(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240307BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240307BHJP
G10K 15/04 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
B60R11/02 S
H04R3/00 310
G10K15/04 302J
(21)【出願番号】P 2020198515
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 孝信
(72)【発明者】
【氏名】寺地 淳
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169525(JP,A)
【文献】特開2020-29148(JP,A)
【文献】特開平9-254750(JP,A)
【文献】特開2002-148107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/00 ー 11/06
H04R 3/00
G10K 15/00 ー 15/12
B60W 10/00 ー 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定音が発生する音発生デバイスを備え、車輪の角加速度の変動値が基準値以上となる場合に前記音発生デバイスから発生する音が大きくなるように当該音発生デバイスを制御する車両の制御方法であって、
前記車両の前輪の角加速度の変動値と前記車両の後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて、前記車両が段差を通過したことを判定する判定ステップと、
前記前輪の角加速度の変動値と前記後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが前記基準値以上となった場合において、前記車両が段差を通過したと判定されたときには、前記音発生デバイスから発生する音を大きくする制御を実行しない制御ステップと、を備える
車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記前輪の角加速度の変動値が前記基準値以上となった第1時刻と、前記後輪の角加速度の変動値が前記基準値以上となった第2時刻との比較結果に基づいて、前記車両が段差を通過したか否かを判定する、
車両の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記第1時刻と前記第2時刻との時間差が第1時間差閾値よりも小さい場合に、前記車両が段差を通過したと判定する、
車両の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御方法であって、
前記第1時間差閾値は、前記前輪及び前記後輪間の距離と前記車両の車速とに基づいて求められる、
車両の制御方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記前輪の角加速度の変動値が前記基準値以上となった第1時刻と、前記第1時刻の経過後に前記前輪の角加速度の変動値が前記基準値以下となった第3時刻との比較結果に基づいて、前記車両が段差を通過したか否かを判定する、
車両の制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記第1時刻と前記第3時刻との時間差が第2時間差閾値よりも小さい場合に、前記車両が段差を通過したと判定する、
車両の制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の車両の制御方法であって、
前記第2時間差閾値は、前記車両の車速に基づいて求められる、
車両の制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記前輪の角加速度の変動値が前記基準値以上で最大値となった第1時刻と、前記後輪の角加速度の変動値が前記基準値以上で最大値となった第2時刻との比較結果に基づいて、前記車両が段差を通過したか否かを判定する、
車両の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記第1時刻と前記第2時刻との時間差が所定範囲内である場合に、前記車両が段差を通過したと判定する、
車両の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の車両の制御方法であって、
前記所定範囲は、前記前輪及び前記後輪間の距離と前記車両の車速とに基づいて求められる、
車両の制御方法。
【請求項11】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記前輪の角加速度の変動値が前記基準値以上となった後における前記基準値以上の当該変動値の第1軌跡と、前記後輪の角加速度の変動値が前記基準値以上となった後における前記基準値以上の当該変動値の第2軌跡との比較結果に基づいて、前記車両が段差を通過したか否かを判定する、
車両の制御方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れかに記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、粗い路面が継続する悪路を判定するための悪路閾値を前記基準値として用いて、前記車両が悪路を走行していることを判定する悪路判定を行い、前記悪路閾値よりも大きい段差閾値を前記基準値として用いて、前記車両が段差を通過したことを判定する段差判定を行う、
車両の制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の車両の制御方法であって、
前記判定ステップでは、前記前輪の角加速度の変動値と前記後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが前記悪路閾値以上となった場合において、前記車両が段差を通過したと判定されず、かつ、悪路判定条件を満たすときには、前記車両が悪路を走行していると判定し、
前記制御ステップでは、前記車両が悪路を走行していると判定された場合には、前記音発生デバイスから発生する音が大きくなるように当該音発生デバイスを制御する、
車両の制御方法。
【請求項14】
所定音が発生する音発生デバイスと、前記音発生デバイスを制御するコントローラとを備える車両の制御システムであって、
前記コントローラは、車輪の角加速度の変動値が基準値以上となった場合に前記音発生デバイスから発生する音が大きくなるように当該音発生デバイスを制御し、
前記車両の前輪の角加速度の変動値と前記車両の後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて、前記車両が段差を通過したことを判定し、
前記前輪の角加速度の変動値と前記後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが前記基準値以上となった場合でも、前記車両が段差を通過したと判定されたときには、前記音発生デバイスから発生する音を大きくする制御を実行しない、
車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において生じる音を制御する車両の制御方法及び車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において生じる音を制御する技術が提案されている。例えば、車体と車輪との間のサスペンションデバイスに対して車体側に結合される加速度センサを用いて検出された加速度を用いて、ノイズ低減音を生成することで車両内の騒音を低減する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が走行する路面として、比較的きれいな路面、粗い路面が継続する悪路、段差が存在する路面などが想定される。しかし、加速度センサを用いて検出された加速度を用いた判定では、車両が悪路を走行しているときと、車両が段差を通過したときとを適切に判定することが困難であることも想定される。この場合には、悪路において実行すべき音制御が、きれいな路面における段差を通過した際にも実行されるおそれがある。すなわち、車両が段差を通過した際に不適切な音制御が実行されるおそれがある。
【0005】
本発明は、車両が段差を通過した際に適切な音制御を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、所定音が発生する音発生デバイスを備え、車輪の角加速度の変動値が基準値以上となる場合に音発生デバイスから発生する音が大きくなるように当該音発生デバイスを制御する車両の制御方法である。この制御方法は、車両の前輪の角加速度の変動値と車両の後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて、車両が段差を通過したことを判定する判定ステップと、前輪の角加速度の変動値と後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが基準値以上となった場合において、車両が段差を通過したと判定されたときには、音発生デバイスから発生する音を大きくする制御を実行しない制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が段差を通過した際に適切な音制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における車両の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、車輪の角加速度の変動値に基づくエンジンの制御例を示す図である。
【
図3】
図3は、車両コントロールモジュールによる段差判定処理の判定例を示す図である。
【
図4】
図4は、車両コントロールモジュールによる段差判定処理の判定例を示す図である。
【
図5】
図5は、車両コントロールモジュールによる段差判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、車両コントロールモジュールによる段差判定処理の判定例を示す図である。
【
図7】
図7は、車両コントロールモジュールによる段差判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、車両コントロールモジュールによる段差判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[車両の構成例]
図1は、本実施形態における車両100の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、エンジン1を発電用動力源とし、駆動モータ3を走行用駆動源としてシリーズ走行するシリーズハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を車両100の一例として説明する。また、
図1では、車両100の全体システム構成における駆動系及び制御系を示す。
【0011】
