(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】選択的水素化触媒を調製する方法であって、前含浸においてNi-Cuアロイを形成する工程を含む方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20240307BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20240307BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240307BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20240307BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20240307BHJP
C07C 5/03 20060101ALI20240307BHJP
C07C 5/05 20060101ALI20240307BHJP
C07C 9/18 20060101ALI20240307BHJP
C07C 15/073 20060101ALI20240307BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
B01J37/02 101D
B01J37/18
B01J37/08
B01J37/20
B01J23/755 Z
C07C5/03
C07C5/05
C07C9/18
C07C15/073
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021540488
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2020050329
(87)【国際公開番号】W WO2020148131
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ マリカ
(72)【発明者】
【氏名】コイノー アンヌ-アガタ
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533085(JP,A)
【文献】特表2008-516765(JP,A)
【文献】特表2007-531614(JP,A)
【文献】米国特許第05948942(US,A)
【文献】特表2015-506829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化のための触媒を調製する方法であって、該触媒は、ニッケルを触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で1%~35%の割合で、および銅を触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5%~15%の割合で含み、および、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含む担体を含んでおり、前記方法は、以下の工程:
a) 担体を少なくとも1種の銅前駆体および少なくとも1種のニッケル前駆体を所望のニッケル濃度で含有している少なくとも1種の溶液と接触させることを行って、最終触媒上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~15%の含有率を得る工程;
b) 工程a)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程
c)
工程b)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
d)
工程c)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって、前記触媒前駆体を還元する工程;
e) 工程d)の終わりに得られた触媒前駆体を少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでいる溶液と接触させることを行う工程;
f) 工程e)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
g)
工程f)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
h)
工程g)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって前記触媒前駆体を還元する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)において、ニッケルと銅との間のモル比が0.5~
5である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)および/またはh)を行う際の温度は、160~230℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)および/またはh)を行う際の温度は、170~220℃である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程d)および/またはh)を10分~110分にわたって行う、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
還元工程d)の後しかし工程e)の前に、および/または還元工程h)の後に硫黄含有化合物による触媒前駆体の不動態化の工程も含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
1回または複数回の不動態化工
程を20~350℃の温度で10~240分にわたって行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記硫黄含有化合物を、チオフェン、チオファン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、プロピルメチルスルフィドおよびジチオジエタノールから選ぶ、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
銅前駆体を、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ぶ、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
銅前駆体は、硝酸銅である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程d)および/またはh)の還元ガスは
、水素である、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)および/またはe)の間に供給されるニッケル前駆体を、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルから選ぶ、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
300℃以下の最終沸点を有する炭化水素供給原料中に存在する分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含むポリ不飽和化合物、例えば、ジオレフィンおよび/またはアセチレン化合物および/またはアルケニル芳香族化合物の選択的水素化のための方法であって、請求項1~13のいずれか1つにおいて記載されたようにして得られた触媒の存在中で前記方法を行い、その際の温度は0~300℃であり、その際の圧力は0.1~10MPaであり、液相中で本方法を行う場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度は0.1~200h
-1であり、または、気相で本方法を行う場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は100~40000h
-1である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルおよび銅を含んでいる担持型金属触媒、特に、不飽和炭化水素の水素化を意図される触媒を調製する方法に関する。
【0002】
本発明は、不飽和炭化水素の水素化、より詳細にはオレフィン性フラクションの選択的水素化の反応におけるこれらの触媒の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ不飽和化合物の選択的水素化のための触媒は、一般的に、元素周期律表の第VIII族からの金属、例えば、ニッケルをベースとする。金属は、ナノメートルの金属粒子の形態にあり、耐火性酸化物であってよい担体上に沈着させられている。第VIII族金属の含有率、場合による第2金属元素の存在、金属粒子のサイズおよび担体中の活性相の分配、さらには担体の性質および細孔の分配は、触媒の性能に影響力を有してよいパラメータである。
【0004】
水素化反応の速度は、複数種の基準、例えば、触媒の表面の方への反応剤の拡散(外的拡散制限)、活性サイトの方への担体の多孔性部中の反応剤の拡散(内的拡散制限)および活性相の内在特性、例えば、金属性粒子のサイズおよび担体内の活性相の分配によって支配される。
【0005】
