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特許7450015個別に制御可能なファンを備える真空ポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】個別に制御可能なファンを備える真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
F04C29/04 E
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022211122
(22)【出願日】2022-12-28
(65)【公開番号】P2023184405
(43)【公開日】2023-12-28
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】22179625
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ガーブリエール・ベルクマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク・ゲルマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クロム
(72)【発明者】
【氏名】ゲルノート・ベルンハルト
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-151125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポンプ段(56)と、ポンプ段(56)に駆動接続された第1の電動モータ(50)とを備えた、真空ポンプ、特にロータリーベーン真空ポンプにおいて、
真空ポンプは、真空ポンプを冷却するための、第2の電動モータ(68)によって駆動される少なくとも1つのファン(66)を更に備え、
少なくとも1つのポンプ段(56)は、ポンプハウジング(54)内に収容されていて、第1の電動モータ(50)は、ポンプハウジング(54)の軸方向の延長部に延在するモータハウジング(52)内に収容されていて、ポンプハウジング(54)とモータハウジング(52)との両方が、それぞれ第1の端部と、第1の端部とは軸方向で反対側に位置する第2の端部とを有し、ポンプハウジング(54)の第1の端部は、少なくとも間接に、モータハウジング(52)の第1の端部に接続されていて、前記少なくとも1つのファン(66)のうちの1つのファン(66)は、ポンプハウジング(54)の第2の端部に取り付けられてる、及び/又は前記少なくとも1つのファン(66)のうちの1つのファン(66)は、モータハウジング(52)の第2の端部に取り付けられている、真空ポンプ。
【請求項2】
少なくとも1つのポンプ段(56)は、ポンプシャフト(58)を有し、第1の電動モータ(50)は、第1の電動モータ(50)と一体に構成された第1のモータシャフト(60)を有する、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
第2の電動モータ(68)は、第1のモータシャフト(60)とポンプシャフト(58)とのいずれにも接続されていない第2のモータシャフト(70)を有する、請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記少なくとも1つのファン(66)の各ファン(66)は、第2の電動モータ(68)と共に、各々の第2の端部に取り付けられた各々のファンフード(72)内に収容されている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
単一の周波数変換器(64)を更に備え、周波数変換器(64)は、前記少なくとも1つのファン(66)の第2の電動モータ(68)を、第1の電動モータ(50)から独立して制御し、特に、周波数変換器(64)は、さらに、ファン(66)の第2の電動モータ(68)を、別のファン(66)の第2の電動モータ(68)から独立して制御するようにもなっている、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
周波数変換器(64)は、単一の電流入力と、互いに独立して制御可能な複数の電流出力(74、76、78)とを有し、第1の電動モータ(50)は、複数の電流出力(74、76、78)のうちの1つに接続されていて、各第2の電動モータ(68)は、複数の電力出力(74、76、78)のうちの別の1つに接続されている、請求項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