車両100の駆動系は、エンジン1と、発電モータ2と、駆動モータ3と、ギヤボックス4と、フロントドライブシャフト5L、5Rと、前輪6L、6R(駆動輪)とを備えている。発電モータ2と駆動モータ3に接続される構成要素として、インバータ7と、バッテリ8とを備えている。また、車両100は、後輪9L、9R(従動輪)を備える。
【0012】
エンジン1は、車両前部のパワーユニットルーム内に配置され、クランク軸方向を車幅方向とする横置きエンジンである。このエンジン1の本体は、ギヤボックス4のギヤケース側面に連結固定される。
【0013】
発電モータ2、駆動モータ3は、何れも三相交流による永久磁石型同期モータ/ジェネレータであり、車両前部のパワーユニットルーム内に配置され、ギヤボックス4のエンジン固定側面とは反対のギヤケース側面に並べて連結固定される。発電モータ2は、エンジン1による駆動エネルギを発電エネルギに変換する発電機能と、エンジン1のスタータモータ機能とを併せて有する。駆動モータ3は、発電モータ2とバッテリ8の少なくとも一方の電力により前輪6L、6Rを駆動する駆動機能と、前輪6L、6Rの回転エネルギを発電エネルギに変換してバッテリ8へ充電する回生機能と、を有する。
【0014】
ギヤボックス4は、エンジン1と発電モータ2と駆動モータ3が連結固定されるギヤケース内に、ギヤトレーン4aと、減速ギヤトレーン4bと、デファレンシャルギヤユニット4cと、を配置することで構成される。ギヤトレーン4aは、エンジン1と発電モータ2を駆動連結する。減速ギヤトレーン4bは、駆動モータ3とデファレンシャルギヤユニット4cを駆動連結する。デファレンシャルギヤユニット4cは、減速ギヤトレーン4bとフロントドライブシャフト5L、5Rを、フロントドライブシャフト5L、5Rの差動を許容しながら駆動連結する。
【0015】
インバータ7は、車両前部のパワーユニットルーム内に配置され、発電モータ2と駆動モータ3に対してそれぞれ3本のACハーネス10、11を介して接続され、バッテリ8に対して2本のDCハーネス12を介して接続される。インバータ7は、発電モータ2による発電時に三相交流を直流に変換し、発電モータ2によるエンジン始動時にバッテリ8からの直流を三相交流に変換する。また、駆動モータ3による駆動時にバッテリ8からの直流を三相交流に変換し、駆動モータ3による回生時に駆動モータ3で発生した三相交流を直流に変換し、バッテリ8へ充電する。
【0016】
車両100の制御系は、車両コントロールモジュール(VCM)20と、エンジンコントローラ(EC)21と、モータジェネレータコントローラ(MGC)22と、バッテリコントローラ(BC)23と、を備えている。さらに、ナビゲーションコントロールユニット(NAVICU)24と、運転支援コントロールユニット(ADASCU)25と、を備えている。なお、これらの制御デバイス20乃至25は、情報交換が可能なCAN(Controller Area Network)通信線26により接続されている。
【0017】
車両コントロールモジュール20は、車両100全体の消費エネルギを適切に管理する機能を担い、エンジン1と発電モータ2と駆動モータ3の動作制御を行う統合制御手段である。車両コントロールモジュール20には、アクセル開度センサ27、車速センサ28、前後Gセンサ29、横Gセンサ30、前輪の角速度センサ51、後輪の角速度センサ52等の車載センサ情報が入力される。バッテリコントローラ23からバッテリ充電容量(バッテリSOC(States Of Charge))の情報が、CAN通信線26を介して入力される。加えて、ナビゲーションコントロールユニット24や運転支援コントロールユニット25から必要情報が、CAN通信線26を介して入力される。そして、エンジンコントローラ21への制御指令の出力によりエンジン1の運転/停止制御を行い、モータジェネレータコントローラ22への制御指令の出力により発電モータ2や駆動モータ3の動作制御を行う。また、車両コントロールモジュール20は、音発生デバイス110の動作制御を行う。
【0018】
また、車両コントロールモジュール20は、シリーズ走行中において、エンジン停止モードと、エンジン発電モードとの切り替え制御を実行する。ここで、エンジン停止モードとは、エンジン1を停止し、駆動モータ3への電力供給をバッテリ8から行う制御モードである。エンジン発電モードは、エンジン1を始動し、駆動モータ3へ電力供給をバッテリ8と発電モータ2から行う制御モードである。
【0019】
ナビゲーションコントロールユニット24は、走行中に現在の自車位置を自動的に割り出し、記録保存されている地図データと照らし合わせて、入出力装置31の画面上地図に経路を表示し、音声等で道案内を行い、ドライバーを目的地まで導く機能を有する。このナビゲーションコントロールユニット24は、入出力装置31と記憶装置32と通信装置33を備える。なお、入出力装置31としては、操作部、スピーカ、表示部、ディスプレイなどが用いられる。例えば、入出力装置31として、車室内のインストルメントパネル位置に配置されるモニターやフロントウインドウに画像表示するヘッドアップディスプレイが用いられる。
【0020】
ナビゲーションコントロールユニット24は、GPS衛星34からの信号を受信し、この自車両の地球上の絶対位置(経度と緯度と高度で特定される位置)を検出する。そして、記憶装置32に記憶されている地図を参照し、自車両が現在存在している位置である現在地を特定するとともに、この現在地から目的地までの予定走行経路を設定する。
【0021】
記憶装置32は、道路曲率半径、勾配、交差点、信号、踏み切り、横断歩道、制限速度、料金所等の道路環境情報や、道路属性情報(高速道路・幹線道路・一般道・住宅街等)を含む地図情報を記憶している。さらに、記憶装置32には、過去の走行区間における自車のドライブスタイルデータ(アクセル操作、前後G、横G等)も保存する。
【0022】
通信装置33は、無線基地局およびインターネット等の通信ネットワーク(図示省)を介して、交通情報や統計交通データを有するデータセンタ35との無線通信(テレマティクス通信)を行う。この「通信」は双方向であり、ナビゲーションコントロールユニット24からデータセンタ35へ情報を送信可能であり、逆に、データセンタ35から情報を受信して、走行予定道路の状態(渋滞情報等)を入力することが可能である。
【0023】
運転支援コントロールユニット25は、駆動/制動/操舵の制御機能を発揮し、自動ブレーキ制御や自動車庫入れ制御や単一車線自動運転制御、等によりドライバーによる運転負担を軽減する運転支援の制御デバイスである。
【0024】
運転支援コントロールユニット25には、自動運転スイッチ36、車載カメラ37、ライダ/レーダ38等からの情報が入力される。そして、駆動制御機能は、CAN通信線26を介して駆動モータ3による駆動力を制御することで発揮される。制動制御機能のうち、回生制動機能は、CAN通信線26を介して駆動モータ3による回生力を制御することで発揮される。また、ブレーキ制動機能は、ブレーキアクチュエータ39へのブレーキ制動指令の出力により発揮される。操舵制御機能は、ステアリング系に設けられた操舵アクチュエータ40への操舵制御指令の出力により発揮される。
【0025】
自動運転スイッチ36は、ドライバーがスイッチ投入すると、走行モードがマニュアル運転モードから単一車線自動運転モードに切り替わる。
【0026】
車載カメラ37は、自車に搭載され、自車周囲の画像情報を入手する。例えば、アラウンドビューモニタシステムは、前方認識カメラ・後方認識カメラ・右側方認識カメラ・左側方認識カメラを組み合わせて構成される。この車載カメラ37では、自車走行路上物体・自車走行路外物体(道路構造物、前車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)・自車走行路(道路白線、道路境界、停止線、横断歩道)・道路標識(制限速度)などが検知される。
【0027】
ライダ/レーダ38は、自車に搭載された測距センサであり、出力波の反射波を受けることにより自車周囲の物体の存在を検知すると共に、自車周囲の物体までの距離を検知する。例えば、レーザレーダ、ミリ波レーダ、超音波レーダ、レーザレンジファインダ等を用いることができる。このライダ/レーダ38では、自車走行路上物体・自車走行路外物体(道路構造物、前車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)などの位置と物体までの距離を検知する。
【0028】
また、車両100には、車輪の近傍において、車輪の角速度(回転速度)を測定する前輪の角速度センサ51、後輪の角速度センサ52がサスペンションよりも下方の車輪の側に設けられる。具体的には、前輪6L、6Rのうちの少なくとも一方の近傍に前輪の角速度センサ51が設けられる。また、後輪9L、9Rのうちの少なくとも一方の近傍に後輪の角速度センサ52が設けられる。すなわち、本実施形態では、車両100の前輪及び後輪の双方に角速度センサが設けられる。なお、車輪の角速度は、車輪の回転速度、車輪速と称することもある。
【0029】
また、車両100には、所定音を発生させる音発生デバイス110が設けられている。音発生デバイス110は、例えば、停車時や走行時において音を発生する機器である。音発生デバイス110には、エアコン111と、ファン112と、オーディオ113と、走行音生成器114とが含まれる。なお、これらの各デバイスは、所定音を発生させる音発生デバイスの一例であり、他のデバイス(例えばポンプ)についても本実施形態における音制御を実行可能である。
【0030】
エアコン111は、車室の温度を制御する機器であり、駆動音が発生する。また、ファン112は、強電系を冷却する機器であり、その冷却の際に回転音が発生する。これらの機器は、自機の駆動に伴って騒音が発生する。また、オーディオ113は、運転者が選択した音楽などを鳴動する機器であり、音楽などの音声がスピーカから出力される。また、走行音生成器114は、車両100の周囲にいる人に対して走行していることを通知するために、あえてエンジン1の駆動音を模擬した音を鳴動する機器である。なお、エンジン1も回転駆動に応じて騒音が発生する音発生デバイスの一例である。また、走行経路の案内を運転者に対して通知するナビゲーションコントロールユニット24の入出力装置31も、所定音が発生する音発生デバイスの一例である。
【0031】
また、車両コントロールモジュール20は、運転者による操作や所定の条件に基づいて音発生デバイス110を制御する。さらに、車両コントロールモジュール20は、前輪の角速度センサ51から入力される前輪6R、6Lの角速度(回転速度)と、後輪の角速度センサ52から入力される後輪9R、9Lの角速度(回転速度)とに基づいて、発生される音量を変化させるように音発生デバイス110を制御する。
【0032】
[車輪の角加速度の変動値に基づくエンジンの制御例]
図2は、車輪の角加速度の変動値に基づくエンジン1の制御例を示す図である。なお、
図2に示す各グラフの横軸は時間軸である。なお、
図2では、説明を容易にするため、前輪及び後輪の少なくとも1つを車輪とした場合の例について、簡略化したグラフを示す。また、
図2では、車輪の角加速度が閾値TH1以上となった場合に、エンジン1を駆動させ、バッテリ8の充電を開始する場合を比較例として示す。
【0033】
図2の上段には、車両100の車輪の角速度の遷移例を線L1で簡略化して示す。なお、矢印Aは、車両100が段差を通過した時刻t1を示す。
【0034】
図2の中段の上側には、車両100の車輪の角加速度の遷移例を線L2で簡略化して示す。なお、車輪の角加速度は、角速度を微分して求めることができる。なお、
