(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】三次元ボリューム流量の定量化測定
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240307BHJP
A61B 8/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61B8/06
A61B8/02
(21)【出願番号】P 2021553801
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2020057584
(87)【国際公開番号】W WO2020188022
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン シュヨン ウエン
(72)【発明者】
【氏名】ジャゴ ジェームス ロバートソン
(72)【発明者】
【氏名】リー スーボー
(72)【発明者】
【氏名】ワーン シーイーン
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ソブ
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン ヘラルト ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ルーパス タナシス
(72)【発明者】
【氏名】ザーン リヤーン
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-284362(JP,A)
【文献】米国特許第06503202(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0287799(US,A1)
【文献】特開2003-220060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0114756(US,A1)
【文献】特開2008-080106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0051661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液のボリューム流量を分析するための超音波診断撮像システムであって、
血管のボリューム画像流量データセットを取得するように適合される3D撮像プローブと、
前記ボリューム画像流量データセットに応答する画像データプロセッサと、
前記血管の中心を識別するように適合される、空間的に編成される血管データに応答する血管中心ロケータと、
前記3D撮像プローブを制御して前記血管の中心
付近から始
めて前記血管のボリューム画像流量データセットを取得するように適合される、前記血管中心ロケータに応答するビームフォーマコントローラと、
ボリューム流量プロファイルデータを計算するように適合される、前記取得される血管のボリューム画像流量データセットに応答するボリューム流量計算器と
を有する、超音波診断撮像システム。
【請求項2】
心拍数を表すデータを生成するように適合される心拍数計算器をさらに有し、
前記ボリューム画像流量データセットは、前記心拍数データに時間的に関連して取得される、
請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項3】
前記心拍数計算器は、超音波データを使用して推定心拍数データを生成するように適合される超音波データプロセッサ又はECGモニタの1つをさらに備える、請求項2に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項4】
前記ビームフォーマコントローラを制御して前記血管の中心
付近から始
めて血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得するように適合される前記血管中心ロケータに応答するサブボリューム選択器をさらに備える、請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項5】
前記ビームフォーマコントローラは、心周期の持続時間にわたって血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得するようにさらに適合される、請求項4に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項6】
前記ビームフォーマコントローラは、心周期の拡張フェーズ部分の中間で始まり、心周期の次の拡張フェーズ部分の中間で終わる取得間隔にわたって、血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得するようにさらに適合される、請求項5に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項7】
