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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】土質測定装置及び土質測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020200438
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088150
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】中本 詩瑶
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 里衣
(72)【発明者】
【氏名】米丸 佳克
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270975(JP,A)
【文献】特開2018-096824(JP,A)
【文献】特開2001-215203(JP,A)
【文献】特開2003-215180(JP,A)
【文献】特開平07-151801(JP,A)
【文献】特開2002-062362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面と接触する電極部と、
前記電極部により前記地面の土の電気抵抗を測定する測定部と、
を備え、
前記電極部は、
円柱状の形状を有し、中心軸の周りに回転することにより、側面で前記地面と連続して接触する地面接触部と、
前記地面接触部と前記中心軸を共通とする円盤状の形状を有し、前記地面接触部の前記側面から外周部が突出し、前記地面接触部の回転に伴い前記外周部が連続して前記地面の下方に貫入させられる地面下貫入部と、
を有する、土質測定装置。
【請求項2】
前記地面接触部は、前記地面に対して絶縁されている、請求項1に記載の土質測定装置。
【請求項3】
前記地面下貫入部の前記中心軸に平行な方向の幅は、前記地面接触部の前記中心軸に平行な方向の幅よりも狭い、請求項1又は2に記載の土質測定装置。
【請求項4】
前記地面下貫入部の前記外周部の前記地面の土に対する荷重を調整する荷重調整部をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1項に記載の土質測定装置。
【請求項5】
前記地面下貫入部の前記外周部が貫入させられた前記地面からの深さを検出する深度検出部をさらに備えた、請求項1~4のいずれか1項に記載の土質測定装置。
【請求項6】
前記地面下貫入部の前記外周部が貫入させられる前記地面からの深さがそれぞれ異なる複数の前記地面下貫入部が前記地面接触部に着脱自在である、請求項1~5のいずれか1項に記載の土質測定装置。
【請求項7】
前記地面に導電性の液体を噴霧する噴霧部をさらに備え、
前記電極部は、前記噴霧部により前記液体を噴霧された前記地面に接触する、請求項1~6のいずれか1項に記載の土質測定装置。
【請求項8】
地面に電極部を接触させる電極部接触工程と、
電極部接触工程により前記地面に接触させられた電極部によって前記地面の土の電気抵抗を測定する測定工程と、
を備え、
前記電極部接触工程では、
円柱状の形状を有し、中心軸の周りに回転することにより、側面で前記地面と連続して接触する地面接触部と、
前記地面接触部と前記中心軸を共通とする円盤状の形状を有し、前記地面接触部の前記側面から外周部が突出し、前記地面接触部の回転に伴い前記外周部が連続して前記地面の下方に貫入させられる地面下貫入部と、を有する前記電極部を前記地面に接触させる、土質測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質測定装置及び土質測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面と接触する電極により地面の土の電気抵抗を測定することによって、土の土質を測定する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の垂直方向に延在する棒状の電極の下端を転圧機による締固めが行われた盛土に圧接して土の電気抵抗を測定することにより、測定された土の電気抵抗と土の乾燥密度との相関に基づいて当該土の締固め度を取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3416908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、盛上の品質管理は、転圧から多少時間が経過した後に行われることが多々あり、その間に表面が乾燥する可能性は十分にある。