ニッケルベースの触媒の促進が、しばしば、選択的水素化における性能レベルを改善するために提案された。例えば、特許文献1から、C4-C10ジオレフィンの選択的水素化のためにニッケルおよび銀をベースとする触媒を用いることが知られている。さらに、主として存在しているニッケルを、第IB族の金属、特に、金(特許文献2)またはスズ(特許文献3)により促進することが知られている。文献(特許文献4)には、選択的水素化方法の実施のための触媒であって、担体と、担体上に沈着させられた活性金属相とを含み、活性金属相は、銅と、少なくとも1種のニッケルまたはコバルト金属とをCu:(Niおよび/またはCo)モル比1超で含む、触媒が開示されている。
【0006】
さらに、このような触媒の採用および水素化方法におけるその使用より先に、還元ガスの存在中の還元処理の工程が行われるのは、少なくとも部分的に金属形態にある活性相を含んでいる触媒を得るためである。この処理により、触媒を活性にすることおよび金属粒子を形成することが可能となる。この処理は、現場内(in situ)または現場外(ex situ)で、すなわち、触媒が水素化反応器に装填される後またはその前に行われてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5208405号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2949077号明細書(特開2011-36857号公報)
【文献】仏国特許出願公開第2949078号明細書(特開2011-36858号公報)
【文献】仏国特許出願公開第3011844号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の主題)
水素化触媒の分野においてそれの研究を継続して、本出願人は、今や驚くべきことに、ニッケルおよび銅をベースとするアロイが担体上に形成された後に触媒の(ニッケルをベースとする)活性相の前駆体を担体上に沈着させる特定の調製方法を行うことによって、低温での還元の後にポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化において特に活性な触媒を調製することが可能であることを発見した。
【0009】
あらゆる理論によって結び付けられることを望むことなく、本出願人によって観察されたことは、触媒の調製の間に、担体を銅ベースの金属前駆体とニッケルベースの金属前駆体とを同時に含有している溶液と接触させる工程を行い、その後に、還元ガスの存在中、低温(150℃~250℃)で乾燥・還元する工程を行うことにより、(還元された形態にある)ニッケル-銅のアロイを得ることが可能となり、このことにより、予想外に、担体上のニッケル活性相の還元性を大きく改善することが可能となり、前記ニッケル活性相は、大部分について、(還元された形態にある)ニッケル-銅アロイの形成の後の工程において供給されることである。それ故に、本発明による調製方法により、還元ガスの存在中、従来技術において一般に用いられるものより低い温度でかつより短い反応時間で金属元素を還元する工程を行うことが可能となる。有利には、従来技術におけるのより少ない過酷さの操作条件の使用により、ポリ不飽和フラクションの選択的水素化を行うことが望まれる反応器内で還元工程を直接的に行うことが可能となる。さらに、触媒中の銅の存在により、硫黄を含んでいる炭化水素供給原料、とりわけ、水蒸気分解および/または接触分解のC3炭化水素フラクションと接触しているように触媒が置かれる場合に触媒の良好な活性およびより長い耐用期間を維持することが可能となる。実際に、ニッケルと比較して、触媒中に存在する銅は、供給原料中に含まれる硫黄含有化合物をより容易に捕捉し、これにより、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒することが回避される。
【0010】
本発明の主題は、ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化のための触媒を調製する方法であって、該触媒は、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で1%~35%の割合においてニッケルをベースとし、かつ、触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5%~15%の割合において銅をベースとする金属性活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含んでいる担体とを含んでおり、前記方法は、以下の工程:
a) 担体を少なくとも1種の銅前駆体および少なくとも1種のニッケル前駆体を所望のニッケル濃度で含有している少なくとも1種の溶液と接触させることを行って、最終触媒上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~15%の含有率を得る工程;
b) 工程a)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
c) 場合による、工程b)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
d) 工程b)、場合によっては工程c)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって、前記触媒前駆体を還元する工程;
e) 工程d)の終わりに得られた触媒前駆体を少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでいる溶液と接触させることを行う工程;
f) 工程e)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
g) 場合による、工程f)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
h) 工程f)、場合によっては工程g)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって、前記触媒前駆体を還元する工程
を含む、方法にある。
【0011】
有利には、工程a)においてニッケルと銅との間のモル比は0.5~5である。
【0012】
好ましくは、工程d)および/またはh)が行われる際の温度は、160~230℃である。
【0013】
より優先的には、工程d)および/またはh)が行われる際の温度は、170~220℃である。
【0014】
有利には、工程d)および/またはh)は、10分~110分にわたって行われる。
【0015】
有利には、本調製方法は、還元工程d)の後しかし工程e)の前に、かつ/または還元工程h)の後に硫黄含有化合物による触媒前駆体の不動態化の工程も含む。
【0016】
好ましくは、不動態化工程(1回または複数回)は、20~350℃の温度で10~240分にわたって行われる。
【0017】
有利には、前記硫黄含有化合物は、チオフェン、チオファン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、プロピルメチルスルフィド、ジチオジエタノールから選ばれる。
【0018】
有利には、銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれる。
【0019】
有利には、銅前駆体は、硝酸銅である。
【0020】
有利には、工程d)および/またはh)の還元ガスは二水素である。
【0021】
有利には、水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラムである。
【0022】
有利には、工程a)および/またはe)の間に供給されるニッケル前駆体は、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルから選ばれる。
【0023】
本発明による別の主題は、300℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に存在する分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有しているポリ不飽和化合物、例えば、ジオレフィンおよび/またはアセチレン化合物および/またはアルケニル芳香族化合物の選択的水素化のための方法であって、前記方法は、本発明による調製方法により得られた触媒の存在中で行われ、その際の温度は0~300℃であり、その際の圧力は0.1~10MPaであり、本方法が液相で行われる場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度は0.1~200h-1であり、または、本方法が気相中で行われる場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は100~40000h-1である、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
以降、化学元素の族は、CAS分類により与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10族の金属に対応する。
【0025】
触媒中に含有される金属Mの還元度(degree of reduction:DR)は、前記触媒を還元する工程の後に還元された前記金属Mの割合(%)であるとして定義される。還元度(DR)は、還元された金属(M1)の量と触媒上に存在する理論的に還元可能な、蛍光X線によって測定される金属(M2)の量との間の比に対応する。すなわち、DR(%)=(M1/M2)×100である。本発明の絡みで、ニッケル(Ni)の還元度は、X線回折(X-ray diffraction:XRD)分析によって測定された。酸化物触媒上の還元可能な金属の量を測定する方法の記載は、後に本記載において説明される(実施例の項を参照のこと)。
