(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】第1光学系、分光器、及び光学装置
(51)【国際特許分類】
G01J 3/18 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01J3/18
(21)【出願番号】P 2021124790
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】金子 力
(72)【発明者】
【氏名】小島 学
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-221922(JP,A)
【文献】特開2016-130732(JP,A)
【文献】特開2020-153863(JP,A)
【文献】特開2000-088647(JP,A)
【文献】特開平11-083626(JP,A)
【文献】特開2009-175038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光を平行光化して、回転軸を中心に回転可能な回折格子へと導く第1レンズと、
前記回折格子で回折した第1回折光であって、前記第1レンズにより第1焦点に集光された前記第1回折光を平行光化する第2レンズと、
前記第2レンズを通過した前記第1回折光を前記回折格子へと折り返す一対の第1ミラーと、
前記一対の第1ミラーにより折り返された前記第1回折光を第2焦点に集光する第3レンズと、
前記第3レンズにより集光された前記第1回折光を平行光化して前記回折格子へと導く第4レンズと、
を備え、
前記第1レンズと前記第4レンズとは、互いに略同一の第1焦点距離を有し、
前記第2レンズと前記第3レンズとは、互いに略同一の第2焦点距離を有し、
前記第1焦点から前記第2焦点までの光路に沿った第1距離は、第1所定条件
を満たし、
前記第1所定条件は、前記回折格子において一方向に延在する刻線と前記回転軸とがなす角度に依存する前記第1回折光の集光位置のずれが、前記第1焦点と前記第2焦点との間で互いに反転する条件を含む、
第1光学系。
【請求項2】
前記第1距離
は、前記第2焦点距離の略4倍であ
る、
請求項1に記載の第1光学系。
【請求項3】
前記第1焦点距離は、前記第2焦点距離よりも長い、
請求項1又は2に記載の第1光学系。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の第1光学系と、
前記回折格子と、
前記回折格子で回折した第2回折光が前記第4レンズにより集光される第3焦点に位置する第1スリットと、
を備える、
分光器。
【請求項5】
第2光学系をさらに備え、
前記第2光学系は、
前記第4レンズにより前記第3焦点に集光された前記第2回折光を平行光化して前記回折格子へと導く第5レンズと、
前記回折格子で回折した第3回折光であって、前記第5レンズにより第4焦点に集光された前記第3回折光を平行光化する第6レンズと、
前記第6レンズを通過した前記第3回折光を前記回折格子へと折り返す一対の第2ミラーと、
前記一対の第2ミラーにより折り返された前記第3回折光を第5焦点に集光する第7レンズと、
前記第7レンズにより集光された前記第3回折光を平行光化して前記回折格子へと導く第8レンズと、
を備え、
前記第5レンズと前記第8レンズとは、互いに略同一の第3焦点距離を有し、
前記第6レンズと前記第7レンズとは、互いに略同一の第4焦点距離を有し、
前記第4焦点から前記第5焦点までの光路に沿った第2距離は、第2所定条件
を満たし、
前記第2所定条件は、前記刻線と前記回転軸とがなす角度に依存する前記第3回折光の集光位置のずれが、前記第4焦点と前記第5焦点との間で互いに反転する条件を含む、
請求項4に記載の分光器。
【請求項6】
前記第2距離
は、前記第4焦点距離の略4倍であ
る、
請求項5に記載の分光器。
【請求項7】
前記第3焦点距離は、前記第4焦点距離よりも長い、
請求項5又は6に記載の分光器。
【請求項8】
前記回折格子で回折した第4回折光が前記第8レンズにより集光される第6焦点に位置する第2スリットを備える、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の分光器。
【請求項9】
前記回折格子は、
前記第1光学系と共に光に対して光学的に作用する第1回折格子と、
前記第2光学系と共に光に対して光学的に作用する第2回折格子と、
を備え、
前記第1回折格子と前記第2回折格子とは互いに別体として構成されている、
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の分光器。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれか1項に記載の分光器を備える光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1光学系、分光器、及び光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば波長領域において高い分解能又はシャープなフィルタ特性を得るために、被測定光を回折格子に複数回入射させると共にスリットを通過させるマルチパス方式の分光器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、波長分解能を向上させると共に、実質長さが短縮された二段式分光器が開示されている。例えば、特許文献2には、マルチパス方式の分光器であって、最終の分光系より前の分光系において生じた散乱光の一部が最終の分光系での回折光と同一光路をたどる場合に生じる、分光特性上の分解能及びダイナミックレンジの悪化を抑制する分光器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-088647号公報