図2では、時刻t1において、車両100が段差を通過する際には、車輪の角加速度が閾値TH1以上となる例を示す。
【0035】
図2の中段の下側には、車両100のエンジン1の回転数の遷移例を点線L3で簡略化して示す。なお、このグラフでは、車両100が段差を通過する際に、車輪の角加速度が閾値TH1以上となったことを条件に、エンジン停止モードからエンジン発電モードに切り替える場合を比較例として点線L3で示す。なお、Ne1は、最良燃費線を示す。
【0036】
図2の下段には、車両100のエンジン1から生じるエンジン音の遷移例を点線L4で簡略化して示す。なお、このグラフでは、点線L3で示すように、エンジン1を駆動させ、バッテリ8の充電を開始した場合に生じるエンジン音を比較例として点線L4で示す。
【0037】
ここで、本実施形態では、粗い路面が所定距離以上継続している路面を悪路と称して説明する。例えば、車両100が悪路を走行している場合には、車両100の車輪と路面との接触音に起因する音(いわゆる、走行時に発生する騒音)が大きくなることが多い。このように、走行に起因する騒音が大きい場合には、運転者は、車両100において発生する音に気づき難いことが多い。このため、車両100が悪路を走行している場合には、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が運転者に対して不快感を与える可能性は低いと考えられる。そこで、車両コントロールモジュール20は、車両100が悪路を走行している場合には、必要に応じて、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が大きくなるように制御する。例えば、車両コントロールモジュール20は、エンジン停止モードで走行している場合には、エンジン発電モードに切り替える制御を実行する。また、車両コントロールモジュール20は、エアコン111及びファン112の回転速度を大きくする制御を実行する。また、車両コントロールモジュール20は、入出力装置31、オーディオ113、走行音生成器114から出力される音の音量を上げる制御を実行する。
【0038】
一方、車両100が悪路以外の比較的きれいな路面(通常の路面)を走行している場合には、車両100の車輪と路面との接触音が小さくなるため、その接触音に起因する音が小さくなることが多い。このように、走行に起因する騒音が小さい場合には、運転者は、車両100において発生する音に気づき易いことが多い。このため、車両100が通常の路面を走行している場合には、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が運転者に対して不快感を与える可能性が高いと考えられる。そこで、車両コントロールモジュール20は、車両100が通常の路面を走行している場合には、必要に応じて、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が小さくなるように制御する。例えば、車両コントロールモジュール20は、エンジン発電モードで走行している場合には、エンジン停止モードに切り替える制御を実行する。また、車両コントロールモジュール20は、エアコン111及びファン112の回転速度を小さくする制御を実行する。また、車両コントロールモジュール20は、入出力装置31、オーディオ113、走行音生成器114から出力される音の音量を下げる制御を実行する。
【0039】
ここで、車両100が通常の路面を走行している場合において、車両100が段差を通過することも想定される。段差としては、例えば、高速道路の繋ぎ目、コンビニエンスストアの駐車場に入るときの路肩の段差、マンホールを踏んだときの段差などが想定される。ただし、このような段差は、車両100の走行中における一時的な変化である。このため、車両100が段差を通過した際にも、車両100が悪路を走行している場合と同様の音制御を実行すると、不適切な音制御となることも想定される。
【0040】
例えば、車両100が通常の路面を走行している場合において、車両100が段差を通過したタイミングで、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が大きくなるように制御することを想定する。この場合には、段差以外の路面では、走行に起因する騒音が小さいため、運転者は、車両100において発生する音に気づき易いことが多い。このため、車両100が段差を通過したタイミングで、各器機から発生する音が大きくなると、運転者に対して不快感を与えるおそれがある。例えば、
図2に示すように、車両100が段差を通過したt1のタイミングで、点線L3、L4で示すように、エンジン発電モードに切り替えてエンジン1を駆動させると、車両100が段差を通過する毎にエンジン音が発生してしまう。例えば、エンジン停止モードが設定される条件で走行している場合には、車両100が段差を通過する毎に、エンジン停止モードからエンジン発電モードに切り替えられてエンジン1が始動してしまう。このため、運転者が煩わしいと感じることも考えられる。また、例えば、車両100が段差を通過したタイミングで、オーディオ113の音量を上げてしまうと、車両100が段差を通過する毎に音量が大きくなってしまうため、運転者が気持ち悪いと感じることも考えられる。
【0041】
そこで、本実施形態では、車両100が悪路を走行している場合には、車両100において発生する音が大きくなるように制御するが、車両100が段差を通過した際には、そのような制御を実行しないようにする。
【0042】
[前後輪の角加速度の変動値の時間差に基づく段差判定例]
図3は、車両コントロールモジュール20による段差判定処理の判定例を示す図である。なお、
図3に示す各グラフの横軸は時間軸である。また、
図3では、車両100が前進している場合を例にして説明する。
【0043】
図3の上段には、車両コントロールモジュール20による演算処理により求められた車輪の角加速度の変動値の遷移例を簡略化して示す。なお、線L11は、車両100の前輪の角加速度の変動値の遷移例を示し、点線L12は、車両100の後輪の角加速度の変動値の遷移例を示す。
【0044】
ここで、車輪の角加速度の変動値は、車輪の角加速度の変動量やばらつきを意味する値や成分である。例えば、今回の車輪の角加速度と前回の車輪の角加速度との差分値を求め、この差分値の絶対値を車輪の角加速度の変動値として用いることができる。また、例えば、今回から所定数前までの複数の車輪の角加速度の平均値を求め、この平均値の絶対値を車輪の角加速度の変動値として用いることができる。また、例えば、車輪の角加速度をサンプリングし、その結果に基づいて車輪の角加速度の変動値を求めることができる。例えば、車輪の角加速度の分散、標準偏差、二乗平均平方根、所定期間における最大値と最小値との差(振幅)、所定期間において角加速度が所定の範囲内に入ったカウント数などを、角加速度の変動値として用いることができる。
【0045】
図3の上段に示すグラフにおいて、段差閾値TH11は、車両100が段差を通過したことを判定するための閾値である。また、悪路閾値TH12は、車両100が悪路を走行していることを判定するための閾値である。
【0046】
図3に示す例では、前輪の角加速度の変動値(線L11で示す)が、t10のタイミングで悪路閾値TH12以上となり、さらに、t11のタイミングで段差閾値TH11以上となる例を示す。ただし、
図3に示す例では、前輪の角加速度の変動値(線L11で示す)が、t12のタイミングで段差閾値TH11以下となり、さらに、t12からt13の間のタイミングで悪路閾値TH12以下となるものとする。
【0047】
また、
図3に示す例では、後輪の角加速度の変動値(点線L12で示す)が、t12からt13の間のタイミングで悪路閾値TH12以上となり、さらに、t13のタイミングで段差閾値TH11以上となる例を示す。ただし、
図3に示す例では、後輪の角加速度の変動値(点線L12で示す)が、t14のタイミングで段差閾値TH11以下となり、さらに、t14以降のタイミングで悪路閾値TH12以下となるものとする。
【0048】
図3の下段には、
図3の上段に示す車輪速の角加速度の変動値に基づく悪路及び段差の判定例を示す。これらの判定例については、
図3の上段に示す変動値の遷移を参照して説明する。
【0049】
車両コントロールモジュール20は、
図3の上段に示すように、前輪の角加速度の変動値(線L11で示す)が、悪路閾値TH12以上となった場合(t10のタイミング)には、
図3の下段に示すように、車両100が悪路を走行しているか否かを判定する悪路判定処理を開始する。この場合には、車両コントロールモジュール20は、音制御要求フラグを立てる。この音制御要求フラグは、車両100が悪路を走行していると想定される場合に音制御を実行するか否かを判定する際に用いられるフラグである。
【0050】
また、車両コントロールモジュール20は、
図3の上段に示すように、前輪の角加速度の変動値(線L11で示す)が、段差閾値TH11以上となった場合(t11のタイミング)には、
図3の下段に示すように、車両100が段差を通過したか否かを判定する段差判定処理を開始する。この場合には、車両コントロールモジュール20は、その時間情報t11をメモリ(図示略)に記録する。なお、このメモリは、車両コントロールモジュール20に内蔵されたメモリでもよく、車両コントロールモジュール20の外部に設けられたメモリでもよい。
【0051】
また、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度の変動値(線L11で示す)が、段差閾値TH11以下となった場合(t12のタイミング)には、その時間情報t12をメモリに記録する。同様に、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度の変動値(点線L12で示す)が、段差閾値TH11以上となった場合(t13のタイミング)に、その時間情報t13をメモリに記録する。
【0052】
次に、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された時間情報t11乃至t13に基づいて段差判定を行う。具体的には、車両コントロールモジュール20は、時間情報t11乃至t13が次の式1、式2の関係を満たすか否かを判定する。なお、WB1は、車両100の前輪軸と後輪軸との距離、すなわちホイルベースを示す値である。また、V1は、車両100の車速を示す値である。また、α、βは、車両100の性能やユーザの好みによって設定される値である。また、βは、車速に応じて可変となる値でもあるため、β(V1)と称することもできる。すなわち、βは、車速が早くなるのに応じて小さい値が設定され、車速が遅くなるのに応じて大きい値が設定される。
t13-t11<(WB1/V1)+α …式1
t11-t12<β …式2
【0053】
このように、本実施形態では、前輪及び後輪の角加速度の大きな入力の立ち上がり、立ち下がりを用いて段差を判定する。すなわち、前輪が何かを踏んで、その後に、一定時間(前輪後輪の長さに相当)経過後に後輪も何かを踏んだと推定できる場合に、その何かは段差であると推定する。
【0054】