制御ユニット(90)を更に備え、制御ユニット(90)は、周波数変換器(64)を、特に周波数変換器(64)の電流出力(74、76、78)を制御し、制御ユニット(90)は、制御ユニット(90)が前記少なくとも1つのファン(66)の各々の第2の電動モータ(68)が接続された、周波数変換器(64)の電流出力(76、78)を、第1の電動モータ(50)の消費電力、周波数変換器(64)の、特に周波数変換器(64)のパワーエレクトロニクスの温度、電動モータ(50)の温度及び/又は少なくとも1つのポンプ段(56)の温度に依存して制御するように、調整されている、請求項又はに記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポンプ段と、ポンプ段に駆動接続された第1の電動モータとを備える、真空ポンプ、特にロータリーベーン真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなロータリーベーン真空ポンプでは、ポンプ段のポンプシャフトが、通常、着脱自在に電動モータのモータシャフトに接続されていて、これにより、電動モータによって駆動できるようになる。一方、モータシャフトの自由端部には、ファンが組み付けられていて、ファンによって、電動モータをポンプの運転中に冷却できる。これに対応して、ポンプシャフトの自由端部には、同様にファンが組み付けられてよく、その結果、ファンによって、ポンプの運転中、ポンプ段の冷却もできる。
【0003】
しかし、ファンを、記載の形でモータシャフト又はポンプシャフトに組み付けられるようにするには、これらのシャフトをモータハウジング又はポンプハウジングから外へガイドしなければならず、そのために、各々のシャフトは、比較的摩耗しやすく保守が集中的なシャフト導通部によって、各々のハウジングに対して動的にシールしなければならない。その上、別の欠点として、この既知のファン構想では、ポンプが実際に運転しているときにしか、各々のファンが、電動モータ又はポンプ段を冷却できない。これに加えて、さらに、ファンがそれぞれ付属のシャフト上に組み付けられているという事実に基づいて、各々のファンは、ポンプの運転から独立して制御できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の基礎を成す課題は、前述の形態の真空ポンプの保守に係る手間を減らせ、その際、付加的に、ポンプ運転から独立した真空ポンプの冷却に寄与すべき、真空ポンプ、特にロータリーベーン真空ポンプのためのファンの構想を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する真空ポンプによって、特に、真空ポンプが、ポンプ段を駆動する第1の電動モータに対して付加的に、真空ポンプを冷却するためのファンを駆動する少なくとも1つの第2の電動モータを備えることによって解決される。要するに、第2の電動モータは、第1のモータシャフトにもポンプシャフトにも接続されていない第2のモータシャフトを有する。換言すると、第2の電動モータは、ポンプ段を駆動する第1の電動モータから電気的に及び機械的に分離されている。
【0006】
したがって、少なくとも1つのファンと、特にこのファンを駆動する第2の電動モータとは、第1の電動モータとは独立して制御でき、これにより、例えば真空ポンプをその遮断後に引き続き冷却することが可能となる。同様に、真空ポンプは、真空ポンプの運転中、第1の電動モータの回転数に依存せずに冷却できる。そこで、例えば、真空ポンプの運転中、真空ポンプの温度が過剰に上昇すると、第2の電動モータは、第1の電動モータよりも高い回転数で作動でき、これにより、真空ポンプを、対応するファンが従来の形で固定にモータシャフト及び/又はポンプシャフトに組み付けられているときよりも強く冷却することが可能となる。
【0007】
さらに、少なくとも1つのファンが第1の電動モータのモータシャフトによって駆動されないという事実に基づいて、各々のハウジングに対してモータシャフト又はポンプシャフトをシールして、各々のファンをその上に取り付けられるようにするための、保守の集中的なシャフト導通部が必要でない。したがって、そのようなシャフト導通部を省くことによって、ポンプの保守に掛かる手間を所望の形で低減できる。
【0008】
さらに、シャフト導通部のための動的なシールが必要にならないという事実に基づいて、ポンプの気密性が高まり、これにより、達成されるべき最終圧力をより確実でより迅速に到達できる。
【0009】
