(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】高周波アブレーション装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2021541519
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2020014804
(87)【国際公開番号】W WO2020154509
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516209360
【氏名又は名称】アトリキュア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】バラチャンドラン,ラム
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0235381(US,A1)
【文献】特表2004-500917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0230799(US,A1)
【文献】特表2010-526598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00
A61B 18/12 - A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー供給源から組織の領域にエネルギーを印加するとともに真空源から吸引するように構成された医療装置であって、
作業端を有するカテーテルアセンブリと、
前記作業端に設けられ、上面および底面を有するフード部材であって、同フード部材の内部の凹部を露出させる開放面を前記底面に有し、前記開放面は、前記フード部材の長手方向軸線に沿って長手方向に延びる第1の縁および第2の縁を有する周囲を有し、前記開放面は、前記組織の前記領域上に配置されたときに前記周囲の少なくとも一部が前記組織の前記領域に接触する、フード部材と、
前記第1の縁および前記第2の縁に沿って対応して配置された第1の電極および第2の電極であって、前記第1の電極および前記第2の電極は、前記エネルギー供給源から前記組織の前記領域にエネルギーを供給するように構成されて
おり、前記第1の電極は、当該第1の電極を通して延びる第1の電極ルーメンを有し、前記第2の電極は、当該第2の電極を通して延びる第2の電極ルーメンを有する、第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極ルーメンおよび前記第2の電極ルーメンを通して導入される冷却流体と、
前記フード部材の前記内部で長手方向に延びる複数の壁部であって、前記複数の壁部は、前記フード部材の前記内部に1つまたは複数の灌流チャネルおよび1つまたは複数の真空チャネルを形成する、複数の壁部と、
を備え、
前記1つまたは複数の灌流チャネルが、前記フード部材内に配置される灌流ルーメンと流体連通しており、
前記1つまたは複数の真空チャネルが、前記フード
部材内に配置される真空ルーメンと流体連通しており、
前記1つまたは複数の灌流チャネルおよび前記1つまたは複数の真空チャネルは、前記複数の壁部によって分離されており、
前記医療装置は、前記開放面が前記組織の前記領域上に配置されたときに、前記真空源からの真空の適用により、前記1つまたは複数の真空チャネル内に真空が生成され、前記組織の前記領域の表面を前記開放面内および前記複数の壁部に対する前記凹部内に引き込むように構成されている、医療装置。
【請求項2】
灌流流体は、前記組織の前記領域の前記表面が前記凹部内にあるときに、前記真空の適用を継続することで、前記灌流流体を前記1つまたは複数の灌流チャネル内で流動させ、これにより前記灌流流体が前記組織の前記領域の前記表面を冷却するように、少なくとも1つまたは複数の真空チャネルと流体的に結合される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記第1の電極ルーメンおよび前記第2の電極ルーメンは、前記1つまたは複数の灌流チャネルから流体的に隔離されている、請求項
1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記カテーテルアセンブリに流体的に結合されるポンプをさらに備え、前記ポンプの駆動により、前記第1の電極ルーメンおよび前記第2の電極ルーメンのうちの少なくともいずれか一方を介して
前記冷却流体が駆動される、請求項
3に記載に医療装置。
【請求項5】
前記第1の電極ルーメンおよび前記第2の電極ルーメンは、前記1つまたは複数の真空チャネルに流体的に結合され、これにより、前記真空を適用すると、前記灌流流体が前記第1の電極ルーメンおよび前記第2の電極ルーメンを通って前記灌流ルーメンに流れる、請求項
2に記載の医療装置。
【請求項6】
少なくとも1つの流体的に隔離された真空チャネルをさらに備え、前記真空を適用すると、前記組織が前記少なくとも1つの流体的に隔離された真空チャネルに引き寄せられ、そこから灌流流体が引き出されないようになっている、請求項
4に記載の医療装置。
【請求項7】
前記複数の壁部は、前記フード部材の前記内部に凹部を形成するように、前記フード部材の内部に凹んでいる、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記第1の縁および前記第2の縁に隣接して配置された前記複数の壁部の高さが、前記長手方向軸線に隣接して配置された前記複数の壁部の高さよりも大きく、これにより、前記複数の壁部の端部が角度をなすプロファイルを形成している、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記組織の前記領域が前記1つまたは複数の真空チャネルのうちの少なくとも1つに対してシールを形成しているときに、前記1つまたは複数の真空チャネルのうちの少なくとも1つが前記1つまたは複数の灌流チャネルから流体的に隔離される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数の灌流チャネルのうちの少なくとも1つは、前記フード部材の前記内部に開放面を有している、請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数の灌流チャネルのうちの少なくとも1つは、前記フード部材の前記内部に封入されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記フード部材の遠位端に設けられた透明カバー内
