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特許7449944前含浸においてNi-Cuアロイを形成する工程を含む芳香族化合物の水素化のための触媒の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】前含浸においてNi-Cuアロイを形成する工程を含む芳香族化合物の水素化のための触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20240307BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20240307BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240307BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20240307BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20240307BHJP
   C07C 5/10 20060101ALI20240307BHJP
   C07C 13/18 20060101ALI20240307BHJP
   C10G 45/48 20060101ALI20240307BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
B01J37/02 101D
B01J37/18
B01J37/08
B01J37/20
B01J23/755 M
C07C5/10
C07C13/18
C10G45/48
C07B61/00 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021540487
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2020050331
(87)【国際公開番号】W WO2020148133
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】1900333
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ マリカ
(72)【発明者】
【氏名】コイノー アンヌ-アガタ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533085(JP,A)
【文献】特表2008-516765(JP,A)
【文献】特表2009-531426(JP,A)
【文献】特表2007-531614(JP,A)
【文献】米国特許第05948942(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C10G 1/00-99/00
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための触媒を調製する方法であって、該触媒は、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で10%~65%の割合でのニッケルと、触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5%~15%の割合での銅と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含む担体とを含み、前記方法は、以下の工程:
a) 担体を少なくとも1種の銅前駆体および少なくとも1種のニッケル前駆体を所望のニッケル濃度で含有している少なくとも1種の溶液と接触させることを行い、最終触媒上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~15%の含有率を得る工程;
b) 工程a)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
c) 程b)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
d) 程c)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程;
e) 工程d)の終わりに得られた触媒前駆体を少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでいる溶液と接触させることを行う工程;
f) 工程e)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
g) 程f)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
h) 程g)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程
を含む、方法
【請求項2】
工程a)において、ニッケルと銅との間のモル比は0.5~5である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)および/またはh)を行う際の温度は、160~230℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)および/またはh)を行う際の温度は、170~220℃である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程d)および/またはh)を10分~110分にわたって行う、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
還元工程d)の後であるが工程e)の前に、かつ/または還元工程h)の後に硫黄含有化合物による触媒前駆体の不動態化の工程も含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
1回または複数回の不動態化の工程を20~350℃の温度で10~240分にわたって行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硫黄含有化合物を、チオフェン、チオファン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、プロピルメチルスルフィドおよびジチオジエタノールから選ぶ、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
銅前駆体を、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ぶ、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
銅前駆体は、硝酸銅である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程d)および/またはh)の還元ガスは水素である、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)および/またはe)の間に供給されるニッケル前駆体を、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルから選ぶ、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
650℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に存在する少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための方法であって、気相中または液相中、請求項1~13のいずれか1つにおいて記載されたようにして得られた触媒の存在中で前記方法を行い、その際の温度は30~350℃であり、その際の圧力は0.1~20MPaであり、その際の水素/(水素化されるべき芳香族化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度HSVは0.05~50h-1である、方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルおよび銅を含んでいる担持型金属触媒であって、特に、炭化水素供給原料中に存在する少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化を目的とする触媒を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物の水素化のための触媒は、一般的に、元素周期律表の第VIII族からの金属、例えばニッケルをベースとする。金属は、ナノメートル金属粒子の形態にあり、耐火性酸化物であってよい担体上に沈着させられている。第VIII族金属の含有率、第2の金属元素の場合による存在、金属粒子のサイズおよび担体中の活性相の分配、さらには、担体の性質および細孔の分配は、触媒の性能に影響力を有してよいパラメータである。