さらに、少なくとも1つのファンが、ポンプ段を駆動する第1の電動モータの回転数に依存せずに制御されるという事実に基づいて、ファンが固定にポンプシャフトに及び/又は第1の電動モータのモータシャフトに組み付けられた従来の真空ポンプと比較して、真空ポンプの効率を向上できる。
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について述べる。別の実施形態は、従属請求項、図面の説明及び図面自体からも明らかである。
【0011】
したがって、一実施形態によれば、ポンプシャフトがモータシャフトと一体に構成されている、ことが想定され得る。このことは、従来の真空ポンプとは異なり、本発明によれば、シャフト導通部が不要となることによって実現される。すなわち、シャフト導通部を組み付けできるようにするために、従来の真空ポンプでは、組付け技術的な理由から、ポンプシャフトをモータシャフトに着脱自在に接続する必要がある。したがって、本発明によればこのようなシャフト導通部が省かれているので、ポンプシャフトと第1の電動モータのモータシャフトとは、互いに一体に形成可能である。ただし、必要に応じて、本発明に係る真空ポンプでも、ポンプシャフトと第1の電動モータのモータシャフトとは、互いに着脱自在に接続されてもよい。
【0012】
別の一実施形態によれば、少なくとも1つのポンプ段が、ポンプハウジング内に収容されていて、ポンプ段を駆動する第1の電動モータが、モータハウジング内に収容されていて、モータハウジングは、ポンプハウジングの軸方向の延長部に延在する、ことが想定され得る。この場合、ポンプハウジングとモータハウジングとの両方は、それぞれ、第1の端部と、第1の端部に軸方向で反対側に位置する第2の端部とを有し、この場合、ポンプハウジングの第1の端部は、少なくとも間接にモータハウジングの第1の端部に接続されている。要するに、ポンプハウジングとモータハウジングとは、本質的に軸方向の延長部に互いに対して同軸に配置されているので、ファンをポンプハウジングの第2の端部に設けて、そこに固定できる。これに対して付加的に又は代替的に、(別の)ファンがモータハウジングの第2の端部に設けられていて、そこに固定されている、ことが想定され得る。したがって、ファンは、モータハウジングにおけるポンプハウジングの組付けが行われた後で、最終組付けの枠内で、真空ポンプの各々のハウジングに固定できる。
【0013】
したがって、ファンは、最終組付けの枠内でようやくユニットとして真空ポンプに、そして特にポンプハウジングに又はモータハウジングに取り付けられる、事前製作された構成要素として利用できる。そのために、少なくとも1つのファンの各ファンは、その第2の電動モータを含めて、真空ポンプの最終組付けの枠内でポンプハウジング又はモータハウジングの各々の第2の端部に取り付けられる、それぞれある種のハウジングとして用いられるファンフードに収容されてよい。
【0014】
少なくとも1つのファンの第2の電動モータは、例えば周波数変換器などの、特にそのために設けられた制御モジュールによって制御できる。別の実施形態によれば、第1の電動モータを制御する周波数変換器によって、特に第1の電動モータから独立して、少なくとも1つのファンの第2の電動モータも通電される、ことが想定され得る。
【0015】
この場合、好ましい形では、特に、周波数変換器が、他方のファンの第2の電動モータから独立して、一方のファンの第2の電動モータも制御する、ことが想定され得る。したがって、両方のファンは、第1の電動モータから独立して通電できるだけでなく、互いに独立した通電もできる。したがって、周波数変換器は、単一の電流入力と、閉じた制御回路の枠内で互いに独立して制御可能な複数の電流出力とを有し得、この場合、第1の電動モータは、複数の電流出力のうちの1つに接続されていて、一方、各々のファンの各第2の電動モータは、複数の電流出力のうちの別の1つに接続されている。
【0016】
特に閉じた制御回路の枠内で、個々のファンを必要に応じて互いに独立して制御できるように、制御ユニットが更に設けられてよく、制御ユニットは、周波数変換器を、そして特に周波数変換器の電流出力を制御し、その際、制御ユニットは、これが、少なくとも1つのファンの各々の第2の電動モータが接続された、周波数変換器の電流出力を、第1の電動モータの電力消費、周波数変換器の、特に周波数変換器のパワーエレクトロニクスの温度、電動モータの温度及び/又は少なくとも1つのポンプ段の温度に依存して制御するように、調整されてよい。
【0017】