に配置された可視化要素および照明要素をさらに備えている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項13】
前記フード部材に結合されたナビゲーション要素をさらに備えている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項14】
前記第1の電極および前記第2の電極は、一連のセグメント化された電極で構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
組織を治療的に処置するための装置、システム、および方法は、低侵襲手術または開腹手術に適している。より詳細には、ここに記載されている方法および装置は、フード部材に隣接しているか、またはフード部材の中にある電極を通してエネルギーが供給されるときに、真空を適用して組織の部位を冷却するために、その中に配置された複数のチャネルを有するフード部材を有する治療装置により、組織の部位にアクセスし、かつ/または処置することができる。
【背景技術】
【0002】
心房細動(AFibまたはAFとも呼ばれる)は、血栓、脳卒中、心不全、およびその他の心臓関連の合併症を引き起こす可能性のある不規則な心拍(不整脈)である。心房細動を処置するための心房組織の外膜高周波アブレーションは、アブレーション装置が心臓の外側に配置され、食道などの組織構造体から離間して心臓組織にエネルギーを向けることができるため、望ましい。アブレーション装置からのエネルギーが対象となる組織に電流を流し、組織をオームにより加熱することで、組織内に処置病変部位が形成される。しかしながら、一方向性心外膜アブレーション装置が克服しなければならない、熱の浸透に対する解剖学的および生理学的な障壁が存在する。心房細動の手術では、心房の組織にアブレーションや凝固のための病変部を形成する必要がある。通常、医師は、心房細動を持続させたり、心房粗動や心房性頻拍などの不整脈を発生させるために心房組織を伝搬する波動や電気信号/インパルスを防ぐために、エネルギー(極低温、高周波、直流、マイクロ波、レーザー、エレクトロポレーション、高周波超音波、その他の熱的手法を含むがこれらに限定されない)を用いて病変部を形成する。
【0003】
従来の装置では、処置装置が心臓の組織を介してエネルギーを供給し、組織に抵抗加熱を生じさせると、組織の心内膜側の心臓内の血流が心内膜面を冷却する。この組織に対する冷却効果は、治療対象となる組織の温度上昇を妨害する。いくつかの場合において、血流によるヒートシンク効果のために、アブレーション部位が組織の厚みを完全に通過することができず、望ましくない部分的な厚みの病変部となることがある。部分的な厚みのある病変部では、組織の厚み全体に病変部が形成されていないため、その部位に電流をさらに流して組織を収縮させ得る。これにより、心筋梗塞の処置の効果が薄れたり、処置ができなくなったりする。「完全な厚み」の病変部を形成することができないということは、未処置の組織の領域が、組織を通して電気的インパルスをなお伝導することができるということであり、この処置は心筋梗塞の治療には効果的ではない。
【0004】
高周波アブレーションでは、アブレーション装置の電極と目的の心臓組織の部位との間に電気的な接触が必要となるため、心臓の運動(すなわち、心臓の拍動)もアブレーション電極と目的の組織との間の安定した接触を妨げ、結果的に処置効果の低下につながる。この接触は、電極と組織とが直接物理的に接触する場合と、電極と組織との間に存在する導電性媒体を介して電気的に接触する場合とがある。
【0005】
加えて、左心房(LA)の後壁の一部は心外膜の脂肪で覆われていることが多く、心筋組織に比べてインピーダンスがより高い傾向にある。また、持続性心房細動および長期持続性心房細動の患者では、LA後壁の大部分がしばしば線維化していることを示唆する証拠もある。線維化した組織は、正常な組織に比べてインピーダンスがより高いと考えられる。心外膜表面に高インピーダンス組織が存在すると、高周波アブレーション装置からの電流が高インピーダンス領域を通過する際に、その組織への浸透性が相当低下し、組織の加熱が困難になる。
【0006】
既存の装置は、ここで述べたような問題に対応していないことが多い。例えば、従来の装置は、心臓の拍動面のために組織との接触が不安定になることが多く、その結果、最適な性能が得られなかった。これに代えて、または組み合わされて、従来の装置の多くは、血流による冷却効果に対応していないため、部分的な厚みのある病変部を生じさせる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書に記載される発明は、現在の一方向性アブレーション装置を改良したものである。しかしながら、ここに記載される態様は、他の装置でも使用可能である。本明細書に記載される改良された方法および装置は、体内の組織部位、特に胸腔内の器官へのアクセスを改善する。本明細書に記載されているこれらの方法および装置の変形例は、心房細動および心室性頻拍のアブレーションを処置する能力を向上させ、選択された組織領域を正確に処置することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されているシステム、装置、および方法の変形例は、心膜内の心臓組織へのアクセスを改善することにより、経皮的内視鏡アブレーション手順を改善する。本明細書に記載されている装置、システム、および方法の追加の変形例は、心臓空間以外の領域で使用することができる。本明細書に記載されている方法、システム、および装置の変形例は、可能な限り、様々な実施形態の要素の組み合わせ、または実施形態自体の組み合わせを含む。
【0009】
本開示は、エネルギー供給源からのエネルギーを組織の領域に適用し、真空源から吸引を行う方法および装置を含む。例えば、医療装置の一変形例は、作業端を有するカテーテルアセンブリと、作業端に設けられ、上面および底面を有するフード部材であって、同フード部材の内部の凹部を露出させる開放面を底面に有し、開放面は、フード部材の長手方向軸線に沿って長手方向に延びる第1の縁および第2の縁を有する周囲を有し、開放面は、組織の領域上に配置されたときに周囲の少なくとも一部が組織の領域に接触する、フード部材と、第1の縁および第2の縁に沿って対応して配置された第1の電極および第2の電極であって、第1の電極および第2の電極は、エネルギー供給源から組織の領域にエネルギーを供給するように構成されている、第1の電極および第2の電極と、フード部材の内部で長手方向に延びる複数の壁部であって、複数の壁部は、フードの内部に1つまたは複数の灌流チャネルおよび1つまたは複数の真空チャネルを形成する、複数の壁部と、を備えることができ、1つまたは複数の灌流チャネルが、フード内に配置される灌流ルーメンと流体連通しており、1つまたは複数の真空チャネルが、フード内に配置される真空ルーメンと流体連通しており、装置は、開放面が組織の領域上に配置されたときに、真空源からの真空の適用により、真空チャネル内に真空が生成され、組織の領域の表面を開放面内および複数の壁部に対する凹部内に引き込むように構成されている。
