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特許7449813印刷ヘッド内での水性インクの乾燥を緩和するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】印刷ヘッド内での水性インクの乾燥を緩和するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 203
B41J2/165 207
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020136076
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2021041696
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】16/561,592
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】シーミット・プラハラジ
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-275359(JP,A)
【文献】特開2002-046285(JP,A)
【文献】特開2019-136935(JP,A)
【文献】米国特許第10518537(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非活動期間中に印刷ヘッドを保管するために有用なキャッピングステーションであって、
ある容積を密閉するように構成された少なくとも1つの壁を有する印刷ヘッド受容部であって、前記印刷ヘッド受容部は、印刷ヘッドの外周に対応する開口部を有する、印刷ヘッド受容部と、
前記印刷ヘッド受容部の前記少なくとも1つの壁に枢動可能に取り付けられた少なくとも2つの部材であって、前記部材は、前記部材が前記印刷ヘッド受容部の前記少なくとも1つの壁に隣接する第1の位置と、前記部材が前記印刷ヘッド受容部の前記容積全体に延在する第2の位置との間で移動するように構成されている、少なくとも2つの部材と、
少なくとも2つの熱電デバイスであって、1つの熱電デバイスが、前記少なくとも2つの部材のうちの各部材に1対1対応で取り付けられる、少なくとも2つの熱電デバイスと、
前記少なくとも2つの部材に動作可能に接続された第1のアクチュエータであって、前記第1のアクチュエータは、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記少なくとも2つの部材を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、
前記第1のアクチュエータ及び前記熱電デバイスに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラは、前記第1のアクチュエータを動作させて、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記少なくとも2つの部材を移動させ、前記熱電デバイスに電流を選択的に加えるように構成されている、コントローラと、を備える、キャッピングステーション。
【請求項2】
前記少なくとも2つの部材のうちの各部材は、
前記部材の前記熱電デバイスに取り付けられた基部と、
前記基部に取り付けられたインク受け面と、を更に備える、請求項1に記載のキャッピングステーション。
【請求項3】
前記基部は疎水性材料で作製され、前記インク受け面は親水性材料で作製される、請求項2に記載のキャッピングステーション。
【請求項4】
前記少なくとも2つの部材の前記部材は、前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに前記少なくとも1つの壁から垂直に延在して、前記印刷ヘッド受容部の前記容積全体に延在する、請求項3に記載のキャッピングステーション。
【請求項5】
前記少なくとも2つの部材の各部材は同一の長さを有する、請求項4に記載のキャッピングステーション。
【請求項6】
各部材の前記長さは、前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに前記少なくとも2つの部材が互いに接触して、前記印刷ヘッド受容部の前記開口部の中心において、前記少なくとも2つの部材の間に間隙を形成できないようにする、請求項5に記載のキャッピングステーション。
【請求項7】
各部材は扇形部材である、請求項6に記載のキャッピングステーション。
【請求項8】
前記印刷ヘッド受容部は、
前記印刷ヘッド受容部に受容されたインクのための排出シュートを更に備える、請求項7に記載のキャッピングステーション。
【請求項9】
印刷ヘッドに動作可能に接続された第2のアクチュエータを更に備え、
前記コントローラは、前記第2のアクチュエータに動作可能に接続され、前記コントローラは、前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに、前記第2のアクチュエータを動作させて、前記印刷ヘッドの表面を移動して前記少なくとも2つの部材の前記インク受け面と接触させるように更に構成されている、請求項8に記載のキャッピングステーション。
【請求項10】
前記コントローラは、前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに、前記印刷ヘッドを動作させて、前記少なくとも2つの部材の前記インク受け面にインク滴を噴射させるように更に構成されている、請求項9に記載のキャッピングステーション。
【請求項11】
前記コントローラは、前記第2のアクチュエータを動作させて、前記第2の位置において前記少なくとも2つの部材の前記インク受け面に噴射された前記インクに取り込まれた気泡を押し出す速度で前記印刷ヘッドを移動させるように更に構成されている、請求項10に記載のキャッピングステーション。
【請求項12】
プリンタの活動期間中に印刷ヘッドを保管するためにキャッピングステーションを動作させる方法であって、
