(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】エバンスブルー誘導体の化学結合体ならびに前立腺癌を標的とするための放射線療法および造影剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20240307BHJP
A61K 31/4025 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20240307BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20240307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240307BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240307BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240307BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240307BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240307BHJP
A61K 101/02 20060101ALN20240307BHJP
A61K 103/10 20060101ALN20240307BHJP
A61K 103/20 20060101ALN20240307BHJP
A61K 103/40 20060101ALN20240307BHJP
A61K 103/30 20060101ALN20240307BHJP
A61K 103/00 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/4025
A61K31/704
A61K31/337
A61K31/4745
A61K31/4188
A61K33/24
A61P35/00
A61P13/08
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K51/04 200
A61K51/04 100
A61K101:02
A61K103:10
A61K103:20
A61K103:40
A61K103:30
A61K103:00
(21)【出願番号】P 2020543529
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 US2019019140
(87)【国際公開番号】W WO2019165200
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514144836
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】チェン シャオユアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイス オリット ジェイコブソン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/196806(WO,A1)
【文献】特開2014-051442(JP,A)
【文献】国際公開第2010/045598(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/070236(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/209795(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104650217(CN,A)
【文献】国際公開第2017/192874(WO,A1)
【文献】Martina Benesova et al.,Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker Moiety for Imaging and Endoradiotherapy of Prostate Cancer,Journal of Nuclear Medicine ,2015年,56(6),914-920,DOI: 10.2967/jnumed.114.147413
【文献】Zhantong Wang et al.,Radioligand Therapy of Prostate Cancer with a Long-Lasting Prostate-Specific Membrane Antigen Targeting Agent 90Y-DOTA-EB-MCG,Bioconjugate Chemistry ,2018年,29(7),2309-2315,DOI: 10.1021/acs.bioconjchem.8b00292
【文献】Zhantong Wang et al.,Single Low-Dose Injection of Evans Blue Modified PSMA-617 Radioligand Therapy Eliminates Prostate-Specific Membrane Antigen Positive Tumors,Bioconjugate Chemistry ,2018年,29(9),3213-3221,DOI: 10.1021/acs.bioconjchem.8b00556
【文献】Cindy J. Choy et al.,177Lu-Labeled Phosphoramidate-Based PSMA Inhibitors: The Effect of an Albumin Binder on Biodistribution and Therapeutic Efficacy in Prostate Tumor-Bearing Mice,Theranostics ,2017年,7(7),1928-1939,DOI: 10.7150/thno.18719
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
式中:
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、およびR
11は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6ハロアルキル、およびC
1~C
6ハロアルコキシから独立して選択され;
R
12は、水素、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり;
L
1は、-(CH
2)
m-であり、mは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
L
2は、-(CH
2)
n-であり、nは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
L
3は、-(CH
2)
p-であり、pは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
L
4は、-(CH
2)
q-であり、qは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
R
13は、
【化2】
クラウンエーテル、シクロデキストリン、またはポルフィリンから選択され;
R
14は、
【化3】
である、
の化合物またはその薬学的に許容可能な溶媒和物もしくは塩、またはそのような塩の溶媒和物。
【請求項2】
L
1が-NH(CO)-であり、R
1およびR
4がそれぞれメチルであり、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12がそれぞれ水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
14が
【化4】
を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
14が放射性核種をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記放射性核種が
18F、
76Br、
124I、
125I、または
131Iである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R
13が
【化5】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R
13が放射性核種をさらに含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記放射性核種が
64Cu、
67Cu、
90Y、
86Y、
111In、
186Re、
188Re、
89Zr、
99Tc、
153Sm、
213Bi、
225Ac、
177Luまたは
223Raである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記放射性核種が
86Y、
90Y、または
177Luである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記式Iの化合物が式II:
【化6】
式中、L
2、L
4、R
13、およびR
14は、請求項1と同じである、
の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が
【化7】
【化8】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が
【化9】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物を薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される担体が、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香味剤、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、錠剤化剤、および湿潤剤、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
