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特許7449858複数のケア環境にわたる継続したケアの提供
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】複数のケア環境にわたる継続したケアの提供
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20240307BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240307BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G16H50/00
A61B5/00 M
A61B10/00 Q
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020527021
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018061497
(87)【国際公開番号】W WO2019099812
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】62/587,337
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/693,810
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512286037
【氏名又は名称】ブルーイン、バイオメトリクス、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRUIN BIOMETRICS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、バーンズ
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211852(JP,A)
【文献】特開2006-330951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0319073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
A61B 5/00
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のケア環境から第二のケア環境に転所する間、褥瘡性潰瘍(PU)を発症するリス
クを有する患者に対して継続したケアを提供するシステムであって、該システムは、
a)表皮下水分(SEM)測定を行うために設けられたSEMスキャン装置と、
b)前記第一のケア環境から受ける転所記録、前記第一のケア環境において前記患者が受けるレベル-Kの現在のPU介入を含む転所記録と、
c)前記SEMスキャン装置と電気的に結合し、前記SEM測定を受けるために設けられた処理装置と、
d)前記処理装置と電気的に結合し、前記処理装置において実行される場合に下記のステップ:
i)前記第二のケア環境における患者の身体の場所の複数の表皮下水分(SEM)測定を受けるステップ、
ii)前記2つの複数のSEM測定の間の差によりデルタ値を算出するステップ、
iii)前記デルタ値が閾値を超えるか否かを決定するステップ、
iv)前記デルタ値が前記閾値を超えない場合に、前記現在のPU介入の施与を表示するステップ、および
v)前記デルタ値が前記閾値を超える場合に、レベル-Nの新規PU介入を表示するステップであって、前記NがKより大きい値を有するステップ
を実行する保存された指示を含む、持続性コンピュータ可読媒体
とを含む、前記システム。
【請求項2】
前記転所記録が、前記第一のケア環境における異なる時に実行された患者の複数のSEM測定の一部から算出されるデルタ値をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記転所記録が、前記患者のリスク評価、前記患者の少なくとも1つの身体の場所の目視皮膚評価、および少なくとも1つの身体の場所の画像からなる群から選択される少なくとも1つの評価から得られる結果をさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記転所記録が、前記第一のケア環境における患者の少なくとも1つの身体の場所の第一のSEMスキャンを実行することにより得られる結果をさらに含む、前記第一のSEMスキャンが、前記身体の場所におけるSEM値の複数の測定と、前記複数のSEM値からの第一のデルタ値の算出を含み、かつ前記転所記録がデータベースに保存される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記転所記録が、患者の識別名と、前記第一のSEMスキャンを実行したときの第一の日付および時刻とをさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、前記デルタ値が前記閾値を超えない場合に、レベル-Kに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うことを継続するステップ、および前記デルタ値が前記閾値を超える場合に、レベル-Nに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を受けるステップを実行する指示をさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記デルタ値の算出が、前記複数のSEM測定から選択される最大のSEM値と最小のSEM値との差を算出することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
a)前記第二のケア環境における前記患者の身体の場所における第二の複数のSEM測定を受けるステップ、および
b)第二のデルタ値を算出するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
a)前記患者の識別名と、前記第二のデルタ値と、前記第二のSEMスキャンを実行したときの第二の日付および時刻とを含む第二のデータ記録を作成するステップ、および
b)前記第二のデータ記録を前記データベース報告するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第二のデルタ値の算出が、前記第二の複数のSEM測定から選択される最大SEMと最小SEM値との差を算出することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
前記転所記録および前記第二のデータ記録において、前記患者の少なくとも1つの身体の場所の前記デルタ値および前記第二のデルタ値を前記データベースに問い合わせて、それぞれ検索したデルタ値を形式化するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
a)日付および時刻の順で、検索したデルタ値を形式化するステップ、および
b)前記形式化したデルタ値を表示するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
a)前記患者の識別名と、データ要素と、前記データ要素と関連する日付/時刻を含むさらなるデータ記録を作成するステップであって、前記データ要素が、栄養情報、実施した介入、リスク評価、目視皮膚評価、ケアプラン、医師のメモ、事象、生命徴候、体重およびラボラトリーでの1つ以上を含むステップ、および
b)前記さらなるデータ記録を、前記データベースに報告するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記形式化したデルタ値が、曲線の形で表示される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、前記検索したデルタ値を分析して、傾き、加速度、曲線形状およびそれに関連する特性、ならびに選択された閾値の時間に対する切片の1つ以上を決定するステップを実行する指示をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記加速度が、曲線の傾きの変化率によって決定される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
a)前記第二のケア環境における前記の患者の少なくとも1つの身体の場所の第三のSEMスキャンを実行して、第三の複数のSEM測定値を得るステップ、および
b)第三のデルタ値を算出するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項18】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、
a)前記患者の識別名、前記三のデルタ値、および前記第三のSEMスキャンを実行したときの第三の日付および時刻を含む第三のデータ記録を作成するステップ、および
b)前記第三のデータ記録を前記データベースに報告するステップ
を実行する指示をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記第三のデルタ値の算出が、前記第三の複数のSEM測定から選択される最大SEMと最小SEM値との差を算出することを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記持続性コンピュータ可読媒体が、前記処理装置において実行される場合において、前記データベースに問い合わせて、複数のケア環境および種々のケアのエピソードにわたって特定の患者に関して経時的に観察したデルタ値を検索するステップを実行する指示をさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
レベル-0のPU介入が、良好な栄養の提供、標準マットレスの提供、24時間毎の体位変換およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
レベル-1のPU介入が、前記患者へのヒールブーツの提供である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
レベル-2のPU介入が、前記患者の指示面の変更である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
レベル-3のPU介入が、前記患者の踵の後方または側面へのドレッシング材の付与である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
レベル-4のPU介入が、前記患者のシートカバーの低摩擦シートカバーへの変更である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
レベル-5のPU介入が、前記患者の下腿に対する低摩擦パッドのマットレス面の提供である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
レベル-6のPU介入が、現在提供されているよりも短い間隔での前記患者の体位変換である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
レベル-7のPU介入が、前記患者の踵への保護用クリームの塗布である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
レベル-8のPU介入が、前記患者の踵への神経筋刺激の付与である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
レベル-9のPU介入が、前記患者の踵への外用クリームの塗布による灌流の促進である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
レベル-10のPU介入が、患者の下腿に対するシリコーンパッドの提供である、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、2017年11月16日出願の米国仮特許出願第62/587,337号及び2018年7月3日出願の米国仮特許出願第62/693,810号の利益を請求する。これら出願の全体的な内容は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、患者が複数の環境においてケアを受ける場合に、患者の情報、特に褥瘡性潰瘍を発症するリスクに関連する情報、を転送及び取り扱うことでケアを改善する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、人体における最大の器官である。様々な種類の損傷及び外傷に容易に晒される。皮膚及びその周囲組織が外圧及び機械的力を再分配することができないと、潰瘍が形成され得る。例えば仰臥位患者の体重により生じた当該患者の背面側の皮膚表面における圧力であるような中程度の圧力に対してでさえも、長引く連続曝露により、褥瘡性潰瘍につながり得る。糖尿病により誘発される可能性がある神経障害及び末梢組織の衰弱等の他の損傷の存在下では、中程度の圧力及び応力に対する周期的な曝露に対してでさえも、潰瘍、例えば足部潰瘍につながり得る。
【0004】
褥瘡性潰瘍は、米国では年間およそ250万人が、EUでは同等の人数が、発症している。長期の救急環境では、高齢で不動の患者の最大25%が、褥瘡性潰瘍を発症している。褥瘡性潰瘍からの感染症及び他の合併症が原因で、年間、米国のおよそ60,000人の患者が亡くなっている。
【0005】
