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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】メカニカルシール装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F16J15/34 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020183665
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073589
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直人
(72)【発明者】
【氏名】上田 誠
(72)【発明者】
【氏名】大賀 光治
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅博
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241784(JP,A)
【文献】特公昭47-28379(JP,B1)
【文献】特公昭35-3706(JP,B1)
【文献】実開昭63-40661(JP,U)
【文献】特開平1-285832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機器の機内領域と機外領域とを区画する区画領域に設けられるシールケースと、
前記回転機器の回転軸と前記シールケースとの間において、前記回転軸の軸線方向に並列して配置された一対のメカニカルシールと、を備え、
前記一対のメカニカルシール同士の間に封液が供給される環状の封液室が形成されているメカニカルシール装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内において、当該ハウジングの軸方向一方側の第1位置と軸方向他方側の第2位置との間で移動可能に配置されたピストンと、
前記ハウジング内において前記ピストンの軸方向一方側に区画形成され、前記封液室の封液が導入される第1室と、
前記ハウジング内において前記ピストンの軸方向他方側に区画形成され、前記機内領域の被密封流体が導入される第2室と、
前記ハウジングの周壁に形成され、当該ハウジングの内周側で開口する開口部を有する第3室と、
前記第1室と前記第3室との間をシールする第1シール部材と、
前記ピストンが前記第2位置にあるときに前記第2室と前記第3室との間をシールし、前記ピストンが前記第2位置から前記第1位置側へ移動することで前記第2室と前記第3室との間のシールを解除する第2シール部材と、
前記第3室において、前記ハウジングに対して出没自在に設けられた感知部材と、を備え、
前記感知部材は、前記第2シール部材が前記第2室と前記第3室との間をシールしているときは前記第3室内に没入しており、前記第2シール部材によるシールが解除されたときに前記第2室から前記第3室に導入される前記被密封流体の圧力により前記ハウジングの外部に突出する、メカニカルシール装置。
【請求項2】
前記第2シール部材は、前記ピストンの外周に設けられたOリングであり、
前記Oリングは、前記ピストンが前記第2位置にあるときは前記開口部よりも軸方向他方側において前記ハウジングの内周面に接触し、前記ピストンが前記第2位置から前記第1位置側へ移動することで、前記開口部に対向する位置、又は当該対向する位置よりも軸方向一方側の位置に配置される、請求項1に記載のメカニカルシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ等の回転機器の軸封装置として、一対のメカニカルシールが回転機器の回転軸の軸方向に並列して配置されたダブル型のメカニカルシール装置を用いる場合がある。このメカニカルシール装置の両メカニカルシール間には、封液を供給する封液室が形成されている。封液室内の封液の圧力(封液圧)は、機内側の被密封流体の圧力(機内圧)よりも高くすることで、機内側の被密封流体が封液室を介して機外側(大気側)へ漏洩するのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-241784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のメカニカルシール装置では、封液圧が機内圧よりも低くなる逆圧状態になると、機外側へ被密封流体が漏洩したり、メカニカルシールが破損したりするリスクが高まる。