端子P4)またはV相のスイッチングレグSWvの出力端Nv(端子P5)に接続されていてもよい。
【0075】
キャパシタC1の他方の端子は、第1整流素子D1と第2整流素子D2とが共通に接続されるノードに接続されている。
【0076】
第1整流素子D1は、電源端子P1とキャパシタC2の他方の端子との間に接続され、電源端子P1側からキャパシタC1側へ電流を流す。第2整流素子D2は、キャパシタC1の他方の端子と保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極(制御電極)との間に接続され、キャパシタC1側から保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極側へ電流を流す。
【0077】
ここで、第1整流素子D1および第2整流素子D2は、例えば、ダイオードである。例えば、第1整流素子D1としてのダイオードのアノードは、電力遮断回路18(ヒューズ)を経由して電源端子P1に接続され、第1整流素子D1のカソードは、抵抗R1の一端に接続されている。第2整流素子D2としてのダイオードのアノードは、抵抗R1の他端に接続され、第2整流素子D2のカソードは、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極に接続されている。
【0078】
抵抗R1,R2は、突入電流防止用の素子である。抵抗R1は、キャパシタC1および保護回路15(例えば、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極およびキャパシタC2)に流れ込む電流を制限する。抵抗R2は、キャパシタC1の充放電時の電流を制限する。上述したように、抵抗R1は、第1整流素子D1とキャパシタC1の他方の端子との間に接続され、抵抗R2は、キャパシタC1の一方の端子とインバータ回路14の出力端(例えば、スイッチングレグSWwの出力端Nw)との間に接続されている。
後述するように、抵抗R1,R2を設けることにより、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsが緩やかに上昇し、キャパシタC5,C6に流れ込む突入電流が抑制される。
【0079】
次に、昇圧部16の動作について説明する。
上述したように、モータ駆動回路12のインバータ回路14の一つの出力端から出力される信号(一つのスイッチングレグSWwのスイッチング動作)に応じて、昇圧部16のキャパシタC1の一方の端子の電圧が駆動用電源端P7またはグラウンド電位(抵抗Rsを経由)に切り替わる。
【0080】
具体的には、スイッチングレグSWwにおいて、駆動用トランジスタQ5がオフし、駆動用トランジスタQ6がオンしたとき、キャパシタC1の一方の端子の電圧は、駆動用トランジスタQ6および抵抗R2,Rsを介してグラウンド電位になる。これにより、電源端子P1から第1整流素子D1、抵抗R1を経由してキャパシタC1に電流が流れ込むことにより、キャパシタC1が充電される。このとき、キャパシタC1に流れる電流は、抵抗R1と抵抗R2によって制限される。
【0081】
次に、スイッチングレグSWwにおいて、駆動用トランジスタQ6がオフし、駆動用トランジスタQ5がオンしたとき、キャパシタC1の一方の端子電圧は、駆動用トランジスタQ5を介して駆動用電源端P7の電位になる。これにより、キャパシタC1の他方の端子の電圧は、駆動用電源端P7を基準として、キャパシタC1に蓄えられている電荷に相当する電圧分だけ、底上げされる。
【0082】
これにより、キャパシタC1の他方の端子の電圧から第2整流素子D2としてのダイオードの順方向電圧の分だけ低下した電圧が保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極に印加される。このとき、キャパシタC1から保護回路15(保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極およびキャパシタC2)に流れ込む電流は、抵抗R2によって制限される。
【0083】
2つの駆動用トランジスタQ5,Q6が交互にオン・オフ動作(スイッチング動作)を繰り返すことにより、昇圧部16から保護回路15(保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極およびキャパシタC2)に電流が流れ込んで保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsが次第に上昇し、保護用トランジスタQa,Qbが緩やかにオンすることでキャパシタC5,C6に流れ込む突入電流を抑制する。