【0010】
医療装置の1つの変形例では、灌流流体は、組織の領域の表面が凹部内にあるときに、真空の適用を継続することで灌流チャネル内の灌流流体を灌流チャネル内で流動させ、これにより灌流流体が組織の領域の表面を冷却するように、少なくとも1つ以上の真空チャネルと流体的に結合される。
【0011】
本明細書に記載されている装置の1つ以上の電極は、その中を延びる電極ルーメンを含むことができる。これらの電極ルーメンは、灌流ルーメン/灌流源の流体通路内に設けることができる。これに代えて、電極ルーメンを灌流ルーメン/灌流源から流体的に隔離することもできる。追加の変形例では、電極ルーメンが真空チャネルに流体的に結合されている場合、真空を適用すると、灌流流体が第1の電極ルーメンおよび第2の電極ルーメンを通って灌流ルーメンに流れる。
【0012】
この装置の別の変形例は、少なくとも1つの流体的に隔離された真空チャネルを含み、これにより、真空を適用すると、組織が流体的に隔離された真空チャネルに引き寄せられ、そこから灌流流体が引き出されないようになっている。
【0013】
一変形例では、装置はポンプに連結されており、これにより、ポンプの駆動により、第1の電極ルーメンおよび/または第2の電極ルーメンを介して冷却流体が駆動される。
【0014】
フードの変形例は、フード部材の内部に、複数の壁部を凹ませて形成された凹部を含むことができる。壁部の端部は、フードから延びる壁部の高さがフードの中心に向かって低くなるように、弧状または角度をなすプロファイルを形成することができる。例えば、フードの外側縁近傍に配置される壁部は、フードの中心線または軸線に向かうように配置された部分の壁部よりも長くすることができる。この円弧状または角度をなすプロファイルにより、1つまたは複数のチャネルを介して真空を適用する際に、組織のセグメントをフード内に引き込むことが支援される。
【0015】
本装置の変形例は、フード部材の長手部分に沿って開放された(または開放面を有する)チャネルを含む。これに代えて、チャネルをフード部材の全長または一部の長手部分にわたって封入することもできる。例えば、1つまたは複数の流体供給/灌流チャネルは、フード部材の内部に完全に封入されており、これにより、この封入されたチャネルは、フード内の開放領域またはプレナムを使用して別のチャネルと流体的に結合されている。プレナムは、フードの前部または背面に設けることができる。
【0016】
本明細書に記載されている装置は、1つまたは複数の視覚化要素および/または1つまたは複数の照明要素を含むことができる。これらの要素により、ユーザは処置領域を視覚化することができ、かつ/または、装置を所望の箇所にナビゲートすることができる。さらに、照明要素は、装置の追跡/配置を可能にする可視光または他の電磁エネルギーを提供することができる。本装置のいくつかの変形例では、可視化要素および照明要素が、フード部材上の透明カバー内に配置されている。透明カバーは、フード部材の任意の部分(例えば、前部、背部、上面、および/または底面)上に配置することができる。
【0017】
別の変形例では、本開示は、エネルギー供給源からのエネルギーを組織の領域内に印可し、真空源を介して吸引を行うために、カテーテル本体と組み合わせて使用するエネルギー供給アセンブリを含み、このセンブリは、作業端に設けられ、上面および底面を有するフード部材であって、同フード部材の内部の凹部を露出させる開放面を底面に有し、開放面は、フード部材の長手方向軸線に沿って長手方向に延びる第1の縁および第2の縁を有する周囲を有し、開放面は、組織の領域上に配置されたときに周囲の少なくとも一部が組織の領域に接触する、フード部材と、第1の縁および第2の縁に沿って対応して配置された第1の電極および第2の電極であって、第1の電極および第2の電極は、エネルギー供給源から組織の領域にエネルギーを供給するように構成されている、第1の電極および第2の電極と、フード部材の内部で長手方向に延びる複数の壁部であって、複数の壁部は、フードの内部に1つまたは複数の灌流チャネルおよび1つまたは複数の真空チャネルを形成する、複数の壁部と、を備え、1つまたは複数の灌流チャネルが、フード内に配置される灌流ルーメンと流体連通しており、1つまたは複数の真空チャネルが、フード内に配置される真空ルーメンと流体連通しており、装置は、開放面が組織の領域上に配置されたときに、真空源からの真空の適用により、真空チャネル内に真空が生成され、組織の領域の表面を開放面内および複数の壁部に対する凹部内に引き込むように構成されている。
【0018】
また、本開示は、患者の体内の組織の部位にエネルギーを印可する方法を含む。例えば、このような方法は、組織の領域に対してフード部材を配置するステップであって、フード部材は、同フード部材の内部の凹部を露出させる底面上の開放面を含み、同開放面は、第1の縁に沿った第1の電極と、第2縁に沿った第2の電極とを有する周囲を有し、フード部材は、複数のチャネルを形成するためにフード部材の内部で長手方向に延びる複数の壁部をさらに含む、組織の領域に対してフード部材を配置するステップと、複数のチャネルのうちの第1のチャネル内に真空を適用するステップであって、これにより、組織の領域がフード部材内に引き込まれるとともにフード部材の底面に対してシールを形成する、第1のチャネル内に真空を適用するステップと、灌流流体が組織の領域を冷却するように、複数のチャネルのうちの第2のチャネルを介して灌流流体を送出するステップと、第1の電極と第2の電極との間の組織の領域内に電流が流れるように、第1の電極および第2の電極によりエネルギーを印加するステップと、第1の電極および第2の電極内に冷却流体を供給するステップと、を含むことができる。
【0019】
本方法の別の変形例は、フード部材の底面に対してシールが形成された後に、第1のチャネル内に真空を適用して、第2のチャネルを介して灌流流体の流れを生じさせることを含む。
【0020】
追加の変形例では、本方法は、灌流流体が第1の電極および第2の電極を冷却するように、第1のチャネル内に真空を適用して、第1の電極および第2の電極内に灌流流体の流れを生じさせることを含む。
【0021】
この方法および装置の変形例は、電極内に電気的に非導電性の冷却流体を使用することを含み、冷却流体は、組織を通過する灌流流体から流体的に隔離される。