コントローラを用いて、ある容積を密閉して印刷ヘッド受容部を形成する、少なくとも1つの壁に枢動可能に取り付けられた少なくとも2つの部材に動作可能に接続された第1のアクチュエータを動作させて、前記少なくとも2つの部材が前記印刷ヘッド受容部の前記少なくとも1つの壁に隣接する第1の位置から、前記少なくとも2つの部材が前記印刷ヘッド受容部の前記容積全体に延在する第2の位置へと、前記少なくとも2つの部材を移動させることと、
前記コントローラを用いて前記第1のアクチュエータを動作させて、前記少なくとも2つの部材を前記第2の位置から前記第1の位置へと移動させることと、
前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに、前記コントローラを用いて、前記少なくとも2つの部材に1対1対応で取り付けられた少なくとも2つの熱電デバイスに電流を加えることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも2つの部材のうちの各部材は、
前記部材の前記熱電デバイスに取り付けられたインク受け面を更に備える、請求項1に記載のキャッピングステーション。
【請求項14】
前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに、前記コントローラを用いて、印刷ヘッドに動作可能に接続された第2のアクチュエータを動作させて、前記印刷ヘッドの表面を移動して各部材のインク受け面と接触させることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記部材が前記第2の位置にあるときに、前記コントローラを用いて前記印刷ヘッドを動作させて、前記少なくとも2つの部材の前記インク受け面にインク滴を噴射させることを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コントローラを用いて前記第2のアクチュエータを動作させて、前記第2の位置において前記少なくとも2つの部材の前記インク受け面に噴射された前記インクに取り込まれた気泡を押し出す速度で前記印刷ヘッドを移動させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
プリンタ内の各印刷ヘッドの非活動時間を測定することであって、各印刷ヘッドは前記プリンタ内に対応する印刷ヘッド受容部を有する、ことと、
各印刷ヘッドの前記測定された非活動時間を各印刷ヘッドの所定の非活動の制限時間と比較することと、
前記コントローラを用いて第3のアクチュエータを動作させて、前記印刷ヘッドの前記測定された非活動時間が前記印刷ヘッドの所定の非活動の最大制限時間に等しいか又はそれを超えるときに、各印刷ヘッドを前記印刷ヘッドの前記対応する印刷ヘッド受容部へと独立して移動させることと、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
プリンタであって、
複数の印刷ヘッドと、
前記複数の印刷ヘッド内の各印刷ヘッドのためのキャッピングステーションであって、各キャッピングステーションが、
ある容積を密閉するように構成された少なくとも1つの壁を有する印刷ヘッド受容部であって、前記印刷ヘッド受容部は、前記キャッピングステーションに関連する前記印刷ヘッドの外周に対応する開口部を有する、印刷ヘッド受容部と、
前記印刷ヘッド受容部の前記少なくとも1つの壁に枢動可能に取り付けられた少なくとも2つの部材であって、前記部材は、前記少なくとも2つの部材が前記印刷ヘッド受容部の前記少なくとも1つの壁に隣接する第1の位置と、前記少なくとも2つの部材が前記印刷ヘッド受容部の前記容積全体に延在する第2の位置との間で移動するように構成されている、少なくとも2つの部材と、
少なくとも2つの熱電デバイスであって、前記少なくとも2つの熱電デバイスは、前記少なくとも2つの部材に1対1対応で取り付けられる、少なくとも2つの熱電デバイスと、
前記少なくとも2つの部材に動作可能に接続された第1のアクチュエータであって、前記第1のアクチュエータは、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記少なくとも2つの部材を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、
各キャッピングステーションの前記第1のアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラであって、前記コントローラは、各キャッピングステーションの前記第1のアクチュエータを動作させて、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記少なくとも2つの部材を移動させ、前記熱電デバイスに電流を選択的に加えるように構成されている、コントローラと、を含む、キャッピングステーションと、を備える、プリンタ。
【請求項19】
各キャッピングステーションの前記少なくとも2つの部材のうちの各部材は、
疎水性材料で作製された基部と、
親水性材料で作製されたインク受け面と、を更に備える、請求項18に記載のプリンタ。
【請求項20】
各キャッピングステーション内の前記少なくとも2つの部材は、前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに各キャッピングステーション内の前記印刷ヘッド受容部の前記少なくとも1つの壁から垂直に延在して、前記印刷ヘッド受容部の前記容積全体に延在する、請求項19に記載のプリンタ。
【請求項21】
各キャッピングステーション内の前記少なくとも2つの部材のうちの各部材は同一の長さを有する、請求項20に記載のプリンタ。
【請求項22】
各キャッピングステーションの前記少なくとも2つの部材のうちの各部材の前記長さは、前記少なくとも2つの部材が前記第2の位置にあるときに前記少なくとも2つの部材が互いに接触して、前記印刷ヘッド受容部の前記開口部の中心において、前記少なくとも2つの部材の間に間隙を形成できないようにする、請求項21に記載のプリンタ。