前記ビームフォーマコントローラは、前記取得間隔の中間に生じる収縮フェーズ心位相の間に、血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得するようにさらに適合される、請求項6に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項8】
前記心拍数計算器は、前記ボリューム流量計算器にさらに結合され、流量プロファイルの収縮フェーズピークに関連してサブボリューム取得時間を計算するように適合される、請求項2に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項9】
ボリューム画像データセットを記憶するように適合される3D画像データメモリと、
前記3D画像データメモリに結合され、前記血管と交差する画像平面を選択するように適合されるマルチプレーナリフォーマッタと
を更に有し、
前記ボリューム流量計算器は、前記血管と交差する前記画像平面に関するボリューム流量プロファイルデータを計算するようにさらに適合される、
請求項1に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項10】
前記3D画像データメモリに結合され、前記血管の3D画像を生成するように適合されるボリュームレンダラをさらに備える、請求項9に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項11】
前記マルチプレーナリフォーマッタ、前記ボリュームレンダラ、及び前記ボリューム流量計算器に結合されるディスプレイであって、前記マルチプレーナリフォーマッタによって選択される画像平面、前記血管の3D画像、及び流量プロファイル曲線の一つ又はそれより多くを表示するように適合されるディスプレイをさらに備える、請求項10に記載の超音波診断撮像システム。
【請求項12】
超音波データ取得によって血液のボリューム流量を分析する方法であって、
血管の中心を識別するステップと、
3D超音波撮像プローブを用いて前記血管の中心
付近から始
めて前記血管のボリューム画像流量データセットを取得するステップと、
前記血管の超音波画像の前記ディスプレイのために前記撮像プローブで取得される画像データセットを処理するステップと、
前記取得されるボリューム画像流量データセットを使用してボリューム流量プロファイルデータを計算するステップと
を有する、方法。
【請求項13】
心周期タイミングを推定するステップ
を有し、
ボリューム画像流量データセットを取得するステップが、前記心周期タイミングと同期して前記血管のサブボリュームから前記血管のボリューム画像流量データセットを取得するステップをさらに有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記心周期の収縮フェーズを検出するステップ
を有し、
ボリューム画像流量データセットを取得するステップが、心周期の拡張中期から始まり、後続する心周期の拡張中期で終了する取得間隔の間に、前記血管のサブボリュームから前記血管のボリューム画像流量データセットを取得するステップをさらに有し、
前記収縮フェーズの間の取得は前記取得間隔の中間の間に行われる、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記血管のサブボリュームから前記血管のボリューム画像流量データセットを取得するステップは、前記複数のサブボリューム取得間隔中に前記推定心周期タイミングを更新するステップをさらに有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療診断用超音波システムに関し、特に、心臓又は血管を通る血液のボリューム流量の定量化される測定値を生成する超音波システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、ドップラー原理を用いて心臓及び血管系における血流の様々なパラメータを評価するために長い間使用されてきた。基本的なドップラー応答は血流速度であり、これは、血流のさらなる特性を決定するためにさらに使用され得る。心臓病専門医にとって興味深い1つの特性は、血管を通る血液のボリューム流量である。ボリューム流量を推定する初期の努力は、血流の平均速度に血管の公称断面積を乗算することからなっていた。しかしながら、これらの初期の努力は、特定の推定を行う必要があるために欠点を有していた。1つは、血管管腔が円形であることである。もう一つは、単一のドップラー測定又はスペクトルドップラーデータの定性的評価からの平均速度の推定である。また、超音波ビーム方向と流れの方向との間の角度に対して速度測定を補正しなければならない。さらに別の考察は、狭窄が存在する場合の層フロープロフィールである。
【0003】
