(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240307BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240307BHJP
G06F 3/044 20060101ALN20240307BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2022534908
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2021013286
(87)【国際公開番号】W WO2022009488
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2020117801
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】涌田 宏
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/123661(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145745(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/136923(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139217(WO,A1)
【文献】特開2016-163854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/01
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材と、
利用者が操作入力を行う操作パネルと、
前記操作パネルを前記保持部材に取り付ける複数の取付部と、
平面視で前記複数の取付部のうちの隣り合う取付部同士の間に設けられ、前記操作パネルに振動を生じさせる複数のアクチュエータと、
前記操作入力が行われる位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部によって検出される位置に応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいずれか1つを駆動する制御部と
を含
み、
前記取付部は、前記操作パネルと前記保持部材との間で振動を緩和する懸架装置であり、
前記懸架装置は、
前記保持部材に固定され、前記保持部材から前記操作パネルに向けて延在する延在部と、
前記延在部と前記操作パネルとの間に設けられる弾性部材と
を有する、電子機器。
【請求項2】
保持部材と、
利用者が操作入力を行う操作パネルと、
前記操作パネルを前記保持部材に取り付ける複数の取付部と、
平面視で前記複数の取付部のうちの隣り合う取付部同士の間に設けられ、前記操作パネルに振動を生じさせる複数のアクチュエータと、
前記操作入力が行われる位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部によって検出される位置に応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいずれか1つを駆動する制御部と、
前記位置検出部と重ねて設けられ、表示領域を有する表示部と
を含み、
前記取付部は、前記操作パネルと前記保持部材との間で振動を緩和する懸架装置であり、
前記操作パネルは、平面視で前記表示部の表示領域を視認可能にする視認領域と、前記視認領域よりも外側の非視認領域とを有し、
前記複数のアクチュエータは、前記非視認領域内で前記操作パネルに固定され、
前記懸架装置は、
前記保持部材に固定され、前記保持部材から前記操作パネルの前記非視認領域内に延在する延在部と、
前記延在部と前記操作パネルとの間に設けられる弾性部材と
を有する、電子機器。
【請求項3】
前記弾性部材は、ラバー部材である、請求項
1又は
2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記懸架装置は、前記操作パネルに固定される軸部をさらに有し、
前記ラバー部材は、前記軸部に取り付けられる、請求項
3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記操作パネルは、平面視で長手方向と短手方向とを有する矩形状のパネルであり、
前記複数の取付部と前記複数のアクチュエータとは、前記長手方向に沿って配置される、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記複数の取付部は前記長手方向に沿って等間隔で配置されるとともに、前記複数のアクチュエータは前記長手方向に沿って等間隔で配置される、請求項
5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記複数のアクチュエータの各々は、前記長手方向に沿って前記隣り合う取付部同士の中央に配置される、請求項
5又は
6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記操作パネルは、前記長手方向に沿って複数の領域に分けられており、
前記複数の取付部は、前記複数の領域の境界に設けられている、請求項
5乃至
7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記短手方向に沿って配置される1又は複数のアクチュエータをさらに含む、請求項
5乃至
8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記操作パネルは、平面視で長手方向と短手方向とを有する矩形状のパネルであって、前記長手方向又は前記短手方向に沿って複数の領域に分けられており、