【0003】
水素化反応の速度は、複数種の基準、例えば、反応剤の触媒の表面の方への拡散(外的拡散制限)、担体の多孔性部中の活性サイトの方への反応剤の拡散(内的拡散制限)および活性相の内在特性、例えば、金属粒子のサイズおよび担体内の活性相の分配によって支配される。
【0004】
ニッケルベースの触媒の促進がしばしば提案されてきたのは、不飽和炭化水素の水素化における性能レベルを改善するためである。例えば、ニッケルベースの触媒の促進がしばしば提案されてきたのは、選択的水素化における性能レベルを改善するためである。実例として、特許文献1には、C-C10ジオレフィンの選択的水素化のためのニッケルおよび銀をベースとする触媒が開示されている。さらに、第IB族の金属、特に金(特許文献2)またはスズ(特許文献3)により、主として存在しているニッケルを促進することが知られている。文献(特許文献4)には、選択的水素化方法の実施のための触媒であって、担体と、担体上に沈着させられた活性金属相とを含んでおり、活性金属相は、銅と、ニッケルまたはコバルトの金属の少なくとも一方とを、Cu:(Niおよび/またはCo)のモル比1超で含むものが開示されている。
【0005】
さらに、このような触媒の採用および水素化方法におけるその使用より先に、還元ガスの存在中の還元処理の工程が行われて、少なくとも部分的に金属形態にある活性相を含んでいる触媒が得られる。この処理により、触媒を活性にすることおよび金属粒子を形成することが可能となる。この処理は、現場内(in situ)または現場外(ex situ)で、すなわち、触媒が水素化反応器に充填された後またはその前に行われてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5208405号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2949077号明細書(特開2011-36857号公報)
【文献】仏国特許出願公開第2949078号明細書(特開2011-36858号公報)
【文献】仏国特許出願公開第3011844号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の主題)
水素化触媒の分野においてそれの研究を継続して、本出願人は、今や驚くべきことに、低温での還元の後に芳香族化合物の水素化において特に活性である触媒を調製することが、ニッケルおよび銅をベースとするアロイを担体上に形成した後に、この担体上に触媒の(ニッケルをベースとする)活性相の前駆体を沈着させる特定の調製方法を行うことによって可能であることを発見した。
【0008】
あらゆる理論によって結び付けられることを望むことなく、本出願人によって観察されたことは、触媒の調製の間に、担体を、銅ベースの金属前駆体とニッケルベースの金属前駆体とを同時に含有している溶液と接触させる工程を行い、その後に、還元ガスの存在中、低温(150℃~250℃)で乾燥・還元させる工程を行うことにより、ニッケル-銅のアロイを(還元された形態で)得ることが可能となり、このことにより、予想外にも、担体上のニッケル活性相の還元性を大きく改善することが可能となり、前記ニッケル活性相は、(還元された形態にある)ニッケル-銅のアロイの形成に続く工程において提供される。それ故に、本発明による調製方法により、還元ガスの存在中、従来技術において一般的に用いられるものより低い温度でかつより短い反応時間で金属元素を還元する工程を行うことが可能となる。有利には、従来技術におけるのより過酷さが低い操作条件の使用により、芳香族化合物の水素化を行うことが望まれる反応器内で還元工程を直接的に行うことが可能となる。さらに、触媒中の銅の存在により、硫黄を、とりわけ芳香族炭化水素フラクション中に含んでいる炭化水素供給原料と触媒が接触しているように置かれた場合に触媒の良好な活性およびより長い耐用期間を維持することが可能となる。実際に、ニッケルと比較すると、触媒中に存在する銅は、供給原料中に含まれる硫黄含有化合物をより容易に捕捉し、それにより、新しい触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒することを強く制限する。
【0009】
本発明の主題は、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための触媒であって、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で10%~65%の割合でニッケルをベースとし、かつ、触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5%~15%の割合で銅をベースとする金属活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含んでいる担体とを含んでいる触媒を調製する方法であって、以下の工程:
a) 担体を、少なくとも1種の銅前駆体および少なくとも1種のニッケル前駆体を所望のニッケル濃度で含有している少なくとも1種の溶液と接触させることを行って、最終触媒上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~15%の含有率を得る工程;
b) 工程a)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
c) 場合による、工程b)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
d) 工程b)、場合によっては工程c)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程;
e) 工程d)の終わりに得られた触媒前駆体を少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでいる溶液と接触させることを行う工程;
f) 工程e)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
g) 場合による、工程f)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
h) 工程f)、場合によっては工程g)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程
を含む、方法にある。
【0010】
有利には、工程a)において、ニッケルと銅との間のモル比は0.5~5、好ましくは0.7~4.5、より好ましくは0.9~4である。
【0011】
好ましくは、工程d)および/またはh)が行われる際の温度は160~230℃である。
【0012】
より優先的には、工程d)および/またはh)が行われる際の温度は170~220℃である。
【0013】
有利には、工程d)および/またはh)は、10分~110分にわたって行われる。
【0014】
1種の実施形態において、本調製方法は、還元工程d)の後ではあるがしかし工程e)の前に、かつ/または還元工程h)の後に硫黄含有化合物による触媒前駆体の不動態化の工程も含む。
【0015】
有利には、不動態化工程(1回または複数回)は、20~350℃の温度で10~240分にわたって行われる。
【0016】
有利には、前記硫黄含有化合物は、チオフェン、チオファン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、プロピルメチルスルフィド、ジチオジエタノールから選ばれる。
【0017】
好ましくは、銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれる。
【0018】
より好ましくは、銅前駆体は、硝酸銅である。
【0019】
有利には、工程d)および/またはh)の還元ガスは二水素である。
【0020】
有利には、水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラムである。
【0021】
