(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/34 20200101AFI20240307BHJP
D06F 39/08 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
D06F33/34
D06F39/08 301Z
(21)【出願番号】P 2020209282
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】内山 具典
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-220292(JP,A)
【文献】特開2007-167670(JP,A)
【文献】国際公開第2020/081232(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/34
D06F 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転槽に給水を行う給水経路に配置され、給水口,排水口及び気体導入口を備え、内部に給水された水に気体を加圧溶解させるタンクと、
オゾンを生成するオゾン生成装置と、
前記気体導入口と前記オゾン生成装置との間に配置される吸気弁と、
前記タンクの排水口に配置され、水中に溶解されている気体より微細気泡を生成する気泡生成ノズルと、
前記タンクの給排水及び前記オゾン生成装置を制御する制御部とを備える洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記吸気弁を開放して前記タンク内の水を排水する際に、前記オゾン生成装置により生成されたオゾンを前記タンク内に導入する請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、運転の1行程の最後に前記タンクに給水した水を、当該行程から次行程に移行する段階で排水する請求項1又は2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部は、前記タンク内の水を排水するタイミングよりも所定時間前に、前記オゾン生成装置を起動させる請求項1から3の何れか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記制御部は、前記回転槽に最初に給水を行う際には、前記タンクの容量以下に設定される閾値を超えるまで前記タンクに給水を行ってから、前記オゾン生成装置を起動させて前記タンクより排水を行うと、前記タンクに再度給水を行う請求項1から4の何れか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記吸気弁は、逆止弁であり、
前記制御部は、前記回転槽に給水を行う際には、前記タンクの容量以下に設定される閾値を超えるまで前記タンクに給水を行ってから、前記オゾン生成装置を起動させて前記タンクより排水を行うと、前記タンクに再度給水を行う請求項1記載の洗濯機。
【請求項7】
前記制御部は、前記タンクに給水を行った状態で、運転の最後の行程を終了する請求項1から4の何れか一項に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記制御部は、1つの行程において、前記タンクへの給水及び前記タンクからの排水を、複数回行う請求項1から7の何れか一項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転槽内に給水される水中にオゾンを混入させる機能を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類を殺菌するため、洗濯に用いる水にオゾンを含ませる機能を備えた洗濯機がある。オゾンを含ませる方法としては、ポンプを用いて水中にオゾンガスを導入したり、給水路の一部にベンチュリ管を用いてオゾンガスを吸引導入したり、電気分解によってオゾンを生成する方法等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5475804号公報
【文献】特許6443992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポンプを用いると、構造が複雑になると共にコストが増大する。また、ベンチュリ管を用いると、給水路中の抵抗が大きくなるため給水量が低下する。また、電気分解を用いると、電極の寿命の問題や、やはりコストが増大する問題がある。更に、単にオゾンガスを水中に導入するだけでは、オゾンガスが水中に十分に溶解せず、オゾン濃度が低下する懸念がある。