【0022】
本明細書に記載されている方法のいずれも、フード部材に結合された視覚化要素を用いて患者の身体の領域を視覚化すること、および/または、光または他の電磁放射線で患者の身体の領域を照らすことを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、エネルギー供給源からのエネルギーを組織の領域に印加するための医療装置の変形例の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、
図2から2B-2B線に沿って切断したフード部材を示す回転断面図である。
【
図3A】
図3Aは、フード部材内の様々な流体通路をよりよく説明するための、フード部材の部分断面図である。
【
図3B】
図3Bは、複数の真空チャネルを通して真空が引き出され、フードの凹部内の組織の表面を張引するフード部材を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本明細書に記載されている装置を使用したベンチモデルからのデータのグラフを示す。
【
図5A】
図5Aは、処置中に電極と処置される組織の両者を冷却する冷却流体を使用するように構成された装置の別の変形例を示す斜視上面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの装置の断面図であり、本明細書に記載されているチャネルの選択的使用をよりよく示している。
【
図5E】
図5Eは、フード部材の遠位端を通る断面を示す、部分断面図である。
【
図6】
図6は、分割された電極を有する装置の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、本明細書に記載されている装置で使用される視覚化および撮像要素を示す図である。
【
図9A】
図9Aおよび
図9Bは、一対の電極を備える1つのチャネルを有する装置の別の変形例を示す図である。
【
図9B】
図9Aおよび
図9Bは、一対の電極を備える1つのチャネルを有する装置の別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による方法および装置を説明する前に、本発明による方法および装置は、本発明の主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更または修正を行うことができ、均等物で置換することができるので、本明細書に記載された特定の変形に限定されないことを理解されたい。本開示を読めば当業者に明らかなように、本明細書に記載されている個別の変形例および実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの変形例のいずれかの要素から分離したり、それらと組み合わせたりすることができる個別の構成要素および特徴を有している。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの1つ以上の行為、または1つ以上のステップを本発明の目的、趣旨または範囲に適合させるために、多くの変更を行うことができる。このようなすべての変更は、ここに記載された特許請求の範囲内にあることが意図されている。加えて、変形例の態様の組み合わせや、変形例の組み合わせ自体も本開示の範囲内にある。
【0025】
組織へのアクセスを提供したり、かつ/または組織を処置したりするための方法および装置をここに開示する。本装置および方法は、低侵襲手術または開腹手術に適している。本明細書に記載される方法および装置は、説明のために心臓組織の処置について述べている。しかしながら、本方法および装置は、組織を(例えば、加熱、冷却、機械的などのモードを介して)処置するあらゆる用途に適用することができる。
【0026】
本明細書に記載されている装置は、心臓の表面上に心臓病変のパターンを形成することができる。しかしながら、その方法および技術は、心臓以外の処置にも応用可能である。本明細書に記載されている装置、方法、および処理の変形例は、可能な限り、様々な実施形態の要素の組み合わせ、または実施形態自体の組み合わせを含む。
【0027】
図1は、エネルギー供給源からのエネルギーを組織の部位に印加するための医療装置100の変形例の一例を示している。図示のように、装置100は、既存のエネルギー供給装置(高周波アブレーション装置を含むがこれに限定されない)よりも改善された方法で組織にエネルギーを印可するように構成されたフード要素110を備える。フード要素110は、後述するように、心臓組織のみならず、身体の他の部分にも耐久性のある経皮的な病変部を形成することを可能にする機能を含んでいる。
図1に示す装置100の変形例では、カテーテルアセンブリ102の作業端104におけるフード要素110を示している。カテーテルアセンブリ102は、フード部材110を所望通りに位置決めできるような任意のチューブ、シャフト、または同様の部材で構成することができる。特定の変形例では、カテーテルアセンブリ102は、フード110の手動による位置決めを可能にする中実なシャフト要素から構成可能である。代替的変形例では、カテーテルアセンブリ102は、フード110の侵襲性を最小限に抑える位置決めを可能にする可撓性を備え/強化された/操舵可能なカテーテル構造体からなる。さらなる追加の変形例では、カテーテルアセンブリ102は、ロボット支援システムの一部を構成することができる。
【0028】
また、
図1は、カテーテルアセンブリ102に結合された任意の基部10を含む装置100を示している。基部10には、エネルギー供給および/または流体供給を起動するためのスイッチを設けることができるが、これらはいずれも当業者に広く周知である。さらに、基部10は、エネルギー(例えば、エネルギー20)、真空(例えば、真空22)、および流体(流体24)を提供する1つまたは複数のユニット20、22、24への装置100の結合を可能にする任意の数のコネクタ12、14を含むことができる。後述するように、装置は、複数の流体供給源を含むことができる(例えば、組織の灌流および/または装置100の冷却要素のための)。加えて、装置100の変形例は、医療介護者が足を使って装置を起動するオプションを可能にする1つまたは複数のフットスイッチを備えることができ、これにより、介護者の手は装置や他の医療装置を配置するために自由になる。
【0029】
上述したように、フード110は、カテーテル本体102の遠位部104に結合することができる。図示の変形例では、フード要素110の底面は、フードの内部にある凹部を露出させる底面上の開放面をよりよく説明するために、ページから外側を向いて示されている(これについては、以下の
