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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】搬送機構及び分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20240307BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N35/04 H
G01N35/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021513677
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2020015848
(87)【国際公開番号】W WO2020209297
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019076682
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592031097
【氏名又は名称】PHC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 美幸
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正敏
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-020194(JP,A)
【文献】特開2002-311035(JP,A)
【文献】特開2018-054505(JP,A)
【文献】特開平09-304397(JP,A)
【文献】特開2010-181197(JP,A)
【文献】特開2010-237155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/04
G01N 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルを収容するサンプル容器から前記生体サンプルをキュベットへ分注し所定の測定に用いる測定装置に設けられ、前記サンプル容器を保持するサンプルラックを搬送する搬送機構であって、
前記サンプルラックが順に複数載置されるテーブルと、
前記サンプルラックが保持する前記サンプル容器を識別するための容器センサ部と、
前記容器センサ部を介して識別された前記サンプル容器を保持するサンプルラックを、前記生体サンプルを分注するための分注位置へ搬送する搬送装置と、
を備え、
前記容器センサ部は前記搬送装置に設けられ、
前記搬送装置が先行するサンプルラックを搬送すると共に、前記容器センサ部は後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別する
搬送機構。
【請求項2】
前記後続のサンプルラックが存在するか判断するサンプルラック検出装置をさらに備え、
前記サンプルラック検出装置が、前記後続のサンプルラックが存在すると判断した場合に、前記容器センサ部を介して、前記後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別する
請求項1に記載の搬送機構。
【請求項3】
前記サンプル容器の外面には所定の識別情報が表示され、
前記容器センサ部は、前記サンプル容器が表示する前記識別情報を読み取るサンプル容器識別装置、及び前記サンプル容器の種別を判定する種別判定装置を含み、
前記搬送装置が先行するサンプルラックを搬送すると共に、前記サンプル容器識別装置は後続のサンプルラックが保持するサンプル容器が表示する識別情報を読み取り、前記種別判定装置は、後続のサンプルラックが保持するサンプル容器の種別を判定する
請求項1又は2に記載の搬送機構。
【請求項4】
前記サンプルラックは、複数の前記サンプル容器を、平面視における第1の方向に1列に保持し、
複数の前記サンプルラックが、平面視において前記第1の方向と直交する第2の方向に並べて前記テーブルに載置され、
前記搬送装置が先行するサンプルラックを前記第1の方向に搬送すると共に、前記容器センサ部を介して後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別する
請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送機構を備え、
