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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20240307BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20240307BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20240307BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240307BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/02
F16F9/32 L
F16J15/3204 101
F16J15/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021021499
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022123993
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 康彦
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071595(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047775(WO,A1)
【文献】特開2016-160752(JP,A)
【文献】特開平09-144666(JP,A)
【文献】実公昭36-018911(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/34
F16F 9/02
F16F 9/32
F16J 15/3204
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン体と、前記ピストン体を納めるシリンダー体とからなり、前記ピストン体の移動又は相対的な移動により制動力を生じさせるダンパー装置であって、
前記ピストン体には、前記シリンダー体の内壁に対するシール部材が組み合わされており、
前記シール部材は、前記ピストン体に対する取り付け基部と、前記取り付け基部から延び出して前記内壁に摺接されるリップ部とを有すると共に、
前記ピストン体に前記シール部材の前記取り付け基部側の外面に対する撓み規制部を備えさせてなる、ダンパー装置。
【請求項2】
前記ピストン体に、前記ピストン体によって区分される前記シリンダー体内の一方空間側に位置するフランジ部と、前記ピストン体によって区分される前記シリンダー体内の他方空間側に位置して前記フランジ部との間で前記シール部材の前記取り付け基部を挟み込み状に保持する移動規制部とを備えさせてなる、請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
前記撓み規制部を、前記フランジ部から前記他方空間側に向けて突き出す前記ピストン体の移動方向に直交する向きに長い壁状としてなる、請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
前記リップ部は、その延び出し端に近づくに連れて前記シール部材の外径を漸増させるように形成されており、かつ、前記取り付け基部との連接箇所を変形し易く構成されてなる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピストンの作動により制動力を生じさせるダンパー装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンの作動により制動力を生じさせるダンパー装置として、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1のものでは、ピストンの外側に備えさせたシール部材によってシリンダーチューブの内壁とピストンとの間をシールするようになっている。ここで、かかるシール部材には、ピストンを挟んだ一方側に形成されるエア室と、他方側に形成されるエア室との間にピストンの移動によって圧力差が生じると、このシール部材をシリンダーチューブの内壁に押しつける向きの力が作用される。しかるに、特許文献1に示されるものでは、前記シール部材をピストンを取り巻くようにしてピストンの外側に単純に設けた構造となっているため、前記のような力の作用によるシール部材の変形が制御し難い。