哺乳動物における前立腺癌の処置または診断に使用するための、任意に1つ以上の追加の活性成分と組み合わせた、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記1つ以上の追加の活性成分が、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カンプトテシン、テモゾロミド、アバスチン、ハーセプチン、アービタックス、およびそれらの組み合わせを含む、請求項15に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年2月22日に出願された米国仮出願第62/633,648号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、その全体が参考として本出願中に取り入れられている。
【0002】
本発明は、エバンスブルー色素の官能化された誘導体に関し、より詳細には、前立腺癌を標的とするための放射線療法および造影剤として有用であるエバンスブルー色素の官能化された誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
前立腺癌は、世界中の男性で最も頻度の高い悪性腫瘍である。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺腫瘍細胞によって特異的に発現することが示されている表面分子である。PSMA発現量は、病期およびホルモン不応性癌と相関する。ほとんどのPSMA発現は前立腺癌に限定されているようであるが、脳、腎臓、唾液腺、および小腸でも低レベルの発現が検出され得る。また、この抗原は、複数の他の癌の新生血管腫瘍血管によって発現していることが示された。
【0004】
PSMAの発現は前立腺癌および転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の進行期で実質的に増加するため、抗原は造影および治療的処置のための普及した標的となっている。PSMAの独特の特性は、ワクチン、特異的抗体、薬物結合抗体、および放射線療法を含む、疾患の療法として抗原を標的とする複数の戦略につながった。
【0005】
ヒト患者では、177Luで標識した抗PSMA抗体が有効な剤であることが示されたが、おそらく血中半減期(日)が長いため、骨髄および血液学的毒性の問題がいくつかあった。細胞内エピトー(PSMの7E11)を標的とする111Inで放射性同位元素標識した抗PSMA抗体カプロマブペンデチド(ProstaScint;EUSA Pharma)は、米国食品医薬品局によって承認された。しかしながら、PSMAの細胞内ドメインの限られた入手性と共に抗体の大きな分子構造は、生存腫瘍病変の検出の非常に低い率および診断/放射線療法成功後の偽陽性所見をもたらした。
【0006】
PSMAは、N-アセチルアスパルチルグルタミン酸塩(NAAG)の加水分解を介して神経伝達物質グルタミン酸塩およびN-アセチルアスパラギン酸塩(NAA)を産生する神経ペプチダーゼであるN-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタミン酸ペプチダーゼIと高い相同性を示すことが報告されている。この発見は、亜リン酸エステル、カルバミン酸塩または尿素のような種々の構造モチーフに基づく種々のクラスの小分子の設計および開発につながった。尿素ベースのリガンドは、造影および放射線療法において最も成功している。PSMA尿素ベースのリガンドは、結合モチーフ(そのうちグルタミン酸-尿素-リシン[Glu-尿素-Lys]が最も広く使用されている骨格である)、リンカー、および放射性同位元素標識を有する部分(放射性同位元素標識のためのキレート剤分子)の3つの成分からなる。PSMAに結合すると、リガンドは細胞内に取り込まれる。細胞内では、エンドソームの再利用により沈着が増大し、増加した腫瘍の取り込み、貯留、およびその後の診断手順のための高い画質、および治療的適用のための高い局所線量につながる。しかしながら、他の小分子ベースの造影トレーサーと同様に、これらのPSMAリガンドは循環からの迅速なクリアランスを示し、これは注射後早期に低いバックグラウンドを与え、前立腺癌腫瘍における蓄積を有意に制限する。
【0007】
177Luのようなベータ発光体で標識した前立腺癌患者において、PSMAを標的とするいくつかの小分子を評価した。最も一般的に使用される低分子177Lu-PSMA-617は、現在多くの国で臨床評価段階にある。ほとんどの臨床試験の患者における通常の処置は、最大3サイクルの177Lu-PSMA-617で構成されていた。利用可能なデータが限られていることから、一部の患者では数週間程度に限定した70%~80%までの部分的応答率が示唆されている。奨励すべきことに、ステージ1~2の血液毒性ならびに散発的に軽度の口腔乾燥および疲労のみが副作用として報告されたが、薬物候補の長期毒性は尚未知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現在までのところ、PSMA小分子は、診断/治療剤として米国食品医薬品局によって承認されていない。そのため、前立腺癌の処置に有効かつ安全な小分子が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、式I
【化1】
式中:
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、およびR
11は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6ハロアルキル、およびC
1~C
6ハロアルコキシから独立して選択され;
R
12は、水素、C
1~C
6アルキル、またはC
1~C
6ハロアルキルであり;
L
1は、-(CH
2)
m-であり、mは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
L
2は、-(CH
2)
n-であり、nは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
L
3は、-(CH
2)
p-であり、pは、0~12の整数であり、各々のCH
2は、2つの隣り合うCH
2基が置き換えられない限り、個々に-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で置き換えられ得;
L
4は、C
1~C
60結合基であり、任意に-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2 -、-N(R)-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)O-、-N(R)C(=O)O-、または-OC(=O)N(R)-を含み、各々のRは、HまたはC
1~C
6アルキルであり;
R
13は、キレート基であり;
R
14は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合できる基である、
の化合物またはその薬学的に許容可能なエステル、アミド、溶媒和物もしくは塩、またはそのようなエステルもしくはアミドの塩、またはそのようなエステルアミドの溶媒和物、または塩を対象とする。
【0010】
別の態様では、本発明は、上記の化合物の1つを含む医薬組成物を対象とし、該化合物は、薬学的に許容される担体と一緒に、放射性核種をさらに含む。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、哺乳動物において前立腺癌を処置または診断する方法を対象とし、上に記載した化合物の1つの治療有効量を、任意に1つ以上の追加の活性成分と組み合わせて、前記哺乳動物に投与するステップを含む。
【0012】
これらの態様および他の態様は、本発明の以下の詳細な記載を読むと明らかになるであろう。
【0013】
本発明の以下の説明は、以下の図と併せてより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、フローサイトメトリーを用いた細胞によるPSMAレベル発現の評価を示すグラフの組である。
【
図2】
図2は、免疫蛍光を用いた細胞によるPSMAレベルの評価を示す画像の組である。
【
図3】
図3は、PSMA
+(PC3-PIP)およびPSMA
-(PC3)細胞におけるPSMA-617およびEB-PSMA-617結合アッセイの結果を示すグラフの組である。
【
図4】
図4は、PSMA
+細胞における
86Y-EB-PSMA-617取り込み/内部移行/排出研究の結果を示す図の組である。
【
図5】
図5は、PSMA
+細胞における
86Y-PSMA-617取り込み/内部移行/排出研究の結果を示す図の組である。
【
図6】
図6は、PSMA+腫瘍モデルにおける
86Y-EB-PSMA-617 PET結合研究および腎臓取り込みを例示する画像の組である。
【
図7】
図7は、
86Y-EB-PSMA-617 PET結合研究で得られた腫瘍および腎臓定量結果を示すグラフの組である。
【
図8】
図8は、
86Y-EB-PSMA-617および
86Y-PSMA-617の腫瘍取り込みAUCを示すグラフの組である。
【
図9】
図9は、
86Y-EB-PSMA-617および
86Y-PSMA-617の腎臓取り込みAUCを示すグラフの組である。
【
図10】
図10は、
86Y-EB-PSMA-617および
86Y-PSMA-617の血中取り込みAUCを示すグラフの組である。
【
図11】
図11は、
86Y-EB-PSMA-617および
86Y-PSMA-617の体内分布を示す図である。
【
図12】
図12は、種々の特異的活性における
86Y-EB-PSMA-617腫瘍および腎臓取り込みを示す図である。
【
図13】
図13は、PC3-PIP(PSMA
+)腫瘍モデルを有するマウスにおける
177Lu-EB-PSMA-617/
177Lu-PSMA-617放射線療法研究を示す図の組である。
【
図14】
図14は、PC3-PIP(PSMA
+)腫瘍モデルを有するマウスにおける
90Y-EB-PSMA-617/
90Y-PSMA-617放射線療法研究を示す図の組である。
【
図15】
図15は、
90Y-PSMA-617、
90Y-EB-PSMA-617、および
177Lu-EB-PSMA-617放射線療法処置後の染色結果を示す画像の組である。
【
図16】
図16は、
90Y-EB-PSMA-617および
177Lu-EB-PSMA-617放射線療法処置後の腎臓のPSMA染色を示す画像の組である。
【
図17】
図17は、PSMA
+(PC3-PIP)およびPSMA
-(PC3)細胞におけるEB-MCGおよびDOTA-MCG結合アッセイの結果を示すグラフの組である。
【
図18】
図18は、PSMA
+細胞における
86Y-EB-MCG取り込み/内部移行/排出研究の結果を示す図の組である。