前記複数の取付部は、前記複数の領域の境界に設けられている、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記操作パネルは、前記複数の領域の境界に沿って設けられる凹部を有する請求項
8又は
10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記凹部は、前記操作パネルに前記操作入力が行われる操作面とは反対側の表面に設けられている、請求項
11に記載の電子機器。
【請求項13】
前記操作パネルは透明であり、
前記凹部には透明樹脂が充填されている、請求項
11又は
12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記アクチュエータは、共振型、圧電型、磁歪型、又は電歪型の振動素子である、請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、視認領域及び非視認領域を有する表示画面であって、前記視認領域に視覚ディスプレイを提供するように構成された複数のディスプレイコンポーネントを備える、表示画面と、前記非視認領域において前記表示画面に固定された複数のハプティックアクチュエーターと、少なくとも1つのプロセッサとを備える、ハプティック対応表示デバイスがある。前記少なくとも1つのプロセッサは、前記複数のハプティックアクチュエーターの中から少なくとも1つのハプティックアクチュエーターを選択し、前記少なくとも1つのハプティックアクチュエーターをアクティベートし、それにより、前記表示画面の前記視認領域において目標位置で局所化ハプティック効果をもたらすように構成されたハプティック制御信号を確定し、前記目標位置で前記局所化ハプティック効果をもたらすように、前記ハプティック制御信号を前記少なくとも1つのハプティックアクチュエーターに送信する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のハプティック対応表示デバイスは、複数のアクチュエータの組み合わせにより、局所化ハプティック効果をもたらすことができるものであるが、アクチュエータ及びディスプレイの配置構造等について詳細を記述したものではない。また更に、アクチュエータと表示画面とを固定する固定部と、アクチュエータとの位置関係を工夫することによって局所化ハプティック効果をもたらすものではない。
【0005】
そこで、操作パネルに局所的な振動を発生させる、操作パネルの複数の取付部と複数のアクチュエータとの位置関係を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の電子機器は、保持部材と、利用者が操作入力を行う操作パネルと、前記操作パネルを前記保持部材に固定する複数の固定部と、平面視で前記複数の固定部のうちの隣り合う固定部同士の間に設けられ、前記操作パネルに振動を生じさせる複数のアクチュエータと、前記操作入力が行われる位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部によって検出される位置に応じて前記複数のアクチュエータのうちの少なくともいずれか1つを駆動する制御部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
操作パネルに局所的な振動を発生させる、操作パネルの複数の取付部と複数のアクチュエータとの位置関係を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1の電子機器100を示す斜視図である。
【
図2】実施形態1の電子機器100の下面側を示す図である。
【
図3】実施形態1の電子機器100からセンサシート130A、LCD130Bを取り外した状態で下面側を示す図である。
【
図5】
図4に示す矩形状の破線の内部を拡大して斜め下側から示す図である。
【
図7】電子機器100と制御機器50を含む振動生成システム10の構成を示すブロック図である。
【
図8】操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】操作パネル120に生じる振動加速度のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】
図12に示す振動加速度を得たときの駆動信号を示す図である。
【
図14】操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】実施形態1の変形例による電子機器100M1を示す図である。
【
図17】実施形態1の変形例による電子機器100M2を示す図である。
【
図18】実施形態2の電子機器200を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電子機器を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態1>
図1は、実施形態1の電子機器100を示す斜視図である。
図2は、実施形態1の電子機器100の下面側を示す図である。
図2は、下面側のカバーを取り外した状態を示す。以下では、XYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、平面視とはXY面視のことであり、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、厚さとは特に断らない限りZ方向の寸法である。
【0011】
電子機器100は、フレーム110、操作パネル120、センサシート130A、LCD(Liquid Crystal Display)130B、懸架装置140、アクチュエータ160、加速度センサ170を含む。電子機器100は、XY平面に延在し、厚さが薄い薄板状の機器である。電子機器100の長手方向はX方向であり、短手方向はY方向である。また、長手方向(X方向)、短手方向(Y方向)は、フレーム110、操作パネル120、センサシート130A、LCD130Bについても同様である。
