(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】電子機械ブレーキシステムおよび車両
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20240307BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20240307BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240307BHJP
G05G 1/38 20080401ALI20240307BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20240307BHJP
【FI】
B60T13/74 G
B60T1/06 G
G05G1/30 E
G05G1/38
G05G5/03 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116058
(22)【出願日】2022-07-21
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】202110832270.9
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521531171
【氏名又は名称】ファーウェイ デジタル パワー テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ユィホォイ
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジエンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨンジエン
(72)【発明者】
【氏名】ニ,ホォイ
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088055(JP,A)
【文献】米国特許第04395883(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104859622(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
B60T 13/00-13/74
G05G 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルと、電子ブレーキ機構と、機械ブレーキ機構と、ブレーキと、スイッチ機構とを備える電子機械ブレーキシステムであって、
前記スイッチ機構は、第1の状態と第2の状態とを有し、前記電子ブレーキ機構が正常に動作しているとき前記スイッチ機構は前記第1の状態にあり、前記電子ブレーキ機構が故障しているとき前記スイッチ機構は前記第2の状態にあり、
前記電子ブレーキ機構は、コントローラと電子信号センサとを含み、前記コントローラは、前記電子信号センサおよび前記ブレーキに電気的に接続され、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記電子信号センサは、前記ブレーキペダルの制動信号を受信し、前記制動信号を前記コントローラに送信するように構成され、前記コントローラは、前記制動信号に基づいて前記ブレーキを制動するように制御し、
前記機械ブレーキ機構は、トランスミッションアセンブリとアクチュエータとを含み、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記アクチュエータは、前記トランスミッションアセンブリを用いて前記ブレーキペダルと伝達接続されており、前記アクチュエータは、前記ブレーキに接続され、前記ブレーキを制動するように制御
し、
前記スイッチ機構は、ハウジングと、第1の摺動ブロックと、両面ラチェットと、電磁スイッチアセンブリとを備え、
前記第1の摺動ブロックの第1の端部は、接続ロッドを用いて前記ブレーキペダルに接続され、前記接続ロッドは、前記第1の摺動ブロックを駆動して前記ハウジング上を第1の方向に摺動させるように構成され、前記第1の摺動ブロックの第2の端部は、前記両面ラチェットの第1の端部に接続され、前記両面ラチェットの第1面は、フィードバック機構に接続され、前記両面ラチェットの第2面は、前記トランスミッションアセンブリに接続され、
前記電磁スイッチアセンブリの第1の端部は、前記第1の摺動ブロックに配置され、前記電磁スイッチアセンブリの第2の端部は、前記両面ラチェットに配置され、前記電磁スイッチアセンブリは、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記スイッチ機構を前記トランスミッションアセンブリに接続するように構成される、
電子機械ブレーキシステム。
【請求項2】
フィードバック機構をさらに備え、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記フィードバック機構は、前記ブレーキペダルと伝達接続されており、前記フィードバック機構は、前記ブレーキペダルに反力を与えるように構成される、請求項1に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項3】
前記電磁スイッチアセンブリは、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記スイッチ機構を前記
フィードバック機構に接
続するように構成される、
請求項1に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項4】
前記電磁スイッチアセンブリは、位置決めブロックと、電磁石と、金属駆動ロッドとを備え、
前記位置決めブロックは、前記第1の摺動ブロックに締結され、前記電磁石は前記位置決めブロックに接続され、前記電磁石と前記位置決めブロックとの間に間隙が存在し、前記金属駆動ロッドの第1の端部は前記間隙に位置し、前記金属駆動ロッドの第2の端部は前記両面ラチェットの第1の端部に接続され、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記コントローラは、前記電磁石に流れるように設定電流を制御し、したがって、前記金属駆動ロッドの前記第1の端部が前記電磁石に接続され、前記金属駆動ロッドの前記第2の端部が前記両面ラチェットを駆動して前記フィードバック機構に接続する、
請求項3に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項5】
前記電磁スイッチアセンブリは、第1の弾性部をさらに含み、前記第1の弾性部の第1の端部は前記第1の摺動ブロックに接続され、前記第1の弾性部の第2の端部は前記両面ラチェットの前記第2面に接続され、前記電子ブレーキ機構が故障した場合、前記第1の弾性部は前記スイッチ機構を駆動して前記第2の状態に切り替える、請求項4に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項6】
前記ブレーキは、モータと、減速機と、ブレーキアセンブリとを備え
前記モータの出力軸は、前記減速機と伝達接続されており、前記減速機の出力軸は、前記ブレーキアセンブリに接続され、