【0084】
2つの駆動用トランジスタのオン・オフ動作(スイッチング動作)が継続的に繰り返されることによって、保護用トランジスタQa,Qbが完全にオンし、電源端子P1から電力遮断回路18および保護用トランジスタQa,Qbを経由して電源ラインLpを通じて駆動用電源端P7に電源電圧Vdcが供給される。このとき、キャパシタC1の他方の端子は電源電圧Vdcの約2倍の電圧となり、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsは、電源電圧Vdcから第1整流素子D1および第2整流素子D2の順方向電圧分だけ低い電圧が昇圧部16から供給され続ける。
【0085】
なお、突入電流防止用の素子としての抵抗R1,R2の接続先は、図1に示す例に限られない。図2は、本発明の実施の形態に係る負荷駆動回路の別の構成例を示す図である。図2に示す負荷駆動回路102aの昇圧部16aのように、第2整流素子D2としてのダイオードのカソードと保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極との間に、抵抗R3を接続してもよい。これによれば、キャパシタC1から保護回路15(保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極およびキャパシタC2)に流れ込む電流は、抵抗R3によって制限される。
【0086】
次に、本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100の動作について説明する。
【0087】
図3は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100による動作の流れを示すシーケンス図である。
図4は、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1における主要な電圧と制御回路11の動作内容を示すタイミングチャートである。
以下の説明では、一例として、モータ駆動制御システム100の初期状態においてモータ駆動制御装置1内の電源ラインLpを含む全てのノードの電圧が0Vであるとする。また、一例として、電源電圧Vdcが12Vであるとする。
【0088】
例えば、図4における時刻t0において、ファン5を含むモータ駆動制御システム100を搭載したサーバ等の情報処理装置(上位装置2)が起動すると、電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1の電源端子P1に供給される(ステップS1)。これにより、モータ駆動制御システム100のモータ駆動回路12(駆動用電源端P7)側と制御回路11側に、互い異なる経路で電力がそれぞれ供給される。なお、モータ駆動回路12側の電力供給経路に流れる電流を電源電流Idcと称する。
【0089】
先ず、モータ駆動回路12側の電力供給経路において、図4の時刻t0以降、電源電流Idcが、電源端子P1から昇圧部16の第1整流素子D1、第2整流素子(ダイオード)D2および抵抗R1を通って保護回路15の保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極およびキャパシタC2に流れ込む(ステップS2)。
【0090】
このとき、保護回路15に流れ込む電流は、上述したように抵抗R1によって制限される。これにより、図4に示すように、時刻t0以降、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsが緩やかに上昇するので、電源端子P1から保護回路15を経由してキャパシタC5,C6に流れ込む電源電流Idcの急峻な増加が抑えられ、突入電流が抑制される(ステップS3)。
【0091】
次に、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsの上昇に伴い、保護用トランジスタQa,Qbが不完全オンする(ステップS4)。これにより、電源ラインLpに接続されている安定化容量としてのキャパシタC5,C6が充電され、電源ラインLpの電圧がVdc(=12V)付近まで上昇するが、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間容量及びキャパシタC2と、キャパシタC5,C6によって分圧されることにより、図4の時刻t1以降において、電源ラインLp(すなわち、駆動用電源端P7)の電圧は電源電圧Vdcよりも低い電圧で安定する(ステップS5)。