動脈流の拍動性のために、さらなる合併症が生じる。静脈血流量は実質的に一定であるが、動脈血流量は心周期を通じて絶えず変化している。したがって、標準的な技法は、ユーザの独立性及び再現性に欠けることが多い。これらの要求のいくつかは、流動状態、特にボリューム血流情報を取得する能力を評価するための3D超音波の出現によって緩和されてきた。3D撮像では、完全な血管管腔を撮像することができ、後の再生及び診断のために一連の3D画像データセットを取得することができる。血管内の全体積流量のデータがデータセット内で取得されると、取得後診断中に画像データを検査して、流量プロファイルを評価することができる。マルチプレーナ再構成(MPR)において3D結果から異なる2D画像平面を抽出できるので、血管を通る所望の配向の画像平面を調べることができる。三次元画像は、従って、2D流れ推定で問題となる静的画像課題の多くに対処する。
【0004】
近年、血流の時間的動態を分析する問題は、「空間時間画像相関」又はSTICと呼ばれる技術によって対処されている。STICでは、超音波を用いて血管を通して掃引が行われ、一連の心周期にわたって多くの画像フレームが取得される。2D超音波プローブで手動でスキャンして行う場合、この画像取得には10秒以上かかることがある。同じ取得は血管を通して画像面を機械的に掃引する機械的3Dプローブで行うことができるが、3D機械的プローブは仰角寸法でMPR画像を構築する際に不正確さを導く、しばしば低い仰角焦点を有する。取得が完了し、画像フレームが記憶される後、必要に応じてMPR再構成によって生成される所望の解剖学的構造の画像フレームは、心周期におけるそれらの位相シーケンスに従って画像のループに再組み立てされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このタスクは、心周期がデータセットを取得するのに必要な時間にわたって一様でない可能性があるという事実によって困難になる。その結果、心臓組織又は血液の動きの分析から心拍数を推定する合成方法が開発されているが、それにもかかわらず、評価が困難であり、不正確になりがちである。したがって、流れの拍動及び不規則な心拍の存在下でボリューム流量を正確に評価するための、よりロバストな技術を開発することが望ましい。さらに、このような技術を自動化して、ボリューム流量データを取得するのに必要な時間隔を優先順位付けし、短縮し、プローブ及び解剖学的構造の両方による運動効果の影響を低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原理によれば、ボリューム流量取得を用いて血フロープロファイルを生成する診断用超音波システムが記載される。3D撮像プローブは血管から流量データの1つ以上の画像ボリュームを取得するために使用され、血管のB断面又はC断面平面が抽出され、これは血液ボリュームフローレートを決定するために処理される。動脈血流が評価されているとき、時間的サンプリング精度を維持するために、心周期のすべてのフェーズにわたって各空間的に異なるボリューム流量データセットが取得される状態で、ボリューム流量の複数のサブボリュームを取得することが好ましい。次に、サブボリュームは適切な時間的サンプリングを伴う全ボリュームフローシーケンスを生成するように、心位相順序に空間的に組み立てられる。次いで、B面又はC面を抽出し、ガウスの定理を用いて平面を通して推定したボリューム流量プロファイルを求める。
【0007】
好ましい実施態様では、体積又はサブ体積の取得がフロー信号がより強く、したがって心位相が識別しやすい血管の中心の周りで開始する。これはまた、不利な運動効果を最小限に抑えるために、取得プロセスにおいてより早期に、総ボリューム流量に対する最大の寄与を有するサブボリュームの取得をもたらす。この場合、取得プロセスはサブボリューム取得の前に、例えば、ユーザ指定、又は、血管を通る高速ドップラーシーケンスのような自動化される技術によって、血管中心を識別することによって開始される。次に、サブボリューム取得は血管中心から始まり、そこから外側に進む。
【0008】
心周期のフェーズと同期した取得は心周期を測定する非合成方法(例えば、対象に取り付けられたECGモニタ)によって、又は、心臓若しくは血管の解剖学的構造若しくは血流のユーザ推定若しくは自動Mモード若しくはスペックル追跡のような合成方法によって達成することができる。好ましくは、フロープロファイルが取得中にオンザフライで計算され、以前に取得されるサブボリュームの心拍数サイクルに基づく心拍数推定値は心拍数サイクルの不規則性を考慮するために、各心拍数サイクル毎に更新される。好ましくは、各サブボリュームの取得が一時的に収縮フェーズを中心とし、その結果、ボリューム流量が動脈血管において最大であるときの収縮フェーズ流量が完全にサンプリングされる。
【0009】
