(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】修飾移植片を先に用いることによる移植片拒絶の抑制
(51)【国際特許分類】
A61K 35/15 20150101AFI20240307BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240307BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240307BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240307BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240307BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240307BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
A61K35/15
A61K35/17
A61K35/28
A61K39/395 U ZNA
A61P37/06
C07K16/28
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022160647
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2018542771の分割
【原出願日】2017-02-15
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】ECACC ECACC88050502
【微生物の受託番号】DSM DSM ACC3148
【微生物の受託番号】DSM DSM ACC3147
(73)【特許権者】
【識別番号】598080163
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァー フェーデルング デア アンゲバンテン フォルシュング エー ファー
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】エムリッヒ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルガー,ナドヤ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501731(JP,A)
【文献】国際公開第2000/038708(WO,A1)
【文献】Cell. Mol. Life Sci.,2014年,vol.71, issue 11,p.2135-2148
【文献】Transfusion,2012年,vol.52, issue 6,p.1333-1347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/15
A61K 35/17
A61K 35/28
A61P 37/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピエントに移植された非修飾移植片内における免疫寛容を誘導する医薬品であって、
抗CD4抗体と結合したCD4陽性細胞を含む修飾移植片を含有し、
前記非修飾移植片が前記レシピエントに移植される前に、前記レシピエントに投与され、
前記医薬品が投与された後に前記レシピエントに移植された、前記非修飾移植片が、前記レシピエントに対して免疫寛容を示すように作用
し、
前記非修飾移植片は、組織および臓器からなる群から選択され、
前記修飾移植片は、細胞懸濁液であり、
前記細胞懸濁液は、T細胞及びモノサイト/マクロファージを含有する細胞懸濁液、および、骨髄細胞、非付着性骨髄細胞、および末梢血細胞を含有する細胞懸濁液、から選択される、
ことを特徴とする、医薬品。
【請求項2】
前記医薬品中の、前記修飾移植片では、
前記CD4陽性細胞の有する結合可能なCD4エピトープの40%から100%に前記抗CD4抗体が結合している、
ことを特徴とする、請求項1に記載の医薬品。
【請求項3】
前記医薬品は、
前記非修飾移植片が前記レシピエントに移植される、30分から50年前に前記レシピエントに投与される、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の医薬品。
【請求項4】
前記医薬品は、
前記非修飾移植片が前記レシピエントに移植される前に、少なくとも1時間、前記レシピエントに投与される、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の医薬品。
【請求項5】
前記医薬品において、前記修飾移植片は、造血幹細胞移植片である、ことを特徴とする、請求項
1に記載の医薬品。
【請求項6】
前記医薬品において、
前記修飾移植片と前記非修飾移植片は、同種移植片である、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の医薬品。
【請求項7】
前記医薬品において、
前記修飾移植片および前記非修飾移植片はHLA血縁ドナーからのものである、または、
前記修飾移植片および前記非修飾移植片はHLA血縁である、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の医薬品。
【請求項8】
前記医薬品において、
前記抗CD4抗体は、
i)Max16H5,OKT4A,OKTcdr4a,cMT-412,YHB.46からなる群から選択される、又は、
ii)抗体30F16H5である,又は、
iii)1988年5月5日に寄託された受託番号ECACC88050502の細胞株から得られる、又は、
iv)2011年12月2日にDSMZに寄託された受託番号DSM ACC3148の細胞株MAX.16H5/30F16H5から得られる、又は、
v)抗体16H5.chimIgG4である、又は、
vi)2011年12月2日にDSMZに寄託された受託番号DSM ACC3147の細胞株CD4.16H5.chimIgG4から得られる、又は、
vii)抗体16H5.chimIgG4のVHおよびVKを含む抗体である、又は、
viii)2011年12月2日にDSMZに寄託された受託番号DSM ACC3147の細胞株CD4.16H5.chimIgG4から得られる抗体のVHおよびVKを含む抗体である、又は、
ix)SEQ ID NOs:1~10から選択されるVHとSEQ ID NOs:11~20から選択されるVKの任意の組み合わせを有する抗体である、又は、
x)先のi)~ix)の抗体から選択される抗体の混合物である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の医薬品。
【請求項9】
前記医薬品において、
前記抗CD4抗体は、SEQ ID NOs:1~10から選択されるVHとSEQ ID NOs:11~20から選択されるVKの任意の組み合わせを有する抗体であり、前記組み合わせは、VH1/VK1、VH2/VK2、VH4/VK2およびVH4/VK4、から選ばれる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の医薬品。
【請求項10】
前記医薬品において、
前記抗CD4抗体
の前記組み合わせは、VH2/VK2である、
ことを特徴とする、請求項
9に記載の医薬品。
【請求項11】
前記医薬品は、非修飾移植片内における移植片対腫瘍効果(Graft-versus-Leukemia:GvL)を抑制しない、
ことを特徴とする、請求項
7または
10に記載の医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に移植片及び移植片移植分野に関する。特に、本発明は移植によって治療可能な疾患の治療方法に用いられる修飾移植片及び非修飾移植片、並びに、その使用方法に関する。通常このような方法は、修飾移植片を対象に導入する工程と、非修飾組織を前記対象に導入する第2の工程とを有する。本発明では、例えば前記修飾移植片中のCD4の阻害を利用する。
【0002】
ある態様では、本発明は固形臓器移植片及びこの組織を移植する分野に関する。本発明は修飾移植片に関わり、組織の導入に続けて、例えば、固形臓器の移植が行われる。本発明によれば、従来の免疫抑制剤の必要性を回避することができる。また、本発明は、本発明で使用する修飾移植片を得る方法についても開示する。ある態様では、本発明は固形臓器を移植する前に実施する、ヒトCD4抗体を用いた、免疫担当生細胞を含む同種移植片の修飾に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの場合、固形臓器の移植は、臓器不全をもつ多数の患者にとって、いまだに唯一の治療的処置である。固形臓器の移植法は医学において確立された方法であり、およそ50年間行われてきた(非特許文献51)。血液型A、B、Oの研究が、1901年にK.Landsteiber(非特許文献33、 特許文献15)によって行われたのに続き、Alfred von Castello及びAdriano Sturli(非特許文献13)によってAB型の研究が行われた。動物での最初の腎移植は、1906年にAlexix Carrel(1873-1944)(非特許文献6)によって行われた。また、固形臓器の移植開発における歴史的出来事として、1944年のPeter Medewar卿(1915-1987)によって行われた皮膚移植の間における組織適合性と免疫反応の研究が挙げられよう(非特許文献41)。さらに、最初の同系及び同種間のヒト腎移植が、Joseph E.Murrayによって1954年及び1959年に達成された(非特許文献42)。続いて、移植片拒絶の要因であるHLA抗原(ヒト白血球抗原)が、1958年にJean Daussetにより検出された(非特許文献12)。また、1962年には、免疫抑制剤アザチオプリンの使用によって、死亡者の腎を移植できるようになった(非特許文献5)。一方、ドイツでは、近親者間での最初の(臨床的)腎移植が、1963年にWilhelm Brosigによって行われた(非特許文献16)。続いて、最初の膵臓移植がRichard Lilleheiによって1966年に行われ(非特許文献32)、最初の成功となった肝臓移植がTom Staezlによって1967年に行われた(非特許文献53、54)。さらに、1967年に、最初の心臓移植が南アフリカ共和国ケープタウンでChristiaan N. Barnard(1922-2001)によって行われたのに続き、最初の心臓及び肺移植が1969年にDenton A.Cooleyによって行われた(非特許文献11)。また、移植片拒絶を防ぐために、1983年にシクロスポリンAが最初に使用された(非特許文献31)。こうして、1963年の最初の臓器移植から2013年までに、116,650件の実質臓器の移植がドイツにおいて行われた(非特許文献19)。
【0004】
2015年1月には12,500個の固形臓器が必要とされたが、この数字は入手可能な数よりも多い。さらに、同種間の固形臓器移植には、重篤な合併症を伴う可能性がある。遺伝的相違による移植片拒絶、免疫抑制剤での終生治療による副作用、毒性、感染症および二次性腫瘍の発症は重篤な副作用である(非特許文献28)。また、(適合可能な)固形臓器組織を待ちわびることで生じる患者の精神的打撃も、配慮されるべきである(非特許文献52)。
【0005】
従来の免疫抑制剤による移植片拒絶を抑制する戦略では、異なるT細胞クローン間の識別ができなかった。つまり、移植片拒絶の要因であるT細胞クローンと健全な免疫反応(例えば、バクテリア、ウイルス、腫瘍細胞の破壊)を維持する要因であるT細胞クローン間の識別ができなかった。通常、従来の免疫抑制剤を使用すると、免疫系全体を抑制することになり、感染症を起こす可能性、及び/又は、悪性腫瘍の発現を増大させる(非特許文献24、25)。
従って、所望の健全な免疫反応を変化させないことによる、従来の免疫抑制剤を使用しない、固形臓器移植後の移植片拒絶の代替え又は改良型の治療方法や手法に関する研究が、依然として求められている。
【0006】
例えば、特許文献3に記載した先の研究において、(a)1分から7日間抗CD4抗体と移植片をインキュベートする工程と、(b)前記の移植片から結合していない抗体を取り除く工程、とを有するインビトロ移植片修飾方法によって、移植片対宿主病(GvHD:Graft-versus-Host-Disease)を抑制できるとともに、併せて、免疫寛容誘導による同種造血幹細胞移植における移植片対腫瘍効果を低下させないことが示された。なお、前記特許文献3の全体を本明細書に参照して本明細書に組み入れる。この免疫寛容は、MAX.16H5 IgG1またはCD4.16H5.chimIgG4によるCD4+T細胞の修飾に起因する。CD4分子は、抗原提示細胞(APCs:antigen presenting cells)のHLA(ヒト白血球抗原)分子の定常領域に直接結合してT細胞の完全活性化を起こす(非特許文献56)。非枯渇性モノクローナル抗体によってこの結合を妨害することで、この活性化を阻害できる。この阻害は、全体的立体障害、APCとT細胞間の細胞-細胞接触の短縮化(非特許文献27)、タンパク質チロシンリン酸化阻害によるネガティブシグナルの誘導(非特許文献30)、又は、T細胞アネルギーの誘導(非特許文献39、40)によるものである。