【0012】
以下では、
図1及び
図2に加えて
図3乃至
図6を用いて説明する。
図3は、実施形態1の電子機器100からセンサシート130A、LCD130Bを取り外した状態で下面側を示す図である。
図4は、
図2及び
図3におけるA-A矢視断面を示す図である。
図5は、
図4に示す矩形状の破線の内部を拡大して斜め下側から示す図である。
図6は、懸架装置140を拡大して示す図である。電子機器100は、
図5に示す圧力センサ150をさらに含む。
【0013】
フレーム110は、保持部材の一例であり、矩形環状の枠状の部材である。フレーム110は分割式であってもよいが、ここでは一例として一体からなる枠状の部材である。ここでは、フレーム110が枠部111、112、113、114を有するものとして説明する。枠部111は-Y方向側でX方向に延在する部分である。枠部112は+Y方向側でX方向に延在する部分である。枠部113は-X方向側でY方向に延在する部分である。枠部114は+X方向側でY方向に延在する部分である。フレーム110の内側は開口部となっており、この開口部に操作パネル120を保持するために設けられている。フレーム110は、電子機器100の筐体の一部であってもよい。
【0014】
操作パネル120は、透明な薄板状の部材であり、一例としてガラス製の薄板又は硬質樹脂製の薄板である。操作パネル120は、10個の懸架装置140を介して矩形環状のフレーム110の中央の開口部115に取り付けられる。操作パネル120の平面視でのサイズはフレーム110の開口サイズと合わせられており、フレーム110に取り付けた状態で殆ど隙間が生じないように構成されている。操作パネル120は、電子機器100の外表面に位置し、電子機器100の利用者が手等で操作する操作面121を有する。操作面121は、操作パネル120の上面であり、フレーム110の上面と略面一である。
【0015】
操作パネル120は、下面に4本の凹部122を有する。下面は操作面121とは反対側の表面である。凹部122は、
図3及び
図5に示すようにY方向に沿って操作パネル120の下面が凹んでいる溝状の部分である。凹部122のXZ平面に平行な断面の形状は略円弧状である。
図1では凹部122を一点鎖線で示す。4本の凹部122は、操作パネル120の-Y方向側の端部から+Y方向側の端部にまで延在している。ただし、凹部122は略円弧状だけではなく、応力が一点に集中しないようにラウンドシェープを有していればよい。例えば、凹部122を三角形とした場合にはその角部分をラウンドシェープとしても良い。
【0016】
4本の凹部122は、操作パネル120をX方向に5等分するように設けられており、4本の凹部122のX方向における間隔は等しい。4本の凹部122は、操作パネル120をX方向において5つの領域120A1~120A5に分割するために設けられている。より具体的には、凹部122は、操作パネル120の厚さが薄く、凹部122以外の部分よりも剛性が低い。弱剛性では、伝搬する振動の周波数は低域のみとなり、結果として隣接する領域に振動の伝達量が小さくなる。このような凹部122を設けることで、操作パネル120に振動が生じる領域を5つに分割している。なお、操作パネル120の下にはLCD130Bが配置されるため、凹部122の内部には、透明ゴム材を代表とする剛性が操作パネル120に対して十分に低く、且つ、操作パネル120の材質と屈折率の近い透明樹脂125(
図5参照)を充填している。これにより、操作パネル120の操作面121側から凹部122が見えないようにしている。
【0017】
また、操作パネル120は、
図1に示すように視認領域123Aと非視認領域123Bを有する。非視認領域123Bは、平面視で操作パネル120の四辺に沿った矩形環状の領域であり、LCD130Bと重ならない領域、及び/又は、LCD130Bと重なっても外部から視認できない領域である。視認領域123Aは、平面視で非視認領域123Bの内側に位置し、LCD130Bと重なることで、LCD130Bが構成する表示領域を視認可能とする領域である。非視認領域123Bの下には、懸架装置140の一部、圧力センサ150、アクチュエータ160、及び加速度センサ170が配置されるため、これらが操作パネル120の操作面121側から見えないように、操作面121の一部には、加飾部材を設けてもよい。加飾部材は、不透明なフィルム、又は、不透明な塗料を塗布した塗料層等で実現可能である。なお、加飾部材は、非視認領域123B内で操作パネル120の下面に設けてもよい。
【0018】
センサシート130Aは、位置検出部の一例であり、LCD130Bの上面側に重ねた状態で操作パネル120の下面側に配置される。センサシート130Aは、一例として静電容量型のものを用いればよい。センサシート130Aは、操作面121に行われる操作入力の位置(座標)を検出する。センサシート130Aは透明である。
【0019】
LCD130Bは、表示部の一例であり、GUI(Graphic User Interface)による画像等を表示する。センサシート130Aは透明であるため、LCD130Bの表示は、センサシート130A及び操作パネル120を介して利用者に視認される。ここでは表示部としてLCD130Bを用いる形態について説明するが、LCD130Bに限られず、有機EL(Electroluminescence)等の何らかの画像表示素子を用いてもよい。また、ここでは電子機器100が表示部を含む形態について説明するが、電子機器100は表示部を含まない構成であってもよい。その場合にはセンサシート130A、操作パネル120などは透明である必要はない。
【0020】