図2Aを参照してさらに説明する)。また、フード110は、カテーテル本体の遠位端104と概ね一致して延びる長手方向軸線112を有することが示されている。しかしながら、他の構成も本開示の範囲内にある。例えば、カテーテル本体102の作動端104は、フード110の中間部分または側面に貼り付けることができる。
【0030】
図2Aは、フード要素110を底面114から見た図である。図示のように、フード要素110は、フード110の底面114上に設けられた、封止された上面116とは反対側の開放面120に沿って長手方向に延びる長手方向軸線112を含む。開放面120は、フード110の軸線112と概ね一致するように、フード110の長手部分に沿って第1および第2の縁を含む周囲または境界部122を含む。図示のように、第1の電極140および第2の電極142は、開放面120における第1の縁および第2の縁に沿ってそれぞれ配置することができ、第1の電極および第2の電極は、後述するようにエネルギーを供給するためのエネルギー供給源に結合するように構成される。所定の変形例では、装置を使用する際に、フード110を介して真空を適用し、組織に対してシールを行う必要がある。このような場合、開放面120の周囲または境界部122は、組織に適合するように可撓性を備えるか、または圧縮可能になる。周囲領域122は、フード110がシールを形成する能力を向上させるために、電極140、142の外縁部と平面をなすように設けることができる。代替的変形例では、周囲領域122は、電極140、142からずらして設けることができる。しかしながら、任意の数の変形が本開示の範囲内にある。例えば、周囲領域は、剛性を備えても硬質であってもよい。さらなる追加の変形例では、周囲領域122は、電極ルーメン(後述)と流体連通する通路(図示しない)を含み、それを介して冷却流体の循環を可能にすることができる。
【0031】
図2Aは、フード110内で長手方向軸線112に平行に延びる複数の壁部またはリブ124をさらに示している。複数の壁部124は、開放面120内に組織を引き込むために真空を適用することを可能にするとともに、エネルギー供給の前、後、または中に組織の灌流を可能にする1つまたは複数のチャネル130、132を形成する。任意の数のチャネルが、灌流または真空チャネルとして機能するように構成可能である。さらに、後述するように、1つまたは複数のチャネルは、真空を引くように構成することができ、これにより、フード110を組織に固定することができ、真空はチャネル/フード内で流体を流すことにもなる。このような場合、チャネルは真空チャネルおよび灌流チャネルとして作動する。
図2Aに示す壁部/リブ124の数は、例示のみを目的としている。フード要素110の変形例は、本明細書に記載された改良型フード110の機能を遂行するのに必要な任意の数の壁部/リブを含むことができる。さらに、別の変形例として、壁部はフードの長手方向に延びているが、長手方向軸線に対して角度をなしてもよい。さらなる追加の変形例として、チャネルがフード部材の長手方向に延びる際に、壁部は、蛇行、起伏、ジグザグなどの非線形パターンで延びることができる。
【0032】
図2Aはまた、フード110をカテーテル部材(
図2Aに示さない)に結合することを可能にするマニホールドまたはシャフト118を含むフード要素110を示している。マニホールド/シャフト118は、真空、灌流、および/または冷却のための流体通路として機能する、任意の数のルーメンまたは形成された開口部を含むことができる。本明細書に記載されている装置の特定の変形例では、そのような流体通路は必要に応じて隔離される。例えば、本装置の変形例では、組織灌流流体が電解質(生理食塩水など)であり、電極冷却流体が電気的に非導電性である場合には、電極冷却流体を組織灌流流体から隔離することが望ましい。追加の変形例では、真空流体通路は、灌流流体通路とは反対側のチャネルの端部でチャネルに流体的に結合される。この構成により、チャネルを介して真空を適用することができ、真空によってまず組織が開放面120に引き寄せられ、その後、灌流流体通路からチャネルを介して灌流流体が流され始める。このような構成の例については後述する。
【0033】
図2Bは、フード部材110の内部に1つまたは複数のチャネル130、132を形成する壁部124をよりよく説明するために、
図2から線2B-2Bに沿って切断したフード部材110の回転断面図を示す。
図2Bの説明図では、フード110の底面および開放面が組織2に隣接して配置されている態様を示している。この断面図は、フード110の長手部分に沿って延びる個別のチャネル130、132を形成する複数の壁部124を示している。別の変形例は、フードの全体に沿ってではなく、フード110に沿って部分的に延びるチャネルを含み得る。さらなる変形例は、フードの軸線に対して角度をなして延びるチャネルを含み得る。
【0034】
また、
図2Bは、ハウジング110を貫通して延びる中央ルーメン138を含むフード110の変形例を示している。中央ルーメン138は、本明細書で説明したように、フード110を通る灌流通路または真空通路として機能することができる。説明図は、電極140、142を受承する電極チャネル136を含むフード110の変形例をさらに示しており、これらの電極は、電極を通過する電極ルーメン144、146をさらに含む。ここで述べたように、装置の所定の変形例は、電極およびフードのうちの少なくともいずれか一方を通る冷却流体の流路となるように、電極ルーメン144、146を含む。
【0035】
図3Aは、フード部材110内の様々な流体通路をよりよく説明するための、フード部材の部分断面図である。図示のように、中央流体ルーメン138は、フード部材110を通って延びることができ、中央流体ルーメン138は、フード110の近位部における他の流体通路(例えば、ルーメン128)から流体的に隔離されている。中央ルーメン138は、フード110の遠位部にある開放領域126を用いて、1つまたは複数のチャネル132、134に流体的に結合することができる。
図3Aは、フード110の近位部において、1つまたは複数のチャネル132、134に流体的に結合される第2の流体ルーメン128を有するものとして、マニホールド18またはフード110の近位部をさらに示している。この場合も、第2の流体ルーメン128は、フード110の近位部において主流体ルーメン138から隔離されることになる。主ルーメン138が灌流流体源に結合され、第2のルーメン128が真空源に結合されている装置の変形例では、第2のルーメン128に真空を適用すると、第2のルーメン128に流体的に結合されているそれぞれのチャネル132に真空が形成される。これらのチャネル132がフードの遠位端で主流体ルーメン138に流体的に結合されている場合には、(例えば、開放面に対してまたは開放面内で組織をシールすることによる)閉鎖流体システムの形成により、チャネル132内に圧力低下が生じる。これにより、灌流流体が主流体ルーメン138からチャネル132の遠位部に流れ、近位部を通って真空ルーメン128から戻ってくる。明らかに、装置の動作は、主流体ルーメン138が真空源に結合され、第2のルーメン128が灌流源に結合され得るように逆にすることができる。このような場合は、流れの方向を逆にする。