この種のダンパー装置は、典型的には、制動対象の動きをゆっくりとしたもの、高級感をもったもの、節度をもったもの、ないしは、突飛なものにしないようにするために用いられるものであるところ、かかるシール部材の変形が制御できないと、ダンパー装置から生じる制動力が安定せず、例えば、制動対象を急停止させたり、多段階に停止させてしまったり、あるいはまた、制動対象に制動力を作用させるべき場面で制動力を喪失させてしまうなどの不具合を招来することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-133029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のダンパー装置から所期の制動力が常時もたらされるように、ピストン体を構成するシール部材がシリンダー体の内壁に常時できるだけ同じ態様で摺接する構造をかかるピストン体に付与する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ダンパー装置を、 ピストン体と、前記ピストン体を納めるシリンダー体とからなり、前記ピストン体の移動又は相対的な移動により制動力を生じさせるダンパー装置であって、
前記ピストン体には、前記シリンダー体の内壁に対するシール部材が組み合わされており、
前記シール部材は、前記ピストン体に対する取り付け基部と、前記取り付け基部から延び出して前記内壁に摺接されるリップ部とを有すると共に、
前記ピストン体に前記シール部材の前記取り付け基部側の外面に対する撓み規制部を備えさせてなる、ものとした。
【0006】
ピストン体を挟んだ一方側に形成されるシリンダー体内の空間を拡大するピストン体の移動によってこの一方側の空間が負圧となると、シール部材の取り付け基部にはシリンダー体の内壁に向けた力が作用されるが、シール部材の取り付け基部の外面側は撓み規制部によって押さえられることから、このような力が作用されてもシール部材はリップ部以外の箇所でシリンダー体の内壁に接することはない。これにより、前記一方側の空間を拡大するピストン体の移動時にダンパー装置から生じる制動力を、リップ部以外でシール部材がシリンダー体の内壁に接するなどして不安定化させてしまう事態を、効果的に防止できる。
【0007】
前記ピストン体に、前記ピストン体によって区分される前記シリンダー体内の一方空間側に位置するフランジ部と、前記ピストン体によって区分される前記シリンダー体内の他方空間側に位置して前記フランジ部との間で前記シール部材の前記取り付け基部を挟み込み状に保持する移動規制部とを備えさせてなるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記撓み規制部を、前記フランジ部から前記他方空間側に向けて突き出す前記ピストン体の移動方向に直交する向きに長い壁状とすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記リップ部を、その延び出し端に近づくに連れて前記シール部材の外径を漸増させるように形成させ、かつ、前記取り付け基部との連接箇所を変形し易く構成させることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、前記撓み規制部によって、ピストン体を構成するシール部材がシリンダー体の内壁に常時できるだけ同じ態様で摺接するようにでき、この種のダンパー装置から所期の制動力が常時もたらされるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー装置(第一例)の斜視図である。
図2図2は、図1におけるA-A線位置での断面図である。
図3図3は、図2の要部拡大断面図であり、ピストン体は一方空間を拡大する向きに移動している。
図4図4は、図2の要部拡大断面図であり、ピストン体は一方空間を縮小する向きに移動している。
図5図5は、前記第一例の分解斜視図である。
図6図6は、前記第一例を構成するピストン体の分解斜視図である。
図7図7は、前記第一例を構成するロッドの要部斜視図である。
図8図8は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー装置(第二例)を構成するピストン体の要部斜視構成図である。
図9図9は、この発明の一実施の形態にかかるダンパー装置(第三例)を構成するピストン体の要部斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図9に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるダンパー装置は、これを構成するピストン体1の移動又は相対的な移動に制動力を生じさせるものであって、典型的には、制動対象となる可動部など(図示は省略する)を備える物品に組み合わされて、かかる制動対象の移動に対し前記制動力を作用させてかかる制動対象の移動を、ゆっくりとしたもの、高級感をもったもの、節度をもったもの、ないしは、突飛なものにしないように、するために用いられるものである。
【0013】
かかるダンパー装置は、ロッド体3を備えたピストン体1と、このピストン体1を納めるシリンダー体2とからなる。典型的には、かかるダンパー装置は、ロッド体3及びシリンダー体2のいずれか一方を前記制動対象側に直接あるいは間接に連係させ、これらの他方をかかる制動対象を移動可能に支持する側に直接あるいは間接に連係させることで、かかる制動対象を備えた物品に組み合わされる。