懸架装置140は、操作パネル120をフレーム110に取り付ける取付部の一例であり、操作パネル120とフレーム110との間で振動を緩和するサスペンションの機能も有する。懸架装置140は、フレーム110に対して操作パネル120を弾性的に保持している。このような懸架装置140は、一例として20個設けられており、フレーム110の枠部111、112に10個ずつ取り付けられている。懸架装置140は、ホルダ141、ラバー部材142、及び軸部143を有する。
【0021】
枠部111に10個ずつ取り付けられる懸架装置140を-X方向側から+X方向側にかけて1番目から10番目と称すとともに、4本の凹部122を-X方向側から+X方向側にかけて1本目から4本目と称すと、10個の懸架装置140は
図3に示す通り次のように配置される。1番目の懸架装置140は枠部111の-X方向側の端部に設けられ、2番目及び3番目の懸架装置140は1本目の凹部122を挟んで隣接して設けられる。4番目及び5番目の懸架装置140は2本目の凹部122を挟んで隣接して設けられる。6番目及び7番目の懸架装置140は3本目の凹部122を挟んで隣接して設けられる。8番目及び9番目の懸架装置140は4本目の凹部122を挟んで隣接して設けられる。10番目の懸架装置140は枠部111の+X方向側の端部に設けられる。1番目及び2番目の懸架装置140の間隔と、3番目及び4番目の懸架装置140の間隔と、5番目及び6番目の懸架装置140の間隔と、7番目及び8番目の懸架装置140の間隔と、9番目及び10番目の懸架装置140の間隔とが等しい。なお、これは枠部112に取り付けられる10個の懸架装置140についても同様である。つまり懸架装置140は各領域120A1~A5の境界を形成する凹部122の位置に合わせて形成されているものである。このように、凹部122に近い位置に懸架装置140を配置することで、凹部122を挟んだ懸架装置140が仮想支持点、凹部122がスプリングとして作用する事から、操作パネル120の姿勢を保持しやすくなる。
【0022】
ホルダ141は、延在部の一例であり、一端が枠部111,112の下面に固定され、他端が操作パネル120の下面に固定されている、高剛性の材質製のものである。
図5に示す通り、枠部111、112の下面において、ピン145Aで位置決めした状態で3本のネジ145Bによって固定されている。ホルダ141は、枠部111、112の下面から矩形環状のフレーム110の開口部115に向かって平面視でY方向に延在するプレート状の部材である。ホルダ141のY方向における約半分は、平面視でフレーム110の開口部に延在しており、開口部115側の端部にラバー部材142が挿通される切欠部141A(
図5参照)を有する。
【0023】
ラバー部材142は、弾性部材の一例であり、ホルダ141と操作パネル120との間に設けられて、操作パネル120の振動を吸収することでホルダ141およびフレーム110に対して伝播する振動を緩和する。このとき、ラバー部材142は、ばねとしての役割を有し、そのばね定数が小さいと、振動における高周波数成分が伝達し難くなることから、全体として伝達する振動量が減少することとなる。
【0024】
ラバー部材142は、略円筒状のラバー(ゴム)製の部材であり、
図6に示すように中央にはZ方向に沿った軸方向に貫通する貫通孔142Aを有する。貫通孔142Aの内部には、軸部143が挿通されている。
図5では、構成を分かり易くするために、左側の懸架装置140のラバー部材142を省略し、軸部143を示す。また、
図6は、
図5とは天地が逆の状態を示し、構成を分かり易くするために右側の懸架装置140のネジ144と加速度センサ170を省略する。
【0025】
ラバー部材142は、
図5の右側で示すように軸部143によって操作パネル120の下面に固定され、外周部がホルダ141の切欠部141Aに係合している。また、ラバー部材142は、
図6に示すように、上面及び下面に、軸部143を取り囲むように環状に配置された複数の突起142Bを有する。ラバー部材142は、上面側の複数の突起142Bを介して圧力センサ150に当接しており、下面側の複数の突起142Bを介して軸部143の下端の円板部143Aに当接している。円板部143Aは、軸部143の下端で軸部143の外周にそって径方向外側に突出した円環状の部分である。
【0026】
軸部143は、軸部143の上端と操作パネル120の下面との間に加速度センサ170と圧力センサ150とを挟んだ状態で、ネジ144によって操作パネル120に固定されている。このため、ラバー部材142は、上面の突起142Bが圧力センサ150の下面に当接するとともに、下面の突起142Bが軸部143の円板部143Aの上面に当接した状態で、圧力センサ150の下面と円板部143Aの上面との間に挟まれている。
【0027】
このように懸架装置140はラバー部材142を介してフレーム110に取付けられることで剛性が低い、弱い締結力で締結されることとなる。これにより、フレーム110への振動伝搬を抑え、操作パネル120のみに振動が励起されることとなる。また、ラバー部材142が接触面積の小さい突起142Bを介して、圧力センサ150の下面と円板部143Aの上面とに当接することにより、操作パネル120がアクチュエータ160の振動による変形に追従して変形し易い構成を実現している。
【0028】
軸部143は、円板部143Aと、軸方向に貫通する貫通孔143Bとを有する円筒状の部材であり、ラバー部材142の中心の貫通孔142Aに挿通された状態で、貫通孔143Bに挿通されるネジ144によって操作パネル120に固定されている。より具体的には、軸部143は、軸部143の上端と操作パネル120の下面との間に加速度センサ170と圧力センサ150とを挟んだ状態で、ネジ144によって操作パネル120に固定されている。ネジ144は、加速度センサ170と圧力センサ150とに設けられた貫通孔に挿通された状態で、操作パネル120のネジ穴に締結されている。軸部143の外形は、ラバー部材142の貫通孔の内径に合わせられており、軸部143に対するラバー部材142の位置ずれが生じないように構成されている。
【0029】