そこで、低コストでオゾンを水中に導入できると共に、水中へのオゾンの溶解をより促すことができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗濯機は、回転槽と、
この回転槽に給水を行う給水経路と、
この給水経路に配置され、給水口,排水口及び気体導入口を備え、水中に気体を加圧溶解させるタンクと、
オゾンを生成するオゾン生成装置と、
前記タンクの排水口に配置され、水中に溶解されている気体より微細気泡を生成する気泡生成ノズルと、
前記タンクの給排水及び前記オゾン生成装置を制御する制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る洗濯機の構成を模式的に示す縦断側面図
【
図2】加圧タンクを中心に、その周辺に接続される装置等を模式的に示す図
【
図3】洗濯機の給排水系の構成を示す機能ブロック図
【
図5】加圧タンクの基本的な動作を説明する図(その1)
【
図6】加圧タンクの基本的な動作を説明する図(その2)
【
図7】加圧タンクの基本的な動作を説明する図(その3)
【
図8】加圧タンクの基本的な動作を説明する図(その4)
【
図9】加圧タンクの基本的な動作を説明する図(その5)
【
図10】加圧タンクの基本的な動作を説明する図(その6)
【
図11】制御マイコンの処理内容を示すフローチャート
【
図12】第2実施形態であり、制御マイコンの処理内容の一部を示すフローチャート
【
図13】第3実施形態であり、制御マイコンの処理内容の一部を示すフローチャート
【
図14】オゾン生成器を起動した時点からのオゾン生成能力の変化と、加圧タンクからの排水のタイミングとを示す図
【
図15】第4実施形態であり、制御マイコンの処理内容を示すフローチャート
【
図16】第5実施形態であり、1つの行程において加圧タンク8の給排水を複数回行う手順を説明する図
【
図17】制御マイコンの処理内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
【0008】
以下、第1実施形態について
図1から
図11を参照して説明する。
図1は、本実施形態のドラム式洗濯機の構成を、要旨に係る部分について模式的に示す縦断側面図である。
洗濯機1は、外箱2、水槽3、回転槽であるドラム4を備えている。外箱2は、鋼板等により略矩形の箱状に形成されており、前側に開口部を有している。水槽3は、外箱2の内部に収容されており、ドラム4は、水槽3の内部に収容されている。水槽3及びドラム4は、前側が開口した有底円筒形状に形成されている。外箱2には、前記の開口した部分を開閉するための扉5が取り付けられている。
【0009】
水槽3は、図示しない弾性支持部材によって外箱2の内部中央付近に位置するように支持されている。水槽3の後方外側には、図示しないモータが取り付けられており、そのモータの回転軸は、水槽3を貫通してドラム4の後面中心部に固定されている。回転軸並びに水槽3及びドラム4の中心軸は、水平より若干仰角方向に傾斜している。
【0010】
外箱2の内部には給水パイプ6が配置されており、外箱2の図中左上方には、給水パイプ6の一端部が給水口7として外部に突出している。給水口7は、ホース等を介して水道の蛇口に接続される。図中の右側に延びる給水パイプ6の他端部は、加圧タンク8に接続されている。加圧タンク8は、注水ケース9に接続されており、注水ケース9は水槽3に接続されている。尚、
図1は、水道から水槽3への給水経路を概略的に示しており、詳細な構成部分は省略している。
【0011】
図2は、加圧タンク8を中心に、その周辺に接続される装置等を模式的に示す図である。加圧タンク8の水入口10には、給水弁11を介して給水パイプ6が接続されている。また、加圧タンク8の気体導入口である気体入口12には、吸気弁13を介してオゾン生成装置であるオゾン生成器14が接続されている。オゾン生成器14は、吸気口15より吸気した空気からオゾンを生成し、オゾンが混入した空気を供給する装置である。図中の右下側には、加圧タンク8の排水口16があり、その排水口16には、バブル発生ノズル17を介して出水パイプ18が接続されている。出水パイプ18は、注水ケース9に接続されている。
図3は、
図2に示す給水経路に係る構成をブロック図で示したものである。
【0012】
加圧タンク8は、水入口10を介して供給され、内部に貯留された水に対して、気体入口12より供給されるオゾンを含んだ空気を加圧状態にして溶解させる作用を成すものである。気泡生成ノズルに相当するバブル発生ノズル17は、加圧タンク8の排水口16より出て行く水が通過する際に、洗浄能力が高い微細気泡であるマイクロバブルやウルトラファインバブル,ナノバブル等のファインバブルを給水中の溶存空気から析出生成して水中に混入させる。