【
図19】
図19は、PSMA
+細胞における
86Y-DOTA-MCG取り込み/内部移行/排出研究の結果を示す図の組である。
【
図20】
図20は、PSMA+腫瘍モデルにおける
86Y-EB-MCG PET結合研究および腎臓取り込みを示す画像の組である。
【
図21】
図21は、
86Y-EB-MCG PET結合研究で得られた腫瘍および腎臓定量結果を示すグラフの組である。
【
図22】
図22は、
86Y-EB-MCGおよび
86Y-DOTA-MCGの腫瘍取り込みAUCを示すグラフの組である。
【
図23】
図23は、
86Y-EB-MCGおよび
86Y-DOTA-MCGの腎臓取り込みAUCを示すグラフの組である。
【
図24】
図24は、
86Y-EB-MCGおよび
86Y-DOTA-MCGの血液取り込みAUCを示すグラフの組である。
【
図25】
図25は、
86Y-EB-MCGおよび
86Y-DOTA-MCGの生体内分布を示す図である。
【
図26】
図26は、PC3-PIP(PSMA
+)腫瘍モデルを有するマウスにおける
90Y-EB-MCGおよび
90Y-DOTA-MCG放射線療法研究を示す図である。
【
図27】
図27は、
90Y-EB-MCGおよび
90Y-DOTA-MCG生存および体重変化を示す画像の組である。
【
図28】
図28は、PC3-PIP(PSMA
+)腫瘍モデルを有するマウスにおける
177Lu-EB-MCG/
177Lu-DOTA-MCG放射線療法研究を示す図の組である。
【
図29】
図29は、
177Lu-EB-MCG/
177Lu-DOTA-MCG生存および体重変化を示す画像の組である。
【
図30】
図30は、
90Y-DOTA-MCG、
90Y-EB-MCG、および
177Lu-EB-MCG放射線療法処置後の染色結果を示す画像の組である。
【
図31】
図31は、腫瘍再発後の
90Y-EB-MCGおよび
177Lu-EB-MCG染色結果を示す画像の組である。
【
図32】
図32は、
90Y-EB-MCGおよび
177Lu-EB-MCG放射線療法処置後の腎臓のPSMA染色を示す画像の組である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語
化合物は、標準命名法を用いて記載した。別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0016】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、数量の制限を示すものではなく、むしろ、引用された項目の少なくとも1つの存在を意味する。用語「または」は、「および/または」を意味する。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、制限のない用語として解釈されるべきである(すなわち、「含むがこれに限定されない」を意味する)。
【0017】
値の範囲の列挙は、本明細書中で他に示されない限り、当該範囲内に入る各々の別々の値を個々に参照する簡潔な方法として役立つように単に意図されており、各々の別々の値は、あたかも本明細書中で個別に列挙されたかのように、明細書中に組み込まれる。すべての範囲の終点は当該範囲内に含まれ、独立して組み合わせ可能である。
【0018】
本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に示されない限り、または文脈によって他に明確に矛盾しない限り、適当な順序で実施することができる。任意のおよび全ての例、または例示的な言語(例えば、「例えば」)の使用は、単に本発明をより良好に例示することを意図しており、他に主張しない限り、本発明の範囲に制限をもたらさない。明細書中のいかなる言語も、本明細書中で使用される本発明の実施に必須であるいかなる主張されていない要素をも示すものと解釈してはならない。別に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0019】
さらに、開示は、列挙された請求項の1つ以上からの1つ以上の限定、要素、節、および記述用語が別の請求項に導入される、全ての変形、組み合わせ、および順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同一の基礎の請求項に従属する任意の他の請求項において見られる1つ以上の限定を含むように修正され得る。要素がリストとして提示される場合、例えば、マーカッシュグループフォーマットでは、要素の各サブグループも開示され、任意の要素(複数可)をグループから除去することができる。
【0020】
すべての化合物は、化合物中に存在する原子の可能なすべての同位体を含むと理解される。同位体には、原子番号は同じだが質量数が異なる原子が含まれ、重同位体および放射性同位体が含まれる。一般的な例によって、および限定されずに、水素の同位体にはトリチウムおよび重水素が含まれ、炭素の同位体には11C、13C、および14Cが含まれる。したがって、本明細書に開示される化合物は、化合物の構造中またはそれに結合した置換基として、重同位体または放射性同位体を含むことができる。有益な重同位体または放射性同位体の例としては、18F、15N、18O、76Br、125Iおよび131Iが含まれる。
【0021】
式Iおよび式IIは、式Iおよび式IIのすべての薬学的に許容可能な塩を含む。
【0022】
制限のない用語「含む」は、「本質的に~からなる」および「~からなる」という中間用語および閉じた用語を含む。
【0023】
「置換された」という用語は、指定された原子の通常の原子価を超えない限り、指定された原子または基上の任意の1つ以上の水素が、指定された基からの選択で置き換えられることを意味する。置換基および/または変数の組合せは、そのような組合せが安定な化合物または有用な合成中間体をもたらす場合にのみ許容される。安定な化合物または安定な構造は、反応混合物からの単離、およびその後の有効な治療剤への処方を生き残るのに十分にロバストである化合物を示すことを意味する。
【0024】
2つの文字または符号の間にないダッシュ(「-」)を用いて、置換基の結合点を示す。
【0025】
「アルキル」は、分枝鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含み、特定数の炭素原子、一般に1個から約8個の炭素原子を有する。本明細書で使用される「C1~C6アルキル」という用語は、1、2、3、4、5、または6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。他の実施形態は、1~8個の炭素原子、1~4個の炭素原子または1もしくは2個の炭素原子を有するアルキル基、例えばC1~C8アルキル、C1~C4アルキル、およびC1~C2アルキルを含む。本明細書でC0~Cnのアルキルを別の基、例えば-C0~C2アルキル(フェニル)と組み合わせて使用する場合、示された基、この場合フェニルは、単一の共有結合(C0アルキル)によって直接的に結合されているか、または指定された数の炭素原子、この場合1、2、3、または4個の炭素原子を有するアルキル鎖によって結合されているかのいずれかである。アルキルは、-O-C0~C4アルキル(C3~C7シクロアルキル)のようなヘテロ原子のような他の基を介して結合させることもできる。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、3-メチルブチル、t-ブチル、n-ペンチル、およびsec-ペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「アルコキシ」は、酸素架橋(-O-)によって置換される基に共有結合した示された数の炭素原子を有する、上で定義されたようなアルキル基である。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソ-プロポキシ、n-ブトキシ、2-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、2-ペントキシ、3-ペントキシ、イソ-ペントキシ、ネオ-ペントキシ、n-ヘキソキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシ、および3 -メチルペントキシが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、「アルキルチオ」または「チオアルキル」基は、それが硫黄架橋(-S-)によって置換されている基に共有結合している指定された数の炭素原子を有する、上記で定義されたアルキル基である。同様に、「アルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」、および「シクロアルキルオキシ」は、それが酸素架橋(-O-)によって置換されている基に共有結合した各例において、アルケニル、アルキニル、およびシクロアルキル基を指す。
【0027】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味し、ここでは、重同位体および放射性同位体を含む、同じものの全ての同位体を含むと定義される。有益なハロ同位体の例としては、18F、76Br、および131Iが挙げられる。追加的な同位体は、当業者によって容易に認識されるであろう。
【0028】
「ハロアルキル」とは、特定の数の炭素原子を有し、1以上のハロゲン原子で置換され、一般に最大許容数のハロゲン原子までの分枝鎖および直鎖アルキル基の両方を意味する。ハロアルキルの例としては、限定されるわけではないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2-フルオロエチル、およびペンタ-フルオロエチルが挙げられる。
【0029】
「ハロアルコキシ」は、酸素架橋(アルコールラジカルの酸素)を通して結合した上記定義のハロアルキル基である。
【0030】
「ペプチド」とは、アミド結合(ペプチド結合とも呼ばれる)を介して互いに結合したアミノ酸の鎖である分子を意味する。
【0031】
「医薬組成物」とは、式Iの化合物または塩のような少なくとも1つの活性剤、および担体のような少なくとも1つの他の物質を含む組成物を意味する。医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト薬物に関する米国食品医薬品局の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)基準に適合している。
【0032】