【請求項23】
前記少なくとも2つの部材のうちの各部材は扇形である、請求項22に記載のプリンタ。
【請求項24】
親水性インク受け面が、前記少なくとも2つの部材のうちの各部材上で前記熱電デバイスに直接取り付けられる、請求項23に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、媒体上にインク画像を生成するデバイスに関し、より具体的には、インクジェットから高速乾燥インクを噴射してインク画像を形成するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット撮像デバイスは、印刷ヘッドから液体インクを噴射して、画像を画像受信表面上に形成する。印刷ヘッドは、いくつかのタイプのアレイ内に配置された複数のインクジェットを含む。各インクジェットは、印刷ヘッドコントローラに結合される熱又は圧電アクチュエータを有する。印刷ヘッドコントローラは、画像に関するデジタルデータに対応する発射信号を生成する。印刷ヘッド内のアクチュエータは、インクチャンバに膨張させることによって発射信号に応答して、画像受信部材上にインク滴を噴射し、かつ発射信号を生成するために使用されたデジタル画像に対応するインク画像を形成する。
【0003】
インクジェット撮像デバイス内で使用される先行技術のインク送達システム20が図8に示される。インク送達システム20は、印刷ヘッド608に接続され、印刷ヘッドの下方に位置決めされるインク供給リザーバ604を含み、そのためインクレベルは、印刷ヘッドの下方の既定の距離Dで維持されて、印刷ヘッド内のインク上に適切な背圧を提供することができる。この背圧は、良好なインク滴噴射性能を確実とするのに役立つ。インクリザーバは、距離Dを維持するレベルでインクを保つインク源(図示せず)に動作可能に接続される。印刷ヘッド608は、インクジェットがマニホールドからインクを引くまでインクを格納するマニホールドを有する。印刷ヘッドマニホールドの容量は、典型的には、全てのインクジェットの容量の5倍である。マニホールドの入口は、導管618を通じてインクリザーバ604に接続され、導管634は、マニホールドの出口を廃インクタンク638に接続する。バルブ642は、導管634を選択的に遮断するために導管634内に設置される。バルブ612はまた、空気圧ポンプ616をインクリザーバ604に接続する導管614内に提供され、このバルブは、パージ動作中を除いて開いたままである。
【0004】
新しい印刷ヘッドが設置されるか、又はそのマニホールドがフラッシュされて導管618内の空気を除去する必要があるとき、マニホールドパージが実行される。マニホールドパージでは、コントローラ80が、バルブ642を操作して、流体がマニホールド出口から廃インクタンク638に流れることを可能にし、かつ空気圧ポンプ616を起動し、及びバルブ612を操作して、インクリザーバを大気圧に対して閉鎖させ、そのためポンプ616が、インクリザーバ604内のインクを加圧することができる。加圧インクは、導管618を通って、印刷ヘッド608のマニホールド入口に流れる。バルブ642もまた開放されるため、マニホールドからインクジェットへの流体流に対する空気インピーダンスは、マニホールドを通る空気インピーダンスよりも大きい。このため、インクは、マニホールド出口から廃タンクに流れる。圧力ポンプ616は、リザーバ内のインクの供給を完全に消耗することなく、導管618、印刷ヘッド608内のマニホールド、ならびに導管634を充填するのに十分である体積のインクを、導管618及び印刷ヘッド608のマニホールドを通って押すように、既定の期間、既定の圧力で操作される。次いで、コントローラは、バルブ642を操作して、導管634を閉鎖し、バルブ612を操作して、インクリザーバを大気圧に通気する。これにより、マニホールドパージは、インクリザーバから印刷ヘッド、マニホールド、及び導管634まで導管618を充填し、そのためマニホールド及びインク送達システムは、導管又は印刷ヘッド内に空気が存在しないため、プライミングされる。次いで、インクリザーバは、前述のように、リザーバ内のレベルと印刷ヘッドインクジェットとの間の距離がDであるレベルに、インクの高さをもたらすために再供給される。
【0005】
マニホールドプライミングの後に印刷ヘッド608内のインクジェットをプライミングするために、コントローラ80は、バルブ612を閉じ、空気圧ポンプ616を起動して、リザーバ604のヘッドスペースを加圧して、インクを印刷ヘッドに送る。バルブ642が閉じられているので、マニホールドを通るプライミングシステムの空気インピーダンスは、インクジェットを通る空気インピーダンスよりも大きく、そのためインクがインクジェットに付勢される。再び、パージ圧力が、既定の期間、既定の圧力で及ぼされて、インクジェットを充填するのに適切な体積のインクを印刷ヘッドに付勢する。これより前のインクジェット内の任意のインクは、印刷ヘッド608のフェースプレート624内のノズルから放出される。このインクパージは、インクジェットをプライミングし、また、詰まり及び動作不能なインクジェットをそれらの動作状態に復元するのに役立ち得る。圧力の作用後、コントローラ80は、バルブ612を操作して開放し、インクリザーバから圧力解放する。圧力センサ620はまた、圧力供給導管622に動作可能に接続され、このセンサは、リザーバ内の圧力を示す信号を生成する。この信号は、空気圧ポンプの動作を調節するためにコントローラ80に提供される。パージ中のリザーバ内の圧力が既定の閾値を超える場合、コントローラ80は、バルブ612を操作して、圧力を解放する。リザーバ内の圧力が、パージ中に既定の閾値を下回る場合、コントローラ80は、圧力源616を操作して、圧力を上昇させる。2つの既定の閾値は異なるため、コントローラは、1つの特定の圧力ではなく、パージ中にリザーバ内の圧力を既定の範囲内に保つことができる。
【0006】