車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された時間情報t11乃至t13が、上述した式1、式2の双方を満たす場合には、車両100が段差を通過したと判定する。すなわち、車両コントロールモジュール20は、時間情報t11乃至t13に対応する角加速度の変動値(線L11、点線L12で示す)が段差に基づくものであると判定する。このように、車両100が段差を通過したと判定された場合には、車両コントロールモジュール20は、音制御要求をキャンセルする。すなわち、悪路判定に基づいて音制御要求フラグが立っている場合でも、音発生デバイス110等の音に関する制御が実行されない。このように、音発生デバイス110等の音に関する制御は、悪路判定に基づいて音制御要求フラグが立つとともに、段差判定に基づいて音制御要求がキャンセルされない場合に実行される。
【0055】
一方、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された時間情報t11乃至t13が、上述した式1、式2のうちの少なくとも1つを満たさない場合には、車両100が段差を通過していないと判定する。すなわち、車両コントロールモジュール20は、時間情報t11乃至t13に対応する角加速度の変動値(線L11、点線L12で示す)が段差に基づくものではないと判定する。このように、段差ではないと判定された場合には、車両コントロールモジュール20は、悪路判定に基づく音制御要求をキャンセルしない。このように、悪路判定に基づく音制御要求フラグが立っている状態で、段差ではないと判定された場合には、車両コントロールモジュール20は、音発生デバイス110等の音に関する制御を実行する。なお、音発生デバイス110等の音に関する制御は、所定条件を満たす場合に解除することができる。その所定条件は、例えば、悪路と判定されなくなったこと、すなわち、車両100が通常の路面を走行していると判定されたこととすることができる。
【0056】
なお、以上では、メモリに記録された時間情報t11乃至t13が、上述した式1、式2の双方を満たすことを条件に車両100が段差を通過したと判定する例を示した。ただし、上述した式1、式2のうちのいずれか一方を満たすことを条件に、車両100が段差を通過したと判定するようにしてもよい。この場合には、車両コントロールモジュール20の処理負荷を軽減することができ、段差判定処理を迅速に行うことができる。ただし、極端に粗い路面が継続するような場合には、その路面を走行している間、車輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11を上回り続けることも想定される。このような粗い路面と段差とを適切に判定するため、上述した式1とともに式2も用いることが好ましい。
【0057】
なお、式1については、時間情報t11、t13の代わりに、前輪の角加速度の変動値が、段差閾値TH11以下となった時刻t12と、後輪の角加速度の変動値が、段差閾値TH11以下となった時刻t14とを用いて以下の式3について判定するようにしてもよい。
t14-t12<(WB1/V1)+α …式3
【0058】
また、式2については、前輪に関する時間情報t11、t12の代わりに、後輪に関する時間情報t13、t14を用いて以下の式4について判定するようにしてもよい。
t13-t14<β …式4
【0059】
[前後輪の角加速度の変動値の時間差に基づく段差判定例(車速が早い場合の例)]
図3では、車両100の車速が比較的遅い場合を例にして説明した。
図4では、車両100の車速が比較的早い場合を例にして説明する。ただし、車両100の車速が変化した点以外は、
図3に示す例と同様であるため、
図3と共通する部分についての説明を省略する。
【0060】
図4は、車両コントロールモジュール20による段差判定処理の判定例を示す図である。なお、
図4では、前輪の角加速度の変動値(線L21で示す)が、段差閾値TH11以上となったタイミングをt21とする。また、前輪の角加速度の変動値(線L21で示す)が、段差閾値TH11以下となったタイミングをt23とする。また、後輪の角加速度の変動値(点線L22で示す)が、段差閾値TH11以上となったタイミングをt22とする。そして、それらの時間情報t21乃至t23がメモリに記録される。
【0061】
また、
図4に示す例では、
図3に示す例と比較して車両100の車速が変化しているため、上述した式1のV1と、式2のβの値が変化する。すなわち、式1のV1は、車両100の車速の値となる。また、
図4に示す例は、
図3に示す例と比較して車両100の車速が早い場合の例であるため、式2のβとして、
図3に示す例の値よりも小さい値が設定される。なお、悪路判定処理及び段差判定処理については、
図3に示す例と同様である。
【0062】
[段差判定処理例]
図5は、車両コントロールモジュール20による段差判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、記憶部(図示省略)に記憶されているプログラムに基づいて実行される。
【0063】
ステップS301において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角速度センサ51により検出された前輪の角速度ω1と、後輪の角速度センサ52により検出された後輪の角速度ω2とを取得する。
【0064】
ステップS302において、車両コントロールモジュール20は、角速度ω1、ω2に基づいて角加速度a1、a2を求め、その角加速度a1、a2の変動値を演算する。
【0065】
ステップS303において、車両コントロールモジュール20は、角加速度a1の変動値が悪路閾値TH12以上であるか否かを判定する。角加速度a1の変動値が悪路閾値TH12未満である場合には、ステップS306に進む。一方、角加速度a1の変動値が悪路閾値TH12以上である場合には、ステップS304に進む。
【0066】
ステップS304において、車両コントロールモジュール20は、車速センサ28により検出された車速に基づいて、車両100の車速が閾値THV1以上であるか否かを判定する。なお、閾値THV1は、車両100が悪路を走行している場合でも、車両100の車輪と路面との接触音が小さく、その接触音に起因する音も小さくなる速度を判定するための基準値である。言い換えると、閾値THV1は、車両100の車輪と路面との接触音が小さくなる程度に、車両100がゆっくりと走っているか否かを判定するための基準値である。すなわち、車両100の車速が閾値THV1未満である場合には、車両100が悪路を走行している場合でも、車両100の車輪と路面との接触音が小さく、その接触音に起因する音も小さくなる。このため、車両100の車速が閾値THV1未満である場合には、車両100が段差を通過した場合でも、車両100が悪路を走行している場合でも、騒音に関する影響は少ないと想定される。そこで、車両100の車速が閾値THV1未満である場合には、段差判定及び悪路判定を行わないようにする。車両100の車速が閾値THV1以上である場合には、ステップS305に進む。一方、車両100の車速が閾値THV1未満である場合には、ステップS306に進む。
【0067】
ステップS305において、車両コントロールモジュール20は、音制御要求フラグを立てる。なお、音制御要求フラグがすでに立てっている場合には、その状態を継続する。
【0068】
ステップS306において、車両コントロールモジュール20は、音制御要求フラグを下げる。なお、音制御要求フラグがすでに下がっている場合には、その状態を継続する
【0069】
ステップS307において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上であるか否かを判定する。前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上である場合には、ステップS308に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11未満である場合には、ステップS310に進む。
【0070】
ステップS308において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングであるか否かを判定する。前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングである場合には、ステップS309に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11となった最初のタイミングでない場合には、ステップS314に進む。
【0071】
ステップS309において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11となった時刻を時間情報t11としてメモリに記録する。このように、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングが記録される。
【0072】
ステップS310において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上で最大値(ピーク)となった後に段差閾値TH11以下となったか否かを判定する。前輪の角加速度a1の変動値が最大値となった後に段差閾値TH11以下となった場合には、ステップS311に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値が最大値となった後に段差閾値TH11以下となっていない場合には、ステップS314に進む。
【0073】
ステップS311において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t11に基づいて、現在時刻が「t11+β」を経過したか否かを判定する。なお、βは、上述した式2に示すβであり、車速に応じて設定される。現在時刻が「t11+β」を経過している場合には、ステップS313に進む。一方、現在時刻が「t11+β」を経過していない場合には、ステップS312に進む。
【0074】
ステップS312において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が最大値となった後に段差閾値TH11以下となった時刻を時間情報t12としてメモリに記録する。このように、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミング(時刻t11)とともに、その後に段差閾値TH11以下となったタイミング(時刻t12)が記録される。
【0075】
ステップS313において、車両コントロールモジュール20は、メモリから時間情報t11を消去する。すなわち、現在時刻が「t11+β」を経過している場合には、上述した式2を満たさないため、車両100が段差を通過したと判定されることはない。このため、時間情報t11を消去して、次の段差判定には、新たに記録された時間情報を用いる。
【0076】
ステップS314において、車両コントロールモジュール20は、メモリに時間情報t11が記録されているか否かを判定する。メモリに時間情報t11が記録されている場合には、ステップS315に進む。一方、メモリに時間情報t11が記録されていない場合には、ステップS324に進む。
【0077】
ステップS315において、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングであるか否かを判定する。後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングである場合には、ステップS316に進む。一方、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングでない場合には、ステップS317に進む。