このような逆圧状態を把握するために、封液圧と機内圧をそれぞれ検知する圧力スイッチを設けることが考えられる。しかし、圧力スイッチは、予め設定された圧力で作動するため、その設定圧力と実際の封液圧(又は機内圧)との間に誤差が生じると、実際に逆圧状態になっているのか否かを把握することができない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧力スイッチ等の計装器を用いずに、実際に逆圧状態になったことを把握することができるメカニカルシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のメカニカルシール装置は、回転機器の機内領域と機外領域とを区画する区画領域に設けられるシールケースと、前記回転機器の回転軸と前記シールケースとの間において、前記回転軸の軸線方向に並列して配置された一対のメカニカルシールと、を備え、前記一対のメカニカルシール同士の間に封液が供給される環状の封液室が形成されているメカニカルシール装置であって、ハウジングと、前記ハウジング内において、当該ハウジングの軸方向一方側の第1位置と軸方向他方側の第2位置との間で移動可能に配置されたピストンと、前記ハウジング内において前記ピストンの軸方向一方側に区画形成され、前記封液室の封液が導入される第1室と、前記ハウジング内において前記ピストンの軸方向他方側に区画形成され、前記機内領域の被密封流体が導入される第2室と、前記ハウジングの周壁に形成され、当該ハウジングの内周側で開口する開口部を有する第3室と、前記第1室と前記第3室との間をシールする第1シール部材と、前記ピストンが前記第2位置にあるときに前記第2室と前記第3室との間をシールし、前記ピストンが前記第2位置から前記第1位置側へ移動することで前記第2室と前記第3室との間のシールを解除する第2シール部材と、前記第3室において、前記ハウジングに対して出没自在に設けられた感知部材と、を備え、前記感知部材は、前記第2シール部材が前記第2室と前記第3室との間をシールしているときは前記第3室内に没入しており、前記第2シール部材によるシールが解除されたときに前記第2室から前記第3室に導入される前記被密封流体の圧力により前記ハウジングの外部に突出する。
【0007】
本発明によれば、ハウジング内において、第1室に導入される封液の圧力(封液圧)が、第2室に導入される被密封流体の圧力(機内圧)よりも高い通常の圧力状態では、ピストンは封液圧によって第2位置に保持されている。ピストンが第2位置にあるときは、第2シール部材が第2室と第3室との間をシールしており、感知部材はハウジングの第3室内に没入している。その状態から封液圧が機内圧よりも低くなる逆圧状態になると、ピストンが機内圧により第2位置から第1位置側へ移動する。ピストンが第1位置側へ移動すると、第2シール部材によるシールが解除されることで、第2室から第3室に導入される被密封流体の圧力により感知部材はハウジングの外部に突出する。このように、感知部材は、実際に逆圧状態になったときの機内圧によってハウジングの外部に突出するので、作業者は突出した感知部材により実際に逆圧状態になったことを把握することができる。
【0008】
(2)前記第2シール部材は、前記ピストンの外周に設けられたOリングであり、前記Oリングは、前記ピストンが前記第2位置にあるときは前記開口部よりも軸方向他方側において前記ハウジングの内周面に接触し、前記ピストンが前記第2位置から前記第1位置側へ移動することで、前記開口部に対向する位置、又は当該対向する位置よりも軸方向一方側の位置に配置されるのが好ましい。
【0009】
この場合、ピストンが第2位置にあるときは、ピストンの外周に設けられたOリングが第3室の開口部よりも軸方向他方側でハウジングの内周面に接触するので、第2室と第3室との間をOリングによりシールすることができる。その状態からピストンが第1位置側へ移動すると、Oリングが第3室の開口部に対向する位置、又は当該対向する位置よりも軸方向一方側に配置されることで、Oリングによる第2室と第3室との間のシールが解除される。したがって、第2シール部材としてOリングを用いるだけで、第2室と第3室との間のシールと、そのシールの解除とを行うことができるので、第2シール部材の構成を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧力スイッチ等の計装器を用いずに、実際に逆圧状態になったことを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るメカニカルシール装置の全体構成図(一部断面図)である。