【0026】
表現「触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体の比表面積(the specific surface of the catalyst or of the support used for the preparation of the catalyst according to the invention)」は、定期刊行「The Journal of the American Chemical Society」、60、309(1938)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から作成された規格ASTM D 3663-78による窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味することが意図される。
【0027】
本出願において、用語「含むこと(to comprise)」は、「含むこと(to include)」および「含有すること(to contain)」と同じことを表しており(と同じことを意味しており)、包括的またはオープンであり、述べられていない他の要素を除外しない。用語「含むこと(to comprise)」は、排他的なかつクローズの用語「からなる(to consist of)」を含むことが理解される。
【0028】
用語「マクロ細孔(macropores)」は、細孔であって、その開口が50nm超であるものを意味することが意図される。
【0029】
用語「メソ細孔(mesopores)」は、細孔であって、その開口が2nm~50nm(両限界値を含む)であるものを意味することが意図される。
【0030】
用語「ミクロ細孔(micropores)」は、細孔であって、その開口が2nm未満であるものを意味することが意図される。
【0031】
触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体の用語「全細孔容積(total pore volume)」は、最大圧力4000bar(400MPa)での規格ASTM D4284-83に従う水銀ポロシメータによる圧入によって、表面張力484dyne/cmおよび接触角140°を用いて測定される容積を意味することが意図される。濡れ角は、Jean CharpinおよびBernard Rasneurによって記述された研究書「Techniques de l'ingenieur, traite analyse et caracterisation」[Techniques of the Engineer, Analysis and Characterization Treatise(エンジニアの技術、分析および特徴付けの論文)]ページ1050-1055の推奨に従って140°に等しいとみなされた。
【0032】
より良好な正確性を得るために、全細孔容積の値は、サンプル上で測定された水銀ポロシメータによる圧入によって測定される全細孔容積の値から30psi(約0.2MPa)に対応する圧力についての同一のサンプル上で測定された水銀ポロシメータによる圧入によって測定された全細孔容積の値を引いたものに対応する。
【0033】
マクロ細孔およびメソ細孔の容積は、最大圧力4000bar(400MPa)での規格ASTM D4284-83による水銀の圧入による多孔度測定によって、表面張力484dyne/cmおよび接触角140°を用いて測定される。水銀が全ての粒子間空間を満たす値は、0.2MPaに設定され、これより上では、水銀がサンプルの細孔に貫通することが考えられる。
【0034】
触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体のマクロ細孔容積は、0.2MPa~30MPaの圧力で導入された水銀の累積容積であるとして定義され、50nm超の見かけの径を有する細孔中に存在する容積に対応する。
【0035】
触媒または本発明による触媒の調製のために用いられる担体のメソ細孔容積は、30MPa~400MPaの圧力で導入された水銀の累積容積であるとして定義され、2~50nmの見かけの径を有する細孔中に存在する容積に対応している。
【0036】
ミクロ細孔容積は、窒素多孔度測定によって測定される。ミクロ多孔度の定量分析は、「t」法(Lippens-De Boer,1965の方法)を用いて行われ、これは、F. Rouquerol,J. RouquerolおよびK. Singによって記述された研究書「Adsorption by powders and porous solids. Principles, methodology and applications」、Academic Press、1999に記載されているような、出発吸着等温線の変換に対応する。
【0037】
中央値メソ細孔径も、メソ細孔容積を構成する複合細孔から、この径未満のサイズを有する全ての細孔が水銀ポロシメータによる圧入によって決定された全メソ細孔容積の50%を構成するような径であるとして定義される。
【0038】
中央値マクロ細孔径も、マクロ細孔容積を構成している複合細孔から、この径未満のサイズを有する全ての細孔が、水銀ポロシメータによる圧入によって決定される全マクロ細孔容積の50%を構成するような径であるとして定義される。
【0039】
(2.詳細な説明)
(触媒を調製する方法)
本発明によると、ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化のための触媒を調製する方法であって、この触媒は、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で1%~35%の割合でニッケルをベースとし、かつ、触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5%~15%の割合で銅をベースとする金属性活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含んでいる担体とを含んでおり、好ましくは、これらからなる、方法は、以下の工程:
a) 担体を、少なくとも1種の溶液と接触させることを行い、この溶液は、少なくとも1種の銅前駆体および少なくとも1種のニッケル前駆体を、所望のニッケル濃度で含有しており、好ましくは、これらからなり、最終触媒上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~15%の含有率を得る工程;
b) 工程a)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
c) 場合による、工程b)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
d) 工程b)、場合によっては工程c)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって、前記触媒前駆体を還元する工程;
e) 工程d)の終わりに得られた触媒前駆体を溶液と接触させることを行い、この溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでおり、好ましくはこれらからなる工程;
f) 工程e)に由来する触媒前駆体を乾燥させることを250℃未満の温度で行う少なくとも1回の工程;
g) 場合による、工程f)の終わりに得られた触媒前駆体の熱処理を250~1000℃の温度で、水が存在する中または存在しない中で行う工程;
h) 工程f)、場合によっては工程g)に由来する触媒前駆体を還元ガスと150~250℃の温度で接触させることによって、前記触媒前駆体を還元する工程;
i) 場合による、還元処理工程h)の後に硫黄含有化合物による不動態化を行う工程
を含んでおり、好ましくはこれらからなる。
【0040】
前記調製方法の工程a)~i)は、以下に詳細に記載される。
【0041】
(工程a)ニッケル前駆体および銅前駆体をと担体と接触させる)
ニッケルおよび銅の前記担体上の沈着は、工程a)の実施により、乾式含浸または過剰含浸(excess impregnation)によって、あるいは、沈着-沈殿によって、当業者に周知の方法により行われ得る。
【0042】
前記工程a)は、優先的には、担体の含浸によって行われ、これは、例えば、前記担体を、少なくとも1種の溶液と接触させることからなり、この溶液は、水性または有機性(例えば、メタノールまたはエタノールまたはフェノールまたはアセトンまたはトルエンまたはジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO))であるか、あるいは、水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物からなり、少なくとも1種のニッケル前駆体および少なくとも1種の銅前駆体を少なくとも部分的に溶解した状態で含んでおり、好ましくはこれらからなり、あるいは、前記担体を、少なくとも1種のコロイド溶液と接触させることからなり、当該コロイド溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体および少なくとも1種の銅前駆体を、酸化された形態(ニッケルおよび銅の酸化物、オキシ(水酸化物)または水酸化物のナノ粒子)または還元された形態(還元された形態にあるニッケルおよび銅の金属性ナノ粒子)で含んでおり、好ましくは、これらからなる。好ましくは、溶液は水性である。この溶液のpHは、場合による酸または塩基の添加によって改変されてよい。
【0043】