前記搬送機構の動作及び前記容器センサ部を介したサンプル容器の識別処理を制御するコンピュータを含む分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送機構及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生化学的分析と免疫学的分析のように、測定方法の異なる複数種の分析を行うことができる装置が提案されている(例えば特許文献1)。当該装置は、(1)複数の生体サンプルを搭載することができるサンプルラックを備えるサンプル供給ユニット、(2)相互に独立した複数の反応キュベットを相互に独立して着脱可能に保持することができ、第1光学系測定手段を備える第1測定ユニット、(3)サンプル供給ユニットから、第1測定ユニット上の反応キュベットに生体サンプルを搬送することのできるサンプル搬送手段、(4)相互に独立した複数の反応キュベットを相互に独立して着脱可能に保持することができ、第2光学系測定手段を備える第2測定ユニット、(5)第1測定ユニット上の反応キュベットを、第2測定ユニットに移送させることのできるキュベット移送手段、(6)第1測定ユニットでの測定及び第2測定ユニットでの測定に用いる試薬を備える試薬供給ユニット、及び(7)試薬供給ユニットから第1測定ユニット及び/又は第2測定ユニット上の反応キュベットに相互に独立して反応試薬を搬送することのできる試薬搬送手段を含み、第2測定ユニット上の反応キュベットは、第1測定ユニット上で生体サンプルを分注された後、キュベット移送手段によって第1測定ユニットから第2測定ユニットに移送されて担持されるものとし、そして第1測定ユニットと第2測定ユニットとで別異の測定を実施することができる。
【0003】
また、反応容器が立設保持されたラック、このラックをエンドレス状に循環させて間欠移送する手段、上記ラックが移送されるラック移送路の所定位置で所要量のサンプルを反応容器に分注する手段等を有する免疫自動分析装置も提案されている(例えば特許文献2)。
【0004】
また、試料を収容した試料容器がセットされたラックを、ラック投入部からラック収納部まで搬送する搬送ラインと、この搬送ラインに沿って、上記ラック投入部とラック収納部の間に配置された分析部とを有する自動分析装置において、上記ラック収納部側から上記ラック投入部側へラックを周回する循環ラインと、上記搬送ラインの投入側に配置され、搬送されるラックのラック番号を読み取る投入側ラック番号読み取り部と、この投入側ラック番号読み取り部によって読み取られたラックの順番を記憶する記憶部と、上記搬送ラインの収納側に配置され、搬送されるラックのラック番号を読み取る収納側ラック番号読み取り部と、この収納側ラック番号読み取り部によって読み取られたラックが収納する順番である場合には上記ラック収納部にラックを収納し、そうでない場合には、上記循環ラインを介して上記ラックを上記ラック投入側に周回する制御部を備えたことを特徴とする自動分析装置も提案されている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2006/107016号
【文献】特開平6-167503号公報
【文献】特開2000-266761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、試料に対し何らかの試験を自動で行う分析装置においては、試験に要する時間を短縮することが望まれている。本発明は、サンプリング処理の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送機構は、生体サンプルを収容するサンプル容器から生体サンプルをキュベットへ分注し所定の測定に用いる測定装置に設けられ、サンプル容器を保持するサンプルラックを搬送する搬送機構であって、サンプルラックが順に複数載置されるテーブルと、サンプルラックが保持するサンプル容器を識別するための容器センサ部と、容器センサ部を介して識別されたサンプル容器を保持するサンプルラックを、生体サンプルを分注するための分注位置へ搬送する搬送装置とを備える。また、容器センサ部は搬送装置に設けられ搬送装置が先行するサンプルラックを搬送すると共に、容器センサ部は後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別する。
【0008】
先行するサンプルラックを搬送すると共に、後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別するため、予めサンプル容器の有無や識別情報を特定する、いわゆる先読み動作ができ、単位時間当たりの処理能力を向上させることができる。すなわち、サンプリング処理の効率を向上させることができる。
【0009】