【文献】特開2009-175038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来技術では、分光器において所定の波長を選択するために、回折格子は、回転軸を中心に回転可能な状態で駆動装置に取り付けられる。回折現象は、回折格子において一方向に延在する刻線が配列されている配列方向に沿って生じる。一方で、当該配列方向に直交する刻線の延在方向において、平面鏡と同様に入射角と出射角とが互いに同一となるような通常の反射現象が生じる。
【0006】
このとき、一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに理想的に平行になっていると、回折格子が回転軸を中心に回転しても刻線の延在方向における出射角は一定である。しかしながら、一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに平行になっていないと、これらがなす角度及び回折格子の回転角に依存して当該出射角が変化する。結果として、回折光は、回折格子の所定の回転角によっては、その後の光路に配置されているスリットを通過できなかったり、受光素子に入射することができなかったりする。
【0007】
このような問題を極力避けるために、一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに理想的な平行状態に近づくように、回折格子を駆動装置に取り付ける必要がある。このような作業は容易ではなく、多くの時間を費やして行われる。
【0008】
本開示は、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる第1光学系、分光器、及び光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態に係る第1光学系は、入射した光を平行光化して、回転軸を中心に回転可能な回折格子へと導く第1レンズと、前記回折格子で回折した第1回折光であって、前記第1レンズにより第1焦点に集光された前記第1回折光を平行光化する第2レンズと、前記第2レンズを通過した前記第1回折光を前記回折格子へと折り返す一対の第1ミラーと、前記一対の第1ミラーにより折り返された前記第1回折光を第2焦点に集光する第3レンズと、前記第3レンズにより集光された前記第1回折光を平行光化して前記回折格子へと導く第4レンズと、を備え、前記第1レンズと前記第4レンズとは、互いに略同一の第1焦点距離を有し、前記第2レンズと前記第3レンズとは、互いに略同一の第2焦点距離を有し、前記第1焦点から前記第2焦点までの光路に沿った第1距離は、第1所定条件により定まり、前記第1所定条件は、前記回折格子において一方向に延在する刻線と前記回転軸とがなす角度に依存する前記第1回折光の集光位置のずれが、前記第1焦点と前記第2焦点との間で互いに反転する条件を含む。
【0010】
これにより、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる。第1光学系では、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに平行になっていない場合であっても、これらがなす角度及び回折格子の回転角に依存する非分散方向における集光位置のずれの量が光学系全体として見ればゼロとなる。
【0011】
これにより、回折格子が回転軸に対して理想的な平行状態となるように駆動装置に取り付けられていなくても、第2回折光の非分散方向の焦点位置は、回折格子の任意の回転角において一定である。したがって、特定波長の第2回折光は、第1光学系の後の光路に配置されているスリットを回折格子の回転角に依存せずに通過可能である。第2回折光は、スリットの後の光路に配置されている受光素子に、回折格子の回転角に依存せずに入射可能である。
【0012】
このように、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに理想的な平行状態になっていなくても、分光器は装置として正常に機能する。すなわち、回転軸に対する回折格子の状態について、理想的な平行状態からのずれの許容度が向上する。したがって、駆動装置への回折格子の取付作業に対して高い精度が要求されない。結果として、このような取付作業が容易になり、取付作業を短時間で行うことが可能となる。以上のように作業コストが低下することで、分光器及び分光器が搭載される光学装置等は、高性能化を容易としつつ、製品として安価になる。
【0013】
一実施形態における第1光学系では、前記第1所定条件は、前記第1距離が前記第2焦点距離の略4倍であるという条件を含んでもよい。これにより、第3レンズの第2焦点から第1回折光が進む方向の角度は、第2レンズに入射する第1回折光の方向の角度と一致する。したがって、第4レンズとして第1レンズと同一の大きさのものを使用すれば第1回折光が第4レンズを確実に通過する。したがって、ユーザは、第4レンズとして第1レンズと同一のものを使用することができる。
【0014】
一実施形態における第1光学系では、前記第1焦点距離は、前記第2焦点距離よりも長くてもよい。これにより、第1回折光の集光位置と第1レンズとの距離が大きくなる。同様に、第2回折光の集光位置と第4レンズとの距離が大きくなる。したがって、一の波長に基づく回折光の集光位置と、他の波長に基づく回折光の集光位置との間の距離が各焦点において大きくなる。したがって、スリット幅が細いスリットを使用しても、第2回折光について特定波長のみを容易に取り出すことが可能となる。したがって、分光器による波長の選択精度が向上する。