患者にとってのみならず社会にとって、皮膚が崩壊する前に組織損傷を検出して適切な治療法を介入することで、下層組織のさらなる悪化を回避することが望ましい。圧力誘発性の損傷を処置するための平均費用は、最も早期の視認できる徴候(ステージ1の潰瘍)では2,000ドルに過ぎないが、潰瘍が筋肉又は骨を露出するのに十分なほど深くなると(ステージ4の潰瘍)、これが129,000ドルに上昇する。現在のところ、患者は通常、褥瘡性潰瘍の汎用予防を受けるが、これは当該予防が任意の特定の解剖学的部位を狙ったものではないことを意味する。患者は、褥瘡性潰瘍が目視評価によって特定可能である点に達した後になってようやく、潰瘍の狙った局所的な処置を受ける。褥瘡性潰瘍を検出するための現在の標準は目視検査によるが、これは主観的であり、信頼性が低く、時期を得ず、かつ、特異度が低い。したがって、患者は皮膚の炎症、潰瘍の発症の徴候を抱えていたとしても、該患者は、発症中の潰瘍に対して狙った局所的な処置を受けることとはならない。代わりに、炎症が継続して本格的な潰瘍を発症することとなる。
【0006】
現在の実務においては、あるケア環境に到着した時に、患者の褥瘡性潰瘍を発症するリスクについて独立に評価が行われる。このように前のケア環境からの知識が不足することで、新しいケア環境で受けられるケアの質が低下し得る。
【発明の概要】
【0007】
一態様においては、本開示は、複数の表皮下水分(SEM)測定に基づいて、患者に対して適切なレベルの褥瘡性潰瘍のケアを特定及び提供する方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、患者は、SEM測定における変化に基づいて、褥瘡性潰瘍の次第に高くなっていく効果的な介入がもたらされる。ある態様においては、患者は、SEM測定における変化に基づいて、褥瘡性潰瘍に低強度の介入がなされる。
【0008】
ケア環境間を転所する間、患者に対して継続したケアを提供する方法であって、患者を第一のケア環境から第二のケア環境に転所することを決定するステップと、第一のケア環境において患者の第一の評価を実行するステップと、当該評価についての転所記録を作成するステップと、転所記録を患者と一緒に第二のケア環境に転送するステップと、を含む方法。
【0009】
ある態様においては、本開示は、褥瘡性潰瘍の処置を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、介護施設への入所時に患者の褥瘡性潰瘍のリスクについて患者を評価するステップであって、当該患者の第一の複数の表皮下水分(SEM)測定を行うことを含む上記評価するステップと、第一の複数のSEM測定の一部から第一のデルタ値を算出するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えるか否かを判断するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていなければレベル-0の第一の介入を施与するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nの第一の介入を施与するステップとを含むものであって、ここでNはある整数であり、またNは1以上の値を有するものである、上記方法を、提供し、且つ含む。さらなる態様においては、本開示は、施与される介入レベルに対応する第一の予め決定された頻度で、患者に第二の複数のSEM測定を行うことと、第二の複数のSEM測定の一部から第二のデルタ値を算出することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えるか否かを判断することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていなければ第一の介入の施与を継続することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていなければ第一の予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うことを継続することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていればレベル-Mの第二の介入を施与することであって、Mはある整数であり、またMはNより大きいものである、上記レベル-Mの第二の介入を施与することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていればレベル-Mに対応する第二の予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うこととを、提供し、且つ含む。またさらなる態様においては、本開示は、第二のデルタ値が第三の閾値未満であるか否かを判断することと、第二のデルタ値が第三の閾値未満であれば、かつ、第一の介入がレベル-0のものでなければ、レベル-(N-1)の介入を施与することと、第二のデルタ値が第三の閾値未満であればレベル-(N-1)に対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うこととを、提供し、且つ含む。
【0010】
一態様においては、本開示は、これを必要とする患者において褥瘡性潰瘍の発症の進行を遅らせる方法であって、患者が受けたレベル-Kの現在の介入を特定するステップと、患者の複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えるか否かを判断するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていなければ現在の介入の施与を継続するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていなければレベル-Kに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うことを継続するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nの新規介入を施与するステップであって、NはKより大きい値を有するものである、上記レベル-Nの新規介入を施与するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。さらなる態様においては、本開示は、デルタ値が第二の閾値未満であるか否かを判断することと、デルタ値が第二の閾値未満であればレベル-Lの介入を施与することであって、LはK未満のマイナスでない値を有するものである、上記レベル-Lの介入を施与することと、デルタ値が第二の閾値未満であればレベル-Lに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うこととを、提供し、且つ含む。
【0011】
ある態様においては、本開示は、褥瘡性潰瘍リスクに基づいて、介護施設における患者の群を層別化する方法であって、患者それぞれの複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、患者それぞれについて複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、各デルタ値がN個のケアレベルに対応する一組の閾値におけるいずれかの値を超えるか否かを判断して患者それぞれに対してあるケアレベルを割り当てるステップと、患者に割り当てられたケアレベルのそれぞれに基づいて患者の群を再編成するステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0012】
一態様においては、本開示は、介護施設に入所した患者の褥瘡性潰瘍の発生率を減らす方法であって、介護施設への入所時に褥瘡性潰瘍のリスクについて患者を評価するステップであって、当該患者の第一の複数の表皮下水分(SEM)測定を行うことを含む上記評価するステップと、第一の複数のSEM測定の一部から第一のデルタ値を算出するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えるか否かを判断するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていなければレベル-0の第一の介入を施与するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nの&介入を施与するステップとを含むものであって、ここでNはある整数であり、またNは1以上の値を有するものである、上記方法を、提供し、且つ含む。
【0013】
ある態様においては、本開示は、患者の踵に保護用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の踵において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の踵に保護用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば2時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0014】
一態様においては、本開示は、患者の踵に神経筋刺激の付与を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の踵において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の踵に神経筋刺激を施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば1時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0015】
ある態様においては、本開示は、患者の踵に外用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の踵において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の踵に外用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば30分毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0016】
一態様においては、本開示は、患者の仙骨に保護用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の仙骨において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の仙骨に保護用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば6時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0017】
ある態様においては、本開示は、患者の仙骨に神経筋刺激の付与を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の仙骨において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の仙骨に神経筋刺激を施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば4時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0018】
一態様においては、本開示は、患者の仙骨に外用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の仙骨において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の仙骨に外用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば2時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
特許又は出願のファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面を含む本特許又は本願の公報の写しは、申請して必要な手数料を納付すれば、特許庁により提供されることとなる。
【0020】
開示の態様は、本明細書において、単に例として、添付の図面を参照しながら説明される。ここで詳細な図面を具体的に参照して、図示される個々の事項は、例とするものであり、かつ、本開示の態様の説明的な議論を目的とするものであることを強調する。この点において、明細書及び図面により、単独で考慮されても組合せて考慮されても、当業者に対して、開示の態様がどのように実施され得るかということが明らかにされる。
【0021】
図1図1は、本開示に従う、介護施設の入所から介護施設の退所までの、SEM値に基づく褥瘡性潰瘍処置の選択処理全体の例を図示している。
【0022】
図2A図2Aは、本開示に従う、健常な組織の目視評価のサンプルである。
【0023】
図2B図2Bは、本開示に従う、健常な仙骨における及び健常な仙骨周辺の各場所において得られたSEM測定の平均値のプロットである。
【0024】
図3A図3Aは、本開示に従う、損傷組織の目視評価のサンプルである。
【0025】
図3B図3Bは、本開示に従う、損傷した仙骨における及び損傷した仙骨周辺の各場所において得られたSEM測定の平均値のプロットである。
【0026】
図4図4は、本開示に従う、SEM測定由来のデルタ値が閾値を超えた量に基づいて、介入レベルを選択してモニタリングする処理の図である。
【0027】
図5図5は、本開示に従う、現在の介入レベルと新規デルタ値とを用いて新規介入レベルを選択する、ワークフローガイダンスのマトリックスの例である。
【0028】
