(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】二酸化炭素排出量試算システム、及び二酸化炭素排出量試算方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20240307BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
G05B19/18 W
(21)【出願番号】P 2022166850
(22)【出願日】2022-10-18
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】茂知野 英子
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-130971(JP,A)
【文献】特開2012-113522(JP,A)
【文献】特開2011-028372(JP,A)
【文献】特開2021-189566(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104925(WO,A1)
【文献】特開2013-164797(JP,A)
【文献】特開2020-154429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4063、18
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工を実際に行った加工機である実加工機が利用した加工プログラムに従って、前記実加工機とは異なる加工機である対象機が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算する演算部と、
前記加工プログラムを記憶する加工プログラム記憶部と、
前記実加工機の加工条件を記憶する実加工機加工条件記憶部と、
前記対象機の加工条件を記憶する対象機加工条件記憶部と、を備え、
前記演算部は、
前記対象機加工条件記憶部を検索し、前記実加工機が前記加工プログラムに従って加工を行ったときの前記実加工機の加工条件と共通する、前記対象機の加工条件を抽出し、
前記実加工機が利用した前記加工プログラムを解析し、抽出された前記対象機の加工条件を用いて前記加工プログラムを実行したものと仮定して、前記対象機が加工に要する加工時間を予測し、
予測された前記加工時間に基づいて、前記対象機の二酸化炭素排出量を試算する
二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項2】
前記実加工機の消費電力量を計測する電力計をさらに有し、
前記演算部は、
前記電力計によって計測される前記実加工機の消費電力量に基づいて、前記実加工機が加工を開始してから終了するまでの前記実加工機の二酸化炭素排出量を計算し、
表示装置に、前記対象機の二酸化炭素排出量と、前記実加工機の二酸化炭素排出量とを比較して表示する
請求項1に記載の二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項3】
前記演算部は、
予測された前記加工時間の間に前記対象機が消費する消費電力量を計算し、前記消費電力量に基づいて前記対象機の二酸化素排出量を試算する
請求項2に記載の二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項4】
前記加工機は、レーザビームを用いてワークを切断するレーザ加工機であり、
前記演算部は、
前記加工プログラムに記載されている各行のコードを加工条件番号毎に分割し、分割されたコード毎に前記加工時間を予測する
請求項1に記載の二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項5】
前記演算部は、
前記実加工機を制御する制御装置に搭載されている
請求項2に記載の二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項6】
前記演算部は、
前記実加工機の加工が途中で異常終了した場合には、前記加工プログラムに記載されたコードのうち、最後に実行したコードを特定し、
最後に実行したコードまでの情報に基づいて、前記加工時間を予測する
請求項5に記載の二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項7】
前記演算部は、
前記加工プログラム単位、
前記加工機で加工するシート単位
、又は
前記加工機で加工されたパーツ単位で、前記対象機の二酸化炭素排出量、及び前記実加工機の二酸化炭素排出量を管理する
請求項6に記載の二酸化炭素排出量試算システム。
【請求項8】
加工を実際に行った加工機である実加工機が利用した加工プログラムに従って、前記実加工機とは異なる加工機である対象機が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算するコンピュータが、
前記加工プログラムを記憶する加工プログラム記憶部と、前記実加工機の加工条件を記憶する第1加工条件記憶部と、前記対象機の加工条件を記憶する対象機加工条件記憶部と、を参照し、