【0015】
幾つかの実施形態に係る分光器は、上記のいずれかに記載の第1光学系と、前記回折格子と、前記回折格子で回折した第2回折光が前記第4レンズにより集光される第3焦点に位置する第1スリットと、を備える。
【0016】
これにより、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる。分光器では、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに平行になっていない場合であっても、これらがなす角度及び回折格子の回転角に依存する非分散方向における集光位置のずれの量が光学系全体として見ればゼロとなる。
【0017】
これにより、回折格子が回転軸に対して理想的な平行状態となるように駆動装置に取り付けられていなくても、第2回折光の非分散方向の焦点位置は、回折格子の任意の回転角において一定である。したがって、特定波長の第2回折光は、第1光学系の後の光路に配置されている第1スリットを回折格子の回転角に依存せずに通過可能である。第2回折光は、第1スリットの後の光路に配置されている受光素子に、回折格子の回転角に依存せずに入射可能である。
【0018】
このように、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに理想的な平行状態になっていなくても、分光器は装置として正常に機能する。すなわち、回転軸に対する回折格子の状態について、理想的な平行状態からのずれの許容度が向上する。したがって、駆動装置への回折格子の取付作業に対して高い精度が要求されない。結果として、このような取付作業が容易になり、取付作業を短時間で行うことが可能となる。以上のように作業コストが低下することで、分光器及び分光器が搭載される光学装置等は、高性能化を容易としつつ、製品として安価になる。
【0019】
一実施形態における分光器は、第2光学系をさらに備え、前記第2光学系は、前記第4レンズにより前記第3焦点に集光された前記第2回折光を平行光化して前記回折格子へと導く第5レンズと、前記回折格子で回折した第3回折光であって、前記第5レンズにより第4焦点に集光された前記第3回折光を平行光化する第6レンズと、前記第6レンズを通過した前記第3回折光を前記回折格子へと折り返す一対の第2ミラーと、前記一対の第2ミラーにより折り返された前記第3回折光を第5焦点に集光する第7レンズと、前記第7レンズにより集光された前記第3回折光を平行光化して前記回折格子へと導く第8レンズと、を備え、前記第5レンズと前記第8レンズとは、互いに略同一の第3焦点距離を有し、前記第6レンズと前記第7レンズとは、互いに略同一の第4焦点距離を有し、前記第4焦点から前記第5焦点までの光路に沿った第2距離は、第2所定条件により定まり、前記第2所定条件は、前記刻線と前記回転軸とがなす角度に依存する前記第3回折光の集光位置のずれが、前記第4焦点と前記第5焦点との間で互いに反転する条件を含む。
【0020】
これにより、回折格子による回折の回数が増えることで、より波長精度を向上させて光を取り出すことができる。すなわち、分光器による光の波長の測定誤差が小さくなる。
【0021】
一実施形態における分光器では、前記第2所定条件は、前記第2距離が前記第4焦点距離の略4倍であるという条件を含んでもよい。これにより、第7レンズの第5焦点から第3回折光が進む方向の角度は、第6レンズに入射する第3回折光の方向の角度と一致する。したがって、第8レンズとして第5レンズと同一の大きさのものを使用すれば第3回折光が第8レンズを確実に通過する。したがって、ユーザは、第8レンズとして第5レンズと同一のものを使用することができる。
【0022】
一実施形態における分光器では、前記第3焦点距離は、前記第4焦点距離よりも長くてもよい。これにより、第3回折光の集光位置と第5レンズとの距離が大きくなる。同様に、第4回折光の集光位置と第8レンズとの距離が大きくなる。したがって、一の波長に基づく回折光の集光位置と、他の波長に基づく回折光の集光位置との間の距離が各焦点において大きくなる。したがって、スリット幅が細いスリットを使用しても、第4回折光について特定波長のみを容易に取り出すことが可能となる。したがって、分光器による波長の選択精度が向上する。
【0023】
一実施形態における分光器は、前記回折格子で回折した第4回折光が前記第8レンズにより集光される第6焦点に位置する第2スリットを備えてもよい。これにより、第6焦点に集光した特定波長の第4回折光のみを容易に取り出すことが可能となる。
【0024】
一実施形態における分光器では、前記回折格子は、前記第1光学系と共に光に対して光学的に作用する第1回折格子と、前記第2光学系と共に光に対して光学的に作用する第2回折格子と、を備え、前記第1回折格子と前記第2回折格子とは互いに別体として構成されていてもよい。
【0025】
これにより、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になるという上述した効果がより顕著となる。例えば、従来技術において2つの回折格子を駆動装置に取り付ける場合、回折格子における刻線の延在方向が回転軸と平行になるように各回折格子を駆動装置に取り付ける作業は、1つの回折格子のときと比較してさらに複雑になる。一実施形態における分光器では、各回折格子について取付作業の高い精度が要求されない。したがって、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になるという効果が、1つの回折格子のときよりもさらに顕著となる。
【0026】