図6A図6A、6B及び6Cは、本開示に従う、褥瘡性潰瘍が発症している単一の場所における、1人の患者についてのデルタ値の経時的な進行の例を示す。
図6B】同上。
図6C】同上。
【0029】
図6D図6Dは、本開示に従う、褥瘡性潰瘍が発症している単一の場所における、1人の患者についての経時的なデルタ値の変化のプロットの例である。
【0030】
図7A図7A及び7Bは、本開示に従う、組織の損傷の区域をマッピングする方法の例である。
図7B】同上。
【0031】
図8A図8Aは、リスク評価及び目視評価を組み合せた、入院患者の褥瘡性潰瘍を予防するための、現在推奨されている処置決定経路の例である。
【0032】
図8B図8Bは、いくつかの医療施設で現在実施されているような、褥瘡性潰瘍を予防するための現在の拡大された処置決定経路の例である。
【0033】
図9図9は、本開示に従う、SEMスキャナが独立型の褥瘡性潰瘍予防処理においてどのように用いられ得るかについてのフローチャートの例である。
【0034】
図10図10は、本開示に従う、図8Bの拡大された処置決定経路をさらに改善する補助として、SEMスキャナがどのように用いられ得るかについてのフローチャートの例である。
【0035】
図11図11は、本開示に従う、複数のケア環境にわたる継続したケアを提供することの概念を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書は、この開示が実施され得る様々な手法の全て、又は、目下の開示に付加され得る特徴の全てについての詳細な目録となることを意図するものではない。例えば、一実施形態に従って説明された特徴は、他の実施形態に組み込まれてもよく、また特定の実施形態に従って説明された特徴は、その実施形態から削除されてもよい。すなわち、この開示は、この開示のいくつかの実施形態において、本明細書において明記された任意の特徴又は特徴の組合せを、除外するか又は省略することが可能であるということを意図する。さらに、当業者にとって、本明細書で示唆した種々の実施形態に対して、複数の変形及び付加が目下の開示に照らして明らかになることとなるが、これらは目下の開示から逸脱しない。他の例においては、周知の構造、インタフェース、及び処理については、この発明をいたずらに不明瞭にさせないために、詳細に示していない。この明細書のいずれの部分も、この発明の完全な範囲のあらゆる部分についての否認をもたらすものと解釈されないということを意図している。したがって、以下の説明は、この開示の一部の特定の実施形態を説明することを意図しており、またその全ての順序、組合せ及び変形を完全に特定しないことを意図している。
【0037】
別段に規定しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的かつ科学的な語は、この開示が属する技術分野における当業者が通常理解するのと同様の意味を有する。本明細書における説明の記載において用いられる専門用語は、特定の態様又は実施形態の説明のみを目的とし、開示を限定することを意図しているものではない。
【0038】
本明細書で引用する全ての公報、特許出願、特許及び他の参考文献は、言及が存在する文章及び/又は段落に関連する教示のためにそれらの全体が参照により援用される。本明細書において用いられる技術への言及は、この分野で通常理解される技術を指すことを意図しており、それら技術の変形、又は当業者に明らかとなる同等の技術の置換を含む。
【0039】
米国特許出願第14/827,375号(「‘375出願」)は、高周波(RF)エネルギーを用いて、バイポーラセンサにより表皮下の静電容量を測定する装置を開示するものであって、表皮下の静電容量は、患者の皮膚のターゲット領域の含水量に相当する。‘375出願はまた、種々のサイズのバイポーラセンサのアレイも開示する。
【0040】
米国特許出願第15/134,110号は、図3に示す装置に類似する表皮下水分(SEM)測定装置を開示し、当該装置は、単一の同軸センサ(coaxial sensor)を介して32kHzの周波数のRF信号を放射及び受信し、生体インピーダンス信号を生成して、次いでこの信号をSEM値に変換する。
【0041】
米国特許出願第14/827,375号及び第15/134,110号はいずれも、その全体が、参照により、本明細書に援用される。しかしながら、本願のSEM値は、当業者にとって明らかであるような任意の類似の若しくは同等の装置又は技術によって測定してもよい。例えば、本願のSEM値を測定する装置は、有線デバイス、無線デバイス、又は、互いに通信する種々の構成要素を備えるシステムであり得る。
【0042】
その文脈において別段に示さない限り、本明細書において記載する開示の種々の特徴は、任意の組合せで用いることが可能であることを特に意図している。さらに、本開示はまた、この開示の一部の実施形態において、本明細書に明示する任意の特徴又は特徴の組合せを除外又は省略することが可能であることを、意図している。
【0043】
本明細書において開示する方法は、記載の方法を達成するための1又は複数のステップ又は動作を、含む及び備える。方法のステップ及び/又は動作は、本開示の範囲から逸脱することなく、相互に交換してもよい。言い換えれば、実施形態の適切な操作のために、ステップ又は動作の特定の順序が要求されていない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、本開示の範囲から逸脱することなく、変形してもよい。
【0044】
本開示の記載及び添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈において別段に明示していない限り、同じく複数形を含むことを意図する。
【0045】
本明細書において用いる場合、「及び/又は(and/or)」は、関連して列記した項目のうちの1つ又は複数の可能性のある組合せのいずれか及び全てを指す及び包含するだけでなく、択一的(「又は(or)」)に解釈される場合には組み合わせない。
【0046】
本明細書において用いる場合「約(about)」及び「およそ(approximately)」の語は、例えば長さ、頻度、又はSEM値等の測定値を指す場合、特定の量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0047】
本明細書において用いる場合、例えば「X~Yの間」及び「約X~Yの間」等の句は、X及びYを含むものと解釈しなければならない。本明細書において用いる場合、例えば「約X~Yの間」等の句は「約X~約Yの間」を意味し、また「約XからYまで」等の句は、「約Xから約Yまで」を意味する。
【0048】
本明細書において用いる場合、「表皮下水分(sub-epidermal moisture)」又は「SEM」の語は、血管漏出、並びに、組織への継続的な圧力、アポトーシス、壊死、及び炎症プロセスの存在下において損傷した組織の根底にある構造を改変する他の変化によって引き起こされた組織液及び局所的な浮腫の増大を指す。
【0049】
本明細書において用いる場合、「患者」はヒト対象又は動物対象であり得る。
【0050】
本明細書において用いる場合、「デルタ」は、2つのSEM値間の算出された差を指す。
【0051】
本明細書において用いる場合、変数「K」、「L」、「M」及び「N」は、マイナスでない整数である。
【0052】
図1は、介護施設の入所から介護施設の退所までの、本開示に従った、SEMスキャナを用いて行ったSEM測定により生成されたSEM値に基づく、褥瘡性潰瘍処置を選択するための処理100の全体を図示している。ある態様においては、介護施設は、病院、介護付き住宅施設、居住介護施設、ナーシングホーム、長期介護施設、継続ケアコミュニティ、及び自立生活コミュニティからなる群から選択される。ある態様においては、介護施設は、患者の自宅又は他の住宅であってもよく、その場合、「入所」ステップ102は、看護師又は他の介護者による患者の自宅での患者の最初の評価となる。一態様においては、在宅環境において用いる介入のスケジュール及び評価間隔は、病院で用いる対応する介入及び間隔とは異なっていてもよい。
【0053】
ある態様においては、処理100において、新たに入所した患者は、ステップ104において受け入れ時評価を受けるが、これは、患者の皮膚の一部の目視検査と、栄養、可動性、身体活動性、体力、及びコミュニケーション能力のうちの1若しくは複数を評価するリスク評価プロトコルの少なくとも一部の完了と、患者の皮膚の1若しくは複数の場所において行うSEM測定とのうちの1つ又は複数を含む。ある態様においては、SEM測定は、患者の皮膚における単一の「場所」において、複数のSEM測定を行うことを含み得る。一態様においては、「場所」は、SEM測定がその場所の範囲内にある空間的に離間した点で行われ得るように、単一の点というよりもある区域と考えられる。例えば、「踵」の場所には、踵周辺の内側面、外側面、及び後方面のみならず、その足の裏の後方部分が含まれる。
【0054】
一態様においては、評価ステップが完了すると、患者が「逸脱」しているか否かについて、すなわち、評価の種々の要素の結果の組合せが、患者が褥瘡性潰瘍につながる可能性がある組織の損傷を有するか又は当該組織の損傷を発症するリスクがあることを示すか否かについて、ステップ106で判断がなされる。評価の各要素が、リスクのレベルに関する個々の基準、例えば容認できないリスクを示す閾値による採点システム、を有してもよい。ある態様においては、介入のレベルを選択するために用いることが可能である複合パラメータを生成する基準を組み合わせるプロトコルが存在する。
【0055】
ある態様においては、患者が容認できるリスクレベルであると判断されれば、処理は、本明細書において「レベル-ゼロ」又は「レベル-0」と表す最低レベルの介入を実施するステップ108に進む。ステップ110から112の処理に進むと、患者は、レベル-0に関連する頻度又は逆に言えば時間間隔で、ステップ114において少なくともSEM測定プロトコルを用いて再評価されることとなる。処理100は、次いで、ループ処理でステップ106に戻り、ステップ114で行われたSEM測定の結果を評価する。
【0056】
一態様においては、ステップ106において患者が逸脱していると判断されれば、次いで処理は、より高いレベルの介入を実施するステップ122に進む。ある態様においては、各レベルが次に低いレベルよりも効果的な介入を実施するようにされた、規定された階層の介入レベルが存在する。ある態様においては、各レベルはまた、一組のSEM測定がどのぐらいの頻度で行われるべきかを示す規定されたモニタリング間隔又は頻度を有するものであり、より高いレベルは、概して、より短い間隔を有することとなる。この例においては、上記処理は、この点ではレベル-1の介入へと1レベル上がるように、病院又は他の管理機関によって規定されていた。他の態様においては、ステップ122では、レベル-2又はそれより高いレベルの介入を実施してもよい。ここで処理は、ステップ130で開始される新たなループに入るものであって、患者はここで、レベル-Nの頻度でモニタリングされるようになるものであるが、Nは1からnの範囲にあり、nは規定された最高レベルの介入及びモニタリングである。
【0057】
ある態様においては、ステップ134で、患者の履歴を評価して、彼らの症状が改善しているか否かを判断する。例えばデルタ値の減少により明らかとなるように、患者の症状が改善していれば、次いで処理はステップ142に進む。この例においては、ステップ142は、現在のレベルの介入の実施を継続し、処理は、デルタ値が閾値より下に低下するまで、ステップ140からステップ130-132-134-142-140をループする。ある態様においては、デルタ値が減少に向かうときのデルタ値の大きさに基づいて、ステップ142において介入のレベルを下げることができる。
【0058】
一態様においては、ステップ134において患者に改善が見られなければ、処理はステップ138における介入のレベルを上げる方に進むが、ただしステップ136において、皮膚が崩壊していない、すなわち開放潰瘍になっていない場合にである。開放潰瘍になっていれば、ステップ144において、ここで開放創傷外周の周辺のSEMスキャンを行い、炎症、又は潰瘍の広がりを示す他の徴候をマッピングすることとなる。潰瘍自体は、ステップ148で処置し、この二次ループ144-146-148-150を、創傷が閉鎖するまで継続し、その際には処理はステップ130に戻る。
【0059】
ある態様においては、処理100のいずれかの時点において、患者の退所によりステップ118に進み、退所時又は転所時の患者の症状が文書化される。ある態様においては、ステップ118は、患者の身体における複数の場所のうちの1つにおける最後の組のSEM測定を含む。ある態様においては、これらの場所は、介入を受けなかった区域、及び従前にリスク有りとして特定されなかった区域を含む。ある態様においては、この情報は、受け入れ側の介護者に提供される。患者はその後、ステップ120において退所又は転所する。
【0060】
ある態様においては、本開示は、褥瘡性潰瘍の処置を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、介護施設への入所時に患者の褥瘡性潰瘍のリスクについて患者を評価するステップであって、当該患者の第一の複数の表皮下水分(SEM)測定を行うことを含む、上記評価するステップと、第一の複数のSEM測定の一部から第一のデルタ値を算出するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えるか否かを判断するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていなければレベル-0の第一の介入を施与するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nの第一の介入を施与するステップとを含むものであって、ここでNはある整数であり、またNは1以上の値を有するものである、上記方法を、提供し、且つ含む。