なお、懸架装置140は、軸部143を含まずにラバー部材142をホルダ141と操作パネル120との間に設ける構成であってもよい。例えばラバー部材142をホルダ141と操作パネル120との間に挟んで設けてもよい。また、ラバー部材142の代わりに他の形態の弾性部材を用いてもよい。また、懸架装置140のように振動を緩和する構成ではなく、20個の懸架装置140の代わりに20点でフレーム110に対して直接操作パネル120を取り付ける構成であってもよい。ただし、そのような構成とする場合には懸架装置140のラバー部材142による振動伝達量の減少効果が失われる。また、取り付け位置の周辺部の振動フィードバック量を増大できなくなるため、各領域内の中央領域が振動フィードバックの主領域となる。また、振動の吸収が行われないことから音が発生する場合がある。
【0030】
圧力センサ150は、操作入力によって操作パネル120が下方に押圧される圧力を検出するセンサである。圧力センサ150としては、例えば圧電素子を用いたセンサを用いることができる。圧力センサ150は、各軸部143の上に設けられている。
【0031】
アクチュエータ160は、4本の凹部122によって分けられる操作パネル120の5つの領域120A1~120A5に2つずつ設けられている。アクチュエータ160は、操作パネル120の枠部111、112に沿った2つの端辺に沿って5個ずつ等間隔で設けられている。各アクチュエータ160のX方向の位置は領域120A1~120A5の各々における中央であり、Y方向における位置は、操作パネル120の±Y方向側の端部である。このように各アクチュエータ160をX方向において各領域の中央に配置することで、アクチュエータ160の重量が各懸架装置140を支持点として、各領域を梁とみなした際に、この梁のたわみが大きくなる部分に配置されることとなる。これによって、梁の共振周波数を下げることが出来、振動変位量を増加可能となり、結果、パネル変形量を大きくすることができる。
【0032】
アクチュエータ160は、一例として共振型のLRA(Linear Resonant Actuator)を用いることができるが、圧電型、磁歪型、又は電歪型の振動素子であってもよい。各アクチュエータ160は、非視認領域123B内で操作パネル120の下面に接着等によって取り付けられている。その際、アクチュエータ160によって発生される振動は操作パネル120がZ方向に変位するように配置される。
【0033】
加速度センサ170は、各軸部143と圧力センサ150との間に設けられている。このため、電子機器100は、20個の加速度センサ170を含む。加速度センサ170は、操作パネル120の振動の状態を検出するために設けられている。振動の状態とは、例えば、振動のZ方向の加速度又は角速度等である。なお、加速度センサ170の代わりに、歪みセンサや角速度センサ等を用いて振動の状態を検出してもよい。
【0034】
図7は、電子機器100と制御機器50を含む振動生成システム10の構成を示すブロック図である。電子機器100と制御機器50は、バス等を介してデータ通信可能に接続されている。
図7には、電子機器100の構成要素として、センサシート130A、LCD130B、圧力センサ150、アクチュエータ160、及び加速度センサ170を示す。ここでは、領域120A1~120A5にそれぞれ含まれる2つのアクチュエータ160をCH(チャンネル)1~5のアクチュエータ160として説明する。
【0035】
制御機器50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0036】
制御機器50は、画像制御部51、リクエスト生成部52、振動波形生成部53、抑制制御部54、出力部55、及びメモリ56を含む。画像制御部51、リクエスト生成部52、振動波形生成部53、抑制制御部54、出力部55は、制御機器50が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ56は、制御機器50のメモリを機能的に表したものである。
【0037】
画像制御部51は、LCD130Bに表示させるGUI画像等を生成する。GUI画像としては、例えば、押しボタンを表す画像等がある。画像制御部51は、電子機器100のセンサシート130Aで検出される座標に基づいて操作入力の内容を判定し、操作入力に応じたGUI画像等をLCD130Bの所望の位置に表示させる。
【0038】
リクエスト生成部52は、電子機器100の圧力センサ150で検出された押圧動作と、センサシート130Aで検出される位置とを用いて操作パネル120の領域120A1~120A5のうちの少なくとも1つの領域への振動の生成をリクエストする振動生成リクエストを含むリクエスト信号を生成する。
【0039】
例えば、操作入力が領域120A1内で行われている場合には、振動生成リクエストはCH1のアクチュエータ160を駆動するコマンドである。また、ここでは、リクエスト信号が領域120A2~120A5のうちのいずれかの領域での振動を抑制する振動を生成する振動抑制リクエストも含むものとして説明する。リクエスト信号は、振動波形生成部53と抑制制御部54とに伝送される。いずれの領域で振動生成リクエストに基づいてアクチュエータ160を駆動する場合に、いずれの領域で振動抑制リクエストに基づいてアクチュエータ160を駆動するかを表す組み合わせを表すデータをメモリ56に格納しておけばよい。
【0040】
振動波形生成部53は、リクエスト信号の振動生成リクエストが表すチャンネルのアクチュエータ160を駆動するための振動波形を表す振動波形データを生成し、出力部55に伝送する。また、本実施例では電子機器100の圧力センサ150で検出された押圧動作と、センサシート130Aで検出される位置とを用いて振動波形データを生成しているが、その過程において圧力センサ150で検出された圧力値自体を考慮に入れても良い。これにより操作圧力に応じた適切な振動波形データを生成することもできる。
【0041】