また、後続のサンプルラックが存在するか判断するサンプルラック検出装置をさらに備え、サンプルラック検出装置が、後続のサンプルラックが存在すると判断した場合に、容器センサ部を介して、後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別するようにしてもよい。このようにすれば、後続するサンプルラックが継続して投入されたか判定したうえで、上述のような先読み動作を行うことができる。
【0010】
また、サンプル容器の外面には所定の識別情報が表示され、容器センサ部は、サンプル容器が表示する識別情報を読み取るサンプル容器識別装置、及びサンプル容器の種別を判定する種別判定装置を含み、搬送装置が先行するサンプルラックを搬送すると共に、サンプル容器識別装置は後続のサンプルラックが保持するサンプル容器が表示する識別情報を読み取り、種別判定装置は、後続のサンプルラックが保持するサンプル容器の種別を判定するようにしてもよい。複数の種類のサンプル容器を処理する場合に、容器の種別を判定することができるようになる。なお、種別判定装置は、例えば赤外線センサであってもよく、例えば高さ等、サンプル容器の形状に基づいて種別を判定することができる。また、サンプル容器の識別情報及び種別の両者の読み取りが成功した場合に、当該サンプル容器がサンプルラックに保持されていると判断し、後の処理においてサンプリングの対象としてもよい。
【0011】
また、サンプルラックは、複数のサンプル容器を、平面視における第1の方向に1列に保持し、複数のサンプルラックが、平面視において第1の方向と直交する第2の方向に並べてテーブルに載置され、搬送装置が先行するサンプルラックを第1の方向に搬送すると共に、容器センサ部を介して後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別するようにしてもよい。このようにすれば、先のサンプルラックを搬送する方向と後のサンプルラックにサンプル容器が並ぶ方向とが一致し、搬送装置が先行するサンプルラックを搬送する処理と、後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別する処理とを並列に行うことができるようになる。
【0012】
また、本発明の他の側面に係る分析装置は、上述した搬送機構を備え、搬送機構の動作を制御するコンピュータを含むものであってもよい。このようにすれば、分析装置のサンプリング処理の効率を向上させることができる。
【0013】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。また、課題を解決するための手段の内容は、コンピュータ等の装置若しくは複数の装置を含むシステム、コンピュータが実行する方法、又はコンピュータに実行させるプログラムとして提供することができる。当該プログラムはネットワーク上で実行されるようにすることも可能である。なお、当該プログラムを保持する記録媒体を提供するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
サンプリング処理の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、分析装置の外観の一例を示す図である。
図2図2は、分析装置の測定ユニット収容部の内部の構成の一例を示す平面図である。
図3図3は、サンプルラックの一例を示す斜視図である。
図4図4は、サンプルラックの一例を示す正面図である。
図5図5は、テーブルの一例を示す斜視図である。
図6図6は、テーブルの一例を示す平面図である。
図7図7は、サンプリングを制御するコンピュータのブロック図である。
図8図8は、ラック搬送処理の一例を示す処理フロー図である。
図9図9は、S5におけるサンプルラックの配置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係る分析装置について、図面を用いて説明する。
【0017】
<装置構成>
図1は、分析装置の外観の一例を示す図である。分析装置1000は、生化学的分析や免疫学的分析のように、測定精度の異なる複数種類の分析を行う分析装置である。分析装置1000は、例えば、LPIA(Latex Photometric Immunoassay:ラテックス近赤外比濁法)や、血液の凝固時間測定等を行うことができる。また、分析装置1000は、測定ユニット収容部1と、タンク等収容部2と、モニタ3と、ステータス出力部4とを備える。測定ユニット収容部1は、実施形態に係る複数の測定ユニット等を収容する。タンク等収容部2には、純水、洗浄水及び廃水をそれぞれ貯留するタンクや、廃棄されるキュベットを集積する廃棄ボックス、測定ユニット収容部1が行う処理を制御するコンピュータ等を収容する。モニタ3は、コンピュータと接続され、測定の進捗状況や結果等を出力する。また、モニタ3は、例えばタッチパネルのように、使用者による入力操作が可能な入出力装置であってもよい。ステータス出力部4は、コンピュータ等と接続され、測定ユニット収容部1が実行する処理において異常が発生した場合に使用者に通知するため警告灯を点滅させたり点灯させたりする。