【0061】
一態様においては、第一の複数のSEM測定は、胸骨、仙骨、踵、肩甲骨、肘、耳、及び患者の他の肉づきのよい組織からなる群から選択される、1又は複数の解剖学的部位において及びその周辺で行う。ある態様においては、第一の複数のSEM測定は、測定を行う大まかな場所に基づいて、分析のためにサブグループに分けられる。一態様においては、第一の複数のSEM測定は、解剖学的部位周辺を中心とした1又は複数の同心円に位置した場所で行う。ある態様においては、第一の複数のSEM測定は、解剖学的部位からおよそ等距離にある直線上に位置する場所で行う。
【0062】
一態様においては、第一のデルタ値は、収集した第一の複数のSEM測定からの、最大のSEM値と最小のSEM値との差によって決定される。ある態様においては、第一のデルタ値は、第一の場所で行った測定の最大SEM平均と、第二の場所で行った測定の最小SEM平均との差によって決定される。一態様においては、第一のデルタ値は、行った場所によって規定されるサブグループで構成される第一の複数のSEM測定の一部について決定される。ある態様においては、ある場所における平均SEM値は、その場所で測定された、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又は10個以上のSEM値から得られる。一態様においては、第一のデルタ値は、ある中心線に対して2つの左右対称である場所において行った測定に由来するSEM値間の差によって決定される。
【0063】
ある態様においては、デルタ値は、複数の方法において、ある特定の場所において又はある特定の場所の近接する周辺において行った複数のSEM測定から算出され得る。ある態様においては、複数のSEM測定は、皮膚における予め決定されたパターン内で行われ、またデルタ値は、パターン内の予め決定された位置に関連するSEM値を、そのパターン内の他の位置で行われた最大のSEM値から減算することによって算出される。ある態様においては、複数のSEM測定は、皮膚における予め決定されたパターン内で行われ、またデルタ値は、パターン内の予め決定された位置に関連するSEM値を特定して、パターン内の他の位置で生じた最大SEM値を減算することによって、算出される。ある態様においては、平均SEM値は、単一の場所における複数のSEM測定によって生じた一組のSEM値の一部と、同一の組の平均値及び単一のSEM値間における最大の差として算出されたデルタ値とから算出され得る。ある態様においては、デルタ値は、一組のSEM値内における、最大のSEM値の最小のSEM値に対する比として算出してもよい。
【0064】
ある態様においては、第一の閾値は、約0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、又は7.5であり得る。一態様においては、第一の閾値は、0.1から8.0に及ぶものであり得、例えば、0.1から1.0、1.1から2.0、2.1から3.0、3.1から4.0、4.1から5.0、5.1から6.0、6.1から7.0、7.1から8.0、0.1から7.5、0.5から8.0、1.0から7.0、1.5から6.5、2.0から6.0、3.0から5.5、3.5から5.0、又は、4.0から4.5等である。ある態様においては、第一の閾値は、本明細書において提供される値に基づく因子又は倍数によって増減可能である。閾値は、設計によって限定されるものではなく、むしろ、当業者が、SEMの所与の単位に基づく予め決定された値を選択することができることとなるということが理解されるであろう。一態様においては、本開示の閾値は、測定が行われる患者の身体のうちの特定の部分、又は、例えば年齢、身長、体重、家族歴、民族、及び他の身体特性若しくは病状等の患者の1若しくは複数の特性に応じて、変動するものである。
【0065】
ある態様においては、Nは1から50に及ぶものであり得、例えば1から2、1から3、1から4、1から5、1から6、1から7、1から8、1から9、1から10、1から15、1から20、1から25、1から30、1から35、1から40、又は1から45等である。
【0066】
一態様においては、Nは、第一のデルタ値が第一の閾値を超えた量によって決定される。ある態様においては、(N+1)に設定されている閾値をデルタ値が超える量は、Nに設定されている閾値をデルタ値が超える量より大きい。一態様においては、(N-1)に設定されている閾値をデルタ値が超える量は、Nに設定されている閾値をデルタ値が超える量未満である。
【0067】
ある態様においては、レベル-1(N=1)の介入は、閾値の100%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0068】
ある態様においては、レベル-2(N=2)の介入は、閾値の150%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0069】
一態様においては、レベル-3(N=3)の介入は、閾値の200%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0070】
一態様においては、レベル-4(N=4)の介入は、閾値の250%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0071】
一態様においては、レベル-5(N=5)の介入は、閾値の300%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の295%以下、290%以下、285%以下、280%以下、275%以下、270%以下、265%以下、260%以下、255%以下、250%以下、245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0072】
一態様においては、レベル-6(N=6)の介入は、閾値の350%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の345%以下、340%以下、335%以下、330%以下、325%以下、320%以下、315%以下、310%以下、305%以下、300%以下、295%以下、290%以下、285%以下、280%以下、275%以下、270%以下、265%以下、260%以下、255%以下、250%以下、245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0073】
一態様においては、レベル-7(N=7)の介入は、閾値の400%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の395%以下、390%以下、385%以下、380%以下、375%以下、370%以下、365%以下、360%以下、355%以下、350%以下、345%以下、340%以下、335%以下、330%以下、325%以下、320%以下、315%以下、310%以下、305%以下、300%以下、295%以下、290%以下、285%以下、280%以下、275%以下、270%以下、265%以下、260%以下、255%以下、250%以下、245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0074】
一態様においては、レベル-8(N=8)の介入は、閾値の450%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の445%以下、440%以下、435%以下、430%以下、425%以下、420%以下、415%以下、410%以下、405%以下、400%以下、395%以下、390%以下、385%以下、380%以下、375%以下、370%以下、365%以下、360%以下、355%以下、350%以下、345%以下、340%以下、335%以下、330%以下、325%以下、320%以下、315%以下、310%以下、305%以下、300%以下、295%以下、290%以下、285%以下、280%以下、275%以下、270%以下、265%以下、260%以下、255%以下、250%以下、245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0075】
一態様においては、レベル-9(N=9)の介入は、閾値の500%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の495%以下、490%以下、485%以下、480%以下、475%以下、470%以下、465%以下、460%以下、455%以下、450%以下、445%以下、440%以下、435%以下、430%以下、425%以下、420%以下、415%以下、410%以下、405%以下、400%以下、395%以下、390%以下、385%以下、380%以下、375%以下、370%以下、365%以下、360%以下、355%以下、350%以下、345%以下、340%以下、335%以下、330%以下、325%以下、320%以下、315%以下、310%以下、305%以下、300%以下、295%以下、290%以下、285%以下、280%以下、275%以下、270%以下、265%以下、260%以下、255%以下、250%以下、245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0076】
一態様においては、レベル-10(N=10)の介入は、閾値の550%以下だけ閾値を超えるデルタ値、例えば閾値の545%以下、540%以下、535%以下、530%以下、525%以下、520%以下、515%以下、510%以下、505%以下、500%以下、495%以下、490%以下、485%以下、480%以下、475%以下、470%以下、465%以下、460%以下、455%以下、450%以下、445%以下、440%以下、435%以下、430%以下、425%以下、420%以下、415%以下、410%以下、405%以下、400%以下、395%以下、390%以下、385%以下、380%以下、375%以下、370%以下、365%以下、360%以下、355%以下、350%以下、345%以下、340%以下、335%以下、330%以下、325%以下、320%以下、315%以下、310%以下、305%以下、300%以下、295%以下、290%以下、285%以下、280%以下、275%以下、270%以下、265%以下、260%以下、255%以下、250%以下、245%以下、240%以下、235%以下、230%以下、225%以下、220%以下、215%以下、210%以下、205%以下、200%以下、195%以下、190%以下、185%以下、180%以下、175%以下、170%以下、165%以下、160%以下、155%以下、150%以下、145%以下、140%以下、135%以下、130%以下、125%以下、120%以下、115%以下、110%以下、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ閾値を超えるデルタ値、を有する患者に適用される。
【0077】
一態様においては、レベル-Nの介入は、レベル-0の介入よりも効果的である。ある態様においては、レベル-(N+1)の介入は、レベル-Nの介入よりも効果的である。一態様においては、レベル-(N-1)の介入は、レベル-Nの介入よりも効果が低い。
【0078】
ある態様においては、本開示の評価するステップは、目視評価を実行することをさらに含む。一態様においては、目視評価は、NPUAP(米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel))のガイドラインに従って実行する。
【0079】
一態様においては、本開示の評価するステップは、リスク評価を実行することをさらに含む。ある態様においては、リスク評価は、ブレーデン(Braden)スケール、Gosnellスケール、Nortonスケール、及びWaterlowスケールからなる群から選択される試験に従って実行する。
【0080】
ある態様においては、本開示は、施与される介入レベルに対応する第一の予め決定された頻度で、患者に第二の複数のSEM測定を行うことと、第二の複数のSEM測定の一部から第二のデルタ値を算出することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えるか否かを判断することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていなければ第一の介入の施与を継続することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていなければ第一の予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うことを継続することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていればレベル-Mの第二の介入を施与することであって、Mはある整数であり、またMはNより大きいものである、上記レベル-Mの第二の介入を施与することと、第二のデルタ値が第二の閾値を超えていればレベル-Mに対応する第二の予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うこととを、さらに提供し、且つ含む。
【0081】
一態様においては、予め決定された頻度は、少なくとも72時間毎に1回、少なくとも48時間毎に1回、少なくとも24時間毎に1回、少なくとも12時間毎に1回、少なくとも8時間毎に1回、少なくとも6時間毎に1回、少なくとも4時間毎に1回、少なくとも3時間毎に1回、少なくとも2時間毎に1回、少なくとも1時間毎に1回、及び少なくとも30分毎に1回からなる群から選択される。