【0007】
CD4は、胸腺細胞の大多数と、末梢T細胞の一部とを含むTリンパ球系統細胞上に主として発現する表面糖タンパク質である(非特許文献38)。また、低レベルのCD4が、幾つかの非リンパ系細胞によっても発現される(非特許文献50)。成熟T細胞上では、CD4は、抗原提示細胞上に発現されるMHCクラスII分子との相互作用を通して共認識シグナルとして機能する。(非特許文献57)。CD4+T細胞は、T-依存性応答の間にT及びB細胞機能を制御するヘルパーサブセットを主に構成する。この応答は、例えば、ウイルス、バクテリア、真菌及び寄生虫による感染症に対する応答である(非特許文献29)。自己免疫疾患の発病の間、特に、自己抗原抗体に対する寛容が機能しないとき、CD4+T細胞は炎症反応を引き起こし、特にこの反応は組織破壊を起こす結果となる(非特許文献3)。こうしたプロセスは、造血系の炎症細胞の動員、抗体、炎症性サイトカイン及びメディエータの産生、並びに、キラー細胞の活性化によって促進される(非特許文献3)。
【0008】
以前には、マウスのヒトCD4モノクローナル抗体MAX.16H5 IgG1が、自己免疫疾患をもつ患者に使用、又は、移植拒絶反応に対する保護療法として用いられた(非特許文献17、18、45)。ヒト腎移植では、MAX.16H5 IgG1が、移植片拒絶を効果的に低減させる可能性をもっていた(非特許文献45、46、47)。MAX.16H5 IgG1の使用によって、免疫活性が抑制されるのみならず、トリプルトランスジェニックマウスモデルにおける、破傷風トキソイドへの免疫寛容が誘導される結果を与えた(非特許文献34,35,36、55、25)。こうした遺伝子組換えマウスの開発は科学者によって行われ、文献に述べられている(非特許文献34,35,36、55、25)。また、マウスCD4欠損バックグラウンドにヒトCD4とHLA-DR17(HLA-DR3の分裂した抗原)を発現する、CD4/DR3マウスは、実験動物科学研究所、ハノーバー医学校(ドイツ)で最初に生み出された(非特許文献25)。こうしたマウスを用い、抗ヒトCD4抗体を直接使用できるようになり、ホストと提供者(つまりドナー)の血球新生がヒト及びマウスのCD4分子によって区別できるようになった(非特許文献25、10、43、37)。T細胞が活性する環境では、MAX.16H5 IgG1をプレインキュベートしたCD4+T細胞は、より低いIL-2 mRNAレベル発現を示し、MAX.16H5 IgG1を先にインキュベートしなかった対照群と比較して、Lck依存性シグナル伝達の活性化を示さなかった(非特許文献25)。
【0009】
ヒトに抗原を直接作用させると、処置タンパク質に対して望ましくない免疫反応を起こす可能性がある(非特許文献14)。マウスモノクローナル抗体の幾つかは、複数のヒト疾患への治療法として有望であることを示したが、ヒト抗マウス抗体(HAMA)反応を顕著に誘発するため、ある場合にはうまくいかなかった(非特許文献2)。患者に抗体を直接作用させることは、重いアナフィラキシー反応を引き起こす可能性がある(非特許文献14)。
【0010】
以前の研究において、マウスGvHD及び腫瘍移植モデルは、GvHDの長期予防用に、抗ヒトCD4抗体を直接テストできることを示した(非特許文献25)。しかし、有益なことに、GvL(Graft-versus-Leukemia:移植片対白血病)効果は減少しなかった(非特許文献25)。特定の理論に縛られるわけではないため、この効果はCD4エピトープ特異的であると考えられる。有益なことに、移植片をMAX.16H5 IgG1で短時間プレインキュベート(2時間)すると、GvHDは予防され、結合していない抗体は除去された(非特許文献25)。よって、この抗体を直接適用する必要はなかった(非特許文献25)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】DE3919294
【文献】WO2006/122545
【文献】WO2012/072268
【非特許文献】
【0012】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、移植片の導入方法は依然として必要であり、特に非修飾移植片において必要である。また、移植片を移植することで治療できる疾患の有益な治療方法も、依然として必要である。通常、先行技術の方法が有する欠点をもたない有望な別の治療方法、又は、改善した治療方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ある態様では、本発明は、対象に移植することにより治療可能な1以上の疾患の治療方法に用いられる、非修飾移植片に関する。この方法は、修飾移植片を対象に導入する第1の工程と、非修飾移植片を前記対象に導入する第2の工程とを有し、この修飾移植片は免疫細胞を含有する細胞移植片である。なお、この修飾によって、CD4が阻害される。
第2の態様では、本発明は、対象に移植することにより治療可能な1以上の疾患の治療方法に用いられる、修飾移植片に関する。この方法は、修飾移植片を対象に導入する第1の工程と、非修飾移植片を前記対象に導入する第2の工程とを有し、この修飾移植片は免疫細胞を含有する細胞移植片である。なお、この修飾によって、CD4が阻害される。
さらに、第3の態様では、本発明は、移植することにより治療可能な1以上の疾患の治療方法に用いられる、CD4拮抗剤に関する。この方法は、修飾移植片を対象に導入する第1の工程と、非修飾移植片を前記対象に導入する第2の工程とを有し、この修飾移植片は免疫細胞を含有する細胞移植片である。なお、この修飾によって、CD4が阻害される。
【0015】
さらに、第4の態様では、本発明は以下の方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又はCD4拮抗剤に関する。即ち、i)外科的移植方法、ii)移植免疫寛容の誘導方法であって、非修飾移植片に対する移植免疫寛容を誘導するために修飾移植片を使用する方法、iii)1以上の細胞懸濁液、特に幹細胞含有細胞懸濁液を、ドナーから対象に移植する方法。iv)1以上の組織を、ドナーから対象に移植する方法。v)1以上の臓器の一部をドナーから対象に移植する方法。vi)1以上の臓器をドナーから対象に移植する方法、vii)造血システム再構築細胞をドナー源から対象に移植する方法であって、随意、続いて1以上の臓器を前記ドナー源から対象に移植する方法、及び/又は、viii)対象での免疫再構築能を高める方法であって、随意、続いて1以上の臓器を対象に移植してもよく、この方法は修飾移植片を対象に導入する第1の工程と、非修飾移植片を対象に導入する第2の工程とを有し、修飾移植片は免疫細胞含有細胞移植片(免疫細胞を含む移植片)であり、前記した修飾によってCD4は阻害される方法。
なお、本明細書では通常、好適な実施形態中、CD4拮抗剤はCD4抗体である。また、本明細書では一般に、好適な実施形態中、修飾移植片及び非修飾移植片は、HLA血縁ドナーに由来するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、TTGドナーマウス由来の皮膚を移植してから24時間及び50日後の、Balb/c(TTG)マウス及び野生型Balb/c
wt(対照群)マウスを示す。Balb/c(TTG)マウスでは、移植片拒絶が観察されなかった。
【
図2】
図2は、ドナーとして用いたC57Bl/6-トリプルトランスジェニックマウス(TTG)の説明を含む。TTGマウスはヒトCD4及びHLA-DRを発現するが、マウスCD4分子がノックアウトされている。このようにすることで、移植後に特定のヒト表面分子を決定できるとともに、抗ヒトCD4抗体をマウスで直接検定することができる。
【
図3】
図3は、本明細書中の実験計画の説明を示す。骨髄細胞及び脾細胞をTTGマウスから取り出し、プールし、、抗ヒトCD4抗体又は無抗体の何れか一方を含む培地で2時間インキュベートし、致死的に放射線照射を行ったBalb/c
wtマウスに移植した。この実験結果を、C57Bl/6野生型マウス由来のドナー細胞を用いて得られた結果と比較した。こうして、移植後の治療効果を検討した。 なお、SEQ ID NOs.1~10は、本発明で使用した好適な抗CD4抗体の、典型的修飾重鎖可変領域のDNA及びアミノ酸配列を示す。 また、SEQ ID NOs.11~20は、本発明で使用した好適な抗CD4抗体の、典型的修飾軽鎖可変領域のDNA及びアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、上記課題を解決し、上記した従来法の欠点を克服できる。また、本発明は、抗ヒトCD4抗体MAX.16H5 IgG1により、同種造血系幹細胞組織片をエクスビボ調整し、続いて、第三者からの皮膚移植を行うことで、完全MHC-不適合移植モデルにおいて皮膚移植片拒絶が防止されることを示した最初の報告を含む。
また、特定の理論に縛られるわけではないが、本発明者らは、移植片拒絶の原因となるT細胞クローンと、健全な免疫反応の維持に必要なT細胞クローンとの差別化、又は、区別が、CD4T-ヘルパー細胞の調整により達成できるものと考える。
【0018】
驚くべきことに、また、本明細書で述べた過去の研究結果に加え、本発明者らは例えば、MAX.16H5 IgG1と再びインキュベーションせずに細胞を第3者のレシピエントに移植した場合でも、MAX.16H5 IgG1による同種移植片の単回のインキュベーション後に、GvHDが再誘導されないことを見出した。このとき、GvLは抑制されなかった。本発明者らの知識では、GvL効果を保持することで、GvHD寛容を誘導する治療方法は、驚くべきものであった。理論に結び付けられることを意図せず、本発明者らは、免疫効果の維持(例えば、GvHDからの解放)は、有益なことに、移植当日に誘導され、制御性T細胞によって保持されたものと考察する。
その他については、本発明者らは、抗ヒトCD4抗体MAX.16H5 IgG1による同種造血系幹細胞移植片のエクスビボ調整に続く、第三者皮膚移植は、完全MHC-不適合移植モデルにおいても皮膚移植片拒絶が抑制される、ことを示す最初の報告を行う。
【0019】
現在使用される、移植片拒絶抑制剤は副作用を伴うとともに、異なるT細胞クローンどうしを区別できない。従って、移植片拒絶の要因であるT細胞クローンと、健全な免疫反応(例えば、バクテリア、ウイルス、腫瘍細胞の破壊)の維持に必要なT細胞クローンとの区別ができない(非特許文献25)。
特に、本発明者らは、抗ヒトCD4抗体MAX.16H5 IgG
1について、マウス幹細胞移植モデルや皮膚移植モデルでの試験を行った。ヒトCD4
+C57Bl/6マウス由来のエクスビボ修飾片(
図2参照)を、Balb/c
wtマウスに移植した。119日後、ヒトCD4
+C57Bl/6マウス由来の第三者の皮膚を、レシピエントマウスに移植した。この皮膚移植片の生存率は、MAX.16H5 IgG
1短期間(2時間)プレインキュベートした移植片を与えたレシピエントマウスにおいて顕著に増加した(
図1参照)。なお、このレシピエントマウスに、抗体を直接与える必要はなかった。抗ヒトCD4抗体MAX.16H5 IgG
1は、固形皮膚移植片の生存に関し、長期に有効であった。従来の免疫抑制剤を必要とすることなく、固形臓器について抗体を短期間プレインキュベーションすることで、免疫寛容性を誘導するという観察結果は、有益であるとともに驚くべきものであった。
こうした発見は、例えば、同種臓器移植をより安全なものとし、遺伝的差異による移植片拒絶を抑制し、副作用、毒性及び感染症の低減、並びに免疫抑制剤を用いる終生治療がもたらす二次性腫瘍の発生を低減させるものと思われる。
【0020】
本特許出願のなかで、発明者らは、例えば、修飾移植片を先に使用することは、固形臓器移植において、非修飾移植片に対する寛容を実現するのに好適であることを示した(
図3参照)。
以上より、本発明の方法は以下の点で有益である。つまり、i)ドナー移植片に対する拒絶や、第三者又はそれ以上の他者の臓器の拒絶を低減させること。ii)第三者又はそれ以上の他者の臓器に対する、移植された免疫担当細胞内部での寛容の達成。iii)第三者又はそれ以上の他者の臓器に対する、レシピエント組織内部における寛容又は一部寛容の実現。及び/又は、iv)第三者又はそれ以上の他者の臓器に対する細胞活性化を静まらせること、などが挙げられる。
【0021】
従来の免疫抑制剤を使用する必要なしに、固形臓器について抗体のプレインキュベーションを短期間行うことで、免疫寛容が誘導されるという観察結果は、有益である。この発見は、同種臓器移植をより安全なものとし、遺伝的差異による移植片拒絶反応を抑制し、副作用、毒性及び感染症の低減、並びに、免疫抑制剤を用いる終生治療を不要とできるため二次性腫瘍の発生を低減させるものと思われる。
ある実施形態では、本発明は、抗体とともに、免疫細胞を含有する細胞移植片のインビトロ治療を用い、インビボでの直接適用を回避する。
