(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/147 20180101AFI20240307BHJP
F21S 41/24 20180101ALI20240307BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240307BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240307BHJP
【FI】
F21S41/147
F21S41/24
F21Y115:10
F21W102:13
(21)【出願番号】P 2021537394
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030271
(87)【国際公開番号】W WO2021025136
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019146281
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019146282
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】小泉 浩哉
(72)【発明者】
【氏名】生田 龍治郎
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174736(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033834(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043663(WO,A1)
【文献】特開2018-092883(JP,A)
【文献】特開2009-231096(JP,A)
【文献】特表2014-513861(JP,A)
【文献】特開2013-110005(JP,A)
【文献】特開2017-228490(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086251(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/147
F21S 41/24
F21Y 115/10
F21W 102/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、
前記投影レンズの焦点またはその近傍に配置された第1発光素子と、
第2発光素子と、
前記第2発光素子からの光を入射する入射部と、入射した光を導光する導光部と、導光された光を出射する
第1の出射部と
、入射した光を出射する第2の出射部とを有する導光体と、
を備え、
前記導光体の前記
第1の出射部は、前記投影レンズの焦点またはその近傍に配置され
、
前記第2の出射部から出射された光を前記投影レンズに向けて反射するリフレクタをさらに備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1発光素子と前記第2発光素子は、同一の基板上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1発光素子は、ロービーム用の発光素子と、ハイビーム用の発光素子とを含み、
前記第2発光素子は、デイタイムランニング用の発光素子を含むことを特徴とする請求項
1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光体の前記
第1の出射部から出射された光は、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンよりも上方の領域に向けて照射され、
前記導光体の前記第2の出射部から出射された光は、前記ロービーム用配光パターンの略中央領域に向けて照射されることを特徴とする請求項
3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
基板と、
第1配光パターン用の第1発光素子のアレイと、
前記第1配光パターンよりも自車手前側を照射する第2配光パターン用の第2発光素子のアレイと、
追加配光パターン用の第3発光素子と、
前記第3発光素子からの光を入射する入射部と、入射した光を導光する導光部と、導光された光を出射する出射部とを有する導光体と、
投影レンズと、
を備え、
前記第1発光素子のアレイ、前記第2発光素子のアレイおよび前記第3発光素子は、同一の前記基板上に実装され、
前記第1発光素子のアレイ、前記第2発光素子のアレイおよび前記第3発光素子から出射される光は、同一の前記投影レンズを介して灯具前方に照射され、
前記第1発光素子のアレイと、前記第2発光素子のアレイと、前記第3発光素子とを同時点灯することで、前記第1配光パターンおよび前記第2配光パターンよりも広く且つ光度が低い第3配光パターンが形成され
、
前記導光体の前記出射部は、前記投影レンズの焦点またはその近傍に配置され、
前記第1発光素子のアレイおよび前記第2発光素子のアレイは、前記投影レンズの焦点またはその近傍に配置され、
前記第1発光素子のアレイは、前記基板に形成された配線パターンを介して個別に点消灯可能に構成され、