表面が乾燥した状態の盛土の上で、上記のような技術を用いて測定すると、土の電気抵抗と土の乾燥密度との相関から外れた極めて大きな電気抵抗が出力され、正しく土の乾燥密度を取得できないという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる土質測定装置及び土質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地面と接触する電極部と、電極部により地面の土の電気抵抗を測定する測定部とを備え、電極部は、円柱状の形状を有し、中心軸の周りに回転することにより、側面で地面と連続して接触する地面接触部と、地面接触部と中心軸を共通とする円盤状の形状を有し、地面接触部の側面から外周部が突出し、地面接触部の回転に伴い外周部が連続して地面の下方に貫入させられる地面下貫入部とを有する土質測定装置である。
【0007】
表面が乾燥した状態の土の上で正しい電気抵抗が測定されない原因は、土の表面が乾燥することで電極との間に微細な隙間が生じて電流が流れ難くなっているためである可能性がある。盛土の転圧と品質管理との間に乾燥するのは、盛土表面から深さ方向に数十mm程度の範囲であると考えられる。そこで、この構成によれば、地面と接触する電極部と、電極部により地面の土の電気抵抗を測定する測定部とを備える。電極部は、円柱状の形状を有し、中心軸の周りに回転することにより、側面で地面と連続して接触する地面接触部と、地面接触部と中心軸を共通とする円盤状の形状を有し、地面接触部の側面から外周部が突出し、地面接触部の回転に伴い外周部が連続して地面の下方に貫入させられる地面下貫入部とを有する。これにより、含水している地面の下方の土と、連続して地面の下方に貫入させられる電極部の地面下貫入部とを確実に接触させ、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる。
【0008】
この場合、地面接触部は、地面に対して絶縁されていることが好適である。
【0009】
この構成によれば、地面接触部は地面に対して絶縁されているため、電極部は地面下貫入部のみにより地面の土と電気的に接触する。このため、電極部と土との電気的な接触面積がより一定となり、地面の土の電気抵抗を測定する精度を向上できる。
【0010】
また、地面下貫入部の中心軸に平行な方向の幅は、地面接触部の中心軸に平行な方向の幅よりも狭いことが好適である。
【0011】
この構成によれば、地面下貫入部の中心軸に平行な方向の幅は、地面接触部の中心軸に平行な方向の幅よりも狭いため、地面下貫入部がより確実に地面の下方に貫入され易くなる。
【0012】
また、地面下貫入部の外周部の地面の土に対する荷重を調整する荷重調整部をさらに備えることが好適である。
【0013】
この構成によれば、荷重調整部により、地面下貫入部の外周部の地面の土に対する荷重が調整されるため、様々な硬さの地面の土に対して地面下貫入部の外周部の地面からの深さをより一定に保つことができる。
【0014】
また、地面下貫入部の外周部が貫入させられた地面からの深さを検出する深度検出部をさらに備えることが好適である。
【0015】
この構成によれば、深度検出部により、地面下貫入部の外周部が貫入させられた地面からの深さが検出されるため、地面下貫入部の外周部の地面からの深さを制御し易くなる。
【0016】
また、地面下貫入部の外周部が貫入させられる地面からの深さがそれぞれ異なる複数の地面下貫入部が地面接触部に着脱自在であることが好適である。
【0017】
この構成によれば、地面下貫入部の外周部が貫入させられる地面からの深さがそれぞれ異なる複数の地面下貫入部が地面接触部に着脱自在であるため、十分に含水している土の地面からの深さが異なる状況に対して対応し易くなる。
【0018】
また、地面に導電性の液体を噴霧する噴霧部をさらに備え、電極部は、噴霧部により液体を噴霧された地面に接触することが好適である。
【0019】