そのために、第1の電動モータの消費電力を監視し、制御ユニットにフィードバックできるので、第1の電動モータの消費電力が所定の上限の閾値を上回ると直ちに、制御ユニットは、各々のファン又はファンの第2の電動モータを最大回転数で作動できる。一方、第1の電動モータの消費電力が下限の閾値を下回ると、制御ユニットは、各々のファン又はファンの第2の電動モータを最小回転数で作動できる。これらの2つの閾値の間で、制御ユニットは、例えば第1の電動モータの消費電力とその都度のモータ回転数との間の線形の関係に基づいて、第1の電動モータの消費電力の大きさに依存して、各々の第2の電動モータ、又は少なくとも1つのファンの各々の第2の電動モータが接続された、周波数変換器の各々の電流出力を制御できる。
【0018】
適切な形で、周波数変換器の、特に周波数変換器のパワーエレクトロニクスの温度、第1の電動モータの温度及び/又は少なくとも1つのポンプ段の温度は、各々の温度センサによって監視でき、その際、そのように監視される温度は、制御ユニットにフィードバックできるので、制御ユニットは、各々の第2の電動モータ、又は少なくとも1つのファンの各々の第2の電動モータが接続された、周波数変換器の各々の電流出力を、監視されるその都度の温度に依存して制御できる。そのために、その都度の温度は、制御ユニットにフィードバックできるので、監視されるその都度の温度が所定の上限の温度閾値を上回ると直ちに、制御ユニットは、各々のファン又はファンの第2の電動モータを最大回転数で作動できる。一方、監視されるその都度の温度が下限の温度閾値を下回ると、制御ユニットは、各々のファン又はファンの第2の電動モータを最小回転数で作動できる。これら2つの温度閾値の間で、制御ユニットは、各々の第2の電動モータ、又は少なくとも1つのファンの各々の第2の電動モータが接続された、周波数変換器の各々の電流出力を、例えば監視されるその都度の温度と各々のモータ回転数との間の線形の関係に基づいて、監視されるその都度の温度の値に依存して制御できる。監視されるその都度の温度のうちの1つの温度が上限の温度閾値を上回ると直ちに、各々のファン又はファンの第2の電動モータが、最大回転数で作動させられる。
【0019】
ここに開示するような本発明による配置構造によって、特に、真空ポンプの任意の運転時に、冷却能力は、ポンプ回転数に依存せずに設定可能である。要するに、必要とされるとき、必要に応じて冷却を行うことができ、その際、例えばポンプが低速で回転しているときでも高い冷却能力を発揮できる。しかも、的確に冷却を制限できることも有利である。したがって、例えばポンプの始動時の比較的僅かな冷却によって、より迅速に運転温度に到達できる。冷却を意図的に低下させることによって、運転音の低下や、運転休止時の低下した回転数でポンプを運転するときの運転温度の維持も達成できる。本開示に記載されたこのような手段及び他の手段、つまり真空ポンプを運転する方法は、それぞれ独立した発明の対象を成す。これにより、これらの対象について、それぞれ別個の権利保護が要求される。
【0020】
以下、本発明を、添付の図面を参照して純然たる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】横断面でロータリーベーン真空ポンプの概略的な原理図を示す。
図2】ロータリーベーン真空ポンプの具体的な形態を横断面図で示し、そこから更なる細部が分かる。
図3】ポンプハウジング又はモータハウジングの軸方向端部を見た、図2のロータリーベーン真空ポンプの斜視図を示す。
図4】本発明に係るロータリーベーン真空ポンプの概略図を示す。
図5】従来のロータリーベーン真空ポンプの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2の真空ポンプは、ロータリーベーン真空ポンプの形態で構成されていて、ステータ11を有し、ステータ11内に作業室13が形成されている。作業室13には、偏心的に組み付けられたロータ15が配置されていて、ロータ15は、回転方向Dで、図平面に対して垂直に延在する回転軸線を中心に回転可能に第1の電動モータ50によって駆動可能であり、図3が参照される。ロータ15には、複数のベーン17が、径方向に運動可能に配置されている。ベーン17は、ばね19によってプリロードが掛けられていて、ばね19は、ベーン17を径方向外向きへ押し退ける。代替的に、ベーン17は、ばねによってプリロードが掛けられていないが、その代わりに専ら遠心力に基づいて外方へ動くようにしてもよい。ロータ15の回転時、ベーン17は、作業室13を画定する、ステータ11の内壁20に沿って滑動する。その際、ベーン17は、それ自体公知の態様で、作業室13を複数のチャンバに分割する。
【0023】