【0014】
図示の例では、前記シリンダー体2は、一端2aを開放させ、かつ、他端2bを閉塞させた筒状を呈している。図示は省略するが、シリンダー体2は両端を共に開放させた筒状体の一端を別部品によって塞いだ構成としても構わない。かかるシリンダー体2は、厚さを顕著に小さくした扁平筒状を呈している。より具体的には、かかるシリンダー体2は、幅側壁部2cと厚さ側壁部2dとを備えている。シリンダー体2をその中心軸x(図5参照/すなわち、ピストン体1の移動中心軸)に直交する向きに断面にした状態において、左右の厚さ側壁部2dは、前記中心軸x側を湾曲内側とするように湾曲されており、シリンダー体2の断面内郭形状は長円状となっている。 シリンダー体2の閉された一端2bの外側には、前記連係のための接続部2eが形成されている。
【0015】
図示の例では、前記ロッド体3には、ピストン体1の移動方向に沿った長穴3aが形成されている。そして、図示の例では、シリンダー体2内に前記ピストン体1及びロッド体3の少なくともピストン体1側に位置される箇所を納めた状態から、シリンダー体2の開放された一端2a側において一対の幅側壁部2c、2cに形成された貫通穴2f及び前記長穴3aにピン4を挿通することで、シリンダー体2とピストン体1側との組み合わせ状態を維持すると共に、ピストン体1側の移動をガイドするようになっている。ピストン体1を構成する後述のシール部材9は、図6に示される状態から、後述の連接箇所9eを中心とした弾性変形をした状態でシリンダー体2内に納められ、後述のリップ部9bの延び出し端を前記中心軸xを巡るいずれの位置においてもシリンダー体2の内壁2gに接しさせるようになっている。このシール部材9によって、シリンダー体2内の空間は、閉塞された他端2b側の一方空間5と、開放された一端2a側の他方空間6に区分される。一方空間5を拡大する向きのピストン体1の移動(図3)は後述のオリフィス14を通じた他方空間6側から一方空間5側への流体(図示の例では気体)の移動により許容されるようになっている。一方、図示の例では、一方空間5を縮小する向きのピストン体1の移動(図4)時は、一方空間5側が高圧となることから、シリンダー体2の内壁2gから後述のシール部材9のリップ部9bが離れる向きのシール部材9の弾性変形が招来され、シリンダー体2の内壁2gとリップ部9bとの間からの流体の移動によってこの向きのピストン体1の移動が許容されるようになっている。
【0016】
ロッド体3は、ロッド主体3bと、このロッド主体3bのシリンダー体2内に位置する内端に一体化されたロッド頭部3cとを備えている。ロッド頭部3cは、前記中心軸xに直交する向きの断面外郭形状を、前記シリンダー体2の断面内郭形状に倣った長円状とする内側部分3d及び外側部分3eを有する。ロッド主体3bは、その一端をロッド頭部3cの外側部分3eの中央に一体化させている。また、ロッド主体3bにおけるシリンダー体2外に位置される外端には前記連係のための接続部3fが形成されている。
【0017】
図示の例では、ロッド頭部3cの内側部分3d側の中央には、ピストン体1の嵌合部1aに対する被嵌合部3gが形成されている。図示の例では、嵌合部1aは頸部1cとこの頸部1cを介してピストン体1の後述の胴部8における後述の後端部8bの中央に一体化された嵌合頭部1bとからなる。一方、被嵌合部3gは、前記頸部1cを通過させる割欠き3hと、内側部分3dと外側部分3eとの間に形成された嵌合頭部1bのはめ込み空所3iとからなる。図示の例では、ピストン体1の胴部8に後述のように扁平筒状をなすシール部材9と移動規制部10をこれらが胴部8を取り巻くように組み合わせた状態から、ロッド頭部3cの割欠き3hを利用して嵌合頭部1bをはめ込み空所3iに納めることで、ピストン体1とロッド体3とが一体化されると同時に、ピストン体1の後述のフランジ部7とロッド頭部3cの内側部分3dとの間でシール部材9と移動規制部10とが保持されるようになっている。
【0018】
ピストン体1は、フランジ部7と、胴部8と、シール部材9と、移動規制部10とを備えている。
【0019】
胴部8は、シリンダー体2の幅方向y(図5参照)に沿う向きに長い長方形の板状を呈している。シリンダー体2内の空間は、ピストン体1によって、前記のように一方空間5と他方空間6に区分される。胴部8は、前記一方空間5側に向けられた前端部8aと、前記他方空間6側に向けられた後端部8bとを備える。
【0020】
フランジ部7は、胴部8の前端部8aに形成された鍔状を呈している。フランジ部7の外郭形状は、シリンダー体2の断面内郭形状に倣った長円状を呈している。フランジ部7の縁部7aとシリンダー体2の内壁2gとの間には、前記中心軸を周回するいずれの位置においても流体(この実施の形態では気体)を通過させる隙間11が形成されるようになっている(図3及び図4参照)。
【0021】