【0092】
このとき、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極の電圧はVdc(=12V)であり、保護用トランジスタQa,Qbのソース電極が電源ラインLpと同等の電圧であるため、保護用トランジスタQa,Qbは不完全にオンした状態を維持する。
【0093】
次に、制御回路11側の電力供給経路について説明する。ステップS1において電源電圧Vdcがモータ駆動制御装置1の電源端子P1に供給されると、ダイオードD5を経由して電源回路17に電源電圧Vdcが供給される。これにより、電源回路17が電源電圧Vdcを降圧して駆動電圧Vinを生成し、駆動電圧Vinが制御回路11に供給されることにより、制御回路11が起動する(ステップS6)。
【0094】
制御回路11は、起動後、先ず、マイクロコントローラの初期化処理を実行する(ステップS7)。次に、制御回路11は、モータ3の状態を確認する(ステップS8)。例えば、制御回路11は、位置検出装置6からの位置検出信号Srおよび電流検出回路19からの電流検出信号を取得することにより、モータ3の状態を確認する。
【0095】
次に、制御回路11は、駆動指令信号Scの入力待ち状態となる(ステップS9)。制御回路11は、上位装置2から速度指令値としての駆動指令信号Scが入力されるまで待機する。
【0096】
その後、図4の時刻t2において、上位装置2が、モータ3を目標回転速度で回転させることを指示する駆動指令信号Scをモータ駆動制御装置1に対して出力したとする(ステップS10)。モータ駆動制御装置1は、入力された駆動指令信号Scによって指定された目標回転速度でモータ3が回転するように駆動制御信号Sd(PWM信号)を生成し、モータ駆動回路12に与える(ステップS11)。
【0097】
モータ駆動回路12は、入力された駆動制御信号Sd(PWM信号)に基づいて、インバータ回路14の各スイッチングレグSWu,SWv,SWwのスイッチング動作を開始する(ステップS12)。これにより、モータ3のコイルLu,Lv,Lwが通電する。
【0098】
ステップS12においてスイッチングレグSWwがスイッチング動作を開始すると、昇圧部16による昇圧動作が開始される(ステップS13)。具体的には、図4の時刻t2以降において、インバータ回路14のスイッチングレグSWwの駆動用トランジスタQ5,Q6が交互にオン・オフ動作を開始することにより、昇圧部16のキャパシタC1の一方の端子の電圧がグラウンド電位と駆動用電源端P7の電位との間で切り替わる。これにより、電源端子P1から第1整流素子D1を介してキャパシタC1が充電される動作と、キャパシタC1の他方の端子の電圧が駆動用電源端P7の電位を基準にキャパシタC1の充電電圧分、昇圧される動作とを繰り返す。
【0099】
このとき、キャパシタC1を充放電する電流は、上述したように、抵抗R1,R2によって制限される。そのため、スイッチングレグSWwのスイッチング動作が開始されると、キャパシタC1から保護回路15に供給される電流が制限され、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極の電圧が電源電圧Vdcを超えて緩やかに上昇することにより、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsが緩やかに上昇する(ステップS14)。これにより、電源端子P1から保護回路15を経由してキャパシタC5,C6に流れ込む電源電流Idcの急峻な増加が抑えられ、突入電流が抑制される。
【0100】
例えば図4の時刻t3において、ステップS14における保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsの上昇により、不完全な状態でオンしていた保護用トランジスタQa,Qbが完全にオンする(ステップS15)。これにより、電源ラインLpの電圧が電源電圧Vdc(=12V)まで上昇する(ステップS16)。その後は、スイッチングレグSWwのスイッチング動作が継続している限り、保護用トランジスタQa,Qbが完全にオンし続けるので、モータ駆動回路12のインバータ回路14の駆動用電源端P7には、電源ラインLpから電源電圧Vdcが供給され続けることになる。