【0013】
図4は、制御系の構成を示すブロック図である。制御部である制御マイコン19には、電源20より動作用電源が供給される。制御マイコン19は、例えば電磁弁である給水弁11及び吸気弁13の開閉を制御すると共に、オゾン生成器14の動作を制御する。
【0014】
次に、加圧タンク8を用いて行う一連の制御について、
図5から
図10を参照して説明する。尚、オゾン生成器14の動作については省略するが、基本的には吸気弁13の動作に連動して動作するようになっている。
図5は、洗濯機1の電源がオフである場合の初期状態を示しており、加圧タンク8の内部に水は貯留されておらず、給水弁11及び吸気弁13は何れも閉じられている。この状態から、
図6に示すように、給水弁11を開いて加圧タンク8への給水を開始する。この時、加圧タンク8を満たしていた空気は、バブル発生ノズル17を介して外部に押し出される。
【0015】
図7に示すように、加圧タンク8内の水位が排水口16の位置を上回ると、加圧タンク8の内部に圧力がかかるようになり、内部にある空気は水中に加圧溶解される。また、圧力を受けた水がバブル発生ノズル17を介して出水する際に、ファインバブル等が発生して水中に混入される。
図8に示すように、上記の状態が進んで、加圧タンク8の内部が水に満たされるのに応じて、内部の空気は減少する。
【0016】
そして、
図9に示すように、加圧タンク8の内部が全て水で満たされると、空気の加圧溶解ができなくなり、ファインバブル等の生成効率が低下する。この状態から、
図10に示すように、給水弁11を閉じて吸気弁13を開くと、加圧タンク8内の水は、自重によって排水口16より排水される。排水が完了すると、
図5に示す状態に戻る。
【0017】
次に、本実施形態の作用について
図11を参照して説明する。制御マイコン19は、
図5に示す初期状態から、吸気弁13は閉じたまま(S1)給水弁11を開いて加圧タンク8内への給水を開始する。この給水の過程の途中から、バブル発生ノズル17を介して生成されたファインバブル等が水中に混入するようになり、その水が注水ケース9を経由して水槽3に供給される。
【0018】
そして、所定量を給水するまで、例えば加圧タンク8が略満水になるまで給水すると(S3;YES)、給水弁11を閉じて(S4)吸気弁13を開く(S5)。それから、オゾン生成器14を動作させてオゾンの生成を開始する(S6)。これにより、オゾンを含んだ空気が加圧タンク8の内部に供給されるようになると共に、加圧タンク8の内部に貯留された水が排水される。加圧タンク8の排水が完了すると(S7;YES)、オゾン生成器14の動作を停止させる(S8)。
【0019】
以上のように本実施形態によれば、洗濯機1のドラム4に給水を行う給水経路に、水入口10,排水口16及び気体入口12を有し、内部に給水された水に気体を加圧溶解させる加圧タンク8を備える。気体入口12とオゾン生成器14との間に吸気弁13を配置し、加圧タンク8の排水口16にバブル発生ノズル17を配置し、制御マイコン19により、加圧タンク8の給排水及びオゾン生成器14を制御する。
【0020】
これにより、オゾン生成器14が生成したオゾンを、加圧タンク8において内部に給水された水に加圧溶解させることができる。そして、バブル発生ノズル17が発生させるバブル中にオゾンが存在することで水中におけるバブルの滞在時間がより長くなり、洗浄能力を向上させることができる。また、水中のオゾンが空気中に放出されることも抑止できるだけでなく、微細なファインバブルが繊維の奥に入り込むことに伴いオゾンを繊維の奥にまで浸透させ除菌することができるので、オゾンによる衣類の殺菌効果もより高めることができる。
【0021】
また、制御マイコン19は、吸気弁13を開放して加圧タンク8内の水を排水する際に、オゾン生成器14により生成されたオゾンを加圧タンク8内に導入するように制御するので、排水を行うだけでオゾンを加圧タンク8内に導入することができ、別途ポンプ等を用いる必要が無く、コストを低減できる。
【0022】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図12に示す第2実施形態のフローチャートは、
図11の一部に係る部分を示している。第2実施形態において、加圧タンク8への給水が完了して給水弁11を閉じると(S4)、現在行っている洗濯機1の運転の1つの行程が修了して次の行程に移行する段階で(S11;YES)、吸気弁13を開いて排水を行うようにする(S5)。例えば、洗い行程を終了してすすぎ行程を開始するための給水を行う直前に、加圧タンク8からの排水を行う。これにより、すすぎ行程を開始するまでの間にオゾンの分解が進んでしまうことを防止して、すすぎ行程を開始する際に、オゾンを含んでいる水をドラム4により確実に供給できる。