詳細に述べると、本発明は、例えば、寛容誘導や免疫抑制を行うために、T細胞、特にCD4+細胞を含有する細胞懸濁液などの(幹細胞)移植片の短期間インキュベーションを用いることができる。特定の理論に縛られるわけではないため、例えば、抗CD4抗体とCD4陽性(免疫)細胞を含有する(幹細胞)移植片のインキュベーションと続く非結合抗体の除去、好ましくは非結合抗体のみの除去、により修飾移植片を得ることができる。ここで、抗体標識化した細胞は活性化されずに、特に、これら細胞が特定の抗原に遭遇するや否や不活性となる。好適には、修飾移植片の抗体標識化細胞は、アネルギー細胞である。この結果、例えば、GvHDは起こらない。
【0022】
特定の理論に縛られるわけではないが、抗CD4抗体などのCD4拮抗剤は、例えば、CD4担持(例えば、細胞に結合した)免疫細胞(例えば、リンパ球)を阻害し、この結果、有用な効果を奏するものと思われる。また、当業者に明らかなように、遊離CD4拮抗剤(抗CD4抗体、つまり、移植片に存在する抗原に結合していない抗CD4抗体のこと)の投与を実質的に低減、又は、避けるすることは有益である。
何れの場合でも、何らかの方法でCD4と拮抗させることは実現可能と思われる。CD4を阻害するその他の方法は、当業者によく知られており、容易に適用可能である。CD4拮抗剤は良く研究されており、多くの選択肢が知られているので当業者にも利用可能であるが、本明細書中さらに以下説明する。
【0023】
一般に、本発明を実施することで、以下の利点を1つ以上実現できると思われる。i)移植片レシピエントに、CD4拮抗剤(抗CD4抗体など)を直接適用しないですむこと。ii)T細胞、特にCD4+細胞含有の細胞懸濁液、組織及び臓器などといった移植片の短期インキュベーションの適切な使用。iii)GvHD阻害。iv)本発明の移植片を移植した後、他の免疫的合併症の抑制(例えばサイトカイン放出症候群)。v)従来の免疫抑制剤を用いる治療を回避できること、及び、全身投与に比べて抗体投与量を著しく低減させることによるコストの削減。vi)本発明に従って移植片を移植される患者の生存率改善。vii)老齢の患者など、予想される免疫的合併症のために通常の移植片が移植できない患者への移植片の移植を容易にできること。viii)HLA不適合ドナーに由来した移植片、又は、本願発明を用いない場合よりもよくないHLA適合ドナー由来の移植片を移植できること。ix)GvL効果の維持。及び/又は、x)対象に移植片を繰返して移植することを容易にできること。
【0024】
一般的にいって、本発明は、請求の範囲及び以下の記載に規定した発明要素に関する。
つまり、第1の態様では、本発明は、対象に移植することにより治療可能な1以上の疾患の治療方法に用いられる非修飾移植片に関する。この方法は、前記対象に修飾移植片を導入する第1の工程と、前記対象に非修飾移植片を導入する第2の工程とを含む。前記の修飾移植片は、免疫細胞を含有する細胞移植片であり、この修飾によってCD4を阻害できる(或いは、それぞれCD4阻害を引き起こす)。
第2の態様では、本発明は、移植により治療可能な1以上の疾患の治療方法に用いられる修飾移植片に関する。この方法は、対象に修飾移植片を導入する第1の工程と、この対象に非修飾移植片を導入する第2の工程とを含む。前記の修飾移植片は、免疫細胞を含有する細胞移植片であり、この修飾によってCD4を阻害できる(或いは、それぞれCD4阻害を引き起こす)。
また、第3の態様では、本発明は、移植による治療可能な1以上の疾患を治療する方法に用いられる、CD4拮抗剤、好適には抗CD4抗体に関する。この方法は、対象に修飾移植片を導入する第1の工程と、この対象に非修飾移植片を導入する第2の工程とを含む。前記の修飾移植片は、免疫細胞を含有する細胞移植片であり、この修飾化によってCD4を阻害できる(或いは、それぞれCD4阻害を引き起こす)。
好適には、前記の修飾は、前記CD4拮抗剤の使用に関する。また、前記修飾は、前記CD4拮抗剤によって有効となることが好ましい。
【0025】
また、一般的にいって、対象とはレシピエントのことを指すこともある。この対象は、動物、特に哺乳類、更に好適にはヒトであることが好ましい。
同様に、本明細書では、ドナー(このドナーから移植片が分離、及び/又は得られる)は、動物、特に哺乳類、更に好適にはヒトであることが好ましい。一般に本明細書中、修飾移植片及び非修飾移植片は、同じドナーに由来しても、異なる複数のドナーに由来してもよい。このドナーに関する好適な実施形態は、本明細書に記載される。
好適には、移植治療可能な1以上の疾患は、以下の群から選択される。つまり、急性骨髄性白血病(AML);急性リンパ性白血病(ALL);慢性骨髄性白血病(CML;骨髄異形成症候群(MDS)/骨髄増殖症候群;悪性リンパ腫、頭顔ホジキン症、高悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、低悪性度NHL,慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫より選択される;重度の再生不良性貧血;サラセミア;鎌状赤血球貧血;重症複合型免疫不全症(SCID)、ウィスコット・オルドリッチ症候群(WAS)、及び血球貪食性リンパ組織球症(HLH)より選択される免疫不全;特に、リソソーム蓄積症ペルオキシソーム機能障害より選択される先天性代謝異常症;自己免疫疾患;リウマチ症疾患;及び、以上述べた疾患の常習などが挙げられる。
【0026】
前記した1以上の疾患については、特に以下の群から選択される血液悪性腫瘍が、より一層好ましい。急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄異形成症候群(MDS)/骨髄増殖症候群;悪性リンパ腫特に頭顔ホジキン症、高悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫から選ばれる悪性リンパ腫;重度の再生不良性貧血;サラセミア;及び、鎌状赤血球貧血などが挙げられる。
【0027】
所定の実施形態中、移植によって治療可能な疾患は、移植を必要とする任意の病態である。
また、好適な実施形態中、移植によって治療可能な疾患は、臓器不全を含む疾患である。従って、前記疾患は、例えば、所望の機能を行わない臓器を交換する移植を必要とするものである。
更にまた、所定の実施形態中、移植によって治療可能な疾患は、移植片拒絶であり、例えば、臓器拒絶が含まれる。更なる例として、GvHD及びドナー移植片拒絶が挙げられる。つまり、後者の場合、臓器など過去に移植された移植片を、本発明に従い、臓器などの移植片によって交換してもよい。
本明細書では一般に、移植によって治療可能な前記1以上の疾患には、以上述べた任意の疾患が常習的になったものや、本明細書に述べた疾患の任意の組合せが含まれる。
【0028】
また、本明細書で用いられる、「免疫細胞含有細胞移植片」とは、免疫細胞を含む移植片を本質的に示す。一般的にいって、免疫細胞含有細胞移植片は、特に限定されるわけではなく、以下に記載した修飾移植片についてなどに対応する所定の実施形態にともなうものである。
通常、移植片及び免疫細胞含有細胞移植片も、当業者によく知られている。また、移植において、免疫細胞含有細胞移植片を含む移植片を使用することも、当業者によく知られている。本発明によれば、前記移植片は、細胞懸濁液、組織、及び/又は臓器を含むことができる。また、前記移植片が、細胞懸濁液、組織、及び臓器からなる群から選択されることが、より好適である。一般的に、移植片とは、以下に述べる複数の移植片どうしの組合せでもよい。例えば、臓器及び細胞懸濁液の組合せなど、上記した複数の移植片の1以上の組合せが挙げられる。また、別の好適な実施形態では、前記移植片は、人工移植片ではない。また、別の好適な実施形態では、移植片、及び免疫細胞含有細胞移植片は、インビボの治療目的への使用を意図するので、特に、臓器不全を引き起こす疾患の治療に用いることを意図する、と理解される。こうした疾患には、例えば、所望の機能をしない臓器を取りかえる移植を必要とする疾患が挙げられる。以上から、別の好適な実施形態では、移植片及び免疫細胞含有細胞移植片は、疾患治療を目的としない動物モデルでの反応機構研究だけを目指した及び/又は機構研究だけに有用な、細胞並びに細胞含有組成物を除外したものである。
【0029】
また、好適な実施形態中、前記各移植片は、細胞懸濁液、組織及び臓器からなる群から選択される。よって本発明中、修飾移植片は、細胞懸濁液、組織及び臓器からなる群から選択することができる。また、本発明中、非修飾移植片は、細胞懸濁液、組織及び臓器からなる群から選択することができる。特別な実施形態では、前記修飾移植片は細胞懸濁液であり、前記移植片は細胞懸濁液である。また、特別な実施形態中、前記修飾移植片は細胞懸濁液であり、前記移植片は組織である。さらにまた、特別な実施形態中、前記修飾移植片は細胞懸濁液であり、前記移植片は臓器である
また特別な実施形態中、前記移植片は、成人幹細胞由来及び/又は初期化された成人幹細胞を含まない。したがって、いくつかの特別な実施形態においては、前記移植片に含まれる胚性幹細胞は、成人幹細胞由来又は初期化された成人幹細胞である胚性幹細胞である。また、幾つかの特別な実施形態中、前記移植片は、全能性胚幹細胞から構成されず、又は全能性胚幹細胞を含まない。ある実施形態では、前記移植片は胚幹細胞から構成されず、又は胚幹細胞を含まない。さらに、特別な実施形態中、前記移植片は、ヒト胚由来の胚幹細胞を含まない。
【0030】
本明細書で用いられるように、非修飾移植片は当業者によく知られた標準的移植片である。特に、このような非修飾移植片は、本明細書中記載された修飾移植片として修飾されたものではなく、つまり、本明細書の修飾移植片の修飾を含まない。よって、前記非修飾移植片は、CD4拮抗剤を用いて修飾されなかったとして記載される。よって、前記非修飾移植片は、CD4拮抗剤(抗CD4抗体など)を含まないものとして記載される。よって、前記非修飾移植片は、CD4を阻害する修飾を含まないものとして記載される。非修飾移植片の好適で特別な実施形態は、以下に説明した。
本発明は、例えば、修飾移植片を有益に使用する。通常、本発明で用いられる修飾移植片は、対象に移植片を導入(例えば、移植)する点に関してなど、非修飾移植片用の先行技術で知られているように、使用してもよい。
【0031】
本明細書で用いるように、修飾移植片は修飾された移植片であり(人工的に修飾されたものであることが好ましい)、例えば、本明細書に記載した方法を介して、好適には、本明細書で記載したインビトロの方法によって、好適にはCD4拮抗剤を用いて、修飾される。従って、前記修飾は、CD4拮抗剤の使用を伴うということができる。同様に、前記修飾はCD4拮抗剤によって影響されるといえる。なお、ここに述べる修飾移植片は、本発明の使用の前、又は本発明の使用中に修飾したものである。
本明細書では一般に、修飾移植片を修飾することでCD4を阻害できるといわれている。この結果、好適には、修飾移植片は、CD4を阻害する修飾が行われているものとして記載される。この結果、本明細書中の修飾移植片は、CD4を阻害する修飾が完了した/修飾が行われているものといえる。
【0032】
通常、本明細書で述べる阻害とは、完全な阻害を意味するのみならず、部分的阻害も意味する。十分な程度の阻害は、当業者によって容易に決定できる。阻害の程度に関する特別な実施形態、例えば、本明細書で記載した修飾移植片の実施形態(例えば、移植片に結合する抗体に関連して列挙された百分率の値を含むもの)に対応する。阻害の程度が特に好適であると、本明細書に開示した、有益な効果を少なくとも一つ達成できる。
本明細書で用いるように、「修飾によってCD4が阻害されることを特徴とする修飾移植片」(“CD4阻害を伴う”、あるいは、その他この種の用語及び/又は等価な用語)とは、好ましくは、CD4の発現及び/又は機能が、好適には機能が、阻害(又は抑制)されている修飾移植片のことを表す。CD4の阻害方法は、当業者に知られており、特に限定されない。この方法は、任意のCD4拮抗剤の使用(又は、拮抗剤によって影響される)を伴い、特に、本明細書で述べた任意のCD4拮抗剤の使用を伴う。つまり、本明細書で述べた何れの態様においても、あるCD4拮抗剤(又は、例えば、複数のCD4拮抗剤の混合物)を使用できる。
【0033】
ここに述べる、一実施形態では、「修飾によってCD4が阻害されることを特徴とする」の用語及びこの種の用語が、「修飾によってCD4を介する細胞機能を阻害することを特徴とする」の用語と交換可能であることを、当業者は容易に理解できるだろう。好適な実施形態中、「修飾によってCD4が阻害されることを特徴とする」の用語及びこの種の用語は、「修飾によってCD4の下流の細胞機能、特に結合および/又は動員、が阻害又は抑制されることを特徴とする」の用語と交換可能である。CD4を介して阻害される細胞機能は、特にCD4に関する知識及び細胞内の作用機序という点で当業者に容易に知られている。ある実施形態では、このような細胞機能の少なくとも一つが阻害される。
同様に、ある実施形態では、「修飾はCD4阻害を伴うことを特徴とする」の用語及びこの種の用語は、「修飾はCD4を介した機能阻害を伴うことを特徴とする」の用語と交換可能である。また、ある好適な実施形態では、「修飾はCD4阻害を伴うことを特徴とする」の用語及びこの種の用語は、「修飾は機能阻害又は機能抑制を伴うことを特徴とする」の用語と交換可能である。また、別の好適な実施形態では、「修飾はCD4阻害を伴うことを特徴とする」の用語及びこの種の用語は、「修飾はCD4を介した機能の阻害又は抑制を伴うことを特徴とする」の用語と交換可能である。