本発明の態様によれば、血液のボリューム流量を分析するための超音波診断撮像システムは、血管のボリューム画像流量データセットを取得するように適合される3D撮像プローブと、ボリューム画像流量データセットに応答する画像データプロセッサと、血管中心ロケータとを含む。血管中心ロケータは、血管の中心を識別するように適合される、空間的に編成される血管データに応答する。システムは血管中心ロケータに応答するビームフォーマコントローラをさらに含み、ビームフォーマコントローラは、血管の中心の周りで開始する血管のボリューム画像流量データセットを取得するように3D撮像プローブを制御するように適合される。特定の実施形態では、取得される血管のボリューム画像流量データセットに応答し、ボリューム流量プロファイルデータを計算するように適合されるボリューム流量計算器も存在する。
【0010】
いくつかの実施形態では超音波診断撮像システムが心拍数を表すデータを生成するように適合される心拍数計算器をさらに含み、ボリューム画像流量データセットは心拍数データに時間を合わせて取得される。
【0011】
いくつかの実施形態では、心拍数計算器が超音波データを使用して推定心拍数データを生成するように適合されるECGモニタ又は超音波データプロセッサの1つを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、超音波診断撮像システムが血管中心ロケータに応答するサブボリューム選択器を含む。サブボリュームセレクタは、ビームフォーマコントローラを制御して、血管の中心付近から始まる血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得する。
【0013】
いくつかの実施形態では、ビームフォーマコントローラが心周期の持続時間にわたって血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ビームフォーマコントローラが心周期の拡張フェーズ部分の中間で開始し、心周期の次の拡張フェーズ部分の中間で終了する取得間隔にわたって、血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得する。
【0015】
いくつかの実施形態では、ビームフォーマコントローラが取得間隔の中間に生じる収縮期心位相中に血管のサブボリュームのボリューム画像流量データセットを取得する。
【0016】
いくつかの実施形態では、心拍数計算器がボリューム流量計算器にさらに結合され、流量プロファイルの収縮期ピークに関連してサブボリューム取得時間を計算するように適合される。
【0017】
いくつかの実施形態では、超音波診断撮像システムがボリューム画像データセットを記憶するように適合される3D画像データメモリをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、超音波診断撮像システムが3D画像データメモリに結合され、血管と交差する画像平面を選択するマルチプレーナリフォーマッタをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、ボリューム流量計算器が血管と交差する画像平面に関するボリューム流量プロファイルデータを計算するようにさらに適合される。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムが3D画像データメモリに結合され、血管の3D画像を生成するように適合されるボリュームレンダラをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムがマルチプレーナリフォーマッタによって選択される画像平面、血管の3D画像、及びフロープロファイル曲線の一つ又はそれより多くを表示するように構成されるディスプレイをさらに含む。ディスプレイは、システムの1つ以上の他の要素に結合されてもよい。
【0022】
本発明はまた、超音波データ取得によって血液のボリューム流量を分析する方法であって、血管の中心を識別するステップと、3D超音波撮像プローブを用いて血管の中心の周りから始まる血管のボリューム画像流量データセットを取得するステップと、血管の超音波画像を表示するために撮像プローブを用いて取得される画像データセットを処理するステップと、取得されるボリューム画像流量データセットを用いてボリューム流量プロファイルデータを計算するステップとを含む方法を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、この方法はまた、心周期タイミングを推定するステップを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、血管のボリューム画像流量データセットが心周期タイミングと同期して血管のサブボリュームから取得される。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法が心周期の収縮フェーズを検出するステップを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では血管のボリューム画像流量データセットが心周期の拡張中期から始まり、後続の心周期の拡張中期で終了する取得間隔中に血管のサブボリュームから取得され、収縮フェーズ中の取得は取得間隔の中間中に行われる。