図2】逆圧検知機構の断面図であり、ピストンが第2位置にある状態を示している。
図3】逆圧検知機構の断面図であり、ピストンが第1位置にある状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[メカニカルシール装置]
図1は、本発明の実施形態に係るメカニカルシール装置の断面図である。メカニカルシール装置1は、被密封流体を取り扱うポンプや撹拌機等の回転機器50に設けられている。メカニカルシール装置1は、シールケース2と、第1メカニカルシール7と、第2メカニカルシール8と、逆圧検知機構30と、を備えている。
【0013】
シールケース2は、回転機器50のケーシング(図示省略)に固定されており、回転機器50の機内領域Aと機外領域Bとを区画している。本実施形態のシールケース2は、機内領域A側から機外領域B側へ向かって順に、第1ケース体3、第2ケース体4、第3ケース体5、及び第4ケース体6を有している。第1ケース体3、第2ケース体4、第3ケース体5、及び第4ケース体6は、それぞれ環状に形成されており、回転機器50の回転軸51を包囲している。以下、本明細書において、機内領域A側を機内側といい、機外領域B側を機外側という。
【0014】
第1メカニカルシール7及び第2メカニカルシール8は、ダブル型メカニカルシールを構成している。第1メカニカルシール7及び第2メカニカルシール8は、シールケース2と回転軸51との間において、回転軸51の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に並列して配置されている。第1メカニカルシール7は機内側に配置され、機内領域Aと封液室Dとの間をシールしている。第2メカニカルシール8は機外側に配置され、機外領域Bと封液室Dとの間をシールしている。
【0015】
第1メカニカルシール7は、スプリングリテーナ11、ドライブピン12、ドライブカラー13、スプリング14、リテーナ15、回転密封環16、静止密封環17、Oリング18、及びOリング19を備えている。
【0016】
スプリングリテーナ11は、環状に形成されており、回転軸51の外周側においてスリーブ9を介して固定されている。スプリングリテーナ11には、周方向に所定間隔をあけて複数のドライブピン12(図1では1つのみ図示)が軸線方向に貫通して設けられている。各ドライブピン12は、スプリングリテーナ11に対して軸線方向の所定範囲で移動自在に保持されている。
【0017】
ドライブピン12の機内側の端部は、スプリングリテーナ11よりも機内側において、スリーブ9の外周面に対して軸線方向に移動可能に取り付けられた環状のドライブカラー13に固定されている。これにより、ドライブカラー13は、ドライブピン12を介してスプリングリテーナ11に対して軸線方向に移動可能に保持されるとともに、スプリングリテーナ11に対する相対回転が規制されている。
【0018】
スプリングリテーナ11は、周方向に所定間隔をあけて複数のスプリング14(図1では1つのみ図示)の一端部を保持している。スプリング14の他端部は、ドライブカラー13の機外側の端面に当接している。これにより、ドライブカラー13は、スプリング14の付勢力によってスプリングリテーナ11に対して機内側に付勢されている。
【0019】
ドライブカラー13の機内側には、環状のリテーナ15が固定されている。リテーナ15は、ドライブカラー13と共に回転軸51に対して軸線方向に移動可能である。リテーナ15の内周には、スリーブ9の外周面との間をシール(二次シール)するゴム製のOリング18が設けられている。
【0020】
リテーナ15の機内側には、環状の回転密封環16が嵌合して固定されている。回転密封環16の機内側の端面は、シール面16aとされている。回転密封環16よりも機内側には、静止密封環17が隣接して配置されている。静止密封環17は、第2ケース体4の内周側に嵌合して固定されている。静止密封環17の機外側の端面は、回転密封環16のシール面16aが摺動するシール面17aとされている。静止密封環17の外周には、第2ケース体4の内周面との間をシール(二次シール)するゴム製のOリング19が設けられている。
【0021】
第2メカニカルシール8は、スプリングリテーナ21、ドライブピン22、ドライブカラー23、スプリング24、回転密封環25、静止密封環26、及びOリング27を備えている。
【0022】
スプリングリテーナ21は、環状に形成されており、回転軸51の外周側においてスリーブ9を介して固定されている。スプリングリテーナ21には、周方向に所定間隔をあけて複数のドライブピン22(図1では1つのみ図示)が軸線方向に貫通して設けられている。各ドライブピン22は、スプリングリテーナ21に対して軸線方向の所定範囲で移動自在に保持されている。