好ましくは、前記工程a)は、乾式含浸によって行われ、これは、触媒担体を溶液と接触させることからなり、当該溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体および少なくとも1種の銅前駆体を含んでおり、好ましくは、これらからなり、その溶液の容積は、含浸させられるべき担体の細孔容積の0.25~1.5倍である。
【0044】
ニッケル前駆体が水溶液中に導入される場合、ニッケル前駆体は、有利には、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩またはギ酸塩の形態、ポリ酸または酸-アルコールおよびその塩によって形成される錯体の形態、アセチルアセトナートにより形成される錯体の形態、テトラミンまたはヘキサミンの錯体の形態、あるいは、水溶液に可溶な任意の他の無機誘導体の形態で用いられ、前記担体と接触して置かれる。好ましくは、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケルまたはヒドロキシ炭酸ニッケルが、ニッケル前駆体として有利に用いられる。大いに好ましくは、ニッケル前駆体は、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルである。
【0045】
銅前駆体が水溶液に導入される場合、無機または有機の形態にある銅前駆体が有利に用いられる。無機の形態において、銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれ得る。大いに好ましくは、銅前駆体塩は、硝酸銅である。
【0046】
本発明によると、ニッケル前駆体は、工程a)において所望の濃度で供給されて、最終触媒(すなわち、還元工程h)または不動態化工程が行われるならば不動態化工程i)の終わりに得られる触媒)上で、最終触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5重量%~15重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より優先的には1重量%~8重量%、一層より優先的には1重量%~5重量%の含有率が得られる。
【0047】
工程a)により溶液に導入される銅前駆体(1種または複数種)の量は、全銅含有率が最終触媒(すなわち、還元工程h)または不動態化工程が行われるならば不動態化工程i)の終わりに得られた触媒)の全重量に相対する銅元素の重量で0.5重量%~15重量%、好ましくは0.5重量%~12重量%、好ましくは0.75重量%~10重量%、一層より優先的には1重量%~9重量%になるように選ばれる。
【0048】
(工程b):含浸済み担体を乾燥させる)
含浸済み担体を乾燥させる工程b)は、250℃未満、好ましくは15~180℃、より優先的には30~160℃、一層より優先的には50~150℃、一層より優先的には70~140℃の温度で、典型的には10分~24時間の期間にわたって行われる。より長い時間期間は除外されないが、必ずしも何等かの改善を与えるものではない。
【0049】
乾燥工程は、当業者に知られているあらゆる技術によって行われ得る。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素の混合物下に行われる。それは、有利には、大気圧または減圧で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で空気または窒素の存在中で行われる。
【0050】
(工程c):乾燥済み触媒の熱処理(場合による工程))
工程b)の終わりに得られた触媒前駆体は、還元工程d)の前に、250~1000℃、好ましくは250~750℃の温度で、典型的には15分~10時間の期間にわたって、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては水の存在中で追加の熱処理工程を経ることができる。より長い処理時間は除外されないが、必ずしも改善を与えるものではない。
【0051】
用語「熱処理(heat treatment)」は、水が存在しないまたは存在する中での温度処理を意味することが意図される。後者の場合、水蒸気との接触は、大気圧でまたは自己生成圧力下に行われ得る。水が存在しないまたは存在する複数回の複合サイクルが行われ得る。
【0052】
水が存在している場合、水含有率は、好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり150~900グラム、一層より好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり250~650グラムである。
【0053】
それ故に、乾燥工程b)の後、または、場合による熱処理工程c)の後に、触媒前駆体は、ニッケルを酸化物の形態で、すなわち、NiOの形態で、および銅を酸化物の形態で、すなわち、CuOの形態で含む。
【0054】
(工程d):還元ガスによる還元)
本発明によると、工程b)の終わりに得られた乾燥済み触媒または工程c)の終わりに得られた触媒の還元処理の工程d)は、還元ガスの存在中で行われて、触媒担体上でニッケル-銅アロイが少なくとも部分的に金属の形態で形成される。還元ガスは好ましくは水素である。水素は、高純度でまたは混合物(例えば、水素/窒素、水素/アルゴンまたは水素/メタンの混合物)として用いられ得る。水素が混合物として用いられる場合、全ての割合が想定され得る。
【0055】
本発明による調製方法の1種の本質的な局面によると、前記還元処理が行われる際の温度は、150℃~250℃、好ましくは160~230℃、より優先的には170~220℃である。還元処理の継続期間は、5分以上かつ5時間未満、好ましくは10分~4時間、一層より優先的には10分~110分である。
【0056】
還元ガスによる還元の工程d)により、ニッケル-銅アロイを少なくとも部分的に金属性の形態で形成することが可能となることが本出願人によって観察された。ニッケル-銅アロイは、式NixCuyを満たし、式中xは0.1~0.9であり、yは、0.1~0.9である。
【0057】
所望の還元温度までの温度上昇は、一般的に遅く、例えば、0.1~10℃/分、好ましくは0.3~7℃/分に設定される。
【0058】
水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラム、好ましくは0.05~10L/時間/触媒前駆体のグラム、よりさらに好ましくは0.1~5L/時間/触媒前駆体のグラムである。
【0059】
(不動態化(場合による工程))
還元工程d)の終わりに得られた触媒前駆体は、有利には、前記触媒前駆体を、少なくとも1種のニッケル前駆体を含んでおり、好ましくはこれらからなる溶液と接触させる工程(工程e))を行う前に、不動態化され得る。
【0060】
実施の時、工程d)の終わりに得られた触媒前駆体の不動態化の工程は、触媒の選択性を改善することおよび新触媒の起動の間の熱暴走を回避することを可能にする硫黄含有化合物により行われる。不動態化は、一般的に、硫黄含有化合物によって、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒することからなり、それ故に、それの選択性に利益となるように触媒の活性を弱めることからなる。不動態化工程は、当業者に知られている方法の使用によって行われる。
【0061】
硫黄含有化合物による不動態化工程は、一般的に、20~350℃、好ましくは40~200℃の温度で、10~240分にわたって行われる。硫黄含有化合物は、例えば、以下の化合物から選ばれる:チオフェン、チオファン、アルキルモノスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィドおよびプロピルメチルスルフィド、あるいは式HO-R1-S-S-R2-OHの有機ジスルフィド、例えば、式HO-C2H4-S-S-C2H4-OHのジチオジエタノール(DEODSと参照されることがある)。硫黄含有率は、一般的に、触媒の全重量に相対する前記元素の重量で0.1%~2%である。
【0062】
(工程e):触媒前駆体を、ニッケル前駆体を含む溶液と接触させる)
ニッケルの沈着は、工程e)の実施により、乾式含浸または過剰含浸によって、あるいは、沈着-沈殿によって、当業者に周知な方法により行われ得る。
【0063】
前記工程e)は、優先的には、工程d)の終わりに(または場合による不動態化工程の後に)得られた触媒前駆体を含浸させることによって行われ、例えば、触媒前駆体を少なくとも1種の溶液と接触させることからなり、この溶液は、水性または有機性(例えば、メタノールまたはエタノールまたはフェノールまたはアセトンまたはトルエンまたはジメチルスルホキシド(DMSO))であるか、あるいは、水と少なくとも1種の有機溶媒の混合物からなり、少なくとも1種のニッケル前駆体を少なくとも部分的に溶解した状態で含んでおり、好ましくは、これらからなり、あるいは、触媒前駆体を、少なくとも1種のコロイド溶液と接触させることからなり、このコロイド溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体を、酸化された形態(ニッケルの酸化物、オキシ(水酸化物)または水酸化物のナノ粒子)または還元された形態(還元された状態にあるニッケルの金属性ナノ粒子)で含んでおり、好ましくは、これらからなる。好ましくは、溶液は水性である。この溶液のpHは、場合による酸または塩基の添加によって改変されることができるだろう。
【0064】