抑制制御部54は、振動波形生成部によって生成される振動波形データに基づき駆動されるアクチュエータ160が存在する領域以外の領域に伝播する振動を抑制するための制御を行うものである。電子機器100のセンサシート130Aで検出される位置と、各チャンネルの加速度センサ170で検出される加速度とを用いて、リクエスト信号の振動抑制リクエストが表すチャンネルのアクチュエータ160を駆動するため、伝搬する加速度を抑制する為に検出された加速度を略反転補正した駆動力を生成する、アクチュエータ160を駆動する為の抑制波形データを生成し、出力部55に伝送する。例えば、振動生成リクエストが表すチャンネルがCH1である場合には、振動抑制リクエストが表すチャンネルはCH2~CH5のうちの少なくともいずれか1つである。抑制制御部54が加速度センサ170で検出される加速度を用いて抑制波形データを生成する制御は、フィードバック制御である。抑制制御部54は、加速度を用いて略判定補正した振動を抑制可能な駆動波形の生成を行う。伝搬した振動を発振することなく抑制を行う為には、制御器の安定化を行うことが必要である。不安定化する要因としては、アクチュエータ160の応答遅れや、計算遅れといった、応答遅れによる不安定性があるが、これらの不安定性を緩和し、安定化する為に、一般的にはPID(Proportional Integral Derivative)制御が用いられる。さらに、パネルの副次モードに伴う位相変動の影響を緩和のする為に、位相進み・遅れ補償を組み合わせた位相補償を付加することでさらに安定性を増すことも可能である。この抑制波形データに基づいて駆動されるアクチュエータ160により発生される振動によって、振動波形データに基づき駆動されるアクチュエータ160によって発生される振動を、所望の領域において抑制することができる。結果、局所的な振動を生成できる。また、振動リクエスト終了後CH1においては振動抑制が実施されることで、局所的な振動を発生後、当該位置での振動を速やかに抑制することができ、切れの良い振動を生成することができる。また、本実施例では加速度センサ170で検出される加速度を用いて抑制波形データを生成しているが、その過程において操作パネル120等の振動特性(固有振動数)を考慮に入れても良い。これにより振動に寄与する部材の振動特性に基づき振動抑制に効果的な抑制波形データを生成することもできる。
【0042】
出力部55は、振動波形データ及び抑制波形データを含む駆動信号を出力する。この結果、振動波形データ及び抑制波形データは、それぞれ該当するチャンネルのアクチュエータ160に伝送される。振動生成リクエストが表すチャンネルのアクチュエータ160は振動波形データによって駆動され、振動抑制リクエストが表すチャンネルのアクチュエータ160は抑制波形データによって駆動される。
【0043】
メモリ56は、制御機器50が電子機器100の制御を行うために必要なプログラムやデータを格納するとともに、リクエスト信号等を一時的に格納する。
【0044】
なお、振動抑制リクエストに該当するチャンネルは、電子機器100の操作パネル120の振動特性に応じて設定すればよい。電子機器100の操作パネル120は、領域120A1~120A5に分けられており、領域間で振動が伝わりにくい構成を有する。しかしながら、ある領域でアクチュエータ160を駆動した場合に、他のいずれかの領域において振動をより効果的に抑制したい場合には、そのような領域を振動抑制リクエストで指定し、振動を抑制するための駆動パターンでアクチュエータ160を駆動すればよい。振動生成リクエストで指定する領域又はアクチュエータ160のチャンネルと、振動抑制リクエストで指定する領域又はアクチュエータ160のチャンネルとの組み合わせを表すデータをメモリ56に格納しておけばよい。
【0045】
図8乃至
図11は、操作パネル120に生じる振動波形のシミュレーション結果を示す図である。
図8は、1番目(-X方向側の端部)の懸架装置140と、10番目(+X方向側の端部)の懸架装置140との4点のみでフレーム110に固定した操作パネル120のシミュレーションモデルについて自由振動を発生させた場合の振動波形である。X方向に2次、Y方向に1次とする21モードの振動が生じている。同様に高次のモードとしてX方向に4次、Y方向に1次のモードの例を
図9に示す。
【0046】
図10は、X方向に8個の懸架装置140を配置し、合計16個の懸架装置140で操作パネル120をフレーム110に取り付けたシミュレーションモデルを
図8と同じアクチュエータ160の駆動条件で駆動した場合の振動波形を示す。
図10に示す操作パネル120のシミュレーションモデルは、
図3に示すように10個の懸架装置140でフレーム110に取り付けた操作パネル120よりも懸架装置140を6個追加して同様にフレーム110に取り付けたものである。
【0047】
図10は、
図8に対し合計16個の懸架装置140を配置した場合の振動波形のシミュレーション結果である。
図8の結果は正弦波状に振動しているのに対し、
図10では懸架装置140の締結による拘束の影響を受け振動波形が変化することが判る。また、
図11は、
図9に対し合計16個の懸架装置140を配置した場合の振動波形のシミュレーション結果である。
図11から高次のモードでも懸架部分の締結による拘束の影響を受けていることが判る。懸架装置140による操作パネル120の締結によって、自由な振動モード(振動次数がmn、m、nは整数)ではなく、懸架装置140による拘束部が節となるような振動モードが励起されるようになる。つまり拘束部の位置により振動が励起しやすい局所的な位置の大きさを変えることが出来る。
【0048】
前述したように、操作パネル120は懸架装置140を介してフレーム110に対して取り付けられている為、アクチュエータ160によって発生した振動は、懸架装置を略節とした振動が励起しやすい。この結果、操作パネル120でアクチュエータ160による振動を生成している領域で振動が発生しやすくなる。また、懸架装置140中のラバー部材142による弾性締結で弱剛性にて締結している為、フレーム110への振動伝搬を抑え、操作パネル120のみに振動が励起されることとなる。