前記実加工機が前記加工プログラムに従って加工を行ったときの前記実加工機の加工条件と共通する、前記対象機の加工条件を抽出し、
前記実加工機が利用した前記加工プログラムを解析し、抽出された前記対象機の加工条件で前記加工プログラムを実行したものと仮定して、前記対象機が加工に要する加工時間を予測し、
予測された前記加工時間に基づいて、前記対象機の二酸化炭素排出量を試算する
二酸化炭素排出量試算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素排出量試算システム、及び二酸化炭素排出量試算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、工作機械システムの二酸化炭素排出量を演算する手法が開示されている。この工作機械システムは、起動信号及び加工プログラムの加工終了命令に基づいて1ワークの加工に要する時間を算出し、消費電力と加工時間とに基づいて1ワークの加工に要する消費電力量を演算する。そして、工作機械システムは、演算された消費電力量と二酸化炭素排出原単位とに基づいて、1ワークの加工に要する二酸化炭素排出量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手法は、実際に加工を行った実加工機についての二酸化炭素排出量を演算しているに過ぎない。そのため、実加工機が行った加工を、実加工機とは異なる対象機が実行する場合に、その対象機が排出する二酸化炭素排出量を知りたいという要求を満足するものではなった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の二酸化炭素排出量試算システムは、加工を実際に行った加工機である実加工機が利用した加工プログラムに従って、実加工機とは異なる加工機である対象機が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算する演算部と、加工プログラムを記憶する加工プログラム記憶部と、実加工機の加工条件を記憶する実加工機加工条件記憶部と、対象機の加工条件を記憶する対象機加工条件記憶部と、を備え、演算部は、対象機加工条件記憶部を検索し、実加工機が加工プログラムに従って加工を行ったときの実加工機の加工条件と共通する、対象機の加工条件を抽出し、実加工機が利用した加工プログラムを解析し、抽出された対象機の加工条件を用いて加工プログラムを実行したものと仮定して、対象機が加工に要する加工時間を予測し、予測された加工時間に基づいて、対象機の二酸化炭素排出量を試算する。
【0006】
この構成によれば、演算部は、実加工機の加工条件を対象機の加工条件に置き換えた上で、実加工機が利用した加工プログラムを解析することができる。これにより、対象機が加工に要する加工時間を予測することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、実加工機が行った加工を対象機が実行する場合に、その対象機が排出する二酸化炭素排出量を試算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素排出量試算システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、加工プログラムを示す説明図である。
【
図3】
図3は、二酸化炭素排出量を試算するための処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、対象機DBを検索する処理を説明する図である。
【
図5】
図5は、表示装置に表示される二酸化炭素排出量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る二酸化炭素排出量試算システム、及び二酸化炭素排出量試算方法ついて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る二酸化炭素排出量試算システムの構成を示す図である。本実施形態に係る二酸化炭素排出量試算システム1は、加工を実際に行った加工機である実加工機2が利用した加工プログラムに従って、実加工機2とは異なる加工機である対象機3が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算する演算部81と、加工プログラムを記憶する加工プログラムデータベース(DB)4と、実加工機2の加工条件を記憶する実加工機加工条件データベース(DB)5と、対象機3の加工条件を記憶する対象機データベース(DB)6と、を備える。演算部81は、対象機DB6を検索し、実加工機2が加工プログラムに従って加工を行ったときの実加工機2の加工条件と共通する、対象機3の加工条件を抽出し、実加工機2が利用した加工プログラムを解析し、抽出された対象機3の加工条件を用いて加工プログラムを実行したものと仮定して、対象機3が加工に要する加工時間を予測し、予測された加工時間に基づいて、対象機3の二酸化炭素排出量を試算する。
【0011】
以下、二酸化炭素排出量試算システム1を説明する。この二酸化炭素排出量試算システム1は、実加工機2、加工プログラムDB4、加工条件DB5、対象機DB6、実績DB7、制御装置8、表示装置9、及び入力装置10を備えている。
【0012】