【0023】
ドライブピン22の機外側の端部は、スプリングリテーナ21よりも機外側において、スリーブ9の外周面に対して軸線方向に移動可能に取り付けられた環状のドライブカラー23に固定されている。これにより、ドライブカラー23は、ドライブピン22を介してスプリングリテーナ21に対して軸線方向に移動可能に保持されるとともに、スプリングリテーナ21に対する相対回転が規制されている。
【0024】
スプリングリテーナ21は、周方向に所定間隔をあけて複数のスプリング24(図1では1つのみ図示)の一端部を保持している。スプリング24の他端部は、ドライブカラー23の機内側の端面に当接している。これにより、ドライブカラー23は、スプリング24の付勢力によってスプリングリテーナ21に対して機外側に付勢されている。
【0025】
ドライブカラー23の機外側には、環状の回転密封環25が固定されている。回転密封環25は、ドライブカラー23と共に回転軸51に対して軸線方向に移動可能である。回転密封環25の内周には、スリーブ9の外周面との間をシール(二次シール)するゴム製のOリング27が設けられている。
【0026】
回転密封環25の機外側の端面は、シール面25aとされている。回転密封環25よりも機外側には、静止密封環26が隣接して配置されている。静止密封環26は、第4ケース体6の内周側に嵌合して固定されている。静止密封環26の機内側の端面は、回転密封環25のシール面25aが摺動するシール面26aとされている。
【0027】
シールケース2内における第1メカニカルシール7と第2メカニカルシール8との間には、環状の封液室Dが形成されている。封液室Dには、第1メカニカルシール7のシール面16a,17a同士の摺動部、及び第2メカニカルシール8のシール面25a,26a同士の摺動部を、潤滑及び冷却する封液が導入される。封液としては、被密封流体に応じて、被密封流体内に混入しても支障のない水,油,溶剤等が使用される。
【0028】
第2ケース体4及び第3ケース体5には、封液室Dに封液を供給する供給路2aが形成されている。第2ケース体4には、封液室Dの封液を外部へ排出する排出路2bが形成されている。これにより、回転機器50の運転中に供給路2aから封液室Dに供給された封液は、第1及び第2メカニカルシール7,8の各摺動部を潤滑及び冷却し、排出路2bから外部へ排出される。
【0029】
第2ケース体4には、封液室Dと連通する第1流路2cが形成されている。第1ケース体3には、機内領域Aと連通する第2流路2dが形成されている。
封液室Dの封液の圧力(封液圧)は、機内領域Aの被密封流体の圧力(機内圧)よりも高くしている。このような圧力関係にすることで、機内領域Aの被密封流体が封液室Dを介して機外領域Bへ漏洩するのを防いでいる。
【0030】
[逆圧検知機構の構成]
<全体構成>
シールケース2の外部には逆圧検知機構30が配置されている。逆圧検知機構30は、封液圧が機内圧よりも低くなった状態(逆圧状態)を機械的に検知する機構である。逆圧検知機構30は、第1配管61及び第2配管62を介してシールケース2に接続されている。
【0031】
第1配管61のシールケース2側の端部は、シールケース2の第1流路2cに接続されている。封液室Dの封液は、第1流路2c及び第1配管61を介して逆圧検知機構30に導入される。第2配管62のシールケース2側の端部は、シールケース2の第2流路2dに接続されている。機内領域Aの被密封流体は、第2流路2d及び第2配管62を介して逆圧検知機構30に導入される。
【0032】
図2は、逆圧検知機構30の断面図である。逆圧検知機構30は、主な構成部材として、ハウジング31、ピストン32、第1室33、第2室34、第3室35、第1シール部材36、第2シール部材37、及び感知部材38を備えている。
【0033】
<ハウジング>
ハウジング31は、互いに隣接して配置された第1筒体311及び第2筒体312と、第1筒体311の外周部に固定された第3筒体313と、を有している。第1筒体311及び第2筒体312は、軸線C1を中心として円筒状に形成されている。
以下、軸線C1に沿う方向を「軸方向」といい、軸線C1に対して垂直な方向を「径方向」という。また、便宜上、図2における軸線C1の上側を「軸方向一方側」といい、図2における軸線C1の下側を「軸方向他方側」という。
【0034】
第1筒体311は、第1大筒部311aと、第1大筒部311aの軸方向一方側に一体に形成された第1小筒部311bと、を有している。第1大筒部311aの外径は、第1小筒部311bの外径よりも大きい。第1大筒部311aの軸方向の長さは、第1小筒部311bの軸方向の長さよりも長い。