図1及び図2の真空ポンプでは、ステータ11とロータ15とが、流体、例えば空気を、入口21に接続されたレシピエント(図示されていない)から出口23へポンピングするポンプ段56を形成する。この場合、基礎となるポンプ機構は、それ自体公知であり、ロータリーベーン真空ポンプで用いられ以下に説明するポンプ機構に相応する。
【0024】
回転方向Dで見て前方のベーン17が、ロータの回転時に入口21を通過すると、このベーン17の後方に、増大していく吸込チャンバが形成される。その際、ロータ15の回転時の吸込室の増大によって、吸込作用が実現され、後続のベーン17が同様に入口21を通過し、吸込チャンバを入口21から分離するまで、吸込作用によって、流体が、レシピエントから吸込室に吸い込まれる。その後で、ロータ15が引き続き回転すると吸込チャンバの容積が再び減少するので、その中に封入された流体は圧縮される。したがって、入口21から分離した後で、前方のベーン17が出口23を通過すると、吸込室は、出口23へ向けて開口する圧縮チャンバとなる。圧縮された気体は、出口23を介して排出され、その際、出口23に設けられた出口弁25が、圧縮された流体の圧力に基づいて開く。
【0025】
真空ポンプのシール及び潤滑を行うために、ステータ11とロータ15とを有するポンプ段56は、通常、所定のレベルまで、ステータ11を包囲する貯留部(図示されていない)に収容された作動媒体内にある。作動媒体は、特に油であり、油によって、ポンプの全ての可動部分が潤滑され、出口弁25より下の空間及び入口21と出口23との間の間隙がシールされる。さらに、作動媒体は、ベーン17と内壁20との間の間隙をシールする。さらに、作動媒体は、熱輸送によって真空ポンプ内の最適な温度バランスに寄与する。気体がポンプの出口23から出た後、後置の油霧分離器29が、圧送された気体を油から分離し、排気部における作動油の排出を防止する。
【0026】
図1及び図2のポンプでは、入口21に、HV安全弁27、例えば逆止弁が配置されていて、HV安全弁27は、それ自体公知の態様で、ポンプの所望の又は不意の停止状態で、入口21を、入口21に接続されたレシピエント(図示されていない)に対してシールするように構成されている。したがって、ポンプの停止時、作動媒体がレシピエントに至り得ない。ポンプの起動後、HV安全弁27は、いくぶんか遅れて、例えばポンプ内の圧力がレシピエント内の圧力にほぼ達したら開き、これにより、レシピエント内の負圧に基づいて作動媒体がポンプからレシピエントに引き込まれることが回避される。
【0027】
図1及び図2において認識可能なロータリーベーン真空ポンプ又はロータリーベーン真空ポンプのポンプ段56のロータ15は、既に述べたように、第1の電動モータ50によって駆動される。第1の電動モータ50は、モータハウジング52内に位置し、これについては図3が参照される。この場合、モータハウジング52は、ステータ11を形成するポンプハウジング54の軸方向の延長部に配置されていて、ポンプハウジング54に結合されている。この場合、ポンプハウジングは、図1及び図2を参照して前述したポンプ段56を包含する。
【0028】
したがって、ポンプ段56及び特にポンプ段56のロータ15は、第1の電動モータ50によって駆動され、そのために、第1の電動モータ50のモータシャフト60(これについては図5参照)が、ロータ15が取り付けられたポンプシャフト58(これについては図2及び5参照)に一体的に組み付けられている。
【0029】
相互に結合された2つのハウジング52、54(モータハウジング52、ポンプハウジング54)は、図3に示された実施形態では、軸受ハウジング62の凹状の空所に支持されていて、軸受ハウジング62は、真空ポンプ用のドライブエレクトロニクスと特に周波数変換器64(図5参照)とを収容する。周波数変換器64は、とりわけ第1の電動モータ50を制御するのに用いられる。
【0030】
以下、ここで、本発明に係るロータリーベーン真空ポンプの通気構想を、図4を参照して説明する。
【0031】
図4から看取されるように、図示のロータリーベーン真空ポンプは、2つのファン66を有し、ファン66は、それぞれ第2の電動モータ68によって駆動され、そのために、各々のファン66は、各々の第2の電動モータ68のモータシャフト70に組み付けられている。この場合、各々のファン66は、ファン66を駆動する第2の電動モータ68も含めて、ファンフード72内に組み付けられている。ファンフード72は、グリッド86によって閉じられた、新鮮な空気を吸い込むための開口88を有し、これについては図3も参照されたい。特に図4から看取されるように、各々の第2の電動モータのモータシャフト70は、ポンプ段56を駆動する第1の電動モータ50の第1のモータシャフト60にも、ポンプ段56のポンプシャフト58にも接続されていない。