実加工機2は、加工を実際に行う加工機である。本実施形態では、実加工機2として、レーザビームを用いてワークを切断するレーザ加工機(レーザ切断加工機)を例示する。実加工機2は、例えばファイバレーザ加工機である。
【0013】
実加工機2には、実加工機2が消費する消費電力量を計測する電力計20が設けられている。電力計20は、レーザビームを照射する加工ヘッド、加工ヘッドを移動する移動機構などを含む加工機本体、並びにレーザ発振器などの周辺機器が消費する消費電力量を計測する。
【0014】
加工プログラムDB4は、実加工機2がワークを切断するための加工プログラムが格納されている。
図2は、加工プログラムを示す説明図である。加工プログラムには、実加工機2を制御するための制御命令である複数のコードが行単位で記述されている。個々のコードには、加工条件の設定、レーザビームの射出開始、加工送り、レーザビームの射出停止、ピアス位置への加工ヘッドの移動といった、加工開始から加工終了までの実加工機2の一連の動作が規定されている。加工プログラムに記述されるコードには、E番号と呼ばれる固有の番号(加工条件番号)が含まれており、この加工条件番号によって加工条件が指定される。
【0015】
実加工機加工条件DB5は、実加工機2のレーザ加工に利用される加工条件が格納されている。加工条件は、実加工機2毎に設定されており、実加工機2の種別が相違すると、加工条件も相違する。加工条件としては、少なくとも発振器の種類、焦点レンズの仕様、ノズルタイプ、ノズル径、ワークの材質及び板厚、加工方法、加工速度、ピアス時間、レーザ出力、パルス周波数、パルスデューティ、焦点位置などの情報が挙げられる。
【0016】
実加工機2の加工条件は、その情報が加工条件番号と共にデータテーブルにマッピングされている。加工条件は、加工プログラムに記述されたコード(加工条件番号)を制御装置8が解読したとき、加工条件データテーブルから呼び出されて利用可能になる。
【0017】
対象機DB6は、後述する二酸化炭素排出量の試算対象となる加工機である対象機3に関するデータを格納する。対象機3は、実加工機2とは異なる機種の加工機(同種の加工(例えば切断加工)を行う異なるタイプの加工機)である。対象機3は、例えばCO2レーザ加工機である。対象機DB6には、対象機3のレーザ加工に利用される加工条件及び加工機パラメータが格納されている。加工機パラメータは、制御装置8が対象機3の制御に利用するパラメータであり、対象機3固有のパラメータである。
【0018】
実績DB7は、実加工機2の加工実績、及び、試算された二酸化炭素排出量などを管理するデータベースである。
【0019】
制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースとを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、種々の機能が実現される。
【0020】
本実施形態において、制御装置8は、実加工機2を制御する制御装置である。制御装置8は、加工制御部80と、演算部81と、を備えている。
【0021】
加工制御部80は、実加工機2の動作を制御する。具体的には、加工制御部80は、加工プログラムを実行して、実加工機2の動作をNC(Numerical Control(数値制御))によって制御する。実加工機2の動作は、加工プログラム、及び加工プログラムに従って読み出された加工条件に従って制御される。
【0022】
演算部81は、実加工機2が利用した加工プログラムに従って、対象機3が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算する。演算部81は、実加工機2と通信することで、実加工機2が保有する種々の情報を取得することができる。この情報には、電力計20によって計測された消費電力量などが含まれている。なお、演算部81は、制御装置8に組み込まれることなく、独立したコンピュータによって実現してもよい。
【0023】
表示装置9は、各種の情報を表示するための装置である。
【0024】
入力装置10は、制御装置8に対して情報を入力するための装置である。
【0025】
以下、
図3を参照し、本実施形態に係る二酸化炭素排出量試算方法について説明する。
図3は、二酸化炭素排出量を試算するための処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御装置8によって実行される。
【0026】
まず、ステップS10において、加工制御部80は、加工を実行する。このとき、加工制御部80は、加工プログラムDB4からワークの加工に利用する加工プログラムを読み出し、読み出した加工プログラムを実行する。実加工機2は、加工プログラム、及び加工プログラムに従って読み出された加工条件に従って動作し、ワークに対して所定のレーザ切断加工を行う。加工制御部80によって加工プログラムが実行されると、演算部81は、加工制御部80がコードを1行実行する毎に、その実行時における時刻及び消費電力量を取得し、保持する。加工が終了すると、ステップS11の処理へ移行する。
【0027】
図4は、対象機DBを検索する処理を説明する図である。ステップS11において、演算部81は、対象機DB6を検索し、実加工機2が加工プログラムに従って加工を行ったときの実加工機2の加工条件50(以下「実加工機加工条件50」という)と共通する、対象機3の加工条件60n(以下「対象機加工条件60n」という)があるか否かを判断する。