前記第3発光素子は、前記配線パターンを挟んで前記第1発光素子から離隔して配置されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
前記基板は、前記投影レンズの光軸に垂直な平面に対して傾斜して配置されることを特徴とする請求項
5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記導光体を覆うように配置された遮光カバーをさらに備えることを特徴とする請求項
5または
6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記遮光カバーは、金属製であることを特徴とする請求項
7に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下、適宜「LED」と称す)などの発光素子を利用した車両用灯具の開発が進められている(例えば特許文献1参照)。また、車両用前照灯の光源として発光素子を用いる場合は、一つでは所望の光量や形状の配光パターンを得ることが難しいため、複数の発光素子を基板上に配置した車両用灯具が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-95480号公報
【文献】特開2016-149373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の発光素子を用いた車両用灯具においては、一部の発光素子を投影レンズの焦点付近に配置した場合、他の発光素子を投影レンズの焦点付近に配置できず、所望の配光パターンを得ることが難しい場合がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の発光素子を用いた車両用灯具において、一部の発光素子を投影レンズの焦点付近に配置できない場合でも、所望の配光パターンを形成することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、投影レンズと、投影レンズの焦点またはその近傍に配置された第1発光素子と、第2発光素子と、第2発光素子からの光を入射する入射部と、入射した光を導光する導光部と、導光された光を出射する出射部とを有する導光体と、を備える。導光体の出射部は、投影レンズの焦点またはその近傍に配置される。
【0007】
上記態様の車両用灯具において、第1発光素子と第2発光素子は、同一の基板上に配置されてもよい。
【0008】
上記態様の車両用灯具において、導光体は、入射した光を出射する第2の出射部を有してもよい。車両用灯具は、第2の出射部から出射された光を投影レンズに向けて反射するリフレクタをさらに備えてもよい。
【0009】
上記態様の車両用灯具において、第1発光素子は、ロービーム用の発光素子と、ハイビーム用の発光素子とを含んでもよい。第2発光素子は、デイタイムランニング用の発光素子を含んでもよい。
【0010】
上記態様の車両用灯具において、導光体の出射部から出射された光は、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンよりも上方の領域に向けて照射され、導光体の第2の出射部から出射された光は、ロービーム用配光パターンの略中央領域に向けて照射されてもよい。
【0011】
本発明の別の態様も、車両用灯具である。この車両用灯具は、基板と、第1配光パターン用の第1発光素子のアレイと、第1配光パターンよりも自車手前側を照射する第2配光パターン用の第2発光素子のアレイと、追加配光パターン用の第3発光素子と、投影レンズと、を備える。第1発光素子のアレイ、第2発光素子のアレイおよび第3発光素子は、同一の基板上に実装される。第1発光素子のアレイ、第2発光素子のアレイおよび第3発光素子から出射される光は、同一の投影レンズを介して灯具前方に照射される。第1発光素子のアレイと、第2発光素子のアレイと、第3発光素子とを同時点灯することで、第1配光パターンおよび第2配光パターンよりも広く且つ光度が低い第3配光パターンが形成される。
【0012】
上記態様の車両用灯具において、基板は、投影レンズの光軸に垂直な平面に対して傾斜して配置されてもよい。
【0013】
上記態様の車両用灯具において、第3発光素子からの光を入射する入射部と、入射した光を導光する導光部と、導光された光を出射する出射部とを有する導光体と、をさらに備えてもよい。導光体の出射部は、投影レンズの焦点またはその近傍に配置されてもよい。
【0014】
上記態様の車両用灯具において、第1発光素子のアレイおよび第2発光素子のアレイは、投影レンズの焦点またはその近傍に配置され、第1発光素子のアレイは、基板に形成された配線パターンを介して個別に点消灯可能に構成され、第3発光素子は、配線パターンを挟んで第1発光素子から離隔して配置されてもよい。
【0015】
上記態様の車両用灯具において、導光体を覆うように配置された遮光カバーをさらに備えてもよい。遮光カバーは、金属製であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の発光素子を用いた車両用灯具において、一部の発光素子を投影レンズの焦点付近に配置できない場合でも、所望の配光パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る車両用灯具の要部を説明するための図である。