【0082】
一態様においては、第二の複数のSEM測定は、段落0061に従って行う。ある態様においては、第二の複数のSEM測定は、第一の複数のSEM測定を行ったのと同一の場所で行われる。一態様においては、第二の複数のSEM測定は、第一の複数のSEM測定を行ったのと同一の場所のうちの一部で行われる。ある態様においては、第二の複数のSEM測定は、第一の複数のSEM測定を行った場所の近傍で行われる。一態様においては、第二の複数のSEM測定は、第一の複数のSEM測定を行った場所とは異なる場所で行われる。
【0083】
ある態様においては、第二のデルタ値は、収集された第二の複数のSEM測定からの最大SEM値と最小SEM値との差によって決定される。一態様においては、第二のデルタ値は、第一の場所で行った測定の最大SEM平均と第二の場所で行った測定の最小SEM平均との差によって決定される。一態様においては、第二のデルタ値は、行った場所によって規定されるサブグループで構成される第二の複数のSEM測定の一部について決定される。
【0084】
ある態様においては、第二の閾値は、約0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、又は7.5であり得る。一態様においては、第二の閾値は、0.1から8.0に及ぶものであり得、例えば0.1から1.0、1.1から2.0、2.1から3.0、3.1から4.0、4.1から5.0、5.1から6.0、6.1から7.0、7.1から8.0、0.1から7.5、0.5から8.0、1.0から7.0、1.5から6.5、2.0から6.0、3.0から5.5、3.5から5.0、又は4.0から4.5等である。ある態様においては、第二の閾値は、本明細書において提供される値に基づく因子又は倍数によって増減可能である。一態様においては、第二の閾値は、第一の閾値と同一とすることが可能である。ある態様においては、第二の閾値は、第一の閾値より大きいものとすることが可能である。一態様においては、第二の閾値は、第一の閾値未満とすることが可能である。
【0085】
ある態様においては、Mは2から50に及ぶものであり、例えば2から3、2から4、2から5、2から6、2から7、2から8、2から9、2から10、2から15、2から20、2から25、2から30、2から35、2から40、又は2から45等である。
【0086】
一態様においては、Mは第二のデルタ値が第二の閾値を超えた量によって決定される。ある態様においては、(M+1)に設定されている閾値をデルタ値が超える量は、Mに設定されている閾値をデルタ値が超える量より大きい。一態様においては、(M-1)に設定されている閾値をデルタ値が超える量は、Mに設定されている閾値をデルタ値が超える量未満である。
【0087】
ある態様においては、レベルMの介入は、NをMで置き換えた、段落0067から0076に従って選択される。
【0088】
一態様においては、本開示は、第二のデルタ値が第三の閾値未満であるか否かを判断することと、第二のデルタ値が第三の閾値未満であれば、かつ、第一の介入がレベル-0のものでなければ、レベル-(N-1)の介入を施与することと、第二のデルタ値が第三の閾値未満であればレベル-(N-1)に対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うこととを、さらに提供し、且つ含む。
【0089】
ある態様においては、第三の閾値は、約0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、又は7.5であり得る。一態様においては、第三の閾値は、0.1から8.0に及ぶものであり得、例えば、0.1から1.0、1.1から2.0、2.1から3.0、3.1から4.0、4.1から5.0、5.1から6.0、6.1から7.0、7.1から8.0、0.1から7.5、0.5から8.0、1.0から7.0、1.5から6.5、2.0から6.0、3.0から5.5、3.5から5.0、又は4.0から4.5等である。ある態様においては、第三の閾値は、本明細書において提供される値に基づく因子又は倍数によって増減可能である。一態様においては、第三の閾値は、第二の閾値と同一とすることが可能である。ある態様においては、第三の閾値は、第二の閾値より大きいものとすることが可能である。一態様においては、第三の閾値は、第二の閾値未満とすることが可能である。一態様においては、第三の閾値は、第一の閾値と同一とすることが可能である。ある態様においては、第三の閾値は、第一の閾値より大きいものとすることが可能である。一態様においては、第三の閾値は、第一の閾値未満とすることが可能である。
【0090】
ある態様においては、第二のデルタ値は、第三の閾値の0.1から99.5%とすることが可能であり、例えば第三の閾値の0.1から1%、0.1から5%、1から5%、5から15%、10から20%、15から25%、20から30%、25から35%、30から40%、35から45%、40から50%、0.1から25%、15から35%、25から50%、25から75%、45から55%、50から60%、55から65%、60から70%、65から75%、40から55%、50から75%、50から99.5%、70から80%、75%から85%、80から90%、85から95%、90から99.5%、65から85%、又は75から99.5%等である。
【0091】
一態様においては、本開示は、これを必要とする患者において褥瘡性潰瘍の発症の進行を遅らせる方法であって、患者が受けたレベル-Kの現在の介入を特定するステップと、患者の複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えるか否かを判断するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていなければ現在の介入の施与を継続するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていなければレベル-Kに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うことを継続するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nの新規介入を施与するステップであって、NはKより大きい値を有するものである、上記レベル-Nの新規介入を施与するステップと、デルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、これを必要とする患者は、ケアの変更、可動性の変化、栄養上の変更、感覚認知の変化、又はこれらの組合せを経験している患者である。一態様においては、これを必要とする患者は、開放潰瘍を発症している患者である。ある態様においては、これを必要とする患者は、開放潰瘍が回復している患者である。一態様においては、これを必要とする患者は、外科手術を受けている患者である。ある態様においては、これを必要とする患者は、外科手術中に脊椎麻酔又は仙骨麻酔を受けている患者である。一態様においては、これを必要とする患者は、例えば5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上、10時間以上、11時間以上、又は12時間以上等、4時間以上にわたって継続する外科手術を受けている患者である。ある態様においては、外科手術は、1時間以上、例えば2時間以上、又は3時間以上等、継続する。
【0092】
一態様においては、複数のSEM測定は、段落0061に従って行う。ある態様においては、デルタ値は、段落0062に従って決定される。一態様においては、第一の閾値は、段落0064に従って決定される。
【0093】
ある態様においては、Kは、2から50に及ぶものであり、例えば、2から3、2から4、2から5、2から6、2から7、2から8、2から9、2から10、2から15、2から20、2から25、2から30、2から35、2から40、又は2から45等である。
【0094】
ある態様においては、Kはデルタ値が閾値を超えた量によって決定される。ある態様においては、(K+1)に設定されている閾値をデルタ値が超える量は、Kに設定されている閾値をデルタ値が超える量より大きい。一態様においては、(K-1)に設定されている閾値をデルタ値が超える量は、Kに設定されている閾値をデルタ値が超える量未満である。
【0095】
ある態様においては、レベルKの介入は、NをKで置き換えた、段落0067から0076に従って選択される。
【0096】
ある態様においては、本開示は、デルタ値が第二の閾値未満であるか否かを判断することと、デルタ値が第二の閾値未満であればレベル-Lの介入を施与することであって、LはK未満のマイナスでない値を有するものである、上記レベル-Lの介入を施与することと、デルタ値が第二の閾値未満であればレベル-Lに対応する予め決定された頻度で複数のSEM測定を行うことと、をさらに提供し、且つ含む。
【0097】
ある態様においては、第二の閾値は、段落0084に従って決定される。
【0098】
ある態様においては、Lは、K-1、K-2、K-3、K-4、K-5、K-6、K-7、K-8、K-9、又はK-10とすることが可能である。一態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の90から99.5%であれば、例えば第二の閾値の90から95%、91から96%、92から97%、93から98%、94から99%、又は95から99.5%等であれば、Lが0となることとなるK-1が0未満でない限り、K-1である。ある態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の80から89.9%であれば、例えば第二の閾値の80から85%、81から86%、82から87%、83から88%、84から89%、又は85から89.9%等であれば、Lが0となることとなるK-2が0未満でない限り、K-2である。一態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の70から79.9%、例えば第二の閾値の70から75%、71から76%、72から77%、73から78%、74から79%、又は75から79.9%等であれば、Lが0となることとなるK-3が0未満でない限り、K-3である。ある態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の60から69.9%であれば、例えば第二の閾値の60から65%、61から66%、62から67%、63から68%、64から69%、又は65から69.9%等であれば、Lが0となることとなるK-4が0未満でない限り、K-4である。一態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の50から59.9%であれば、例えば第二の閾値の50から55%、51から56%、52から57%、53から58%、54から59%、又は55から59.9%等であれば、Lが0となることとなるK-5が0未満でない限り、K-5である。ある態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の40から49.9%であれば、例えば第二の閾値の40から45%、41から46%、42から47%、43から48%、44から49%、又は45から49.9%等であれば、Lが0となることとなるK-6が0未満でない限り、K-6である。一態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の30から39.9%であれば、例えば第二の閾値の30から35%、31から36%、32から37%、33から38%、34から39%、又は35から39.9%等であれば、Lが0となることとなるK-7が0未満でない限り、K-7である。ある態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の20から29.9%であれば、例えば第二の閾値の20から25%、21から26%、22から27%、23から28%、24から29%、又は25から29.9%等であれば、Lが0となることとなるK-8が0未満でない限り、K-8である。一態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の10から19.9%であれば、例えば第二の閾値の10から15%、11から16%、12から17%、13から18%、14から19%、又は15から19.9%等であれば、Lが0となることとなるK-9が0未満でない限り、K-9である。ある態様においては、Lは、デルタ値が第二の閾値の0.1から9.9%であれば、例えば第二の閾値の0.1から5%、1から6%、2から7%、3から8%、4から9%、又は5から9.9%等であれば、Lが0となることとなるK-10が0未満でない限り、K-10である。
【0099】
ある態様においては、本開示は、褥瘡性潰瘍リスクに基づいて、介護施設における患者の群を層別化する方法であって、患者それぞれの複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、患者それぞれについて複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、各デルタ値がN個のケアレベルに対応する一組の閾値におけるいずれかの値を超えるか否かを判断して患者それぞれに対してあるケアレベルを割り当てるステップと、患者に割り当てられたケアレベルのそれぞれに基づいて患者の群を再編成するステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0100】