【0027】
いくつかの実施形態では、血管のサブボリュームから血管のボリューム画像流量データセットを取得するステップは複数のサブボリューム取得間隔中に推定心周期タイミングを更新するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】3D超音波撮像プローブを用いたボリューム領域の超音波データのサブボリュームの取得を示す。
【
図2】血管の中心から始まる血管管腔の超音波データのサブボリュームの取得のシーケンスを示す。
【
図3】各サブボリューム取得が収縮フェーズの周りに時間的に集中しているときの、
図2の取得シーケンスの典型的な一連のフロープロファイルを示す。
【
図4】心周期が不正確に測定又は推定される場合に、ボリューム流量過大推定又は過小推定がどのように生じるかを示す。
【
図5】2つの心周期にわたる初期サブボリュームのサンプリングからの後続のサブボリューム取得間隔の決定を示す。
【
図6】収縮フェーズの間に最初のサブボリュームのサンプリングが始まるときの、後続のサブボリューム取得間隔の決定を示す。
【
図7】本発明の原理に従って構成される超音波診断撮像システムをブロック図形式で示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、3D超音波撮像プローブのトランスデューサ12による体積領域50の超音波データのサブボリューム60の取得を示す。この例では、フルボリューム50がセクター角度54を終了する円錐形状を有し、頂部52がアレイトランスデューサ12の前面に位置する。サブボリュームスキャンの場合、一連の隣接するサブボリューム60から超音波データを取得することによって、全ボリュームをスキャンすることができる。各サブボリュームは、一連の二次元扇形スライス70、72、74及び76を含み得、ここで、各スライスは一連の隣接するスキャンラインを含む。3Dプローブは振動1次元トランスデューサアレイを含んでもよいが、好ましくはプローブがスキャン速度及び精度を向上させるために、固定2次元マトリクスアレイトランスデューサを含む。マトリックスアレイのビームは仰角と方位角の両方で電子的にステアリングされるので、フルボリューム及び個々のサブボリュームは任意の所望のサイズ及び形状を有してもよく、サブボリュームのスライスは任意のビーム順序でスキャンされ得る。
図1の図はまた、血管管腔が体積64及び62の前縁と後縁との間で体積50の基部と交差する点線の輪郭100を示す。
【0030】
血流信号が最も強く、心位相を確実に識別することがより容易である管腔の中心から始まる血管管腔のサブボリュームデータを取得することが好ましい。より多くの流量信号は中間サブボリュームに含まれ、以下に説明するように、心拍数推定などの分析のために壁フィルタリング後に保存される。中間サブボリュームはまた、血管の総ボリューム流量に対する最大の寄与を含む。このような取得シーケンスは
図2に示されており、ここでは、血管の中心からサブボリュームから始まる血管管腔100のサブボリューム1乃至5が取得される。血管中心は、そのユーザ指定によって識別することができる。例えば、ユーザは、血管壁を示す血管のBモード画像を見ることができる。ユーザは血管の中心に見える位置でカーソルをクリックし、この識別は、超音波システムによって使用されて、取得が開始する領域を区別する。あるいは、自動化される技術を使用することができる。例えば、取得前に、一連のドップラービームが血管全体から送受信され、全てのビームに沿って速度推定値を生成するように処理されるドップラーである。次いで、最高速度を有するビーム上の空間位置は血管中心を画定するものとして使用され、次いで、サブボリューム取得はこの位置から外側に進む。これらの技法又は別の技法の1つによって取得される血管中心は
図2において「×」でマークされ、次いで、取得は血管中心を含むサブボリューム1の取得で開始する。サブボリュームのフロー(速度)データの一時的に異なる取得が、心周期のフェーズの完全なセットに対して実行される。その後、後続のサブボリュームの獲得は、この例ではサブボリューム2、3、4、及び5を含む、中間位置から外向きに継続する。図面からわかるように、最初に取得されるサブボリュームは最大量のフローデータを含み、周辺サブボリューム4及び5は、血管の総容量フローに対する最小の寄与を含む。
【0031】
図3は、異なるサブボリュームのフロー信号レベルの振幅によって表される、ボリュームフローコンテンツにおけるこれらの差を示す。第1のサブボリュームのフロー信号81は最大の振幅を示すことが見られ、サブボリューム2及び3のフロー信号82及び83はわずかに小さい振幅である。周辺サブボリューム4及び5は流動相のあいまいさの最大の可能性と同様に、最小の振幅、従って、総容量流に対する最小の寄与を有する流動信号84及び85を示す。このため、これらの周辺サブボリュームからのデータが最後に取得されるべきものであるのは、運動効果の最小化と同様に、この理由によるものである。