「担体」とは、活性化合物が投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを意味する。「薬学的に許容される担体」は、一般的に安全、無毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものでもなく、獣医学的使用ならびにヒトの薬学的使用に許容される担体を含む、医薬組成物を調製するのに有用である物質、例えば、賦形剤、希釈剤、またはビヒクルを意味する。「薬学的に許容される担体」とは、そのような担体の1つおよび1つより多くの両方を含む。
【0033】
「患者」とは、医学的処置を必要とするヒトまたは非ヒト動物を意味する。医学的処置は、疾患または障害または診断的処置などの既存の状態の処置を含むことができる。いくつかの実施形態において、患者は、ヒト患者である。
【0034】
「提供する」とは、付与、投与、販売、配布、移動(利益の有無は問わない)、製造、配合、または調剤を意味する。
【0035】
「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」とは、あらゆる疾患症状を測定可能に減少させ、疾患進行を遅らせ、または疾患回帰を引き起こすのに十分な量で、活性化合物を患者に提供することを意味する。特定の実施形態では、疾患の処置は、患者が疾患の症状を呈する前に開始されてもよい。
【0036】
医薬組成物の「治療有効量」とは、患者に投与された場合に、症状の改善、疾患進行の減少、または疾患回帰を引き起こすような治療上の利益を提供するのに有効な量を意味する。
【0037】
「治療化合物」とは、疾患の診断または処置に使用できる化合物を意味する。化合物は、小分子、ペプチド、タンパク質、または他の種類の分子であり得る。
【0038】
有意な変化とは、スチューデントのT検定のような統計学的有意性の標準的なパラメトリック検定で統計学的に有意であるあらゆる検出可能な変化であり、p<0.05である。
【0039】
化学的記述
式Iおよび式IIの化合物は、立体中心、立体軸などの1つ以上の不斉元素、例えば不斉炭素原子を含んでいてもよく、その結果、当該化合物は種々の立体異性体形態で存在し得る。これらの化合物は、例えば、ラセミ体または光学活性形態であり得る。2つ以上の不斉元素を有する化合物の場合、これらの化合物は、さらにジアステレオマーの混合物であってもよい。不斉中心を有する化合物については、純粋な形態の全ての光学異性体およびそれらの混合物を、包含する。これらの状況では、単一の鏡像異性体、すなわち光学活性形態は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分割によって得ることができる。ラセミ体の分割はまた、例えば、分割剤の存在下での結晶化のような従来の方法によって、または、例えばキラルHPLCカラムを使用するクロマトグラフィーによって達成することができる。それらを得るために使用される方法にかかわらず、全ての形態が本明細書で考えられる。
【0040】
活性剤の全ての形態(例えば、溶媒和物、光学異性体、鏡像異性体形態、多形体、遊離化合物および塩)は、単独または組み合わせのいずれかで使用され得る。
【0041】
用語「キラル」は、鏡像パートナーの非重ね合わせ性の特性を有する分子を指す。
【0042】
「立体異性体」とは、化学構造は同一であるが、空間における原子または基の配置に関しては異なる化合物である。
【0043】
「ジアステレオマー」とは、2つ以上のキラリティーの中心をもち、分子が互いの鏡像ではない立体異性体である。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば融点、沸点、スペクトル特性、および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、例えば、キラルHPLCカラムを用いて、電気泳動、分割剤の存在下での結晶化、またはクロマトグラフィーのような高分解能分析手順下で分離することができる。
【0044】
「鏡像異性体」とは、化合物の2つの立体異性体を指し、それらは互いに重ね合わせることができない鏡像である。鏡像異性体の50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と称され、これらは、化学反応またはプロセスにおいて立体選択性または立体特異性がなかった場合に存在し得る。
【0045】
本明細書で使用される立体化学の定義および規約は、一般に、S.P.Parker編、McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw-Hill Book Company,New York;ならびにEliel,E.およびWilen,S.,Stereochemistry of Organic Compounds(1994)John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに従う。多くの有機化合物が光学活性形態で存在し、すなわちそれらは面偏光の平面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を説明する場合、接頭語DおよびLまたはRおよびSを使用して、そのキラル中心(複数可)に関する分子の絶対的配置を示す。接頭語dおよびlまたは(+)および(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を表すために使用され、(-)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。接頭語(+)またはdを有する化合物は、右旋性である。
【0046】
「ラセミ混合物」または「ラセミ体」は、光学活性を含まない、2つの鏡像異性体種の等モル(または50:50)混合物である。ラセミ混合物は、化学反応またはプロセスで立体選択性または立体特異性がなかった場合に存在し得る。
【0047】
「キレート基」または「キレート剤」は、通常金属イオンである単一の中心原子に2つ以上の別々の配位結合を形成することができるリガンド基である。本明細書に開示されるキレート基は、複数のN、O、またはSヘテロ原子を有し、2つ以上のヘテロ原子が同一の金属イオンに結合を形成することを可能にする構造を有する有機基である。
【0048】
「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物がそれらの無機および有機の、無毒、酸または塩基付加塩を作ることによって修飾される開示された化合物の誘導体を含む。本化合物の塩は、従来の化学的方法により塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を適当な塩基(Na、Ca、Mg、またはK水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)の化学量論量と反応させることによって、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を適当な酸の化学量論量と反応させることによって調製することができる。このような反応は、典型的に、水中または有機溶媒中、あるいは2種の混合物中で行われる。一般に、実際的であれば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体を使用する。本化合物の塩にはさらに、化合物および化合物塩の溶媒和物が含まれる。
【0049】
薬学的に許容される塩の例は、限定するものではないが、アミンのような塩基性残基の鉱物酸または有機酸の塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩または有機塩などを含む。薬学的に許容される塩は、従来の無毒性塩、および、例えば、無毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の第四アンモニウム塩を含む。例えば、従来の無毒性酸塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エスシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(式中nは0~4である)などの有機酸から調製される塩が挙げられる。追加の適切な塩の一覧は、例えば、G.Steffen Paulekuhn,et al.,Journal of Medicinal Chemistry 2007,50,6665およびHandbook of Pharmaceutically Acceptable Salts:Properties,Selection and Use,P.Heinrich StahlおよびCamille G.Wermuth、編者、Wiley-VCH,2002中に見出され得る。
【0050】
実施形態
本発明の態様は、以下に示す式Iの化合物、または薬学的に許容可能なエステル、アミド、溶媒和物、またはその塩、あるいはかかるエステルもしくはアミドの塩、またはかかるエステルアミドもしくは塩の溶媒和物を有するエバンスブルー色素の化学結合体を包含する:
【化2】
【0051】
式Iにおいて、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシから独立して選択される。R12は、水素、C1~C6アルキル、またはC1~C6ハロアルキルである。R13は、キレート基である。R14は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な基である。
【0052】
式Iはまた、-(CH2)m-であり、式中mが0~12の整数である結合基L1、-(CH2)n-であり、式中nが0~12の整数である結合基L2、および-(CH2)p-であり、式中pが0~12の整数である結合基L3を含むことができる。L1、L2、およびL3の各々において、各々のCH2は、2つの隣り合うCH2基が置き換えられない限り、-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-で個々に置き換えられ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、結合基L1~L3は、ポリエチレングリコール部分-CH2CH2O-を含む。
【0054】
式Iの実施形態では、L1は-NH(CO)-である。式Iの別の実施形態では、L2は-(CH2)4-NH(CO)-(CH2)2-である。式Iのさらに別の実施形態では、L3は-NH(CO)CH2-である。
【0055】