【0078】
ステップS316において、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上となった時刻を時間情報t13としてメモリに記録する。このように、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上となった最初のタイミングが記録される。
【0079】
ステップS317において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t11に基づいて、現在時刻が「t11+(WB1/V1)+α」を経過したか否かを判定する。なお、WB1、αは、上述した式1に示すWB1、αである。また、V1は、車両100の車速である。現在時刻が「t11+(WB1/V1)+α」を経過している場合には、ステップS318に進む。一方、現在時刻が「t11+(WB1/V1)+α」を経過していない場合には、ステップS319に進む。
【0080】
ステップS318において、車両コントロールモジュール20は、メモリから時間情報t11、t12を消去する。すなわち、現在時刻が「t11+(WB1/V1)+α」を経過している場合には、上述した式1を満たさないため、車両100が段差を通過したと判定されることはない。このため、時間情報t11、t12を消去して、次の段差判定には、新たに記録された時間情報を用いる。なお、メモリに時間情報t12が記録されていない場合には、メモリから時間情報t11のみが消去される。
【0081】
ステップS319において、車両コントロールモジュール20は、メモリに時間情報t11乃至t13が記録されているか否かを判定する。メモリに時間情報t11乃至t13の全てが記録されている場合には、ステップS320に進む。一方、メモリに時間情報t11乃至t13のうちの何れかが記録されていない場合には、ステップS324に進む。
【0082】
ステップS320において、車両コントロールモジュール20は、上述した式1、式2を用いて段差判定を行う。具体的には、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t11乃至t13が、上述した式1、式2の双方を満たすか否かを判定する。そして、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t11乃至t13が、上述した式1、式2の双方を満たす場合には、車両100が段差を通過したと判定する。また、一方、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t11乃至t13が、式1、式2のうちの少なくとも1つを満たさない場合には、車両100が段差を通過していないと判定する。
【0083】
ステップS321において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t11乃至t13を消去する。すなわち、メモリに記録されている時間情報t11乃至t13を用いた段差判定を実行したため、これらの時間情報を消去する。そして、次の段差判定には、新たに記録された時間情報を用いる。
【0084】
ステップS322において、車両コントロールモジュール20は、ステップS320で車両100が段差を通過したと判定されたか否かを判定する。車両100が段差を通過したと判定された場合には、車両コントロールモジュール20は音制御要求をキャンセルする。そして、ステップS323に進む。一方、車両100が段差を通過したと判定されていない場合には、車両コントロールモジュール20は音制御要求をキャンセルしない。そして、ステップS324に進む。
【0085】
ステップS323において、車両コントロールモジュール20は、車両100が段差を通過したと判定された際における制御を実行する。具体的には、車両コントロールモジュール20は、車両100が悪路を走行していると判定された場合の制御を実行しない。例えば、車両コントロールモジュール20は、停止中のエンジン1を駆動させる制御を実行しない。また、車両コントロールモジュール20は、エアコン111及びファン112の回転速度を大きくする制御を実行しない。また、車両コントロールモジュール20は、入出力装置31、オーディオ113、走行音生成器114から出力される音の音量を大きくする制御を実行しない。すなわち、車両コントロールモジュール20は、車両100が悪路を走行している場合には、車両100において発生する音が大きくなるように制御するが、車両100が段差を通過した際には、そのような制御を実行しないようにする。すなわち、ステップS305で音制御要求フラグが立った場合でも、ステップS322で音制御要求がキャンセルされた場合には、音制御要求フラグに基づく音制御が実行されない。
【0086】
ステップS324において、車両コントロールモジュール20は、前輪、後輪の角加速度a1、a2の変動値が悪路判定条件を満たすか否かを判定する。この悪路判定条件は、車輪の角加速度の変動値が基準よりも大きい時間帯が継続した場合に、粗い路面が継続していると判定するための条件である。例えば、前輪、後輪の角加速度a1、a2の変動値のうちの少なくとも1つが所定時間以上継続して悪路閾値TH12以上となり、かつ、その期間内に車両100が段差を通過したと判定されていないことを、悪路判定条件とすることができる。すなわち、音制御要求フラグが立っている状態で、段差判定に基づいて音制御要求がキャンセルされないことを、悪路判定条件とすることができる。なお、この悪路判定条件は、一例であり、他の条件を採用するようにしてもよい。前輪、後輪の角加速度a1、a2の変動値が悪路判定条件を満たす場合には、ステップS325に進む。一方、前輪、後輪の角加速度a1、a2の変動値が悪路判定条件を満たさない場合には、ステップS327に進み、通常の音制御が実行される。
【0087】
ステップS325において、車両コントロールモジュール20は、車両100が悪路を走行していると判定された際における制御を実行する。具体的には、車両コントロールモジュール20は、必要に応じて、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が大きくなるように制御する。例えば、車両コントロールモジュール20は、エンジン1を駆動させ、バッテリ8への充電を開始する。なお、エンジン1が駆動中である場合には、その状態を継続する。なお、前輪、後輪の角加速度a1、a2の変動値に応じて、エンジン回転数を高めるようにしてもよい。また、車両コントロールモジュール20は、エアコン111及びファン112の回転速度を大きくしたりする。また、車両コントロールモジュール20は、入出力装置31、オーディオ113、走行音生成器114から出力される音の音量を上げる制御を実行する。
【0088】
例えば、エアコン111の設定温度及び風量がオート設定である場合には、車両コントロールモジュール20は、エアコン111の駆動レベルを上げることにより、室内温度をより早く設定温度にすることができる。これにより、エアコン111の駆動レベルが大きく、発生される音が大きい場合であっても、運転者はその音に気がつきにくいので、快適性を損なうことなく室温を設定温度とすることができる。このようにして、エアコン動作時の騒音を気づきにくくした状態で、夏には居室内の冷却時間を短くすることができ、冬には居室内の暖房時間を短くすることができる。
【0089】
また、車両コントロールモジュール20は、ファン112が強電系の冷却に用いられる場合には、ファン112の回転速度を速くする。これにより、例えば、夏においては、バッテリ8の冷却時間が短くなり、出力が制限されにくくなるとともに、強電系の劣化を防ぐことができる。冬においては、バッテリ8の暖機時間が短くなり、出力が制限されにくくなり、また、内部抵抗が低くなるので運転効率を向上させることができる。
【0090】
また、車両コントロールモジュール20は、アイドリング時のエンジン1の回転速度を変化させてもよい。例えば、車両コントロールモジュール20は、車両100が悪路を走行していると判定された場合には、走行に起因して発生する騒音が小さいと判断して、走行時にアイドリング状態となるセーリングアイドリング時のエンジン1の回転速度を低くする。一方、車両コントロールモジュール20は、車両100が悪路を走行していないと判定された場合には、走行に起因する騒音が大きいと判断して、セーリングアイドリング時のエンジン1の回転速度を高くする。このようにすることで、走行に起因する騒音が大きい場合には、セーリングアイドリング時において、エンジン音によって快適性が損なわれることなく、燃料の消費量を抑制できる。
【0091】
一般に、アイドリング時のエンジン1の回転速度が低いほど、燃料の消費量は少なくなるが、車体と共振して発生する騒音が大きくなる。そこで、車両100において走行に起因して発生する騒音が大きい場合に、アイドリング時のエンジン1の回転速度を低くしても、アイドリングに起因する騒音は運転者にとってわかりにくくなるので、快適性を損なわずに燃費の向上を図ることができる。
【0092】
ステップS326において、車両コントロールモジュール20は、車両100の動作オフ操作がユーザにより行われたか否かを判定する。例えば、車両100の操作キー、例えばイグニッションキーによる動作オフ操作が行われたか否かが判定される。車両100の動作オフ操作がユーザにより行われた場合には、段差判定処理の動作を終了する。一方、車両100の動作オフ操作がユーザにより行われていない場合には、ステップS301に戻る。
【0093】
[角加速度の変動値の最大値に基づく段差判定例]
図3、
図4では、車輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となったタイミングと、段差閾値TH11以下となったタイミングとを用いて、段差判定を行う例を示した。
図6では、車輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となったタイミングを用いて、段差判定を行う例を示す。すなわち、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となってから所定時間内に、後輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった場合に、段差と判定する例を示す。
【0094】
図6は、車両コントロールモジュール20による段差判定処理の判定例を示す図である。なお、
図6に示す例は、
図3、
図4の変形例であり、段差判定に用いる時間情報が異なる。なお、これ以外は、
図3、
図4と共通するため、
図3、
図4と共通する部分の説明を省略する。
【0095】
図6の上段に示すグラフにおいて、線L31は、車両100の前輪の角加速度の変動値の遷移例を示し、点線L32は、車両100の後輪の角加速度の変動値の遷移例を示す。
【0096】
また、
図6に示す例では、前輪の角加速度の変動値(線L31で示す)が、段差閾値TH11以上となった後にt31のタイミングで最大値(ピーク)となる例を示す。また、後輪の角加速度の変動値(線L32で示す)が、段差閾値TH11以上となった後にt32のタイミングで最大値となる例を示す。