【0023】
(第3実施形態)
図13に示す第3実施形態では、制御マイコン19は、加圧タンク8への給水が完了して給水弁11を閉じると(S4)、加圧タンク8からの排水を開始するタイミングを起点とする所定時間前に(S12;YES)オゾン生成器14によるオゾンの生成を開始させる(S6)。そして、上記の所定時間が経過すると(S13;YES)吸気弁13を開いて排水を行うようにする(S5)。
【0024】
図14に示すように、一般にオゾン生成器14は、動作を開始してからオゾンの生成能力が十分に向上するまでに若干の時間を要する。そこで、加圧タンク8からの排水を開始するよりも例えば1分間程度の所定時間前にオゾン生成器14によるオゾンの生成を開始させておき、オゾンの生成能力が十分に向上してから排水を行う。これにより、オゾン濃度が高くなった水を加圧タンク8より供給することができる。
【0025】
(第4実施形態)
図15に示す第4実施形態では、制御マイコン19は、一連の洗濯行程における最初の行程,例えば通常であれば洗い行程,すすぎ運転のみ行う場合の1回目のすすぎ行程では、ステップS1及びS2を実行すると、次に行う給水が最初の給水か否かを判断する(S14)。最初の給水であれば(YES)、閾値として加圧タンク8の満水量未満,例えば満水量の1/2程度に設定されている所定量まで給水されるまで待機する(S15)。上記の所定量まで給水されると(YES)ステップS4~S8を実行し、続いてステップS14と同様の判断を行う(S16)。ここで最初の給水であれば(YES)ステップS1に戻り、再度給水を行う(S2)。2回目以降の給水であれば(S14;NO)ステップS3~S8を実行し、ステップS16では「NO」と判断することになり、処理を終了する。
【0026】
以上のように第4実施形態によれば、制御マイコン19は、ドラム4に最初に給水を行う際には、加圧タンク8の容量以下に設定される閾値を超えるまで加圧タンク8に給水を行ってから、オゾン生成器14を起動させて加圧タンク8より排水を行う。それから、加圧タンク8に再度給水を行うようにした。
【0027】
上述した洗い行程やすすぎ行程のみ行う場合の1回目のすすぎ行程等における最初の給水は、加圧タンク8が空の状態より開始される。そこで、最初は空の状態の加圧タンク8にある程度給水を行ってから排水するという先行動作をさせることで、オゾン生成器14が生成したオゾンを加圧タンク8内により早く導入できる。その後、再度満水まで給水を行うことでオゾンを溶解させた水を早い段階から給水することができる。
【0028】
尚、第4実施形態は、吸気弁13が電磁弁の場合であるが、これに代えて吸気弁13に例えばボール弁のような逆止弁を用いることができる。その場合は、給水を行う全ての行程について同様の制御を行っても良い。この場合、ステップS14,S16における「最初の給水」は、各行程における最初の給水となる。すなわち、逆止弁を使用すると、加圧タンク8への給水が停止すると同時に排水が開始されるので電磁弁のような制御ができない。しかしながら、給水を行う全ての行程に第4実施形態の制御を適用することで、より低コストである逆止弁を用いることが可能になる。
【0029】
(第5実施形態)
図16及び
図17に示す第5実施形態では、1つの行程において加圧タンク8への給水を複数回行う。例えば
図16に示すように、1回の給水における加圧タンク8を含む給水経路に対する給水量が20Lであり、20Lを超えてより多くのオゾンを溶解させた水を供給したい場合には、1回20Lの給水を複数回行うことで必要とされる最終給水量を満たすようにする。
【0030】
そのため、制御マイコン19は、ステップS1及びS2を実行すると、上記の最終給水量まで給水を行ったか否かを判断する(S17)。最終給水量まで給水していなければ(NO)ステップS3~S8を実行してステップS1に戻る。最終給水量まで給水していれば(S17;YES)、給水弁11を閉じて(S18)処理を終了する。
【0031】
(その他の実施形態)
加圧タンク8に給水を行った状態で、洗濯運転を終了させても良い。例えば、直ぐに次の洗濯運転が行われる場合には、加圧タンク8内の既にオゾンが溶解している水を洗濯運転に用いることができる。
各実施形態は回転軸が水平方向のドラム式洗濯機を例に説明したが、回転軸が縦方向の洗濯機に適用しても良い。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
図面中、1は洗濯機、4はドラム、7は給水口、8は加圧タンク、10は水入口、11は給水弁、12は気体入口、13は吸気弁、14はオゾン生成器、17はバブル発生ノズル、18は出水パイプ、19は制御マイコンを示す。