式Iはまた、C1~C60結合基であり、任意に-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-N(R)-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)O-、-N(R)C(=O)O-または-OC(=O)N(R)-を含み、各々のRはHまたはC1~C6アルキルである結合基L4を含み得る。一実施形態において、L4は、qが0~12の整数である-(CH2)q-を含むことができ、各々のCH2は、2つの隣り合うCH2基が置き換えられない場合には、-O-、-NH(CO)-または-(CO)-NH-と個々に置き換えられ得る。
【0056】
式Iのさらに別の実施形態において、R1およびR4は、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、およびC1~C6ハロアルコキシから独立して選択される。
【0057】
式Iのさらに別の実施形態において、R2、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、およびR11は、各々水素である。
【0058】
式Iのさらに別の実施形態では、R1およびR4は、C1~C6アルキルから独立して選択される。
【0059】
式Iのさらに別の実施形態において、R1およびR4は、各々メチルである。
【0060】
式Iのさらに別の実施形態では、R12は水素である。
【0061】
R
13は、キレート基であり得る。いくつかの実施形態において、キレート基は、NOTA基、DOTA基、メルカプトアセチルトリグリシン(MAG
3)、ジピコリルアミンエタン酸(DPA)、シクロデキストリン、クラウンエーテル、もしくはポルフィリンなどの大環状部分であってもよく、または1,4,7-トリアザヘプタン-1,4,7,7-四酢酸基(DTPA)などの直鎖部分であってもよいが、これらに限定されない。これらの化合物およびいくつかの他の化合物および基の化学構造を、以下に示す。
【化3】
【0062】
【0063】
式Iのさらに別の実施形態では、R
13は、
【化5】
クラウンエーテル、シクロデキストリン、またはポルフィリンから選択される。
【0064】
式Iのさらに別の実施形態では、R
13は、
【化6】
であり得る。
【0065】
R
14のリガンドは、疾患を処置することができるリガンドから誘導される基、または疾患を診断するために使用することができるリガンドから誘導される基であってもよい。一実施形態において、R
14は、
【化7】
を含むことができる。
【0066】
別の実施形態では、R
14は、
【化8】
を含むことができる。
【0067】
さらに別の実施形態では、R
14は、
【化9】
を含むことができる。
【0068】
リガンドから誘導されるR14と表示された基は、式Iの一部としてまだ結合している間に生物学的作用を引き起こすかもしれない。あるいは、リガンドから誘導されるR14と表示された基は、式Iから、例えば酵素によって切断され得る。リガンドは、標的細胞または組織に結合することが可能であるリガンドであってもよく、例えば、リガンドは、腫瘍に結合することが可能であり得る。結合は、共有結合または非共有結合を介することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、R14は、治療化合物から誘導される基であってもよい。治療化合物は、治療的特性を有する任意の化合物であってよく、小分子治療的分子、ペプチド性薬物、またはタンパク質ベースの治療薬を包含し得る。例えば、一実施形態では、Rは、前立腺癌を処置または診断するその能力について選択される。R14は、天然の治療的分子、またはその治療的に活性な断片であり得ることを理解すべきである。
【0070】
いくつかの実施形態において、R
14は、
18F、
76Br、
124I、
125I、または
131Iなどの放射性核種をさらに含む。放射性核種を含むR
14の有用な置換基の例は、
【化10】
である。
【0071】
式Iで表される化合物は:
【化11】
【化12】
であり得る。
【0072】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現する腫瘍に対して向けられる放射性核種療法は、臨床において前立腺癌腫瘍の処置に有効であることが証明されている。最近、多くの造影トレーサーおよび放射線療法剤が開発されている。ヒト患者では、177Luで標識した抗PSMA抗体が有効であることが示されたが、血中での半減期(日)が長いためと思われる骨髄および血液学的毒性がいくらか認められた。PSMAを標的とするいくつかの小分子もまた、177Luのようなベータ放射体で標識された前立腺癌患者において評価された。最も一般的なものは、177Lu-PSMA-617であり、それは、多くの国で臨床評価段階にある。ほとんどの臨床試験の患者における通常の処置は、最大3サイクルの177Lu-PSMA-617で構成されていた。上述のように、入手可能な限られたデータから、一部の患者では数週間程度の短期間に限定した70%~80%までの部分的応答率が示唆されている。奨励すべきことに、ステージ1~2の血液学的毒性ならびに散発的に軽度の口腔乾燥および疲労のみが、副作用として報告されており、長期毒性はまだ未知である。
【0073】
本発明者らは、尿路を通してよりゆっくりと清澄化し、同時に、血液循環半減期を増加させ、腫瘍におけるより高い標的蓄積を有する化学的類似体を調製することにより、PSMA放射線療法の有効性を改善することに着手した。この目標は、(((R-)-1-カルボキシ-2-メルカプトエチル)カルバモイル)-L-グルタミン酸から誘導される残基を含む、一般的な臨床的に使用されるリガンドの、エバンスブルー類似体(EB)への共役、それが循環する血清アルブミンに可逆的に結合して、PSMAに対する親和性および特異性を保持した放射性医薬品を提供することによって達成されている。提案された変形は、血中半減期を有意に増加させ、腫瘍取り込みを増加させ、より効果的な抗腫瘍放射線療法をもたらし、PSMA陽性腫瘍を有する患者の療法を改善し得る。
【0074】
新たに設計した分子は、共役した標的リガンドの高い内部移行率も保持し、したがってPSMA陽性腫瘍で有意に高い蓄積を示した。新規なEB-PSMA誘導体を、治療用の純粋なβ放射体、90Y、177Luおよび他のもので標識した結果、PSMA異種移植モデルを有するマウスの腫瘍応答および生存率が改善され、リガンド自体と比較した場合、長期的な有効性を有した。このアプローチは、PSMAを含む腫瘍を有する患者に対して、より効果的な処置戦略を提供し得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、式IのR13基は、さらに、64Cu、67Cu、90Y、86Y、111In、186Re、188Re、89Zr、99Tc、153Sm、213Bi、225Ac、177Lu、223Raなどの放射性核種を含む。いくつかの実施形態において、R13に含まれる放射性核種は、86Y、90Y、または177Luである。放射性核種は、キレート化によって、または化学技術において公知の従来の共有結合もしくはイオン結合のような他の手段によって、R13に結合され得る。放射性核種は、例えばPET造影のような造影または走査のような適当な目的であり得、式Iの化合物はPET造影剤であり得る。放射性核種は、患者処置、例えば放射線処置の目的に好適であり得、式Iの化合物は前立腺癌の処置のための剤であってもよい。
【0076】
別の態様では、本発明は、以下に例示する式IIの化合物、または薬学的に許容可能なエステル、アミド、溶媒和物、もしくはそれらの塩、またはかかるエステルもしくはアミドの塩、またはかかるエステルアミドもしくは塩の溶媒和物を有するエバンスブルー色素の化学結合体を包含する:
【化13】
【0077】
式IIにおいて、R13はキレート基であり、R14は前立腺特異的膜抗原(PSMA)に結合可能な基である。
【0078】
式IIはまた、-(CH2)n-であり、式中nは0~12の整数である結合基L2;およびC1~C60結合基であり、2つの隣り合うCH2群が置換されない場合には、任意に-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-N(R)-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)O-、-N(R)C(=O)O-または-OC(=O)N(R)-を含み、各RはHまたはC1~C6アルキルである結合基L4を含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、結合基L1~L4は、ポリエチレングリコール部分-CH2CH2O-を含む。
【0080】
一実施形態では、L
2は-(CH
2)
4-NH(CO)-(CH
2)
2-であり、L
4-R
14は
【化14】
である。
【0081】
別の実施形態では、L
2は-(CH
2)
4-NH(CO)-(CH
2)
2-であり、L
4-R
14は
【化15】
である。
【0082】
式Iの化合物について与えられたR14の実施形態の説明は、式IIの化合物にも適用される。また、式IIのR13および/またはR14は、上記の放射性核種をさらに含むことができ、式Iの化合物について与えられた放射性核種実施形態の記載は、式IIの化合物にも適用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、開示中の新規な分子は、アルブミン結合モチーフとしての切断型エバンスブルードメイン、放射性核種で標識するためのキレート剤、スペーサー、リンカーとしてのマレイミドから誘導される残基、および生体分子結合モチーフを含む。
【0084】
医薬製剤
式への言及は、全ての下位式への言及を含み、例えば、式Iは、式IIの化合物を含む。本明細書中に開示される化合物は、そのままの化学物質として投与することができるが、好ましくは、医薬組成物として投与される。したがって、本発明は、式Iの化合物などの化合物または化合物の薬学的に許容される塩を少なくとも1つの薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を包含する。医薬組成物は、唯一の活性剤として式Iの化合物または塩を含むことができるが、少なくとも1つの追加の活性剤を含むことが望ましい。特定の実施形態において、医薬組成物は、単位剤形中に約0.1mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約100mg~約800mg、または約200mg~約600mgの式Iの化合物、および任意に約0.1mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約100mg~約800mg、または約200mg~約600mgの追加の活性剤を含有する剤形である。医薬組成物はまた、式Iの化合物などの化合物、および追加の活性剤のモル比を含み得る。例えば、医薬組成物は、式Iの化合物に対する追加の活性剤の約0.5:1、約1:1、約2:1、約3:1または約1.5:1~約4:1のモル比を含むことができる。