【0036】
いずれの状況においても、灌流流体を任意のチャネルで引いたり押したりすることで、他のチャネルが組織に対して流体シールを形成し、これにより灌流流体はチャネル内を流れて組織の表面を冷却する。これは、電極(
図3Aには示さない)を使用してエネルギーを供給する際に通常望ましい。上述したように、灌流チャネルおよび真空チャネルの複数の組み合わせは、本開示の範囲内にある。例えば、真空チャネルを真空ルーメンに結合するが、灌流ルーメンには結合しないことで、これらのチャネルは組織表面に対してシールを形成することができ、かつ/または、灌流チャネルを灌流ルーメンおよび真空ルーメンの両者に結合することで、灌流流体の流れを生じさせることができる。
【0037】
図3Bは、複数の真空チャネル132を通して真空が引き出され、フード110の凹部内の組織2の表面を張引するフード部材110を示す断面図である。この変形例では、フード110内の凹部は、上記
図2Aに示すように、壁部124の複数の端部とフードの開放面との間の距離によって決定される。任意で、吸引フード110の壁部124は、図示のような角度をなす(すなわち、フード110の中央線の近傍の壁部は、フード110の外縁に向かう壁部124よりも短い)。そのため、真空チャネル132が組織を吸引フード110の壁部に向かって引き寄せると、組織は、組織が完全には折りたたまれない組織の凹部を形成することになる。この組織の凹部により、血液が捕捉される可能性が低減され、これは、心臓の処置で心内膜面の組織に使用する場合には特に有効である。上述したように、
図3Bに示す真空チャネル132は、近位側の真空ルーメンに接続することができる。しかしながら、真空ルーメンの構成および形状は様々なものを使用することができる。
【0038】
加えて、1つまたは複数の灌流チャネル130を使用して、組織2の表面上に灌流流体を供給することができる。これにより、組織2の表面が冷却される。電極が高周波モードで使用される一変形例では、電流が電極140と電極142との間に伝導される。組織は電流に対するオーム抵抗によって加熱され、これにより温度上昇部位4の組織温度が上昇する。この温度上昇部位4が、組織内にアブレーションまたは凝固の病変部位を形成する。一方、電極ルーメン144、146から冷却流体を供給することで、電極を低温に保ち、電極140、142の表面に熱がこもらないようにする。これにより、組織の中に病変部位を確実に形成することができる。上述したように、場合によっては、電極の温度を維持できないと、電極表面と組織との間に望ましくない熱伝導効果が生じることがある。
【0039】
図3Bに示すように、電極140、142は、脱イオン水などの電気絶縁性であるが熱伝導性を備える流体を流すことができるように、その内部を延びるルーメン144、146を備えるように構成することができる。この冷却流体は、電極140、142から熱を引き離す。この冷却剤を電極ルーメン144、146に積極的に循環させるために、ポンプを繋いで使用することができる。一実施形態では、流れは、閉ループシステムの再循環流体とすることができる。これに代えて、流体が開ループシステムであってもよく、これにより、流体は大型のタンクから始まり、心膜腔に排出され空になる。高周波の浸透深さはごくわずかで、熱伝導は一般的に非常に遅いため、電極を冷却することで、電極付近の熱の蓄積を防ぎ、より長時間のアブレーション、および組織体積あたりの高周波エネルギー投入量を増やすことが可能である。一変形例では、電極を通る流れは、冷却剤が近位端の一方の電極に入り、近位端の他方の電極から出るというように、連続したものにすることができる。別例では、電極を通る冷却剤の流れを平行にすることで、電極の冷却をより効率的に行うことができる。
【0040】
図3Bに示す本装置のさらなる特徴は、一旦真空によって組織が吸引フード110内に引き込まれ、フード110の開放面が組織に対してシールされると、真空によって組織冷却用の流体が流体入口およびチャネルを介して引き込まれることにある。真空は、流体入口を通って心外膜の組織表面上に組織冷却流を引き寄せ、心外膜の表面を冷却する。この冷却により、電極付近および心外膜表面への熱の蓄積を防ぎ、組織の単位体積あたりの高周波エネルギーの投入量を増やすことができる。また、この流れは、フード110の上面の温度を上昇させてしまう心外膜組織の温度を維持することを支援する。電極とは反対側の装置上面の温度を維持することは、装置上面の高温が隣接する組織に意図しない熱損傷を与える可能性があるため、安全性の観点からも有益である。例えば、このような温度を維持できないと、心臓アブレーション処置の際に食道に損傷を与える可能性がある。食道の損傷は、最終的に心房食道瘻になり、致命的になる可能性がある。
【0041】
図3Bはまた、電極140、142を介してエネルギーを供給する際の熱プロファイルの一例を示している。上述したように、最も熱い領域4は、心外膜の表面から1乃至2mm(または心内膜の表面に1乃至2mm近傍)の位置にあることができ、その結果、熱の浸透がより深くなる可能性がある。したがって、この領域4は、血流による心内対流効果に打ち勝つ可能性がより高い。これにより、心臓組織や他のアブレーション手技の際に、完全な経壁(全厚)の病変部位を形成することができる。図の変形例で熱の浸透深さが増している主な理由は、組織のわずかな凹部と、電極および組織の冷却の効果とによるものである。
【0042】
図4は、本明細書に記載されている装置を使用したベンチモデルからのデータのグラフを示す。このプロットは病変部位の深さ対組織の厚さを示しており、線30は全厚のアブレーション病変部位に必要な組織の厚さを示している。このモデルでは、5mmのウシの心外膜サンプル組織を使用した。結果として得られた病変部位は32で示されており、病変部位の95%以上が経壁であったことを示唆しており、同様のベンチトップ構成と比較した場合、他の装置と比較して非常に有利な結果となっている。
【0043】