【0018】
図2は、分析装置1000の測定ユニット収容部1の内部の構成の一例を示す平面図である。測定ユニット収容部1は、サンプルラックを載置するテーブル101と、キュベット供給ユニット102と、サンプルノズルユニット103と、試薬テーブル104と、試薬蓋開閉ユニット105と、試薬ノズルユニット106と、凝固テーブル107と、LPIAテーブル108と、キュベットチャックユニット109と、レール110と、キュベット廃棄口111とを備える。なお、図2の右下に示す通り、平面視においてテーブル101側を前、レール110側を後ろ、前から装置に向かって左右をそれぞれ左、右と呼ぶものとする。テーブル101には、サンプルラックが載置され、分析装置1000が備える機構によってテーブル上を搬送される。
【0019】
キュベット供給ユニット102は、所定形状のキュベットを、分析装置1000で使用するために供給する。サンプルノズルユニット103は、ポンプと接続されたノズルを備え、コンピュータによる制御に基づいて、所定の可動範囲を移動し、サンプル容器からサンプルを採取すると共にLPIAテーブル108のキュベットへ吐出する。具体的には、サンプルノズルユニット103は、所定の回動軸を中心にして平面視において円弧状に回動する。また、サンプルノズルユニット103が移動する円弧状の軌道と、LPIAテーブル108に円形に配置されるキュベットが回転させられて移動する円状の軌道との平面視における交点に、分注位置が設けられる。また、平面視において、サンプルノズルユニット103が移動する軌道上には、ノズル洗浄槽を設けるようにしてもよい。
【0020】
試薬テーブル104は、試薬を収容する試薬容器を複数保持し、コンピュータによる制御に基づいて回転するディスク状の保持部である。保持される試薬容器は、所定の採取位置において試薬ノズルユニット106により採取される。また、試薬蓋開閉ユニット105は、コンピュータによる制御に基づいて、所定の可動範囲を移動し、試薬容器の蓋を開閉するためのユニットである。試薬ノズルユニット106は、ポンプと接続されたノズルを備え、コンピュータによる制御に基づいて所定の稼働範囲を移動し、試薬容器から試薬を採取すると共にキュベットへ吐出する。平面視において、上述の試薬ノズルユニット106が直線的に移動する経路上には、試薬ノズルの洗浄槽を設けるようにしてもよい。
【0021】
凝固テーブル107は、キュベットの内容物の凝固の程度を測定するため、複数のキュベットを並べて保持するための複数の孔を備える保持部である。なお、保持されるキュベットを挟んで光源と受光部とが配置され、内容物の吸光度又は透過率に基づいて凝固の程度を測定する。また、キュベットチャックユニット109が移動する軌道との平面視における交点に、着脱位置が設けられる。
【0022】
LPIAテーブル108は、LPIAにより検体中の抗原量を測定するため、複数のキュベットを平面視において円形に並べて保持すると共に、コンピュータによる制御に基づいて回転する、ディスク状の保持部である。保持されるキュベットは、所定の着脱位置においてキュベットチャックユニット109によって着脱されると共に、所定の分注位置において試薬が分注される。
【0023】
キュベットチャックユニット109は、コンピュータによる制御に基づいて、所定の可動範囲を移動し、キュベットを把持して移動させる。レール110は、直線状のレールであり、試薬ノズルユニット106及びキュベットチャックユニット109はそれぞれレール110上を移動する。キュベット廃棄口111は、タンク等収容部2に格納される廃棄ボックスに連通する開口部であり、キュベット廃棄口111内にキュベット等を廃棄することができる。
【0024】
図3は、サンプルラックの一例を示す斜視図である。図4は、サンプルラックの一例を示す正面図である。サンプルラック5は、複数のホルダ51を一列に備えており、図3及び図4の例ではホルダの数は10である。また、ホルダ51には、血液検体等の生体サンプルを収容するサンプル容器52が保持される。図3の例では、10個のサンプル容器52がそれぞれホルダ51に保持されている。なお、図4に示すように、サンプル容器52は、高さの異なる複数の種類の容器を含むものであってもよい。サンプル容器52は、例えば、サンプルを収容するサンプルカップ、血液を収容する採血管、二重採血管、サンプルを希釈したり混合したりするための上乗せカップ等を含む。また、サンプルラック5は、コンピュータによる制御に基づいてテーブル101上で搬送され、所望のサンプル容器52が、テーブル101上の所定の採取位置に配置される。採取位置は、サンプルノズルユニット103が平面視において円弧状に移動する軌道上に存在し、サンプルはサンプルノズルユニット103によってLPIAテーブル108の保持孔に保持されたキュベットに分注される。また、サンプル容器52の外面には、バーコード又は二次元コード等の識別情報(すなわち、検体の識別情報)が付されたラベルが貼付され、又は直接印字されるようにしてもよい。また、図4に示すようにサンプルラック5の側面の一端には、サンプルラック5を特定するための識別情報53が付されている。