加えて、2つの回折格子を用いると、サイズが大きい単一の回折格子を用いるときと比較して、コストがより低下する。したがって、分光器及び分光器が搭載される光学装置等は、高性能化を容易としつつ、製品として安価になる。
【0027】
幾つかの実施形態に係る光学装置は、上記のいずれかに記載の分光器を備える。
【0028】
これにより、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる。光学装置では、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに平行になっていない場合であっても、これらがなす角度及び回折格子の回転角に依存する非分散方向における集光位置のずれの量が光学系全体として見ればゼロとなる。
【0029】
これにより、回折格子が回転軸に対して理想的な平行状態となるように駆動装置に取り付けられていなくても、回折光の非分散方向の焦点位置は、回折格子の任意の回転角において一定である。したがって、特定波長の回折光は、光学系の後の光路に配置されているスリットを回折格子の回転角に依存せずに通過可能である。回折光は、スリットの後の光路に配置されている受光素子に、回折格子の回転角に依存せずに入射可能である。
【0030】
このように、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに理想的な平行状態になっていなくても、光学装置は装置として正常に機能する。すなわち、回転軸に対する回折格子の状態について、理想的な平行状態からのずれの許容度が向上する。したがって、駆動装置への回折格子の取付作業に対して高い精度が要求されない。結果として、このような取付作業が容易になり、取付作業を短時間で行うことが可能となる。以上のように作業コストが低下することで、分光器が搭載される光学装置は、高性能化を容易としつつ、製品として安価になる。
【発明の効果】
【0031】
本開示によれば、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる第1光学系、分光器、及び光学装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る分光器の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の光学系の概略構成のみを示す模式図である。
【
図3】回折格子に光が入射する様子を示した模式図である。
【
図4】本開示の第2実施形態に係る分光器の概略構成を示す模式図である。
【
図5】本開示の第3実施形態に係る分光器の概略構成を示す模式図である。
【
図6】回折格子における光の回折及び反射の様子を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0034】
特許文献1に記載の二段型分光器では、入射スリットより入射した光が、コリメータで平行光に変換され、回折格子に入射する。回折格子は、一定間隔で互いに平行に延在する複数の刻線を有する反射板であり、入射する光を分散分光してその回折光を出射する。当該回折格子は、不図示の駆動装置により、回折格子の中央部において刻線の延在方向と平行に延在する回転軸を中心にして回転可能に構成されている。回折格子は、入射する光に対する角度を任意に変更可能に構成されている。
【0035】
回折格子で分散分光された光は、コリメ-タで収束光に変換され、折り返し反射手段により折り返される。折り返された光は、再度コリメ-タにて平行光に変換され、回折格子に入射する。入射した光は2回目の分散分光により回折光として回折格子から出射する。出射した光はコリメ-タにより集光され、出射スリットにより選択される。
【0036】
特許文献2に記載の分光器では、入射スリットとなっている光ファイバから入射した光が、コリメ-タで平行光に変換され、回折格子に入射する。回折格子で分散分光された光は、コリメ-タにより集光される。折り返し反射手段部で折り返された光は、コリメ-タに入射し、平行光に変換され、回折格子に再入射する。入射した光は2回目の分散分光により回折光として回折格子から出射する。出射した光はコリメ-タにより集光され、出射スリットにより取り出される。
【0037】
図6は、回折格子における光の回折及び反射の様子を示した模式図である。出射スリットにより取り出される波長は、回折格子の角度を制御することで選択可能である。当該波長は、以下の式1により示される。
【0038】
m・λ1=d・cosθ・(sinα+sinβ)・・・・(式1)
【0039】
ここで、mは、回折次数である。λ1は、光の波長である。dは、回折格子の格子間隔である。αは、
図6に示すとおり、回折格子の反射面に対する被測定光の入射角である。βは、
図6に示すとおり、回折格子の反射面に対する回折光の出射角である。θは、
図6に示すとおり、回折格子の刻線の延在方向に沿った光の入射角及び反射角である。
【0040】
回折格子の反射光のうち分散方向については、回折格子の回転角を制御することで、取り出す波長が選択可能となる。本明細書において、「分散方向」は、回折格子において一方向に延在する刻線が配列されている配列方向を含み、例えば
図6の方向d1を含む。一方で、非分散方向については回転角に依存せず、光は、平面鏡と同様に入射角θと反射角θとが互いに一致する関係で反射する。本明細書において、「非分散方向」は、回折格子において一方向に延在する刻線の延在方向を含み、例えば
図6の方向d2を含む。非分散方向における光の出射角は、回折格子の回転角に依存せずに一定である。
【0041】