いくつかのインクジェット撮像デバイスは、低粘度状態から高粘度状態に比較的急速に変化するインクを使用する。先行技術のプリンタでは、プリンタが使用されていないときに、図9Aに示されるステーション60などキャッピングステーションが、印刷ヘッドを覆うために使用される。キャップは、印刷ヘッドのパージ中に、印刷ヘッド708によって生成されたインクを収集するための受容部704として形成される。アクチュエータ(図示せず)を動作させて、図9Bに示されるように、受容部704内の開口部と接触するように印刷ヘッド708を移動させ、その結果、印刷ヘッドがパージされて、印刷ヘッド内のインクマニホールド及び通路に圧力を加えることによって、印刷ヘッド内のインクジェットを復元することができる。この圧力は、印刷ヘッドのフェースプレート内のノズルからインクを追い出す。このインクパージは、詰まって、動作不能であるインクジェットを動作状態に復元するのに役立ち得る。印刷ヘッドからパージされたインクは、インクが廃棄物受容部に到達することができるように、出口シュート712に方向付けられる。キャップ受容部704はまた、印刷ヘッドフェースが、周囲空気を循環させるように曝露されるのではなく、キャップ受容部の密閉空間内に保持されるので、ノズル内のインクを乾燥させないようにするのに役立つ。
【0007】
しかしながら、一部の高速乾燥インクにとっては、キャップの密閉空間は、インク中の水など溶媒がインクから蒸発するのを可能にするのに十分である。この蒸発によってインクの粘度が上昇するにつれて、インクはノズル孔への付着を開始し、インクジェットは、印刷ヘッドがキャップによって覆われていても詰まる可能性がある。場合によっては、ある粘度レベルに達するインクの量は、パージサイクルが除去して、インクジェットを動作状態に復元することができる量よりも多いことがある。印刷ヘッドの非活動期間中に印刷ヘッドがキャップされた後にパージすることによって回復させることができないインクジェットの数を減らすことができることは、有益である。
【発明の概要】
【0008】
インクジェットプリンタの動作方法は、印刷ヘッドのノズルにおいてインクを低粘度状態に維持することができる。この方法は、コントローラを用いて、ある容積を密閉して印刷ヘッド受容部を形成する、少なくとも1つの壁に枢動可能に取り付けられた少なくとも2つの部材に動作可能に接続された第1のアクチュエータを動作させて、少なくとも2つの部材が印刷ヘッド受容部の少なくとも1つの壁に隣接する第1の位置から、少なくとも2つの部材が印刷ヘッド受容部の容積全体に延在する第2の位置へと、少なくとも2つの部材を移動させることと、コントローラを用いて第1のアクチュエータを動作させて、少なくとも2つの部材を第2の位置から第1の位置へと移動させることと、少なくとも2つの部材が第2の位置にあるときに、コントローラを用いて、少なくとも2つの部材に1対1対応で取り付けられた少なくとも2つの熱電デバイスに電流を加えることと、を含む。
【0009】
キャッピングステーションは、印刷ヘッドのノズルにおいてインクを低粘度状態に維持することを可能にする方法を実行するように構成されている。キャッピングステーションは、ある容積を密閉するように構成された少なくとも1つの壁を有する印刷ヘッド受容部であって、印刷ヘッド受容部は、印刷ヘッドの外周に対応する開口部を有する、印刷ヘッド受容部と、印刷ヘッド受容部の少なくとも1つの壁に枢動可能に取り付けられた少なくとも2つの部材であって、部材は、部材が印刷ヘッド受容部の少なくとも1つの壁に隣接する第1の位置と、部材が印刷ヘッド受容部の容積全体に延在する第2の位置との間で移動するように構成されている、少なくとも2つの部材と、少なくとも2つの熱電デバイスであって、1つの熱電デバイスが、少なくとも2つの部材のうちの各部材に1対1対応で取り付けられている、少なくとも2つの熱電デバイスと、少なくとも2つの部材に動作可能に接続された第1のアクチュエータであって、第1のアクチュエータは、第1の位置と第2の位置との間で少なくとも2つの部材を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、第1のアクチュエータ及び熱電デバイスに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、第1のアクチュエータを動作させて、少なくとも2つの部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させ、熱電デバイスに電流を選択的に加えるように構成されている。
【0010】
インクジェットプリンタは、印刷ヘッドのノズルにおいてインクを低粘度状態に維持することを可能にする方法を実行するキャッピングステーションを含む。プリンタは、複数の印刷ヘッドと、複数の印刷ヘッドのうちの各印刷ヘッドのためのキャッピングステーションと、を含む。各キャッピングステーションは、ある容積を密閉するように構成された少なくとも1つの壁を有する印刷ヘッド受容部であって、印刷ヘッド受容部は、キャッピングステーションに関連する印刷ヘッドの外周に対応する開口部を有する、印刷ヘッド受容部と、印刷ヘッド受容部の少なくとも1つの壁に枢動可能に取り付けられた少なくとも2つの部材であって、部材は、少なくとも2つの部材が印刷ヘッド受容部の少なくとも1つの壁に隣接する第1の位置と、少なくとも2つの部材が印刷ヘッド受容部の容積全体に延在する第2の位置との間で移動するように構成されている、少なくとも2つの部材と、少なくとも2つの熱電デバイスであって、少なくとも2つの熱電デバイスは、少なくとも2つの部材に1対1対応で取り付けられた、少なくとも2つの熱電デバイスと、少なくとも2つの部材に動作可能に接続された第1のアクチュエータであって、第1のアクチュエータは、第1の位置と第2の位置との間で少なくとも2つの部材を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、各キャッピングステーションの第1のアクチュエータに動作可能に接続されたコントローラと、を含む。コントローラは、各キャッピングステーションの第1のアクチュエータを動作させて、少なくとも2つの部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させ、熱電デバイスに電流を選択的に加えるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