前記コントローラは、前記モータに電気的に接続され、前記アクチュエータは、前記減速機の前記出力軸に接続される、
請求項1に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項7】
ブレーキペダルと、電子ブレーキ機構と、機械ブレーキ機構と、ブレーキと、スイッチ機構とを備える電子機械ブレーキシステムであって、
前記スイッチ機構は、第1の状態と第2の状態とを有し、前記電子ブレーキ機構が正常に動作しているとき前記スイッチ機構は前記第1の状態にあり、前記電子ブレーキ機構が故障しているとき前記スイッチ機構は前記第2の状態にあり、
前記電子ブレーキ機構は、コントローラと電子信号センサとを含み、前記コントローラは、前記電子信号センサおよび前記ブレーキに電気的に接続され、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記電子信号センサは、前記ブレーキペダルの制動信号を受信し、前記制動信号を前記コントローラに送信するように構成され、前記コントローラは、前記制動信号に基づいて前記ブレーキを制動するように制御し、
前記機械ブレーキ機構は、トランスミッションアセンブリとアクチュエータとを含み、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記アクチュエータは、前記トランスミッションアセンブリを用いて前記ブレーキペダルと伝達接続されており、前記アクチュエータは、前記ブレーキに接続され、前記ブレーキを制動するように制御し、
前記ブレーキは、モータと、減速機と、ブレーキアセンブリとを備え
前記モータの出力軸は、前記減速機と伝達接続されており、前記減速機の出力軸は、前記ブレーキアセンブリに接続され、
前記コントローラは、前記モータに電気的に接続され、前記アクチュエータは、前記減速機の前記出力軸に接続され、
前記トランスミッションアセンブリは、第1のリールと、第1のギアと、第1のラックと、ケーブルとを備え、
前記第1のギアは前記第1のリールに固定配置され、前記第1のギアおよび前記第1のリールは第1の回転軸を用いてハウジングに回転可能に配置され、前記第1のラックの第1面は前記第1のギアに係合し、前記第1のラックの第2面は両面ラチェットの第2面に係合し、
前記ケーブルの第1の端部は前記第1のリールに締結され、前記ケーブルの第2の端部は前記アクチュエータに接続され、前記両面ラチェットが前記第1のラックを駆動して第1の方向に移動させると、前記第1のラックが前記第1のギアを駆動して回転させ、その結果、前記ケーブルが前記第1のリールに巻き取られる、
電子機械ブレーキシステム。
【請求項8】
ブレーキペダルと、電子ブレーキ機構と、機械ブレーキ機構と、ブレーキと、スイッチ機構とを備える電子機械ブレーキシステムであって、
前記スイッチ機構は、第1の状態と第2の状態とを有し、前記電子ブレーキ機構が正常に動作しているとき前記スイッチ機構は前記第1の状態にあり、前記電子ブレーキ機構が故障しているとき前記スイッチ機構は前記第2の状態にあり、
前記電子ブレーキ機構は、コントローラと電子信号センサとを含み、前記コントローラは、前記電子信号センサおよび前記ブレーキに電気的に接続され、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記電子信号センサは、前記ブレーキペダルの制動信号を受信し、前記制動信号を前記コントローラに送信するように構成され、前記コントローラは、前記制動信号に基づいて前記ブレーキを制動するように制御し、
前記機械ブレーキ機構は、トランスミッションアセンブリとアクチュエータとを含み、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記アクチュエータは、前記トランスミッションアセンブリを用いて前記ブレーキペダルと伝達接続されており、前記アクチュエータは、前記ブレーキに接続され、前記ブレーキを制動するように制御し、
前記ブレーキは、モータと、減速機と、ブレーキアセンブリとを備え
前記モータの出力軸は、前記減速機と伝達接続されており、前記減速機の出力軸は、前記ブレーキアセンブリに接続され、
前記コントローラは、前記モータに電気的に接続され、前記アクチュエータは、前記減速機の前記出力軸に接続され、
前記アクチュエータは、固定シェルと、ラチェットホイールと、駆動板と、第2の摺動ブロックと、第2の弾性部とを備え、前記固定シェルは前記減速機の前記出力軸側に締結され、前記ラチェットホイールは前記減速機の前記出力軸に接続され、前記ラチェットホイールと前記固定シェルとの間に取付溝が形成され、前記第2の摺動ブロックは前記取付溝内に配置され、前記第2の摺動ブロックの第1の端部は、前記第2の弾性部の第1の端部に接続され、前記第2の弾性部の第2の端部は、前記固定シェルに接続され、
前記駆動板の第1の端部は、第2の回転軸を用いて、前記第2の摺動ブロックの前記第2の弾性部に近い端部に回転可能に接続され、前記駆動板の第2の端部は、前記ラチェットホイールから離れており、前記駆動板の前記第2の端部は、ケーブルに接続され、前記駆動板の第3の端部は、前記ラチェットホイールに面し、前記ラチェットホイールと協働するためのラチェットが設けられている、
電子機械ブレーキシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、第3の弾性部をさらに備え、前記第3の弾性部の第1の端部は前記駆動板に接続され、前記第3の弾性部の第2の端部は前記第2の摺動ブロックの第1の端部に接続され、前記第3の弾性部は、前記第2の回転軸に接触し、したがって、前記第3の弾性部が力蓄積状態となり、前記ラチェットホイールから離れる力を前記駆動板に与える、請求項8に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項10】
前記固定シェルは、前記ケーブルが通過するための位置制限板を有し、前記アクチュエータは、第4の弾性部をさらに備え、前記第4の弾性部は、前記ケーブルと前記駆動板との間の接続部分と、前記位置制限板の前記駆動板に面する側との間に位置し、前記第4の弾性部は、前記ケーブルにスリーブされる、請求項8に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項11】
前記アクチュエータは、第1のラチェットディスクと、第2のラチェットディスクと、前記第1のラチェットディスクを前記第2のラチェットディスクに接続するように構成された第5の弾性部とをさらに備え、
前記第2のラチェットディスクにフランジが配置され、前記フランジおよび前記第2のラチェットディスクは同軸上に配置され、前記フランジは前記第2のラチェットディスクから突出しており、前記フランジは前記減速機の前記出力軸に接続され、前記第1のラチェットディスクは、前記減速機の前記出力軸にスリーブされ、前記第1のラチェットディスクと前記第2のラチェットディスクとがガイド機構を用いて接続され、
前記第1のラチェットディスクは前記ケーブルに接続され、前記ケーブルは、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記第1のラチェットディスクを引っ張って、前記ガイド機構を通して前記第2のラチェットディスクの位置に移動させ、前記第1のラチェットディスク側に配置され前記第2のラチェットディスクに面する第1のラチェットが、前記第2のラチェットディスク側に配置され前記第1のラチェットディスクに面する第2のラチェットと協働して、前記第2のラチェットディスクを駆動して回転させるように構成される、