【0085】
本明細書に開示される化合物は、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入または噴霧によって、舌下的に、経皮的に、頬投与を介して、直腸的に、点眼液として、または他の手段によって、従来の薬学的に許容可能な担体を含む投与単位製剤で投与され得る。医薬組成物は、任意の薬学的に有用な形態として、例えば、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼剤として処方され得る。錠剤およびカプセル剤のようないくつかの剤形は、適切な量の活性成分、例えば、所望の目的を達成するための有効な量を含む適切なサイズの単位用量に細分される。
【0086】
担体は、賦形剤および希釈剤を含み、処置される患者への投与に適するようにするために、十分に高い純度および十分に低い毒性を有しなければならない。担体は不活性であってもよく、またはそれ自体の医薬的利益を有することができる。化合物と共に使用される担体の量は、化合物の単位用量当たりの投与のための実用量の物質を提供するのに十分である。
【0087】
担体の組としては、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香味剤、流動促進剤、潤滑剤、保存剤、安定剤、界面活性剤、錠剤化剤、および湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されない。担体の中には、1つ以上の組に挙げることができるものもあり、例えば、植物油は、いくつかの処方物において潤滑剤として、他の処方物においては希釈剤として使用することができる。薬学的に許容される担体の例としては、糖、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、および植物油が挙げられる。任意の活性剤は、医薬組成物中に含まれ得、それは、本発明の化合物の活性を実質的に妨害しない。
【0088】
医薬組成物/組合せは、経口投与のために処方することができる。これらの組成物は、式Iの化合物の0.1~99重量%(wt.%)および通常式Iの化合物の少なくとも約5wt.%を含有する。いくつかの実施形態は、式Iの化合物の約25wt%~約50wt%または約5wt%~約75wt%を含有する。
【0089】
処置方法
式Iの化合物、ならびに当該化合物を含む医薬組成物は、癌などの疾患の診断または処置に有用である。本発明によれば、前立腺癌を処置する方法は、そのような処置を必要とする患者に、治療有効量の式Iの化合物を提供することを含む。一実施形態では、患者は哺乳動物であり、より具体的にはヒトである。当業者に理解されるであろうように、本発明はまた、コンパニオンアニマル、例えばネコ、イヌ、および家畜動物のような非ヒト患者を処置する方法も包含する。
【0090】
医薬組成物の治療有効量は、好ましくは、疾患または状態の症状を軽減または改善するのに十分な量である。前立腺癌の場合、例えば、治療有効量は、高血糖を減少または改善するのに十分な量であり得る。本明細書に記載される化合物または医薬組成物の治療有効量はまた、患者に投与された場合、式Iの化合物の十分な濃度を提供するであろう。十分な濃度は、好ましくは、障害を予防または克服するために必要な患者の体内の化合物の濃度である。そのような量は、実験的に、例えば、化合物の血中濃度をアッセイすることによって、または理論的に、バイオアベイラビリティを計算することによって確認することができる。
【0091】
本発明によれば、本明細書に開示される処置の方法は、式Iの化合物の特定の投与量を患者に提供することを含む。約0.1mg/kg体重/日~約140mg/kg体重/日の各化合物の用量レベルは、上記の状態の処置に有用である(1患者当たり1日当たり約0.5mg~約7g/日)。単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる化合物の量は、処置される患者および投与の特定の様式に依存して変化するであろう。投薬単位形態は、一般に、約1mg~約500mgの各活性化合物を含むであろう。特定の実施形態において、式Iの化合物25mg~500mg、または25mg~200mgを、患者に毎日提供する。投与の頻度はまた、使用される化合物および処置される特定の疾患に依存して変化し得る。しかしながら、ほとんどの疾患および障害の処置のために、1日4回以下の投薬計画を使用することができ、特定の実施形態では、1日1回または2回の投薬計画を使用する。
【0092】
しかしながら、あらゆる特定の患者についての特定の投与レベルは用いる特定の化合物の活性、年令、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路および排泄の速度、薬物の組合せおよび療法を受けている特定の疾患の程度を含めた各種の因子に依存することが理解されよう。
【0093】
式Iの化合物は、前立腺癌のような疾患および状態を処置または予防するために単独で投与してもよく(すなわち、投与計画の唯一の治療剤)、または別の活性剤と併用して投与してもよい。式Iの1つ以上の化合物は、抗癌細胞毒性剤のような1つ以上の他の活性剤の投与計画と協調して投与され得る。一実施形態では、哺乳動物における前立腺癌を処置または診断する方法は、治療有効量の式Iの化合物を、任意に1つ以上の追加の活性成分と組み合わせて、前記哺乳動物に投与することを含む。
【0094】
当業者に認識されるように、本明細書で提供される処置の方法は、ウマおよび家畜、例えば畜牛、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタなどを処置するためのような獣医学的適用、ならびにイヌおよびネコなどのペット(コンパニオンアニマル)を含む、ヒト以外の哺乳動物の処置にも有用である。
【0095】
診断または研究用途のためには、多種多様な哺乳動物が、適当な対象であり、げっ歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、およびブタ、例えば近交系ブタなどを含むであろう。さらに、in vitro診断および研究適用のようなin vitro適用のためには、上記対象の体液(例えば、血液、血漿、血清、細胞間質液、唾液、糞便、および尿)ならびに細胞および組織試料が、使用に適しているであろう。
【0096】
一実施形態では、本発明は、そのような処置を必要としていると同定された患者における前立腺癌を処置する方法を提供し、当該方法は、式Iの化合物の有効量を患者に提供することを含む。本明細書で提供される式Iの化合物は、単独で、または1つ以上の他の活性剤との併用で投与され得る。
【0097】
別の実施形態では、前立腺癌を処置する方法は、式Iの化合物を、追加の化合物の少なくとも1つが活性剤である1つ以上の追加の化合物と組み合わせて、そのような処置を必要とする患者に投与することをさらに含み得る。1つ以上の追加化合物は、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カンプトテシン、テモゾロミド、アバスチン、ハーセプチン、アービタックスなどの抗癌治療化合物を含む追加の治療化合物を含み得る。
【0098】
本発明の組成物は、多くの小分子および生物製剤が、高い収率および高い純度で一段階で容易に修飾され得るという利点を提供する。EB部分のアルブミンとの結合が比較的強いため、in vivoの生体内分布を容易に制御して、EB部分およびリンカーの数を調整することができる。さらに、EB部分の相対的に小さいサイズは、小分子または生物製剤の生物学的機能に対するいかなる干渉の可能性も低下させる。EB部分に結合したNOTAまたはDOTAなどのキレート剤の添加は、放射性核種などのさらなる基の容易な添加を可能にし、それは、本分子が造影剤および/または放射性治療剤として作用することを可能にし得る。したがって、本発明は、高い有効性を有する、長時間持続性および長時間作用性の治療剤および造影剤を開発するための効率的なシステムを提供する。
【実施例】
【0099】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に記載される。他に特に明記しない限り、すべての部およびパーセンテージは重量によるものであり、すべての温度は摂氏度である。
【0100】
略語
Boc tert-ブトキシカルボニル
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DOTA 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸
Fmoc フルオレオキシカルボニルクロリド
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC-MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
PET ポジトロン放出断層撮影
RT 室温
TFA トリフルオロ酢酸
【0101】
一般的な方法
Boc-リシン-Fmocアミノ酸は、AppTechから購入した。DOTA-NHSエステル)は、Macrocyclicsから購入した。その他の溶媒および化学物質はすべて、Sigma-AldrichまたはFisher Scientificから購入した。
【0102】
化学的純度は、Phenomenex Luna C18カラム(5μm、4.60×150mm)を用いた分析高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、2つの勾配系、すなわち、系1-溶媒A、H2O中の0.1%のTFAの95%および溶媒B(CH3CN)の5%から出発して5分間、30分間で溶媒Bの65%に増加し、次いで1mL/分の流速で5分間で90%に増加する勾配、系2-溶媒A(50mMのNH4OAc)および溶媒B(CH3CN)を使用する系1と同じ勾配で測定した。紫外線(uv)吸光度を、254および600nmでモニターした。95%の溶媒A(H2O中0.1%のTFA)および5%の溶媒B(CH3CN)の勾配系を用いて5分間Biotage系(C-18、SNAP 120g)で化合物を精製し、流量40mL/分で66分で溶媒Bの65%に増加させた。