印刷ヘッドのノズルにおいてインクを低粘度状態に維持することを可能にする前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と関連して以下の説明で説明される。
【0012】
図1】インク画像を媒体のウェブに直接印刷し、プリンタの印刷ヘッドからの高速乾燥インクの蒸発を低減させる水性インクジェットプリンタの概略図である。
図2A】印刷ヘッドの非活動期間中にプリンタの印刷ヘッドからの高速乾燥インクの蒸発を低減するために図1に示されるプリンタで使用される印刷ヘッドキャッピングステーションの概略図である。
図2B】印刷ヘッドの非活動期間中にプリンタの印刷ヘッドからの高速乾燥インクの蒸発を低減するために図1に示されるプリンタで使用される印刷ヘッドキャッピングステーションの概略図である。
図3図2A及び図2Bに示されるキャッピングステーションのフラップの構造を示す。
図4A図1のプリンタにおいて印刷ヘッドをキャッピングし、その結果、プリンタの印刷ヘッドからの高速乾燥インクの蒸発が低減されるプロセスのフロー図である。
図4B】様々な印刷ヘッドの非活動期間の影響を受けるプリンタにおいて、キャッピングされる印刷ヘッドを選択するプロセスのフロー図である。
図5A図4Aのプロセス中のキャッピングステーションの動作を示す。
図5B図4Aのプロセス中のキャッピングステーションの動作を示す。
図5C図4Aのプロセス中のキャッピングステーションの動作を示す。
図6A】夜間非活動期間後のプリンタにおける動作不能なインクジェットの数(図6A)及び同一の夜間非活動期間後にインクジェットによって生成されるインク滴の質量(図6B)に対する印刷ヘッド温度の影響を示すグラフである。
図6B】夜間非活動期間後のプリンタにおける動作不能なインクジェットの数(図6A)及び同一の夜間非活動期間後にインクジェットによって生成されるインク滴の質量(図6B)に対する印刷ヘッド温度の影響を示すグラフである。
図7A図2に示される印刷ヘッドキャッピングステーションの代替の実施形態の動作を示す。
図7B図2に示される印刷ヘッドキャッピングステーションの代替の実施形態の動作を示す。
図7C図2に示される印刷ヘッドキャッピングステーションの代替の実施形態の動作を示す。
図8】先行技術のプリンタでパージのみを目的として使用される、先行技術のインク送達システムの概略図である。
図9A】先行技術のキャッピングステーションの概略図である。
図9B】先行技術のキャッピングステーションの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示されるシステム及び方法の環境、並びにシステム及び方法の詳細を一般的に理解するために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号が、同様の要素を指定するために本明細書を通じて使用されている。本明細書で使用するとき、用語「プリンタ」は、デジタル複写機、製本機、ファクシミリ装置、多機能マシンなど媒体上にインク画像を生成する任意の装置を包含してよい。本明細書で使用するとき、用語「プロセス方向」は、撮像ドラム又は印刷媒体など画像受信面の移動方向を指し、用語「クロスプロセス方向」は、画像受信面の表面に沿ったプロセス方向に対して実質的に垂直な方向である。また、以下に示される説明は、インクジェットプリンタ内のインクジェットを動作させて、プリンタ内のインクジェットのノズルにおけるインクの蒸発を低減するためのシステムに関する。読者はまた、本明細書に記載される原理が、マーキング材料のピクセルを用いて画像を生成する類似の撮像装置に適用可能であることを理解されたい。
【0014】
図1は、コントローラ80’が以下に記載されるプロセス400を実行して、キャッピングシステム60’を動作させ、その結果、非活動期間中に、印刷ヘッド34A、34B、34C、及び34Dのノズルにおいてインクを低粘度状態に維持するように構成されている、高速水性インク画像生成マシン又はプリンタ10を示す。図示されるように、プリンタ10は、シャフト42に動作可能に接続されたアクチュエータ40のうちの1つを動作させて、シャフトの周りに取り付けられたシャフト及び巻き取りロール46を回転させるコントローラ80’によって、プリンタ10を介して引き出された媒体のウェブWの表面上にインク画像を直接形成するプリンタである。一実施形態では、各印刷ヘッドモジュールは、プリンタによって印刷され得るクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅に対応する幅を有する1つの印刷ヘッドのみを有する。他の実施形態では、印刷ヘッドモジュールは、複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドが、プリンタが印刷できるクロスプロセス方向において、最も広い媒体の幅未満の幅を有する。これらのモジュールでは、印刷ヘッドは、単一の印刷ヘッドよりも広い媒体が印刷されることを可能にする千鳥状の印刷ヘッドのアレイ内に配置される。付加的に、印刷ヘッドはまた、印刷ヘッドによってクロスプロセス方向に噴射された液滴の密度が、クロスプロセス方向において、印刷ヘッド内のインクジェット間の最小の間隔よりも大きくなり得るように組み合わせることができる。
【0015】