請求項8に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項12】
前記第1のラチェットディスクに前記減速機の前記出力軸が貫通する貫通孔が配置され、前記貫通孔の内壁にガイドボールが配置され、前記フランジの側壁に螺旋状のガイド溝が配置され、前記ガイドボールと前記ガイド溝とが前記ガイド機構を形成する、請求項11に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項13】
前記第1のラチェットディスクに取付耳がさらに配置され、前記ケーブルに接続される開口部が前記取付耳に配置される、請求項11に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項14】
前記フィードバック機構は、第2のラックと、第2のギアと、第2のリールとを含み、前記第2のリールおよび前記第2のギアは、第3の回転軸を用いて前記ハウジングに接続され、前記第2のラックの第1面は、前記第2のギアに接続され、前記第2のラックの第2面は、前記両面ラチェットの前記第1面に接続される、請求項5に記載の電子機械ブレーキシステム。
【請求項15】
電子機械ブレーキシステムを含む車両であって、前記電子機械ブレーキシステムは、ブレーキペダルと、電子ブレーキ機構と、機械ブレーキ機構と、ブレーキと、スイッチ機構とを備え、
前記スイッチ機構は、第1の状態と第2の状態とを有し、前記電子ブレーキ機構が正常に動作しているとき前記スイッチ機構は前記第1の状態にあり、前記電子ブレーキ機構が故障しているとき前記スイッチ機構は前記第2の状態にあり、
前記電子ブレーキ機構は、コントローラと電子信号センサとを含み、前記コントローラは、前記電子信号センサおよび前記ブレーキに電気的に接続され、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記電子信号センサは、前記ブレーキペダルの制動信号を受信し、前記制動信号を前記コントローラに送信するように構成され、前記コントローラは、前記制動信号に基づいて前記ブレーキを制動するように制御し、
前記機械ブレーキ機構は、トランスミッションアセンブリとアクチュエータとを含み、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記アクチュエータは、前記トランスミッションアセンブリを用いて前記ブレーキペダルと伝達接続されており、前記アクチュエータは、前記ブレーキに接続され、前記ブレーキを制動するように制御
し、
前記スイッチ機構は、ハウジングと、第1の摺動ブロックと、両面ラチェットと、電磁スイッチアセンブリとを備え、
前記第1の摺動ブロックの第1の端部は、接続ロッドを用いて前記ブレーキペダルに接続され、前記接続ロッドは、前記第1の摺動ブロックを駆動して前記ハウジング上を第1の方向に摺動させるように構成され、前記第1の摺動ブロックの第2の端部は、前記両面ラチェットの第1の端部に接続され、前記両面ラチェットの第1面は、フィードバック機構に接続され、前記両面ラチェットの第2面は、前記トランスミッションアセンブリに接続され、
前記電磁スイッチアセンブリの第1の端部は、前記第1の摺動ブロックに配置され、前記電磁スイッチアセンブリの第2の端部は、前記両面ラチェットに配置され、前記電磁スイッチアセンブリは、前記スイッチ機構が前記第2の状態にあるとき、前記スイッチ機構を前記トランスミッションアセンブリに接続するように構成される、
車両。
【請求項16】
フィードバック機構をさらに含み、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記フィードバック機構は、前記ブレーキペダルと伝達接続されており、前記フィードバック機構は、前記ブレーキペダルに反力を与えるように構成される、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記電磁スイッチアセンブリは、前記スイッチ機構が前記第1の状態にあるとき、前記スイッチ機構を前記
フィードバック機構に接
続するように構成される、
請求項16に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、制動技術の分野に関し、特に、電子機械ブレーキシステムおよび車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキシステムは、車両の重要な部品の1つとして、車両の全体的な性能ならびに生命および財産の安全性に直接関結び付く。ブレーキシステムは、一般に、機械のみによる制動と電子機械制動とに分けられる。電子機械制動は、システムに作用するモータからの電源を用いてブレーキディスクをしっかりと押圧して、必要な制動力を発生させるものである。
【0003】
現在、車両は、一般に、電子機械制動のみを用いて制動されるか、または電子機械制動および油圧バックアップブレーキを用いて制動される。電子機械制動のみを用いて車両を制動する場合、電子機械制動が故障すると、重大な安全上の問題が発生する可能性がある。しかしながら、油圧システムの密封要件により、電子機械制動および油圧バックアップブレーキを用いて制動される車両は、複雑な機械構造を有する可能性があり、低い信頼性につながる。加えて、定期的なメンテナンスおよびブレーキ液の交換が必要となるため、コストが高くなる。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、電子機械ブレーキシステムおよび車両を提供し、ここで、電子機械ブレーキシステムおよび機械ブレーキシステムが組み合わされる。したがって、運転安全性を向上させることができるとともに、低コストで信頼性の高い機械ブレーキシステムを提供することができる。
【0005】
第1の態様によれば、本出願は、ブレーキペダルと、機械ブレーキ機構と、電子ブレーキ機構と、ブレーキと、第1の状態および第2の状態を有するスイッチ機構とを含む電子機械ブレーキシステムを提供する。電子ブレーキ機構が正常に動作しているときスイッチ機構は第1の状態にあり、電子ブレーキ機構が故障しているときスイッチ機構は第2の状態にある。電子ブレーキ機構は、コントローラと電子信号センサとを含む。コントローラは、電子信号センサおよびブレーキに接続される。スイッチ機構が第1の状態にあるとき、電子信号センサは、ブレーキペダルの制動信号を受信し、受信した制動信号をコントローラに送信し得、コントローラは、制動信号に基づいてブレーキを制動するように制御し得る。電子ブレーキ機構が故障すると、スイッチ機構は第2の状態に切り替わり得る。機械ブレーキ機構のトランスミッションアセンブリは、ブレーキペダルと伝達接続されていてもよく、機械ブレーキ機構のアクチュエータは、トランスミッションアセンブリおよびブレーキに接続され、ブレーキを作動させて制動する。機械ブレーキ機構および電子機械ブレーキシステムにより、電気システムが適切に動作しているとき、電子ブレーキ機構は、適切に動作し、ブレーキペダルの制動信号を受信し得、したがって、コントローラは、ブレーキを制動するように制御する。電気システムが適切に動作することができず、電子ブレーキ機構が故障すると、機械ブレーキ機構のトランスミッションアセンブリはブレーキペダルに接続され得、トランスミッションアセンブリに接続されたアクチュエータは、ブレーキに接続され、ブレーキを作動させて制動し得る。これに鑑みて、電子機械ブレーキシステムおよび機械ブレーキシステムは、それぞれ、電気システムが適切に動作しているときおよび電気システムが適切に動作することができないときに、ブレーキを制動するように制御し、安全性を向上させることができる。加えて、機械ブレーキシステムには油圧機構が含まれておらず、したがって、段付きピストンまたは油回路などを配置する必要がない。したがって、構造の複雑さを低減することができる。