【0034】
一般的にいって、本発明に関連付けて用いられるCD4拮抗剤の限定しない実施形態は、CD4発現及び/又は機能を調節するCD4拮抗剤を含む。よって、ある実施形態中、ここで述べるCD4拮抗剤は、CD4の発現を調節、特に阻害する。よって、ある実施形態中、ここで述べるCD4拮抗剤は、特にCD4と結合することで、CD4の機能を調節、特に阻害する。従って、ここで述べるCD4拮抗剤はCD4リガンドである。通常、CD4阻害剤又はCD4リガンドのようなCD4拮抗剤は、それぞれ先行技術において公知である。多数のCD4拮抗剤、特にCD4に結合するCD4リガンドは、市販されている。
CD4拮抗剤は一般に先行技術でよく知られている。限定しない例には、ここに記載したものが含まれる。本明細書中一般的に、前記CD4拮抗剤、例えば、CD4阻害剤又はCD4リガンドは、細胞外又は細胞内物質(リガンドなど)であってよい。また、特に第3の態様では、前記CD4拮抗剤によって、前記CD4阻害が直接又は間接的に引き起こされる。
【0035】
ここで述べる好適な実施形態中、CD4拮抗剤はCD4と結合する。
また、ここで述べる特に好適な実施形態では、CD4拮抗剤は抗CD4抗体である。抗CD4抗体は、通常先行技術において良く知られており、多数の抗CD4抗体が市販されている。
抗体及び抗CD4抗体も、先行技術において良く知られている。本明細書中使用するように、「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合、相互作用、又は他には、つなげる、ことができる免疫グロブリンファミリーのタンパク質を、特に意味する。ここにおいて、上記の、抗体が抗原に結合、相互作用、又は他には、つなげる(結合などで)という作用は、相補性決定領域(CDR:complementarity-determining region)によって媒介される。同様に、「抗原」の用語は、本明細書中、前記抗体と特異的に結合、相互作用、又は他には、つなげる、ことができる物質を表すために用いられる。本発明の抗CD4抗体に関して、抗原とはCD4を意味し、特にヒトCD4を意味する。また、ここで用いられるように、「CDR」の用語は、ある抗体の「相補性決定領域」を表し、つまり、抗体特異性の決定に寄与する免疫グロブリン可変ドメイン内にある、高頻度可変領域の一つを表す。CDRは先行技術において当業者によく知られている。典型的には、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン及び軽鎖免疫グロブリン可変ドメインの両者ともに、3個のCDRを有する。本発明に関連付けると、「抗体」の用語は、例えば、Fv、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を含む抗体断片類に係るとも考えられる。このような断片類は、標準的な方法で作製できる(例えば、非特許文献8に開示され、その全体を参照して本明細書に組み入れるものとする)。
【0036】
また、本発明は、従来技術でよく知られた分子種に由来する、抗体の様々な組換体も考慮している。このような分子種は、VHドメインとVLドメインとを連結するペプチドリンカーを有する一本鎖Fv形態(例えば、scFv)を含む安定化Fv断片類や、或いは、鎖間ジスルフィド結合で安定化されるとともに、VHドメインとVLドメインとが容易に連結するように作成したシステイン残基類を追加して含有するFv(dsFv)を有する。同様に、他の組成物も先行技術において良く知られており、「ミニボディー」と呼ばれる分子種、及び単一可変ドメインである「dAb」を含むことができる。また、別の分子種では、修飾抗体のV領域ドメインの結合価を増加させる手段を組み入れてもよい。つまり、二量体形成ドメイン(例えば、ロイシンジッパー)を作成して、或いは所謂化学修飾戦略によって、複数の抗原結合部位をもった分子種としてもよい。さらにまた、「抗体」の用語は、全て先行技術で知られるジアボディー、トリアボディー又はテトラボディーのようなscFvの多量体、タンダブ、フレキシボディー、二重特異性抗体、及びキメラ抗体に関する。また、本明細書で用いられるように、抗体類には、二価又は多価の抗体類も含まれると考えられる。また、こうした抗体類は、任意の抗体誘導体、及び当業者に知られた任意のその他誘導体を含む。また、幾つかの実施形態では、前記抗体はポリクロ-ナル抗体である。また、好適な実施形態中、前記抗体はモノクローナル抗体である。更にまた、「抗体」の実施形態は特許文献3から得ることもできる。
【0037】
本発明によれば、「抗CD4抗体」の用語は、CD4への結合能力をもつ抗体を表す。好適には、抗CD4抗体は、抗ヒトCD4抗体である。「CD4」又は「cluster of differentiation 4」は、タンパク質、より正確には表面糖タンパク質であり、当業者によく知られている(非特許文献4参照)。本明細書の文脈において、CD4の断片又はさもなければCD4の修飾形が、本発明の抗体に関して抗原として機能する限り、前記CD4は、完全長のCD4の一断片、又はさもなければ、CD4の修飾形を表す。
本発明に沿って用いられる抗CD4抗体の特に好適な例が、本明細書の別の箇所に記載される。
また、CD4拮抗剤の限定されない(更なる)例は、ペプチドリガンドである(天然存在型リガンド及びペプチド構成物を含む)。
更にまた別の実施形態では、アプタマ―を含む。また、さらに別の実施形態では、CD4拮抗剤は、シクロ(CNSNQIC)である。更にまた別の実施形態では、CD4拮抗剤は、4,4’-ジイソチオシアノ-2,2’-ジヒドロスチルベンジスルホン酸である。
通常、本発明の好適な実施形態中、修飾移植片はCD4拮抗剤を含む。
【0038】
前記の第1、第2及び第3の態様に係る、本明細書の別の態様では、前記方法は、非修飾移植片を対象に導入する工程を有する。ここにおいて、前記対象には、修飾移植片が予め導入されており、前記修飾移植片は免疫細胞含有移細胞植片であって、前記修飾によってCD4が阻害されることを特徴とする。好ましい態様では、前記方法は、前記対象に被修飾移植片を導入する工程を含み、ここで修飾移植片は前もって前記対象に導入され、ここで、修飾移植片は免疫細胞を含む細胞移植片であり、前記修飾はCD4を阻害する。通常、上記した関連態様の好適な実施形態は、本明細書に記載したように、各態様の各実施形態にそれぞれ対応する。
本明細書における第4の態様では、本発明は以下の群から選択される任意の1以上の方法に用いられる、非修飾移植片、修飾移植片、及び/又は、抗CD4抗体に係る。i)外科的移植方法。ii)移植寛容を誘導する方法であって、修飾移植片を用い、非修飾移植片に対する寛容を誘導する方法。iii)1以上の細胞懸濁液、特に、幹細胞含有懸濁液を、ドナーから対象に移植する方法。iv)1以上の組織を、ドナー者から対象に移植する方法。v)1以上の臓器の一部を、ドナーから対象に移植する方法。vi)1以上の臓器を、ドナーから対象に移植する方法。vii)造血システム再構築細胞を、ドナー源から対象に移植する方法であって、随意この後に、1以上の臓器を、前記ドナー提から前記対象に移植する方法。viii)対象の免疫再構築能を高める方法であって、随意この後に、1以上の臓器を前記被験者に移植する方法。
【0039】
一般的に、上記した方法は、好ましくは、修飾移植片を前記対象に導入する第1の工程と、非修飾移植片を前記対象に導入する第2の工程とを有する。ここで、前記修飾移植片は免疫細胞含有細胞移植片であり、前記修飾によってCD4が阻害される(つまり、それぞれ、CD4阻害を伴う)。
或いは、前記した第4の態様に係る変形例では、前記方法は、非修飾移植片を前記対象に導入する工程を有し、前記対象は、修飾移植片を予め移植されており、前記修飾移植片は免疫細胞含有細胞移植片であり、前記修飾によってCD4が阻害される(つまり、それぞれ、CD4阻害を伴う)。後者の変形例の好適な実施形態は、第4の態様の実施形態に対応する。
詳細に述べると、ある好適な実施形態中、第4の態様は、外科的移植方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は抗CD4抗体に関する。
また、好適な一実施形態中、第4の態様は、移植寛容を誘導する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片、及び/又は、抗CD4抗体に関する。ここにおいて、修飾移植片は、非修飾移植片に対する移植寛容を誘導するために用いられる。
【0040】
更にまた、特別な一実施形態では、第4の態様は、1以上の細胞懸濁液、特に幹細胞含有細胞懸濁液を、ドナーから対象に移植する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は、抗CD4抗体に関する。
また、特別な一実施形態中、第4の態様は、1以上の組織をドナーから対象に移植する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は、抗CD4抗体に関する。
更にまた、特別な一実施形態中、第4の態様は、1以上の臓器の一部をドナーから対象に移植する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は、抗CD4抗体に関する。
また、特別な一実施形態中、第4の態様は、1以上の臓器をドナーから対象に移植する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は、抗CD4抗体に関する。
更にまた、特別な一実施形態中、第4の態様は、造血システム再構築細胞をドナー源から対象に移植し、随意この後に1以上の臓器を前記ドナー源から前記対象に移植する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は、抗CD4抗体に関する。
更にまた、特別な一実施形態中、第4の態様は、対象の免疫再構築能を高め、随意この後に1以上の臓器を前記対象に移植する方法に用いる非修飾移植片、修飾移植片及び/又は、抗CD4抗体に関する。
【0041】
ある実施形態では、第4の態様は、前記方法の何れかに用いる非修飾移植片に関する。また、ある実施形態中、第4の態様は、前記方法の何れかに用いる修飾移植片に関する。さらにまた、ある実施形態では、第4の態様は、前記方法の何れかに用いる抗CD4抗体に関する。
通常、第4の態様の実施形態(及びその変形例)は、本明細書に記載したその他の態様の実施形態に対応する。
通常、前記した第1、第2、第3及び第4の態様の実施形態では、前記の各方法に関連付けて列挙した前記第1の工程は、前記方法に関連して列挙した前記第2の工程の前に、実行される。
前記した第1、第2、第3及び第4の態様の特別な実施形態では、前記第1の工程は30分から50年行われ、特に1時間から10年間実行され、例えば、9、8、7、6、5、4、3、又は2年であり、例えば、1日から1年、例えば、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2ヶ月間、前記第2の工程前に実行される。ある実施形態中、前記第1の工程は、少なくとも1時間、特に少なくとも3週間、前記第2の工程の前に実行される。
【0042】
特別な実施形態中、前記第1の工程は少なくとも1時間、特には少なくとも1日、少なくとも1ヶ月、少なくとも1年間、前記第2の工程以前に実行される。また、特別な実施形態では、前記第1の工程は、少なくとも12時間、特には少なくとも1日、少なくとも1週間、少なくとも3週間、少なくとも6ヶ月、前記第2の工程以前に実行される。
また、特別な実施形態中、前記第1の工程は30年経過するまで、特には10年経過するまで、1年経過するまで、1ヶ月経過するまで、前記第2の工程以前に実行される。さらに、特別な実施形態中、前記第1の工程は20年経過するまで、特には5年経過するまで、2年経過するまで、6カ月経過するで、12週間経過するまで、前記第2の工程以前に実行される。
同様に、ここで述べる前記関連した態様では、前記方法は、非修飾移植片を前記対象に導入する工程を有するものとして規定される。ここにおいて、前記対象は修飾移植片を予め導入されており、この予め導入される時期は、上記したように規定されることが好ましい。好適には、前記方法は、前記対象に非修飾移植片を導入する工程を有する。ここにおいて、前記対象に、予め修飾移植片を導入しておき、この導入時期は上に詳述したように決めておくことが好ましい。
【0043】
通常、前記第1、第2、第3及び第4の態様の好適な実施形態では、前記修飾移植片は幹細胞を有する。
また、本発明の特に好適な実施形態では、前記修飾移植片は、CD4拮抗剤で修飾された免疫細胞含有細胞移植片であり、前記修飾によってCD4が阻害されることが好ましい。
一般に、本発明の好適な実施形態中、前記修飾移植片、特に免疫細胞含有細胞修飾片は、CD4拮抗剤を含む。
また、本発明の好適な実施形態では、前記修飾移植片は、細胞移植片のCD4エピトープに結合した抗CD4抗体を有する免疫細胞含有細胞移植片である。