図8に示されるものなど、水性インク送達サブシステム20は、1色の水性インクを含有する少なくとも1つのインクリザーバを有する。図示されたプリンタ10は多色画像生成機であるため、インク送達システム20は、4つの異なる色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)の水性インクを表す4つのインクリザーバを含む。各インクリザーバは、モジュール内の印刷ヘッドにインクを供給するように、印刷ヘッド又は印刷ヘッドモジュール内の複数の印刷ヘッドに接続されている。パージシステム24の圧力源及び通気孔はまた、上述のように、インクリザーバと印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドとの間で動作可能に接続されて、マニホールド及びインクジェットのパージを実行する。付加的に、図1には示されていないが、印刷ヘッドモジュール内の各印刷ヘッドは、図8を参照して前述されたように、前述されたマニホールド及びインクジェットのパージ動作を可能にするように、バルブで対応する廃インクタンクに接続されている。印刷ヘッドモジュール34A~34Dは、コントローラ80’による1つ以上の印刷ヘッドの操作のために関連付けられた電子機器を含むことができるが、これらの接続は図を簡略化するために示されていない。プリンタ10は、4つの印刷ヘッドモジュール34A~34Dを含み、各々が2つのアレイの印刷ヘッドを有するが、代替的な構成は、モジュール内に異なる数の印刷ヘッドモジュール又はアレイを含む。コントローラ80’はまた、以下により詳細に記載されるように、キャッピングシステム60’及びキャッピングシステム60’の構成要素に動作可能に接続された1つ以上のアクチュエータ40を動作させて、印刷ヘッドモジュール内の印刷ヘッドのノズル内のインクの低粘度を保持する。
【0016】
インク画像がウェブW上に印刷された後、画像は、画像乾燥機30の下を通過する。画像乾燥機30は、赤外線ヒータ、加熱された送風機、空気戻り、又はこれらの構成要素の組み合わせを含み、インク画像を加熱し、画像をウェブに少なくとも部分的に固定することができる。赤外線ヒータは、ウェブの表面上の印刷された画像に赤外線加熱を加えて、インク中の水又は溶媒を蒸発させる。加熱された送風機は、インク上に加熱された空気を方向付けて、インクからの水又は溶媒の蒸発を補う。次いで、空気が収集され、空気戻りによって排気されて、プリンタ内の他の構成要素との空気流の干渉を低減する。
【0017】
更に示されるように、媒体ウェブWは、必要に応じて、シャフト42を回転させるために、1つ以上のアクチュエータ40を操作するコントローラ80’によって媒体38のロールから巻かれず、ここで巻き取りロール46が、媒体ロール38から、シャフト36を伴い回転する際、ウェブを引くように設置される。ウェブが完全に印刷されると、巻き取りロールは、シャフト42から取り外すことができる。代替的に、印刷されたウェブは、媒体を切断すること、照合すること、結合すること、及びステープル留めなどのタスクを実行する他の処理ステーション(図示せず)に方向付けられ得る。
【0018】
機械又はプリンタ10の様々なサブシステム、構成要素、及び機能の動作ならびに制御は、コントローラ又は電子サブシステム(ESS)80’の支援を用いて実行される。ESS又はコントローラ80’は、インク送達システム20’の構成要素、パージシステム24、印刷ヘッドモジュール34A~34D(したがって、印刷ヘッド)、アクチュエータ40、ヒータ30、及びキャッピングステーション60’に動作可能に接続される。ESS又はコントローラ80’は、例えば、電子データ記憶装置を備える中央処理装置(central processor unit、CPU)、及びディスプレイ又はユーザインターフェース(user interface、UI)50を有する内蔵型の専用ミニコンピュータである。ESS又はコントローラ80’は、例えば、センサ入力及び制御回路、ならびに画素配置及び制御回路を含む。加えて、CPUは、走査システム又はオンライン又はワークステーション接続などの画像入力源と、印刷ヘッドモジュール34A~34Dとの間の画像データの流れを読み出し、捕捉し、準備し、管理する。このように、ESS又はコントローラ80’は、印刷プロセスを含む他の機械サブシステム及び機能の全てを、操作及び制御するための主マルチタスキングプロセッサである。
【0019】
コントローラ80’は、プログラムされた命令を実行する汎用又は専用のプログラマブルプロセッサで実装することができる。プログラムされた機能を実行するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、以下に記載される動作を実行するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、プリント回路カード上に提供されてもよく、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されることもある。各々の回路は、別個のプロセッサで実装することができ、又は複数の回路が、同じプロセッサ上に実装されることもある。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内で提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、別個の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。
【0020】
動作中、生成される画像に関する画像データは、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに出力された印刷ヘッド制御信号の処理及び生成のための、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかからコントローラ80’に送信される。付加的に、コントローラ80’は、例えば、ユーザインターフェース50を介する操作者入力から、関連するサブシステム及び構成要素の制御を判定及び承諾し、したがってかかる制御を実行する。結果として、適切な色のための水性インクが、印刷ヘッドモジュール34A~34Dに送達される。付加的に、画素配置制御は、ウェブの表面に対して働いて、画像データに対応するインク画像を形成し、媒体は、巻き取りロール上で巻き取られる、又は別様に処理され得る。
【0021】