【0032】
図4から、そして特に図3からも看取されるように、この場合、両方のファン66又は各々のファンフード72は、モータハウジング52及びポンプハウジング54の、軸方向に互いに反対側に位置する両端部に取り付けられている。したがって、各々の第2のモータシャフト70とポンプ段26の駆動部との間には有効な駆動接続は存在しない。むしろ、両方の第2の電動モータ68は、ポンプ段56を駆動する第1の電動モータ50から独立して制御される。
【0033】
そのために、周波数変換器64は、互いに独立して制御可能な複数の電流出力74、76、78を有し、この場合、第1の電動モータ50は、第1の電流出力74に接続されていて、両方の第2の電動モータ68は、周波数変換器64の第2の又は第3の電流出力76、78に接続されている。したがって、周波数変換器64は、両方のファン66の両方の第2の電動モータ68を互いに独立して通電できる。代替的に、周波数変換器64が、ファン制御のために1つの出力しか有さず、その結果、両方のファンが同一の形で制御されるようにしてもよい。周波数変換器64は、第1の電動モータ50も、両方の第2の電動モータ68から独立して通電できる。したがって、例えば第1の電動モータ50の消費電力が上限の閾値を上回ると、両方のファン66の両方の第2の電動モータ68を、周波数変換器64の第2の又は第3の電流出力76、78を介して、これらの電動モータ68が最大回転数で回転するように通電できる。一方、第1の電動モータ50の消費電力が下限の閾値を下回ると、各々のファン66又はファンの第2の電動モータ68を最小回転数で運転できる。これらの2つの閾値の間で、各々の第2の電動モータ68又は各々の電流出力76、78は、例えば第1の電動モータ50の消費電力と各々のモータ回転数との間の線形の関係に基づいて、第1の電動モータ50の消費電力の大きさに依存して制御できる。そのために、第1の電動モータ50の電力消費は、出力監視ユニット80によって監視でき、この場合、そのように監視される消費電力は、両方の電流出力76、78を制御するために、周波数変換器64を制御する制御ユニット90にフィードバックできる。制御ユニット90は、周波数変換器64自体の構成部材であってもよい。したがって、制御ユニット90は、第1の電動モータ50の電力消費に依存して、両方の電流出力76、78を制御できる。
【0034】
これに対して付加的に又は択一的に、適切の形で、周波数変換器64、特に周波数変換器64のパワーエレクトロニクス、第1の電動モータ50及びポンプ段56の温度は、温度センサ82、84、85によって監視でき、その際、そのように監視される温度は、周波数変換器64に又は周波数変換64を制御する制御ユニット90にフィードバックでき、これにより、両方の電流出力76、78を、周波数変換器64、特に周波数変換器64のパワーエレクトロニクス、第1の電動モータ50及び/又はポンプ段56の監視される温度に依存して制御できる。
【0035】
したがって、本発明に係るロータリーベーン真空ポンプが、真空ポンプを冷却するための、第2の電動モータ68によって駆動される少なくとも1つのファン66を有するという事実に基づいて、真空ポンプは、必要に応じて、特にポンプ段56の回転数に依存せずに冷却できる。したがって、ファン66がポンプハウジング54又はモータハウジング52から外へガイドされたモータシャフト60又はポンプシャフト58上に配置された、図5に示された従来のロータリーベーン真空ポンプとは異なり、本発明に係るロータリーベーン真空ポンプでは、ファン66は、モータシャフト60又はポンプシャフト58から分離されていて、しかも独自の電動モータ68によって駆動されるという事実に基づいて、ファン66は、ポンプ段56を駆動する第1の電動モータ50の実際の消費電流から全く依存せずに制御でき、これにより、例えばポンプ段56のスイッチオフ後にファン66を引き続き回転でき、これにより、ポンプを後冷却できることが実現される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
少なくとも1つのポンプ段(56)と、ポンプ段(56)に駆動接続された第1の電動モータ(50)とを備えた、真空ポンプ、特にロータリーベーン真空ポンプにおいて、
真空ポンプは、真空ポンプを冷却するための、第2の電動モータ(68)によって駆動される少なくとも1つのファン(66)を更に備える、真空ポンプ。
2.