この構成によれば、噴霧部により地面に導電性の液体が噴霧され、電極部は噴霧部により液体を噴霧された地面に接触する。これにより、含水している土と電極部とをより確実に接触させ、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる。
【0020】
また、本発明は、地面に電極部を接触させる電極部接触工程と、電極部接触工程により地面に接触させられた電極部によって地面の土の電気抵抗を測定する測定工程とを備え、電極部接触工程では、円柱状の形状を有し、中心軸の周りに回転することにより、側面で地面と連続して接触する地面接触部と、地面接触部と中心軸を共通とする円盤状の形状を有し、地面接触部の側面から外周部が突出し、地面接触部の回転に伴い外周部が連続して地面の下方に貫入させられる地面下貫入部とを有する電極部を地面に接触させる土質測定方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の土質測定装置及び土質測定方法によれば、土の乾燥の影響を低減させつつ地面の土の電気抵抗を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は実施形態の土質測定装置の構成を示す平面図であり、(B)は実施形態の土質測定装置の構成を示す側面図である。
図2】(A)は電極部の車輪状電極の正面図であり、(B)は電極部の車輪状電極の側面図であり、(C)は車輪状電極を分解した状態を示す側面図であり、(D)は(C)の地面下貫入部とは外周部が貫入させられる地面からの深さが異なる地面下貫入部に交換する状態を示す側面図である。
図3】実施形態の土質測定方法の工程を示すフローチャートである。
図4】乾燥密度と電気抵抗との関係を示すグラフである。
図5】(A)は従来の乾燥していない地面の土の電気抵抗を測定する状況を示す図であり、(B)は従来の乾燥した地面の土の電気抵抗を測定する状況を示す図であり、(C)は本実施形態の電極部の車輪状電極により乾燥した地面の土の電気抵抗を測定する状況を示す図である。
図6】地面の土の電気抵抗を測定した測点、地面への液体の噴射回数及び測定された土の電気抵抗に基づいて推定された土の乾燥密度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る土質測定装置及び土質測定方法の実施形態について詳細に説明する。本発明の実施形態の土質測定装置及び土質測定方法は、例えば、ロードローラ等の締固め機械により締固められた後の地面の土の電気抵抗を測定し、電気抵抗と相関がある土の乾燥密度等を導出することによって、締固め機械による締固めの効果を確認するためのものである。
【0024】
図1(A)に示されるように、本発明の実施形態の土質測定装置1は、中央フレーム部4と、中央フレーム部4により牽引される電極部5とを備える。土質測定装置1は、中央フレーム部4に、電極部5が通過する前の地面Sに導電性の液体Lを噴霧する噴霧部31を備える。
【0025】
噴霧部31には、噴霧ノズル34が接続されている。噴霧部31は、不図示の液体容器を有し、液体容器内の導電性の液体Lを不図示のポンプにより噴霧ノズル34に供給する。噴霧部31は、噴霧ノズル34に供給する液体Lの量を変更自在である。導電性の液体Lは、例えば、純水ではない水を適用することができる。噴霧ノズル34は、電極部5が通過する前の地面Sに導電性の液体Lを噴霧する。噴霧とは、連続していない複数の液滴の間に空気が存在している状態の液体Lを地面Sに放出することを意味する。
【0026】
土質測定装置1は、中央フレーム部4に、土質測定装置1が地面Sを移動するための駆動輪16を駆動する駆動部15を有する。駆動部15は、駆動輪16を電動機又は内燃機関等により回転駆動させる。これにより、本実施形態の土質測定装置1は、地面Sを方向Xに自走可能である。電極部5は、噴霧部31により液体Lを噴霧された地面Sに接触する。電極部5は、補助輪17を有し、中央フレーム部4に牽引される牽引体18を有する。電極部5は、牽引体18の後部に4つの車輪状電極19を有する。
【0027】
図1(A)、図1(B)、図2(A)及び図2(B)に示されるように、電極部5の車輪状電極19は、地面接触部21と地面下貫入部22とを有する。地面接触部21は、円柱状の形状を有し、中心軸Aの周りに回転することにより、側面21sで地面Sと連続して接触する。地面下貫入部22は、地面接触部21と中心軸Aを共通とする円盤状の形状を有し、地面接触部21の側面21sから外周部22sが突出し、地面接触部21の回転に伴い外周部22sが連続して地面Sの下方に貫入させられる。