好ましくは、前記工程e)は、乾式含浸によって行われ、これは、触媒前駆体を少なくとも1種の溶液と接触させることからなり、この溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体を含有しており、好ましくはこれらからなり、その溶液の容積は、含浸させられるべき触媒前駆体の担体の細孔容積の0.25~1.5倍である。
【0065】
ニッケル前駆体が水溶液に導入される場合、硝酸塩、炭酸塩、塩化物、硫酸塩、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩またはシュウ酸塩の形態、アセチルアセトナートにより形成された錯体の形態、あるいは、テトラミンまたはヘキサミンの錯体の形態、または水溶液に可溶である任意の他の無機誘導体の形態のニッケル前駆体の使用が有利になされ、前記触媒前駆体と接触させられる。ニッケル前駆体として、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、水酸化ニッケルまたはヒドロキシ炭酸ニッケルの使用が有利になされる。大いに好ましくは、ニッケル前駆体は硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルである。
【0066】
ニッケル前駆体は、工程e)において所望の濃度で供給されて、最終触媒(すなわち、還元工程h)またはもし不動態化工程が行われるならば不動態化工程i)の終わりに得られた触媒)上で、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5%~34.5%の含有率が得られる。
【0067】
(工程f)含浸済み担体を乾燥させる)
含浸済み担体を乾燥させる工程f)は、250℃未満、好ましくは15~180℃、より優先的には30~160℃、一層より優先的には50~150℃、一層より優先的には70~140℃の温度で、典型的には10分~24時間の期間にわたって行われる。より長い時間の期間は除外されないが、必ずしも何等かの改善を与えるものではない。
【0068】
乾燥工程は、当業者に知られている任意の技術によって行われ得る。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素の混合物下に行われる。それは、有利には、大気圧でまたは減圧で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で空気または窒素の存在中で行われる。
【0069】
(g)乾燥済み触媒の熱処理(場合による工程))
乾燥済み触媒前駆体は、還元工程h)の前に、250~1000℃、好ましくは250~750℃の温度で、典型的には15分~10時間の期間にわたって、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては水の存在中で追加の熱処理工程を経ることができる。より長い処理時間は除外されないが、必ずしも改善を与えるものではない。
【0070】
用語「熱処理(heat treatment)」は、水が存在しない中または存在する中の温度処理を意味することが意図される。後者の場合、水蒸気との接触は、大気圧でまたは自己生成圧力下に行われ得る。水が存在しない中または存在する中での複数回の複合サイクルが行われ得る。これまたはこれらの処理の後、触媒前駆体は、ニッケルを酸化物の形態で、すなわち、NiOの形態で含む。
【0071】
水が存在する場合、水の含有率は、好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり150~900グラム、一層より好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり250~650グラムである。
【0072】
(工程h)還元ガスによる還元)
接触反応器における触媒の使用および水素化方法の実施より先に、還元処理工程h)が還元ガスの存在中で行われ、ニッケルを少なくとも部分的に金属性の形態で含んでいる触媒が得られる。この工程は、有利には、現場内で、すなわち、ポリ不飽和化合物の選択的水素化のための反応器への触媒の装填の後に行われる。この処理により、前記触媒を活性にすることおよび金属粒子、特に、ゼロ価の状態のニッケルの金属粒子を形成することが可能となる。触媒還元処理の現場内実施により、酸素所持化合物またはCO2による触媒の不動態化の追加の工程をなしで済ますことが可能となり、これは、必然的に、現場外で、すなわち、選択的水素化のために用いられる反応器の外側で還元処理を行うことによって触媒が調製される時の場合である。実際に、還元処理が現場外で行われる場合、空気の存在中で(水素化反応器への触媒の輸送および装填の操作の間に)触媒の金属相を保持するために不動態化工程を行うこと、次いで、触媒を還元する新工程を行うことが必要である。
【0073】
還元ガスは、好ましくは水素である。水素は、高純度でまたは混合物(例えば、水素/窒素、水素/アルゴンまたは水素/メタンの混合物)として用いられ得る。水素が混合物として用いられる場合、全ての割合が想定され得る。
【0074】
本発明による調製方法の1種の本質的な局面によると、前記還元処理が行われる際の温度は、150℃~250℃、好ましくは160~230℃、より優先的には170~220℃である。還元処理の継続期間は、5分以上かつ5時間未満、好ましくは10分~4時間、一層より優先的には10分~110分である。
【0075】
少なくとも部分的に還元された形態にあるニッケル-銅アロイの存在により、従来技術におけるのより低い過酷度のニッケル活性相を還元するための操作条件を用いることが可能となり、それ故に、ポリ不飽和フラクションの選択的水素化を行うことが望まれる反応器内で直接的に還元工程を行うことが可能となる。
【0076】
さらに、触媒中の銅の存在により、硫黄を含んでいる炭化水素供給原料、とりわけ、水蒸気分解および/または接触分解C3炭化水素フラクションと接触して触媒が置かれた場合に触媒の良好な活性および触媒の良好な耐用期間を保持することが可能となる。実際に、ニッケルと比べて、触媒中に存在する銅は、供給原料中に含まれる硫黄含有化合物をより容易に捕捉し、それにより、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒することが回避される。
【0077】
所望の還元温度までの温度上昇は一般的に遅く、例えば、0.1~10℃/分、好ましくは0.3~7℃/分に設定される。
【0078】
水素流量は、L/時間/触媒前駆体のグラムで表されて、0.01~100L/時間/触媒前駆体のグラム、好ましくは0.05~10L/時間/触媒前駆体のグラム、よりさらに好ましくは0.1~5L/時間/触媒前駆体のグラムである。
【0079】
(工程i):不動態化(場合による))
本発明による方法により調製された触媒は、有利には、触媒の選択性を改善することおよび新触媒の起動の間の熱暴走を回避することを可能にする硫黄含有化合物による不動態化工程を経ることができる。不動態化は、一般的に、硫黄含有化合物によって、新触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒すること、それ故に、それの選択性の利益となる触媒の活性を弱めることからなる。不動態化工程は、当業者に知られている方法を用いて行われる。
【0080】
硫黄含有化合物による不動態化工程は、一般的に、20~350℃、好ましくは40~200℃の温度で、10~240分にわたって行われる。硫黄含有化合物は、例えば、以下の化合物から選ばれる:チオフェン、チオファン、アルキルモノスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィドおよびプロピルメチルスルフィド、あるいは、式HO-R1-S-S-R2-OHの有機ジスルフィド、例えば、式HO-C2H4-S-S-C2H4-OHのジチオジエタノール(DEODSとも称される)。硫黄含有率は、一般的に、触媒の全重量に相対する前記元素の重量で0.1%~2%である。
【0081】
(触媒)
本発明による調製方法によって得られ得る触媒は、ニッケルおよび銅を含んでいる活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる耐火性酸化物の形態にある担体とを含み、活性相のニッケルおよび銅の一部は、ニッケル-銅アロイの形態にあり、有利には、式NixCuyに対応しており、xは0.1~0.9であり、yは0.1~0.9である。
【0082】
銅の含有率は、触媒の全重量に相対する銅元素の重量で0.5~15重量%、好ましくは0.5~12重量%、好ましくは0.75~10重量%、一層より優先的には1~9重量%である。
【0083】
触媒中の全ニッケル含有率は、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で1重量%~35重量%、好ましくは2重量%~30重量%、好ましくは3重量%~27重量%、一層より優先的には4重量%~18重量%である。
【0084】
本発明による調製方法によって形成された銅-ニッケルアロイ中に含まれるニッケル含有率は、触媒の全重量に相対するニッケル元素の重量で0.5重量%~15重量%、好ましくは1重量%~12重量%、より優先的には1重量%~10重量%である。
【0085】
細孔性担体は、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナからなる群から選ばれる。一層より好ましくは、担体はアルミナである。アルミナは、全ての考えられる結晶学的形態:アルファ、デルタ、シータ、カイ、ロー、エータ、カッパ、ガンマ等で存在してよく、これらは単独でまたは混合物として利用される。好ましくは、担体は、アルファ、デルタ、シータおよびガンマのアルミナから選ばれる。