【0097】
車両コントロールモジュール20は、
図6の上段に示すように、前輪の角加速度の変動値(線L31で示す)が、段差閾値TH11以上で最大値となった時刻t31を、時間情報t31としてメモリに記録する。また、車両コントロールモジュール20は、
図6の上段に示すように、後輪の角加速度の変動値(点線L32で示す)が、段差閾値TH11以上で最大値となった時刻t32を、時間情報t32としてメモリに記録する。
【0098】
次に、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された時間情報t31、t32に基づいて、段差判定を行う。具体的には、車両コントロールモジュール20は、時間情報t31、t32が次の式5の関係を満たすか否かを判定する。なお、α1、α2は、車両100の性能やユーザの好みによって設定される値である。また、α1<α2とする。
(WB1/V1)+α1≦t32-t31≦(WB1/V1)+α2 …式5
【0099】
車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された時間情報t31、t32が、上述した式5を満たす場合には、車両100が段差を通過したと判定する。すなわち、車両コントロールモジュール20は、時間情報t31、t32に対応する角加速度の変動値(線L31、点線L32で示す)が段差に基づくものであると判定する。このように、車両100が段差を通過したと判定された場合には、車両コントロールモジュール20は、音制御要求をキャンセルする。
【0100】
一方、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された時間情報t31、t32が、上述した式5を満たさない場合には、車両100が段差を通過していないと判定する。すなわち、車両コントロールモジュール20は、時間情報t31、t32に対応する角速度の変動値(線L31、点線L32で示す)が段差に基づくものではないと判定する。このように、段差ではないと判定された場合には、車両コントロールモジュール20は、音制御要求をキャンセルしない。
【0101】
[段差判定処理例]
図7は、車両コントロールモジュール20による段差判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、記憶部(図示省略)に記憶されているプログラムに基づいて実行される。なお、
図7に示す処理手順は、
図5に示す処理手順の一部を変形した例であり、
図5に示す処理手順と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0102】
具体的には、
図7に示すステップS401乃至S406は、
図5に示すステップS301乃至S306に対応する。また、
図7に示すステップS416乃至S421は、
図5に示すステップS322乃至S327に対応する。
【0103】
ステップS407において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上であり、かつ、最大値となったか否かを判定する。前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上であり、かつ、最大値となった場合には、ステップS408に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11未満である場合、または、段差閾値TH11以上であるが最大値ではない場合には、ステップS409に進む。
【0104】
ステップS408において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上であり、かつ、最大値となった時刻を時間情報t31としてメモリに記録する。
【0105】
ステップS409において、車両コントロールモジュール20は、メモリに時間情報t31が記録されているか否かを判定する。メモリに時間情報t31が記録されている場合には、ステップS410に進む。一方、メモリに時間情報t31が記録されていない場合には、ステップS418に進む。
【0106】
ステップS410において、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上であり、かつ、最大値となったか否かを判定する。後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上であり、かつ、最大値となった場合には、ステップS411に進む。一方、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11未満である場合、または、段差閾値TH11以上であるが最大値ではない場合には、ステップS412に進む。
【0107】
ステップS411において、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上であり、かつ、最大値となった時刻を時間情報t32としてメモリに記録する。
【0108】
ステップS412において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t31に基づいて、現在時刻が「t31+(WB1/V1)+α2」を経過したか否かを判定する。なお、WB1、α2は、上述した式5に示すWB1、α2である。また、V1は、車両100の車速である。現在時刻が「t31+(WB1/V1)+α2」を経過している場合には、ステップS413に進む。一方、現在時刻が「t31+(WB1/V1)+α2」を経過していない場合には、ステップS418に進む。
【0109】
ステップS413において、車両コントロールモジュール20は、メモリから時間情報t31を消去する。すなわち、現在時刻が「t31+(WB1/V1)+α2」を経過している場合には、上述した式5を満たさないため、車両100が段差を通過したと判定されることはない。このため、時間情報t31を消去して、次の段差判定には、新たに記録された時間情報を用いる。
【0110】
ステップS414において、車両コントロールモジュール20は、上述した式5を用いて段差判定を行う。具体的には、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t31、t32が、上述した式5を満たすか否かを判定する。そして、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t31、t32が、上述した式5を満たす場合には、車両100が段差を通過したと判定する。また、一方、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t31、t32が、式5を満たさない場合には、車両100が段差を通過していないと判定する。
【0111】
ステップS415において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている時間情報t31、t32を消去する。すなわち、メモリに記録されている時間情報t31、t32を用いた段差判定を実行したため、これらの時間情報を消去する。そして、次の段差判定には、新たに記録された時間情報を用いる。
【0112】
[凸の形状に基づく段差判定例]
図3乃至
図7では、車輪速の角加速度の変動値が段差閾値以上となったタイミングや最大値となったタイミングを用いて、段差判定を行う例を示した。ただし、他の判定基準を用いて段差判定を行うようにしてもよい。ここでは、前後輪の角加速度の変動値の軌跡により形成される形状の類似度を用いて段差判定を行う例を示す。
【0113】
具体的には、前輪の角加速度の変動値の軌跡により形成される凸形状と、後輪の角加速度の変動値の軌跡により形成される凸形状との類似の程度が基準よりも高い場合には、段差と判定する例を示す。なお、凸形状は、山型形状や山形状とも称することができる。
【0114】
図3乃至
図7に示すように、車両100が段差を通過した場合には、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となり、その後、段差閾値TH11以下となる。この場合における角加速度の変動値の軌跡により凸形状が形成される。また、後輪の角加速度の変動値の軌跡についても同様に、凸形状が形成される。そこで、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となった場合に、その変動値の軌跡により形成される凸形状と、それから所定時間内に、後輪の角加速度の変動値の軌跡により形成される凸形状とを比較する。そして、その比較結果に基づいて段差判定を行う。すなわち、その比較の結果、前輪の角加速度の変動値の軌跡により形成される凸形状と、後輪の角加速度の変動値の軌跡により形成される凸形状とが略同一または類似しているような場合には、車両100が段差を通過したと判定する。
【0115】
図8は、車両コントロールモジュール20による段差判定処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、記憶部(図示省略)に記憶されているプログラムに基づいて実行される。なお、
図8に示す処理手順は、
図7に示す処理手順の一部を変形した例であり、
図7に示す処理手順と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0116】
具体的には、
図8に示すステップS501乃至S506は、
図7に示すステップS401乃至S406に対応する。また、
図8に示すステップS516乃至S521は、
図7に示すステップS416乃至S421に対応する。
【0117】
ステップS507において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった後に、段差閾値TH11以下となったか否かを判定する。前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった後に、段差閾値TH11以下となった場合には、ステップS508に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11未満である場合、または、段差閾値TH11以上となったが、その後に段差閾値TH11以下となっていない場合には、ステップS509に進む。
【0118】
ステップS508において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値が段差閾値TH11以上となってから、段差閾値TH11以上となるまでの軌跡(すなわち、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡)をメモリに記録する。
【0119】
ステップS509において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡がメモリに記録されているか否かを判定する。前輪の角加速度a1の変動値の軌跡がメモリに記録されている場合には、ステップS510に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡がメモリに記録されていない場合には、ステップS518に進む。
【0120】