有利には、工程a)および/またはe)の間に供給されるニッケル前駆体は、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルから選ばれる。
【0022】
本発明による別の主題は、650℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に存在する少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための方法であって、気相中または液相中、本発明による調製方法により得られた触媒の存在中で前記方法を行い、その際の温度は30~350℃であり、その際の圧力は0.1~20MPaであり、その際の水素/(水素化されるべき芳香族化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は0.05~50h-1である、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
以降、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics,出版元CRC Press,編集長D.R. Lide,第81版,2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10族の金属に対応する。
【0024】
触媒中に含有される金属Mの還元度(degree of reduction:DR)は、前記触媒を還元する工程の後の還元された前記金属Mの割合(%)であるとして定義される。還元度(DR)は、還元された金属(M1)の量と、蛍光X線によって測定される触媒上に存在する理論的に還元可能な金属(M2)の量との間の比に対応し、すなわち、DR(%)=(M1/M2)×100である。本発明の絡みで、ニッケル(Ni)の還元度は、X線回折(X-ray diffraction:XRD)分析によって測定された。酸化物触媒上の還元可能な金属の量を測定する方法の記載は、後の記載において説明される(実施例の項を参照のこと)。
【0025】
表現「触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体の比表面積(the specific surface of the catalyst or of the support used for the preparation of the catalyst according to the invention)」は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society」,60,309(1938)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から作られた規格ASTM D 3663-78による窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味することが意図される。
【0026】
本願において、用語「含むこと(to comprise)」は、「含むこと(to include)」および「含有すること(to contain)」と同じことを表し(それと同じことを意味する)、包括的またはオープンであり、述べられていない他の要素を除外しない。用語「含むこと(to comprise)」は、排他的なおよびクローズドな用語「からなること(to consist of)」を包含することが理解される。
【0027】
用語「マクロ細孔(macropores)」は、細孔であって、その開口が50nmを超えるものを意味することが意図される。
【0028】
用語「メソ細孔(mesopores)」は、細孔であって、その開口が2nm~50nm(両限界値を含む)であるものを意味することが意図される。
【0029】
用語「ミクロ細孔(micropores)」は、細孔であって、その開口が2nm未満であるものを意味することが意図される。
【0030】
触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体の用語「全細孔容積(total pore volume)」は、4000bar(400MPa)の最大圧力における規格ASTM D4284-83に従う水銀ポロシメータによる圧入によって、表面張力484dyne/cmおよび接触角140°を用いて測定される容積を意味することが意図される。濡れ角は、研究書「Techniques de l'ingenieur, traite analyse et caracterisation」(Techniques of the Engineer, Analysis and Characterization Treatise:エンジニアの技術、分析および特徴付けの論文)、ページ1050-1055(Jean CharpinおよびBernard Rasneurによる記述)の推奨に従って140°に等しいとみなされた。
【0031】
より良好な正確性を得るために、全細孔容積の値は、サンプルに関して測定される水銀ポロシメータによる圧入によって測定された全細孔容積の値から30psi(約0.2MPa)に対応する圧力についての同一のサンプルに関して測定された水銀ポロシメータによる圧入によって測定された全細孔容積の値を差し引いたものに対応する。
【0032】
マクロ細孔およびメソ細孔の容積は、4000bar(400MPa)の最大圧力での規格ASTM D4284-83に従う水銀の圧入による多孔度測定によって、表面張力484dyne/cmおよび接触角140°を用いて測定される。水銀が全て粒間空間満たす値は、0.2MPaに設定され、これより上で、水銀は、サンプルの細孔に貫通することが考慮される。
【0033】
触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体のマクロ細孔容積は、0.2MPa~30MPaの圧力で導入される水銀の累積容積であるとして定義され、50nm超の見かけの径を有する細孔中に存在する容積に対応する。
【0034】
触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体のメソ細孔容積は、30MPa~400MPaの圧力で導入される水銀の累積容積であるとして定義され、2~50nmの見かけの径を有する細孔中に存在する容積に対応する。
【0035】
ミクロ細孔容積は、窒素多孔度測定によって測定される。ミクロ多孔性の定量分析は、「t」法(Lippens-De Boerの方法、1965)を用いて行われ、これは、研究書「Adsorption by powders and porous solids. Principles, methodology and applications」、記述F. Rouquerol、J. RouquerolおよびK. Sing、Academic Press, 1999において記載されたような、出発吸着等温式の変換に対応する。
【0036】
中央値メソ細孔径も、メソ細孔容積を構成する複合細孔から、この径未満のサイズを有する全ての細孔が水銀ポロシメータによる圧入によって決定される全てのメソ細孔容積の50%を構成するような径であるとして定義される。
【0037】
中央値マクロ細孔径も、マクロ細孔容積を構成する複合細孔から、この径未満のサイズを有する全ての細孔が水銀ポロシメータによる圧入によって決定される全てのマクロ細孔容積の50%を構成するような径であるとして定義される。
【0038】
(2.詳細な説明)
(触媒を調製する方法)
本発明によると、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための触媒であって、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で10%~65%の割合でニッケルをベースとしおよび触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5%~15%の割合で銅をベースとする金属性の活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含む担体とを含むか、好ましくはこれらからなる触媒を調製する方法は、以下の工程:
a) 担体を、少なくとも1種の、好ましくはそれらからなる銅前駆体と、少なくとも1種の、好ましくはそれらからなるニッケル前駆体とを、所望のニッケル濃度で含有している少なくとも1種の溶液と接触させることを行い、最終触媒上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~15%の含有率を得る工程;