一態様においては、本開示は、介護施設に入所した患者の褥瘡性潰瘍の発生率を減らす方法であって、介護施設への入所時に褥瘡性潰瘍のリスクについて患者を評価するステップであって、当該患者の第一の複数の表皮下水分(SEM)測定を行うことを含む上記評価するステップと、第一の複数のSEM測定の一部から第一のデルタ値を算出するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えるか否かを判断するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていなければレベル-0の第一の介入を施与するステップと、第一のデルタ値が第一の閾値を超えていればレベル-Nの第一の介入を施与するステップとを含むものであって、ここでNはある整数であり、またNは1以上の値を有するものである、上記方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、介護施設における患者の潰瘍の発生率は、100人に1人未満、200人に1人未満、300人に1人未満、400人に1人未満、500人に1人未満、600人に1人未満、700人に1人未満、800人に1人未満、900人に1人未満、又は1000人に1人未満、に減少する。
【0101】
ある態様においては、本開示は、患者の踵に保護用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の踵において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の踵に保護用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば2時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、複数のSEM測定は、デルタ値が閾値を超えていれば少なくとも1時間毎に1回、又は少なくとも30分毎に1回、行われる。
【0102】
一態様においては、本開示は、患者の踵に神経筋刺激の付与を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の踵において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の踵に神経筋刺激を施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば1時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、複数のSEM測定は、デルタ値が閾値を超えていれば少なくとも30分毎に1回行う。
【0103】
ある態様においては、本開示は、患者の踵に外用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の踵において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の踵に外用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば30分毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。
【0104】
一態様においては、本開示は、患者の仙骨に保護用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の仙骨において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の仙骨に保護用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば6時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、複数のSEM測定は、デルタ値が閾値を超えていれば少なくとも4時間毎に1回、少なくとも3時間毎に1回、少なくとも2時間毎に1回、少なくとも1時間に1回、又は少なくとも30分毎に1回、行う。
【0105】
ある態様においては、本開示は、患者の仙骨に神経筋刺激の付与を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の仙骨において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の仙骨に神経筋刺激を施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば4時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、複数のSEM測定は、デルタ値が閾値を超えていれば少なくとも3時間毎に1回、少なくとも2時間毎に1回、少なくとも1時間に1回、又は少なくとも30分毎に1回、行う。
【0106】
一態様においては、本開示は、患者の仙骨に外用クリームの塗布を必要とする患者を特定及び処置する方法であって、患者の仙骨において複数の表皮下水分(SEM)測定を行うステップと、複数のSEM測定の一部からデルタ値を算出するステップと、レベルNに対応する閾値をデルタ値が超えるか否かを判断するステップであって、Nは2以上である、上記判断するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば患者の仙骨に外用クリームを施与するステップと、デルタ値が閾値を超えていれば2時間毎に複数のSEM測定を行うステップとを含む方法を、提供し、且つ含む。ある態様においては、複数のSEM測定は、デルタ値が閾値を超えていれば少なくとも1時間に1回、又は少なくとも30分毎に1回、行う。
【0107】
ある態様においては、本開示の方法は、米国特許出願第14/827,375号及び第15/134,110号において開示の装置を用いて実行される。一態様においては、含水量は、予め決定されたスケールでのSEM値と同等である。ある態様においては、予め決定されたスケールは、0から20に及ぶものであり得、例えば0から1、0から2、0から3、0から4、0から5、0から6、0から7、0から8、0から9、0から10、0から11、0から12、0から13、0から14、0から15、0から16、0から17、0から18、0から19等である。一態様においては、予め決定されたスケールは、本明細書において提供される値に基づく因子又は倍数によって増減可能である。
【0108】
ある態様においては、本開示は、目視評価及びSEMスキャン測定の組合せによって損傷しているものとして特定された患者の解剖学的場所に対して、狙った処置を提供することを、さらに提供し、且つ含む。一態様においては、狙った処置は、つま先、踵、仙骨、脊椎、肘、肩甲骨、後頭部、及び坐骨結節とからなる群から選択される、褥瘡性潰瘍の好発部位に提供される。ある態様においては、狙った処置は、つま先、踵、仙骨、脊椎、肘、肩甲骨、後頭部、及び坐骨結節とからなる群から選択される、褥瘡性潰瘍の第二の好発部位に、同時に提供される。一態様においては、狙った処置を受ける第一の部位は、第二の部位における褥瘡性潰瘍の発症を引き起こすことで知られている。
【0109】
本開示は、以下の実施例によって説明される。本明細書で明示する実施例は本開示のいくつかの態様を説明するものであるが、いかなる手法によっても本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【実施例
【0110】
実施例1:踵における褥瘡性潰瘍を処置するための介入レベル
【0111】
踵に褥瘡性潰瘍のリスクがあるとして特定した対象を、以下のスキームに従って処置した:
【0112】
【表1】
【0113】
実施例2:仙骨における褥瘡性潰瘍を処置するための介入レベル
【0114】
仙骨に褥瘡性潰瘍のリスクがあるとして特定された対象を、以下のスキームに従って処置した:
【0115】
【表2】
【0116】
実施例3:仙骨におけるレベル-0の介入を必要とする患者の特定
【0117】
患者は、SEM測定を測定可能である装置を用いて、仙骨の骨ばった隆起において及びその周辺に、複数のSEM測定を受けた。測定を実行する前に、患者の皮膚表面上の表面水分と物質とを除去した。上記装置の電極を、十分な圧力で患者の皮膚に当て、およそ1秒間の完全な接触を確実にし、各SEM測定を得た。
【0118】
SEM測定は、患者の仙骨を横断する直線上で行った。複数の測定を、ある所与の測定場所において行った。図2Aは、健常な組織の目視評価のサンプルである。図2Bは、各場所において行ったSEM測定の平均値の対応するプロットである。閾値は0.5を選択した。デルタ値は、最大平均SEM値と最小平均SEM値との差として算出し、これは0.5未満となるように決定した。SEMデルタ値が閾値を下回ったため、患者は、レベル-0の介入を必要とするものと特定した。したがって、患者は、標準マットレスに寝かせ、24時間毎に体位変換した。
【0119】
さらなるSEM測定を、退所するまで24時間毎に行った。介入レベルに変化はなかった。
【0120】
実施例4:仙骨におけるレベル-nの介入を必要とする患者の特定
【0121】
患者は、実施例3に記載したのと同様の手順に従って、仙骨を横断する直線上で行われる複数のSEM測定を受けた。
【0122】
図3Aは、損傷した組織の目視評価のサンプルである。図3Bは、各場所において行ったSEM測定の平均値の対応するプロットである。閾値は0.5を選択した。デルタ値は、最大平均SEM値と最小平均SEM値との差として算出し、これは0.5を上回るものとして決定した。SEMデルタ値が閾値を200%以上超えていたため、患者は、レベル-8の介入を必要とするものと特定した。したがって、患者は、シリコーンパッドに寝かせ、閾値の170%未満のSEMデルタ値が観察されるまで1時間毎にモニタリングし、その時点で、患者をレベル-7の介入に切り替えた。
【0123】
実施例5:介入及びモニタリングのレベルの選択処理の例
【0124】
図4は、SEM測定由来のデルタ値が閾値を超えた量に基づいて、介入及びモニタリングのレベルを選択する処理400の図である。ここで、ステップ402において、介護者が、SEMスキャナを用いて患者の皮膚におけるある場所で、各測定で1つのSEM値が生成される複数のSEM測定を行った。ステップ404において、これらSEM値の一部を用いて、デルタ値「Δ」を算出した。デルタ値は、複数のSEM測定より生成された、最小SEM値を最大SEM値から減算することによって算出した。
【0125】
ステップ406において、算出したデルタ値を閾値「T」と比較した。デルタ値が閾値以下であれば、ステップ408が実行されて、介護者は、現在のケアレベルに関連するモニタリング間隔が発生するまで待機し、次いでステップ402においてSEM測定を繰り返した。デルタ値が閾値より大きければ、デルタ値が閾値を超えた量を、カスケード状の一連の異なる値と比較した。
【0126】
一部の例においては、デルタ値はプラスであり、比較は、閾値をデルタ値から減算することによって実行されたが、それはプラスの差を生じ、次いでその差がステップ410において第一の差D1を超えるか否かについての判断がなされた。この差がD1未満であれば、処理はステップ412、次いでステップ414に進み、それぞれがレベル-N+1に関連する、介入と測定間隔とが実施された。この実施例において、Nはゼロ以上の値であった。
【0127】
一部の例においては、例えば図3Bにおけるデータの中心位置でのSEM測定が、図3Bにおける最も左の場所から最も右の場所にあるSEM値の平均値から減算されれば、デルタ値はマイナスである。その場合、Dnを通る差Dl、D2は、プラスのデルタ値のために用いたDnを通る対応する差の値D1、D2とは異なる絶対値を有することになるマイナスの値を有するように選択した。あるいは、ステップ410、420及び430における比較を、図4に示した「≧」の代わりに、「≦」に変更した。
【0128】
実施例6:ワークフローガイダンスのマトリックス
【0129】
図5は、現在の介入レベル502と新規デルタ値504とを用いて新規の介入レベル506を選択する、ワークフローガイダンスのマトリックス500の例である。ここで、介護者は、患者の皮膚における1又は複数の場所において周期的に複数のSEM測定を行うことによって患者の症状をモニタリングした。これら測定の時点で、患者は、あるレベルの介入及びモニタリングに関連したケアを受けた。この実施例において、レベル-0(ゼロ)は、褥瘡性潰瘍の発症に有意なリスクがあるとみなされなかった患者に関連する。より高いレベルの介入及びモニタリングは、例えば費用、実施の困難性、又は介護施設によって特定される他のパラメータに従って順位付けられた介入の段階によって特定された。介護者が、新しい組のSEM測定を行っているとき、彼らは、現在の介入レベル502の行を特定することによってこのマトリックスを調べ、デルタ値は、直近の組のSEM測定504から決定し、また行502と列504とが交差するセル506にある介入レベルを特定した。介護者は、特定された介入レベルのみならず、次の時間間隔のためのあるレベルの介入を選択する際に現在の介入レベル及びデルタの値を、検討することができた。
【0130】
一部の例においては、セル506における新規の介入レベルの値は、行間で類似していた。一部の例においては、隣接し合うセル506における新規の介入レベルの値は、1レベルだけ又は1レベル以上だけ異なっていた。一部の例においては、隣接し合うセル506における新規の介入レベルの値は、隣接のし合うセルにおいて同一であった。
【0131】
実施例7:褥瘡性潰瘍につながる組織状態の進行
【0132】