さらにまた、本発明の好適な実施形態では、前記修飾移植片は、CD4エピトープの40%から100%に結合した抗CD4抗体を有する免疫細胞含有細胞移植片である。また、本明細書で記載したインビトロの方法によって、こうした移植片を得ることが好ましい。
前記修飾細胞移植片は、前記移植片内にあって結合可能なCD4エピトープの、50%から100%、特に60%から100%、特に70%から100%、より好適には80%から100%、更に好適には90%から100%、より好適には95%から100%、更により好適には99%から100%に結合した抗CD4抗体を有することが好ましい。最も好ましくは、免疫細胞含有細胞移植片の結合可能なCD4エピトープの本質的にはすべてが抗CD4抗体に結合する。
ある実施形態では、前記修飾移植片は、a)免疫細胞含有細胞移植片を抗CD4抗体とともにインキュベートする工程、及び随意に、b)前記移植片から結合していない抗体を除去する工程を有するインビトロの方法によって取得されるか、取得可能である。
ある好適な実施形態では、前記修飾移植片は、a)免疫細胞含有細胞移植片を抗CD4抗体とともにインキュベートする工程、及び随意に、b)前記移植片から結合していない抗体を取り除き、前記移植片中の非結合抗体の量を減少させる工程を有する、インビトロの方法によって取得される又は取得可能である。より好適な実施形態では、前記移植片中の結合していない抗体の量は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%減少し、或いは100%まで減少する。
また、ある好適な実施形態では、前記修飾移植片は、a)免疫細胞含有細胞移植片を抗CD4抗体とともにインキュベートする工程、及び随意に、b)少なくとも1回又は少なくとも2回、例えば、2、3、4、5又は6回、前記修飾移植片を洗浄することで、前記移植片から結合していない抗体を取り除く工程を有する、インビトロの方法によって取得されるか、取得可能である。前記修飾移植片を洗浄することで、前記移植片中の結合していない抗体の量は減少する。より好適な実施形態では、前記移植片中の結合していない抗体の量は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%減少し、或いは100%まで減少する。好適な洗浄液は当業者に知られており、緩衝食塩水が挙げられる。
【0044】
ある好適な実施形態中、一定量のCD4陽性免疫細胞が、前記洗浄工程を行う間に非特異的に消去又は除去できることが理解される。またより好適な実施形態では、前記修飾移植片は、抗CD4抗体が結合した免疫細胞、特にCD4陽性免疫細胞、例えば、CD4+T細胞を含有する。更に好適な実施形態中、前記修飾移植片は、インキュベートする前に、免疫細胞含有細胞移植片中、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%のCD4陽性免疫細胞を含有する。
また、好適な別の実施形態では、前記修飾移植片は、a)免疫細胞含有細胞移植片を抗CD4抗体とともにインキュベートする工程、及び随意に、b)前記移植片から結合していない抗体だけを取り除く工程を有する、インビトロの方法によって取得されるか、取得可能である。この結果、本明細書で述べたインビトロの方法によって、免疫細胞含有細胞移植片を取得できる。
また、本明細書で用いる「インビトロの方法」とは、生きている対象の外部で行う方法を表す。特にこの方法には、移植片が組織又は臓器を有する、或いは移植片が組織又は臓器である場合の「エクスビボの方法」も含まれるが、但し、生きている対象の内部で行う「インビボの方法」は除外される。
【0045】
また、本明細書で用いる「結合していない抗体」とは、インキュベーション工程後に、移植片に結合していない抗体のことをいう。換言すると、本質的に移植片のリガンドと関連しない抗体のことをいう。
本発明で用いる前記インビトロの方法は、a)抗CD4抗体と伴に免疫細胞含有細胞移植片を、特に1分から7日間インキュベートする工程と、b)前記移植片から結合していない抗体を取り除く工程とを有する、免疫細胞含有細胞移植片を修飾する方法のことをいう。また、前記インビトロの方法の工程a)のインキュベーションは、1分から1日行うことが好ましい。
ある好適な実施形態中、本発明で用いる前記インビトロの方法は、a)抗CD4抗体と伴に免疫細胞含有細胞移植片をインキュベートする工程、特に1分から7日間インキュベートする工程と、b)前記移植片から結合していない抗体を取り除き、前記移植片中の結合していない抗体の量を減少させる工程とを有する、免疫細胞含有細胞移植片の修飾方法であってよい。ここで、より好適な実施形態では、前記移植片中の結合していない抗体の量は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%、或いは100%まで減少する。また、前記インビトロの方法の工程a)におけるインキュベーションは、1分から1日行うことが好ましい。
【0046】
また、好適な別の実施形態では、本発明で用いる前記インビトロの方法は、a)抗CD4抗体と伴に免疫細胞含有細胞移植片インキュベートする工程を、特に1分から7日間インキュベートする工程と、b)前記修飾移植片を、2回、3回、4回、5回又は6回など少なくとも1回又は2回洗浄することで、前記移植片から結合していない抗体を除去する工程とを有する、免疫細胞含有細胞移植片の修飾方法であってよい。前記修飾移植片を洗浄することで、前記移植片中の結合していない抗体の量は減少する。より好適な実施形態では、前記移植片中の結合していない抗体の量は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%、或いは100%まで減少する。また、前記インビトロの方法の工程a)のインキュベーションは、1分から1日行うことが好ましい。
また、好適な実施形態において、一定量のCD4陽性免疫細胞が、前記洗浄工程を行う間に非特異的に消去又は除去できることが理解される。また、より好適な実施形態では、前記方法によって得られる前記修飾移植片は、免疫細胞を含み、特に、抗CD4抗体に結合するCD4陽性免疫細胞、例えば、CD4+T細胞を含有する。更に好適な実施形態中、前記修飾移植片は、インキュベーション前に、免疫細胞含有細胞移植片中、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%のCD4陽性免疫細胞を含有する。
また、好適な別の実施形態では、本発明で用いる前記インビトロの方法は、a)免疫細胞含有細胞移植片を抗CD4抗体とともに、特に1分から7日間、前記インキュベートするする工程、及び、b)前記移植片から結合していない抗体だけを取り除く工程を有する、免疫細胞含有細胞移植片の修飾方法であってよい。また、前記インビトロの方法の工程a)のインキュベーションは、1分から1日行うことが好ましい。
【0047】
通常、前記インビトロの方法の好適な実施形態は、特許文献3から得ることが可能であり、前記特許文献の全体を参照して本明細書中に組み入れる。
ここで用いる前記インビトロの方法の工程a)において、インキュベーション(工程)は前記移植片に前記抗体が結合し得るのに十分な時間行うことが好ましい。さらに、前記インキュベーションは、抗CD4抗体が前記移植片の結合可能なCD4エピトープの、40%から100%、特に50%から100%、特に60%から100%、特に70%から100%、より特に80%から100%、より特に90%から100%、より特に95%から100%、より特に99%から100%に結合し得るのに十分な時間行うことが好ましい。また、このインキュベーションに続けて、前記移植片の結合可能なCD4エピトープの本質的には全てに、抗CD4抗体が結合することが最も好ましい。好適な実施形態では、前記移植片の結合可能なCD4エピトープ、又は、CD4陽性免疫細胞(またはCD4抗原を有する免疫細胞)は除去されない、或いは実質的に除去されないことが理解されよう。従って、更に好適な実施形態では、CD4抗原を有する免疫細胞は非修飾移植片から消失しないか、実質的に消失しない。また、前記インビトロの方法によって得られるか、得ることが可能な修飾移植片は、非修飾移植片のCD4抗原を有する免疫細胞を含むか、実質的に含む。
また、適切なインキュベーション時間は、当業者によって容易に決定される。通常、適切なインキュベーション時間は、用いる移植片の種類に依存する。また、好適なインキュベーション時間は、用いる抗体の量にも依存する。一般的に、前記移植片が、例えば、細胞懸濁液である場合、前記移植片が臓器である場合に比べて、より短いインキュベーション時間でよい。また、前記移植片が組織又は臓器を含む、或いは、組織又は臓器自身である場合、全身の各コンパートメント内に前記抗体を拡散などで輸送するには、より長いインキュベーション時間が好ましい。
さらに、如何なる場合でも当業者ならば、例えば、フローサイトメトリーに関する先行技術でよく知られた方法に従い、抗CD4抗体の結合(状態)を容易に検定できる。
【0048】
ある実施形態中、前記インビトロの方法の工程a)における前記インキュベーションは、1分から7日間実施する。好適には、前記インビトロの方法の工程a)における前記インキュベーションは、1分から1日間実施する。
通常、長いインキュベーション時間よりも短いインキュベーション時間の方が、インビトロ工程で前記移植片に起き得る損傷を最低限にするために、本明細書において好適である。
特に、前記インキュベーションは1分から150分、特に5分から150分、より特に10分から150分、更に特に30分から150分、更に特に40分から120分、更に特に好適は45分から90分、とりわけ50分から70分行うことができる。
また別の実施形態では、前記インキュベーションは150分から7日間、特に150分から5日間、より特に150分から3日間、更に特に150分から1日、とりわけ150分から8時間行うことができる。更に好適な実施形態では、前記インキュベーションは1分から1日の間行うことができる。
【0049】
ここで用いるインビトロの方法の工程(b)に伴う結合していない(抗CD4)抗体を“取り除く”ことについて、この工程を実施する様々な方法が当業者に知られている。移植片から結合していない抗体を取り除く代表的な例として、移植片を洗浄することが挙げられる。移植片が細胞懸濁液を含む、又は、細胞懸濁液自身であるとき、遠心法を用いて洗浄を行うことができる。ある好適な実施形態中、前記移植片中の結合していない抗体の量は、移植片を洗浄することで低減できる、より好適案実施形態では、移植片中の結合していない抗体の量は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%、或いは100%まで低減できる。好適には、ここに用いるインビトロの方法の工程b)に従い、結合していない(抗CD4)抗体だけを除去する。少数のCD4陽性免疫細胞は、結合していない抗体を取り除く間、特に洗浄する間に、非特異的に失われる。また、好適な実施形態中、インキュベーション前に、免疫細胞含有細胞移植片中にあるCD4陽性免疫細胞の、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は95%を、修飾移植片は含有する。
前記工程中、好適には少なくとも40%、より特に少なくとも50%、更に特に少なくとも60%、更に特に少なくとも70%、より特に80%、更に特に90%の結合していない(抗CD4)抗体を、移植片から取り除く。好適には、結合していない(抗CD4)抗体の100%まで移植片から取り除くことができる。
【0050】
前記インキュベーション工程に使用する抗体量は、特に限定されるわけではない。当業者によって、適切な量は容易に決定できるし、用いられる移植片の種類にも依存する。好適には、本発明によれば、前記インキュベーションは、0.1μgから100mgの抗体量を用いて行われる。好適には、本発明によれば、特に移植片が細胞懸濁液である場合、その量は、2×106から2×1010個の有核細胞、特に4×106から1×109個の有核細胞、更に特に1×107から1×108個の有核細胞を、前記対象、好適にはヒト対象に投与する。また、さらに別の実施形態では、前記培養は、0.1μg/1×109個の有核細胞から100mg/2×106個の有核細胞、更に好適には0.1μg/1×109個の有核細胞から100mg/2×107個の有核細胞を用いて実施する。
また、特別な実施形態中、前記インビトロの方法の工程a)のインキュベーションは0.1μg/mlから10mg/mlの抗体量を用いて行う。
また、ある実施形態中、前記移植片が細胞懸濁液である場合、前記インキュベーションは、0.1μg/ml細胞懸濁液から150μg/ml細胞懸濁液の、特に、7μg/ml細胞懸濁液から100μg/ml細胞懸濁液の、より特に、30μg/ml細胞懸濁液から100μg/ml細胞懸濁液の、とりわけ40μg/ml細胞懸濁液から60μg/ml細胞懸濁液の抗体濃度で実施される。
また、ある実施形態中、特に前記移植片が組織又は臓器である場合、前記インキュベーションは、0.1mgから10mg、特に1mgから10mg、更に特に2mgから9mg、より特に3mgから8mg、とりわけ4mgから6mgの抗体量を用いて実施される。