仮に、回折格子において一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに平行にならず、角度γだけ傾きをもった状態で回折格子が駆動装置に取り付けられていた場合、非分散方向における光の出射角は、角度γだけ変化する。このとき、回折格子が角度α1だけ回転すると、角度γの出射角成分はγ/cosα1の関係式で変化することになる。
【0042】
出射角が変化した回折光はコリメ-タにより集光される。その集光位置の非分散方向におけるずれの量は、sin(γ/cosα1)に比例することとなる。集光位置は、回転角である角度α1に依存して変化することになる。その結果、回折光は、回折格子の所定の回転角によっては、その後の光路に配置されているスリットを通過できなかったり、受光素子に入射することができなかったりする。したがって、分光器としての光の選択及び取り出しが正常に機能しなくなり、装置として成り立たない。スリット幅を広げることでこのような光の通過の妨げを抑制することも可能であるが、この場合、必要となる光以外の成分もスリットを通過しやすくなってしまい、結果的に分光器としての光学特性が低下することになる。
【0043】
以上のような問題点を避けるために、回折格子の回転に依存せずに、刻線の延在方向における出射角が一定となるようにする必要がある。すなわち、一方向に延在する刻線と回転軸とが互いに理想的な平行状態に近づくように、回折格子を駆動装置に取り付ける必要がある。通常、駆動装置と回折格子とは別部品として構成されているため、理想的な平行状態に近づけるための取付作業には、多くの時間が費やされる。
【0044】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、回折格子を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる第1光学系、分光器、及び光学装置を提供することを目的とする。以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る分光器1の概略構成を示す模式図である。
図2は、
図1の光学系10の概略構成のみを示す模式図である。
図1及び
図2を参照しながら、第1実施形態に係る分光器1の構成及び機能について主に説明する。
【0046】
分光器1は、回折現象を利用して、光ファイバ2から入射した光の中から特定波長の回折光のみを取り出す。分光器1は、大きな構成要素として、光学系10と、回折格子3と、スリット4と、受光素子5と、を有する。
【0047】
光学系10は、光ファイバ2から光路に沿って順に配置されている、第1レンズ111、第2レンズ112、ミラー12、ミラー13、第3レンズ113、及び第4レンズ114を有する。
【0048】
第1レンズ111は、入射スリットを兼ねた光ファイバ2から入射した光L0を平行光化して、回転軸Cを中心に回転可能な回折格子3へと導く。第1レンズ111は、回折格子3で回折した第1回折光L1に作用し、第1焦点f1に第1回折光L1を集光する。第2レンズ112は、第1レンズ111により第1焦点f1に集光され、再度拡散する第1回折光L1を平行光化する。
【0049】
一対のミラー12、13は、第2レンズ112を通過した第1回折光L1を回折格子3へと折り返す。ミラー12は、第2レンズ112により平行光となった第1回折光L1を90°の角度又は90°に近似する角度でミラー13に向けて反射させる。ミラー13は、ミラー12で反射した第1回折光L1を第3レンズ113に向けて90°の角度又は90°に近似する角度でさらに反射させる。
【0050】
第3レンズ113は、一対のミラー12、13により折り返された第1回折光L1を第2焦点f2に集光する。第4レンズ114は、第3レンズ113により第2焦点f2に集光され、再度拡散する第1回折光L1を平行光化して回折格子3へと導く。第4レンズ114は、回折格子3で回折した第2回折光L2に作用し、第3焦点f3に第2回折光L2を集光する。
【0051】
スリット4は、回折格子3で回折した第2回折光L2が第4レンズ114により集光される第3焦点f3に位置する。スリット4は、特定波長の第2回折光L2のみを取り出す。受光素子5は、スリット4を通過した特定波長の第2回折光L2のみを受光する。分光器1は、受光素子5で受光した第2回折光L2の光強度を測定する。
【0052】
第1レンズ111と第4レンズ114とは、互いに略同一の第1焦点距離を有する。すなわち、第1レンズ111と第4レンズ114とは、互いに同一の、又は近似する第1焦点距離を有する。第2レンズ112と第3レンズ113とは、互いに略同一の第2焦点距離を有する。すなわち、第2レンズ112と第3レンズ113とは、互いに同一の、又は近似する第2焦点距離を有する。第1焦点距離は、第2焦点距離よりも長い。
【0053】
図2に示すとおり、第1焦点f1から第2焦点f2までの光路に沿った距離は、所定条件により定まる。所定条件は、回折格子3において一方向に延在する刻線と回転軸Cとがなす角度に依存する第1回折光L1の集光位置のずれが、第1焦点f1と第2焦点f2との間で互いに反転する条件を含む。より具体的には、所定条件は、上記距離が第2焦点距離fの略4倍であるという条件を含む。すなわち、所定条件は、上記距離が第2焦点距離fの4倍又は4に近似する値で乗算された第2焦点距離fの倍数であるという条件を含む。
【0054】
所定条件は、第1焦点f1から第2焦点f2までの光路に沿った距離が第2焦点距離fの略4倍であるという条件に限定されず、第2焦点f2を通過して拡散する第1回折光L1が第4レンズ114の大きさ内に収まるのであれば、任意の条件を含んでもよい。
【0055】