同様の構成要素に同様の番号を使用して、印刷ヘッドからの高速乾燥インクの蒸発を低減することができるキャッピングステーションが、図2A及び図2Bに示されている。このシステム60’は、コントローラ80’が、印刷ジョブ又は他の印刷ヘッド非活動期間の合間に図4Aに示されるプロセス400を実行してキャッピングステーションを動作させて、インクリザーバ604によって供給されるインクの乾燥を印刷ヘッドのノズルにおいて低減するように構成されている点で、図9A及び図9Bに示されるものとは異なる。図4Aは、キャッピングシステム60’を動作させて、インク膜を用いて印刷ヘッドのフェースプレートを覆い、ノズル内のインク粘度を低粘度に維持するプロセス400のフロー図を示す。下記の考察において、機能又は動作を実行するプロセス400への参照は、プリンタ内の他の構成要素に関連して機能又は動作を実行するように、記憶されたプログラム命令を実行するための、コントローラ80’などのコントローラの動作を指す。プロセス400は、例示を目的として図1のプリンタ10内のキャッピングステーション60’を使用して実行されるものとして説明される。
【0022】
プリンタの非活動期間中にインクの蒸発を低減するキャッピングステーション60’が、図2A及び図2Bに示される。キャッピングステーション60’は、印刷ヘッド受容部304と、排出シュート308と、一対の枢動部材、つまりフラップ312と、を含み、一対のフラップは、フラップがキャッピングステーション内で保管される位置と、フラップが、フラップ間の微小間隙を除いて、キャップステーション内の空間全体に延在する位置との間を移動する。印刷ヘッド受容部304は、ある容積の空気を密閉する、少なくとも1つの壁316を有する。開口部320は、印刷ヘッド324の外周に対応する形状である。側壁322は、開口部320の縁部から延在して、印刷ヘッド324がそれらの間を摺動し、パージ動作及び保管動作のために開口部320に嵌合することを可能にする。フラップ312は、図2Bに示されるように壁316にヒンジ結合されて、フラップが、キャップステーション内の空間の中心に向かって枢動し、受容部304内の容積全体に延在することを可能にする。周りにフラップ312が取り付けられるヒンジは、図2Bに示されるように、フラップが壁316から垂直に延在するときにフラップの枢動を停止させるように構成されている。フラップは、フラップがキャッピングステーション内の空間全体に延在するときにフラップの端部が接触しない長さを有する。フラップ312間の間隙326は、以下に記載されるように、過剰なインクが印刷ヘッド受容部304内に落下することを可能にする。アクチュエータ40のうちの1つは、フラップ312の両方に動作可能に接続されて、フラップにヒンジの周りを枢動させて、キャッピングステーションの内部空間にフラップを延在させ、フラップを枢動させて、キャッピングステーション内の保管位置にフラップを戻す。プリンタ10のコントローラ80’は、アクチュエータ40のうちの1つに動作可能に接続されて、アクチュエータを動作させる。図2Aは、図2Bを簡略化するためにアクチュエータ及びコントローラのみを示す図である。
【0023】
フラップ312の一実施形態は、図3に示されるように、熱電デバイス412に取り付けられた基部404及びインク受け面408を含む。代替的な実施形態では、インク受け面408は、いずれの基部404もフラップに介在することなく、又はフラップに含まれることなく、熱電デバイス412に直接取り付けられ得る。本明細書で使用するとき、用語「熱電デバイス」は、電流が2種類の材料の全体に加えられて、一方の材料から他方の材料へと熱を移動させるときに、2種類の材料の接合部において熱流束を生成する2層の異種材料を有するデバイスを意味する。印刷ヘッド324から受けたインクに接触するインク受け面は、高表面エネルギーを有する親水性材料で作製され、基部404は、低表面エネルギーを有する疎水性材料で作製される。これらの材料を選択することにより、印刷ヘッドからのインクが確実に親水性表面408上に留まって、均一な厚さを有する膜を形成する。印刷ヘッドがこの膜の最上部に向けてゆっくり移動するときに、印刷ヘッド内の圧力チャンバにパージ圧力が加えられ、その結果、インクがノズルから印刷ヘッドの面上に滲み出る。印刷ヘッドがこの膜の最上部と接触するように移動し続けると、印刷ヘッドは膜を圧迫するので、インクが印刷ヘッドの表面全体に分配され、結果として生じたインク膜に取り込まれた気泡が膜から漏れ出る。印刷ヘッドが表面408に置かれたときの印刷ヘッドの圧力はインクの表面張力に打ち勝ち、ヘッドの中心からインクを押し出す。コントローラ80’は、熱電デバイス412に動作可能に接続され、フラップ内の他の構成要素及び印刷ヘッドの表面から熱を除去し、熱電デバイスの反対側に熱を向かわせる方向へと熱電デバイス全体に電流を選択的に加える。図6A及び図6Bのグラフによって示されるように、印刷ヘッドの表面を31℃未満の温度に維持することは、プリンタに見られる動作不能なインクジェットの数を低減し、夜間非活動期間後の動作開始時にプリンタが起動されるときに、動作するインクジェットによって噴射されるインク滴の質量を維持することに役立つことが見出されている。この印刷ヘッドの表面温度を維持することにより、印刷ヘッドのノズル内のインクの粘度がその範囲の下端で維持される。親水性表面408上のインクの存在及び熱電デバイス412の動作は、印刷ヘッドのインクジェットを動作状態に維持するのに役立つ。
【0024】
図4Aは、キャッピングステーション300を動作させて、フラップ上に印刷ヘッドを保管するように部材312のインク受け面を準備するプロセス500のフロー図を示す。下記の考察において、機能又は動作を実行するプロセス500への言及は、記憶されたプログラム命令を実行して、プリンタ内の他の構成要素に関連して機能又は動作を実行する、コントローラ80’などコントローラの動作を指す。プロセス500は、例示を目的として図1のプリンタ10内のキャッピングステーションに対して実行されるものとして説明される。
【0025】