【0049】
また、各領域間には凹部122が存在することから、所定の領域で発生された振動は凹部122によって吸収される。これにより、所望の領域以外での振動を抑制制御部54によって発生される抑制波形データによって駆動されるアクチュエータ160によって発生させられる信号で、所望の領域以外の振動を抑制しやすくなる。結果、所望の領域のみでの局所的な振動を得ることができる。
【0050】
したがって、操作パネル120に局所的な振動を発生させる、操作パネル120の複数の懸架装置140と複数のアクチュエータ160との位置関係を有する電子機器100を提供することができる。
【0051】
図12は、操作パネル120に生じる振動加速度のシミュレーション結果を示す図である。
図12において横軸は時間を表し、縦軸は振動加速度を表す。ここでは、チャンネルが4つ(CH1~CH4)の電子機器100についてシミュレーションを行った。振動指示信号を1周期分の正弦波形の振動波形データ、振動リクエストをCH1のアクチュエータ160、振動抑制リクエストをCH2~CH4のアクチュエータ160とし、CH2~CH4のアクチュエータ駆動信号は、加速度センサ170から検出される加速度データ(振動加速度)に基づいて抑制制御部54によって生成した抑制波形データによって生成した。
図12中のCH1は振動指示信号に基づいた大きな振動加速度波形が生成されており、CH2~CH4のアクチュエータ160は、小さな振幅の振動加速度となっていることが判る。またCH1の駆動指示信号(正弦波1周期)終了以降、時間の経過に従ってCH1~CH4のアクチュエータ160の振動加速度が安定して減衰していることが分かる。
【0052】
図13は、
図12に示す振動加速度を得たときの駆動信号を示す図である。
図13において横軸は時間を表し、縦軸は駆動信号に含まれる振動波形データ又は抑制波形データの波形を表す。
図13中のCH1は振動指示信号(駆動波形)であり、CH2~CH4は振動抑制駆動信号である。振動指示信号は1周期分の正弦波であり、1周期の振動駆動指示終了後は0となる波形である。その為CH1の振動指示信号図もそのようになっている。また、CH2~CH4は加速度信号に基づいて生成される振動抑制駆動信号によってアクチュエータが駆動されるため、
図12中のCH2~CH4で観測された加速度に従った駆動信号波形となっている。なお、パネルには振動伝搬に伴った伝達ロス及び懸架装置140のラバー部材142による振動吸収が存在する為、伝搬距離に伴い振動自体も小さくなる。
図12中でもわかる様に振動指示信号によって振動が生成されるCH1に近いCH2の振幅が大きく、CH4の振幅が小さくなっていることが判る。
【0053】
図14及び
図15は、操作パネル120に生じる振動波形の強度分布のシミュレーション結果を示す図である。
図14は、CH2のアクチュエータ160のみを振動波形データを含む駆動信号で駆動した場合の振動波形を示す。CH2に対応する領域120A2(
図1参照)に振動強度が高い領域が生じているのと共に、矢印B1で示したパネルの振動モードに対応した振動励起が観測される。駆動指示信号に伴う振動提示対象領域は領域120A2に対して不要な振動が矢印B1で生成されていることとなる。パネルの振動モードは懸架装置140で拘束された位置が振動の節となるようなパネル振動が励起されやすい。B1は領域120A4の懸架装置間の振動の腹に位置する。
図15は、CH2のアクチュエータ160を振動波形データを含む駆動信号で駆動するとともに、CH4のアクチュエータ160をB1の位置に配置し、検出された加速度信号に基づいて振動抑制信号を生成し駆動を行った場合の、操作パネル120に生じる振動波形の強度分布を示す。
図14ではパネル振動モードに対応した振動モード励起によるB1の強度分布があったものが、
図15では、振動抑制信号に基づいた振動抑制制御による効果によってB2の様に振動強度が軽減されていることが分かる。本例では、B1にアクチュエータを配置し振動抑制制御による効果を与えたが、
図14で観測されるように領域120A1の端部及び、領域120A5端部にも振動の励起が観測される。端部で振動の増大が発生していることから、パネル端面部に、同様にアクチュエータを配置し振動の抑制を行うことも可能である。
【0054】
操作パネル120が持つ振動モードは様々であり、駆動指示信号の周波数が変化することに伴って駆動指示信号を与えていない領域でも振動励起するパターンが生じる。一方操作パネル120は懸架装置140によって弾性拘束される為、操作パネル120に励起される振動モードは弾性拘束点を節としたパネル振動モードに対応した位置に略制限され、振動の腹は、懸架装置140間に位置しやすくなる。従って懸架装置140間にアクチュエータ160を配置し、かつ駆動指示信号を与えるアクチュエータ160以外を振動抑制制御とすることで、駆動指示信号を与える領域以外で発生する振動を抑制する事が可能となる。したがって、抑制波形データを含む駆動信号によるアクチュエータ160の駆動を加えた場合にも、操作パネル120に局所的な振動を発生させる、操作パネル120の複数の懸架装置140と複数のアクチュエータ160との位置関係を有する電子機器100を提供することができる。操作パネル120の全体ではなく、局所的に(一部分だけに)振動を発生させることができれば、電子機器100の用途も広がり、より多くの製品に実装可能になる。
【0055】