図5Aは、処置中に電極142および処置される組織の両者を冷却する冷却流体を使用するように構成された装置100の別の変形例を示す斜視上面図である(例:装置100が心臓アブレーションに使用される場合の心外膜組織)。一変形例では、真空ルーメンおよびチャネルを使用して組織とのシールを形成し、ポンプで中空の電極に冷却流体を送る。電極は組織上に流体を空けて、組織をさらに冷却することができる。このような場合、真空ルーメンおよびチャネルを介して適用される真空により、フード部材110との間で安定した組織の接触が可能となり、組織がフード内の凹部に引き込まれ、組織の折り目が形成される。
【0044】
図5Aは、電極の長さが3cmで、直径が18フレンチからなるフード部材110の変形例を示していることに留意されたい。明らかに、他のサイズも本開示の範囲内にある。
【0045】
別の変形例では、真空ルーメンが電極の流体通路に流体的に結合されているので、真空が電極を通して冷却流体を引き、組織を冷却してから組織の上に置く。この変形例では、フード110を組織に固定することに加えて、真空が流体をシステム内に引き込む役割を果たす。このような設計では、電極の近傍にある1つまたは複数のチャネルのみに冷却の流れを生じさせ、残りのチャネルは主に確実に組織と接触させるための真空に使用することができる。この構成により、組織表面上の電極近傍の組織を効果的に冷却することができる。
【0046】
図5Aに戻ると、装置100は、カテーテルアセンブリ102またはシャフトの作業端にフード要素110を含み、このフード要素110は、必要に応じて流体および/または真空を供給するための1つまたは複数のルーメンを含むことができる。フード要素110は、電極を介して冷却流体を遠位方向に送り、流体を冷却する一対の電極(
図5Aでは電極142のみを示す)を含む。その後、冷却流体はフード部材110内の電極から出て、これにより、冷却流体が組織上(および任意に電極近傍)に逆流し、さらなる冷却効果を得ることができる。後述するように、フード110は、視覚化要素、ワイヤ、照明、ペーシング、検知、および治療手順を支援する他の構造体を収容するための追加の通路を含むことができる。
【0047】
図5Bは、
図5Aの装置の断面図であり、本明細書に記載されているチャネルの選択的使用をよりよく示している。
図5Bは、本明細書に記載したような複数のチャネル130,132を有するフード部材110を示している。なお、
図5Bでは、チャネル130,132の流路をよりよく示すために、電極は図示していない。本明細書で述べたように、ルーメン128を介して真空を適用することができ、これにより、すべてのチャネル130、132内に真空を引くことができる。しかしながら、電極の最も近傍の位置に配置されているチャネル130はプレナム126に流体的に結合されており、プレナム126は電極のルーメンに流体的に結合されている。本明細書で述べたように、真空を適用することで、電極を冷却するために電極ルーメンを通して流体を引き込むことができ、流体はその後、プレナム126を通して引き込まれ、現在は冷却チャネル130として機能している真空チャネル130を通って戻る。残りのチャネル132は、プレナム126から流体的に隔離されており、これにより、これらのチャネルは組織に対してシールを形成して(上述の角度をなす壁部で述べたように)、主に真空チャネル132として機能することができる。
図5Bはまた、視覚化要素、ワイヤ、照明、ペーシング、検知、および治療手順を支援する他の構造体を含むがこれらに限定されない任意の数の構成要素を収容することができる追加の通路150を示す。
【0048】
図5Cは、複数のチャネル130、132を形成するためにフード部材110の凹部内に延在する複数の壁部124を説明するための、
図5Aのフード部材110の底面図である。ここでも、フード部材110は、フード部材110およびチャネル130,132内の流路の一変形例を示すために、電極なしで図示されている。図示のように、フード部材110は、フード110の横断方向の縁部に沿って電極を着座させることができる電極チャネル136を含む。電極チャネル136は、フード110の遠位端に位置するプレナム126と流体連通している。また、プレナム126は、複数のチャネル130に流体的に結合されている。この変形例では、プレナムは、電極チャネル136に隣接するチャネル130に結合されているが、任意の数の構成が本開示の範囲内である。本装置の一変形例では、中空の電極が使用されており(上述の通り)、電極ルーメンは冷却流体と流体連通している。冷却流体は、ポンプで駆動することもできるし、フード110を通る真空流体通路を形成するチャネル128を介した真空の適用を用いて駆動することもできる。組織に当てると、チャネル130
、132は組織をフード110の壁部124に引き寄せてシールし、フードおよび電極を組織に固定する。ポンプを使用しない変形例では、チャネル130でシールを形成することで、プレナム126を介して接続されている電極ルーメン間の流体通路を閉鎖する。したがって、冷却流体は、電極ルーメンを通って、プレナム126を通り、プレナムに流体的に結合されたチャネル130を通って引っ張られる。その後、流体は真空通路128を通って引き戻される。これに代わる変形例では、ポンプを使用するいくつかの変形例では、電極は組織上に直接流体を堆積させ、体内に残すことができる。
【0049】
図5Dは、
図5Cのフード部材110を背面に沿って真空ルーメン128内に見たときの図である。図示のように、フード部材110は、追加の構成要素(例えば、視覚化、照明、センサ、ペーシングなど)に使用される複数のルーメン150、154、156を任意に含む。このルーメンの位置決めにより、構成要素を主カテーテルアセンブリ(
図5Dに示さない)に通すことができる。また、
図5Dは、本明細書で説明するように、フード110の下縁に沿って延びる電極チャネル136と、電極チャネル136に流体的に結合することができる隣接するチャネル130とを示している。また、
図5Dは、組織をフード部材110に固定するために主に使用される、隔離されたまたは遠位側のブラインド真空チャネル132を示している。
【0050】
図5Eは、フード部材110の遠位端を通る断面を示す、部分断面図である。図示のように、また、本明細書で議論されているように、チャネルを形成する壁部124は、角度をなす、先端ほど細くなる、または円弧状のプロファイル148に配置することができ、これにより、フード110内の凹部160に引き込まれる任意の組織は、壁部のプロファイル148に従う予め定められたプロファイルをとることができる。
図5Eはまた、遠位端を通って延びる余分な通路150、154、156を示しており、これにより、フード部材110の遠位端に照明および/または視覚的要素を配置することができる。
【0051】