また、ある実施形態中、特に移植片が細胞懸濁液又は臓器である場合、前記インキュベーションは、0.1mg/mlから10mg/ml、好適には1mg/mlから10mg/ml、より好適には2mg/mlから9mg/ml、さらに好適には3mg/mlから8mg/ml、特に好適には4mg/mlから6mg/mlの培養液中の抗体濃度を用いて行う。好適には、所定の容量には、前記組織や臓器の容量とともに(抗体含有)溶液の容量も含まれ、この溶液中で前記組織や臓器をインキュベートする。
【0051】
また、ある実施形態では、特に前記移植片が組織又は臓器である場合、10μg/mlから150μg/ml、特に20μg/mlから100μg/ml、更に特に30μg/mlから100μg/ml、特別には40μg/mlから60μg/mlの抗体濃度の溶液中で前記組織や臓器をインキュベーションすることで、前記インキュベーションを行うことが好ましい。好適には、前記所定の容量には、前記組織や臓器の容量とともに(抗体含有)溶液の容量も含まれ、この溶液中で前記組織や臓器をインキュベーションする。
CD4拮抗剤(例えば、抗CD4抗体含有溶液)を用いて、組織及び/又は臓器をインキュベーションするとき、当業者ならば好適な容器を用いてこの様なインキュベーションを容易に好適に実施するだろう。
如何なる場合でも、抗CD4抗体など、CD4拮抗剤を好適量選択することは、当業者の専門知識によって上手く選定される。一般に、移植片が組織や臓器を含有したり、組織や臓器自身であった場合、多量又は高濃度の拮抗剤(例えば抗体)が好適である。さらに、拮抗剤(例えば抗体)の正確な量又は濃度の選択は、前記組織や臓器の大きさにも依存するだろう。
【0052】
以下の実施形態では、本発明に用いられる修飾移植片の更に好適な実施形態を説明する。
本発明のある実施形態中、修飾移植片は、幹細胞を有する。幹細胞含有移植片は、本明細書中、幹細胞移植片とも称する。
本発明によれば、前記修飾移植片は、CD4抗原を有する細胞を有する。前記修飾移植片は、免疫細胞を有することが好ましく、特にCD4抗原を有する免疫細胞が好ましい。こうした細胞は、当業者によく知られている。ある実施形態では、これらの免疫細胞は、CD4陽性Tリンパ球、又はその前駆体細胞である。また、ある好適な実施形態中、このような免疫細胞は、以下に限定されないが、Tヘルパー細胞や、モノサイト及びマクロファージなどの系統に属する細胞を含む。また、こうした細胞の別の例は、小膠細胞である。
ある実施形態中、修飾移植片は、臓器、好ましくは幹細胞含有臓器を有する、又は、好ましくは臓器、好ましくは幹細胞含有臓器自身である。本願発明によると好適な臓器には、以下に限定されないが、血液、筋肉、脂肪組織、結合組織、上皮、胚および細胞組織が含まれる。
ある実施形態中、修飾移植片は、臓器、好ましくは幹細胞含有臓器を有する、又は、好ましくは臓器、好ましくは幹細胞含有臓器である。好適な臓器には、以下に限定されないが、皮膚、小腸、腎臓、及び肝臓が挙げられる。また、前記臓器は小腸であることが好適である。
また、好適な実施形態中、前記修飾移植片は、好適には細胞懸濁液、好適には幹細胞含有細胞懸濁液である。また、好適な細胞懸濁液及びこの懸濁液を得る方法は当業者によく知られている。例えば、細胞懸濁液移植片は、腸骨稜又は胸骨に穴を開けるなど、骨髄を含む骨に穴を開けて取得、或いは、脂肪組織、歯根、毛髪根、及び上記したその他細胞源など全身にわたる幹細胞ニッチから取得することができる。
【0053】
また、好適な実施形態中、前記移植片、特に幹細胞含有細胞懸濁液は、T細胞、モノサイト及びマクロファージを含む。また、別の好適な実施形態では、修飾移植片、特に細胞懸濁液は、T細胞、および、幹細胞などの非免疫細胞を含む。また、別の好適な実施形態中、幹細胞含有組織、幹細胞含有臓器、又は幹細胞含有細胞懸濁液は、免疫細胞、より好適にはCD4抗原を有する免疫細胞、特に好適にはCD4陽性Tリンパ球又はその前駆細胞を含む。
また、別の好適な実施形態では、幹細胞含有組織、幹細胞含有臓器又は幹細胞含有細胞懸濁液などの移植片又は細胞移植片は、CD4抗原を有する免疫細胞、特にCD4陽性Tリンパ球又はその前駆細胞を含む。
また、ある好適な実施形態では、修飾移植片、特に細胞懸濁液は、骨髄幹細胞、末梢血幹細胞、臍帯血幹細胞、NA-BMCなどの骨髄の成人幹細胞、(特に成人幹細胞由来の、及び/又は成人幹細胞から初期化された)胚性幹細胞、及び多能性幹細胞の任意の細胞を有する。このなかで、後半で述べた細胞は、成人幹細胞由来の、及び/又は成人幹細胞から初期化された細胞などの、人工多能性幹細胞を含む(つまり、多能性胚性幹細胞を含む)。
また、好適な実施形態中、前記修飾移植片は、骨髄懸濁液、特に骨髄幹細胞含有の骨髄懸濁液である。通常、前記修飾移植片、特に骨髄懸濁液は、血液細胞、臍帯血細胞、ドナーのリンパ球、末梢血幹細胞、骨髄の成人幹細胞、胚性幹細胞(特に、成人幹細胞由来の及び/又は成人幹細胞から初期化された細胞)、及び任意の多能性幹細胞に含まれる任意の幹細胞を更に含んでもよい。ここで、多能性幹細胞は、成人幹細胞由来の及び/又は成人幹細胞から初期化された細胞など(つまり、多能性胚性幹細胞を含む)の人工多能性細胞を含む。
【0054】
前記修飾移植片、特に骨髄懸濁液は、さらに、血液細胞、臍帯血細胞、ドナーのリンパ球、末梢血幹細胞、及び/又は、骨髄の成人幹細胞に含まれる任意の幹細胞を含むことができる。
通常、前記細胞懸濁液は、幹細胞(の任意の組合せ)を含む、随意その他任意の細胞(の組合せ)を一緒に有する、任意の細胞懸濁液も含むことを意図している。
また、好適な実施形態中、前記修飾移植片は、T細胞及びモノサイト/マクロファージ含有細胞懸濁液、ここで、前記細胞懸濁液は、骨髄細胞、非接着性骨髄細胞、末梢血細胞、及び/又は臍帯血細胞を含み;リンパ球、モノサイト及び/又はマクロファージを含む細胞懸濁液;幹細胞含有組織;幹細胞含有臓器;免疫細胞含有組織;および免疫細胞含有臓器からなる群から選ばれる。
また、ここで述べる非修飾移植片の実施形態は、前記修飾移植片について上記した好適な実施形態と対応する。
本明細書では一般に、前記移植片(つまり修飾移植片)に含有される細胞量は、特に限定されるものではない。当業者ならば、移植用移植片の好適な移植片量及び細胞量を、容易に選定することが可能であろう。また、ヒト造血系幹細胞を患者に移植するなどの、「ドイツ連邦医学委員会“Deutsche Bundesarztekammer”」による移植ガイドラインなどから、適当な手引書を入手できる。
【0055】
また、好適な実施形態中、前記修飾移植片は細胞懸濁液であり、前記各方法(又は使用)は、前記対象に2×106個から2×1015個の有核細胞の細胞量を投与することを含む。ここで、好適な細胞量は、当業者によって容易に選択できよう。また、好適な範囲の例には、1×107から1×1014個の有核細胞、1×108から1×1013個の有核細胞、1×109から1×1012個の有核細胞、1×1010から1×1011個の有核細胞、1×106から1×108個の有核細胞、1×107から1×109個の有核細胞、1×108から1×1010個の有核細胞、1×109から1×1011個の有核細胞、1×1010から1×1012個の有核細胞、1×1011から1×1013個の有核細胞、1×1012から1×1014個の有核細胞、及び1×1013から1×1015個の有核細胞、が挙げられる。
また、ここに述べる非修飾移植片の実施形態は、前記修飾移植片について上記した好適な実施形態に対応する。
ここで、本発明に用いる移植片が組織又は臓器を有する、或いは、組織又は臓器自身である場合、任意の好適な組織量又は臓器量を、前記対象に対して投与することができる。また、当業者に理解されるように、組織又は臓器中の細胞数を決定することは困難である。特にこの理由から、移植片中に含有される細胞量は、特に限定されるものではない。当業者によって容易に決定又は選択される適切な細胞量は、例えば、対象、移植片及び/又は治療する疾患の種類を考慮することで容易に決定又は選択されるであろう。また、臓器の場合、その臓器全体を投与することが好ましい。
本明細書で述べた第1、第2、第3及び第4の態様の好適な実施形態では、前記した各方法は、i)レシピエントの組織に対して前記非修飾移植片の内部における寛容又は部分寛容を示し、及び/又はii)前記非修飾移植片に対して前記レシピエントの組織の内部にける寛容又は部分寛容を示し、及び/又は、iii)非修飾移植片の移植に際して、GvHD、ドナー移植片拒絶、及び臓器移植拒絶からなる群の任意の拒絶の発生を低減させる可能性を示す。
【0056】
以上より、ある実施形態中、前記した各方法は、レシピエントの組織に対する非修飾移植片の内部における寛容又は部分寛容を示す。よって、ここである実施形態では、前記した各方法は、前記非修飾移植片に対するレシピエントの、組織の内部における寛容又は部分寛容を示す。よって、ここである実施形態では、前記各方法は、前記非修飾移植片の移植に際して、GvHD、ドナー移植片拒絶、及び臓器移植拒絶からなる群の任意の拒絶の発生を低減させる可能性を示す。
また、ここである実施形態中、前記修飾移植片の使用は、前記移植片の移植に際して、GvHD、ドナー移植片拒絶及び臓器拒絶からなる群の任意の拒絶、特に、GvHDの発生を低減する可能性を示す。また、別の実施形態では、前記使用は、前記修飾移植片の移植に際して、移植した免疫担当細胞内でのレシピエント組織に対する寛容を示す。また、別の実施形態では、前記使用は、前記移植片の移植に際して、前記移植片に対する寛容を示す。さらにまた、別の実施形態では、前記使用は、前記移植片の移植に際して、前記移植片に対するレシピエント組織内における寛容又は部分寛容を示す。さらにまた、別の実施形態では、前記使用は前記移植片内における細胞活性化を抑制するためである。好適な実施形態では、前記使用は、CD4陽性免疫細胞が前記移植片内で活性化される能力を低減させるためである。また、好適な実施形態中、前記使用は、前記移植片内でのCD4陽性免疫細胞のアネルギーを獲得するためである。更に別の好適な実施形態では、前記使用は、上記した任意の組合せに関係する及び/又は任意の組み合せである。
【0057】
また、好適な実施形態では、修飾移植片を使用することで、前記移植片の移植に際して、GvHD、ドナー移植片拒絶及び臓器移植拒絶からなる群の任意の拒絶、特にGvHDの発生、の可能性を低減させることになる。また、別の好適な実施形態中、前記使用は、前記修飾移植片の移植に際して、レシピエント組織に対する移植した免疫担当細胞の寛容に結果としてなる。また、別の好適な実施形態中、前記使用は、前記修飾移植片の移植に際して、修飾移植片に対する寛容に結果としてなる。さらにまた、別の好適な実施形態中、前記使用は、前記修飾移植片の移植に際して、修飾移植片に対するレシピエント組織内での寛容又は部分寛容に結果としてなる。また、別の好適な実施形態中、前記使用は、前記移植片内での細胞活性化を抑制する、或いは、前記移植片内での細胞の活性化する能力を低減する、ためである。また、ある好適な実施形態中、前記使用は、前記移植片内でのCD4陽性免疫細胞の活性化する能力を低減する、ためである。また、好適な実施形態中、前記使用は、前記移植片内のCD4陽性免疫細胞のアネルギーを得るためである。さらにまた、好適な実施形態中、前記使用は、上記の任意の組み合わせに関係する、又は任意の組合せである。
【0058】
本発明中、一般的に、前記対象(またはレシピエント、それぞれ)は、ドナーに対して同種又は異種であってよい。
当業者に容易に理解されることであるが、レシピエント及びドナーが、同種で別々の個人であるとき「同種」であると称し、一方、異なる種に属する個人であるとき「異種」と称する。
従って、ある好適な実施形態では、前記対象は、前記非修飾移植片のドナーに対して同種であり、前記修飾移植片のドナーに対しても同種である。
また、別の実施形態では、前記対象は、前記非修飾移植片のドナーに対して異種であり、前記修飾移植片のドナーに対しても異種である。
同様に、本発明中一般的に、複数のドナーは、お互いに関して同種又は異種であってよい。
また、当業者に容易に理解されることであるが、ドナーは、同種で別々の個人であるとき同種であると称し、一方、異なる種に属する個人のとき異種と称する。
従って、ある実施形態では、修飾移植片のドナーは、非修飾移植片のドナーに対して異種である。また、ある実施形態では、修飾移植片のドナーは、非修飾移植片のドナーに対して同種である。
本発明では、修飾移植片及び非修飾移植片のドナー並びにレシピエントの性質と修飾移植片及び非修飾移植片のドナーとレシピエントの関係は、特に限定されるものではない。よって、非限定的な例においては、例えば、レシピエントとドナーがマウスである場合、ドナーは、レシピエントに関する完全なHLA(ヒト白血球抗原)不適合を含む。従って、非限定的な好適な例では、例えば、レシピエント及びドナーがマウスである場合、前記ドナーは、前記レシピエントに関する完全なHLA(ヒト白血球抗原)不適合を有する。
また、別の非限定的な例では、ドナーは、レシピエントに対してハプロタイプ一致(例えば、両親と子供との間の移植)であり、HLA部分適合家族、レシピエントの両親、兄弟又は子供である。
如何なる場合でも、本発明では、レシピエント及びドナー(又は対象それぞれ)は、HLA血縁であることが好ましい。
【0059】