ステップS510において、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった後に、段差閾値TH11以下となったか否かを判定する。後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった後に、段差閾値TH11以下となった場合には、ステップS511に進む。一方、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11未満である場合、または、段差閾値TH11以上となったが、その後に段差閾値TH11以下となっていない場合には、ステップS512に進む。
【0121】
ステップS511において、車両コントロールモジュール20は、後輪の角加速度a2の変動値が段差閾値TH11以上となってから、段差閾値TH11以上となるまでの軌跡情報(すなわち、後輪の角加速度a2の変動値の軌跡)をメモリに記録する。
【0122】
ステップS512において、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡をメモリに記録してから所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、所定時間は、メモリに記録された軌跡情報(前輪の角加速度a1の変動値の軌跡)を段差判定に用いるか否かを判定するための基準値である。例えば、所定時間は、車両100の前輪軸と後輪軸との距離、車両100の車速に基づいて設定される。例えば、所定時間として「(WB1/V1)+α3」を用いることができる。なお、WB1は、上述した式1、式3、式5に示すWB1である。また、V1は、車両100の車速である。また、α3は、上述した式5に示すα2と同様または略同様の値とすることができる。前輪の角加速度a1の変動値の軌跡をメモリに記録してから所定時間が経過している場合には、ステップS513に進む。一方、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡をメモリに記録してから所定時間が経過していない場合には、ステップS518に進む。
【0123】
ステップS513において、車両コントロールモジュール20は、メモリから軌跡情報(前輪の角加速度a1の変動値の軌跡)を消去する。すなわち、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡をメモリに記録してから所定時間が経過している場合には、車両100が段差を通過したと判定されることはないと想定されるため、すでに記録された軌跡情報を消去して、次の段差判定には、新たに記録された軌跡情報を用いる。
【0124】
ステップS514において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録された2つの軌跡情報(前輪の角加速度a1の変動値の軌跡、後輪の角加速度a2の変動値の軌跡)を用いて段差判定を行う。具体的には、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている2つの軌跡情報を比較し、その比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したか否かを判定する。そして、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている2つの軌跡情報の比較結果が、段差判定条件を満たす場合には、車両100が段差を通過したと判定する。一方、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている2つの軌跡情報の比較結果が、段差判定条件を満たさない場合には、車両100が段差を通過していないと判定する。
【0125】
例えば、前輪の角加速度a1の変動値の軌跡と、後輪の角加速度a2の変動値の軌跡とについて、所定タイミングを基準にして、前輪の角加速度a1の変動値と、後輪の角加速度a2の変動値との差分値を求める。なお、所定タイミングは、例えば、角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となったタイミングや、角加速度の変動値が最大値となったタイミングである。そして、この差分値の合計が所定範囲内である場合には、比較対象となった2つの軌跡に基づく形状が同一または略同一形状であると推定し、車両100が段差を通過したと判定する。なお、この例では、比較対象となった2つの軌跡の変動値の差分値を用いる例を示したが、他の演算方法を用いて段差判定をするようにしてもよい。他の演算方法は、例えば偏差を用いる演算方法である。
【0126】
ステップS515において、車両コントロールモジュール20は、メモリに記録されている2つの軌跡情報を消去する。すなわち、メモリに記録されている2つの軌跡情報を用いた段差判定を実行したため、これらの時間情報を消去する。そして、次の段差判定には、新たに記録された軌跡情報を用いる。
【0127】
なお、
図3乃至
図8に示す例では、悪路閾値TH12を基準値として悪路判定を行い、悪路閾値TH12よりも大きい段差閾値TH11を基準値として段差判定を行う例を示した。ただし、悪路閾値及び段差閾値として同じ基準値を用いて、悪路判定及び段差判定を行うようにしてもよい。この場合における基準値としては、必要となる判定精度に応じて、悪路閾値TH12及び段差閾値TH11間の値を設定することができる。また、この場合には、段差判定の精度を高めるため、
図3乃至
図5に示す例では、式1及び式2の双方を満たすことを条件に、段差判定を行うことが好ましい。
【0128】
なお、
図3乃至
図8に示す例では、車両100が前進する場合の段差判定例を示したが、これらの段差判定例は、車両100が後進する場合についても適用可能である。例えば、車両100が後進する場合には、
図3乃至
図8に示す例における前輪の角加速度の変動値と、後輪の角加速度の変動値とを切り替えて、段差判定処理を行うようにする。
【0129】
また、本実施形態では、エンジン1を発電用動力源とし、駆動モータ3を走行用駆動源としてシリーズ走行するシリーズハイブリッド車両を一例として説明するしたが、他の車両についても本実施形態を適用可能である。例えば、駆動モータを走行用駆動源として走行する走行モードと、エンジンを走行用駆動源として走行する走行モードとを切り替え可能な車両(ハイブリッド車両)について本実施形態を適用可能である。また、例えば、エンジンを搭載せず、駆動モータを走行用駆動源として走行する車両(EV(Electric Vehicle))についても本実施形態を適用可能である。ただし、EVについては、エンジンを搭載していないため、本実施形態で示したエンジンに関する駆動制御は適用しない。また、例えば、エンジンのみを走行用駆動源として走行する車両(内燃機関車)についても本実施形態を適用可能である。ただし、内燃機関車については、走行中においてエンジンを停止させることは不可能であるため、本実施形態で示したエンジンに関する駆動制御は適用しない。
【0130】
[本実施形態の構成及び効果]
本実施形態に係る車両100の制御方法は、所定音が発生するエンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110を備え、車輪の角加速度の変動値が悪路閾値TH12(基準値の一例)以上となる場合に、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が大きくなるようにそれらの各デバイスを制御する制御方法である。この制御方法では、前輪の角加速度の変動値と、後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したことを判定する判定ステップ(
図5に示すステップS301乃至S321、
図7に示すステップS401乃至S415、
図8に示すステップS501乃至S515)と、前輪の角加速度の変動値と後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが悪路閾値TH12以上となった場合でも、車両100が段差を通過したと判定されたときには、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音を大きくする制御を実行しない制御ステップ(
図5に示すステップS323、
図7に示すステップS417、
図8に示すステップS517)とを備える。
【0131】
このような車両100の制御方法によれば、ロードノイズ推定制御において、車両100が段差を通過した際に、悪路と判定される程度に車輪の角加速度が大きくなった場合でも、音発生デバイス110等から発生する音を大きくする制御を実行しない。このため、ロードノイズが大きくないのに、音発生デバイス110等からの音が大きくなってしまう状態を防止することができる。これにより、運転者に違和感を与えることを防止することができる。また、悪路ではない通常の路面において、車両100が段差を通過する毎にエンジン1が始動してしまうことを防止することができる。これにより、車両100が段差を通過する毎にエンジン1が始動することによる煩わしさを防止することができる。また、前輪の角加速度の変動値と、後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて段差判定を行うため、車両100が段差を通過したことを短時間で判定できる。このように、車両が段差を通過した際に適切な音制御を実行することができる。
【0132】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図5に示すステップS320)では、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11(基準値の一例)以上となった第1時刻(
図3に示す時刻t11、
図4に示す時刻t21)と、後輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となった第2時刻(
図3に示す時刻t13、
図4に示す時刻t22)との比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したか否かを判定する。すなわち、上述した式1を用いた段差判定処理により車両100が段差を通過したか否かを判定する。
【0133】
このような車両100の制御方法によれば、前輪に関する第1時刻と、後輪に関する第2時刻との比較結果に基づいて段差判定を行うことができるため、段差判定処理の負荷を軽減させ、段差判定処理を迅速に行うことができる。
【0134】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図5に示すステップS320)では、第1時刻(
図3に示す時刻t11、
図4に示す時刻t21)と第2時刻(
図3に示す時刻t13、
図4に示す時刻t22)との時間差が第1時間差閾値(式1に示す「(WB1/V1)+α」)よりも小さい場合に、車両100が段差を通過したと判定する。
【0135】
このような車両100の制御方法によれば、車両100の車速、車両100の前輪軸と後輪軸との距離に基づいて設定される第1時間差閾値を用いて段差判定を行うことができるため、精度の高い段差判定を行うことができる。
【0136】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、第1時間差閾値(式1に示す「(WB1/V1)+α」)は、車両100の前輪及び後輪間の距離と、車両100の車速とに基づいて求められる。