b) 工程a)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
c) 場合による、工程b)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を、250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
d) 工程b)、場合によっては工程c)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程;
e) 工程d)の終わりに得られた触媒前駆体を、少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでおり、好ましくは、これらからなる溶液と接触させることを行う工程;
f) 工程e)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
g) 場合による、工程f)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
h) 工程f)、場合によっては工程g)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程;
i) 場合による、還元処理工程h)の後に硫黄含有化合物により不動態化することを行う工程
を含むか、好ましくは、これらからなる。
【0039】
前記調製方法の工程a)~i)は、以下に詳細に記載される。
【0040】
(工程a):ニッケル前駆体および銅前駆体を担体と接触させる)
前記担体上のニッケルおよび銅の沈着は、工程a)の実施により、乾式含浸または過剰含浸(excess impregnation)によって、さらには沈着-沈殿によって、当業者に周知な方法に従って行われ得る。
【0041】
前記工程a)は、優先的には、担体の含浸によって行われ、これは、例えば前記担体を、少なくとも1種の溶液と接触させることからなり、この溶液は、水性または有機性(例えば、メタノールまたはエタノールまたはフェノールまたはアセトンまたはトルエンまたはジメチルスルホキシド(DMSO))であるか、あるいは、水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物からなり、少なくとも1種のニッケル前駆体および少なくとも1種の銅前駆体を、少なくとも部分的に溶解した状態で含んでおり、好ましくはこれらからなるものと接触させることからなるか、あるいは、前記担体を、少なくとも1種のコロイド溶液と接触させることからなり、このコロイド溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体および少なくとも1種の銅前駆体を酸化された形態(ニッケルおよび銅の酸化物、オキシ(水酸化物)または水酸化物のナノ粒子)または還元された形態(還元された形態のニッケルおよび銅の金属ナノ粒子)で含んでおり、好ましくはこれらからなる。好ましくは、溶液は水性である。この溶液のpHは、酸または塩基の場合による添加によって改変されてよい。
【0042】
好ましくは、前記工程a)は、乾式含浸によって行われ、これは、触媒担体を、溶液と接触させることからなり、この溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体および少なくとも1種の銅前駆体を含んでおり、好ましくはこれらからなり、その溶液の容積は、含浸させられることになる担体の細孔容積の0.25~1.5倍である。
【0043】
ニッケル前駆体が水溶液中に導入される場合、ニッケル前駆体は、有利には、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、ヒドロキシ炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩またはギ酸塩の形態、ポリ酸または酸-アルコールまたはそれの塩によって形成された錯体の形態、アセチルアセトナートにより形成された錯体の形態、テトラミンまたはヘキサミンの錯体の形態、あるいは、水溶液中に可溶な任意の他の無機誘導体の形態で用いられ、これは、前記担体と接触しているように置かれる。好ましくは、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケルまたはヒドロキシ炭酸ニッケルがニッケル前駆体として有利に用いられる。大いに好ましくは、ニッケル前駆体は、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルである。
【0044】
銅前駆体が水溶液中に導入される場合、無機または有機の形態にある銅前駆体が有利に用いられる。無機形態では、銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれ得る。大いに好ましくは、銅前駆体塩は硝酸銅である。
【0045】
本発明によると、ニッケル前駆体は、工程a)において、最終触媒(すなわち、還元工程h)または不動態化工程が行われるならば不動態化工程i)の終わりに得られた触媒)上で最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5重量%~15重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より優先的には1重量%~8重量%、一層より優先的には1重量%~7重量%の含有率を得るように所望の濃度で供給される。
【0046】
工程a)による溶液に導入される銅前駆体(1種または複数種)の量は、全銅含有率が最終触媒(すなわち、還元工程h)または不動態化工程が行われるならば不動態化工程i)の終わりに得られた触媒)の全重量に相対する銅元素の重量で0.5重量%~15重量%、好ましくは0.5重量%~12重量%、好ましくは0.75重量%~10重量%、一層より優先的には1重量%~9重量%になるように選ばれる。
【0047】
(工程b):含浸済み担体を乾燥させる)
含浸済み担体を乾燥させる工程b)が行われる際の温度は、250℃未満、好ましくは15~180℃、より優先的には30~160℃、一層より優先的には50~150℃、一層より優先的には70~140℃であり、典型的には、10分~24時間の期間にわたる。より長い時間の期間は除外されないが、何等かの改善を必ずしも与えるものではない。
【0048】
乾燥工程は、当業者に知られているあらゆる技術によって行われ得る。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素との混合物下に行われる。それは、有利には、大気圧でまたは減圧で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で空気または窒素の存在中で行われる。
【0049】
(工程c):乾燥済み触媒の熱処理(場合による工程))
工程b)の終わりに得られた触媒前駆体は、還元工程d)の前に、250~1000℃、好ましくは250~750℃の温度で、典型的には15分~10時間の期間にわたって、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては水の存在中で追加の熱処理工程を経ることができる。より長い処理時間は除外されないが、必ずしも改善を与えるわけではない。
【0050】
用語「熱処理(heat treatment)」は、水が存在しない中または水存在中での温度処理を意味することが意図される。後者の場合、水蒸気との接触は大気圧でまたは自己生成圧力下に行われ得る。水の存在がないかまたは水の存在により複数の複合サイクルが行われ得る。
【0051】
水が存在している場合には、水の含有率は、好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり150~900グラム、一層より好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり250~650グラムである。
【0052】
それ故に、乾燥工程b)の後に、または、場合による熱処理工程c)の後に、触媒前駆体は、ニッケルを酸化物の形態で、すなわち、NiOの形態で、および銅を酸化物の形態で、すなわち、CuOの形態で含む。
【0053】
(工程d):還元ガスによる還元)