【0032】
また、
図3では、流速がピーク収縮期でピークに達する収縮フェーズが各サブボリューム取得間隔の時間的中間にあることが分かる。このサンプリングタイミングは、有利にはボリューム流量が最大である収縮フェーズの間の流量の完全な取得をもたらす。他の心位相のタイミングで起こりうる不正確さは、4つの異なる段階的なアクイジションのうち80のフロープロファイルを示した
図4に示されている。
図4aは、心拍数の推定値が実際の心拍数よりも大きい状況を示す。心拍数は実際の心拍数よりも速いと推定されるので、サブボリューム取得の間隔は太字で示されるプロファイルの部分80aによって示されるように、そうべきであるよりもより短い。その結果、収集間隔は拡張フェーズのいくつかの相を省略し、得られたデータはより大きな収縮フェーズ流量によって過度に支配される。その結果、ボリューム流量は、副ボリュームについて過大評価されることになる。心拍数の過大評価はまた、
図4bの状況をもたらし得、ここで、80bの間隔の間の取得は、いくつかの収縮フェーズ情報(この例では収縮フェーズの後半)を失う。その結果、ボリューム流量は、副ボリュームに対して過小評価される。
図4cは、心拍数が実際の心拍数よりも少ない(遅い)と推定される状況を示す。その結果、取得間隔は、1心周期よりも大きくなる。この例では、収縮フェーズがサブボリュームが80cの取得間隔中にサンプリングされ、ボリュームフローが過大評価されるときに過大サンプリングされる。
図4dは、心拍数が実際の心拍数未満であると推定される別の状況を示す。サブボリュームは、太いフロープロファイル線80dの取得間隔中にサンプリングされる。この場合、サブボリュームは拡張フェーズ中に過剰にサンプリングされ、その結果、過剰な拡張フェーズデータが含まれるために、ボリューム流量が過小評価される。
【0033】
したがって、正確な心拍数情報は、正確なボリューム流量評価にとって重要であることが分かる。本発明のさらなる態様によれば、心拍数が超音波信号情報から決定されると、心拍数推定は、各サブボリューム取得中に連続的に更新されて、心拍間のより長い又はより短い間隔の発生に対して適切に調整される。心拍数推定は米国特許第9,357,978号公報に記載されているように、Mモードデータから推定することができる。 これは、ボリューム流量取得が始まる前でさえも心拍数が推定され、それによって、心拍数と適切に同期した第1のサブボリュームの取得を可能にする、バックグラウンドで行うことができる。心拍数を決定する別の方法は各サブボリューム取得中にフロープロファイル信号を連続的に計算し、この更新される情報を使用して、次の取得を心臓のフェーズと適切に同期させることである。この技術の一例を
図5に示す。この例では第1のサブボリュームが2つの心周期にわたって獲得され、第1のサブボリュームは収縮フローフェーズ801を示し、これは時間T1時にピークとなり、第2のサブボリュームは時間T2時にピークとなる収縮フローフェーズ802を示す。2つの収縮期ピークは、フロープロファイル信号のピーク検出によって検出され、ピーク間隔ΔTが決定される。次に、第2のサブボリュームの獲得の開始時間を、T2の発生時間と、ΔT区間の関数として設定する。好ましくはΔT間隔の割合は半分であり、これは第2のサブボリュームの取得を拡張フェーズの中間から開始させる。このように、rを0.5に設定したときにT2+rΔTを計算すると、次のサブボリュームの取得が拡張フェーズの中間から始まり、
図5の波形803の間隔にわたって次のサブボリュームをサンプリングすることになり、このタイミングは有利なことに、第2のサブボリュームのサンプリングをもたらし、その収縮フェーズは取得期間の中間に生じ、収縮フェーズのすべてがサンプリングされることを保証する。
【0034】
図6は、サブボリューム取得タイミングを確立するためのフロープロファイル波形の使用の第2の例を提供する。この事例では、サブボリューム1の獲得がフロー信号の収縮ピークの直後のT1´から開始する。次の収縮フェーズの同水準が検出され、これは時間T2´で発生し、T2´とT1´の間のインターバル(間隔)のT1´とT2´との間のインターバルΔTを決定する。方程式T2 + rΔTが計算され、86 に示すように、第二のサブボリュームを取得する開始時刻が生成される。第1のサブボリュームはサブボリューム取得間隔の中間に時間的に位置する収縮フェーズでサンプリングされないが、適切にフェーズされる取得は第2及びすべての後続のサブボリュームについて生じる。
【0035】