【0035】
第1筒体311の内部には、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって順に、接続孔部311c、収容孔部311d、及び嵌合孔部311eが連続して形成されている。接続孔部311cは、第1小筒部311bの内部における軸方向一端から軸方向他方側の途中部までの間に形成されている。
【0036】
収容孔部311dの大部分は、第1大筒部311aの内部に形成されており、収容孔部311dの残りの一部分(軸方向一端部)は、第1小筒部311bの内部の軸方向他端部に形成されている。収容孔部311dの孔径は、接続孔部311cの孔径よりも大きい。収容孔部311dと接続孔部311cとの境界には第1段差面311fが形成されている。
【0037】
嵌合孔部311eは、第1大筒部311aの内部の軸方向他端部に形成されている。嵌合孔部311eの孔径は、収容孔部311dの孔径よりも大きい。収容孔部311dと嵌合孔部311eとの境界には第2段差面311gが形成されている。
【0038】
第1筒体311の第1小筒部311bには、図示を省略するが、第1配管61(図1参照)の逆圧検知機構30側の端部が接続されている。これにより、第1筒体311の接続孔部311cは、第1配管61を介して封液室Dに接続されている。
【0039】
第2筒体312は、第2大筒部312aと、第2大筒部312aの軸方向他方側に一体に形成された第2小筒部312bと、を有している。第2大筒部312aの外径は、第2小筒部312bの外径よりも大きく、第1大筒部311aの外径と同一である。第2大筒部312aの軸方向の長さは、第2小筒部312bの軸方向の長さよりも短い。
【0040】
第2筒体312の内部には、接続孔部312cが軸方向全長にわたって形成されている。接続孔部312cは、第1筒体311の嵌合孔部311eと連通している。接続孔部312cの孔径は、第1筒体311の接続孔部311cの孔径よりも大きく、収容孔部311dの孔径よりも小さい。
【0041】
第2大筒部312aの軸方向一方側には、第1大筒部311aの軸方向他方側の端面に当接する当接面312dが形成されている。また、第2大筒部312aの軸方向一方側には、当接面312dよりも径方向内側において当接面312dよりも軸方向一方側に突出する環状の嵌合部312eが形成されている。嵌合部312eは、第1筒体311の嵌合孔部311eに嵌合されている。
【0042】
第2大筒部312aは、周方向に間隔をあけて複数のボルト39(図2では1つのみ図示)によって第1大筒部311aに固定されている。第1大筒部311aの軸方向他方側には、第2大筒部312aの当接面312dとの間をシールするゴム製のOリング40が設けられている。
【0043】
第2小筒部312bには、図示を省略するが、第2配管62(図1参照)の逆圧検知機構30側の端部が接続されている。これにより、第2筒体312の接続孔部312cは、第2配管62を介して機内領域Aに接続されている。
【0044】
第3筒体313は、第1大筒部311aに形成された取付孔311hに取り付けられている。取付孔311hは、第1大筒部311aの周方向の所定箇所において径方向に貫通して形成されている。取付孔311hは、第1大筒部311aの径方向外側に形成された大孔部311iと、第1大筒部311aの径方向内側に形成された小孔部311jと、を有している。大孔部311iの孔径は、小孔部311jの孔径よりも大きい。取付孔311hは、大孔部311iと小孔部311jとの間に形成された縮径孔部311kをさらに有している。縮径孔部311kの孔径は、大孔部311iから小孔部311jへ向かって徐々に縮径している。
【0045】
第3筒体313は、軸線C1に対して垂直な方向に延びる軸線C2を中心として円筒状に形成されている。第3筒体313の軸線C2方向の一端部(図2の右端部)は、取付孔311hの大孔部311iに挿入して固定されている。第3筒体313の軸線C2方向の他端部(図2の左端部)は、第1筒体311の外周から径方向外側に突出している。第3筒体313の内部には、軸線C2方向の一端側から他端側に向かって順に、大孔部311iと連通する連通孔部313aと、連通孔部313aよりも小さい孔径の支持孔部313bとが連続して形成されている。連通孔部313aと支持孔部313bとの境界には段差面313cが形成されている。
【0046】
<ピストン>