本発明によると、工程b)の終わりに得られた乾燥済み触媒または工程c)の終わりに得られた触媒の還元処理の工程d)は、還元ガスの存在中で行われて、触媒担体上にニッケル-銅アロイが少なくとも部分的に金属の形態で形成される。還元ガスは好ましくは水素である。水素は、高純度でまたは混合物(例えば水素/窒素、水素/アルゴンまたは水素/メタンの混合物)として用いられ得る。混合物として水素が用いられる場合、全ての割合が想定され得る。
【0054】
本発明による調製方法の1種の本質的な局面によると、前記還元処理が行われる際の温度は、150℃~250℃、好ましくは160~230℃、より優先的には170~220℃である。還元処理の継続期間は、5分以上かつ5時間未満、好ましくは10分~4時間、一層より優先的には10分~110分である。
【0055】
本出願人によって観察されたことは、還元ガスによる還元の工程d)により、ニッケル-銅アロイを少なくとも部分的に金属の形態で形成することが可能となることである。ニッケル-銅アロイは、式NiCuを満たす。式中、xは0.1~0.9であり、yは0.1~0.9である。
【0056】
所望の還元温度までの温度上昇は、一般的に遅く、例えば、0.1~10℃/分、好ましくは0.3~7℃/分で設定される。
【0057】
水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラム、好ましくは0.05~10L/時間/触媒前駆体のグラム、さらにより好ましくは0.1~5L/時間/触媒前駆体のグラムである。
【0058】
(不動態化(場合による工程))
還元工程d)の終わりに得られた触媒前駆体は、有利には、前記触媒前駆体を、少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでおり、好ましくはこれらからなる溶液と接触させる工程(工程e))を行う前に不動態化され得る。
【0059】
行われる場合、工程d)の終わりに得られた触媒前駆体の不動態化の工程は、触媒の選択性を改善することおよび新触媒の始動の間の熱暴走を回避することを可能とする硫黄含有化合物により行われる。不動態化は、一般的には、硫黄含有化合物によって、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒すること、それ故に、その選択性の利益になるように触媒の活性を弱めることからなる。不動態化工程は、当業者に知られている方法の使用によって行われる。
【0060】
硫黄含有化合物による不動態化工程は、一般的に、20~350℃、好ましくは40~200℃の温度で、10~240分にわたって行われる。硫黄含有化合物は、例えば、以下の化合物から選ばれる:チオフェン、チオファン、アルキルモノスルフィド、例えばジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィドおよびプロピルメチルスルフィド、さらには式HO-R-S-S-R-OHの有機ジスルフィド、例えば、式HO-C-S-S-C-OHのジチオジエタノール(しばしば、DEODSと称される)。硫黄含有率は、一般的に、触媒の全重量に相対する前記元素の重量で0.1%~2%である。
【0061】
(工程e):触媒前駆体をニッケル前駆体を含んでいる溶液と接触させる)
ニッケルの沈着は、工程e)の実施により、乾式含浸または過剰含浸によって、あるいは沈着-沈殿によって、当業者に周知な方法に従って行われ得る。
【0062】
前記工程e)は、優先的には、工程d)の終わりに(または場合による不動態化工程の後に)得られた触媒前駆体に含浸させることによって行われ、この含浸は、例えば、触媒前駆体を、少なくとも1種の溶液と接触させることからなり、この溶液は、水性または有機性(例えば、メタノールまたはエタノールまたはフェノールまたはアセトンまたはトルエンまたはジメチルスルホキシド(DMSO))であり、またほかに、水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物からなり、少なくとも1種のニッケル前駆体を少なくとも部分的に溶解した状態で含んでおり、好ましくはこれらからなり、あるいは、触媒前駆体を少なくとも1種のコロイド溶液と接触させることからなり、このコロイド溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体を、酸化された形態(ニッケルの酸化物、オキシ(水酸化物)または水酸化物のナノ粒子)または還元された形態(還元された状態にあるニッケルの金属ナノ粒子)で含んでおり、好ましくは、これらからなる。好ましくは、溶液は水性である。この溶液のpHは、酸または塩基の場合による添加によって改変され得ることになるだろう。
【0063】
好ましくは、前記工程e)は、乾式含浸によって行われ、これは、触前駆体を、少なくとも1種の溶液と接触させることからなり、この溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体を含有しており、好ましくはこれらからなり、その溶液の容積は、含浸させられるべき触媒前駆体の担体の細孔容積の0.25~1.5倍である。
【0064】
ニッケル前駆体が水溶液中に導入される場合、硝酸塩、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩またはシュウ酸塩の形態、アセチルアセトナートにより形成された錯体の形態、さらには、テトラミンまたはヘキサミンの錯体の形態、または、水溶液中に可溶である任意の他の無機誘導体の形態にあるニッケル前駆体の使用が有利にはなされ、これは、前記触媒前駆体と接触させられる。ニッケル前駆体として、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、水酸化ニッケルまたはヒドロキシ炭酸ニッケルの使用が有利になされる。大いに好ましくは、ニッケル前駆体は、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルである。
【0065】
ニッケル前駆体は、工程e)において、最終触媒(すなわち、還元工程h)または不動態化工程が行われるならば不動態化工程i)の終わりに得られた触媒)上で触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で9重量%~60重量%、好ましくは9重量%~57重量%、より好ましくは9.5重量%~55重量%、より一層好ましくは9.5重量%~50重量%の含有率を得るように所望の濃度で供給される。
【0066】
(工程f):含浸済みの担体を乾燥させる)
含浸済み担体を乾燥させる工程f)は、250℃未満、好ましくは15~180℃、より優先的には30~160℃、一層より優先的には50~150℃、一層より優先的には70~140℃の温度で、典型的には10分~24時間の期間にわたって行われる。より長い時間の期間は除外されないが、必ずしも何等かの改善を与えるものではない。
【0067】
乾燥工程は、当業者に知られているあらゆる技術によって行われ得る。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素の混合物下に行われる。それは、有利には、大気圧または減圧で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で空気または窒素の存在中で行われる。
【0068】
(g)乾燥済み触媒の熱処理(場合による工程))
乾燥済み触媒前駆体は、還元工程h)の前に、250~1000℃、好ましくは250~750℃の温度で、典型的には15分~10時間の期間にわたって、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては水の存在中で追加の熱処理工程を経ることができる。より長い処理時間は除外されないが、必ずしも改善を与えるものではない。
【0069】
用語「熱処理(heat treatment)」は、水の非存在中または存在中での温度処理を意味することが意図される。後者の場合、水蒸気との接触は、大気圧でまたは自己生成圧力下に行われる。水の非存在中または存在中の複数種の複合サイクルが行われ得る。このまたはこれらの処理の後に、触媒前駆体は、ニッケルを酸化物の形態、すなわち、NiOの形態で含む。
【0070】
水が存在する場合には、水の含有率は、好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり150~900グラム、一層より好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり250~650グラムである。
【0071】
(工程h):還元ガスによる還元)