【0028】
具体的には、演算部81は、対象機DB6を検索し、以下に示す3要件を満たす対象機加工条件60nがあるか否かを判断する。
(要件1)実加工機加工条件50のワークの材質と一致する。
(要件2)実加工機加工条件50の加工方法と一致する。
(要件3)対象機加工条件60n内のワークの最大板厚は、実加工機加工条件50におけるワークの板厚以上である。
【0029】
演算部81は、上記3要件を満たす対象機加工条件60nがない場合(ステップS11でNo)、本フローチャートに示す処理を終了する。
【0030】
一方、上記の3要件を満たす場合、演算部81は、詳細検索を行う。具体的には、演算部81は、以下に示す3要件を満たす対象機加工条件60nを検索する。
(要件a)実加工機加工条件50のワークの板厚と一致する。
(要件b)実加工機加工条件50のノズルタイプと一致する。
(要件c)実加工機加工条件50のノズル径と一致する。
【0031】
なお、実加工機加工条件50のワークの板厚と対象機加工条件60nのワークの板厚とが完全に一致しない場合であっても、演算部81は、次の要件a1を満たす板厚が記述された対象機加工条件60nについては、要件aを満たすものと取り扱う。
(要件a1)実加工機加工条件50のワークの板厚よりも大きく、且つ実加工機加工条件50のワークの板厚に対して最も近い値となる。
【0032】
演算部81は、要件aから要件cの3要件を満たす対象機加工条件60nがある場合には(ステップS11でYes)、ステップS12の処理に移行する。一方、演算部81は、要件aから要件cの3要件を満たす対象機加工条件60nがない場合には(ステップS11でNo)、本フローチャートに示す処理を終了する。
【0033】
ステップS12において、演算部81は、上記の要件を満たす対象機加工条件60nを抽出する。
【0034】
ステップS13において、演算部81は、実加工機2の加工が途中で異常終了したか否かを判断する。実加工機2の加工が途中で異常終了した場合、演算部81は、ステップS14の処理に進む。一方、実加工機2の加工が正常に終了した場合、演算部81は、ステップS14の処理をスキップして、ステップS15の処理に進む。
【0035】
ステップS14において、演算部81は、加工プログラムに記載されたコードのうち、最後に実行したコードを特定する。
【0036】
ステップS15において、演算部81は、実加工機2が利用した加工プログラムを解析する。そして、演算部81は、抽出された対象機加工条件60nを用いて加工プログラムを実行したものと仮定して、対象機3が加工に要する加工時間を予測する。
【0037】
具体的には、制御装置8は、加工プログラムに記載されている各行のコードを加工条件番号毎に分割する。そして、制御装置8は、分割されたコード毎に、加工プログラムを解析し、加工時間を計算する。加工時間の計算には、パーツ(部品)の切断に係る経路長、ピアス数、及び同一のパーツを多数切り出す多数個取りの実行数などが考慮される。
【0038】
制御装置8は、パーツの切断に係る経路長に、加工条件の切断速度を乗算することで、パーツ1個あたりの切断に要する加工時間を計算することができる。制御装置8は、ピアス数に、加工条件のピアス時間を乗算することで、ピアス加工に要する加工時間を計算することができる。また、制御装置8は、パーツ1個あたりの切断に要する加工時間に、多数個取りの実行数を乗算することで、多数個取りに要する加工時間を計算することができる。
【0039】
このとき、演算部81は、実加工機加工条件50を、ステップS11で抽出された対象機加工条件60nによって置き換えて、加工プログラムを解析する。したがって、演算部81は、対象機加工条件60nに記載される加工速度、ピアス時間に基づいて、上記の計算を行う。
【0040】
演算部81は、加工プログラムに記載されている1番目の行のコードから、最終行のコードを含む全てのコードを対象に解析を行い、上記の計算を行う。そして、演算部81は、計算された全ての加工時間の総和から、対象機3が加工プログラムに従って加工を行ったときの加工時間を予測する。
【0041】
なお、実加工機2の加工が途中で異常終了した場合、演算部81は、加工プログラムに記載されている1番目の行のコードから、最後に実行したコードまでのコードを対象に解析を行い、上記の計算を行う。
【0042】
ステップS16において、演算部81は、予測した加工時間と、対象機3のパラメータとに基づいて、加工時間の間に対象機3が消費した消費電力量を計算する。対象機3のパラメータは、対象機3が消費する1秒あたりの消費電力量であり、対象機DB6の対象機パラメータに記述されている。
【0043】
ステップS17において、演算部81は、計算した消費電力量に基づいて、対象機3の二酸化炭素排出量を試算する。演算部81は、消費電力量を二酸化炭素排出量へと変換する演算式又はマップを保持しており、この演算式又はマップを利用して二酸化炭素排出量を試算する。
【0044】