【0025】
図5は、テーブル101の一例を示す斜視図である。図6は、テーブル101の一例を示す平面図である。テーブル101は、前後方向に設けられたスリット1011、1012と、左右方向にサンプルラックを搬送する搬送装置1013と、容器識別装置1014と、容器種別判定装置1015と、ラック検出装置1016(図5には図示せず)と、レール1017と、搬入装置1018(図6には図示せず)と、搬出装置1019(図6には図示せず)とを備える。なお、図5及び図6に示す、搬送装置1013を備えるテーブル101は、本発明に係る搬送機構の一例である。
【0026】
搬入装置1018は、スリット1011の下方に設けられ、スリット1011からテーブル101上に図示していない突出片を突出させたり収容したりすると共に、突出させた突出片をスリット1011に沿って前後方向に移動させ、テーブル101上の搬入レーン(図6の矢印D1)に載置されたサンプルラック5をテーブル101の後方へ移動させる。なお、図6において破線の角丸長方形で示す複数の領域A1は、サンプルラック5が載置され搬送される過程で停止する位置を表している。すなわち、サンプルラック5は、その平面視における短手方向に複数重ねてテーブル101上に載置される。すなわち、サンプルラック5は、複数のサンプル容器52を、平面視における第1の方向に1列に保持し、複数のサンプルラック5が、平面視において第1の方向と直交する第2の方向に並べてテーブル101に載置される。また、搬送装置1013は、サンプルラック5の左右方向の両端が収まる幅に設けられた、2つのラック保持部10131を有する。そして、搬送装置1013はレール1017上を移動し、搬入装置1018によって2つのラック保持部10131の間に搬入されたサンプルラック5を、テーブル101上のサンプリングレーン(図6の矢印D2)に沿って左右方向に搬送する。また、搬出装置1019は、スリット1012の下方に設けられ、図示していない突出片をスリット1012からテーブル101上に突出させたり収容したりすると共に、突出させた突出片をスリット1012に沿って前後方向に移動させ、搬送装置1013の2つのラック保持部10131の間に保持されているサンプルラック5を、テーブル101上の搬出レーン(図6の矢印D3)に沿ってテーブル101の前方へ移動させる。なお、テーブル101には複数のサンプルラック5が連続的に搬入され、逐次処理される。また、搬入レーン、サンプリングレーン、搬出レーンを総称して搬送経路とも呼ぶものとする。
【0027】
ラック検出装置1016は、例えばテーブル101の下に設けられた磁器センサであり、図6において破線の円で示す位置に複数存在する。例えば、サンプルラック5は、その長手方向の両端の底面付近に磁石を備えており、ラック検出装置1016と接続されるコンピュータはテーブル101上に載置されたサンプルラック5の存在を検知できるようになる。容器識別装置1014は、例えばレーザダイオードが発するレーザ光を受光素子で受光し読み取るレーザ式のバーコードリーダや、コンピュータの画像認識ソフトと接続されたカメラ等であり、サンプル容器52の側面に貼付される識別情報を読み取る。また、容器種別判定装置1015は、例えば上下(高さ)方向に複数設けられる赤外線センサである。容器種別判定装置1015は、サンプルラック5が保持するサンプル容器52の高さを検知し、高さに応じて複数の種類のサンプル容器52のうちいずれかを判定する。
【0028】
容器識別装置1014及び容器種別判定装置1015は、それぞれ搬送装置1013と接続され、一体として移動する。また、搬送装置1013は、サンプリングレーンの搬送方向における前方に2つのラック保持部10131を備え、サンプリングレーンの搬送方向における後方に容器識別装置1014及び容器種別判定装置1015を備える。そして、先行するサンプルラック5を2つのラック保持部10131の間に保持して搬送すると共に、後続のサンプルラック5が保持するサンプル容器52の側面に貼付された識別情報を容器識別装置1014が読み取り、且つサンプル容器52の種類を容器種別判定装置1015が判定する。容器識別装置1014及び容器種別判定装置1015を総称して、容器センサ部とも呼ぶものとする。