【0103】
LC-MS分析は、報告された手順(1)と同様に行った。86YCl3は、NIHサイクロトロン施設から取得した。90YCl3はPerkin-Elmerから購入した。177 LuCl3は、University of Missouri Research Reactor(MURR)から購入した。
【0104】
実施例1:DOTA-マレイミド-EB (DMEB)の合成
ステップ1~2:トリシンLys-Bocの合成
【化16】
Boc-リシン-Fmocアミノ酸1.1g(1当量)および無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(10mL)を入れた100mLの丸フラスコに、アルゴン下にHATU(0.94g、1.05当量)を加えた。この混合物を、室温(RT)で10~15分間撹拌した。次に、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(4mL、10当量)を加え、続いて10mLのDMF中のトリシン(0.75g、1.5当量)を加えた。反応混合物を、一晩撹拌した。系1(保持時間32.3分)を用いて、分析HPLCにより所望の生成物への変換を評価した。油真空ポンプを用いた回転蒸発器により溶媒を除去した。残りの油を、5~10mLのDMFに再溶解し、次いで20%のピペリシン(v/v)を加えた。混合物をRTで15~20間撹拌し、Fmocの脱保護を分析的HPLC系1(保持時間18.7分)への注入により評価した。上記の勾配系を用いてBiotage系上で粗混合物を精製し、採取した純粋な所望の画分を凍結乾燥した。望まれるトリシンLys-Bocの化学的純度は95%を上回り、収率は68~72%の範囲の白色粉末であった。LC-MS:[MH]
-=439.18(m/z)、計算値:440.2。
【0105】
ステップ3:DOTA-トリシンLys-Bocの合成
【化17】
トリシンLys-Boc(0.52g、1当量)を、5mLのDMFに溶解した。次に、2~3mLのDMF中のDOTA-NHSエステル(1g、1.1当量)を加え、続いてDIPEA(1mL、5当量)を加えた。混合物を、RTで2~3時間撹拌した。分析的HPLC系1(保持時間18.1分)上で所望の生成物への変換を評価した。Biotage系上で精製を行い、採取した純粋な所望の画分を凍結乾燥して、化学的純度が95%を超える白色粉末の収率76%を得た。LC-MS:[MH]
-=825.5(m/z)、計算値:826.4。
【0106】
ステップ4:DOTA-トリシンLysの合成
【化18】
DOTA-Tol-Lys-Bocに5mLのそのままのTFAを添加した。混合物を、RTで15~20分間インキュベートした。次にTFAを蒸発乾固し、水を加えた。分析的HPLC系1は、Bocの脱保護(保持時間10.4分)を確認した。水との混合物を凍結乾燥して、80%を超える化学収率で純粋な所望の生成物を得た。LC-MS:[MH]
-=725.2(m/z)、計算値:726.4。
【0107】
ステップ5:DOTA-トリシンLys-マレイミドの合成
【化19】
DOTA-トリシンLys-Boc(0.57g、1当量)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)5mLに溶解した。次に、3mLのDMSO中の3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(0.23g、1.1当量)を加え、続いてトリエチルアミン(Et
3N、0.56mL、5当量)を加えた。混合物を、RTで2時間撹拌した。分析的HPLCにより、所望の生成物への完全な変換が確認された(保持時間14.0分)。Biotage系上で精製を行い、採取した純粋な所望の画分を凍結乾燥して、化学的純度が95%を超える白色粉末の収率76%を得た。LC-MS:[MH]
-=876.4(m/z)、計算値:877.4。
【0108】
ステップ
6:DOTA-マレイミド-EB(DMEB)の合成
【化20】
DOTA-トリシンLys-マレイミド(0.5g)を、1mLのCH
3CNおよび1mLのH
2Oに、ガラスバイアル中で溶解した。次に、30%HCl3当量(0.062g、0.054mL)を、H
2O1mLに加えた。溶液を氷水中で冷却し、数分後にH
2O1mL中の冷NaNO
2溶液(3当量、0.12g)を加えた。粗混合物を、氷中で30分間撹拌した。溶液は黄色に変わり、これはジアゾニウム塩の生成を示す。
【0109】
上記ジアゾニウム塩溶液を、1mLのH2O中の1-アミノ-8-ナフトール-2,4-ジスルホン酸一ナトリウム塩(1当量、0.2g)および重炭酸ナトリウム(4~5当量、0.2g)を含むガラスバイアルに、少量ずつ加えた。混合物を氷中で更に1時間撹拌し、DMEBの生成を、分析的HPLC系2(保持時間16.8分)により分析した。Biotage系上で精製を行い、採取した純粋な所望の画分を凍結乾燥して、化学的純度90%超の白色粉末の収率60%を得た。LC-MS:[MH]-=1206.2(m/z)、計算値:1207.7。
【0110】
実施例2:DOTA-マレイミド-EB(DMEB)の代替の合成
ステップ1:エバンスブルーアミン(EB-NH
2)の調製
2-トリシン(4.3g)および塩化メチレン(40ml)を含む100mlの丸底フラスコに、ジ-t-ブチルジカーボネート(4.4g)を加えた。混合物を、室温で一晩撹拌した。反応を濃縮し、残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製して、N-Boc-2-トリシン3.2gを得た。LC-MS:[MH]
+=313.4135(m/z)、計算値:312.1838。
【化21】
【0111】
N-Boc-2-トリシン(0.46g、1.47mmol)を、ガラスバイアル中でアセトニトリル(10ml)に溶解し、0℃に冷却し、次いで塩酸(0.3M、15ml)を加えた。冷亜硝酸ナトリウム溶液(5ml水中0.31g)を滴加し、20分間撹拌し、溶液は明るい黄色に変色した。この溶液を、水(20ml)中の1-アミノ-8-ナフトール-2,4-ジスルホン酸一ナトリウム塩(0.59g)および重炭酸ナトリウム(0.49g)を含む別のガラスバイアルに、0℃で滴加した。反応は、LC/MSによって完了したと見なされ、反応は、さらに精製することなく凍結乾燥されて、Boc-EB生成物を提供した。[M-H]
-=541.4425、計算値:542.0930。
【化22】
【0112】
Boc EB生成物を、80%のTFA、10%の1,2-エタンジチオールおよび10%のチオアニソールの溶液に加え、反応が完了するまで撹拌した。この混合物を水(100ml)で希釈し、C-18クロマトグラフィーカートリッジ(3×15cm)に装填した。カラムを水、次に80%エタノールで洗浄して、所望の生成物を溶出した。溶離液中で溶媒を蒸発させた後、80%純度の生成物EB-NH
2を0.6g得た。少量の生成物を、HPLCでさらに精製した。LC-MS:[M-H]
-=541.4425、計算値:542.0930。
【化23】
【0113】
ステップ2:EB-Lys-Bocの合成
【化24】
Boc-Lys-Fmoc
アミノ酸(3.6当量)の無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(2~3mL)に、アルゴン下に(1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート)(HATU,4.2当量)を加えた。この溶液を、室温(RT)で10分間撹拌した。次に、10当量のジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加え、続いて5~7mLのDMF中のEB-NH
2を加えた。反応は、RTで一晩撹拌した。EB-NH
2のEB結合および保護Fmoc-Lys-Bocへの変換を、分析的HPLC系1を用いてモニターした。EB-NH
2の保持時間は7.7分であり、共役EB保護Lysは11分であった。変換完了後、20%のピペリシン(v/v)を添加し、反応をさらに1時間撹拌した。DMFを高真空油ポンプで除去し、反応をメタノール/H
2O(2:1)に再溶解し、Biotage系上で精製した。採取したHPLC画分を、分析的HPLC上に再注入して、90%を超える純度を測定し、さらに凍結乾燥した。EB-Lys-Boc保持時間(r.t.)は、8.3分(系1)または23.2分(系2)であった。LC-MS分析により、769[MH]
-の質量が確認された。
【0114】
ステップ3:DOTA-EB-Lys-Bocの合成
【化25】
EB-Lys-BocとDOTA-ビス(t-Buエステル)との間の反応は、上記の条件と同様に行われた。分析的HPLC系2は、純度90%超、これと共にr.t.29.3分および質量1167[MH]
-を確認した。
【0115】
ステップ4:DOTA-EB-Lysの合成
【化26】
脱保護は、チオアニソール:1,2-エタンジチオール:アニソール:TFA(5:3:2:90)を用いてRTで行った。脱保護の完了を、HPLC(17.1分のr.t.)でモニターした。TFAを、精製前にアルゴン流によって除去した。DOTA-EB-Lysを、Biotage系上で精製した。LC-MS分析では、954[MH]
-の質量を確認した。
【0116】
ステップ5:DOTA-マレイミド-EB(DMEB)の合成
【化27】
DOTA-EB-Lysを、0.5mLのDMFに溶解した。次に、1.26当量のトリメチルアミンを加え、続いて0.2mLのDMF中の1.26当量の3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを加えた。反応は、RTで2時間撹拌した。Higginsカラム上で精製を行った。分析的HPLC注入(系2)は、純度90%超、これと共にr.t.17.4分および質量1105[MH]
-を示した。
【0117】
実施例3:PSMA-617-SHの合成
t-Bu-PSMA-617-アミンは、CS Bio Inc.から購入した。SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)は、ThermoFisher Scientificから購入した。PSMA-617は、以下のように3ステップで合成した。
【0118】
ステップ1:PSMA-617-S-アセチルの合成
【化28】
t-Bu-PSMA-617