ピストン32は、円柱状に形成されており、ハウジング31内の主に収容孔部311dに配置されている。ピストン32の外径は、収容孔部311dの孔径よりも僅かに小さい。ピストン32の軸方向の長さは、収容孔部311dの軸方向の長さよりも小さい。これにより、ピストン32は、軸方向一方側に偏った第1位置(図3に示す位置)と、軸方向他方側に偏った第2位置(図2に示す位置)との間で軸方向に移動可能である。
【0047】
図3は、ピストン32が第1位置まで移動した状態を示す逆圧検知機構30の断面図である。図2及び図3において、ピストン32の軸方向の一端面32aには、周方向に複数の突出部32cが軸方向一方側に突出して固定されている。各突出部32cは、ピストン32が第1位置まで移動したときにハウジング31の第1段差面311fに当接する。これにより、ピストン32の第1位置から軸方向一方側への移動を規制することができる。
【0048】
ピストン32の軸方向の他端面32bには、周方向に複数の突出部32dが軸方向他方側に突出して固定されている。各突出部32dは、ピストン32が第2位置まで移動したときに嵌合部312deの端面312fに当接する。これにより、ピストン32の第2位置から軸方向他方側への移動を規制することができる。
【0049】
<第1室>
ハウジング31の内部におけるピストン32の軸方向一方側には、第1室33が形成されている。第1室33の大きさは、ピストン32の軸方向の位置によって変化する。具体的には、第1室33は、ピストン32が第1位置(図3)にあるときに最小の大きさとなり、ピストン32が第2位置(図2)にあるときに最大の大きさとなる。
【0050】
図2に示す状態において、第1室33は、ピストン32の一端面32a、収容孔部311dの軸方向一方側の周面、第1段差面311f、及び接続孔部311cの周面によって区画形成される。第1室33には、第1配管61を介して封液室Dの封液が常に導入される(図1参照)。
【0051】
<第2室>
ハウジング31の内部におけるピストン32の軸方向他方側には、第2室34が形成されている。第2室34の大きさは、ピストン32の軸方向の位置によって変化する。具体的には、第2室34は、ピストン32が第2位置(図2)にあるときに最小の大きさとなり、ピストン32が第1位置(図3)にあるときに最大の大きさとなる。
【0052】
図3に示す状態において、第2室34は、ピストン32の他端面32b、収容孔部311dの軸方向他方側の周面、第2段差面311g、嵌合孔部311eの周面、嵌合部312eの端面312f、及び接続孔部312cの周面によって区画形成される。第2室34には、第2配管62を介して機内領域Aの被密封流体が常に導入される(図1参照)。
【0053】
<第3室>
ハウジング31の周壁である第1筒体311及び第3筒体313には、第3室35が形成されている。第3室35は、支持孔部313bの周面、段差面313c、連通孔部313aの周面、大孔部311iの周面、縮径孔部311kの周面、及び小孔部311jの周面によって区画形成されている。第3室35は、第1大筒部311aの内周側で開口する開口部35aを有する。開口部35aは、収容孔部311dの周面に形成された環状溝311mの底面で開口している。
【0054】
<第1シール部材>
第1シール部材36は、第1室33と第3室35との間をシールするものである。本実施形態では、第1シール部材36として、例えばOリングが用いられている。第1シール部材36は、ピストン32の外周の軸方向一方側に形成された第1環状溝32eに嵌め込まれている。第1シール部材36は、収容孔部311dの周面に接触しながら、ピストン32と共に軸方向に移動する。
【0055】
第1シール部材36は、ピストン32が第1位置(図3)及び第2位置(図2)のいずれの位置にあるときも、第1大筒部311aの環状溝311mよりも軸方向一方側において、収容孔部311dの周面に接触している。これにより、第1シール部材36は、ピストン32の軸方向の位置に関わらず、第3室35の開口部35aよりも軸方向一方側において、収容孔部311dの周面に接触している。したがって、第1シール部材36は、ピストン32の軸方向の位置に関わらず、第1室33と第3室35との間を常にシールしている。
【0056】
<第2シール部材>
第2シール部材37は、第2室34と第3室35との間をシールするものである。本実施形態では、第2シール部材37として、例えばOリングが用いられている。第2シール部材37は、ピストン32の外周の軸方向他方側に形成された第2環状溝32fに嵌め込まれている。第2シール部材37は、ピストン32と共に軸方向に移動する。
【0057】