【0029】
本実施形態では、先行するサンプルラック5の搬送又は先行するサンプルラック5が保持するサンプル容器52からのサンプリングと、後続のサンプルラック5が保持するサンプル容器52の識別とを並行して行うことで、後続のサンプルラック5についてサンプリングを速やかに開始し、空いているホルダ51は分注動作を回避することができるようになる。例えば、搬送装置1013が先行するサンプルラック5を上述した第1の方向に搬送すると共に、容器センサ部を介して後続のサンプルラックが保持するサンプル容器を識別することができる。すなわち、先のサンプルラックを搬送する方向と後のサンプルラックにサンプル容器が並ぶ方向とが一致し、搬送装置1013が先行するサンプルラック5を搬送する処理と、後続のサンプルラック5が保持するサンプル容器52を識別する処理とを並列に行うことができる。また、搬送装置1013と容器センサ部(容器識別装置1014及び容器種別判定装置1015)とを一体とすることで、省スペース化を実現できる。
【0030】
<サンプリング制御>
図7は、サンプリングを制御するコンピュータのブロック図である。図1のタンク等収容部2に収容されたコンピュータ21は、テーブル101上でサンプルラック5を搬送すると共に、サンプルラック5及びサンプル容器52を識別し、サンプル容器52からキュベットへサンプルの分注を行う動作を制御する。図7に示すように、コンピュータ21は、プロセッサ211と、記憶装置212とを備え、入出力インターフェースを介して分析装置1000と接続されている。
【0031】
プロセッサ211は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置であり、プログラムを実行することにより本実施の形態に係る処理を行う。図7の例では、プロセッサ211の中に機能ブロックを示している。すなわち、プロセッサ211は、装置制御部2111、データ取得部2112、及び識別処理部2113として機能する。装置制御部2111は、使用者の操作に基づいてサンプルに対し指定された分析を行うよう、分析装置1000を制御し、例えばテーブル101上でサンプルラック5を搬送する。データ取得部2112は、所定の入出力インターフェースを介して、分析装置1000が備える容器識別装置1014、容器種別判定装置1015、ラック検出装置1016といったセンサ等のユニットからデータを取得する。識別処理部2113は、データ取得部2112が取得したデータに基づいて、テーブル101に載置されているサンプルラック5及びサンプル容器52を識別する。また、識別されたサンプルラック5及びサンプル容器52に応じて、装置制御部2111は分析装置1000を制御し、例えばサンプル容器52が収容するサンプルをキュベットに分注する。
【0032】
記憶装置212は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、又はHDD(Hard-disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi-Media Card)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置である。主記憶装置は、プロセッサ211の作業領域を確保したり、センサが出力したデータ等を一次的に記憶する。また、補助記憶装置は、本実施形態に係るプログラムやセンサが出力したデータ、その他のデータを記憶する。なお、ユーザからの操作やネットワーク等を介したデータの送受信により、記憶装置212には、サンプル容器52に表示された識別情報と、当該サンプル容器52に収容された検体に対して行うべき測定とを対応付けしたオーダー情報が予め格納されるものとする。
【0033】
図8は、ラック搬送処理の一例を示す処理フロー図である。分析装置1000の識別処理部2113は、データ取得部2112が取得したデータに基づいてテーブル101にサンプルラック5が存在するか判断する(図8:S1)。本ステップでは、ユーザがテーブル101上の所定の場所にサンプルラック5を載置した場合、ラック検出装置1016の出力に基づいてデータ取得部2112がサンプルラック5の存在を検知する。サンプルラック5が存在しないと判断された場合(S1:NO)、分析装置1000はラック搬送処理を終了する。なお、コンピュータ21に対するユーザの操作により処理の終了が指示されるまでは、S1の判断を繰り返すようにしてもよい。
【0034】