【0028】
地面接触部21の直径は、例えば、100mm~200mmである。車輪状電極19の電極部5が地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yの幅W2は、例えば、10mm~30mmである。車輪状電極19の電極部5が地面Sを移動する方向Xの接地長は、例えば、20mm~30mmである。電極部5の車輪状電極19のそれぞれの電極部5が地面Sを移動する方向Xに垂直な方向Yの間隔は任意に変更自在であり、例えば、200mm、300mm、750mmに変更自在である。地面接触部21は、地面Sに対して絶縁されている。地面接触部21の側面21sは、例えば、絶縁性のゴム及び合成樹脂等で被覆されている。
【0029】
一方、地面下貫入部22の直径は、後述するように地面Sの土の乾燥の度合に応じて適宜変更し得る。また、地面下貫入部22の中心軸Aに平行な方向の幅W1は、地面接触部21の中心軸Aに平行な方向の幅W2よりも狭い。地面下貫入部22の中心軸Aに平行な方向の幅W1は、例えば、2mm~10mmである。地面下貫入部22の中心軸Aに平行な方向の幅W1は、側面21sから外周部22sに到るにつれて狭くされていてもよい。
【0030】
図2(C)及び図2(D)に示されるように、電極部5の車輪状電極19では、地面下貫入部22,22´の外周部22sが貫入させられる地面Sからの深さがそれぞれ異なる複数の地面下貫入部22,22´が地面接触部21に着脱自在である。地面接触部21は、中心軸Aに平行な方向に、ボルト部21aとナット部21bとに分離可能である。ボルト部21aは、ボルト部21aの本体部よりも直径が小さい円柱状の形状を有し、中心軸Aに平行な方向に突出し、側面にネジ溝が設けられたオネジ部21mを有する。ナット部21bは、ボルト部21aの形状に対応した孔部の内周面にオネジ部21mのネジ溝に対応したネジ溝が設けられたメネジ部21fを有する。ボルト部21aのオネジ部21mは、ナット部21bのメネジ部21fに螺合させられる。
【0031】
地面下貫入部22,22´は、地面接触部21のボルト部21aのオネジ部21mに対応した大きさのネジ孔部22hを有する。地面接触部21のボルト部21aのオネジ部21mが地面下貫入部22,22´のネジ孔部22hに挿通され、地面接触部21のボルト部21aとナット部21bとの間に地面下貫入部22,22´が挟み込まれつつ、ボルト部21aのオネジ部21mがナット部21bのメネジ部21fに螺合させられることにより、地面接触部21に地面下貫入部22,22´が固定される。反対に、ボルト部21aのオネジ部21mがナット部21bのメネジ部21fから取り外されることにより、地面接触部21から地面下貫入部22,22´が取り外される。
【0032】
以上の構成により、地面下貫入部22,22´の外周部22sが貫入させられる地面Sからの深さがそれぞれ異なる複数の地面下貫入部22,22´が地面接触部21に着脱自在である。図2(C)及び図2(D)の例では、地面接触部21から地面下貫入部22が取り外され、地面下貫入部22よりも直径が大きく、外周部22sが貫入させられる地面Sからの深さがより深い地面下貫入部22´が地面接触部21に固定されている。
【0033】
各作業現場の土により、測定誤差を小さくできる車輪状電極19と地面Sとの接触面積や接触時間は異なると考えられる。そこで、駆動部15は、車輪状電極19を移動させる速度の調節が可能であり、各作業現場に適切な速度に設定可能である。可能な限り、車輪状電極19の速度は速い方が測定に必要な時間が短くなるため、好ましい。なお、土質測定装置1をロードローラ等の自走式の締固め機械や、電動立ち乗り二輪車や、人力等の何らかの手法で牽引することにより、車輪状電極19を移動させてもよい。また、土質測定装置1をロードローラ等の自走式の締固め機械と一体化することにより、車輪状電極19を移動させてもよい。
【0034】