図7には、本発明の原理に従って構成される超音波システムがブロック図形式で示されている。超音波を送信し、エコー情報を受信するために、超音波プローブ10内にトランスデューサアレイ12が設けられている。トランスデューサアレイ12は、仰角及び方位角の両方で、三次元でスキャン可能なトランスデューサ素子のアレイである。トランスデューサアレイ12は、アレイ素子による信号の送受信を制御するプローブ内のマイクロビーム形成器14に結合される。マイクロビーム成形器は米国特許5,997,479(Savordら)、6,013,032(Savord)、及び6,623,432(Powersら)に記載されているように、トランスデューサ素子のグループ又は「パッチ」によって受信される信号の少なくとも部分的なビーム成形が可能である。マイクロビーム形成器は、プローブケーブルによって、伝送と受信を切り替え、高エネルギー伝送信号から主ビーム形成器18を保護する伝送/受信(T/R)スイッチ16に結合される。マイクロビームフォーマ14の制御の下でトランスデューサアレイ12からの超音波ビームの送信はT/Rスイッチ及びメインビームフォーマ18に結合されるビームフォーマコントローラ17によって導かれ、このコントローラはユーザインターフェース又は制御パネル38のユーザの操作から入力を受け取る。送信制御器によって制御される送信特性の中には、送信波形の方向、数、間隔、振幅、位相、周波数、極性、及びダイバーシチがある。パルス伝送の方向に形成されるビームはトランスデューサアレイから真っ直ぐ前方に、又はより広いセクタ視野のためのティーなしビームの両側で異なる角度でステアリングされてもよい。トランスデューサ素子の連続したグループによって受信されるエコーは、それらを適切に遅延させ、次いでそれらを組み合わせることによってビーム形成される。
【0036】
各パッチからマイクロビーム形成器14によって生成される部分的にビーム形成される信号は、主ビーム形成器18に結合され、ここで、トランスデューサ素子の個々のパッチからの部分的にビーム形成される信号が完全にビーム形成されるコヒーレントエコー信号に結合される。例えば、メインビーム形成器18は128のチャネルを有してもよく、その各チャネルは12のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成される信号を受信する。このようにして、2次元マトリックスアレイトランスデューサの1500以上のトランスデューサ素子によって受信される信号は、単一ビーム形成信号に効率的に寄与することができる。
【0037】
コヒーレントエコー信号は信号プロセッサ20によって信号処理され、これはディジタルフィルタによるフィルタリングと、空間又は周波数合成によるノイズ低減とを含む。また、信号プロセッサは、空間合成又は周波数合成などによってスペックル低減を実行することもできる。信号プロセッサ20のデジタルフィルタは例えば、米国特許第5,833,613号(Averkiouら)に開示されているタイプのフィルタとすることができる。次いで、エコー信号は直交帯域フィルタ(QBP)22に結合される。QBPは、r.f.エコー信号データの帯域制限、エコー信号データの同相及び直交一対(I及びQ)の生成、及びディジタルサンプルレートのデシメートの3つの機能を実行する。QBPは2つの別々のフィルタを含み、1つは同相サンプリングを生成し、もう1つは直交サンプリングを生成し、各フィルタはFIRフィルタを実装する複数の乗算器‐累算器(MAC)によって形成される。
【0038】
ビーム形成され、処理されるコヒーレントエコー信号は、一対の画像データプロセッサに結合される。Bモードプロセッサ26は、組織などの体内の構造のBモード画像のための信号データを生成する。Bモードプロセッサは、(I2 +Q2)1/2の形式でエコー信号振幅を計算することによって、直交復調されるI及びQ信号成分の振幅(包絡線)検波を実行する。直交エコー信号成分もドップラープロセッサ24に結合される。ドップラープロセッサ24は画像フィールド内の離散点からのエコー信号のアンサンブルを記憶し、これらのアンサンブルは、高速フーリエ変換(FFT)プロセッサを用いて画像内の点におけるドップラーシフトを推定するために使用される。アンサンブルが取得されるレートによって、システムが画像内で正確に測定して描写できる動きのレート範囲が決まる。ドップラーシフトは画像フィールド内の点における動き、例えば、血流及び組織の動きに比例する。カラードップラー画像データの場合、血管内の各点における推定ドップラーフロー値は、ルックアップテーブルを使用してフィルタリングされ、色値に変換される。ウォールフィルタは、流動する血液を撮像するときに血管の壁の低周波運動などの運動がそれより上又は下で拒絶される調整可能なカットオフ周波数を有する。Bモード画像データ及びドップラー流量値は所望の表示形式、例えば直線表示形式又は扇形表示形式で表示するために、それらの取得R・θ座標からBモード及びドップラーサンプルをデカルト座標(x,y)座標に変換するスキャン変換器28に結合される。Bモード画像又はドップラー画像のいずれかが単独で表示されてもよく、又はカラードップラーオーバレイが画像中のBモード処理される組織及び血管中の血流を示す解剖学的位置合わせで一緒に示されてもよい。別の表示可能性は、異なるように処理される同じ解剖学的構造の並列画像を表示することである。この表示形式は、画像を比較する場合に便利である。