以上のような第1実施形態によれば、回折格子3を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になる。光学系10及び分光器1では、回折格子3において一方向に延在する刻線と回転軸Cとが互いに平行になっていない場合であっても、これらがなす角度及び回折格子3の回転角に依存する非分散方向における集光位置のずれの量が光学系10全体として見ればゼロとなる。
【0056】
より具体的には、第1回折光L1の第2焦点f2での集光位置の非分散方向におけるずれは、第1回折光L1の第1焦点f1での集光位置の非分散方向におけるずれに対して反転する。第1回折光L1が回折格子3でさらに回折することで第1焦点f1でのずれと同一のずれが第3焦点f3において第2回折光L2に生じるので、第2焦点f2におけるずれと打ち消し合って第3焦点f3ではずれがゼロとなる。
【0057】
これにより、回折格子3が回転軸Cに対して理想的な平行状態となるように駆動装置に取り付けられていなくても、第2回折光L2の非分散方向の焦点位置は、回折格子3の任意の回転角において一定である。したがって、特定波長の第2回折光L2は、光学系10の後の光路に配置されているスリット4を回折格子3の回転角に依存せずに通過可能である。第2回折光L2は、スリット4の後の光路に配置されている受光素子5に、回折格子3の回転角に依存せずに入射可能である。
【0058】
このように、回折格子3において一方向に延在する刻線と回転軸Cとが互いに理想的な平行状態になっていなくても、分光器1は装置として正常に機能する。すなわち、回転軸Cに対する回折格子3の状態について、理想的な平行状態からのずれの許容度が向上する。したがって、駆動装置への回折格子3の取付作業に対して高い精度が要求されない。結果として、このような取付作業が容易になり、取付作業を短時間で行うことが可能となる。以上のように作業コストが低下することで、分光器1及び分光器1が搭載される光学装置等は、高性能化を容易としつつ、製品として安価になる。
【0059】
図3は、回折格子3に光が入射する様子を示した模式図である。
図3を参照しながら、上述した効果を数式も用いながらより厳密に説明する。
【0060】
回折格子3における刻線の延在方向が回転軸Cに対して角度γでずれている場合、第1レンズ111により集光される第1回折光L1の第1焦点f1での非分散方向の集光位置は、角度γがゼロであるときの位置と比較して、f(sinθ-sin(γ/cosα))により表される。ここで、fは、第2焦点距離である。θは、回折格子3の刻線の延在方向に沿った光の入射角である。αは、回折格子3の反射面の垂線と入射する光の分散方向成分とがなす角度である。第1焦点f1における第1回折光L1の集光位置は、角度γがゼロであるときと比較して、光軸に直交する方向、例えば
図2の紙面において左右方向に-sin(γ/cosα)に比例する量だけずれることになる。
【0061】
第1レンズ111による第1焦点f1での集光位置のこのようなずれは、第2レンズ112、一対のミラー12、13、及び第3レンズ113を第1回折光L1が通過することで、+sin(γ/cosα)に比例する量に反転する。より具体的には、第1回折光L1の第2焦点f2での非分散方向の集光位置は、f(sinθ+sin(γ/cosα))により表される。
【0062】
第2焦点f2においてf(sinθ+sin(γ/cosα))により表される集光位置から第4レンズ114に入射した第1回折光L1は、平行光に変換されて回折格子3に再入射する。このとき、回折格子3に対する光L0の最初の入射と同様に、第3焦点f3における第2回折光L2の集光位置は、-sin(γ/cosα)に比例する量だけずれることになる。したがって、第2焦点f2で発生した、符号を反転させた+sin(γ/cosα)に比例する誤差は、2回目の回折格子3での反射により生じる-sin(γ/cosα)に比例する誤差と相殺される。
【0063】
結果として、第4レンズ114により集光される第2回折光L2の集光位置は、f(sinθ)で表され、角度γに依存しない。すなわち、これは、回転軸Cが回折格子3における刻線の延在方向と平行であり、角度γがゼロである場合の集光位置に対応する。第2回折光L2の集光位置は、回折格子3の回転角に依存せず一定である。
【0064】
第1焦点f1から第2焦点f2までの光路に沿った距離が第2焦点距離fの略4倍であるという条件を所定条件が含むことで、第3レンズ113の第2焦点f2から第1回折光L1が進む方向の角度は、第2レンズ112に入射する第1回折光L1の方向の角度と一致する。したがって、第4レンズ114として第1レンズ111と同一の大きさのものを使用すれば第1回折光L1が第4レンズ114を確実に通過する。したがって、ユーザは、第4レンズ114として第1レンズ111と同一のものを使用することができる。
【0065】
第1焦点距離が第2焦点距離fよりも長いことで、第1回折光L1の集光位置と第1レンズ111との距離が大きくなる。同様に、第2回折光L2の集光位置と第4レンズ114との距離が大きくなる。したがって、一の波長に基づく回折光の集光位置と、他の波長に基づく回折光の集光位置との間の距離が各焦点において大きくなる。したがって、スリット幅が細いスリット4を使用しても、第2回折光L2について特定波長のみを容易に取り出すことが可能となる。したがって、分光器1による波長の選択精度が向上する。
【0066】
(第2実施形態)
図4は、本開示の第2実施形態に係る分光器1の概略構成を示す模式図である。
図4を参照しながら、第2実施形態に係る分光器1の構成及び機能について主に説明する。
【0067】
第2実施形態では、第1光学系としての光学系10に加えて第2光学系20を分光器1が有し、2回ではなく4回にわたって回折格子3により光が回折する点で第1実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る分光器1においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態とは異なる構成及び機能について主に説明する。