ステップS18において、演算部81は、電力計20によって計測される消費電力量に基づいて、実加工機2が加工を開始してから終了するまでの間における実加工機2の二酸化炭素排出量を計算する。具体的には、演算部81は、実加工機2が加工を終了したタイミング(異常終了を含む)における消費電力量から、実加工機2が加工を開始したタイミングにおける消費電力量を減算することにより、消費電力量を計算する。そして、演算部81は、計算した消費電力量に基づいて、実加工機2の二酸化炭素排出量を算出する。
【0045】
ステップS19において、演算部81は、加工実績とともに、対象機3の二酸化炭素排出量、及び実加工機2の二酸化炭素排出量を管理する。このとき、演算部81は、加工プログラムの解析結果に基づいて、加工プログラム単位、シート単位、及びパーツ単位で、対象機3の二酸化炭素排出量、及び実加工機2の二酸化炭素排出量を管理することができる。加工プログラム単位、シート単位、及びパーツ単位で整理された、対象機3の二酸化炭素排出量、及び実加工機2の二酸化炭素排出量は、実績DB7に記録される。
【0046】
図5は、表示装置に表示される二酸化炭素排出量を示す図である。ステップS20において、演算部81は、実績DB7に格納されている情報に基づいて、表示装置9に、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量とを比較して表示する。例えば、
図5に示すように、演算部81は、表示装置9の第1表示領域90に、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量とを上下に並べて表示するといった如くである。
【0047】
また、演算部81は、実績DB7に格納されている情報に基づいて、表示装置9の第2表示領域91に、加工実績とともに、対象機3の二酸化炭素排出量、及び実加工機2の二酸化炭素排出量を表示する。例えば、演算部81は、シート単位で、加工実績とともに対象機3の二酸化炭素排出量及び実加工機2の二酸化炭素排出量を表示する。
【0048】
なお、
図5は、入力装置10によって、「シート」タブが選択されている場合における表示例を示している。入力装置10によって「部品」タブが選択されている場合、演算部81は、パーツ(部品)単位で、加工実績とともに対象機3の二酸化炭素排出量及び実加工機2の二酸化炭素排出量を表示することもできる。
【0049】
このように本実施形態において、演算部81は、対象機DB6を検索し、実加工機2が加工プログラムに従って加工を行ったときの実加工機加工条件50と共通する対象機加工条件60nを抽出する。演算部81は、実加工機2が利用した加工プログラムを解析し、抽出された対象機加工条件60nを用いて加工プログラムを実行したものと仮定して、対象機3が加工に要する加工時間を予測する。演算部81は、予測された加工時間に基づいて、対象機3の二酸化炭素排出量を試算する。
【0050】
加工条件には、加工機の機種固有の情報が記述されている。したがって、加工機の機種が相違すれば、同一に加工条件番号に定義される加工速度なども相違する。本実施形態に係る二酸化炭素排出量試算システム1によれば、演算部81は、実加工機加工条件50と共通する対象機加工条件60nを抽出している。そして、演算部81は、実加工機2が利用した加工プログラムを解析する際に、実加工機加工条件50を対象機加工条件60nに置き換えることで、対象機3が加工に要する加工時間を予測することができる。これにより、実加工機2が行った加工を対象機3が実行する場合における、対象機3が排出する二酸化炭素排出量を簡単に試算することができる。
【0051】
本実施形態において、二酸化炭素排出量試算システム1は、実加工機2の消費電力量を計測する電力計20をさらに有し、演算部81は、電力計20によって計測される消費電力量に基づいて、実加工機2が加工を開始してから終了するまでの実加工機2の二酸化炭素排出量を計算し、表示装置9に、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量とを比較して表示する。
【0052】
この構成によれば、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量とが比較して表示されるので、両者の二酸化炭素排出量の相違を簡単に把握することができる。例えば、実加工機2の方が対象機3と比べて二酸化炭素排出量が少なければ、利用者に対して実加工機2の優位性をアピールすることができる。また、対象機3の方が実加工機2と比べて二酸化炭素排出量が少なければ、利用者に対して対象機への買い換えを促すことができる。
【0053】
本実施形態において、演算部81は、予測された加工時間の間に対象機3が消費する消費電力量を計算し、消費電力量に基づいて対象機3の二酸化炭素排出量を試算する。
【0054】
この構成によれば、対象機3固有の消費電力を考慮することができるので、対象機3の二酸化素排出量を精度よく試算することができる。
【0055】
本実施形態において、加工機は、レーザビームを用いてワークを切断するレーザ加工機である。演算部81は、加工プログラムに記載されている各行のコードを加工条件番号毎に分割し、分割されたコード毎に加工時間を予測する。
【0056】
加工条件に記述される加工速度などのパラメータは、加工条件番号毎に相違している。このため、加工条件番号を区切りとしてコードを解析することで、加工時間を精度よく予測することができる。