【0086】
細孔性担体の比表面積は、一般に、5m2/g超、好ましくは30~400m2/g、好ましくは50~350m2/gである。
【0087】
担体の全細孔容積は、一般的に0.1~1.5cm3/g、好ましくは0.35~1.2cm3/g、一層より好ましくは0.4~1.0cm3/g、一層より好ましくは0.45~0.9cm3/gである。
【0088】
前記触媒は、一般的に、当業者に知られている全ての形態で、例えば、ビーズ状の形態(一般的に1~8mmの径を有している)、押出物状の形態、ブロック状の形態または中空シリンダ状の形態で提示される。好ましくは、それは、押出物からなり、その径は一般的には0.5~10mm、好ましくは0.8~3.2mm、大いに好ましくは1.0~2.5mmであり、その平均長は0.5~20mmである。押出物の用語「平均径(mean diameter)」は、これらの押出物の断面において外接される円の平均径を意味することが意図される。触媒は、有利には、シリンダ状、多葉状、三葉状または四葉状の押出物の形態で提示され得る。好ましくは、それの形状は、三葉状または四葉状であるだろう。葉の形状は、従来技術から知られている全ての方法に従って調節され得る。
【0089】
触媒の比表面積は、一般的に5m2/g超、好ましくは30~400m2/g、好ましくは50~350m2/gである。
【0090】
触媒の全細孔容積は、一般に0.1~1.5cm3/g、好ましくは0.35~1.2cm3/g、一層より好ましくは0.4~1.0cm3/g、一層より好ましくは0.45~0.9cm3/gである。
【0091】
触媒が有するマクロ細孔容積は、有利には0.6mL/g以下、好ましくは0.5mL/g以下、より好ましくは0.4mL/g以下、一層より好ましくは0.3mL/g以下である。
【0092】
触媒のメソ細孔容積は、一般的に最低0.10mL/g、好ましくは最低0.20mL/g、好ましくは0.25mL/g~0.80mL/g、より好ましくは0.30~0.65mL/gである。
【0093】
中央値メソ細孔径は、3~25nm、好ましくは6~20nm、特に好ましくは8~18nmであり得る。
【0094】
触媒が呈する中央値マクロ細孔径は、有利には50~1500nm、好ましくは80~1000nm、よりさらに好ましくは250~800nmである。
【0095】
好ましくは、触媒は低いミクロ多孔性を呈する:大いに好ましくは、それは、一切のミクロ多孔性を呈しない。
【0096】
(選択的水素化方法)
本発明の別の主題は、300℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に存在している、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有しているポリ不飽和化合物、例えば、ジオレフィンおよび/またはアセチレン化合物および/またはスチレン性化合物としても知られているアルケニル芳香族化合物の選択的水素化のための方法であって、前記方法は、本説明中の上記に記載された調製方法によって得られた触媒の存在中で行われ、その際の温度は0~300℃であり、その際の圧力は0.1~10MPaであり、本方法が液相中で行われる場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度は0.1~200h-1であり、または、本方法が気相中で行われる場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は100~40000h-1である、方法にある。
【0097】
モノ不飽和有機化合物、例えば、エチレンおよびプロピレンは、ポリマー、プラスチックおよび付加価値を有する他の化学製品の製造の根源にある。これらの化合物は、天然ガス、ナフサまたはガスオイルであって、水蒸気分解または接触分解の方法によって処理されたものから得られる。これらの方法は、高温で行われ、所望のモノ不飽和化合物に加えて、ポリ不飽和有機化合物、例えば、アセチレン、プロパジエンおよびメチルアセチレン(またはプロピン)、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエン、ビニルアセチレンおよびエチルアセチレン、および他のポリ不飽和化合物であって、その沸点がC5+フラクション(少なくとも5個の炭素原子を有する炭化水素化合物)に対応するもの、特にジオレフィンまたはスチレンまたはインデン化合物を生じさせる。これらのポリ不飽和化合物は、高度に反応性であり、ポリマー化ユニットにおいて副反応をもたらす。それ故に、これらのフラクションの経済的な使用をする前にそれらを取り除くことが必要である。
【0098】
選択的水素化は、これらの炭化水素供給原料から望みでないポリ不飽和化合物を特に取り除くために開発された主要な処理である。それにより、ポリ不飽和化合物を対応するアルケンまたは芳香族化合物に転化しながら、それらの完全な飽和、それ故に対応するアルカンまたはナフテンの形成を回避することが可能となる。水蒸気分解ガソリンが供給原料として用いられる場合、選択的水素化により、アルケニル芳香族化合物を選択的に水素化して、芳香核の水素化を回避しながら芳香族化合物を与えることも可能となる。
【0099】
選択的水素化方法において処理される炭化水素フラクションは、300℃以下の最終沸点を有し、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有しており、少なくとも1種のポリ不飽和化合物を含んでいる。用語「ポリ不飽和化合物(polyunsaturated compounds)」は、少なくとも1個のアセチレン性基および/または少なくとも1個のジエン基および/または少なくとも1個のアルケニル芳香族基を含んでいる化合物を意味することが意図される。
【0100】
より詳細には、供給原料は、水蒸気分解C2フラクション、水蒸気分解C2-C3フラクション、水蒸気分解C3フラクション、水蒸気分解C4フラクション、水蒸気分解C5フラクションおよび熱分解ガソリンとしても知られている水蒸気分解ガソリンまたはC5+フラクションからなる群から選択される。
【0101】
水蒸気分解C2フラクションは、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ、このものは、例えば、以下の組成を呈する:前記フラクションの全重量に相対して40重量%~95重量%のエチレン、および0.1重量%~5重量%程度のアセチレン、残りは、本質的にエタンおよびメタンである。いくつかの水蒸気分解C2フラクションにおいて、0.1重量%~1重量%のC3化合物が存在していてもよい。
【0102】
水蒸気分解C3フラクションは、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ、このものは、例えば、以下の平均組成を呈する:前記フラクションの全重量に相対して90重量%程度のプロピレン、および1重量%~8重量%程度のプロパジエンおよびメチルアセチレン、残部は本質的にプロパンである。いくつかのC3フラクションにおいて、0.1重量%~2重量%のC2化合物およびC4化合物が存在してもよい。
【0103】
C2-C3フラクションも、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ得る。それは、例えば、以下の組成を呈する:前記フラクションの全重量に相対して0.1重量%~5重量%程度のアセチレン、0.1重量%~3重量%程度のプロパジエンおよびメチルアセチレン、30重量%程度のエチレンおよび5重量%程度のプロピレン、残部は本質的にメタン、エタンおよびプロパンである。この供給原料は、0.1重量%~2重量%のC4化合物を含有してもよい。
【0104】
水蒸気分解C4フラクションは、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ、このものは、例えば、以下の平均重量組成を呈する:前記フラクションの全重量に相対して1重量%のブタン、46.5重量%のブテン、51重量%のブタジエン、1.3重量%のビニルアセチレンおよび0.2重量%のブチン。いくつかのC4フラクションにおいて、0.1重量%~2重量%のC3化合物およびC5化合物が存在してもよい。
【0105】
水蒸気分解C5フラクションは、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ、このものは、例えば、以下の組成を呈する:前記フラクションの全重量に相対して21重量%のペンタン、45重量%のペンテン、34重量%のペンタジエン。
【0106】
水蒸気分解ガソリンまたは熱分解ガソリンは、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ、このものは、炭化水素フラクションに対応し、その沸点は、一般的に0~300℃、好ましくは10~250℃である。前記水蒸気分解ガソリン中に存在する水素化処理されるべきポリ不飽和炭化水素は、特にジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等)、スチレン化合物(スチレン、α-メチルスチレン等)およびインデン化合物(インデン等)である。水蒸気分解ガソリンは、一般的に、C5-C12フラクションを含み、C3、C4、C13、C14およびC15の痕跡を伴う(例えば、これらのフラクションのそれぞれについて0.1重量%~3重量%)。例えば、熱分解ガソリンからなる供給原料は、一般的に、以下のような組成を有している:5重量%~30重量%の飽和化合物(パラフィンおよびナフテン)、40重量%~80重量%の芳香族化合物、5重量%~20重量%のモノオレフィン、5重量%~40重量%のジオレフィンおよび1重量%~20重量%のアルケニル芳香族化合物、複合化合物は100%を形成する。それは、0~1000重量ppmの硫黄も含有し、好ましくは0~500重量ppmの硫黄を含有する。