【0068】
第2実施形態に係る分光器1は、第1実施形態に係る分光器1のスリット4と受光素子5との間に第2光学系20を含むさらなる光学系を有する。分光器1は、第1光学系としての光学系10と、回折格子3と、第1スリット4aと、レンズ6と、ミラー7と、ミラー8と、レンズ9と、第2光学系20と、第2スリット4bと、受光素子5と、を有する。
【0069】
レンズ6は、第1スリット4aを通過して、再度拡散する特定波長の第2回折光L2を平行光化する。一対のミラー7、8は、レンズ6を通過した第2回折光L2を回折格子3へと折り返す。ミラー7は、レンズ6により平行光となった第2回折光L2を90°の角度又は90°に近似する角度でミラー8に向けて反射させる。ミラー8は、ミラー7で反射した第2回折光L2をレンズ9に向けて90°の角度又は90°に近似する角度でさらに反射させる。レンズ9は、一対のミラー7、8により折り返された第2回折光L2を焦点f0に集光する。
【0070】
第2光学系20は、焦点f0に集光した第2回折光L2の光路に沿って順に配置されている、第5レンズ211、第6レンズ212、ミラー22、ミラー23、第7レンズ213、及び第8レンズ214を有する。
【0071】
第5レンズ211は、光学系10の第4レンズ114により第3焦点f3に集光された第2回折光L2を平行光化して回折格子3へと導く。より具体的には、第5レンズ211は、レンズ9により焦点f0に集光され、再度拡散する第2回折光L2を平行光化して回折格子3へと導く。第5レンズ211は、回折格子3で回折した第3回折光L3に作用し、第4焦点f4に第3回折光L3を集光する。第6レンズ212は、第5レンズ211により第4焦点f4に集光され、再度拡散する第3回折光L3を平行光化する。
【0072】
一対のミラー22、23は、第6レンズ212を通過した第3回折光L3を回折格子3へと折り返す。ミラー22は、第6レンズ212により平行光となった第3回折光L3を90°の角度又は90°に近似する角度でミラー23に向けて反射させる。ミラー23は、ミラー22で反射した第3回折光L3を第7レンズ213に向けて90°の角度又は90°に近似する角度でさらに反射させる。
【0073】
第7レンズ213は、一対のミラー22、23により折り返された第3回折光L3を第5焦点f5に集光する。第8レンズ214は、第7レンズ213により第5焦点f5に集光され、再度拡散する第3回折光L3を平行光化して回折格子3へと導く。第8レンズ214は、回折格子3で回折した第4回折光L4に作用し、第6焦点f6に第4回折光L4を集光する。
【0074】
第2スリット4bは、回折格子3で回折した第4回折光L4が第8レンズ214により集光される第6焦点f6に位置する。第2スリット4bは、特定波長の第4回折光L4のみを取り出す。受光素子5は、第2スリット4bを通過した特定波長の第4回折光L4のみを受光する。分光器1は、受光素子5で受光した第4回折光L4の光強度を測定する。
【0075】
第5レンズ211と第8レンズ214とは、互いに略同一の第3焦点距離を有する。すなわち、第5レンズ211と第8レンズ214とは、互いに同一の、又は近似する第3焦点距離を有する。第6レンズ212と第7レンズ213とは、互いに略同一の第4焦点距離を有する。すなわち、第6レンズ212と第7レンズ213とは、互いに同一の、又は近似する第4焦点距離を有する。第3焦点距離は、第4焦点距離よりも長い。第3焦点距離は第1焦点距離と同一であってもよい。第4焦点距離は第2焦点距離と同一であってもよい。
【0076】
図2と同様に、第4焦点f4から第5焦点f5までの光路に沿った距離は、所定条件により定まる。所定条件は、回折格子3において一方向に延在する刻線と回転軸Cとがなす角度に依存する第3回折光L3の集光位置のずれが、第4焦点f4と第5焦点f5との間で互いに反転する条件を含む。より具体的には、所定条件は、上記距離が第4焦点距離fの略4倍であるという条件を含む。すなわち、所定条件は、上記距離が第4焦点距離fの4倍又は4に近似する値で乗算された第4焦点距離fの倍数であるという条件を含む。
【0077】
所定条件は、第4焦点f4から第5焦点f5までの光路に沿った距離が第4焦点距離fの略4倍であるという条件に限定されず、第5焦点f5を通過して拡散する第3回折光L3が第8レンズ214の大きさ内に収まるのであれば、任意の条件を含んでもよい。
【0078】
以上のような第2実施形態に係る分光器1によれば、回折格子3による回折の回数が増えることで、より波長精度を向上させて光を取り出すことができる。すなわち、分光器1による光の波長の測定誤差が小さくなる。
【0079】
第4焦点f4から第5焦点f5までの光路に沿った距離が第4焦点距離fの略4倍であるという条件を所定条件が含むことで、第7レンズ213の第5焦点f5から第3回折光L3が進む方向の角度は、第6レンズ212に入射する第3回折光L3の方向の角度と一致する。したがって、第8レンズ214として第5レンズ211と同一の大きさのものを使用すれば第3回折光L3が第8レンズ214を確実に通過する。したがって、ユーザは、第8レンズ214として第5レンズ211と同一のものを使用することができる。
【0080】
第3焦点距離が第4焦点距離fよりも長いことで、第3回折光L3の集光位置と第5レンズ211との距離が大きくなる。同様に、第4回折光L4の集光位置と第8レンズ214との距離が大きくなる。したがって、一の波長に基づく回折光の集光位置と、他の波長に基づく回折光の集光位置との間の距離が各焦点において大きくなる。したがって、スリット幅が細い第2スリット4bを使用しても、第4回折光L4について特定波長のみを容易に取り出すことが可能となる。したがって、分光器1による波長の選択精度が向上する。