【0137】
このような車両100の制御方法によれば、車両100の車速、車両100の前輪軸と後輪軸との距離に基づいて第1時間差閾値を適切に設定することができる。
【0138】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図5に示すステップS320)では、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となった第1時刻(
図3に示す時刻t11、
図4に示す時刻t21)と、第1時刻の経過後に前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以下となった第3時刻(
図3に示す時刻t12、
図4に示す時刻t23)との比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したか否かを判定する。すなわち、上述した式2を用いた段差判定処理により車両100が段差を通過したか否かを判定する。なお、上述した式1及び式2を用いた段差判定処理により車両100が段差を通過したか否かを判定することも可能である。
【0139】
このような車両100の制御方法によれば、前輪に関する第1時刻及び第3時刻の比較結果に基づいて段差判定を行うことができるため、段差判定処理の負荷を軽減させ、段差判定処理を迅速に行うことができる。
【0140】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図5に示すステップS320)では、第1時刻(
図3に示す時刻t11、
図4に示す時刻t21)と第3時刻(
図3に示す時刻t12、
図4に示す時刻t23)との時間差が第2時間差閾値(式2に示すβ)よりも小さい場合に、車両100が段差を通過したと判定する。
【0141】
このような車両100の制御方法によれば、車両100の車速に基づいて設定される第2時間差閾値を用いて段差判定を行うことができるため、精度の高い段差判定を行うことができる。
【0142】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、第2時間差閾値(式2に示すβ)は、車両100の車速に基づいて求められる。
【0143】
このような車両100の制御方法によれば、車両100の車速に基づいて第2時間差閾値を適切に設定することができる。
【0144】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図7に示すステップS414)では、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった第1時刻(
図6に示すt31)と、後輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上で最大値となった第2時刻(
図6に示すt32)との比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したか否かを判定する。
【0145】
このような車両100の制御方法によれば、前輪の角加速度の変動値の最大値に関する第1時刻と、後輪の角加速度の変動値の最大値に関する第2時刻との比較結果に基づいて段差判定を行うことができるため、段差判定処理の負荷を軽減させ、段差判定処理を迅速に行うことができる。
【0146】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図7に示すステップS414)では、第1時刻(
図6に示すt31)と第2時刻(
図6に示すt32)との時間差が所定範囲(式5に示す「(WB1/V1)+α1」から「(WB1/V1)+α2」の範囲)内である場合に、車両100が段差を通過したと判定する。
【0147】
このような車両100の制御方法によれば、車両100の車速、車両100の前輪軸と後輪軸との距離に基づいて設定される所定範囲を用いて段差判定を行うことができるため、精度の高い段差判定を行うことができる。
【0148】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、所定範囲(式5に示す「(WB1/V1)+α1」から「(WB1/V1)+α2」の範囲)は、車両100の前輪及び後輪間の距離と、車両100の車速とに基づいて求められる。
【0149】
このような車両100の制御方法によれば、車両100の車速、車両100の前輪軸と後輪軸との距離に基づいて所定範囲を適切に設定することができる。
【0150】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図8に示すステップS514)では、前輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となった後における段差閾値TH11以上の当該変動値の第1軌跡と、後輪の角加速度の変動値が段差閾値TH11以上となった後における段差閾値TH11以上の当該変動値の第2軌跡との比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したか否かを判定する。
【0151】
このような車両100の制御方法によれば、前輪の角加速度の変動値に関する第1軌跡と、後輪の角加速度の変動値に関する第2軌跡との比較結果に基づいて段差判定を行うことができるため、段差判定処理の精度を高めることができる。
【0152】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図5に示すステップS301乃至S322、S324、
図7に示すステップS401乃至S416、S418、
図8に示すステップS501乃至S515、S518)では、粗い路面が継続する悪路を判定するための悪路閾値TH12を基準値として用いて、車両100が悪路を走行していることを判定する悪路判定を行い、悪路閾値TH12よりも大きい段差閾値TH11を基準値として用いて、車両100が段差を通過したことを判定する段差判定を行う。
【0153】
このような車両100の制御方法によれば、適切な基準値を用いて段差判定及び悪路判定を行うことができる。
【0154】
また、本実施形態に係る車両100の制御方法では、判定ステップ(
図5に示すステップS322、S324、
図7に示すステップS416、S418、
図8に示すステップS516、S518)では、前輪の角加速度の変動値と後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが悪路閾値TH12以上となった場合において、車両100が段差を通過したと判定されず、かつ、悪路判定条件を満たすときには、車両100が悪路を走行していると判定する。また、制御ステップ(
図5に示すステップS325、
図7に示すステップS419、
図8に示すステップS519)では、車両100が悪路を走行していると判定された場合には、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が大きくなるようにそれらの各デバイスを制御する。
【0155】
このような車両100の制御方法によれば、ロードノイズ推定制御において、段差と判定されずに悪路と判定された場合には、音発生デバイス110等から発生する音が大きくなる制御を実行する。これにより、車両が段差を通過した際に適切な音制御を実行することができる。
【0156】
また、本実施形態に係る車両100の制御システムは、所定音が発生するエンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110と、それらの各デバイスを制御する車両コントロールモジュール20(コントローラの一例)とを備える車両の制御システムである。車両コントロールモジュール20は、車輪の角加速度の変動値が悪路閾値TH12(基準値の一例)以上となった場合にエンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音が大きくなるようにそれらの各デバイスを制御する。また、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度の変動値と、後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて、車両100が段差を通過したことを判定する。そして、車両コントロールモジュール20は、前輪の角加速度の変動値と、後輪の角加速度の変動値とのうちの少なくとも1つが悪路閾値TH12以上となった場合でも、車両100が段差を通過したと判定されたときには、エンジン1、入出力装置31、音発生デバイス110から発生する音を大きくする制御を実行しない。
【0157】
このような車両100の制御システムによれば、ロードノイズ推定制御において、車両100が段差を通過した際に、悪路と判定される程度に車輪の角加速度が大きくなった場合でも、音発生デバイス110等から発生する音を大きくする制御を実行しない。このため、ロードノイズが大きくないのに、音発生デバイス110等からの音が大きくなってしまう状態を防止することができる。これにより、運転者に違和感を与えることを防止することができる。また、悪路ではない通常の路面において、車両100が段差を通過する毎にエンジン1が始動してしまうことを防止することができる。これにより、車両100が段差を通過する毎にエンジン1が始動することによる煩わしさを防止することができる。また、前輪の角加速度の変動値と、後輪の角加速度の変動値との比較結果に基づいて段差判定を行うため、車両100が段差を通過したことを短時間で判定できる。このように、車両が段差を通過した際に適切な音制御を実行することができる。
【0158】
なお、本実施形態で示した各処理は、各処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムに基づいて実行されるものである。このため、本実施形態は、それらの各処理を実行する機能を実現するプログラム、そのプログラムを記憶する記録媒体の実施形態としても把握することができる。例えば、車両に新機能を追加するためのアップデート作業により、そのプログラムを車両の記憶装置に記憶させることができる。これにより、そのアップデートされた車両に本実施形態で示した各処理を実施させることが可能となる。なお、そのアップデートは、例えば、車両の定期点検時等に行うことができる。また、ワイヤレス通信によりそのプログラムをアップデートするようにしてもよい。
【0159】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0160】
1 エンジン
2 発電モータ
3 駆動モータ
4 ギヤボックス
5L、5R フロントドライブシャフト
6L、6R 前輪
7 インバータ
8 バッテリ
9L、9R 後輪
20 車両コントロールモジュール(VCM)
21 エンジンコントローラ(EC)
22 モータジェネレータコントローラ(MGC)
23 バッテリコントローラ(BC)
24 ナビゲーションコントロールユニット(NAVICU)
25 運転支援コントロールユニット(ADASCU)
28 車速センサ
30 横Gセンサ
51 前輪の角速度センサ
52 後輪の角速度センサ
100 車両
110 音発生デバイス
111 エアコン
112 ファン
113 オーディオ
114 走行音生成器