以上のような電極部5の合計4つの車輪状電極19は、地面Sに沿った方向において、土質測定装置1の電極部5が地面を移動する方向Xに垂直な方向Yに並列に配置され、例えば、ウェンナー法により土の電気抵抗が測定される。図1(A)に示されるように、中央フレーム部4に配置された測定部11は、電極部5の4つの車輪状電極19により地面Sの土の電気抵抗を測定する。なお、測定部11が地面Sの土の電気抵抗を測定するとは、必ずしも、土の電気抵抗の数値を算出することのみを意味せず、例えば、電極部5により検出された電流値及び電圧値等に関する情報を出力することも含まれる。
【0035】
図1(A)に示されるように、土質測定装置1は、中央フレーム部4に、車輪状電極19の位置を取得する測位部12を備える。測定部11は、測位部12により取得された車輪状電極19の位置と関連付けた地面Sの土の電気抵抗を測定する。中央フレーム部4等の土質測定装置1の位置が車輪状電極19の位置とみなされてもよい。測位部12は、例えば、GNSS(Global NavigationSatellite System)測量により車輪状電極19の位置を測位する。GNSS測量では、3個以上の衛星から信号を受信することにより、車輪状電極19の位置(例えば車輪状電極19の緯度及び経度)を測位する。GNSS測量に替えて、光学測量機能による自動追尾TS(Total Station)により車輪状電極19の位置が測位されてもよい。
【0036】
土質測定装置1は、中央フレーム部4に、測定部11、駆動部15及び噴霧部31への指令信号を受信する受信部である通信部13を備える。これにより、測定部11、駆動部15及び噴霧部31の動作は通信部13により受信された指令信号による遠隔操作によって制御される。通信部13は、測定部11により測定された地面Sの土の電気抵抗に関する情報を送信する。なお、土質測定装置1に搭載された記録装置に測定部11による測定結果が記録されてもよい。
【0037】
また、土質測定装置1は、中央フレーム部4に、測定部11、駆動部15及び噴霧部31の動作を制御する制御部14を備える。また、制御部14により、例えば、ロードローラ等の自走式の締固め機械の後方を土質測定装置1が追随して移動するように制御されてもよい。また、制御部14により作業現場の任意の経路を土質測定装置1が移動するように制御されてもよい。
【0038】
土質測定装置1は、地面下貫入部22の外周部22sの地面Sの土に対する荷重を調整する荷重調整部23を備える。荷重調整部23は、例えば、車輪状電極19の回転軸の両端部に着脱自在な重錘である。様々な重量を有する重錘である荷重調整部23が車輪状電極19の回転軸の両端部に取り付けられることにより、地面下貫入部22の外周部22sの地面Sの土に対する荷重が調整される。なお、荷重調整部23は、中央フレーム部4から牽引体18が地面Sに対して押圧される荷重を調整することにより、地面下貫入部22の外周部22sの地面Sの土に対する荷重を調整してもよい。
【0039】
土質測定装置1は、中央フレーム部4に、地面下貫入部22の外周部22sが貫入させられた地面Sからの深さを検出する深度検出部24を備える。深度検出部24は、例えば、光学センサ又は超音波センサ等により、地面接触部21の側面21sと地面Sとの距離を測定し、地面接触部21の側面21sから地面下貫入部22の外周部22sまでの距離に基づいて、地面下貫入部22の外周部22sが貫入させられた地面Sからの深さを検出する。なお、深度検出部24は、中央フレーム部4から牽引体18がなす角度に基づいて、地面下貫入部22の外周部22sが貫入させられた地面Sからの深さを検出してもよい。
【0040】
以下、本実施形態の土質測定装置1を用いた土質測定方法について説明する。本実施形態の土質測定装置1を用いた土質測定方法では、例えば、土質測定装置1がロードローラ等の締固め機械により締固められた後の地面Sの上で移動させられつつ、作業現場の任意の場所の土の電気抵抗が測定される。
【0041】
図3に示されるように、噴霧部31により噴霧ノズル34から地面Sに導電性の液体Lを噴霧する噴霧工程が実行される(S1)。噴霧工程により液体Lを噴霧された地面Sに電極部5の車輪状電極19を接触させる電極部接触工程が実行される(S2)。電極部接触工程により地面Sに接触させられた電極部5によって、測定部11により地面Sの土の電気抵抗を測定する測定工程が実行される(S3)。
【0042】
電極部接触工程では、円柱状の形状を有し、中心軸Aの周りに回転することにより、側面21sで地面Sと連続して接触する地面接触部21と、地面接触部21と中心軸Aを共通とする円盤状の形状を有し、地面接触部21の側面21sから外周部22sが突出し、地面接触部21の回転に伴い外周部22sが連続して地面Sの下方に貫入させられる地面下貫入部22とを有する電極部5の車輪状電極19が地面Sに接触させられる。