スキャン変換される画像データはBモード及びドップラーデータの両方であり、3D画像データメモリ30に結合され、記憶され、そこで、画像データ値が取得される空間位置に従ってアドレス指定可能なメモリ位置に記憶される。3Dスキャンからの画像データはボリュームレンダラ32によってアクセスすることができ、これは、3Dデータセットのデータ値を、米国特許6,530,885(Entrekinら)明細書に記載されているように、所与の基準点から見て、投影される3D画像に変換する。ボリュームレンダラ32によって生成される3D画像及びスキャンコンバータ28によって生成されるデータからの2D画像は画像ディスプレイ36上に表示するために、さらなるエンハンスメント、バッファリング、及び一時記憶のために、ディスプレイプロセッサ34に結合される。3D画像データは、ユーザ制御38からのユーザ入力に応答して、3Dデータセットからユーザ指定画像平面の画像データを抽出することができるマルチプレーナリフォーマッタ48にも結合される。この画像データは、選択されるMPR画像を表示するために表示プロセッサ34に結合され、MPR画像の平面は以下に説明するように、ボリューム流量の推定に使用される。
【0039】
本発明によれば、プロセッサ24及び26によって生成されるBモード及びドップラーデータは、血管中心ロケータ44に結合される。これにより、血管中心ロケータは、いくつかのことを行うことができる。1つは、ユーザが血管の中心であると信じる血管のBモード画像内の点をユーザがクリックできるようにすることである。このユーザ動作を示す信号はユーザインターフェース38から血管中心ロケータに結合され、識別される血管中心点はロケータに記憶され、サブボリュームセレクタ46に結合される。血管中心ロケータ44の別の動作は血管の迅速なドップラースキャンの後に、ドップラープロセッサから速度データを受信することである。ロケータ44は、このデータを分析して、最も高い流速を有する容器内の空間位置を決定する。その場合、この空間的位置は、サブボリューム選択器46に結合され、血管中心として使用される。血管中心ロケータに結合されるBモード及びドップラーデータは空間位置座標がディスプレイ36によって使用される座標に対応するように、スキャン変換によって処理されるものとすることができることが理解されよう。したがって、血管中心ロケータ44はユーザ入力又は自動化される方法のいずれかを使用して、血管中心を決定し、その情報をサブボリュームセレクタ46に結合することができる。
【0040】
また、マルチプレーナリフォーマッタ48は、ボリューム流量演算器40に結合される。ボリューム流量計算器はまた、ドップラープロセッサ24からドップラー速度データを受信し、したがって、ガウスの定理を使用して血管のB面又はC面を通るボリューム血流を計算することができる。ボリューム流量データの場合、ガウスの定理は、以下のように計算される。
ここで、Qは例えば、ミリリットル/秒でのボリューム流量であり、vは流速であり、表面Sは、血管管腔を通る選択される平面である。したがって、血管と交差する平面を通るボリューム流量は心周期の各新しいフェーズについて新しいデータで更新されて、時間の関数としてQの流量プロファイル曲線を生成することができ、心周期全体のフェーズにわたる流量を合計して、心周期当たりのボリューム流量を計算することができる。
【0041】
ボリューム流量計算器40によって生成されるボリューム流量の流量データは、グラフィックス生成器49に結合され、
図4に示されるような流量プロファイル曲線を生成してディスプレイ36に表示する。グラフィックス生成器はまた、カーソル、測定寸法、検査パラメータ、及び患者名のようなものための超音波撮像と共に表示するためのグラフィックスを生成する。
【0042】
流量プロファイル曲線データはまた、心拍数計算器42に結合され、心拍数計算器は、心電図モニタ信号又は心拍数値のユーザ入力がない場合に心拍数を推定するために使用される。心拍数計算器はフロープロファイル曲線データを使用して、フロープロファイルの収縮期ピークを検出し、収縮期ピーク間の間隔ΔTを検出し、上述のように連続するサブボリューム取得の開始時間を計算する。心拍計タイミングデータはサブボリュームセレクタ46に結合され、これは血管の全体積領域をスキャンするのに必要な各サブボリュームをいつ取得するかを決定する。血管中心ロケータ44からのデータは第1のサブボリュームが取得されるべき場所(すなわち、血管中心の周り)をサブボリューム選択器に通知し、心拍数計算器42からのデータは各サブボリューム取得のタイミングをサブボリューム選択器に通知し、その結果、収縮フェーズは少なくとも第2及び後続のサブボリューム取得のために、各サブボリューム取得の中間で取得される。この情報に基づいて、サブボリュームセレクタは、各サブボリューム取得がいつどこで実行されるべきかをビームフォーマコントローラに通知する。それによって、
図7の超音波システムは体積流量プロファイル曲線の正確な推定のために、体積流量データのボリューム画像取得及びアセンブリを行う。