接触反応器における触媒の使用および水素化方法の実施より先に、還元処理工程h)が還元ガスの存在中で行われて、ニッケルを少なくとも部分的に金属の形態で含んでいる触媒が得られる。この工程は、有利には、現場内で(in situ)、すなわち、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための反応器への触媒の充填の後に行われる。この処理により、前記触媒を活性にすることおよび金属粒子、特にゼロ価の状態にあるニッケルの金属粒子を形成することが可能となる。触媒還元処理の現場内実施により、酸素所持化合物またはCOによる触媒の不動態化のさらなる工程をなしで済ますことが可能となり、これは、必然的に、現場外(ex situ)で、すなわち、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のために用いられる反応器の外側で還元処理を行うことによって触媒が調製される場合である。実際に、還元処理が現場外で行われる場合、(水素化反応器への触媒の輸送および充填の操作の間に)空気の存在中で触媒の金属相を保存するために不動態化工程を行うこと、次いで、触媒を還元する新しい工程を行うことが必要である。
【0072】
還元ガスは好ましくは水素である。水素は、高純度でまたは混合物(例えば水素/窒素、水素/アルゴンまたは水素/メタンの混合物)として用いられ得る。水素が混合物として用いられる場合、全ての割合が想定され得る。
【0073】
本発明による調製方法の1種の本質的な局面によると、前記還元処理が行われる際の温度は、150℃~250℃、好ましくは160~230℃、より優先的には170~220℃である。還元処理の継続期間は、5分以上かつ5時間未満、好ましくは10分~4時間、一層より優先的には10分~110分である。
【0074】
少なくとも部分的に還元された形態にあるニッケル-銅アロイの存在により、従来技術におけるのより過酷性に乏しいニッケル活性相を還元するための操作条件を用いることが可能となり、それ故に、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化を行うことが望まれる反応器内で直接的に還元工程を行うことが可能となる。
【0075】
さらに、触媒中の銅の存在により、触媒が硫黄を含んでいる炭化水素供給原料、とりわけ、水蒸気分解および/または接触分解C3炭化水素フラクションと接触して置かれる場合に触媒の良好な活性および触媒の良好な耐用期間を保持することが可能となる。実際に、ニッケルと比較して、触媒中に存在する銅は、供給原料中に含まれる硫黄含有化合物をより容易に捕捉し、それにより、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒することが回避される。
【0076】
所望の還元温度までの温度上昇は一般的には遅く、例えば、0.1~10℃/分、好ましくは0.3~7℃/分に設定される。
【0077】
水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラム、好ましくは0.05~10L/時間/触媒前駆体のグラム、よりさらに好ましくは0.1~5L/時間/触媒前駆体のグラムである。
【0078】
(工程i):不動態化(場合による))
本発明による方法により調製された触媒は、有利には、触媒の選択性を改善することおよび新触媒の起動の間の熱暴走を回避することを可能にする硫黄含有化合物による不動態化工程を経ることができる。不動態化は、一般的には、硫黄含有化合物によって、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒すること、それ故に、それの選択性の利益となるように触媒の活性を弱めることからなる。不動態化工程は、当業者に知られている方法を用いて行われる。
【0079】
硫黄含有化合物による不動態化工程は、一般的には、20~350℃、好ましくは40~200℃の温度で、10~240分にわたって行われる。硫黄含有化合物は、例えば、以下の化合物から選ばれる:チオフェン、チオファン、アルキルモノスルフィド、例えばジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィドおよびプロピルメチルスルフィド、あるいは式HO-R-S-S-R-OHの有機ジスルフィド、例えば、式HO-C-S-S-C-OHのジチオジエタノール(しばしばDEODSと称される)。硫黄含有率は、一般的には、触媒の全重量に相対する前記元素の重量で0.1%~2%である。
【0080】
(触媒)
本発明による調製方法によって得られ得る触媒は、ニッケルおよび銅を含んでいる活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる耐火性酸化物の形態にある担体とを含んでおり、活性相のニッケルおよび銅の一部は、ニッケル-銅アロイの形態にあり、有利には、式NiCuに対応し、ここで、xは0.1~0.9であり、yは0.1~0.9である。
【0081】
銅含有率は、触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5~15重量%、好ましくは0.5~12重量%、好ましくは0.75~10重量%、一層より優先的には1~9重量%である。
【0082】
全ニッケル含有率は、触媒の全重量に相対する前記元素の重量で10重量%~65重量%、好ましくは14重量%~50重量%、好ましくは20重量%~45重量%である。
【0083】
本発明による調製方法によって形成された銅-ニッケルアロイ中に含まれるニッケル含有率は、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5重量%~15重量%、好ましくは1重量%~12重量%、より優先的には1重量%~10重量%である。
【0084】
細孔性担体は、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナからなる群から選ばれる。一層より好ましくは、担体はアルミナである。アルミナは、全ての可能な結晶学的形態:アルファ、デルタ、シータ、カイ、ロー、エータ、カッパ、ガンマ等で存在してよく、単独でまたは混合物として利用される。好ましくは、担体は、アルファ、デルタ、シータおよびガンマのアルミナから選ばれる。
【0085】
担体の比表面積は、一般的に、30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは60m2/g~500m2/g、よりさらに好ましくは70m2/g~400m2/gである。比表面積BETは、窒素物理吸着によって測定される。
【0086】
担体の全細孔容積は、一般的に0.1~1.5cm/g、好ましくは0.35~1.2cm/g、一層より好ましくは0.4~1.0cm/g、一層より好ましくは0.45~0.9cm/gである。
【0087】
前記触媒は、一般的には、当業者に知られている全ての形態、例えば、ビーズ状(一般的には、1~8mmの径を有している)、押出物状、ブロック状または中空シリンダ状の形態で提示される。好ましくは、それは、押出物からなり、それが有している径は、一般的には0.5~10mm、好ましくは0.8~3.2mm、大いに好ましくは1.0~2.5mmであり、平均長は、0.5~20mmである。押出物の用語「平均径(mean diameter)」は、これらの押出物の断面に外接させられる円の平均径を意味することが意図される。触媒は、有利には、シリンダ状、多葉状、三葉状または四葉状の押出物の形態で提示され得る。好ましくは、それの形状は、三葉状または四葉状であるだろう。葉の形状は、従来技術から知られている全ての方法により調節され得る。
【0088】
担体の比表面積は、一般的に、30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは60m2/g~500m2/g、よりさらに好ましくは70m2/g~400m2/gである。
【0089】
触媒の全細孔容積は、一般的に0.1~1.5cm/g、好ましくは0.35~1.2cm/g、一層より好ましくは0.4~1.0cm/g、一層より好ましくは0.45~0.9cm/gである。
【0090】
触媒が有しているマクロ細孔容積は、有利には、0.6mL/g以下、好ましくは0.5mL/g以下、より好ましくは0.4mL/g以下、一層より好ましくは0.3mL/g以下である。
【0091】
触媒のメソ細孔容積は、一般的には、最低0.10mL/g、好ましくは最低0.20mL/g、好ましくは0.25mL/g~0.80mL/g、より好ましくは0.30~0.65mL/gである。
【0092】