【0057】
本実施形態において、演算部81は、実加工機2を制御する制御装置8に搭載されている。
【0058】
この構成によれば、実加工機2の加工の現場で、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量とを認識することができる。
【0059】
本実施形態において、演算部81は、実加工機2の加工が途中で異常終了した場合には、加工プログラムに記載されたコードのうち、最後に実行したコードを特定し、最後に実行したコードまでの情報に基づいて、加工時間を予測する。
【0060】
この構成によれば、実加工機2と同一条件で、対象機3の二酸化炭素排出量が試算される。これにより、実加工機2の二酸化炭素排出量と対象機3の二酸化炭素排出量とを同一条件で比較することができる。
【0061】
本実施形態において、演算部81は、加工プログラム単位、シート単位又はパーツ単位で、対象機3の二酸化炭素排出量、及び実加工機2の二酸化炭素排出量を管理する。
【0062】
この構成によれば、加工プログラム単位、シート単位又はパーツ単位といった観点で、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量との比較が可能となる。これにより、多様な視点で、対象機3の二酸化炭素排出量と、実加工機2の二酸化炭素排出量とを比較することができる。
【0063】
なお、本実施形態において、演算部81は、対象機加工条件60nを用いて加工プログラムを解析している。この加工プログラムの解析において、演算部81は、対象機加工条件60nの他に、対象機パラメータを用いてもよい。例えば、レーザ加工機の加工速度は、作業者が手動により調整されることがある(オーバーライド)。この調整された加工速度は、対象機パラメータとして制御装置8に保持されている。この場合、演算部81は、調整された加工速度に基づいて、加工プログラムを解析してもよい。
【0064】
また、上述した実施形態において、演算部81は、加工時間から二酸化炭素排出量を試算している。しかしながら、演算部81は、アシストガスの種類、噴出時間をさらに加味し、二酸化炭素排出量を試算してもよい。
【0065】
また、本実施形態は、二酸化炭素排出量試算システム1に限らず、二酸化炭素排出量試算方法も含む。この二酸化炭素排出量試算方法は、加工を実際に行った加工機である実加工機2が利用した加工プログラムに従って、実加工機2とは異なる加工機である対象機3が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算するコンピュータ(制御装置8)が、加工プログラムを記憶する加工プログラムDB4と、実加工機2の加工条件を記憶する実加工機加工条件DB5と、対象機3の加工条件を記憶する対象機DB6と、を参照し、実加工機2が加工プログラムに従って加工を行ったときの実加工機加工条件50と共通する、対象機加工条件60nを抽出し、実加工機2が利用した加工プログラムを解析し、抽出された対象機加工条件60nで加工プログラムを実行したものと仮定して、対象機3が加工に要する加工時間を予測し、予測された加工時間に基づいて、対象機3の二酸化炭素排出量を試算する。
【0066】
この方法によれば、コンピュータは、実加工機加工条件50と共通する対象機加工条件60nを抽出している。そして、コンピュータは、実加工機加工条件50を対象機加工条件60nに置き換えた上で、実加工機2が利用した加工プログラムを解析することで、対象機3が加工に要する加工時間を予測することができる。これにより、実加工機2が行った加工を対象機3が行う場合に対象機3が排出する二酸化炭素排出量を簡単に試算することができる。
【0067】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0068】
1 二酸化炭素排出量試算システム
2 実加工機(加工機)
20 電力計
3 対象機(加工機)
4 加工プログラムデータベース(DB)(加工プログラム記憶部)
5 実加工機加工条件データベース(DB)(実加工機加工条件記憶部)
50 実加工機加工条件
6 対象機データベース(DB)(対象機加工条件記憶部)
60n 対象機加工条件
7 実績データベース(DB)
8 制御装置
80 加工制御部
81 演算部
9 表示装置
90 第1表示領域
91 第2表示領域
10 入力装置
【要約】
【課題】実加工機が行った加工を対象機が行うと仮定して、対象機が排出する二酸化炭素排出量を試算する。
【解決手段】二酸化炭素排出量試算システム1は、実加工機2が利用した加工プログラムに従って、対象機3が加工を行うときの二酸化炭素排出量を試算する演算部81と、加工プログラムDB4と、実加工機加工条件DB5と、対象機DB6と、を備える。演算部81は、対象機DB6を検索し、実加工機2が加工プログラムに従って加工を行ったときの実加工機2の加工条件と共通する、対象機3の加工条件を抽出し、実加工機2が利用した加工プログラムを解析し、抽出された対象機3の加工条件を用いて加工プログラムを実行したものと仮定して、対象機3が加工に要する加工時間を予測し、予測された加工時間に基づいて、対象機3の二酸化炭素排出量を試算する。
【選択図】
図1