【0006】
ある実施形態では、電子機械ブレーキシステムは、フィードバック機構をさらに含み得る。電気システムが適切に動作し、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、フィードバック機構は、ブレーキペダルと伝達接続され得る。ブレーキペダルが運転者によって加えられる制動力を受けると、フィードバック機構は、ブレーキのものと同様の制動力を生成し、その力を運転者にフィードバックして、運転者の経験を向上させ得る。
【0007】
前述の実施形態では、スイッチ機構は、ハウジングと、第1の摺動ブロックと、両面ラチェットと、電磁スイッチアセンブリとを含み得る。ハウジングには第1の摺動ブロックが第1の方向に摺動するために使用される摺動溝が配置される。第1の摺動ブロックの第1の端部は、接続ロッドを用いてブレーキペダルに接続され、第1の摺動ブロックの第2の端部は、両面ラチェットの第1の端部に接続される。両面ラチェットの第1面および第2面はそれぞれ、フィードバック機構およびトランスミッションアセンブリに接続されるように構成される。電磁スイッチアセンブリの第1の端部は第1の摺動ブロックに接続され、電磁スイッチアセンブリの第2の端部は両面ラチェットに接続される。電気システムが適切に動作し、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、ブレーキペダルは、第1の摺動ブロックを駆動して接続ロッドを用いて第1の方向に摺動させ得、電磁スイッチアセンブリは、第1の摺動ブロックに接続された両面ラチェットをフィードバック機構に接続して、運転者にフィードバック力を与え得る。電気システムが適切に動作することができず、スイッチ機構が第2の状態にあるとき、ブレーキペダルは、第1の摺動ブロックを駆動して接続ロッドを用いて第1の方向に摺動させ得、電磁スイッチアセンブリは、第1の摺動ブロックに接続された両面ラチェットをトランスミッションアセンブリに接続し得、トランスミッションアセンブリは、アクチュエータを駆動し得、アクチュエータは、ブレーキを作動させて制動し、安全性を確保し得る。
【0008】
電磁スイッチアセンブリは、電磁石と、位置決めブロックと、金属駆動ロッドと、第1の弾性部とを含み得る。位置決めブロックは、第1の摺動ブロックに締結され、電磁石は、第1の摺動ブロックから離れた位置決めブロックの端部に接続される。電磁石は、両面ラチェットの第2面に位置する。金属駆動ロッドの第1の端部を収容するための間隙が電磁石と位置決めブロックとの間に存在し、金属駆動ロッドの第2の端部は両面ラチェットに接続され得る。第1の弾性部の第1の端部は第1の摺動ブロックに接続され、第1の弾性部の第2の端部は両面ラチェットの第2面に接続される。電気システムが適切に動作し、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、コントローラは、電磁石に流れるように設定電流を制御し、したがって、電磁石は、磁気を帯びて、金属駆動ロッドの第1の端部を引き付ける。これに鑑みて、金属駆動ロッドの第2の端部は、両面ラチェットを駆動して、両面ラチェットの第1面に向かって移動させ、フィードバック機構に接続させることができる。電気システムが適切に動作することができず、スイッチ機構が第2の状態にあるとき、第1の弾性部は力蓄積状態にあり、両面ラチェットを引っ張って両面ラチェットの第2面をトランスミッションアセンブリに接続して、ブレーキが制動することができることを確実にすることができる。
【0009】
第1の弾性部はコイルばねであり得ることに留意されたい。
【0010】
ある実施形態では、ブレーキは、モータと、減速機と、ブレーキアセンブリとを含み得る。モータはコントローラに接続される。モータの出力軸は、減速機と伝達接続されており、減速機の出力軸は、ブレーキアセンブリおよびアクチュエータに接続される。電気システムが適切に動作しているとき、制動信号を受信した後、コントローラは、動作するようにモータを制御し得、モータは、減速機を用いてブレーキアセンブリを制動するように制御する。
【0011】
ブレーキアセンブリは、ボールねじ、摩擦シート、および摩擦ディスクを含み得ることに留意されたい。ボールねじは、減速機の出力軸に接続され得、摩擦シートを駆動して、制動のために摩擦ディスクにしっかりと押圧する。
【0012】
ある実施形態では、トランスミッションアセンブリは、第1のリールと、第1のギアと、第1のラックと、ケーブルと、第1の回転軸とを含み得る。第1のギアは第1のリールに締結され得、第1のギアおよび第1のリールは同軸上に配置される。第1の回転軸は、第1のギアおよび第1のリールを貫通し、したがって、第1のギアおよび第1のリールはハウジングに回転可能に配置される。第1のギアは、第1のラックの第1面に係合し、第1のラックの第2面は、両面ラチェットの第2面に係合し得る。ケーブルの第1の端部は、第1のリール上に固定配置され得、ケーブルの第2の端部は、アクチュエータに接続され得る。電気システムが適切に動作することができず、スイッチ機構が第2の状態にあるとき、両面ラチェットは、第1のラックを駆動して第1の方向に移動させ得、第1のラックは、第1のギアを駆動して回転させ得る。第1のギアは、第1のリールを駆動して回転させ得、第1のリールは、ケーブルを駆動して第1のリールに巻き取り得る。この場合、ケーブルは、アクチュエータを駆動して移動させ、ブレーキを制動するように制御し得る。
【0013】
アクチュエータは様々な構造を有し得る。例えば、アクチュエータは、固定シェルと、ラチェットホイールと、駆動板と、第2の摺動ブロックと、第2の弾性部と、第2の回転軸とを含む。固定シェルは、減速機の出力軸側に固定配置され得、ラチェットホイールは、減速機の出力軸に接続される。加えて、ラチェットホイールの外輪郭と固定シェルとの間に間隙が存在し、間隙は、第2の摺動ブロックを取り付けるために使用される取付溝を形成する。第2の摺動ブロックの第1の端部は、第2の弾性部の第1の端部に接続され得、第2の弾性部の第2の端部は、固定シェルに締結され得る。駆動板は、第1の端部と、第2の端部と、第3の端部とを有し得る。第2の回転軸は、駆動板の第1の端部を通して第2の摺動ブロックに接続され得、第2の回転軸は、第2の摺動ブロックの第2の弾性部に近い一端部に位置する。駆動板の第2の端部はケーブルに接続され、駆動板の第2の端部は、ラチェットホイールから離れた側に配置される。駆動板の第3の端部は、第1の端部および第2の端部から離れており、第3の端部は、ラチェットホイールと協働するためのラチェットを有する。ケーブルが第1のリールに巻き取られるとき、ケーブルは、駆動板を引っ張って、ラチェットホイールが位置する位置に移動させ、駆動板上のラチェットがラチェットホイールと協働することができるようにする。ケーブルが巻き取られると、ケーブルはラチェットホイールを駆動して回転させ、ラチェットホイールに接続された減速機の出力軸を駆動して回転させて、ブレーキアセンブリを制動するように制御し得る。