図6は、本明細書に開示された装置の任意の変形例で使用するための電極142,144の変形例を示している。電極142、144は、各電極セグメント142、144を分離することができ、かつ/または、可撓性を備えたフード110に適合することができる可撓性を備えた電極を形成することができるコネクタ168を介して結合することができる。セグメント化された電極142、144は、所望の任意の方法で対にすることができる(例えば、特定の側に沿った各セグメントは、その同じ側の別のセグメントと対にすることができ、特定の側の各セグメントは、他の対応する側の任意の他のセグメントと対にすることができ、また、それらの組み合わせが挙げられる)。加えて、この電極はペーシング、高インピーダンスの感知または検知、より高い電力供給の防止に使用することができる。
【0052】
図7Aおよび
図7Bは、フード部材内のチャネル130,132の追加変形例を示す図である。
図7Aにおいて、フード部材内の壁部124は、上述したようにチャネル130、132を形成しており、チャネルの一部は、フード内の凹部160に開放された状態を保持する。これに代えて、
図7Bに示すように、1つまたは複数のチャネル130を凹部160内に封入して、封入されたルーメンを形成することができる。例えば、そのような封入されたチャネル130は、冷却流体の逆流を生じさせることができる。これに代えて、または組み合わせて、封入されたチャネル130は、フードの遠位端で吐出される冷却流体の供給源として機能することができる(例えば、上述したようなプレナム内にて)。
【0053】
本明細書に記載されている装置は、オンボードの内視鏡による視覚化により、医師がアブレーションに先だって組織と組織に対する装置の配向を評価することができるという利点がある。装置を心筋から離間するように配向してアブレーションを行うと、意図しない組織がアブレーションされる可能性があるため、心筋組織に対する装置の配向を評価することは、安全性の観点から非常に重要である。このような意図しないアブレーションは、重大な悪影響をもたらし、致命的になり得る。また、オンボードで可視化することにより、切除した組織を切除していない組織とは区別することができ、これにより、医師が病変パターンの隙間を切除することが支援される。
【0054】
図8は、本明細書で説明した装置の任意の変形例と組み合わせることができる、さらなる別の要素を示している。
図8は、1つまたは複数の照明源182(例えば、LEDまたは可視照明か非可視照明かを問わない任意の照明源)を有する撮像センサ180(例えば、CMOSカメラ、光ファイバなど)を有するフード部材110の遠位端を示している。このような要素により、装置の病変部位および/または位置決めを観察するための撮像および照明の能力を装置は得られる。任意で、フード部材110は、撮像センサ180および照明源182が透明な先端部内に配置された透明/半透明の遠位側鼻先端170を含むことができる。この変形例は、ブタのモデルにおいて、心筋組織と心膜組織との間の色およびコントラストの違いから装置の配向を判断できることが示された。
【0055】
遠位側先端の設計は、フード部材110のエンドエフェクタに取り付けられるようにモジュール化されている。変形例は、1つまたは複数の撮像センサ180および/または照明源182を、フード部材110の任意の様々な箇所に配置することを含む。例えば、撮像センサ180は、遠位側先端170の縁部に配置することができ、これにより、分かりやすい視点が得られる。これに代えて、撮像センサ180を遠位側先端の縁部に沿ってわずかに角度をなすように配置することにより(図示しない)、解剖学的に異なる視野を得ることもできる。撮像センサ180は、近位端にある画像処理ボックスによって制御することができる。加えて、光源の強度を近位端で制御することもできる。
【0056】
図8はまた、フード部材110が操舵機能のためのルーメンを有する変形例を示している。これに代えて、ルーメンは、装置の温度を監視するための手段であると同時に、目的ではない組織のアブレーションを防止するために冷却流体の追加の導管であってもよい。操舵の場合、ルーメンはアンカー・プル・ケーブルのための導管を構成することができる。さらに、本明細書に記載されている装置は、装置の位置決めおよび配置を支援する任意のナビゲーションセンサ190を使用することができる。そのようなナビゲーション要素/センサ190の詳細は、2019年1月10日に出願されたPCT/US2019/013074号に記載されており、その全体がここに開示されたものとする。
【0057】
図9Aおよび
図9Bは、本明細書に記載したものと同様の装置の別の変形例を示している。この変形例では、フード210は、1つのチャネル230内でフード210の内部の側面に沿って配置された電極240,242を有するチャネル230を形成する壁部材224を含む。この構成は、CoolRail(登録商標)アブレーション装置と呼ばれる譲受人が製造した装置に類似している。この構成では、冷却剤が電極240,242を流れる一方で、チャネル230が追加の真空機能と組織に接触する灌漑とを提供する。上述したように、電極240、242の冷却のための流体通路と、組織灌流用のポート234とを個別に設けることができる。電極の冷却流体は、任意に閉鎖系に留めることができ、CoolRail(登録商標)装置と同様にポンプを使って装置内を推進することができる。組織灌漑は、別体の流体源に接続することができ、本明細書で説明したように、カテーテルアセンブリまたはシャフト202を通して適用される真空によって駆動することができる。組織を吸引すると、潅流流体が
ポート234から出て、冷却流体は組織を横断して主吸引ルーメン内に引き戻される。これに代えて、電極および組織を同じ流体で冷却することで、別体のルーメンを不要とすることができる(例えば、開放されたルーメンを備えた電極を使用するなどして)。
【0058】
公開されているいずれの変形例においても、病変部の組の完了を支援するために、吸引機能を格納付属品として使用することが望ましい。このような場合、フード部材に対して組織を固定する真空の能力を最大限に高めるために、流体が流れないようにすることが必要になり得る。したがって、本明細書に記載されている装置は、流体の流れがない場合にアブレーションが行われないように、流体の流れ、吸引および/または関連付けられる制御にリンクされたオン/オフ(または一時停止)スイッチを含むことができる。
【0059】
加えて、組織の凹部の機能が望ましい。
図9Bにプラグまたは同様の構成要素260が真空チャネル230に挿入される、組織の凹部の特徴の一例を示す。別の変形例として、チャネルに挿入された網状、スクリーン、または多孔質の剛体が挙げられる。