第2シール部材37は、ピストン32が第2位置(図2)にあるとき、第1大筒部311aの環状溝311mよりも軸方向他方側において、収容孔部311dの周面に接触している。これにより、第2シール部材37は、第3室35の開口部35aよりも軸方向他方側において、収容孔部311dの周面に接触している。したがって、第2シール部材37は、ピストン32が第2位置にあるとき、第2室34と第3室35との間をシールしている。
【0058】
第2シール部材37は、ピストン32が第1位置(図3)にあるとき、第1大筒部311aの環状溝311m及び開口部35aに対向する位置に配置され、環状溝311mの底面との間に隙間が形成された状態、つまり収容孔部311dの周面に接触しない状態となる。これにより、第2シール部材37は、ピストン32が第2位置から第1位置へ移動することで、第2室34と第3室35との間のシールを解除する。
【0059】
<感知部材>
ハウジング31の第3室35には、感知部材38がハウジング31に対して出没自在に設けられている。感知部材38は、軸線C2に沿って延びる円柱状のピン部材からなる。感知部材38は、摺動部38aと、芯部38bと、出没部38cと、を有している。
【0060】
摺動部38aは、第3筒体313の連通孔部313aに配置されている。摺動部38aの外径は、連通孔部313aの孔径よりも僅かに小さい。これにより、摺動部38aは、連通孔部313aの周面に沿って軸線C2方向に摺動するようになっている。摺動部38aの外周には、環状溝38dが形成されている。環状溝38dにはOリング41が嵌め込まれている。Oリング41は、連通孔部313aの周面に接触しながら、摺動部38aと共に軸線C2方向に移動するようになっている。
【0061】
第3室35におけるOリング41よりも開口部35a側には、流体導入空間35bが形成されている。流体導入空間35bには、ピストン32が第2位置から第1位置(図3)へ移動するときに、第2室34の被密封流体が導入されるようになっている。Oリング41は、流体導入空間35bに導入された被密封流体が支持孔部313bから第3筒体313の外部へ漏洩するのを防いでいる。
【0062】
芯部38bは、摺動部38aから第3室35の開口部35aに向かって延びている。芯部38bは、本体部38b1と、本体部38b1の開口部35a側に形成された先端部38b2と、を有している。本体部38b1の外径は、摺動部38aの外径よりも小さく、かつ第1筒体311の小孔部311jの孔径よりも大きい。先端部38b2は、本体部38b1から開口部35a側へ向かって徐々に先細るように円錐状に形成されている。図2に示す状態において、先端部38b2は小孔部311jに挿入されている。
【0063】
出没部38cは、摺動部38aから支持孔部313bに向かって延びている。出没部38cの外径は、摺動部38aの外径よりも小さい。また、出没部38cの外径は、支持孔部313bの孔径よりも僅かに小さい。出没部38cは、支持孔部313bに挿入されて第3筒体313に支持されている。
【0064】
出没部38cは、図2に示す没入位置と、図3に示す突出位置との間で、摺動部38aと共に軸線C2方向に移動するようになっている。図2に示すように、出没部38cが没入位置にあるとき、出没部38cの全体は、第3室35内に没入している。図3に示すように、出没部38cが突出位置にあるとき、出没部38cの一部38c1が、第3筒体313よりも径方向外側(図3の左側)の外部に突出する。また、出没部38cが突出位置にあるとき、摺動部38bが段差面313cに当接することで、出没部38cが必要以上に第3筒体313から突出するのを規制している。逆圧検知機構30の初期設定時において、感知部材38は、出没部38cが没入位置となるように第3室35に配置される。
【0065】
[逆圧検知機構の動作]
ハウジング31の第1室33には、シールケース2内の封液室Dから封液が導入されるので、ピストン32の一端面32aには封液圧が作用する。また、ハウジング31の第2室34には、シールケース2側の機内領域Aから被密封流体が導入されるので、ピストン32の他端面32bには機内圧が作用する。このため、封液圧が機内圧よりも高い通常の圧力状態では、図2に示すように、ピストン32は、第1室33の封液圧によって軸方向他方側に押圧され、第2位置で保持されている。
【0066】
ピストン32が第2位置で保持されているとき、第2シール部材37は、第3室35の開口部35aよりも軸方向他方側において、収容孔部311dの周面に接触している。これにより、第2シール部材37は第2室34と第3室35との間をシールしているので、第3室35の流体導入空間35bには第2室34の被密封流体が流れ込むことはない。このため、感知部材38は、初期設定時の状態、つまり出没部38cが没入位置にある状態で保持されている。