【0014】
第2の弾性部は引張ばねであってもよいことに留意されたい。ケーブルが駆動板を引っ張って駆動板上のラチェットがラチェットホイールと協働することを可能にし、駆動板を引っ張り続けてラチェットホイールを駆動して回転させるとき、駆動板は、第2の弾性部を引き伸ばしてエネルギーを蓄積する。制動が停止すると、第2の弾性部は、駆動板を初期位置に引っ張り得る。駆動板が初期位置にあるとき、駆動板のラチェットはラチェットホイールと協働せず、減速機は安定して動作することができるようにする。
【0015】
前述の実施形態では、アクチュエータは、第3の弾性部をさらに含み得る。第3の弾性部の第1の端部は、駆動板に接続され得、第3の弾性部の第2の端部は、第2の摺動ブロックの第1の端部に接続され得る。第3の弾性部は第2の回転軸とラチェットホイールとの間にあり、第3の弾性部は第2の回転軸と接触している。第2の回転軸は第3の弾性部をしっかりと押圧し続けるので、第3の弾性部は、第2の回転軸をラチェットホイールから離しておく力を与える。したがって、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、駆動板上のラチェットはラチェットホイールと接触せず、減速機の出力軸が、干渉なしにブレーキアセンブリを制動するように制御することを確実にし、したがって、アンチロックブレーキシステムまたは電子安定性コントローラが低トラクション路面上に制御不可能な領域を有さないようにする。
【0016】
アクチュエータは、第4の弾性部と位置制限板とをさらに含み得る。ケーブルは、位置制限板を通して駆動板に接続され得る。第4の弾性部は、ケーブルにスリーブされ、位置制限板と駆動板との間に位置する。ケーブルが第1のリールに巻き取られるとき、第4の弾性部が力によって圧縮される。ケーブルが第1のリールに巻き取られなくなると、第4の弾性部は、ケーブルを初期状態に復元させる力を与える。
【0017】
第3の弾性部は回転ばねであってもよく、第4の弾性部は引張ばねであってもよいことに留意されたい。
【0018】
アクチュエータは、第1のラチェットディスクと、第2のラチェットディスクと、第5の弾性部とをさらに含み得る。第2のラチェットディスクには、減速機の出力軸に接続可能なフランジが配置され、フランジは、第2のラチェットディスクと同軸上に配置される。フランジは、第2のラチェットディスクの減速機から離れた側から突出している。第1のラチェットディスクは、減速機の出力軸にスリーブされる。第5の弾性部は、第1のラチェットディスクと第2のラチェットディスクとの間に配置され、第1のラチェットディスクを第2のラチェットディスクに接続し得る。加えて、第1のラチェットディスクと第2のラチェットディスクとの間にはガイド機構が配置され、ガイド機構は、第1のラチェットディスクを第2のラチェットディスクに接続し得る。特定の実装形態では、第1のラチェットディスクはケーブルに接続される。電気システムが適切に動作することができず、スイッチ機構が第2の状態にあるとき、ケーブルは第1のリールに巻き取られる。ケーブルが第1のラチェットディスクを引っ張ると、第1のラチェットディスクが第2のラチェットディスクに対して回転し、第1のラチェットディスクが第2のラチェットディスクが位置する位置に向かって徐々に移動して、第1のラチェットディスク側に配置された第1のラチェットを第2のラチェットディスク側に配置された第2のラチェットと係合させ、第2のラチェットディスクを駆動して回転させ、さらに減速機の出力軸を駆動して回転させ、ブレーキアセンブリを制動するように制御する。
【0019】
ガイド機構は、フランジの側壁に配置されたガイド溝を含み得る。ガイド溝は螺旋状である。ガイド機構は、第1のラチェットディスクの貫通孔の内壁に配置されたガイドボールをさらに含み得る。ガイドボールは、ガイド溝に配置され得る。ケーブルが第1のラチェットディスクを引っ張ると、ガイドボールは、ガイド溝の延在方向に摺動し、第1のラチェットディスクを駆動して第2のラチェットディスクが位置する位置に向かって移動させ、第1のラチェットディスク側の第1のラチェットを第2のラチェットディスク側の第2のラチェットと係合させ、第2のラチェットディスクを駆動して回転させ、ブレーキアセンブリの制動を実行し得る。
【0020】
加えて、ケーブルと第1のラチェットディスクとの間の接続を容易にするために、第1のラチェットディスクに取付耳が配置され得、取付耳に開口部が配置され得、ケーブルは、開口部を用いて第1のラチェットディスクに接続される。
【0021】
第5の弾性部がばねであってもよいことに留意されたい。第1のラチェットディスクは、減速機の出力軸に接触していない。
【0022】
ある実施形態では、フィードバック機構は、第2のラックと、第2のギアと、第2のリールと、第3の回転軸とを含み得る。第2のギアおよび第2のリールは同軸上に配置され得、第3の回転軸は、第2のギアおよび第2のリールをハウジングに接続し得る。第2のラックの両側は、第2のギアおよび両面ラチェットにそれぞれ接続され得る。電気システムが適切に動作し、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、両面ラチェットは、第2のギアに係合して、第2のギアおよび第2のリールを駆動する。
【0023】
第2の態様によれば、本出願は車両をさらに提供し、モバイル端末は、前述の技術的解決策のいずれか1つにおける電子機械ブレーキシステムを有し得る。第1の態様において提供される電子機械ブレーキシステムにより、運転安全性能を向上させ、コストを削減することができる。したがって、電子機械ブレーキシステムを有する車両も同じ技術的効果を有する。ここでは詳細について改めて説明はしない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本出願の実施形態による電子機械ブレーキシステムの構造の概略図である。
【
図2】本出願の実施形態による電子機械ブレーキシステムにおけるスイッチ機構、フィードバック機構、およびトランスミッションアセンブリの構造の概略図である。
【
図3】本出願の実施形態による電子機械ブレーキシステムのアクチュエータの構造の概略図である。
【
図4】本出願の実施形態による電子機械ブレーキシステムのアクチュエータの別の構造の概略図である。
【
図5】
図4の第2のラチェットディスクの側面図である。
【
図6】
図4の第2のラチェットディスクの主図である。
【
図7】
図4の第1のラチェットディスクの側面図である。
【
図8】
図4の第1のラチェットディスクの主図である。
【
図9】本出願の実施形態による電子機械ブレーキシステムのブレーキの構造の概略図である。
【0025】
参照符号:
1-ブレーキ、10-モータ、11-減速機、12-ブレーキアセンブリ、2-スイッチ機構、20-ハウジング、21-両面ラチェット、22-第1の摺動ブロック、23-電磁スイッチアセンブリ、230-電磁石、231-位置決めブロック、232-金属駆動ロッド、233-第1の弾性部、3-ブレーキペダル、4-コントローラ、5-電子信号センサ、6-フィードバック機構、60-第2のラック、61-第2のギア、62-第3の回転軸、63-第2のリール、7-トランスミッションアセンブリ、70-第1のラック、71-第1の回転軸、72-第1のギア、73-第1のリール、74-ケーブル、8-アクチュエータ、80-固定シェル、81-第2の弾性部、82-第2の摺動ブロック、83-第3の弾性部、84-第2の回転軸、85-駆動板、850-ラチェット、86-第4の弾性部、87-ラチェットホイール、801-第1のラチェットディスク、802-第1のラチェット、803-第2のラチェットディスク、804-第2のラチェット、805-ガイドボール、806-取付耳、807-第5の弾性部、808-フランジ、8080-ガイド溝。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、以下では、添付の図面を参照して本出願をさらに詳細に説明する。
【0027】
運転安全性を向上させるために、電子機械制動を基礎として油圧ブレーキシステムが追加され、したがって、油圧ブレーキシステムおよび電子機械システムは、運転制動中に連動することができる。しかしながら、電子機械ブレーキ機構は油圧システムに干渉することができないため、凍結面や濡れたセラミックタイル面などの低トラクション路面では、車輪に対する制動力が十分に解放されず、車輪がロックされ、危険を生じさせる。加えて、油圧システムは、密閉の要求が高いため、機械構造を複雑にし、コストを増加させる。
【0028】
実施形態で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明することを意図したものであり、本出願を限定することを意図したものではない。本明細書および本出願の添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1つの(one)」、「1つの(a)」、「その(the)」、「前述の(the foregoing)」、「この(this)」、および「その1つの(the one)」という用語は、文脈において明確に別途指定されない限り、「1つまたは複数」のような複数形も含むことが意図される。
【0029】
本明細書などに記載される「一実施形態」または「いくつかの実施形態」への言及は、本出願の1つまたは複数の実施形態が、実施形態と組み合わせて記載された特定の特徴、構造、または特性を含むことを意味する。したがって、本明細書の異なる部分に現れる「一実施形態では」、「いくつかの実施形態では」、「いくつかの他の実施形態では」、「いくつかの追加の実施形態では」などの表現は、特に強調されない限り、必ずしも同じ実施形態を指すことを意味せず、「すべての実施形態ではないが、1つまたは複数の実施形態」を意味する。「含む(include)」、「有する(have)」という用語、およびそれらの変形はすべて、他の方法で強調されない限り、「含むが、それに限定されない(include but not limited to)」を意味する。
【0030】
図1では、破線aは電子ブレーキ機構の伝達経路であり、実線bは機械ブレーキ機構の伝達経路であり、実線cはフィードバック機構の伝達経路である。
図1を参照されたい。本出願は、ブレーキペダル3と、電子ブレーキ機構と、機械ブレーキ機構と、ブレーキ1と、スイッチ機構2とを含む電子機械ブレーキシステムを提供する。電子ブレーキ機構は、コントローラ4と電子信号センサ5とを含み得る。機械ブレーキ機構は、トランスミッションアセンブリとアクチュエータとを含み得る。スイッチ機構2は、第1の状態と第2の状態とを有する。電子ブレーキ機構が正常に動作しているとき、スイッチ機構2は第1の状態にある。電子ブレーキ機構が適切に動作することができないとき、スイッチ機構2は第2の状態にある。スイッチ機構2が第1の状態にあるとき、電子信号センサ5は、ブレーキペダル3の制動信号を受信し得、制動信号をコントローラ4に送信し得、したがって、コントローラ4は、制動信号に基づいてブレーキ1を制動するように制御する。スイッチ機構2が第2の状態にあるとき、ブレーキペダル3はトランスミッションアセンブリに接続され得、アクチュエータはトランスミッションアセンブリを用いてブレーキペダル3に接続され、アクチュエータはさらにブレーキ1に接続されて、ブレーキ1を作動させて制動する。実際のアプリケーションでは、電子ブレーキ機構および機械ブレーキ機構は、スイッチ機構2が第1の状態および第2の状態にあるときにブレーキペダル3およびブレーキ1に別々に接続され得、したがって、電気システムが適切に動作しているとき(スイッチ機構2が第1の状態にあるとき)には電子ブレーキ機構が車両を制動し、電気システムが適切に動作することができないとき(スイッチ機構2が第2の状態にあるとき)には機械ブレーキ機構が車両を制動して、運転安全性能を確保することができる。加えて、機械ブレーキシステムには油圧構造が含まれておらず、したがって、電子機械ブレーキシステムには、段付きピストンまたは油回路などの構造を配置する必要がない。したがって、電子機械ブレーキシステムの構造の複雑さを低減することができ、電子機械ブレーキシステムのコストをさらに削減することができる。
【0031】
図2を参照されたい。ある実施形態では、電気システムが適切に動作し、スイッチ機構2が第1の状態にあるとき、電子ブレーキ機構は、ブレーキを制動するように制御し得る。この場合、運転者がブレーキペダル3を踏むときの経験および忠実度を向上させるために、電子機械ブレーキシステムは、フィードバック機構6をさらに含み得る。スイッチ機構2が第1の状態にあるときフィードバック機構6はブレーキペダル3に接続され得、運転者がブレーキペダルを踏むと、フィードバック機構6が制動力と同様の力を発生させて、運転者の経験および忠実度を向上させ得る。
【0032】
前述の実施形態では、スイッチ機構は、ハウジング20と、両面ラチェット21と、第1の摺動ブロック22と、電磁スイッチアセンブリ23とを含み得る。ハウジング20の第1の方向に摺動溝が配置され得る。第1の摺動ブロック22は摺動溝内に配置される。第1の摺動ブロック22の第1の端部は、接続ロッドまたはプッシュロッドを用いてブレーキペダル3に接続され得、第1の摺動ブロック22の第2の端部は、両面ラチェット21の第1の端部に接続される。両面ラチェット21の第1面はトランスミッションアセンブリ7に接続され得、両面ラチェット21の第2面はフィードバック機構6に接続され得る。電磁スイッチアセンブリ23の第1の端部は第1の摺動ブロック22に配置され得、電磁スイッチアセンブリ23の第2の端部は両面ラチェット21に配置され得る。電気システムが適切に動作し(電子ブレーキ機構が適切に動作し)、スイッチ機構2が第1の状態にあるとき、ブレーキペダル3は踏力を受け、接続ロッドまたはプッシュロッドに接続された第1の摺動ブロック22はブレーキペダル3の力を受けて摺動溝内を第1の方向に摺動する。第1の摺動ブロック22は、両面ラチェット21を駆動して同じく第1の方向に摺動させ得る。第1の摺動ブロック22が両面ラチェット21を駆動して第1の方向に摺動させるとき、電子ブレーキ機構によって制御される電磁スイッチアセンブリ23は、両面ラチェット21をフィードバック機構6に接続し得、したがって、両面ラチェット21がフィードバック機構6を駆動して動作させ、運転者にフィードバック力を与える。電気システムが適切に動作することができない(電子ブレーキ機構が故障する)とき、ブレーキペダル3は踏力を受け、接続ロッドまたはプッシュロッドに接続された第1の摺動ブロック22はブレーキペダル3の力を受け、摺動溝内を第1の方向に摺動する。第1の摺動ブロック22はまた、両面ラチェット21を駆動して第1の方向に摺動させ得る。第1の摺動ブロック22が両面ラチェット21を駆動して第1の方向に摺動させるとき、電磁スイッチアセンブリによって駆動される両面ラチェット21は、トランスミッションアセンブリ7に接続され得る。トランスミッションアセンブリ7は、アクチュエータを駆動し得、アクチュエータは、ブレーキを作動させて制動し、運転安全性を確保し得る。