【0043】
以下、本実施形態の土質測定装置及び土質測定方法の作用及び効果について説明する。図4に示されるように、土の電気抵抗と土の乾燥密度とは相関関係があることが知られているため、土の電気抵抗に基づいて土の乾燥密度を導出することができる。導出された土の乾燥密度により、締固め機械による締固めの効果を確認することができる。
【0044】
測定部11は、測定された土の電気抵抗に基づいて土の乾燥密度を導出し、通信部13は導出された土の乾燥密度を送信してもよい。また、測定部11は、電極部5により検出された電流値及び電圧値等に関する情報や土の電気抵抗に関する情報を出力し、通信部13は当該情報を送信し、土の乾燥密度の導出は土質測定装置1の外部の携帯通信端末で行われてもよい。
【0045】
図5(A)に示されるように、土Eの地面Sに水Wが存在するときは、電極部5の車輪状電極19と土Eとの間に電流Cが流れ、電極部5により正しい電気抵抗が測定される。しかし、図5(B)に示されるように、地面Sが乾燥した状態の土Eの上で正しい電気抵抗が測定されない原因は、土Eの地面Sが乾燥することで電極部5の車輪状電極19との間に微細な隙間が生じて電流Cが流れ難くなっているためである可能性がある。盛土の転圧と品質管理との間に乾燥するのは、図中で破線により示されるように、盛土表面から深さ方向に数十mm程度の範囲であると考えられる。
【0046】
そこで、本実施形態では、図5(C)に示されるように、電極部5の車輪状電極19は、円柱状の形状を有し、中心軸Aの周りに回転することにより、側面21sで地面Sと連続して接触する地面接触部21と、地面接触部21と中心軸Aを共通とする円盤状の形状を有し、地面接触部21の側面21sから外周部22sが突出し、地面接触部21の回転に伴い外周部22sが連続して地面Sの下方に貫入させられる地面下貫入部22とを有する。これにより、含水している地面Sの下方の土Eと、連続して地面Sの下方に貫入させられる電極部5の地面下貫入部22とを確実に接触させ、土Eの乾燥の影響を低減させつつ地面Sの土Eの電気抵抗を測定することができる。
【0047】
つまり、図6に示されるように、地面Sの土Eが乾燥しており、測点6~8の地面Sの表層で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度が砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度と大きく異なる場合であっても、測点9~11の地面Sの下方で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度に近い値となる。そこで本実施形態では、含水している地面Sの下方の土Eと、連続して地面Sの下方に貫入させられる電極部5の地面下貫入部22とを確実に接触させることにより、土Eの乾燥の影響を低減させつつ地面Sの土Eの電気抵抗を測定することができる。
【0048】
また、図5(C)に示されるように、本実施形態では、電極部5の車輪状電極19の回転に伴い、地面接触部21の側面21sは地面Sと連続して接触し、側面21sから等距離を隔てた地面下貫入部22の外周部22sは、地面Sから同じ深さに連続して貫入させられる。これにより、電極部5の車輪状電極19と地面Sの土Eとの接触面積Zは一定となる。このため、例えば、電極部5の車輪状電極19で地面Sの下方に貫入させられる部分が車輪状電極19の外周部から不連続に突出した突起等である場合に比べて、地面Sの土Eの電気抵抗を測定する精度を向上できる。
【0049】
また、本実施形態では、地面下貫入部22の外周部22sは地面Sから同じ深さに連続して貫入させられるため、例えば、電極部5の車輪状電極19で地面Sの下方に貫入させられる部分が車輪状電極19の外周部から不連続に突出した突起等である場合に比べて、地面Sの土Eをかき乱すことが低減される。したがって、例えば、ロードローラ等の締固め機械により締固められた後の地面Sの土Eの状態を維持できる。
【0050】