【
図7】
図3に示す車両用灯具の概略A-A断面図である。
【
図8】仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、本明細書において「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「内」、「外」等の方向を表す用語が用いられる場合、それらは車両用灯具が車両に装着されたときの姿勢における方向を意味する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具10の斜視図である。
図2は、車両用灯具10の正面図である。
図3は、車両用灯具10の側面図である。
図4は、車両用灯具10の分解斜視図である。車両用灯具10は、車体の前部の左右両端部にそれぞれ配置され、前照灯として機能する。
【0020】
車両用灯具10は、ハイビーム用配光パターンと、ハイビーム用配光パターンよりも自車手前側を照射するロービーム用配光パターンとを形成できるように構成されている。また、車両用灯具10は、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビーム用配向パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)配光パターンを形成できるように構成されている。さらに、車両用灯具10は、追加配光パターンを形成できるように構成されている。本実施形態に係る車両用灯具10では、ハイビーム用配光パターン、ロービーム用配光パターンおよび追加配光パターンが合成されることにより、ハイビーム用配光パターンおよびロービーム用配光パターンよりも広いデイタイムランニング用の配光パターンが形成される。なお、デイタイムランニング用配光パターンを形成する際には、ハイビーム用の光源は通常時(すなわちハイビーム用配光パターン形成時)の百分の一程度に減光され、ロービーム用の光源は通常時(すなわちロービーム用配光パターン形成時)の数十分の一程度に減光される。
【0021】
車両用灯具10は、所謂直射型の灯具である。車両用灯具10は、投影レンズ12と、投影レンズ12を保持するためのレンズホルダ14と、基板16と、基板上に配置された複数のLED18と、LED18に給電するためのコネクタ19と、リフレクタ20と、導光体22と、LED18から発生した熱を放熱するためのヒートシンク24と、ヒートシンク24を強制的に冷却するためのファン26と、ファン26を覆うファンカバー28と、遮光カバー32と、を備える。
【0022】
図5は、基板16の概略平面図である。基板16は、ヒートシンク24に形成された基板搭載面24a(
図4参照)上に配置される。
図5に示すように、基板16の上部に複数のロービーム用LED18aがアレイ状に配置されている。また、ロービーム用LED18aより僅か下方に、複数のハイビーム用LED18bがアレイ状に配置されている。また、ハイビーム用LED18bの下方には大きく間隔をおいて2つのデイタイムランニング用LED18cが配置されている。このように、ロービーム用LED18aのアレイ、ハイビーム用LED18bのアレイ、およびデイタイムランニング用LED18cは、同一の基板16上に実装されている。基板16の下部には、ロービーム用LED18a、ハイビーム用LED18bおよびデイタイムランニング用LED18cに給電するためのコネクタ19が配置されている。ハイビーム用LED18bとデイタイムランニング用LED18cとが離隔しているのは、コネクタ19からハイビーム用LED18bへの配線パターン17が間に挟まれているためである。ハイビーム用LED18bは、ADB制御のために、個別に点消灯可能とされる。そのために、アレイ状のハイビーム用LED18bは並列に接続されており、配線パターン17の形成領域を広くとる必要がある。このハイビーム用LED18bのための配線パターン17により、デイタイムランニング用LED18cをハイビーム用LED18bの近くに配置することができない。一方、アレイ状のロービーム用LED18aは、個別に点消灯されないため、直列に接続されている。
【0023】
別の実施形態においては、ロービーム用LED18aおよびハイビーム用LED18bとコネクタ19とつなぐ配線パターン17の中途にスイッチングICが配置されてもよい。このスイッチングICは、PWM(Pulse Width Modulation)制御によりロービーム用LED18aおよびハイビーム用LED18bの発光強度を制御する。ロービーム用LED18aおよびハイビーム用LED18bを減光する方法としては、駆動電流を減らすことでも可能であるが、LEDの発光波長がずれることに起因して発光色がずれる可能性がある。一方、PWM制御を用いる方法では、Duty比を制御することでLEDの発光波長のずれを比較的小さくして減光できる。このスイッチングICは、ハイビーム用LED18bのできるだけ近くに配置する必要がある。これは、ハイビーム用LED18bを通常時の百分の一程度に減光する場合、Duty比が通常時の百分の一程度と非常に短くなるためである。したがって、このような別の実施形態においてはさらに、デイタイムランニング用LED18cをハイビーム用LED18bの近くに配置することが難しくなる。
【0024】