同様に、本発明では、修飾移植片のドナーと非修飾移植片のドナーの性質及び修飾移植片のドナーと非修飾移植片のドナーの関係は、特に限定されるものではない。よって、ある非限定的な例では、ドナーは、お互いに対する完全なHLA不適合を含み、好適には完全なHLA不適合を有する。また、別の非限定的な例では、あるドナーは、例えば、別のドナーに対してハプロタイプ一致であり、例えば、HLA部分適合家族、別のドナーの両親、兄弟、又は子供である。
如何なる場合でも、本発明では、前記修飾移植片及び非修飾移植片は、HLA血縁ドナーであることが好ましい。従って、本発明におけるそれぞれ複数のドナーは、HLA血縁(つまり、互いにHLA血縁)であることが好ましい。
また、本明細書で用いられるように、「HLA血縁ドナー」の用語は、50%以下のHLA不適合を含む、好ましくはHLA不適合50%以下を有する、ドナーとして理解される。好適な実施形態では、前記ドナーは、40%以下のHLA不適合、好適には30%以下のHLA不適合、好適には20%以下のHLA不適合、好適には10%以下のHLA不適合を含む、好ましくは有する、好適にはHLM不適合を含まない、好ましくはもたない。
同様に、所定のドナー及びレシピエントは、50%以下のHLA不適合を含むとき、好適には50%以下のHLA不適合をもつとき、「HLA血縁」であると表される。好適な実施形態では、所定のドナー及びレシピエントは、40%以下のHLA不適合、好適には30%以下のHLA不適合、好適には20%以下のHLA不適合、好適には10%以下のHLA不適合を含む、好ましくは有する、又はHLA不適合を含まない、好ましくはもたない。
【0060】
従って、特にヒトの場合、「HLA血縁」の用語は、50%以下のHLA不適合、好適には40%以下のHLA不適合、好適には30%以下のHLA不適合、好適には20%以下のHLA不適合、好適には10%以下HLA不適合が存在することを示すか、又はHLA不適合が存在しないことを示すと理解されることが好ましい。
従って、特にヒトの場合、「HLA血縁」の用語は、6個以下のHLA不適合、好適には5個以下のHLA不適合、好適には4個以下のHLA不適合、好適には3個以下のHLA不適合、好適には2個以下のHLA不適合、好適には1個以下のHLA不適合が存在する、或いは、HLA不適合が存在しないことを示すと理解されることが好ましい。
ある好適な実施形態では、特にヒトの場合、前記した不適合の百分率及び/又は個数は、HLA遺伝子座、HLA-A、-B、-C、-DR、-DQ及び-DP(全部で12個のHLA遺伝子座に対応する)に関連して決定される。別の好適な実施形態では、前記不適合の百分率及び/又は個数は、HLA遺伝子座、HLA-A、-B、-C、-DR及び-DQ(全部で10個のHLA遺伝子座に対応する)に関連して決定される。また、さらに別の好適な実施形態では、前記不適合の百分率及び/又は個数は、HLA遺伝子座、HLA-A、-B、-C及び-DR(全部で8個のHLA遺伝子座に対応する)に関連して決定される。
【0061】
本明細書では一般的に、HLA不適合を決定する方法は特に限定されないが、当業者にとって容易に使用可能で、明白なものである。
また、当業者に容易に理解されるように、「HLA血縁」の用語の上記定義では、HLA遺伝子座は、対応する適切な遺伝子座に置換されることができ、、この遺伝子座位について複数の非ヒト型ドナー及びレシピエントどうしを互いに比較する。前記遺伝子座は、当業者に容易に知られているものである。
さらに、本明細書において想到可能な事例では、前記修飾移植片(例えば、遺伝子操作をしていない、又は遺伝子操作を行った後)は、非修飾移植片に対しHLA血縁であり、この逆もまた同様である。従って、本発明の好適な実施形態では、前記修飾移植片及び非修飾移植片は、「HLA血縁」である。ここにおいて、「HLA血縁」について好適な実施形態は、上記した任意の形態に対応する。また、本明細書において想到可能な事例では、前記修飾及び/又は非修飾移植片(例えば、遺伝子操作をしていない、又は遺伝子操作を行った後)は、レシピエントに対しHLA血縁である。よって、本発明の好適な実施形態では、前記修飾移植片は、レシピエントに対しHLA血縁である。また、本発明の好適な実施形態では、前記非修飾移植片は、レシピエントに対しHLA血縁である。繰返すが、「HLA血縁」に関する好適な実施形態は、上記した任意の実施形態に対応する。
従って、当業者に理解されるように、各ドナーがHLA血縁でない場合、前記修飾移植片及び非修飾移植片はHLA血縁であってよい。さらに、各ドナーとレシピエントがHLA血縁である場合、所定の修飾移植片及び/又は非修飾移植片はHLA血縁であってよい。また、当業者に容易に理解されるように、ドナーが異種である場合、(移植片、又は)ドナーはHLA血縁であってよい。さらに、(修飾及び非修飾移植片、又は)所定のドナー及びレシピエントが異種である場合、ドナー及びレシピエントはHLA血縁であってよい。
【0062】
上記した後者の例については、例えば、ドナー(又は移植片、それぞれ)の(1つ)を遺伝子操作することで、1個以上のHLA適合又はそれ以上のHLA適合を達成できる。よって、好適な実施形態では、レシピエントに対してドナー(または、修飾移植片及び非修飾移植片のドナー各々)は、ドナー細胞などの遺伝子操作後にHLA不適合を6個以下含む、又は、有することが好ましい。また、好適には、例えばドナー細胞の遺伝子操作後にHLA不適合を3個以下含む、又は、有することが好ましく、例えばドナー細胞の遺伝子操作後にHLA不適合を2個以下含む、又は、有することが好ましく、例えばドナー細胞の遺伝子操作後にHLA不適合を1個以下含む、又は、有することが好ましく、更に好適には、例えばドナー細胞の遺伝子操作後にHLA不適合を含まない、又は、もたないことが好ましい。また、上記した後者の例における実施形態は、先の述べたものに対応する。
また、上記したように、本発明では、修飾移植片及び非修飾移植片は、HLA血縁ドナーからのものである。換言すれば、修飾移植片の提供者と、非修飾移植片の提供者とは、HLA血縁であることが好ましい。
ここで、HLA血縁ドナーの限定しない好適な例には、組織型適合ドナー及び血縁の双子が挙げられる。よって、ある実施形態では、前記HLA血縁ドナーは、組織型適合ドナーである(例えば、組織のHLA型が適合したドナー)。従って、ある実施形態中、修飾移植片及び非修飾移植片は、組織型が適合したドナーに由来する。ある実施形態中、前記複数のHLA血縁ドナーは、血縁の双子、特に一卵性双生児である。したがって、ある所定の実施形態では、修飾移植片および被修飾移植片は血縁の双子、特に一卵性双生児からのものである。
【0063】
通常、特に好適な実施形態では、修飾移植片及び非修飾移植片は、同一ドナーからのものである。よって、好適な実施形態中、前記HLA血縁ドナーは、一つの同じドナーである。また、ここで用いられるHLA血縁ドナーの用語は、一つの(特定の)ドナーのことを実際に意味する。したがって、特に好ましい実施形態では、前記HLA血縁ドナーは、一つの特定のドナーである。従って、本発明の好適な実施形態では、修飾移植片及び非修飾移植片の両者ともに同一提供者に由来する。
本発明の好適な実施形態中、抗CD4抗体は、i)Max16H5,OKT4A,OKTcdr4a,cMT-412,YHB.46からなる群から選択されるが、特に前記抗CD4抗体はMax16H5である;または、ii)抗体30F16H5である;または、iii)受託番号ECACC88050502で寄託された細胞株から得られる;または、iv)2011年12月2日にDSMZに寄託された細胞株MAX.16H5/30F16H5から得られる;または、v)抗体16H5.chimIgG4である;または、vi)2011年12月2日にDSMZに寄託された細胞株CD4.16H5.chimIgG4から得られる;または、 vii)抗体16H5.chimIgG4のVH及びVKを含む抗体である;または、viii)2011年12月2日にDSMZに寄託された細胞株CD4.16H5.chimIgG4から得られる抗体のVH及びVKからを含む抗体である;または、ix)SEQ ID NOs:1~10から選択されるVHとSEQ ID NOs:11~20から選択されるVKの任意の組み合わせを有する抗体であって、前記組み合わせはVH1/VK1、VH2/VK2、VH4/VK2およびVH4/VK4から選択させることが好ましく、特にこの組み合わせはVH2/VK2が好ましい;或いは、x)先のi)~ix)の抗体から選択される抗体の混合物である。
【0064】
従って、本発明に沿って用いられる抗CD4抗体は、Max16H5、OKT4A、 OKTcdr4a、 cMT-412、 YHB.46からなる群から選択される。特に好適な抗CD4抗体は、Max16H5である。Max16H5を産生する細胞は、受託番号ECACC88050502で、ECACC(European Collection of Cell Cultures)に寄託した。また、前記抗体は、特許文献1に開示されると伴に、その全文を参照して本明細書中に組み入れる。また、ここで用いられるように、抗体「Max16H5」は、「Max.16H5」、「MAX16H5」又は「MAX.16H5」、或いは「30F16H5」とも呼ばれる(ここで、最後に述べた名前は、前記抗体を産生する寄託細胞の名前でもある)。Max.16H5は、細胞株Max.16H5/30F16H5からも得ることができる(寄託DSM ACC3148参照)。また、本発明で用いられる、特に好適な別の抗CD4抗体は16H5.chimIgG4である。本明細書で用いられるように、前記抗体は「16H5.chim」又は「CD4.16H5.chimIgG4」とも呼ばれる(ここで、後者の名前は、前記抗体を産生する寄託細胞の名前でもある)。16H5.chimIgG4は、細胞株CD4.16H5.chimIgG4から得ることができる(寄託DSM ACC3147参照)。
詳細に述べると、本発明で用いる好適な抗CD4抗体は、例えば、以下の任意の生物材料寄託物から得ることができる。i)受託番号ECACC88050502の欧州細胞培養コレクションの寄託物(特許文献1に記載)、ii)2011年12月2日、DSMZに寄託した受託番号DSM ACC3148の寄委託物「MAX.16H5/30F16H5」;iii)2011年12月2日、DSMZに寄託した受託番号DSM ACC3147の寄託物「CD4.16H5.chimIgG4」。これら全ての寄託物は、細胞又は細胞株をそれぞれ含み、この中から、特に、本発明の抗CD4抗体を得ることができる。
【0065】
また、本発明は、ここに開示する実施形態とは別の実施形態に関し、ここで「ECACC 88050502」の用語が「MAX.16H5/30F16H5」と置換されている。同様に、本発明は、「細胞株ECACC 88050502」の用語又はその等価的用語が、「細胞株MAX.16H5/30F16H5」又はその等価的用語と置換される実施形態にも係る。さらに、本発明は、ここに開示する実施形態とは別の実施形態に関し、ここで「ECACC 88050502」の用語が「MAX.16H5.chimIgG4」と置換される。同様に、更に本発明は「細胞株ECACC 88050502」の用語又はその等価的用語が、「細胞株CD4.16H5.chimIgG4」又はその等価的用語と置換される実施形態にも係る。
さらに、本発明の実施形態では、本明細書で用いられる特別な抗CD4抗体(修飾抗体など含む)は、特許文献3に記載される抗CD4抗体(特に、前記特許文献中記載される「追加態様」参照)に対応するとともに、その全体を参照して本明細書中に組み入れる。また、上記したことは、特許文献3の42および以下のページに開示される項目1~33に係る実施形態にも適用される。
同様に、本発明の実施形態で用いられる抗CD4抗体を得る及び/又は調製する特定の方法(及びその実施形態)は、特許文献3に記載される抗CD4抗体に対応するとともに、その全体を参照して本明細書中に組み入れる。また、同様にして、本発明の実施形態で用いられる抗CD4抗体を評価する特定の方法(及びその実施形態)は、特許文献3に記載される抗CD4抗体に対応するとともに、その全体を参照して本明細書中に組み入れる(なお、前記評価方法は、例えば、抗体親和性の測定方法を含む)。
【0066】
ここにおいて、「VH」の用語は、抗体の重鎖の重鎖可変領域を表す。また、前記の「重鎖可変領域」は、「重鎖免疫グロブリン可変領域」とも呼ばれる。なお、これらの用語は先行技術で良く知られている。また、一般的に「VL」の用語は、抗体の軽鎖の軽鎖可変領域を意味する。この「軽鎖可変領域」の用語は、「軽鎖免疫グロブリン可変領域」とも呼ばれる。これらの用語も先行技術で良く知られている。好適には、VHは、長さが約110~125個のアミノ酸残基から構成されるポリペプチドを意味する。同様に、VLは、長さが約95~130個のアミノ酸残基から構成されるポリペプチドを意味する。
また、好適な実施形態では、前記対象に導入する前に、前記非修飾移植片及び/又は修飾移植片を、可溶性生物活性分子とともに追加でインキュベートする。よって、好適な実施形態中、前記対象への導入に先立ち、前記非修飾移植片を、可溶性生物活性分子と伴に追加でインキュベートする。また、したがって、好適な実施形態中、前記対象への導入に先立ち、前記修飾移植片を、可溶性生物活性分子と伴に追加でインキュベーションする。