なお、上述した昇圧部16の昇圧動作は、モータ3に大きな電流が流れ始める前に完了するため、モータ3の駆動と昇圧動作とを同時に開始しても問題ない。
【0101】
以上により、モータ3のコイルLu,Lv,Lwに適切な電圧(電源電圧Vdc)を印加して通電させることが可能となるので、モータ3の正常駆動が可能になる(ステップS17)。例えば、図4の時刻t3以降において、モータ3の回転速度が駆動指令信号Scによって指定された目標回転速度に到達するまで駆動制御信号Sd(PWM信号)のデューティ比が連続的に上がっていくことにより、電源電流Idcが上昇し続ける。
【0102】
以上、本実施の形態に係る負荷駆動回路102を搭載したモータ駆動制御装置1によれば、電源端子P1と駆動用電源端P7との間を結ぶ電源ラインLpに設ける保護回路15を、Pチャネル型ではなくNチャネル型の保護用トランジスタQa,Qbによって実現した場合であっても、従来技術のように、保護用トランジスタを駆動するための電圧を生成するチャージポンプ回路用のスイッチング素子を新たに設ける必要がない。
【0103】
具体的には、モータ駆動制御装置1において、昇圧部16のキャパシタC1の一方の端子をインバータ回路14の一つの出力端[具体的には、スイッチングレグSWu,SWv,SWwの何れか一つ(例えばスイッチングレグSWw)の中間点]に接続する。これによれば、何れか一つのスイッチングレグSWu,SWv,SWwの2つの駆動用トランジスタと昇圧部16とによってチャージポンプ回路を実現することができる。
【0104】
すなわち、上述したように、モータ3の駆動時に、インバータ回路14の一つのスイッチングレグSWwを構成している2つの駆動用トランジスタQ5,Q6が交互にスイッチングすることにより、昇圧部16のキャパシタC1の一方の端子の電圧が駆動用電源端P7の電位とグラウンド電位との間で継続的に切り替わる。これにより、キャパシタC1を充電させることができ、且つキャパシタC1の他方の端子に電源電圧Vdcを超える電圧を発生させることができる。このようにして生成された電圧を保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極に印加することにより、保護用トランジスタQa,Qbを適切に駆動することができる。
【0105】
このように、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、Nチャネル型の保護用トランジスタQa,Qbを駆動するための電圧を生成するチャージポンプ回路用のスイッチング素子をモータ駆動用のスイッチングレグの駆動用トランジスタと共用することができるので、従来に比べて、チャージポンプ回路を駆動するための専用IC等を設ける必要がなく、モータ駆動制御装置の回路規模の増大を抑えることができる。また、保護用トランジスタQa,Qbを完全にオンさせるために必要な電荷(電流)は、キャパシタC2の容量を考慮しても極めて小さいため、昇圧部16を構成する部品は小型・安価なものを使用することが可能となる。
したがって、本実施の形態に係る負荷駆動回路102によれば、モータ駆動制御装置1の保護機能をより低コストで実現することが可能となる。
【0106】
また、モータ駆動制御装置1において、昇圧部16は、電源端子P1とキャパシタC1の他方の端子との間に接続され、電源端子P1側からキャパシタC1側へ電流を流す第1整流素子D1と、キャパシタC1の他方の端子と保護用トランジスタQa,Qbの制御電極(ゲート電極)との間に接続され、キャパシタC1側から保護用トランジスタQa,Qbの制御電極側へ電流を流す第2整流素子D2とを更に有している。
【0107】
これによれば、インバータ回路14の一つの出力端から出力される信号(一つのスイッチングレグSWwのスイッチング動作)に応じたチャージポンプ回路の動作、すなわち、電源電圧VdcによるキャパシタC1の充電動作と、保護用トランジスタQa,Qbのゲート電極への電源電圧Vdcを基準としたキャパシタC1の充電電圧の供給動作を、簡素な回路構成によって実現することができる。
【0108】
また、昇圧部16は、第1整流素子D1とキャパシタC1の他方の端子との間に接続された抵抗R1と、キャパシタC1の一方の端子とスイッチングレグSWwの中間点との間に接続された抵抗R2とを有している。抵抗R1,R2によって、保護用トランジスタQa,Qbのゲート・ソース間電圧Vgsが緩やかに上昇し、キャパシタC5,C6に流れ込む突入電流を抑制することができる。
【0109】