【0081】
回折格子3で回折した第4回折光L4が第8レンズ214により集光される第6焦点f6に位置する第2スリット4bを分光器1が有することで、第6焦点f6に集光した特定波長の第4回折光L4のみを容易に取り出すことが可能となる。
【0082】
(第3実施形態)
図5は、本開示の第3実施形態に係る分光器1の概略構成を示す模式図である。
図5を参照しながら、第3実施形態に係る分光器1の構成及び機能について主に説明する。
【0083】
第3実施形態では、光が単一の回折格子3ではなく一対の第1回折格子3a及び第2回折格子3bによって回折する点で第2実施形態と相違する。その他の構成、機能、効果、及び変形例等については、第2実施形態と同様であり、対応する説明が第3実施形態に係る分光器1においても当てはまる。以下では、第2実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第2実施形態とは異なる構成及び機能について主に説明する。
【0084】
回折格子3は、第1光学系としての光学系10と共に光に対して光学的に作用する第1回折格子3aと、第2光学系20と共に光に対して光学的に作用する第2回折格子3bと、を有する。より具体的には、第1回折格子3aは、光L0に作用して第1回折光L1を生じさせる。第1回折格子3aは、第1回折光L1に作用して第2回折光L2を生じさせる。第2回折格子3bは、第2回折光L2に作用して第3回折光L3を生じさせる。第2回折格子3bは、第3回折光L3に作用して第4回折光L4を生じさせる。第1回折格子3aと第2回折格子3bとは互いに別体として構成されている。
【0085】
以上のような第3実施形態に係る分光器1によれば、第1実施形態における効果がより顕著となる。例えば、従来技術において2つの回折格子3を駆動装置に取り付ける場合、回折格子3における刻線の延在方向が回転軸Cと平行になるように各回折格子3を駆動装置に取り付ける作業は、1つの回折格子3のときと比較してさらに複雑になる。第3実施形態に係る分光器1によれば、各回折格子3について取付作業の高い精度が要求されない。したがって、回折格子3を駆動装置に取り付けるときの作業が容易になるという効果が、1つの回折格子3のときよりもさらに顕著となる。
【0086】
加えて、2つの回折格子3を用いると、サイズが大きい単一の回折格子3を用いるときと比較して、コストがより低下する。したがって、分光器1及び分光器1が搭載される光学装置等は、高性能化を容易としつつ、製品として安価になる。
【0087】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0088】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0089】
上記各実施形態において、第1焦点距離は第2焦点距離fよりも長いと説明したが、これに限定されない。第1焦点距離は第2焦点距離f以下であってもよい。
【0090】
上記各実施形態において、第3焦点距離は第4焦点距離fよりも長いと説明したが、これに限定されない。第3焦点距離は第4焦点距離f以下であってもよい。
【0091】
上記第2実施形態及び第3実施形態において、分光器1は、第1スリット4a及び第2スリット4bを有すると説明したが、これに限定されない。分光器1は、第1スリット4aを有さずに第2スリット4bのみを有してもよい。
【0092】
上記各実施形態において、第1レンズ111及び第4レンズ114は、それぞれ光を平行光に変換して回折格子3に入射させるレンズとしての機能と、回折光を集光するレンズとしての機能の両方を1つのレンズで有すると説明したが、これに限定されない。これらの機能は、互いに焦点距離が略同一である2つの異なるレンズによりそれぞれ実現されてもよい。
【0093】
上記第2実施形態及び第3実施形態において、第5レンズ211及び第8レンズ214は、それぞれ光を平行光に変換して回折格子3に入射させるレンズとしての機能と、回折光を集光するレンズとしての機能の両方を1つのレンズで有すると説明したが、これに限定されない。これらの機能は、互いに焦点距離が略同一である2つの異なるレンズによりそれぞれ実現されてもよい。
【0094】
上記各実施形態において、回折格子3からの回折光の反射先にその伝搬方向に略直角に配置された平面鏡が配置されていてもよい。これにより、回折光を再度回折格子3に入射させることが容易となり、回折の回数が増える。したがって、波長の選択性がより向上する。
【0095】
上記各実施形態において、分光器1は、光スペクトラムアナライザ等の任意の光学装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 分光器
2 光ファイバ
10 光学系(第1光学系)
111 第1レンズ
112 第2レンズ
113 第3レンズ
114 第4レンズ
12 ミラー(第1ミラー)
13 ミラー(第1ミラー)
20 第2光学系
211 第5レンズ
212 第6レンズ
213 第7レンズ
214 第8レンズ
22 ミラー(第2ミラー)
23 ミラー(第2ミラー)
3 回折格子
3a 第1回折格子
3b 第2回折格子
4 スリット(第1スリット)
4a 第1スリット
4b 第2スリット
5 受光素子
6 レンズ
7 ミラー
8 ミラー
9 レンズ
C 回転軸
L0 光
L1 第1回折光
L2 第2回折光
L3 第3回折光
L4 第4回折光
d1 方向
d2 方向
f0 焦点
f1 第1焦点
f2 第2焦点
f3 第3焦点
f4 第4焦点
f5 第5焦点
f6 第6焦点