また、本実施形態では、地面下貫入部22の外周部22sは地面Sから同じ深さに連続して貫入させられるため、例えば、電極部5の車輪状電極19で地面Sの下方に貫入させられる部分が車輪状電極19の外周部から不連続に突出した突起等である場合に比べて、地面下貫入部22の耐久性を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、地面接触部21は地面Sに対して絶縁されているため、電極部5の車輪状電極19は地面下貫入部22のみにより地面Sの土Eと電気的に接触する。このため、電極部5と土Eとの電気的な接触面積Zがより一定となり、地面Sの土Eの電気抵抗を測定する精度を向上できる。
【0052】
また、本実施形態では、地面下貫入部22の中心軸Aに平行な方向の幅W1は、地面接触部21の中心軸Aに平行な方向の幅W2よりも狭いため、地面下貫入部22がより確実に地面Sの下方に貫入され易くなる。
【0053】
また、本実施形態では、荷重調整部23により、地面下貫入部22の外周部22sの地面Sの土Eに対する荷重が調整されるため、様々な硬さの地面Sの土Eに対して地面下貫入部22の外周部22sの地面Sからの深さをより一定に保つことができる。
【0054】
また、本実施形態では、深度検出部24により、地面下貫入部22の外周部22sが貫入させられた地面Sからの深さが検出されるため、地面下貫入部22の外周部22sの地面Sからの深さを制御し易くなる。
【0055】
また、本実施形態では、地面下貫入部22,22´の外周部22sが貫入させられる地面Sからの深さがそれぞれ異なる複数の地面下貫入部22,22´が地面接触部21に着脱自在であるため、十分に含水している土Eの地面Sからの深さが異なる状況に対して対応し易くなる。
【0056】
また、本実施形態では、噴霧部31により地面Sに導電性の液体Lが噴霧され、電極部5は噴霧部31により液体Lを噴霧された地面Sに接触する。これにより、含水している土Eと電極部5とをより確実に接触させ、土Eの乾燥の影響を低減させつつ地面Sの土Eの電気抵抗を測定することができる。つまり、図6に示されるように、地面Sに噴霧された液体Lの量が多くなるにつれて、測点1~5で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は増大し、地面Sに噴霧された液体Lの量がある程度以上の量になると、測点1~5で測定された土Eの電気抵抗に基づいて導出される土の乾燥密度は砂置換法で測定される地面Sの土Eの乾燥密度と略同じ値となる。したがって、地面Sに導電性の液体Lが噴霧されることにより、含水している土Eと電極部5とをより確実に接触させ、土Eの乾燥の影響を低減させつつ地面Sの土Eの電気抵抗を測定することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態の土質測定装置及び土質測定方法により電気抵抗を測定される土Eには、一般の土Eのみならず、CSG(Cemented Sand andGravel)工法における建設現場で得られた砂礫等にセメントが添加及び混合された物及びRCD(Roller CompactedDam-Concrete)工法におけるセメントの量を少なくした超硬練りのコンクリートが敷均されて振動ローラ等で締め固められた物も含まれる。
【0058】
また、例えば、上記実施形態では、測定された地面Sの土Eの電気抵抗に基づいて土Eの乾燥密度が導出され、導出された土Eの乾燥密度により、締固め機械による締固めの効果を確認する態様について説明したが、例えば、締固め機械による締固めの効果の確認は、他の手法と本実施形態の手法とを併用して行われてもよい。また、本実施形態による土Eの電気抵抗の測定は、土Eの乾燥密度の導出だけではなく、乾燥密度以外の他の要素に関する土Eの土質測定のために行われてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…土質測定装置、4…中央フレーム部、5…電極部、11…測定部、12…測位部、13…通信部、14…制御部、15…駆動部、16…駆動輪、17…補助輪、18…牽引体、19…車輪状電極、21…地面接触部、21s…側面、21a…ボルト部、21m…オネジ部、21b…ナット部、21f…メネジ部、22,22´…地面下貫入部、22s…外周部、22h…ネジ孔部、23…荷重調整部、24…深度検出部、31…噴霧部、34…噴霧ノズル、S…地面、E…土、W…水、L…液体、C…電流、X,Y…方向、A…中心軸、W1,W2…幅、Z…接触面積。
図1
図2
図3
図4
図5
図6