中央値メソ細孔径は、有利には3nm~25nm、好ましくは6~20nm、特に好ましくは8~18nmである。
【0093】
触媒が呈する中央値マクロ細孔径は、有利には、50~1500nm、好ましくは80~1000nm、よりさらに好ましくは250~800nmである。
【0094】
好ましくは、触媒は低いミクロ多孔性を呈する:大いに好ましくは、それは、少しもミクロ多孔性を呈さない。
【0095】
(芳香族化合物の水素化方法)
本発明の別の主題は、650℃以下、一般的には20~650℃、好ましくは20~450℃の最終沸点を有する炭化水素供給原料中に存在する少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための方法にある。少なくとも1種の芳香族またはポリ芳香族の化合物を含有している前記炭化水素供給原料は、以下の石油または石油化学のフラクションから選ばれてよい:接触改質からのリフォメート、ケロセン、軽質ガスオイル、重質ガスオイル、分解蒸留物(cracking distillate)、例えば、FCCリサイクル油、コーキングユニットガスオイルまたは水素化分解蒸留物。
【0096】
本発明による水素化方法において処理される炭化水素供給原料中に存在する芳香族またはポリ芳香族の化合物の含有率は、一般的に0.1重量%~80重量%、好ましくは1重量%~50重量%、特に好ましくは2重量%~35重量%であり、百分率は、炭化水素供給原料の全重量をベースとしている。前記炭化水素供給原料中に存在する芳香族化合物は、例えば、ベンゼンまたはアルキル芳香族化合物、例えば、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレンまたはp-キシレン、さらには、複数個の芳香核を有している芳香族化合物(ポリ芳香族化合物)、例えば、ナフタレンである。
【0097】
供給原料の硫黄または塩素の含有率は、一般的には、硫黄または塩素の重量で5000重量ppm未満、好ましくは100重量ppm未満、特に好ましくは10重量ppm未満である。
【0098】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化のための方法の技術的な実施は、例えば、少なくとも1基の固定床反応器への上昇または下降の流れとしての炭化水素供給原料および水素の注入によって行われる。前記反応器は、等温タイプまたは断熱タイプのものであってよい。断熱反応器が好ましい。炭化水素供給原料は、有利には、芳香族化合物の水素化反応が行われる前記反応器に由来する流出物の、反応器の入口と出口との間に位置する、反応器の種々のポイントにおける1回または複数回の再注入によって希釈され得、反応器中の温度勾配が制限される。本発明による芳香族化合物の水素化方法の技術的な実施は、有利には、反応蒸留塔中または反応器-交換器中またはスラリータイプの反応器中の少なくとも前記担持型触媒の移植によっても行われ得る。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時にかつ/または反応器の1または複数の異なるポイントにおいて導入されてよい。
【0099】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化は、気相中または液相中、好ましくは液相中で行われ得る。一般的に、芳香族またはポリ芳香族の化合物の水素化が行われる際の温度は、30~350℃、好ましくは50~325℃であり、その際の圧力は、0.1~20MPa、好ましくは0.5~10MPaであり、その際の水素/(水素化されるべき芳香族化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、0.05~500h-1、好ましくは0.1~10h-1であり、炭化水素供給原料は、芳香族またはポリ芳香族の化合物を含有しており、650℃以下、一般的には20~650℃、好ましくは20~450℃の最終沸点を有する。
【0100】
水素流量は、芳香族化合物の全てを理論的に水素化しかつ反応器の出口において水素の過剰を維持するためにその十分な量を利用可能にするように調節される。
【0101】
芳香族またはポリ芳香族の化合物の転化率は、炭化水素ベースの供給原料中に存在する芳香族またはポリ芳香族の化合物の一般的に20mol%超、好ましくは40mol%超、より好ましくは80mol%超、特に好ましくは90mol%超である。転化率は、炭化水素供給原料中および生成物中の芳香族またはポリ芳香族の化合物の全モル間の差異を炭化水素供給原料中の芳香族またはポリ芳香族の化合物の全モルで除算することによって計算される。
【0102】
本発明による方法の特定の代替形態によると、炭化水素供給原料、例えば、接触改質ユニットに由来するリフォメートのベンゼンの水素化のための方法が行われる。前記炭化水素供給原料中のベンゼンの含有率は、一般的に0.1~40重量%、好ましくは0.5~35重量%、特に好ましくは2~30重量%であり、重量百分率は、炭化水素供給原料の全重量をベースとする。
【0103】
供給原料の硫黄または塩素の含有率は、一般的にそれぞれ硫黄または塩素の重量で10重量ppm未満、好ましくは2重量ppm未満である。
【0104】
炭化水素供給原料中に含有されるベンゼンの水素化は、気相中または液相中で行われてよく、好ましくは液相中である。液相中でそれが行われる場合、溶媒が存在してよく、例えば、シクロヘキサン、ヘプタンまたはオクタンである。一般的に、ベンゼンの水素化が行われる際の温度は、30~250℃、好ましくは50~200℃、より好ましくは80~180℃であり、その際の圧力は、0.1~10MPa、好ましくは0.5~4MPaであり、その際の水素/(ベンゼン)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度HSVは、0.05~50h-1、好ましくは0.5~10h-1である。
【0105】
ベンゼンの転化率は、一般に、50mol%超、好ましくは80mol%超、より好ましくは90mol%超、特に好ましくは98mol%超である。
【0106】
本発明は、今、決して制限するものではない以下の実施例によって例証されることになる。
【0107】
(実施例)
以下に言及される実施例において言及される全ての触媒について、担体は、アルミナAであり、これが有している比表面積は、80m2/gであり、細孔容積は0.7mL/g(cm/g)であり、中央値メソ細孔径は12nmである。
【0108】
(実施例1:Ni前駆体の水溶液の調製)
触媒A~Eの調製のために用いられるNi前駆体の水溶液(溶液S)の調製を、硝酸ニッケル(NiNO(供給業者Strem Chemicals(登録商標)))43.5gを13mLの容積の蒸留水中に溶解させることによって行う。そのNi濃度が溶液の容積(リットル)当たりNi350gである溶液Sを得る。
【0109】
(実施例2:触媒A-20重量%のNi(比較例))
実施例1において調製された溶液Sを、乾燥条件下にアルミナA10g上に含浸させる。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。このように調製された焼成済み触媒は、アルミナ担持型触媒の全重量に相対して20重量%のニッケル元素を含有している。
【0110】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0111】
(実施例3:触媒B-Ni/Cu比=3での共含浸における20重量%のNi+Cu(比較例))
硝酸銅溶液を調製し、最終触媒上でNi/Cu比=3を最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。このようにして得られた固体を、次いで、オーブン中、120℃で終夜乾燥させる。このようにして得られた固体を、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0112】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8において記載されるような条件下に還元する。
【0113】
(実施例4:触媒C-Ni+Cuの含浸(5重量%のNiおよびNi/Cuモル比=3)と、その後の、20重量%のNiの含浸(本発明に合致する))
硝酸銅溶液を調製し、Ni/Cu比=3を中間触媒上に最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。Ni含有率は最終触媒の重量に相対して5重量%である。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。これを次いで水素流下に190℃で4時間にわたって還元し、次いで、空気に戻す。触媒前駆体C1を得る。