一方、サンプルラック5が存在すると判断された場合(S1:YES)、識別処理部2113は、サンプルラック5に付された識別情報、サンプルラック5が保持するサンプル容器52に付された識別情報、サンプル容器52の種別の少なくともいずれかを識別する(図8:S2)。本ステップでは、装置制御部2111は、搬入装置1018を制御してサンプルラック5を所定の読取位置まで搬送する。そして、搬送装置1013を移動させ、容器識別装置1014を介してサンプルラック5に付された識別情報、サンプルラック5が保持するサンプル容器52に付された識別情報を読み取る。サンプルラック5が保持する複数のサンプル容器52は、搬送装置1013が移動する方向に沿って、搬送経路の後方側(右端)のサンプル容器52から搬送経路の前方側(左端)のサンプル容器52に向かって、順に識別情報が読み取られる。また、サンプルラック5の奥側左端部にはサンプルラック5を識別するための識別情報が例えばバーコード等で表示されており、サンプル容器52の識別情報の後に読み取られる。また、読み取られた識別情報は、例えば、サンプルラック5ごとに、容器識別装置1014及び容器種別判定装置1015と接続されたコンピュータ21に送信される。このとき、データを送信する順はいわゆるLIFO(Last In First Out)方式で、サンプルラック5の識別情報、搬送経路の前方側(左端)のサンプル容器52から搬送経路の後方側(右端)のサンプル容器52の識別情報の順であってもよい。
【0035】
同時に、識別処理部2113は、容器種別判定装置1015を介してサンプル容器52の種別を判定する。容器種別判定装置1015は、サンプルラック5に保持されたサンプル容器52の高さに基づいて、その種別を判定する。容器識別装置1014と容器種別判定装置1015とは、例えばサンプルラック5のホルダ51の所定数分の幅を離間させて搬送装置1013に接続されており、容器識別装置1014があるサンプル容器52の識別情報を読み取ると同時に、容器種別判定装置1015は所定数隣りのサンプル容器52の種別を判定する。
【0036】
また、あるホルダ51について、保持されたサンプル容器52の識別情報の読み取りに成功した場合、又はサンプル容器52の容器種別が特定された場合の少なくともいずれかに、当該ホルダ51にはサンプル容器が存在すると判断され、後述する処理においてサンプリング処理の対象となるようにしてもよい。例えば、サンプルを収容するサンプルカップ等にはバーコード等の識別情報が付され、容器識別装置1014を介して読み取られる。一方、サンプルを混合等するための上乗せカップ等には識別情報が付されず、空の状態でテーブル101に搬入され、サンプリング処理においてサンプルノズルユニット103により内部にサンプル等が吐出される。したがって、別途コンピュータ21に入力されるオーダー情報が、投入される予定のサンプル容器がサンプル容器であることを示す場合は、容器センサ部(容器識別装置1014及び容器種別判定装置1015)から取得する情報に基づいて、サンプル容器52の識別情報の読み取りに成功し、且つ容器種別がサンプル容器であると特定されたときに、識別処理部2113はサンプル容器が存在すると判断できる。また、オーダー情報が、投入される予定のサンプル容器が上乗せカップであることを示す場合は、容器センサ部から取得する情報に基づいて、容器種別が上乗せカップであると特定された場合に、識別処理部2113はサンプル容器が存在すると判断できる。
【0037】
そして、装置制御部2111は、搬入装置1018と搬送装置1013とを動作させ、サンプルラック5をサンプリングレーンに搬入する(図8:S3)。本ステップでは、サンプルラック5は、搬送装置1013の2つのラック保持部10131の間に搬入される。
【0038】
また、識別処理部2113は、データ取得部2112が取得したデータに基づいてテーブル101に後続のサンプルラック5が存在するか判断する(図8:S4)。本ステップでは、ユーザがテーブル101上にサンプルラック5をさらに載置していた場合、ラック検出装置1016の出力に基づいてデータ取得部2112がサンプルラック5の存在を検知する。
【0039】
後続のサンプルラック5が存在すると判断された場合(S4:YES)、装置制御部2111は、搬送装置1013を動作させ、先行するサンプルラック5を搬送すると共に、識別処理部2113は容器センサ部から取得する情報に基づいて、後続のサンプルラック5に付された識別情報、サンプルラック5が保持するサンプル容器52に付された識別情報、サンプル容器52の種別を識別する(図8:S5)。本ステップは、上述したS2の処理と同じであるが、S2においては搬送装置1013がサンプルラック5を保持せずに動作していたのに対し、S5においては搬送装置1013がサンプルラック5を保持しつつ動作する。図9は、S5におけるサンプルラック5の配置の一例を示す斜視図である。