図6A、6B及び6Cは、褥瘡性潰瘍につながる組織状態の経時的な進行の説明的な非限定的な例を図示している。図6Aは、健常組織600の断面を図示しており、角質層602と表皮/真皮における健常細胞604とを含む。SEMスキャナの中心電極606と環状電極(toroidal electrode)と608を、角質層602と接触させた状態の断面で示している。SEMスキャナの高感度領域の説明的な表示を、楕円領域610として示している。この領域610は、ある深さの感度を有する。一部の例においては、感度の深さは、0.14 0.16インチの範囲にある。一部の例においては、感度の深さは、0.16インチ未満である。
【0133】
図6Bは、わずかに損傷した組織620の説明的な断面を示す。例えば低レベルの圧力が長期間与えられた結果により生じる、細胞の損傷は、組織に影響を及ぼしている。理論に制限されることなく、細胞622の一部は破裂し、細胞間隙624に液体内容物を放出する。あるいは、また理論に制限されることなく、炎症反応により、液体が細胞間隙624へと移動させられる。この損傷は、皮膚表面上で視認できない。
【0134】
図6Cは、より進行したレベルの損傷の説明的な断面640である。理論に制限されることなく、ここで組織は、大部分で細胞622が破裂するが、これは継続して加わる圧力を伝達する小規模な機械的構造をもたらすことが可能である。組織の厚みが減少するとともに、ここで骨642は皮膚表面に対してより接近する。破裂した細胞622と、細胞間隙624とが圧迫され、矢印646で示すように液体644が局所組織から押し出される。
【0135】
図6Dは、褥瘡性潰瘍が発症しているある単一の場所における1人の患者のデルタ値の説明的なプロット660である。SEM値は、SEMスキャナによって測定した。デルタ値は、増加していく時間(incremental time)で行ったSEM測定の組から生成した。点672は時間=ゼロにおける測定であって、このときSEM値の全ては健常組織と関連するベースライン値を有し、且つ、デルタ値はゼロである。時間t1では、別の組のSEM測定を行い、また関連するデルタ値は点674で示した。このデルタ値は、閾値662を下回っており、ゆえに有意な表面下の損傷の示すものではなかった。
【0136】
時間t2では、損傷が進行して、デルタ値676は閾値662より大きく、有意な損傷があることを示した。この損傷はまだ、皮膚上で視認できなかった。それでも、デルタ値が閾値662より大きいことが、SEMスキャナの感度の深さよりも浅い深さに細胞の損傷があることを示した。
【0137】
時間t3では、損傷は継続したものの、図6Cに示したような機械的な押し出しが原因で、細胞間隙の液体量は減少した。これにより、損傷した区域にわたって取得したSEM値は減少し、これは健常組織のSEM値が従前の測定中のものとほとんど同じままであったことを理由に、算出されたデルタ値678を減少させた。
【0138】
時間t4では、図3Aに示したような、皮膚表面で視認されるところまで損傷が進行した。一部の例においては、時間t4は、t2及びt3の一方又は両方より前に発生し得る。一部の例においては、時間t4は、デルタ値が時間t3の後かつt5より前に曲線670に沿って再びゼロに到達した後で発生し得る。矢印665は、時間t4後に損傷が視認可能なままであったことを示している。一部の例においては、組織は、時間t4後は「ステージ1」の褥瘡性潰瘍であるとみなされ得る。
【0139】
時間t5においては、損傷した区域にわたって行われたある測定のSEM値が健常組織のSEM値より小さいものであった局所組織から、十分な液体が押し出されたところまで損傷が進行した。図3Bに示したように、これにより、結果としてデルタ値680がマイナスになった。一部の例においては、マイナスのデルタは、組織が深刻な損傷であることを示すものとなる。一部の例においては、マイナスのデルタは、最低SEM値の場所で組織の一部が壊死していることを示すだろう。
【0140】
実施例8:生じ得る損傷の区域のマッピング方法I
【0141】
図7Aは、生じ得る損傷の区域のマッピング方法の例である。損傷区域700は、健常組織708によって囲まれていた。中心区域730は、有意に損傷していた。第一の周囲区域720は損傷が少なく、また第二の周囲区域710は損傷が少なかったもののそれでも健常組織ではなかった。これら区域の全てを覆う皮膚は、同様の外観と質感であり、表面下の損傷を示すものではなかった。一連の破線円740、742、744、746、748、及び750は、SEM測定を行った一組の場所の例を示す。場所740、742、及び750で行ったSEM測定は、概して、健常組織に関連するSEM値を生じ、この実施例内において「H」と特定した。場所744及び748で行ったSEM測定は、概して、Hよりわずかに大きいSEM値「J」を生じた。場所746で行ったSEM測定は、概して、Jより大きいSEM値「P」を生じた。これら測定の全ては、個々の場所がこの場所にわたって空間的に分散していたとしても、患者の身体における単一の「場所」において、例えば仙骨において、行ったものとみなした。この組のSEM値について、この組の範囲内における、おそらく場所746で発生する最大SEM値と、おそらく場所740、742、及び750のうちの1つで発生する最低SEM値との差を、デルタとした。デルタが閾値「T」より大きい場合、このことがこの場所に有意な損傷があることを示した。最大の損傷の正確な場所は、最大のSEM値を生じた測定場所746に近接している可能性が高かった。
【0142】
実施例9:生じ得る損傷の区域のマッピング方法II
【0143】
図7Bは、生じ得る損傷の区域のマッピングの第二の例を示す。この実施例において、最大の損傷のおおよその場所は、例えば図7Aに示す方法を先行して適用することによりわかっていた。この方法の意図は、区域710と区域720との境界をマッピングして損傷の範囲を決定することであった。簡単のため、各区域内の測定によって生じたSEM値は同じであり、またSEM値は、区域710から区域720へ次いで区域730へと増大した。第一のSEM測定は、最大の損傷のおおよその場所であることがわかっていた、場所760で行った。続く測定は、経路780で示す順で、場所762、764、766、及び768で行った。場所764で生じたSEM値は、場所762及び766で生じたSEM値よりわずかに大きく、場所764が部分的に区域720の範囲内にあった一方で、場所762及び766は完全に、より損傷が少ない区域710の範囲内にあったことを示した。境界は、種々の測定場所間で補間することによって近似することができた。例えば、場所770で生じたSEM値は、それが完全に区域720の範囲内にあることを示唆するのに十分大きかったため、区域710と720との境界を特定するのに役立たなかった。ゆえに、続く場所772は、開始場所760からまったく離れていた。この実施例において場所760は、ここで完全に区域710の範囲内にあるため、区域710と720との境界は、場所770と772との間にあるとして補間することができた。場所774における測定で生じたSEM値は、場所770からのSEM値と類似していたので、それは、場所772に相当するある場所で別の測定を行わずに、場所774の外側としての境界を特定するのに十分とすることができた。
【0144】
この組の測定により、例えば区域720である、特定のレベルの損傷のマップを作成することが可能となった。このマッピング処理を規則的な時間間隔で繰り返すことにより、介入のレベルを上げることが適切であるということを示し得る、区域720が拡大しているか、又は、現在の介入のレベルが損傷の治癒を可能にしているということを示し得る、区域720が縮小しているか、についての表示をもたらすこととなる。
【0145】
実施例10:患者の層別化及び適切な処置の提供のための処置決定経路
【0146】
図8Aは、国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence)(NICE)が2014年4月23日発行の当該機構の臨床ガイドライン Pressure ulcers:prevention and managementに提示するとおりの、入院患者における褥瘡性潰瘍を予防するための現在推奨されている処置決定経路を概説している。ガイドラインは、例えば可動性が有意に制限される、感覚を有意に喪失している、これまで若しくは現在の褥瘡性潰瘍、栄養障害、自力での体位変換不能、又は有意な認知機能障害等の1又は複数のリスク因子を呈する、介護施設に入所した全ての患者毎にリスク分析を実行することを推奨した。リスク評価は通常、特定のリスク因子の重症度を評価する、例えばブレーデンスケール等の、採点によるチェックリストを用いて行われる。
【0147】
リスク評価が完了すると、患者は、(i)褥瘡性潰瘍の発症のリスクが低い、(ii)褥瘡性潰瘍の発症のリスクがある、又は(iii)褥瘡性潰瘍の発症のリスクが高い、と特定される。患者は、リスクのレベルに応じて、有するとおりに分類され、患者は、様々な手順の処置及び目視評価による評価を受ける。
【0148】
全ての患者は、潜在的に褥瘡性潰瘍の発症のリスクがある。彼らは、重病である、又は神経学的疾患、運動障害、栄養障害、悪い姿勢、若しくは変形がある人々において、より発生しやすい。
【0149】
褥瘡性潰瘍は、ステージ1からステージ4に分類され、ステージ1が最も小さい症状である。NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)は、「ステージ1」の潰瘍を、局所的な区域の消退しない(non-blanchable)紅斑を伴った無傷の皮膚と規定しており、「消退する(blanchable)」とは、圧迫したときに組織の赤みが全て喪失することを示しており、「消退しない(non-blanchable)」組織は、血管の外側に赤血球が存在すること(血管外遊走)に起因して、圧迫したときに赤いままである。一部の患者においては、消退する紅斑又は、感覚、体温若しくは堅さの変化が、視認可能な変化よりも先行し得る。
【0150】
目視による皮膚評価(VSA(visual skin assessment))が、現在の褥瘡性潰瘍特定方法である。訓練された医療従事者が、皮膚の外観を視覚的及び触覚的に評価し、赤み、又は、組織の堅さ、組織温若しくは水分における変動を探る。
【0151】
患者が褥瘡性潰瘍の発症のリスクが低いと特定される場合、患者は単に、例えば外科手術を受ける、基礎疾患の悪化又は可動性の変化等の、臨床状態における変化に対してモニタリングされる。長時間車椅子を使用するか又は座位である患者は、高性能フォームクッション又は同等の体圧分散クッションを与えてもよい。臨床状態に変化がなければ、低リスクの患者は、このセットのガイダンスの下で再評価することにならず、当該患者が介護施設を退所するまで、同じ処置及び評価の経路のままである。
【0152】
患者が褥瘡性潰瘍の発症のリスクがあるとして特定される場合、患者は、6時間毎に体位変換、すなわち「向きを変える」ことを予定されることとなる。低リスク患者の場合のように、患者が長時間車椅子を使用するか又は座位であるならば、高性能フォームクッションを与えてもよい。他のモニタリング又は介入は、NICEガイドラインで推奨されていない。
【0153】
高リスク患者は、予防的措置として高性能フォームマットレスを与えられ、当該患者が長時間車椅子を使用するか又は座位であるならば、高性能クッションが与えられ、そして4時間毎に体位変換されることとなる。患者は、身体の全ての区域に対して毎日VSAを受けることとなる。消退しない紅斑を有する区域が発見された場合、適切な介入が実施されることとなり、当該区域は2時間毎にVSAにより再確認される。消退しない紅斑を呈さない区域は、毎日VSAにより再確認される。高リスク患者それぞれに対して、個人用のケアプランが開発されることとなる。
【0154】
このフローチャートから、介護者が費やす時間の大半が高リスク患者に対するものであることとなることがわかる。これは適切であり得るが、リスク有りの患者はモニタリングされないままであり、当該患者は、介護者によって症状が観察される前にステージ1の潰瘍を発症するかもしれない。さらに、問題を検知するためにVSAに依存することでもたらされる結果として、介入が選択又は実施される前に、患者が、ステージ1の潰瘍を発症することとなることが必然的に意味される。損傷がステージ1に進行する時までに、介入にもかかわらず皮膚は崩壊して、ステージ2の潰瘍になることとなる可能性が高い。介入により、表皮下の損傷がステージ1に、またそれを超えて進行することを予防できるように、より早期に組織の損傷を特定することが明らかに必要である。
【0155】
図8Bは、一部のヘルスケア施設で現在実施されている、褥瘡性潰瘍予防のための、現在の拡大された処置決定経路の例である。当該拡大された経路は、リスク有り及び低リスクの両経路に、モニタリングステップが加わる。低リスク患者は毎週のリスク評価を受け、例えばブレーデンスケール評価が遂行される。初回の評価でリスク有りと特定された患者は、予防的措置として高性能フォームマットレスを与えられることとなり、またVSAにより毎日評価されることとなる。当該リスク有り患者のモニタリング及び処置のために、ケアプランが開発されることとなる。高リスク患者であれば、ケアに変更はない。
【0156】
拡大されたプランは、褥瘡性潰瘍に関して全患者の基本的なモニタリングを提供するという利点がある。しかしながら、追加のステップにより、人員を追加することや既存の人員にさらに負担をかけることによって、さらなる時間が必要となる。図8Bのケア経路は、図8Aの推奨されるケア経路より優れているが、より多くの資源を必要とし、さらにVSAで損傷を特定する前に患者がステージ1の潰瘍を必ず発症するという制限に未だ悩まされる。
【0157】
種々の病院及び介護施設は、低リスク及びリスク有りという2つの分類から、図8Bの例にある分類に「超高リスク」等の分類を加えた4以上の分類にわたる、様々な数のリスク分類を用いる。患者は、初回リスク評価の結果に基づいて、種々の分類に割り当てられる。
【0158】