シール部材9は、内面9gを前記ピストン体1に実質的に接しさせる取り付け基部9aと、前記取り付け基部9aから延び出してシリンダー体2の内壁2gに摺接されるリップ部9bとを有する。シール部材9は、扁平筒なリング状を呈している。シール部材9は、典型的には、ゴムないしはゴム状弾性を備えたプラスチックから構成される。シール部材9は、前記中心軸xに直交する向きの断面を、前記中心軸xを巡るいずれの位置においても一様な形状とするように構成されている。
【0022】
シール部材9は、その前端部9cから前後方向(前記中心軸xに沿った方向)中程の位置までを前記取り付け基部9aとし、この中程の位置からその後端部9dまでを前記リップ部9bとしている。
【0023】
取り付け基部9aの前記中心軸xに直交する向きの断面内郭形状は、同じ向きでの胴部8の断面外郭形状と相補状をなす形状となっている。
【0024】
リップ部9bは、その延び出し端に近づくに連れて前記シール部材9の外径を漸増させるように形成されており、前記取り付け基部9aとの連接箇所9eを変形し易くさせた構成となっている。すなわち、リップ部9bは、取り付け基部9aから他方空間6側に延びるスカート状を呈している。図示の例では、かかる連接箇所9eは、シール部材9のその余の箇所より前記中心軸xに直交する向きでの厚さ寸法を小さくしており、これによりかかる連接箇所9eは変形し易くなっている。このようにすることで、リップ部9bを常時一定の位置で弾性変形させることができ、シリンダー体2の内壁2gに対してリップ部9bが常時同じ態様で摺接するようにできる。
【0025】
図示の例では、シール部材9の内側には、前記他方空間6側に向いた周回段差面9fが形成されている。シール部材9の前端部9cと周回段差面9fとの間が前記取り付け基部9aとして機能し、周回段差面9fとシール部材9の後端部9dとの間が前記リップ部9bとして機能するようになっている。
【0026】
取り付け基部9aの内面9gは、前記中心軸xに実質的に平行をなす面となっている。周回段差面9fは、前記中心軸xに実質的に直交する向きの面となっている。リップ部9bの延び出し端は、前記中心軸xに実質的に平行をなす外面と内面とを持った厚肉部9hとなっている。取り付け基部9aと厚肉部9hとの間は厚肉部9hに近づくに連れてリップ部9bの厚さ寸法を漸増させるように傾斜した外面と内面とをもった連接部9iとなっている。取り付け基部9aの外面9kは、シール部材9の前端部9cと取り付け基部9aの前後方向中程の位置まではこの中程の位置に近づくに連れて取り付け基部9aの厚さ寸法を漸増させる傾斜面9jとなっている(図6参照)。
【0027】
移動規制部10は、前記他方空間6側に位置して前記一方空間5側に位置される前記フランジ部7との間で前記シール部材9の前記取り付け基部9aを挟み込み状に保持する。
【0028】
図示の例では、移動規制部10は、扁平筒状を呈している。移動規制部10の前記中心軸xに直交する向きの断面内郭形状は、同じ向きでの胴部8の断面外郭形状と相補状をなす形状となっている。
【0029】
これにより、図示の例では、シール部材9内に胴部8を通し、次いで、移動規制部10内に胴部8を通し、この後、ピストン体1とロッド体3とを前記のように一体化させることで、フランジ部7とロッド頭部3cの内側部分3dとの間で、シール部材9と移動規制部10とを前後から挟むようにして保持できるようになっている。より具体的には、シール部材9の前端部9cがフランジ部7に接し、シール部材9の周回段差面9fに移動規制部10の前端部10aが接し、移動規制部10の後端部10bにロッド頭部3cの内側部分3dが接する。
【0030】
前記一方空間5を縮小するピストン体1の移動時(図4において矢印で示す向きへの移動)には、リップ部9bをシリンダー体2の内壁2gに摺接させるシール部材9にはこの移動方向と逆向きの力の作用を受けるが、移動規制部10によりシール部材9は所期の位置に保持され、この一方空間5を縮小するピストン体1の移動時にダンパー装置から生じる制動力がシール部材9のズレなどにより不安定化しないようになっている。
【0031】
また、この実施の形態にあっては、前記ピストン体1は、前記シール部材9の前記取り付け基部9a側の外面9kに接する撓み規制部12を備えている。かかる撓み規制部12は、前記フランジ部7から前記他方空間6側に向けて突き出す前記ピストン体1の移動方向に直交する向きに長い壁状となっている。
【0032】
図1図7に示される第一例にあっては、かかる撓み規制部12は、外郭形状を長円状とするフランジ部7の長軸に沿った縁部7aの中央位置を除いた箇所に形成されている。すなわち、撓み規制部12は、フランジ部7におけるシリンダー体2の幅側壁部2cの一方に向き合う縁部7a(図6におけるフランジ部7の上側)と、フランジ部7におけるシリンダー体2の幅側壁部2cの他方に向き合う縁部7a(図6におけるフランジ部7の下側)とにそれぞれ、形成されている。図示の例では、撓み規制部12は、シール部材9の取り付け基部9aの外面9kのうち、傾斜面9jとなっている箇所を覆う寸法分フランジ部7から他方空間6側に向けて突き出している。撓み規制部12の外面12aはシリンダー体2の内壁2gと実質的に平行をなし、かつ、両者間には流体を通過させる隙間13が形成されている(図3及び図4参照)。撓み規制部12の内郭形状は、シール部材9の取り付け基部9aの外郭形状に相補状をなす形状となっている。すなわち、撓み規制部12の内面12bの一部も傾斜面となっている。