具体的には、容器種別判定装置1015が、後続するサンプルラック5の左端のサンプル容器52の種別を判定する際の配置を示している。
【0040】
一方、S4において後続のサンプルラック5が存在しないと判断された場合(S4:NO)、装置制御部2111は、搬送装置1013を動作させ、先行するサンプルラック5を搬送する(図8:S6)。本ステップでは、先行するサンプルラック5をサンプリングレーンにおいて搬送する。
【0041】
また、装置制御部2111は、先行するサンプルラック5が保持するサンプル容器52から、キュベットへサンプルを分注する(図8:S7)。図7の例では、サンプルノズルユニット103が、先行するサンプルラック5の先頭から3番目のサンプル容器から検体を抽出している。記憶装置212には、予め複数のホルダ51のいずれにサンプル容器52が保持されているか、サンプル容器52に収容されているサンプルが何であるか(ひいてはどのような試験を行うべきものであるか)といったオーダー情報が予め識別されて記憶されているため、例えば空いているホルダ51を飛ばしてスムーズにサンプリングを行うことができる。したがって、特にサンプルラック5のホルダ51に空きがある場合はサンプリング処理の効率を向上させることができる。
【0042】
その後、装置制御部2111は、搬出装置1019を動作させ、先行するサンプルラック5を搬出する(図8:S8)。また、装置衣制御部2111は、後続のサンプルラック5に関する情報をすでに識別済みであるか判断する(図8:S9)。S5において後続のサンプルラック5の情報を読み取り、記憶装置212に情報が格納されている場合、本ステップではすでに識別済みであると判断される。
【0043】
すでに識別済みであると判断された場合(S9:YES)、S3の処理に戻り次のサンプルラック5をサンプリングレーンに搬入する。一方、未だ次のサンプルラック5を識別済みではないと判断された場合(S9:NO)、S1の処理に戻り、新たにサンプルラック5が載置されたか判断する。以上のように、分析装置1000は、テーブル101に載置されるサンプルラック5をサンプリングレーンに搬入しサンプリングを行う処理を、継続的に実行する。
【0044】
<効果>
本実施形態においては、複数のサンプルラック5が測定装置1000に継続的に投入されている場合は、図8のS5において、先行するサンプルラック5をサンプリングレーン内で搬送すると共に後続のサンプルラック5及びこれが保持するサンプル容器52を識別する処理を並行して行う。すなわち、複数のホルダ51のいずれにサンプル容器52が保持されているか、サンプル容器52の識別情報と対応付けられた検体に行うべき測定が何であるかといったオーダー情報に即してサンプル容器52が投入されているかを、予めサンプリングを行う前に確認しておくことができる。したがって、S7の処理においては、複数のホルダ51のうちサンプル容器52が保持された位置からスムーズにサンプリングを行うことができるようになる。すなわち、特にサンプルラック5のホルダ51に空きがある場合はサンプリング処理の効率を向上させることができる。
【0045】
<その他>
上述の実施形態および変形例は例示であり、本発明は上述した構成には限定されない。
また、実施形態に記載した内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で変更することができる。
【0046】
また、本発明は、上述した処理を実行する方法やコンピュータプログラム、当該プログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。当該プログラムが記録された記録媒体は、プログラムをコンピュータに実行させることにより、上述の処理が可能となる。
【0047】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、磁気テープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としては、HDDやSSD(Solid State Drive)、ROM等がある。
【符号の説明】
【0048】
1000 :分析装置
1 :測定ユニット収容部
101 :テーブル
102 :キュベット供給ユニット
103 :サンプルノズルユニット
104 :試薬テーブル
105 :試薬蓋開閉ユニット
106 :試薬ノズルユニット
107 :凝固テーブル
108 :LPIAテーブル
109 :キュベットチャックユニット
110 :レール
111 :キュベット廃棄口
2 :タンク等収容部
3 :モニタ
4 :ステータス出力部
5 :サンプルラック
52 :サンプル容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9