【0033】
依然として
図2を参照されたい。電磁スイッチアセンブリ23の構造は、電磁石230と、位置決めブロック231と、金属駆動ロッド232と、第1の弾性部233とを含み得る。電子ブレーキ機構内のコントローラは、電磁石230を流れる電流を制御し得る。位置決めブロック231は、第1の摺動ブロック22に配置される。電磁石230は、位置決めブロック231の第1の摺動ブロック22から離れた端部に接続され、電磁石230は、両面ラチェット21の第2面に位置する。電磁石230と位置決めブロック231との間には、金属駆動ロッド232の第1の端部を収容するための間隙が存在し、金属駆動ロッド232の第2の端部は、両面ラチェット21に接続され得る。電気システムが適切に動作し(電子ブレーキ機構が適切に動作し)、スイッチ機構2が第1の状態にあるとき、コントローラは、電磁石に流れるように設定電流を制御し、したがって、電磁石230は、磁気を帯びて、金属駆動ロッド232の第1の端部を引き付け、金属駆動ロッド232の第2の端部は、両面ラチェット21を駆動して両面ラチェット21の第1面に向かって移動させることができる。加えて、両面ラチェット21の第1面は、フィードバック機構6に接続され、したがって、フィードバック機構6は、運転者に力をフィードバックする。加えて、第1の弾性部233の2つの端部は、第1の摺動ブロック22と両面ラチェット21の第2面とにそれぞれ接続され、第1の弾性部233は、力蓄積状態を維持して、両面ラチェット21を引っ張る。したがって、電気システムが適切に動作することができない(電子ブレーキ機構が故障する)とき、第1の弾性部233は、両面ラチェット21を引っ張って両面ラチェット21の第2面をトランスミッションアセンブリに接続して、ブレーキが制動することができることを確実にすることができる。加えて、第1の弾性部233が配置されているので、電子ブレーキ機構が制動するたびに、第1の弾性部233は両面ラチェット21を初期状態に復元し得る。
【0034】
依然として
図2を参照されたい。ある実施形態では、トランスミッションアセンブリ7は、第1のリール73と、第1のギア72と、第1のラック70と、ケーブル74と、第1の回転軸71とを含み得る。第1のギア72および第1のリール73は同軸上に配置され得、第1のギア72は第1のリール73に締結され得る。第1のギア72および第1のリール73は、第1の回転軸71を用いてハウジング20に回転可能に接続される。第1のギア72は、両面ラチェット21の第2面に係合し得る。ケーブル74の一端部は第1のリール73に接続され得、ケーブル74の別の端部はアクチュエータに接続され得る。電気システムが適切に動作することができず(電子ブレーキ機構が故障し)、スイッチ機構2が第2の状態にあるとき、両面ラチェット21は第1のラック70を駆動して第1の方向に移動させ得る。第1のラック70は、第1のギア72を駆動して回転させ得る。第1のギア72は、第1のリール73を駆動して時計回りに回転させ得る。第1のリール73が時計回りに回転すると、ケーブル74が第1のリール73に巻き取られ得る。この場合、ケーブル74はアクチュエータを引っ張り得、したがって、コントローラは、ブレーキを制動するように制御する。
【0035】
依然として
図2を参照されたい。ある実施形態では、フィードバック機構6は、第2のラック60と、第2のギア61と、第2のリール63と、第3の回転軸62とを含み得る。第2のギア61および第2のリール63は同軸上に配置され得、第3の回転軸62は第2のギア61および第2のリール63を貫通して第2のギア61および第2のリール63をハウジング20に接続する。第2のラック60は、両面ラチェット21に接続され得る。電気システムが適切に動作し(電子ブレーキ機構が適切に動作し)、スイッチ機構2が第1の状態にあるとき、スイッチ機構2は、両面ラチェット21を駆動して両面ラチェット21を第2のラック60と係合させて、第2のギア61および第2のリール63を駆動し、運転者にフィードバックを提供する。したがって、運転者の経験および忠実度が向上する。
【0036】
図3を参照されたい。上述の実施形態では、アクチュエータ8は、様々な構造を有し得る。例えば、アクチュエータ8は、固定シェル80と、ラチェットホイール87と、駆動板85と、第2の摺動ブロック82と、第2の弾性部81と、第2の回転軸84とを含み得る。固定シェル80は、ブレーキの減速機の出力軸側に固定配置され、ラチェットホイール87は、減速機の出力軸に配置され得る。ラチェットホイール87の外輪郭と固定シェル80の内壁との間には、第2の摺動ブロックを取り付けるために使用される取付溝が形成される。第2の摺動ブロック82の第1の端部は、第2の弾性部81の第1の端部に接続され得、第2の摺動ブロック82の第2の端部は、固定シェル80に締結され得る。駆動板85は、第1の端部と、第2の端部と、第3の端部とを有し得る。第2の回転軸84は、駆動板85の第1の端部を通して第2の摺動ブロック82に接続され得、第2の回転軸84は、第2の弾性部81に接続された第2の摺動ブロック82の一端部に位置する。駆動板85の第2の端部はケーブルに接続され、駆動板85の第2の端部はラチェットホイール87から離れた側に配置される。駆動板85の第3の端部は、第1の端部および第2の端部から離れており、第3の端部は、ラチェットホイール87と協働するためのラチェット850を有する。電気システムが適切に動作することができず(電子ブレーキ機構が故障し)、スイッチ機構2が第2の状態にあり、ケーブルが第1のリールに巻き取られるとき、ケーブルは駆動板85を引っ張り、駆動板85上のラチェット850をラチェットホイール87と係合させ得る。ケーブルが駆動板85を引っ張り続けると、駆動板85はラチェットホイール87を駆動して回転させ得、ラチェットホイール87は、減速機の出力軸を駆動して回転させて、ブレーキアセンブリを制動するように制御し得る。
【0037】
ケーブルが駆動板85を引っ張ると、第2の弾性部81も駆動板85によって引き伸ばされ、その結果、第2の弾性部81がエネルギー蓄積状態になることに留意されたい。制動プロセスが停止すると、第2の弾性部81は、駆動板85を駆動板85の初期位置に引っ張り得る。加えて、駆動板85が初期位置にあるとき、駆動板85上のラチェット850はラチェットホイール87と協働せず、ブレーキアセンブリの制動中に減速機の出力軸が妨害されないことを確実にし、したがって、アンチロックブレーキシステムまたは電子安定性コントローラが低トラクション路面上に制御不可能な領域を有さないようにする。