【0067】
図2に示す通常の圧力状態から、封液圧が機内圧よりも低くなる逆圧状態になると、ピストン32は、第2室34の機内圧によって軸方向一方側に押圧される。これにより、ピストン32は、第2位置から、図3に示す第1位置まで移動する。ピストン32が第1位置へ移動すると、第2シール部材37は、第1筒体311の環状溝311m及び第3室35の開口部35aに対向する位置に配置され、収容孔部311dの周面に接触しない状態となる。これにより、第2シール部材37は、第2室34と第3室35との間のシールを解除する。
【0068】
第2シール部材37による第2室34と第3室35との間のシールが解除されると、第2室34の被密封流体は、開口部35aから第3室35の流体導入空間35bに導入される。その導入初期において、感知部材38は図2に示す状態にあるため、第3室35の小孔部311jに位置する感知部材38の先端部38b2は、小孔部311jに導入された被密封流体の圧力により径方向外側(図2の左側)へ押圧される。このように先端部38b2が押圧されると、図3に示すように、感知部材38の出没部38cは、没入位置から突出位置へ移動する。出没部38cが突出位置へ移動すると、出没部38cの一部38c1が第3筒体313の外部に突出する。
【0069】
[実施形態の作用効果]
以上、本実施形態のメカニカルシール装置1によれば、逆圧検知機構30のハウジング31内において、第1室33の封液圧が第2室34の機内圧よりも低くなる逆圧状態になると、ピストン32が機内圧により第2位置から第1位置へ移動する。ピストン32が第1位置へ移動すると、第2シール部材37によるシールが解除されることで、第2室34から第3室35に導入される被密封流体の圧力により、感知部材38(出没部38c)がハウジング31(第3筒体313)の外部に突出する。このように、感知部材38は、実際に逆圧状態になったときの機内圧によってハウジング31の外部に突出するので、作業者は、突出した感知部材38を視認することで、実際に逆圧状態になったことを把握することができる。その結果、逆圧状態となったメカニカルシール装置1のメンテナンス作業を早期に行うことができるので、機外領域Bに被密封流体が漏洩したり、第1及び第2メカニカルシール7,8が破損したりするリスクを低減することができる。
【0070】
また、ピストン32が第2位置にあるときは、ピストン32の外周に設けられた第2シール部材37であるOリングが、第3室35の開口部35aよりも軸方向他方側でハウジング31の内周面(収容孔部311dの周面)に接触するので、第2室34と第3室35との間を前記Oリングによりシールすることができる。その状態からピストン32が第1位置へ移動すると、前記Oリングが第3室35の開口部35aに対向する位置に配置されることで、前記Oリングによる第2室34と第3室35との間のシールが解除される。したがって、第2シール部材37としてOリングを用いるだけで、第2室34と第3室35との間のシールと、そのシールの解除とを行うことができるので、第2シール部材37の構成を簡素化することができる。
【0071】
[その他]
上記実施形態では、ピストン32が第1位置へ移動したときに、第2シール部材37のシールを解除しているが、ピストン32が第2位置から第1位置へ移動する途中で第2シール部材37のシールを解除してもよい。その場合、ピストン32が第1位置まで移動したときに、第2シール部材37のOリングは、第3室35の開口部35aに対向する位置よりも軸方向一方側の位置に配置される。
【0072】
上記実施形態では、感知部材38がハウジング31の外部に突出したことを視認することによって逆圧状態を把握できるようになっているが、感知部材38がハウジング31の外部に突出したことを位置センサで電気的に検知することによって逆圧状態を把握できるようにしてもよい。その場合、封液圧と機内圧をそれぞれ検知する一対の圧力スイッチを使用する場合と比較して、センサの個数を減らすことができる。
【0073】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 メカニカルシール装置
2 シールケース
6 第1メカニカルシール(メカニカルシール)
7 第2メカニカルシール(メカニカルシール)
31 ハウジング
32 ピストン
33 第1室
34 第2室
35 第3室
35a 開口部
36 第1シール部材
37 第2シール部材(Oリング)
38 感知部材
50 回転機器
51 回転軸
A 機内領域
B 機外領域
D 封液室
図1
図2
図3