【0114】
溶液Sを、次いで、触媒前駆体C1上に乾式含浸させ、最終触媒の全重量に相対して20重量%のNiのみを得る(これは、アロイに貢献しない)。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0115】
触媒前駆体を次いで下記の実施例8において記載されるような条件下に還元する。
【0116】
(実施例5:触媒D-Ni+Cuの含浸(2重量%のNiおよびNi/Cuのモル比=3)と、その後の、20重量%のNiの含浸(本発明に合致する))
硝酸銅溶液を調製し、Ni/Cu比=3を中間触媒上に最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。Niの含有率は、最終触媒の重量に相対して2重量%である。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。これを次いで水素流下に190℃で4時間にわたって還元する。触媒前駆体D1を得る。
【0117】
溶液Sを、次いで、触媒前駆体D1上に乾式含浸させ、最終触媒の全重量に相対して20重量%のNiのみを得る(これは、アロイに貢献しない)。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0118】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0119】
(実施例6:触媒E-Ni+Cuの含浸(5重量%のNiおよびNi/Cuのモル比=2)と、その後の、20重量%のNiの含浸(本発明に合致する))
硝酸銅溶液を調製し、Ni/Cu比=2を中間触媒上に最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。Niの含有率は最終触媒の重量に相対して5重量%である。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。これを次いで水素流下に190℃で4時間にわたって還元する。触媒前駆体E1を得る。
【0120】
溶液Sを、次いで、触媒前駆体E1上に乾式含浸させ、最終触媒の全重量に相対して20重量%のNiのみを得る(これは、アロイに貢献しない)。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中、120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0121】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0122】
(実施例7:特徴付け)
全ての触媒は、含浸の間に目標とされる含有率、すなわち、触媒の全重量に相対して20%のニッケル元素(蛍光X線によって特徴付けられる)および%の加えられた銅(蛍光X線によって特徴付けられる)を含有する。
【0123】
焼成、次いで還元の工程の後に得られたアロイの量を、粉末形態の触媒のサンプルについてのX線回折(X-ray diffraction:XRD)分析によって決定した。
【0124】
還元工程の後に得られた金属形態にあるニッケルの量を、粉体形態にある触媒のサンプルについてX線回折(XRD)分析によって決定した。還元工程の間、XRDによる特徴付けの継続期間を通して、触媒を、解放空気に決して戻さない。銅のKα1放射線(λ=1.5406Å)による従来の粉末法を用いる回折計による放射線結晶写真分析によって回折パターンを得る。
【0125】
分析される触媒の各サンプルのディフラクトグラムの全て上で、52°2θの周囲に位置するNiの線の面積を計算し、次いで、周囲温度に達するとすぐに、アルミナに起因する52°における線の下で、存在するシグナルを減算することによって還元度を計算した。
【0126】
下記表1は、190℃での90分にわたる水素流下の還元工程の後にXRDによって特徴付けられた全ての触媒A~Eについての還元度、さらにはニッケル金属Niの含有率(Niの全重量に相対する重量%として表される)を照合する。これらの値も、従来の還元工程(すなわち、400℃の温度での15時間にわたる水素流下)の後に触媒A(Niのみ)について得られた還元度と比較した。
【0127】
デルタおよびシータの形態にあるアルミナおよび大きなCuOおよびNiOの線を、周囲温度において焼成の後の全ての銅-およびニッケル-含有の触媒上で検出する。
【0128】
Ni0.76Cu0.24の形態にあるアロイに対応する線を還元の後にさらに検出する。
【0129】
還元性の度合およびしたがってNiの形成を評価するために、52°2θの周囲に位置するNiの線の面積を、全てのディフラクトグラム上で、52°における線下でアルミナに起因する周囲温度から存在するシグナルを減算することによって測定する。還元の後に結晶化させられたNiの相対的な割合(%)を決定することがそれ故に可能である。
【0130】
下記表1は、190℃での90分にわたる水素流下の還元後にXRDによって特徴付けられた全ての触媒についての還元性の度合いまたはNi°の含有率を要約する。これらの値も、従来の還元工程(すなわち、400℃の温度での15時間にわたる水素流下の還元)の後の触媒A(Niのみ)について得られた還元度と比較した。
【0131】
【表1】
【0132】
触媒A(20%のNiのみ/アルミナ)について、ニッケルの還元性の度合いは、触媒B~Eについてと精密に同一の水素下の還元処理の後に0%である。
【0133】
ニッケル(5重量%のNi)および銅のNi/Cu比2での前含浸により、終わりにおいて触媒上で80%程度の還元型Ni°を得ることが可能となる。アロイを作り上げるニッケルの含有率が2重量%であるより少ないNiCuアロイおよび銅のNi/Cu比3での前含浸により、終わりにおいて触媒上に90%程度の還元型Ni°を得ることが可能となる。ニッケル(5重量%のNi)および銅のNi/Cu比3での前含浸により、190℃から終わりにおいて触媒上で100%の還元型Ni°を得ることが可能となる。
【0134】
(実施例8:触媒試験:トルエンの水素化における性能レベル)
上記の実施例において記載された触媒A~Eをトルエンの水素化の反応に関しても試験する。
【0135】
500mLのステンレス鋼オートクレーブにおいて水素化反応を行う。このオートクレーブは磁石駆動機械撹拌機を備え、100bar(10MPa)の最大圧力下、5℃~200℃の温度で操作することができる。
【0136】
n-ヘプタン(供給元VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm(登録商標)HPLC)216mLおよび触媒(触媒A~E)2mLを、オートクレーブに加える。次いで、オートクレーブを水素35bar(3.5MPa)下に加圧する。触媒を最初に、190℃で水素圧力下に90分にわたって(温度上昇勾配1℃/分)、触媒A~Eについて現場内還元する(これは1種の実施形態に従う本発明による触媒の調製方法の工程h)に対応する)。
【0137】
オートクレーブを、次いで、80℃に等しい試験温度とする。時間t=0において、トルエン(供給元SDS(登録商標)、純度>99.8%)約26gをオートクレーブに導入し(反応混合物の当初の組成は、その時、トルエン6重量%/n-ヘプタン94重量%である)、1600rev/分で撹拌を開始する。反応器の上流に位置する収納シリンダを用いてオートクレーブにおいて圧力を35bar(3.5MPa)の一定に維持する。
【0138】
触媒Aについて別の試験を行ったが、触媒還元温度は400℃であり、15時間にわたっていた。
【0139】
定時間隔で反応媒体からサンプルを取ることによって反応の進行をモニタリングする:トルエンを完全に水素化して、メチルシクロヘキサンを与える。反応器の上流に位置する収納シリンダにおける圧力減少によって水素消費も経時モニタリングする。
【0140】
触媒A~Eについて測定された触媒活性を下記の表2に報告する。それらは、従来の還元条件下に(400℃の温度で15時間にわたって水素流下に)調製された触媒Aについて測定された触媒活性(AHARO)に関する。
【0141】
【表2】
【0142】
これが明らかに示すことは、190℃で90分にわたって還元されたアルミナ上Niのみの触媒(これは完全に不活性である)と比べて、本発明による触媒C、DおよびEの改善された性能である。さらに、NiCuアロイのみ(触媒B)は、基準に非常に大きく遅れている活性(10%程度)を有することが留意されるべきである。