図6は、本発明の実施形態に係る車両用灯具10の要部を説明するための図である。
図6では、投影レンズ12、レンズホルダ14、遮光カバー32等の構成部品は取り外されている。また、
図7は、
図3に示す車両用灯具10の概略A-A断面図である。
【0025】
図7に示すように、ロービーム用LED18aおよびハイビーム用LED18bは、投影レンズ12の後側焦点Fまたはその近傍に配置されている。従って、ロービーム用LED18a、ハイビーム用LED18bから出射された光により形成される後側焦点Fを含む焦点面上の像は、投影レンズ12によって反転像として灯具前方に投影される。
図6に示すように、ロービーム用LED18aとハイビーム用LED18bの間には、ビームシェーパ30が配置されている。ビームシェーパ30は、ロービーム用LED18aから出射された光の一部を遮断して、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するものである。
図7には、ロービーム用LED18aから出射された光L1およびハイビーム用LED18bから出射された光L2が図示されている。
【0026】
図7に示すように、本実施形態においては、基板16は、投影レンズ12の光軸Axに垂直な平面に対して傾斜して配置される。これにより、ハイビーム用LED18bは、ロービーム用LED18aよりも投影レンズ12の近くに位置にすることとなる。これにより、基板16を傾斜させずに投影レンズ12の光軸Axに垂直に配置した場合と比較して、ハイビーム用LED18bを投影レンズ12の後側焦点Fに近づけることができるので、ハイビーム用配光パターンの光度を高くすることができる。なお、このように基板16を配置した場合、基板16を傾斜させずに投影レンズ12の光軸Axに垂直に配置した場合と比較して、ロービーム用LED18aは投影レンズ12の後側焦点Fから遠ざかることとなり、ロービーム用配光パターンの光度は低下するが、ロービーム用配光パターンはハイビーム用配光パターンほど高い光度が要求されないため問題はない。また、ロービーム用配光パターンのカットオフラインは、ビームシェーパ30で形成されるため、ロービーム用配光パターンの形状に関しても問題はない。
【0027】
図8は、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを説明するための図である。ロービーム用LED18aから出射された光L1が投影レンズ12により投影されることにより、仮想鉛直スクリーン上にロービーム用配光パターンLoが形成される。また、ハイビーム用LED18bから出射された光L2が投影レンズ12により投影されることにより、仮想鉛直スクリーン上にハイビーム用配光パターンHiが形成される。ここで、ロービーム用配光パターンLoとハイビーム用配光パターンHiとを減光した上で合成し、デイタイムランニング用配光パターンDRを形成することを考えた場合、ロービーム用配光パターンLoおよびハイビーム用配光パターンHiよりも上方の領域AR1と、ロービーム用配光パターンLoの略中央領域AR2の光量が法規で規定された値に対して不足する可能性がある。そこで、本実施形態では、デイタイムランニング用LED18cを用いて、領域AR1を埋める第1追加配光パターンAD1および領域AR2を埋める第2追加配光パターンAD2を形成する。
【0028】
所望の追加配光パターンを形成するためには、デイタイムランニング用LED18cは、ロービーム用LED18aおよびハイビーム用LED18bと同様に、後側焦点Fの近傍に配置することが望ましい。しかしながら実際には、上述したようにハイビーム用LED18bの配線パターン17の存在により、後側焦点Fの近傍に配置することができない。そこで、本実施形態に係る車両用灯具10では、導光体22を用いて第1追加配光パターンAD1および第2追加配光パターンAD2を形成する。
【0029】
図9、
図10および
図11は、導光体22を示す斜視図である。導光体22は、入射部22aと、導光部22bと、反射部22cと、第1出射部22dと、第2出射部22eと、を有する。
【0030】
入射部22aは、デイタイムランニング用LED18cの上方に配置され、デイタイムランニング用LED18cからの光を内部に入射する。入射部22aには、デイタイムランニング用LED18cからの光を平行光にするためのフレネルステップが形成されている。反射部22cは、入射部22aから内部に入射した光を反射する。反射部22cは、複数の反射面から構成されている。導光部22bは、略板状の導光板であり、反射部22cで反射した光の一部を導光する。第1出射部22dは、導光部22bの先端部に設けられており、導光部22bを導光された光を外部に出射する。第1出射部22dには、導光部22bを導光された光を屈折させて外部の所定の方向に出射させるためのステップが形成されている。第2出射部22eは、反射部22cの近傍に設けられており、反射部22cで反射した光の一部を外部に出射する。
【0031】
本実施形態に係る車両用灯具10においては、