第一例にあっては、フランジ部7の中央において、フランジ部7の他方空間6側に向けられる面7bに、その縁部7aから根本に続く第一の溝14aが形成されていると共に、胴部8の中央に前端部8aと後端部8bとの間に亘る第二の溝14bが形成されており、第一の溝14aと第二の溝14bは連通している。前記一方空間5を拡大するピストン体1の移動時(図3において矢印で示す向きへの移動)には、この第一の溝14aと第二の溝14bとがオリフィス14となってかかるピストン体1の移動が許容されるようになっている。
前記一方空間5を拡大するピストン体1の移動時(図3において矢印で示す向きへの移動)は、一方空間5側が負圧となるため、シール部材9の取り付け基部9aにはシリンダー体2の内壁2gに向けた力(取り付け基部9aを膨らませるような向きの力)が作用されるが、シール部材9の取り付け基部9aの外面9k側は撓み規制部12によって押さえられることから、このような力が作用されてもシール部材9はリップ部9b以外の箇所でシリンダー体2の内壁2gに接することはない。これにより、この実施の形態にあっては、前記一方空間5を拡大するピストン体1の移動時にダンパー装置から生じる制動力がリップ部9b以外でシール部材9がシリンダー体2の内壁2gに接するなどして不安定化することがないようになっている。
撓み規制部12のフランジ部7からの突き出し寸法は、必要に応じて適宜調整される。すなわち、かかる突き出し寸法z(図3参照)は、第一例よりも小さくても良い場合がある一方、第一例より大きくした方が良い場合もあり、さらに、リップ部9bの連接箇所9e側に達する位置まで撓み規制部12が突き出すようにした方が良い場合もある。
【0033】
図7に示される第二例にあっては、かかる撓み規制部12は、外郭形状を長円状とするフランジ部7の長軸に沿った縁部7aの全長に亘って形成されている。この第二例でも、撓み規制部12は、フランジ部7におけるシリンダー体2の幅側壁部2cの一方に向き合う縁部7aと、フランジ部7におけるシリンダー体2の幅側壁部2cの他方に向き合う縁部と7aにそれぞれ、形成されている。この第二例では、フランジ部7におけるシリンダー体2の厚さ側壁部2dに向き合う側に、その縁部7aから根本に続く第一の溝14aが形成されていると共に、胴部8におけるシリンダー体2の厚さ側壁部2dに向き合う側に、前端部8aと後端部8bとの間に亘る第二の溝14bが形成されており、第一の溝14aと第二の溝14bは連通している。前記一方空間5を拡大するピストン体1の移動時には、この第一の溝14aと第二の溝14bとがオリフィス14となってかかるピストン体1の移動が許容されるようになっている。
この第二例のようにすれば、シール部材9の取り付け基部9aにおけるシリンダー体2の幅側壁部2cに向き合う箇所の全体を撓み規制部12によって押さえることが可能となる。
【0034】
図8に示される第三例では、前記第一例同様、撓み規制部12は、外郭形状を長円状とするフランジ部7の長軸に沿った縁部7aの中央位置を除いた箇所に形成されている。また、第三例では、撓み規制部12は、弾性変形容易な薄肉部15をもって、フランジ部7に連接されている。第三例では、撓み規制部12はその内面12bとなる一面を、フランジ部7の他方空間6側に向けられる面7bと同面をなすようにして、フランジ部7と一体に形成されている。そして、この第三例では、胴部8の後端部8b側からシール部材9内にフランジ部7にシール部材9の前端部9cが突き当たる位置まで胴部8を通した後、前記薄肉部15をヒンジとして撓み規制部12がシール部材9の取り付け基部9aを胴部8との間で挟む位置まで屈曲させることで、第一例と実質的に同一のピストン体1を構成できるようになっている。
この第三例では、移動規制部10が胴部8と一体に形成されている。第一例に示されるように、撓み規制部12の突き出し寸法を大きくすればするほど、撓み規制部12と移動規制部10との間の隙間16(図3参照)の前後方向の寸法は小さくなるが、第三例のようにすれば、胴部8と移動規制部10とを一体化させても撓み規制部12の内側にシール部材9の取り付け基部9aを支障なく納めることができる。
【0035】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施形態を含むものである。
【符号の説明】
【0036】
1 ピストン体
2 シリンダー体
2g 内壁
9 シール部材
9a 取り付け基部
9b リップ部
12 撓み規制部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9