少なくとも1つのポンプ段(56)は、ポンプシャフト(58)を有し、第1の電動モータ(50)は、第1の電動モータ(50)と一体に構成された第1のモータシャフト(60)を有する、上記1の真空ポンプ。
3.
第2の電動モータ(68)は、第1のモータシャフト(60)とポンプシャフト(58)とのいずれにも接続されていない第2のモータシャフト(70)を有する、上記1又は2の真空ポンプ。
4.
少なくとも1つのポンプ段(56)は、ポンプハウジング(54)内に収容されていて、第1の電動モータ(50)は、ポンプハウジング(54)の軸方向の延長部に延在するモータハウジング(52)内に収容されていて、ポンプハウジング(54)とモータハウジング(52)との両方が、それぞれ第1の端部と、第1の端部とは軸方向で反対側に位置する第2の端部とを有し、ポンプハウジング(54)の第1の端部は、少なくとも間接に、モータハウジング(52)の第1の端部に接続されていて、前記少なくとも1つのファン(66)のうちの1つのファン(66)は、ポンプハウジング(54)の第2の端部に取り付けられてる、及び/又は前記少なくとも1つのファン(66)のうちの1つのファン(66)は、モータハウジング(52)の第2の端部に取り付けられている、上記1から3のいずれか一つの真空ポンプ。
5.
前記少なくとも1つのファン(66)の各ファン(66)は、第2の電動モータ(68)と共に、各々の第2の端部に取り付けられた各々のファンフード(72)内に収容されている、上記1から4のいずれか一つの真空ポンプ。
6.
単一の周波数変換器(64)を更に備え、周波数変換器(64)は、前記少なくとも1つのファン(66)の第2の電動モータ(68)を、第1の電動モータ(50)から独立して制御し、特に、周波数変換器(64)は、さらに、ファン(66)の第2の電動モータ(68)を、別のファン(66)の第2の電動モータ(68)から独立して制御するようにもなっている、上記1から5のいずれか一つの真空ポンプ。
7.
周波数変換器(64)は、単一の電流入力と、互いに独立して制御可能な複数の電流出力(74、76、78)とを有し、第1の電動モータ(50)は、複数の電流出力(74、76、78)のうちの1つに接続されていて、各第2の電動モータ(68)は、複数の電力出力(74、76、78)のうちの別の1つに接続されている、上記6の真空ポンプ。
8.
制御ユニット(90)を更に備え、制御ユニット(90)は、周波数変換器(64)を、特に周波数変換器(64)の電流出力(74、76、78)を制御し、制御ユニット(90)は、制御ユニット(90)が前記少なくとも1つのファン(66)の各々の第2の電動モータ(68)が接続された、周波数変換器(64)の電流出力(76、78)を、第1の電動モータ(50)の消費電力、周波数変換器(64)の、特に周波数変換器(64)のパワーエレクトロニクスの温度、電動モータ(50)の温度及び/又は少なくとも1つのポンプ段(56)の温度に依存して制御するように、調整されている、上記6及び/又は7の真空ポンプ。
【符号の説明】
【0036】
11 ステータ
13 作業室
15 ロータ
17 ベーン
20 内壁
21 入口
23 出口
25 出口弁
27 入口弁
29 油分離器
50 第1の電動モータ
52 モータハウジング
54 ポンプハウジング
56 ポンプ段
58 ポンプシャフト
60 モータシャフト
62 軸受ハウジング
64 周波数変換器
66 ファン
68 第2の電動モータ
70 第2のモータシャフト
72 ファンフード
74 第1の制御出力
76 第2の制御出力
78 第3の制御出力
80 出力監視ユニット
82 温度センサ
84 温度センサ
85 温度センサ
86 グリッド
88 開口
90 制御ユニットユニット
D 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5