図7に示すように、導光体22の第1出射部22dは、投影レンズ12の後側焦点Fまたはその近傍に配置される。このように、第1出射部22dを投影レンズ12の後側焦点Fまたはその近傍に配置することで、デイタイムランニング用LED18cを後側焦点Fまたはその近傍に配置した場合と同様の効果が得られる。導光体22は、擬似的な光源とみなすことができる。導光体22の第1出射部22dから出射された光L3が投影レンズ12により投影されることにより、灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に第1追加配光パターンAD1が形成される。
【0032】
また、本実施形態に係る車両用灯具10においては、
図7に示すように、導光体22の第2出射部22eから出射された光L4は、ロービーム用LED18aおよびハイビーム用LED18bを挟んで導光体22と反対側に位置するリフレクタ20により反射される。そして、導光体22の第2出射部22eから出射された光L4が投影レンズ12により投影されることにより、灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に第2追加配光パターンAD2が形成される。
【0033】
ロービーム用LED18aのアレイと、ハイビーム用LED18bのアレイと、デイタイムランニング用LED18cとを同時点灯することで、
図8に示すように、ロービーム用配光パターンLo、ハイビーム用配光パターンHi、第1追加配光パターンAD1および第2追加配光パターンAD2が合成され、デイタイムランニング用配光パターンDRを形成することができる。このように、本実施形態に係る車両用灯具10では、導光体22を用いることにより、投影レンズ12の後側焦点Fの周辺にデイタイムランニング用LED18cを配置することができない場合でも、所望の配光パターンを形成することができる。
【0034】
図7に戻るが、遮光カバー32は、導光体22の一部(入射部22a、反射部22cおよび第2出射部22e)を覆うように配置されている。遮光カバー32は、遮光カバー32からの漏れ光を遮光する。これにより、投影レンズ12に入射してグレアを生じるのを防ぐことができる。また、遮光カバー32は、投影レンズ12によって集光された太陽光を遮光する。これにより、導光体22が太陽光により過度に集光され、変形等の不具合を生じるのを防ぐことができる。太陽光の遮光を好適に行うために、遮光カバー32は、金属製であることが望ましい。
【0035】
例えば上述の特許文献1では、LEDを光源としてリフレクタやレンズを組み合わせた集光型や拡散型の複数の灯具ユニットで車両用前照灯を構成し、これらの灯具ユニットの全部または選択した一部を点灯し、点灯した灯具ユニットから出射した光を合成して所望の配光パターンを得ている。特に、集光性の高い灯具ユニットを点灯することでハイビーム用配光パターンを得ており、拡散性の高いランプユニットを点灯することでロービーム用配光パターンを得ている。
【0036】
近年ではこれらハイビーム用配光パターンとロービーム用配光パターンの2つの配光パターンに加えて、自動車の走行状態に適合させた配光パターンが提案されている。例えば、昼間走行時に自車の存在を他車に確認させるためのデイタイムランニング用配光パターン等がある。
【0037】
このような種々の配光パターンに対処するために、車両用前照灯を構成している複数の灯具ユニットをそれぞれ異なる配光特性の灯具ユニットとして構成した上で、これら灯具ユニットを組み合わせて配光パターンを形成することが行われている。そのため、例えばハイビーム用配光パターンやロービーム用配光パターンに加えて、デイタイムランニング用配光パターンを実現するためには、異なる配光特性の灯具ユニットを追加する必要があり、灯具ユニットの数が増えるため、車両用前照灯が大型化、高コストなものになるという課題がある。
【0038】
従って、少ない構成要素を用いて複数の配光パターンを形成することのできる車両用灯具を提供することが望ましい。
【0039】
本実施形態に係る車両用灯具10では、同一の基板16上にロービーム用LED18aのアレイ、ハイビーム用LED18bのアレイ、およびデイタイムランニング用LED18cが実装されている。また、ロービーム用LED18aのアレイ、ハイビーム用LED18bのアレイ、およびデイタイムランニング用LED18cから出射される光は、同一の投影レンズ12を介して灯具前方に照射される。複数の灯具ユニットを用いる場合と比較して少ない構成要素で、ハイビーム用配光パターンHi、ロービーム用配光パターンLo、およびデイタイムランニング用配光パターンDRの三種類の配光パターンを形成することができる。これにより、複数の灯具ユニットを用いる場合と比較して、車両用灯具の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0040】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0041】
例えば、上述の実施形態では、発光素子としてLEDを例示したが、発光素子はLEDに限定されず、例えば半導体レーザが用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両用灯具に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
10 車両用灯具、 12 投影レンズ、 14 レンズホルダ、 16 基板、 18 LED、 19 コネクタ、 20 リフレクタ、 22 導光体、 24 ヒートシンク、 26 ファン、 30 ビームシェーパ、 32 遮光カバー。