【0107】
好ましくは、本発明による選択的水素化方法により処理されるポリ不飽和炭化水素供給原料は、水蒸気分解C2フラクションまたは水蒸気分解C2-C3フラクションまたは水蒸気分解ガソリンである。
【0108】
本発明による選択的水素化方法は、モノ不飽和炭化水素を水素化することなく水素化されるべき前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を取り除くことに目標が置かれる。例えば、前記供給原料がC2フラクションである場合、選択的水素化方法は、アセチレンを選択的に水素化することに目標が置かれる。前記供給原料がC3フラクションである場合、選択的水素化方法は、プロパジエンおよびメチルアセチレンを選択的に水素化することに目標を置かれる。C4フラクションの場合、目標は、ブタジエン、ビニルアセチレン(vinylacetylene:VAC)およびブチンを取り除くことにある;C5フラクションの場合、目標は、ペンタジエンを取り除くことにある。前記供給原料が水蒸気分解ガソリンである場合、選択的水素化方法は、処理されるべき前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を選択的に水素化して、ジオレフィン化合物が部分的に水素化されてモノオレフィンを与えるようにかつスチレンおよびインデン化合物が部分的に水素化されて対応する芳香族化合物を与えながら芳香核の水素化を回避することに目標を置かれる。
【0109】
選択的水素化方法の技術的実施は、例えば、上昇または下降の流れとして、ポリ不飽和炭化水素供給原料および水素を、少なくとも1基の固定床反応器に注入することによって行われる。前記反応器は、等温タイプのものまたは断熱タイプのものであってよい。断熱反応器が好適である。ポリ不飽和炭化水素供給原料は、有利には、選択的水素化反応が行われる前記反応器に由来する流出物を、反応器中の温度勾配を制限するために、反応器の入口と出口との間に位置する、反応器の種々のポイントにおいて1回または複数回再注入することによって希釈され得る。本発明による選択的水素化方法の技術的実施は、有利には、反応性蒸留塔または反応器-交換器またはスラリータイプの反応器における少なくとも前記担持型触媒の移植によって行われ得る。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時にかつ/または反応器中の1または複数の異なるポイントに導入されてよい。
【0110】
水蒸気分解C2、C2-C3、C3、C4、C5およびC5+フラクションの選択的水素化は、気相中または液相中、C3、C4、C5およびC5+フラクションについては好ましくは液相中で、C2およびC2-C3フラクションについては気相中で行われ得る。液相反応により、エネルギーコストを低下させることおよび触媒のサイクル期間を増加させることが可能となる。
【0111】
一般的に、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含んでいるポリ不飽和化合物を含有しており、かつ300℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料の選択的水素化が行われる際の温度は0~300℃であり、その際の圧力は0.1~10MPaであり、液相中で行われる方法についてその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.1~10であり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)(供給原料の容積流量対触媒の容積の比として定義される)は0.1~200h-1であり、または、気相中で行われる方法についてその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.5~1000であり、その際の毎時空間速度(HSV)は100~40000h-1である。
【0112】
本発明による1種の実施形態において、選択的水素化方法が行われ、供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンである場合、(水素)/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、一般的に0.5~10、好ましくは0.7~5.0、よりさらに好ましくは1.0~2.0であり、温度は0~200℃、好ましくは20~200℃、よりさらに好ましくは30~180℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に0.5~100h-1、好ましくは1~50h-1であり、圧力は、一般的に0.3~8.0MPa、好ましくは1.0~7.0MPa、よりさらに好ましくは1.5~4.0MPaである。
【0113】
より好ましくは、選択的水素化方法が行われ、供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンである場合、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.7~5.0であり、温度は、20~200℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に1~50h-1であり、圧力は、1.0~7.0MPaである。
【0114】
よりさらに好ましくは、選択的水素化方法が行われ、供給原料が、ポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンである場合、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、1.0~2.0であり、温度は、30~180℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的には1~50h-1であり、圧力は、1.5~4.0MPaである。
【0115】
水素流量は、ポリ不飽和化合物の全てを理論的に水素化しかつ反応器の出口において水素の過剰を維持するためにその十分な量を利用可能にするように調節される。
【0116】
本発明による別の実施形態において、選択的水素化方法が行われ、供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解C2フラクションおよび/または水蒸気分解C2-C3フラクションである場合、(水素)/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、一般的に0.5~1000、好ましくは0.7~800であり、温度は、0~300℃、好ましくは15~280℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的に100~40000h-1、好ましくは500~30000h-1であり、圧力は、一般的に0.1~6.0MPa、好ましくは0.2~5.0MPaである。
【0117】
本発明は、今、以下の実施例によって例証されることになるが、これらは、決して限定するものではない。
【0118】
(実施例)
下記の実施例において言及される全ての触媒について、担体は、アルミナAであり、これが有している比表面積は、80m2/gであり、細孔容積は、0.7mL/g(cm3/g)であり、中央値メソ細孔径は、12nmである。
【0119】
(実施例1:Ni前駆体の水溶液の調製)
触媒A~Eの調製のために用いられるNi前駆体の水溶液(溶液S)の調製を、硝酸ニッケル(NiNO3(供給業者Strem Chemicals(登録商標)))43.5gを13mLの容積の蒸留水中に溶解させることによって行う。Ni濃度が溶液の容積(リットル)当たりNi350gである溶液Sを得る。
【0120】
(実施例2:触媒A-15重量%のNi(比較例))
実施例1において調製された溶液Sを、乾燥条件下にアルミナA10g上に含浸させる。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。このように調製された焼成済み触媒は、アルミナ担持型触媒の全重量に相対して15重量%のニッケル元素を含有している。
【0121】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0122】
(実施例3:触媒B-Ni/Cu比=3により共含浸させられた15重量%のNi+Cu(比較例))
硝酸銅溶液を調製し、最終触媒上にNi/Cu比=3を最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。このようにして得られた固体を、次いで、オーブン中、120℃で終夜乾燥させる。このようにして得られた固体を、次いで、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0123】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0124】
(実施例4:触媒C-Ni+Cuの含浸(5重量%のNiおよびNi/Cuのモル比=3)と、その後の15重量%のNiの含浸(本発明に合致する))
硝酸銅溶液を調製し、中間触媒上にNi/Cu比=3を最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。Ni含有率は最終触媒の重量に相対して5重量%である。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。これを、次いで、水素圧力下に190℃で4時間にわたって還元し、その後空気に戻す。触媒前駆体C1を得る。