上記したそれぞれの場合において、特定のそのような生物活性分子は、制御性T細胞の免疫抑制、免疫寛容性、及び/又はその生成を促進する薬剤である。好適には、それぞれの場合において、前記生物活性分子は、制御性T細胞の免疫抑制、免疫寛容性、及び/又はその(好ましい)生成、及び/又はその(好ましい)活性化を促進する薬剤である
好適で代表的な物質は、IL-2、TGF-β、ラパマイシン、レチノイン酸、4-1BBリガンド、抗CD28抗体、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0067】
一般的に、本発明で用いられる移植片は、任意の薬剤又は(複数の)薬剤の組合せとともに対象に随意投与できる。これは、修飾移植片および被修飾移植片の両方にあてはまる。
前記(複数の)薬剤は、移植に先だって、移植と一緒に、及び/又は移植後に投与できる。好適な投与様式及び投与経路は特に限定されるものではないが、当業者によって容易に選択できる。
好適には、前記(複数の)薬剤は、方法、使用、修飾移植片、又は上記した使用のための修飾移植片の特性又は長所を補助する。例えば、GvHD、ドナー移植片拒絶、及びドナー臓器拒絶からなる群の任意の1つの可能性を低減するなどが挙げられる。このような複数の薬剤の限定しない例としては、ラパマイシン及びレチノイン酸が挙げられる。
ここで、好適な実施形態では、修飾移植片は、i)レシピエント組織に対する修飾移植片の寛容または部分寛容の達成;及び/又は、ii)修飾移植片に対するレシピエント組織の寛容または部分寛容の達成;及び/又は、iii)前記修飾移植片の移植に伴う、GvHD、ドナー移植片拒絶、および組織拒絶からなる群の何れか一つの可能性の低減、に使用される。
好適な実施形態では、i)レシピエント組織に対する非修飾移植片の寛容又は部分寛容を達成するため、及び/又は、ii)非修飾移植片に対するレシピエント組織の寛容又は部分寛容を達成するため、及び/又は、iii)前記非修飾移植片の移植に際して、GvHD、ドナー移植片拒絶及び臓器拒絶からなる群の任意の1つの可能性を低減させるために、前記修飾移植片が使用される。
【0068】
また、別の態様では、本発明は、本明細書で述べられ使用されたものに従い、そのような治療が必要な対象を治療する方法を特徴とする。好適な実施形態中、前記した移植片、対象、方法及び/又は疾患は上記した通りである。
更に別の態様では、本発明は、対象への移植によって治療可能な1以上の疾患の治療、及び/又は、本明細書で記載した(医学的)使用、のための医薬品用の非修飾移植片、修飾移植片及び/又は抗CD4抗体を特徴とする。好適な実施形態では、前記使用は、上記したように規定される。従って、好適な実施形態中、前記した移植片、対象、方法、及び/又は疾患は、上記の通りである。
更に別の態様では、本発明で用いられる移植片(特に修飾移植片)は、幹細胞を含んでいても、又は含まなくてもよい。つまり、上で述べた後者の態様では、免疫細胞含有細胞移植片は、任意の移植片と置換えられて、幹細胞及び幹細胞を含有しない移植片を含む。換言すれば、本発明の移植片、又は本発明に従って用いられる移植片は、任意の移植片であってよく、又は免疫細胞含有細胞移植片であってよい。更に別の言い方をすれば、ある実施形態中、本発明に従って用いられる移植片は幹細胞を含むが、他方、別の実施形態では、本発明に従って用いられる移植片は幹細胞を含まない。ある実施形態中、前記移植片は、単離したCD4+細胞を含まない。また、別の実施形態中、前記移植片は精製したD0.11.10 CD4+T細胞を含まない。
一般的に、本明細書の様々な態様に係る実施形態は、特許文献3に記載される実施形態に対応する。
また通常、本発明の態様に係る反応機構的、実験的及び理論的な特徴は、同じく特許文献3に記載される。
一般的に、本発明では、「含む」の用語又はその等価な用語が、「有する」又はその等価な用語と置換えられる実施形態に係る。例えば、本発明は通常、「含んでいる」の用語又はその等価な用語が「有している」又はその等価な用語と置換えられる実施形態に係る。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、これによって本発明の範囲を限定するつもりはない。
【実施例1】
【0069】
(動物及び実験計画)
ドナーであるトリプルトランスジェニックマウス(ヒトCD4+/+、マウスCD4-/-、 HLA-DR3+/+) TTG-C57Bl/6を、ライプチッヒ大学の動物施設で飼育した(非特許文献25、49)。レシピエントであるBalb/cwtマウスを、チャールスリバーから購入した(ザルツフェルト、ドイツ)(非特許文献25、49)。全てのマウスを、標準化した条件の下で維持した(非特許文献25、49)。遺伝子組換えマウスでは、CD4導入遺伝子は、マウスCD4エンハンサー因子にライゲーションされ、T細胞サブセット特異的発現に導く自身のプロモーターを有する(非特許文献25、49)。マウスCD8+は影響をうけない(非特許文献25、49)。遺伝子組換えマウスは、マウスMHCII複合体に加えてHLA-DR3分子を発現する(非特許文献25、49)。TTG-C57Bl/6マウスは、完全機能性マウス免疫系を有する(非特許文献25、49)。前記マウスは、自由に餌を与えられた(非特許文献25、49)。全てのマウスは、ライプチッヒ大学動物飼育委員会のガイドラインに従って収容、処置又は取扱い、ライプチッヒの動物飼育地域委員会による承認を受けた(非特許文献25、49)。
また、Balb/cwtへの移植を行うに先立ち、ドナーのTTG-C57BI/6マウス由来の同種造血幹細胞移植片を、MAX.16H5 IgG1又は対照抗体と一緒に2時間インキュベーションした(非特許文献25、49)。生存性及びGvHD発生は毎日測定し、生着、血液(WBCサブセット)及び免疫的再構築(マウスCD4、ヒトCD4、マウスCD8、HLA-DR3、及びH2Kb)を毎週測定した(非特許文献25、49)。
【0070】
(放射線照射プロトコル)
マウスに放射線を照射するために、本発明者らが以前記載したように、X線装置(D3255、オルトボルテージ、ガルメイメディカル、キャンバリー、英国)を、動物放射線照射用に調整した(非特許文献21)。レシピエントであるマウスへの移植を行う前に、照射を実施した。
(骨髄細胞、脾臓細胞及び抗体インキュベーションの調製/準備)
アイソタイプコントロールとして、LEAF(商標)精製マウスIgG1(κ、アイソタイプコントロール抗体、サンディエゴ、カリフォルニア92121)由来の抗体を使用した(非特許文献25)。MAX.16H5IgG1抗体を以前に述べたように用いた(非特許文献25)。骨髄細胞(BM)及び脾臓細胞を、他で複数記載されている方法で調製した(非特許文献21~25、49)。抗体のインキュベーションのために、計算して求めた抗体量を使用前に希釈し、FCSなしDMEM中で最終濃度1mg/mlとした(非特許文献25)。その後、ドナー由来の1.4×108個のBM及び1.4×108個の脾臓細胞を、FCSなしDMEM15mlの中、800μgのMAX.16H5IgG1と一緒に室温下、暗所にて2時間インキュベートした(非特許文献25)。対照として、ドナー由来の骨髄細胞と脾臓細胞とを、プレインキュベーションなしに同様の条件で調製した。インキュベーション2時間後、細胞を300g/10分間遠心してペレット状にし、PBS(1x)にて300g/10分間一回洗浄し、結合していない抗体を除去した(非特許文献2)
(細胞移植)
同時移植実験を行うために、ドナーのTTG-C57Bl/6マウスの2×107個のプレインキュベートした骨髄細胞を、MAX.16H5IgG1のプレインキュベーションした2×107個の脾臓細胞に添加した(非特許文献25)。滅菌ずみ0.9%Na Clの150μl最終容量として、細胞濃度を調節した(非特許文献25)。続いて、致死的に放射線照射されたレシピエントBalb/cwtマウスの側方尾静脈に静注して、前記移植片を同種移植した(非特許文献25)。移植後、生存性、GvHD症状及び体重を毎日測定した(非特許文献25)。
【0071】
(フローサイトメトリー)
移植に前後して、ドナーTTG-C57Bl/6マウス及びレシピエントBalb/cwtマウスを、フローサイトメトリーで分析した。サイトメトリー分析を行うために、以前記載したように細胞を調製し、インキュベートした(非特許文献21~25)。さらに、移植を行う前に、脾臓細胞及び骨髄細胞のバイアビリティーを、7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD)で染色して検定した。300μlのPBS中、室温で30分、1×106個の細胞を5μl(0.25μg/検定)の7-ADDと一緒にインキュベートし、直ちに測定した。また、移植に前後して、レシピエントBalb/cwtマウスをフローサイトメトリーで分析し、全血液細胞数を決定した。実験には以下の抗体を使用した:マウスCD4-PECy7、MHC-I(H-2D[b]-PE、及びマウスCD8-PerCP[BDバイオサイエンス、ハイデルベルグ、ドイツ];マウスCD3-FITC及びヒトCD4-APC[ベックマン クールター、クレフェルト、ドイツ];及びヒトHLA-DR3-FITC[イムノツールズ、フリーゾイテ、ドイツ]。また、マウスFoxP3をサイクロメトリー分析するために、製造者プロトコルに従いマウスTreg検出キットを使用した[ミルテニー バイオテック有限会社、ベルギッシュ・グラートバッハ、ドイツ]。BD FACSCanto(商標)IIフローサイトメータでデータを収集し、BD FACSDiva(商標)ソフトウエアを用いて分析した[両方共にBDバイオサイエンス、ハイデルベルグ、ドイツ](非特許文献25)。
【0072】
(皮膚移植)
同種皮膚移植を行うために、(C57Bl/6血液キメラ性を示す)Balb/cwt(TTG)マウス及びBalb/cwtマウスをレシピエントとして使用し、CD4/CD3マウス(TTG)をドナーとして使用した。当局で承認された標準プロトコルに従い、レシピエントマウスに麻酔をかけた。ドナーのマウス尻尾から直に皮膚を調製した。移植前に、レシピエントマウスの肩の毛を注意深く剃った。ドナーの尾皮膚5×5mm全厚移植片(TTG)を、Balb/c(TTG)レシピエントマウス又はBalb/cwtレシピエントマウスに移植した。移植した皮膚移植片は、滅菌ずみ外科糸で縫い合わせ固定し、滅菌ずみ粘着包帯を更に施した。当局で承認された標準プロトコルに従い、レシピエントマウスを覚醒させた。術後に、マウスを個々に収容して損傷を抑制した。皮膚移植の全ての手順は手術室において無菌条件の下で実施し、全手順は当局の承認を得た。マウスの観察は毎日行った。皮膚移植して50日後に、組織学的分析用に組織を採取した。
【0073】
(レシピエントマウスの組織学的分析)
組織学的分析は、以前に記載したように行った(非特許文献23)。
(統計分析)
全てのデータは、平均±標準偏差で表した(非特許文献24)。また、統計分析及びグラフ表示は、シグマプロット10.0/シグマプロット3.5ソフトウエア(シスタット、エルクラート、ドイツ(非特許文献24))及びグラフパッド プリズム5(v5.03、グラフパッド ソフトウエア社、サンディエゴ、カリフォルニア)を用いて行った。p値はシグマプロット11.0/シグマスタット3.5ソフトウエアを用いて求めた。検定変数には、GvHDスコア、体重、生存性及び細胞数を用いた。生存曲線分析は対数順位検定を用いて行い、他の変数分析は、t-検定、マン・ホイットニーU検定又はホルム・サイダック検定を用いて行った。
【0074】
(結果:
図1も参照)
免疫寛容を示した、Balb/c(TTG)レシピエントマウス上の第三者TTGドナーマウス由来の固形臓器(例えば、皮膚)は、移植後に拒絶を起こさないと仮定した。このため、TTGマウスの尾皮膚を用いて、5匹のBalb/c(TTG)マウス(C57Bl/6血液キメラ化を示す)及び4匹のBalb/c
wtマウス(対照群)に移植を行った。なお、先だって行われた造血幹細胞移植のため、Balb/c(TTG)レシピエントマウスは、対照群マウスよりも約6月齢年長であったことを言及しておく。皮膚移植したBalb/c(TTG)マウスの60%が生存し、Balb/c
wtマウスは100%であった。それにも関わらず、TTGマウスから第三者皮膚移植片を受けた、すべての生存Balb/c(TTG)マウス(C57Bl/6血液キメラ化を示す;N=3)は、対照群と異なり移植片拒絶を示さなかった(
図1)。一方、TTG皮膚の移植不全が、Balb/c
wtマウス対照群(N=4)で観察された。
【実施例2】
【0075】
本発明で用いた他の抗体については、キメラ型抗CD4抗体を作製すると伴に、特許文献3の実施例2に従って修飾抗CD4抗体を設計し、移植した。なお、特許文献3の全体を参照して本明細書中に組み入れるものとする。
【実施例3】
【0076】
また、本発明の論点に関連付けて、当業者によって補充的に使用される可能性があるヒト免疫系の動物モデルについては、特許文献EP1887859及びUS 2008216182などの特許ファミリー全体を包括する特許文献2に記載されている。これら特許文献全てを参照して本明細書中に明確に組み入れるものとする。
【配列表】