図9は、本開示に従う、SEMスキャナが独立型の褥瘡性潰瘍予防処理においてどのように用いられ得るかについてのフローチャートの例である。入所してくる患者の全てが、モニタリングのために選択した身体の場所全てについての完全なSEMスキャナ評価を受ける。これら選択した場所は、仙骨及び両踵等である、SEMスキャナの使用説明書(IFU)において推奨される区域を含んでもよい。さらなる場所が、病院によって特定され、また病院内の実務に統合され得る。複数のSEM測定は、互いに離間した位置において、身体の各場所において及びその周辺で行われるが、このことは、概して、身体の場所において複数の測定を行うと呼ぶ。SEMスキャナにより、その場所において及びその周辺で行われる測定の組から、各場所についての「デルタ」値が算出される。その後デルタ値を1又は複数の閾値と比較して、患者を分類する。この実施例においては、患者は、2つのリスク分類:低リスク及びリスク有り、のうちの一方に割り当てられる。
【0159】
ある態様においては、臨床医は、第一の時間間隔において、初回SEMスキャンにおいて生じ得る損傷を有するとして特定された身体の場所のSEMスキャンを実行することとなる。臨床医はまた、第一の時間間隔よりも長い第二の時間間隔でモニタリングするために選択された他の身体の場所全てのSEMスキャンを実行することとなる。ある態様においては、第一の時間間隔及び第二の時間間隔の値は、患者が割り当てられたリスク分類によって異なる。例えば高リスク患者は、第一の時間間隔が4時間であり、第二の時間間隔が1日となる一方で、リスク有り患者は第一の時間間隔が1日であり、第二の時間間隔が1週間となる。ある態様においては、時間間隔は、時間に厳密に基づくのではなく、例えば担当人員の変更又はシフトの変更時であるように、事象ベースであってもよい。概して、デルタ値が高かった身体の場所は、モニタリングされるが従前のSEMスキャンにおいて正常なデルタ値であった他の身体の場所よりも、より頻繁にスキャンされる。
【0160】
ある態様においては、SEMスキャンを実行する間隔は、先のSEMスキャンからのデルタ値によって決定される。例えば、従前のSEMスキャンにおける第一の閾値以上のデルタ値であったある身体の場所のSEMスキャンは、第一の時間間隔で実行される一方で、ある身体の場所の従前のSEMスキャンが第一の閾値より大きい第二の閾値以上のデルタ値であった場合、SEMスキャンは、第一の時間間隔よりも短い第二の時間間隔で実行される。
【0161】
この実施例においては、低リスクの患者は、モニタリングするために選択された身体の場所全てのSEMスキャンを毎週受ける。毎週のSEMスキャンは、VSAで視認可能になる前に組織の損傷を検出する可能性が高いため、これは、最も健常な患者にとってさえも基本的な保護をもたらす小規模の労力である。
【0162】
図8A及び8Bの現在のケア経路では高リスクとして特定されるであろう患者が含まれることとなるリスク有りの患者は、閾値を上回るデルタ値を呈する身体の場所に基づいて特化したケアを受けることとなる。例えば、仙骨の身体の場所が閾値を上回るデルタ値である場合には、患者は6時間毎に体位変換され、毎日の仙骨のSEMスキャンと、毎週の他の身体の場所のSEMスキャンとを受けることとなる。
【0163】
図10は、本開示に従う、図8Bの拡大された処置決定経路をさらに改善するための補助として、SEMスキャナがどのように用いられ得るかについてのフローチャートの例である。入所してくる患者は、モニタリングのために病院で特定された身体の場所全てのリスク評価とSEMスキャンとの両方を受け、リスク分類への患者の割り当ては、リスク評価に一部基づき、またSEMスキャン結果に一部基づく。初回デルタ値が閾値より大きいということは、生じ得る損傷がその身体の場所にあることを示す。ある態様においては、割り当ては、初回SEMスキャン中に発見された、最大の初回デルタ値のみに基づく。
【0164】
例えば第一の間隔で患者を体位変換するといった介入を実施するかどうかの決定は、皮下に早期段階の損傷があるか否かが不確定であるにもかかわらず、現在のところVSA及びリスク評価に基づいている。ある態様においては、特定の身体の部位への介入又は高性能マットレス等の通常の介入を実施することの決定は、SEMスキャンにおいてその部位で明らかになったデルタ値に基づく。デルタ値が予め決定された閾値未満であれば、介入は必要ない。デルタ値が予め決定された閾値より大きければ、その場合、ある介入が選択され、身体の場所に一部基づいて、またその身体の場所のデルタ値に一部基づいて、実施される。ある介入を選択して実施するか否かに関する予め決定された閾値は、生じ得る損傷が身体の場所にあるかを決定するための閾値より大きくてもよく、又は小さくてもよい。
【0165】
図8A、8B、9及び10のケア経路の提供にかかる費用の比較により、SEMスキャナを利用して患者をモニタリングすることの利点の1つが明らかにされる。本明細書で引用するこの費用は、褥瘡性潰瘍を有していないか又は発症していない患者に対するものであり、その場合予想される処置費用は、ステージ1の潰瘍に関しては2000ドルに上昇することに留意されたい。
【0166】
この比較のベースラインは図8Bの拡大された現在の実務であり、これは褥瘡性潰瘍の発生率を軽減することに努める病院にとって現在の「最良の実務」を表す。低リスクのケア経路のケアを提供することは、5.6日の平均入院日数の間、患者1人あたり平均26ドルの費用がかかることが予想され、リスク有りの患者に関するケアは、平均121ドルの費用がかかることが予想され、また高リスクの患者は、165ドルの費用がかかることが予想される。ケア経路は全て、褥瘡性潰瘍を検出するためにVSAに依存し、そうでなければ特定の患者の症状ではなく、「典型的な」患者の進行に基づいて、介入を実施することに依存する。
【0167】
図10に示すように、SEMスキャナを現在の「最良の実務」のワークフローに統合することは、除かれる作業要素がないためケア経路のいずれかの費用を下げるものではない。利点は、最小限の増分費用で、早期段階で組織損傷を検出する能力にある。リスクなしのケア経路にSEMスキャンを追加することによる増分費用は、2ドルであり、費用はおよそ26ドルから28に上がる。SEMスキャンのデルタ値が高くない、すなわち表皮下組織の損傷を有していない、リスク有り患者のケアにかかる予想される費用もまた、2ドルだけ増加する。しかしながら、リスク有り患者は、SEMスキャンのデルタ値が高いことが発見されれば、患者は高リスクのカテゴリに上がり、ここでは予想されるケア費用が165ドルから169ドルに上がる。これは一見するとさらなる費用のように見える可能性があるが、リスク有り患者に提供される保護のレベルが上がることを表している。
【0168】
図9は、患者をモニタリングするためにSEMスキャナのみに依存し、通例のVSAを行わないワークフローの例を表す。図10の統合した低リスクケア経路に関する費用28ドルと比較して、低リスク患者に関する予防ケアの予想される費用は4ドルである。図9のSEMスキャナのケア経路に対して単に他の分類となるリスク有り患者に関しては、図10の統合したケア経路のリスク有り患者及び高リスク患者に関する123ドルから169ドルと比較して、予想される費用は97ドルである。
【0169】
図11は、本開示に従う、複数のケア環境にわたる継続したケアを提供することの概念を示している。この例は、複数のケア環境において連続してケアされようとする患者のためのケア経路1100を示し、在宅ケア環境1110から始まる。患者が医療/外科手術(med/surg)ユニット1120に最初に収容される場所である病院1150に患者を転所するという決定がなされる。患者は、しばらくの間med/surgユニット1120においてケアを受けた後、同じ病院1150内の長期ケアユニット1130に移される。さらなる処置後、患者は、病院1150から高度看護施設1140へと退院する。図11に図示していないが、ケア経路1100は、このサンプルの手順及びケア環境の組合せに限定されない。例えば、ケア経路1100はまた、患者を退院させて在宅ケア環境に戻すことを伴ってもよい。
【0170】
ある態様においては、中央の「レジストリ」又はデータベース1160が設けられて、全てのケア環境からのデータのみならず、ケア環境間を移動する時の患者の状態を集める。
【0171】
例えば在宅ケア環境1120である、各ケア環境にいる間、データ記録1112において、患者に関する健康情報が記録されて、データベース1160に転送される。健康情報は、検査又は試験、観察、測定、処置の結果、褥瘡性潰瘍の発症を予防する意図の介入の実施、食事の記録、並びに患者の症状及び処置に関する他の記録を含み得る。ケア環境からのデータ記録は、患者の識別名と、栄養情報、実施された介入、リスク評価、目視皮膚評価、ケアプラン、医師のメモ、無駄のない事象(lean event)、生命徴候、皮膚の赤み若しくは可動性の指標若しくは認知の尺度等の「健康の尺度」、体重、及びラボラトリーでの結果の群からのデータ要素と、データ要素に関連する日付/時刻とのうちの1又は複数を含み得る。データ記録は、構造及び内容が変動し得る。データベースに報告されるデータ記録は、以下のデータ要素の複数のうちの1つを含有し得る:
a)患者の識別名
b)トランザクションの日付
c)施設の識別名
d)トランザクションの場所
e)栄養情報
f)実施された介入
g)リスク評価
h)目視皮膚評価
i)ケアプラン
j)医師のメモ(診断、指示、処方箋、検査の要請、手順、処置等)
k)検査、手順又は処置の結果
l)事象
m)生命徴候
n)体重
o)ラボラトリーでの結果
【0172】
例えば在宅ケア環境1110からmed/surgケア環境1120へというような、ケア環境間で患者を転所させるとき、転所記録1114を作成してデータベース1160に報告する。褥瘡性潰瘍に関連するリスク及び健康情報に関する情報を転送することが、新しいケア環境においてもたらされるケアを向上させることになる。ある態様においては、転所記録1114は、患者を転所する決定がなされた後に「元」のケアサイトで実行した患者の評価を含む。ある態様においては、この評価は、少なくとも1つの身体の場所のSEMスキャンを含むものであって、SEMスキャンは、単一の身体の場所において測定された複数のSEM値と、複数のSEM値からのデルタ値の算出とを含む。ある態様においては、転所記録は、「元」のケア環境にいる間の先のSEM値及び/又はデルタ値の履歴を含有する。ある態様においては、転所記録は、VSA、リスク分析及び他の健康データのうちの1又は複数を含有する。転所記録は、以下のデータ要素の複数のうちの1つを含有してもよい:
a)患者の識別名
b)トランザクションの日付/時刻(日付及び時刻、タイムゾーン又はグリニッジ標準時)
c)トランザクションの種類(入所前、入所時、転所時、退所時、等)
d)「転所先」の場所
e)「転所元」の場所
f)施設/ユニットの識別名
g)リスク評価
h)目視皮膚評価
i)身体の場所の写真
【0173】
患者は、例えば在宅ケア環境1110である一次ケア環境から、例えば長期急性期ケアユニット1130である高次のケア環境に周期的に移動してもよいものであって、患者は、医師ら又は他の専門家らによる「ケアのエピソード」を受けることとなる。高次ケア環境でもたらされる評価及びケアのデータ記録は、データベース1160に報告される。長期急性期ケア環境1130から在宅環境1110へと退所すると、データ記録は、在宅環境1110でのケアのための、ケアの指示、処方箋、及び他のガイダンスを含有する。
【0174】
データベース1160に集められたケア経路1100全体からのデータにより、データベース1160に問い合わせて、複数のケア環境及び種々のケアのエピソードにわたってある特定の患者に関して経時的に観察したデルタ値を検索することが可能である。
【0175】
ある態様においては、問い合わせは、患者のモニタリング及び/又は処置からの指示が続いているか否かを判断するように構成される。
【0176】
ある態様においては、問い合わせは、患者の処置が効果的であるか否かを判断するように構成される。
【0177】
ある態様においては、問い合わせは、患者の結果が、データベース1160に報告されたデータ要素のうちの1又は複数に関連しているか否かを判断するように構成される。
【0178】
ある態様においては、問い合わせは、デルタ値に加えて、1又は複数の健康の尺度を検索して、検索された健康の尺度と、褥瘡性潰瘍の発症又は他の結果(他の健康状態の進展との間のあり得るつながりを評価するように構成される。このデルタ値は、測定の日付/時刻に対してプロットされ、ある身体の場所に関するデルタ値の時間履歴を形成する。ある態様においては、デルタ値を分析して、傾き、加速度(acceleration)、曲線形状とそれに関連する特性、及びある選択された閾値の時間に対する切片(time-to-intercept)のうちの1つ又は複数が決定される。ある態様においては、これら分析結果は、図1及び4の方法及び処理を実施するために用いることが可能である。
【0179】
先の記載から、本開示は、以下を含むがこれに限定されない、種々の手法により具現化することができるということが理解されるであろう:
【0180】
本開示を特定の態様に関して説明したが、当業者は、この開示の範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされてもよく、また均等物によりその構成要素と置き換えてもよいことを理解するだろう。さらに、多くの変形が、この開示の範囲から逸脱することなく、この開示の教示に対する特定の状況又は材料に対してなされてもよい。したがって、この開示は、開示した特定の態様に限定されるものではないが、この開示が添付の特許請求の範囲の範囲及び趣旨の範囲内にあてはまる全ての態様を含むこととなることを意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11