【0125】
溶液Sを、次いで、触媒前駆体C1上に乾式含浸させて、最終触媒の全重量に相対して、15重量%のNiのみを得るようにする(これは、アロイに貢献していない)。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0126】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0127】
(実施例5:触媒D-Ni+Cuの含浸(2重量%のNiおよびNi/Cuのモル比=3)とその後の15重量%のNiの含浸(本発明に合致する))
硝酸銅溶液を調製し、中間触媒上にNi/Cu比=3を最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。Ni含有率は、最終触媒の重量に相対して2重量%である。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。これを、次いで、水素流下に190℃で4時間にわたって還元し、その後空気に戻す。触媒前駆体D1を得る。
【0128】
溶液Sを、次いで、触媒前駆体D1上に乾式含浸させ、最終触媒の全重量に相対して15重量%のNiのみ得るようにする(これは、アロイに貢献していない)。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0129】
触媒前駆体を、次いで、下記の実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0130】
(実施例6:触媒E-Ni+Cuの含浸(5重量%のNiおよびNi/Cuのモル比=2)とその後の15重量%のNiの含浸(本発明に合致する))
硝酸銅溶液を調製し、中間触媒上にNi/Cu比=2を最終的に得るようにし、実施例1において調製された溶液SをアルミナA10g上に乾式共含浸させる。Ni含有率は、最終触媒の重量に相対して5重量%である。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。これを、次いで、水素流下に190℃で4時間にわたって還元し、次いで、空気に戻す。触媒前駆体E1を得る。
【0131】
溶液Sを、次いで、触媒前駆体E1上に乾式含浸させ、最終触媒の全重量に相対して15重量%のNiのみを得るようにする(これは、アロイに貢献していない)。このようにして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0132】
触媒前駆体を、次いで、下記実施例8に記載されるような条件下に還元する。
【0133】
(実施例7:特徴付け)
全ての触媒は、含浸の間に目標とされた含有率、すなわち、触媒の全重量に相対して15%のニッケル元素(蛍光X線によって特徴付けられる)および%の加えられた銅(蛍光X線によって特徴付けられる)を含有する。
【0134】
焼成、次の還元の工程の後に得られたアロイの量を、X線回折(X-ray diffraction:XRD)分析によって粉体の形態にある触媒のサンプル上で決定した。
【0135】
還元工程の後に得られた金属形態にあるニッケルの量を、X線回折(XRD)分析によって粉体の形態にある触媒のサンプル上で決定した。還元工程の間、XRDによる特徴付けの継続期間中を通して、触媒は、決して野外に戻されない。回折パターンは、従来の粉体法を用いた回折計による放射線結晶写真分析によって銅のKα1放射線(λ=1.5406Å)により得られる。
【0136】
還元度の計算を、分析される触媒の各サンプルのディフラクトグラムの全部上で、52°2θの周囲に位置するNi0の線の面積を計算し、次いで、周囲温度に達してできるだけすぐに52°における線下にアルミナに起因する存在するシグナルを減算することによって行った。
【0137】
下記の表1は、190℃での90分にわたる水素流下の還元工程の後にXRDによって特徴付けられた全ての触媒A~Eについての還元度のほかニッケル金属Ni°の含有率(Niの全重量に相対する重量%として表される)を照合する。これらの値を、従来の還元工程(すなわち、400℃の温度での15時間にわたる水素流下での工程)の後の触媒A(Niのみ)について得られた還元度とも比較した。
【0138】
デルタおよびシータの形態にあるアルミナおよび大きいCuOおよびNiOの線を周囲温度で全ての銅-およびニッケル-含有触媒上に焼成の後に検出する。
【0139】
Ni0.76Cu0.24の形態にあるアロイに対応する線を還元の後にさらに検出する。
【0140】
還元性の度合いおよびしたがってNi0の形成を評価するために、52°2θの周囲に位置するNi0の線の面積を、全てのディフラクトグラム上で、52°における線下のアルミナに起因する周囲温度から存在するシグナルを減算することによって測定する。それ故に、還元の後に結晶化したNi0の相対的な割合(%)を決定することは可能である。
【0141】
下記の表1は、190℃での90分にわたる水素流下の還元の後にXRDによって特徴付けられた全ての触媒についての還元性の度合いまたはNi°含有率を要約する。これらの値も、従来の還元工程(すなわち、400℃の温度での15時間にわたる水素流下の工程)の後の触媒A(Niのみ)について得られた還元度と比較した。
【0142】
【0143】
触媒A(15%のNiのみ/アルミナ)について、ニッケルの還元性の度合いは、触媒B~Eについてと正確に同じ水素化下の還元処理の後に0%である。
【0144】
ニッケル(5重量%のNi)および銅のNi/Cu比2による前含浸により、終わりにおいて触媒上で70%程度の還元型Ni°を得ることが可能となる。アロイを作り上げるニッケルの含有率が2重量%であるより少ないNiCuアロイおよび銅のNi/Cu比3での前含浸により、終わりにおいて触媒上に90%程度の還元型Ni°を得ることが可能となる。ニッケル(5重量%のNi)および銅のNi/Cu比3での前含浸により、終わりにおいて触媒上に170℃から100%の還元型Ni°を得ることが可能となる。
【0145】
(実施例8:触媒試験:スチレンおよびイソプレンを含有している混合物の選択的水素化における性能レベル(AHYD1))
上記実施例に記載された触媒A~Eの試験を、スチレンおよびイソプレンを含有している混合物の選択的水素化の反応に関して行う。
【0146】
選択的に水素化されるべき供給原料の組成は、以下の通りである:8重量%のスチレン(供給元Sigma Aldrich(登録商標)、純度99%)、8重量%のイソプレン(供給元Sigma Aldrich(登録商標)、純度99%)および84重量%のn-ヘプタン(溶媒)(供給元VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm(登録商標) HPLC)。この組成は、反応混合物の当初組成に対応する。モデル分子のこの混合物は、熱分解ガソリンの典型である。
【0147】
500mLのステンレス鋼オートクレーブにおいて選択的水素化反応を行う。このオートクレーブは、磁気駆動機械撹拌機を備えており、100bar(10MPa)の最大圧力下に、5℃~200℃の温度で操作することができる。
【0148】
n-ヘプタン(供給元VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm(登録商標)HPLC)214mLおよび3mLの量の触媒をオートクレーブに加える。オートクレーブを閉じてパージする。オートクレーブを、次いで、水素35bar(3.5MPa)下に加圧する。触媒を、最初に、触媒A~Eについて190℃で90分にわたって水素圧力下に(温度上昇勾配1℃/分)現場内還元する(これは、ここでは、1種の実施形態による本発明による調製方法の工程h)に対応する)。オートクレーブを、次いで、30℃に等しい試験温度とする。時間t=0において、スチレン、イソプレン、n-ヘプタン、ペンタンチオールおよびチオフェンを含有している混合物約30gをオートクレーブに導入する。反応混合物は、その時、上記の組成を有し、1600rev/分で撹拌を開始する。反応器の上流に位置する格納シリンダを用いてオートクレーブにおいて圧力を35bar(3.5MPa)で一定に維持する。
【0149】
触媒Aについて別の試験を行ったが、触媒還元温度は400℃であり、15時間にわたるものであった。
【0150】
定時間隔で反応媒体からサンプルを取ることによって反応の進行をモニタリングした:スチレンを水素化してエチルベンゼンを得たが、芳香環の水素化はなく、イソプレンを水素化してメチルブテンを得た。反応が必要なより長く延長されるならば、メチルブテンは、それらの順番に、水素化されて、イソペンタンを与える。反応器の上流に位置する格納シリンダにおける圧力減少により水素消費も経時でモニタリングする。分当たりかつNiの重量(グラム)当たりの消費されたH2のモルで触媒活性を表す。
【0151】
触媒A~Eについて測定された触媒活性を下記表2に報告する。それらは、従来の還元条件下に(400℃の温度で15時間にわたって水素流下に)調製された触媒Aについて測定された触媒活性(AHYD1)に関する。
【0152】
【0153】
これが明らかに示しているのは、完全に不活性である、190℃で90分にわたって還元されたアルミナ上Niのみの触媒(触媒A)と比べて、本発明に合致する触媒C、DおよびEの改善された性能である。さらに、NiCuアロイのみ(触媒B)は、基準よりはるかに遅れた活性(30%程度)を有していることが留意されるべきである。