キャッピングステーション60’を動作させるプロセス500は、図5A図5B、及び図5Cに示されている。プリンタの非活動期間に印刷ヘッドがキャッピングされる場合(これは、動作不能なインクジェットの原因になり得る)、アクチュエータ40のうちの1つがコントローラ80’によって動作させられて、キャッピングステーションの内部空間全体に延在する位置にフラップを移動させる(ブロック504)。次いで、コントローラは印刷ヘッドを動作させて、フラップ312のインク受け面408にインク滴を噴射させる(ブロック508)。このプロセスは、図5A及び図5Bに示される。インクがフラップ312の表面408に膜416を形成すると、コントローラ80’は、アクチュエータ40のうちの別のアクチュエータを動作させて、印刷ヘッド324をフラップ312に向けて移動させる(ブロック512)。この動作の一部は、図5Cに示される。アクチュエータは、印刷ヘッドがインク膜416に取り込まれ得る気泡を押し出すことを可能にする速度で印刷ヘッドを移動させる。一実施形態では、この速度は、約0.03インチ/秒~約0.07インチ/秒の範囲である。ただし、この速度は、例えば、インクの粘度及びフラップのインク受け面のサイズなどの要因に応じて異なる。コントローラは、図5Cに示されるように、印刷ヘッドがフラップ312のインク受け面408上のインク膜416上に置かれるまでアクチュエータの動作を続行させる。次いで、コントローラは、熱電デバイスを動作させて、印刷ヘッドの表面の温度を所定の閾値未満にする(ブロック514)。熱電デバイスの動作は、所定の時間間隔で区切られた所定の期間にわたってデバイスを動作させることによって実行され得る。あるいは、温度センサが、基部404内のインク受け面408と印刷ヘッドの表面との境界面に位置付けられ得る。コントローラは、温度センサによって生成された信号をモニタし、閉ループ制御を使用して熱電デバイスを動作させることができ、その結果、印刷ヘッドの表面温度が所定の範囲内に維持される。印刷ヘッドは、ある非活動期間にわたってこの位置に留まる(ブロック516)。次いでコントローラは、印刷ヘッドに接続されたアクチュエータ328を動作させて、印刷ヘッドをその印刷位置に戻す(ブロック520)。コントローラはまた、フラップ312に接続されたアクチュエータ328の動作を反転させて、キャッピングステーション内のフラップを後退させる(ブロック524)。プロセス500の別の繰り返しの開始時に、噴射された新たなインク滴がインク受け面408に落下して乾燥したインクに水分を補給し、したがってインク膜層が形成され得るため、インク受け面の洗浄は不要である。
【0026】
キャッピングステーション60’及び印刷ヘッドを保管するためのその動作により、印刷ヘッドのノズルにおいてインクがインク受け面408上の液体インクに浸漬された状態で維持されることが可能になり、その結果、ノズル内のインクは蒸発しない、又はその粘度は著しく変化しない。付加的に、熱電デバイスの動作は、印刷ヘッドのノズルにおいてインクをその粘度範囲の下端に保つのに役立つ範囲内に印刷ヘッドの表面温度を維持するのに役立つ。したがって、印刷ヘッドは、プリンタの非活動期間中のキャッピングステーション内での保管後のパージが不要である場合が多く、インクは、印刷のために節約される。プリンタ10などプリンタは、各印刷ヘッドモジュール34A、34B、34C、及び34D内の各印刷ヘッドのためのキャッピングステーション60’を備えて構成され得る。コントローラ80’は、各キャッピングステーション内でアクチュエータに動作可能に接続され得、コントローラ80’は、プリンタ内の印刷ヘッドを保管するために、アクチュエータを動作させて、図4Aに示されるプロセスを実行するように構成されている。
【0027】
図4Bに示されるプロセスは、ノズル内のインクの粘度に悪影響を及ぼす、プリンタの非活動時間の長さが印刷ヘッドごとに異なるプリンタでの図4Aのプロセスで使用される。最も一般的には、この相違は、印刷ヘッドで使用されるインクの種類から生じる。いくつかの水性インクジェットプリンタでは、マゼンタインクは、インクジェットに悪影響を及ぼす高粘度に他のインクよりも特に早く到達しやすいことが観察されている。図4Bのプロセスでは、プリンタの非活動時間を測定するタイマーがモニタされ(ブロック554)、プリンタ内の各印刷ヘッドの所定の制限時間と比較される(ブロック558)。モニタされた時間が印刷ヘッドの所定の制限時間以上であるとき、当該印刷ヘッドに対して図4Aのプロセスが行われる。次いで、プロセスは、対応するキャッピングステーションに移動されていない印刷ヘッドがあるかどうかを確認する(ブロック562)。残っている印刷ヘッドが存在する場合、非活動時間が引き続きモニタされ、当該印刷ヘッドの制限時間と比較される(ブロック558)。このプロセスは、全ての印刷ヘッドがキャッピングステーションに移動されるか、又はプリンタが動作状態に戻るまで継続する。
【0028】
同様の構成要素に同様の番号を使用して、印刷ヘッドからの高速乾燥インクの蒸発を低減することができるキャッピングステーションの代替の実施形態が、図7A図7B、及び図7Cに示されている。受容部304は、側壁内にスロット314を有して、フラップ312’が側壁を通って回転することを可能にする。フラップ312’は、アクチュエータ40及びコントローラ80’に動作可能に接続されているため、コントローラはアクチュエータを動作させて、図に示される動作範囲にわたってフラップ312’を回転させ、次いで図7Aに示される開始位置に戻すことができる。フラップ312’は、扇形として成形される。フラップ312’の表面は、図3に示される構造、又は基部404を含まない上述の代替の実施形態を有する。これらの扇形フラップは、フラップが図7Cに示される位置にあるときに、印刷ヘッドの表面を支持するのに役立つ。本明細書で使用するとき、用語、「扇形」は、円の中心から円の円周までの2本の線によって形成され、中心からの2本の線の間の円周によって包囲される形状を意味する。
【0029】
様々な上記に開示したもの並びに他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に望ましく組み合わされてもよいことが理解されるであろう。その中に、様々な現在予見されない又は予期されない、代替、修正、変形、又は改善が、当業者によってその後に行われてもよく、これらはまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B