【0038】
アクチュエータは、第3の弾性部83と第4の弾性部86とをさらに含み得る。第3の弾性部83の第1の端部は駆動板85に接続され得、第3の弾性部83の第2の端部は第2の摺動ブロック82の第1の端部に接続され得る。第2の回転軸84は、第3の弾性部83の延長経路上に位置し、第2の回転軸84は、第3の弾性部83をしっかりと押圧し続け得るので、第3の弾性部83は、第2の回転軸84をラチェットホイール87から離しておく力を与える。したがって、電気システムが適切に動作し(電子ブレーキ機構が適切に動作し)、スイッチ機構2が第1の状態にあるとき、駆動板85上のラチェット850はラチェットホイール87と接触せず、減速機の出力軸が、干渉なしにブレーキアセンブリを制動するように制御することを確実にし、したがって、アンチロックブレーキシステムまたは電子安定性コントローラが低トラクション路面上に制御不可能な領域を有さないようにする。
【0039】
制動後に駆動板85およびケーブルを初期状態に迅速に復元するために、アクチュエータ8は、位置制限板をさらに含み得る。ケーブルは、位置制限板を通して駆動板85に接続され得る。位置制限板と駆動板85との間には第4の弾性部86が配置される。ケーブルが第1のリールに巻き取られるとき、第4の弾性部86が力によって圧縮される。ケーブルが第1のリールに巻きとられなくなると、第4の弾性部86は、ケーブルおよび駆動板85を初期状態に復元させる力を与える。
【0040】
上述の実施形態における第1の弾性部、第2の弾性部、第3の弾性部、および第4の弾性部は、すべてばねであってもよく、ばねの特定の形態は複数存在してもよいことに留意されたい。これは、ここでは限定されない。
【0041】
ある実施形態では、
図4は、アクチュエータの別の構造の概略図である。
図5は、
図4の第2のラチェットディスクの側面図である。アクチュエータ8は、第1のラチェットディスク801と、第2のラチェットディスク803と、第5の弾性部807と、ガイド機構とをさらに含み得る。第2のラチェットディスク803上にフランジ808が第2のラチェットディスク803と同軸上に配置され、フランジ808は、減速機の出力軸に接続されることができ、したがって、第2のラチェットディスク803は、減速機の出力軸に接続される。第1のラチェットディスク801も減速機の出力軸に配置される。第1のラチェットディスク801および第2のラチェットディスク803は、第5の弾性部807およびガイド機構を用いて接続され得、第1のラチェットディスク801はケーブルに接続され得る。電気システムが適切に動作し(電子ブレーキ機構が適切に動作し)、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、第1のラチェットディスク801は減速機の出力軸と接触せず、したがって、アクチュエータ8は、スイッチ機構が第1の状態にあるとき、ブレーキアセンブリの適切な動作に影響を与えない。電気システムが適切に動作することができず、スイッチ機構2が第2の状態にあるとき、ケーブルは第1のリールに巻き取られる。ケーブルが第1のラチェットディスク801を引っ張ると、第1のラチェットディスク801がガイド機構を用いて第2のラチェットディスク803に対して回転し、第2のラチェットディスク803が位置する位置に向かって第1のラチェットディスク801が徐々に移動して、第1のラチェットディスク801側に配置された第1のラチェット802を第2のラチェットディスク803側に配置された第2のラチェット804と係合させる。ケーブルが引っ張られ続けると、第2のラチェットディスク803が駆動されて回転し、減速機の出力軸を駆動して回転させ、ブレーキアセンブリを制動するように制御し得る。
【0042】
図6は、
図4の第2のラチェットディスクの主図であり、
図7は、
図4の第1のラチェットディスクの側面図であり、
図8は、
図4の第1のラチェットディスクの主図であることに留意されたい。
図4~
図8を参照されたい。ガイド機構は、第1のラチェットディスク801の貫通孔の内壁に配置されたガイドボール805と、フランジ808の側壁の外側に配置されたガイド溝8080とを含み得る。ガイド溝8080は、螺旋状であり得、ガイドボール805はガイド溝8080と協働し得る。ケーブルが第1のラチェットディスク801を引っ張ると、ガイドボール805は、ガイド溝8080の延在方向に摺動し、第1のラチェットディスク801を駆動して第2のラチェットディスク803に近接する側に移動させ、第1のラチェットディスク801側の第1のラチェット802を第2のラチェットディスク803側の第2のラチェット804に係合させ、第2のラチェットディスク803を駆動して回転させ、ブレーキアセンブリの制動を実行する。第1のラチェットディスク801が第2のラチェットディスク803に近接する側に向かって移動するとき、第5の弾性部807がしっかりと押圧され得るので、制動が完了した後、第1のラチェットディスク801は、第5の弾性部807の作用により第1のラチェットディスク801の初期位置に戻され得る。
【0043】
第1のラチェットディスク801に取付耳806が配置され得、取付耳806内に開口部が配置され得、ケーブルは、開口部を通して第1のラチェットディスク801に接続されることに留意されたい。取付耳806は、ケーブルを第1のラチェットディスクに接続する利便性を向上させ得る。加えて、第5の弾性部807はばねであってもよい。
【0044】
図9を参照されたい。上述の実施形態では、ブレーキ1は、モータ10と、減速機11と、ブレーキアセンブリ12とを含み得る。モータ10は、コントローラに接続される。モータ10の出力軸は減速機11と伝達接続されており、減速機11の出力軸はブレーキアセンブリ12に接続される。電気システムが適切に動作しているとき、制動信号を受信した後、コントローラは、動作するようにモータ10を制御し得、モータ10は、減速機11を用いてブレーキアセンブリ12を制動するように制御する。
【0045】
ブレーキアセンブリは、ボールねじ、摩擦シート、および摩擦ディスクを含み得ることに留意されたい。ボールねじは、減速機の出力軸に接続され得、摩擦シートを駆動して、制動のために摩擦ディスクにしっかりと押圧する。加えて、ブレーキアセンブリはまた、別の構造を含み得る。これは、ここでは限定されない。
【0046】
本出願は車両をさらに提供し、モバイル端末は、前述の技術的解決策のいずれか1つにおける電子機械ブレーキシステムを有し得る。第1の態様において提供される電子機械ブレーキシステムは、安全性能を向上させ、コストを低減することができる。したがって、電子機械ブレーキシステムを有する車両も同じ技術的効果を有する。ここでは詳細について改めて説明はしない。
【0047】
前述の説明は、本出願の特定の実装形態にすぎず、本出願の保護範囲を限定することは意図されていない。本出願において開示される技術的範囲内で当業者によって容易に考え出される任意の変形または置換は、本出願の保護範囲内に入るものとする。したがって、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。