また、モータ駆動制御装置1において、制御回路11は、保護用トランジスタQa,Qbを経由しない経路からの給電によって動作する。これによれば、電源ラインLpに十分な電力が供給されていない状態であっても、制御回路11が駆動制御信号Sdを生成し、モータ駆動回路12のスイッチングレグSWwにスイッチング動作を行わせて、昇圧部16による昇圧動作を行わせることができるので、保護用トランジスタQa,Qbをより確実にオンさせることが可能となる。
【0110】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0111】
例えば、上記実施の形態において、保護回路15が電源逆接続保護機能と突入電流抑制機能とを有している場合を説明したが、これに限られない。例えば、モータ駆動制御装置1に要求される仕様に応じて、保護回路15は、電源逆接続保護機能と突入電流抑制機能の何れか一方の機能のみを有していてもよい。例えば、保護回路15の機能として突入電流抑制機能のみが要求されている場合には、保護回路15は、保護用トランジスタQbを有していなくてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、負荷(モータ3)の駆動に伴ってチャージポンプ回路(昇圧部16)が起動する場合を例示したが、これに限られず、負荷の駆動とチャージポンプ回路の起動とを個別に制御してもよい。具体的には、制御回路11は、インバータ回路14を構成する複数のスイッチングレグSWu,SWv,SWwの駆動用トランジスタQ1~Q6のスイッチング動作を制御してモータ3を駆動する負荷駆動モードと、一つのスイッチングレグSWwの駆動用トランジスタQ5,Q6のスイッチング動作を制御して昇圧部16を駆動する昇圧モードとを有していてもよい。
【0113】
例えば、制御回路11は、起動直後においては、昇圧モードで動作することにより、インバータ回路14のスイッチングレグSWwのみのスイッチング動作を制御して昇圧部16を駆動して保護回路15の保護用トランジスタQa,Qbを完全にオンさせておき、その後、上位装置2から駆動指令信号Scを受信したら、負荷駆動モードに移行して、全てのスイッチングレグSWu,SWv,SWwのスイッチング動作を制御してモータ3を駆動してもよい。
【0114】
これによれば、モータ3の駆動を開始する前に、保護回路15を起動して電源ラインLpに適切な電圧(電源電圧Vdc)を供給しておくことが可能になるので、より信頼性の高いモータ駆動制御を実現することが可能となる。
【0115】
また、上述の実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータの相数は、3相に限られない。また、ホール素子の数は、3個に限られない。
【0116】
上記実施の形態において、モータ3の種類は特に限定されない。例えば、モータ3は、ブラシレスDCモータに限定されず、ステッピングモータであってもよい。また、負荷駆動回路102の駆動対象の負荷は、モータ3に限定されない。すなわち、負荷駆動回路102は、モータ駆動制御装置1以外の負荷を駆動する電子機器にも適用可能である。
【0117】
上述のタイミングチャートやシーケンス図は一例であって、これらに限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されていてもよいし、処理が並列化されていてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…モータ駆動制御装置、2…上位装置、3…モータ(負荷の一例)、4…インペラ、5…ファン(ファンモータ)、6…位置検出装置、11…制御回路、12…モータ駆動回路、13…プリドライブ回路、14…インバータ回路、15…保護回路、16,16a…昇圧部、17…電源回路、18…電力遮断回路、19…電流検出回路、100…モータ駆動制御システム、101…モータユニット、102,102a…負荷駆動回路、C1,C2,C5,C6…キャパシタ、D1…第1整流素子、D2…第2整流素子、D5…ダイオード、Vdc…電源電圧、Idc…電源電流、Lp…電源ライン、Lu…コイル、Lv…コイル、Lw…コイル、Nu,Nv,Nw…出力端、P1…電源端子、P2~P6…端子、P7…駆動用電源端、Q1~Q6…駆動用トランジスタ、Qa,Qb…保護用トランジスタ、R1~R3,Rs…抵抗、Sc…駆動指令信号、Sd…駆動制御信号、So…モータ駆動情報信号、Sr…位置検出信号、SWu,SWv,SWw…スイッチングレグ。
図1
図2
図3
図4