-アミン(65mg、1当量)を、無水DMSO1mLに溶解した。次に、0.4mLのDMSO中のSATA1.1当量(21mg)を加え、続いてDIPEA、5当量(0.074mL)を加えた。混合物をRTで2~3時間撹拌し、勾配系1および流量12mL/minを用いてHigginsカラム(C-18.5μm,250×20mm)上で精製した。採取した画分を凍結乾燥した。LC-MS:[MH]
-=882.5(m/z)、計算値:883.4。
【0119】
ステップ2~3:PSMA-617-SHの合成
【化29】
PSMA-S-アセチルは、RTで10~20分間そのままのTFAを用いて脱保護した。分析的HPLC系1により脱保護を確認した後、TFAを蒸発乾固した。次に、ヒドロキシルアミン(HCl塩)70mgおよびEDTA20mgを、pH9.4のホウ酸緩衝液3mlに加えた。混合物の最終pHはpH紙で測定すると6付近であった。混合物をRTで1時間撹拌し、上記のようにHigginsカラム上で精製した。採取した画分を凍結乾燥した。LC-MS:[MH]
-=728.24(m/z)、計算値:729.3。
【0120】
実施例4:MCG-SHの合成
MCG-SHは、Banerjee S.R.et al.“Synthesis and Evaluation of Techmetium-99m- and Rhenium-Labeled Inhibitors of the Prostate-Specific Membrane Antigen(PSMA),J.Med.Chem.2008,51(15),4504-4517に記載された手順に従って調製した。
【0121】
実施例5A:DOTA-マレイミド-EB-PSMA-617の合成
【化30】
DOTA-マレイミド-EB(DMEB、23mg、1当量)は、PBS中の0.1%のNa-アスコルベートの2mlの脱気した溶液(w/v)に溶解した。DMSO0.1mL中のPSMA-617-SH(14.6mg、1.05当量)を添加した。この溶液をRTで1~2時間撹拌し、Higginsカラム上で精製した。採取した画分を凍結乾燥して、37mgのEB-PSMA-617を得、化学的純度は95%超であった。LC-MS:[MH]
-=1936.3(m/z)、967.6(m/2)。
【0122】
実施例5B:DOTA-マレイミド-EB-PSMA-617相同体の合成
【化31】
DOTA-マレイミド-EB-PSMA-617相同体は、上記実施例5Aに記載のように、PSMA-617相同体をDOTA-マレイミド-EBで、0.1%のアスコルビン酸NaのPBS溶液の存在下で処理することによって調製した。
【0123】
PSMA-617相同体を、t-Bu-PSMA-617-アミンの3-(トリチルチオ)プロピオン酸との、実施例3のステップ1に記載の条件下での反応、続いて得られたトリチル誘導体のトリフルオロ酢酸(TFA)での加溶媒分解により調製した。
【0124】
実施例6:DOTA-MCGの合成
JHUおよびDOTA-マレイミドからMCG-SHを用いてEB-MCGを合成した。LC-MS:[MH]
-=1501.5(m/z)、749.5(m/2)。
【化32】
【0125】
実施例7:EB-MCGの合成
EB-MCGは、JHUからのMCG-SHを使用して、EB-PSMA-617について上述したのと同じ方法で合成された。LC-MS:[MH]
-=1501.5(m/z)、749.5(m/2)。
【化33】
【0126】
実施例8:化合物の標識
4~10μLの86YCl3、90YCl3または177LuCl3のいずれかを、0.5mlの0.4Mの酢酸アンモニウム、PH5.6で希釈した。次に、選択されたリガンド(EB-PSMA-617、EB-MCG、DOTA-PSMA-617またはDOTA-MCG)0.1mgを添加し、80℃で30分間反応を混合した。生成物の純度は、iTLCプレート(Fisher)および0.1Mのクエン酸、pH5を現像溶媒として用い、radio-TLC(AR-2000 Bioscanスキャナー)によりアッセイした。遊離の放射性同位体、約0.9のRf;所望の標識したリガンドのRfは、約0.1であった。
【0127】
実施例9:細胞培養
PSMA高レベルを発現するように操作したPSMA+ PC3 PIP細胞(ヒト転移性[骨]前立腺癌-Dr.Martin Pomer,JHUによって本発明者らに提供された)およびPSMA PC3(低いPSMAレベル)細胞を、10%のFBSおよびペニシリン/ストレプトマイシン(100U/mL/100μg/mL)を添加したRPMI 1640培地中で、5%のCO2中で空気中で37℃で培養した。
【0128】
実施例10:86Y-EB-PSMA-617の細胞取り込みおよび内部化
アッセイの24時間前に、105個のPC3-PIP細胞/ウェルを、24ウェルプレートに分布させた。細胞をPBSでX2洗浄し、次いで18.5KBq/ウェルの86Y-EB-PSMA-617または86Y-EB-MCGを、1%(w/v)ヒト血清アルブミン(HSA)を含有する培地0.5mL中に添加した。各示された時点で、細胞をPBSでX2洗浄し、0.1MのNaOHで溶解した。内在化は、0.5mLの酸性緩衝液(50mMのグリシン、100mMのNaCl、pH2.8)と共に1分間インキュベートし、X2洗浄し、溶解することにより、膜結合トレーサーを除去した後に測定した。細胞溶解物の放射能を、γ-カウンター(Perkin Elmer)で測定した。細胞取り込みおよび細胞内移行値は、加えた放射能のパーセントとして標準化した。各時点を、3つ1組で測定した。遮断試験のために、放射能と共に、10μgの標識していないリガンドを、ウェルに加えた。
【0129】
実施例11:標的放射線治療後の病理組織学的染色
上記の各群からの腫瘍組織を、種々の時点で採取し、Z-FIX(Anatec Ltd)で室温で凍結または保存した。厚さ10μmの切片を、クライオマイクロトームを用いてスライド上にマウントした。Ki-67、TUNELおよびH&E染色は、本発明者らの以前の研究に従って実施した(Chen et al.“Novel‘Add-On”Molecule Based on Evans Blue Confers Superior Pharmacokinetics and Transforms Drugs to theranostic Agents”Journal of Nuclear Medicine 2017,58(4),590-597を参照)。Ki67陽性核の数を、スライド当たり5~6視野、各マウスについて5スライドおよび群当たり3マウスに関して視覚計数により分析した。定量は、Image Jソフトウェア(NIH)を用いて行った。
【0130】
実施例12:腫瘍モデル
動物プロトコルは、NIH Clinical Center Animal Care and Use Committee(ACUC)により承認された。雄の無胸腺ヌード/ヌードマウス(5~6週)(Envigo)に、Matrigel(Sigma)1:1中のPC3-PIPまたはPC3細胞のいずれかの5×106個の細胞を右肩に接種した。
【0131】
実施例13:生体内分布
48時間の時点での最終スキャンの後、腫瘍、心臓、肺、肝臓、脾臓、胃、腸、膵臓、腎臓、筋肉、骨および血液を、安楽死させたマウスから採取し、秤量し、ガンマカウンターで測定した。結果は、組織1g当たりの注射した投与のパーセンテージ(%ID/g)として標準化される。
【0132】
実施例14:86Y-EB-PSMA-617の腫瘍取り込み
PETアッセイは、腫瘍体積が約200~350mm3に達したとき、腫瘍細胞接種後14~17日で実施された。マウスに、0.5nmol(高い比活性)の86Y-EB-PSMA-617(n=5、PC3-PIP;n=5、PC3)または86Y-EB-MCG(n=5、PC3-PIP;n=5、PC3)のいずれかを静脈内注射し、注射後1、4、24および48時間に10~20分間スキャンした(p.i.)。PET検査は、Nanoscan PET/CT(Mediso)およびInveon(Siemens)スキャナーで取得した。3D秩序化サブセット期待最大アルゴリズムを用いて画像を再構成し、ASIPRO(Siemens)を用いてROIを描出し、校正係数を乗じて、臓器(腫瘍および腎臓)における%注射用量/mL(平均値または最大値)を与えた。仮定では、1mLの密度は1gの組織(肺については除外)に等しい。
【0133】
実施例15~17:86Y-EB-MCG、86Y-EB-PSMA-617および86Y-EB-MCGの腫瘍取り込み
86Y-EB-MCG、86Y-EB-PSMA-617、および86Y-EB-MCGの腫瘍取り込みは、前述の例の86Y-EB-PSMA-617について記載されている手順に従って決定された。
【0134】
実施例18:マウスにおけるEB-PSMA-617による放射線治療
PC3-PIP異種移植片において腫瘍治療試験を実施して、90Y-EB-PSMA-617、177Lu-EB-PSMA-617対生理食塩水および90Y-DOTA-PSMA-617または177Lu-DOTA-PSMA-617の静脈内注射(複数可)の治療効果を評価した。この試験は、Pc3-PIP異種移植片の接種7日後に開始され、その際全てのマウスは、約100~150mm3の腫瘍体積を有していた。マウスを、以下のようにいくつかのグループに分けた;(1)生理食塩水(n=4)、(2)7.4MBq 90Y-EB-PSMA-617(n=6)、(3)3.7MBq 90Y-EB-PSMA-617(n=6)、(3)18.5MBq 177Lu-EB-PSMA-617(n=6)、(4)7.4MBq 177Lu-EB-PSMA-617(n=6)、(5)7.4MBq 90Y-DOTA-PSMA-617(n=6)および18.5MBq 177Lu-DOTA-PSMA-617(n=6)。マウスには、0日目(処置の開始)に単回注射を行った。すべての生きているマウスを、50日間モニターした。マウスの体重および腫瘍体積を、実験を通して3~7日ごとにモニターした。腫瘍体積の計算に用いた式は、V=幅2×長さ/2であった。
【0135】
研究所ACUCによって定義された終点基準は、15%を超える体重減少、1800mm3超の腫瘍体積、腫瘍の活性な潰瘍、または疼痛もしくは不安を示す異常行動であった。これらの定義はKaplan-Meier解析にも同様に用いた。
【0136】
実施例19:マウスにおけるEB-MCGおよびDOTA-MCGによる放射線療法
EB-MCG/DOTA-MCG誘導体を用いた実験は、前の実施例で述べた手順と同様に行った。
【0137】
本発明の概念は、例示的な原理および実施形態の観点から記載されているが、当業者は、以下の特許請求の範囲により定義される本開示の範囲および精神から逸脱することなく、記載されるものに代えて、変形がなされ、等価物が代用され得ることを認識するであろう。