また、懸架装置140は、ホルダ141、ラバー部材142、及び軸部143を有し、フレーム110に固定されるホルダ141と、操作パネル120に固定される軸部143との間にラバー部材142を設けることによって、フレーム110に対して操作パネル120を弾性的に締結している。懸架装置140はサスペンションであり、操作パネル120の振動の節となって振動を緩和するが、完全に振動を緩和せずにある程度の振動を許容する。このような懸架装置140を領域120A1~120A5の境界に配置することによって、操作パネル120を領域120A1~120A5に分けて、互いの振動が他の領域に伝達しにくい構成を実現している。このような複数の懸架装置140を含むことによって、操作パネル120に局所的な振動を発生させている。
【0056】
また、ホルダ141が枠状のフレーム110の内側に向けて延在しているので、ラバー部材142を介して操作パネル120を容易に取り付けることができる。また、ホルダ141のフレーム110の内側に延在した部分と、ラバー部材142と、軸部143とを操作パネル120の非視認領域123B内に配置しているため、LCD130Bの表示を妨げることなく、効率的な配置が可能になる。
【0057】
また、アクチュエータ160を非視認領域123B内に配置しているため、LCD130Bの表示を妨げることなく効率的な配置が可能になるとともに、隣り合う懸架装置140同士の間(取付部同士の間)にアクチュエータ160を配置でき、操作パネル120の各領域(120A1~120A5)に効率的に振動を発生させることができる。また、隣り合う懸架装置140同士の中央にアクチュエータ160を配置することにより、操作パネル120の各領域(120A1~120A5)により効率的に振動を発生させることができる。
【0058】
また、操作パネル120は長手方向を有する平面視で長方形のパネルであるため、長手方向に振動を発生させやすい。そして複数のアクチュエータ160を操作パネル120の長手方向に沿って配置しているため、操作パネル120に効率的に振動を発生させることができる。
【0059】
なお、以上では、懸架装置140のホルダ141が高剛性の材質製のものである形態について説明したが、ホルダ141が弾性を有していて、懸架装置140は、ホルダ141の弾性とラバー部材142の弾性とで実現されていてもよい。
【0060】
また、以上では、アクチュエータ160が隣り合う懸架装置140の間に配置される構成について説明したが、懸架装置140と同一の位置に設けてもよい。例えば、懸架装置140のホルダ141の下面側にアクチュエータ160を取り付けると、アクチュエータ160の振動軸と、フレーム110に対して操作パネル120を保持する懸架装置140の保持軸とが揃う。このような構成にすると、アクチュエータ160の振動生成力が操作パネル120の懸架装置140によって固定されている部分(固定部)に伝達され易くなり、固定部に伝わるアクチュエータ160の振動生成力が相対的に増加し、固定部をより揺らしやすくなる。
【0061】
また、以上では、操作パネル120が下面に凹部122を有する形態について説明したが、操作パネル120は凹部122を有していなくてもよい。
図16は、実施形態1の変形例による電子機器100M1を示す図である。電子機器100M1は、
図1乃至
図6に示す電子機器100の操作パネル120の代わりに操作パネル120M1を含む。また、チャンネル数は3であり、操作パネル120M1をX方向に3つの領域に分けている。アクチュエータ160は、各領域の+Y方向側と-Y方向側とに1つずつ設けられている。また、懸架装置140は、各アクチュエータ160の両側に設けられている。このため、電子機器100M1は、6個のアクチュエータ160と8個の懸架装置140とを含む。このような構成の電子機器100M1においても、懸架装置140によって操作パネル120が複数の領域に分けられており、振動波形データを含む駆動信号で2つのアクチュエータ160を駆動する領域以外の領域について抑制波形データを含む駆動信号でアクチュエータ160を駆動しても、駆動しなくても、振動波形データを含む駆動信号で2つのアクチュエータ160を駆動する領域以外の領域における振動の発生を抑制できる。
【0062】
また、以上では、操作パネル120の長手方向に沿って複数の懸架装置140を配置する形態について説明したが、長手方向に加えて、又は、長手方向の代わりに、操作パネル120の短手方向に沿って1又は複数の懸架装置140を配置してもよい。この場合には、操作パネル120を短手方向においても複数の領域に分けることができる。
【0063】
また、以上では、操作パネル120の長手方向に沿って複数のアクチュエータ160を配置する形態について説明したが、長手方向に加えて、又は、長手方向の代わりに、操作パネル120の短手方向に沿って1又は複数のアクチュエータ160を配置してもよい。
【0064】
したがって、操作パネル120M1に局所的な振動を発生させる、操作パネル120M1の複数の懸架装置140と複数のアクチュエータ160との位置関係を有する電子機器100M1を提供することができる。
【0065】
また、以上では、懸架装置140が操作パネル120のX方向に延在する端辺のみに沿って設けられる形態について説明したが、懸架装置140は操作パネル120のX方向及びY方向の両方に延在する端辺に沿って設けられていてもよい。
図17は、実施形態1の変形例の電子機器100M2を示す図である。
【0066】
電子機器100M2は、フレーム110M、操作パネル120M2、懸架装置140、アクチュエータ160、加速度センサ170を含む。電子機器100M2は、センサシート130A、LCD130B、圧力センサ150も含むが
図17では省略する。
【0067】
電子機器100M2は、懸架装置140が操作パネル120M、アクチュエータ160、加速度センサ170がX方向及びY方向の両方の端辺に沿って設けられている点が
図16に示す電子機器100M1と異なる。
図17には、
図3に示す電子機器100に対して、操作パネル120MのY方向の各端辺に沿って2つの懸架装置140が設けられている構成を示す。電子機器100M2は、合計で14個の懸架装置140を含む。なお、アクチュエータ160は、操作パネル120のX方向に延在する端辺のみに設けられている。
【0068】
操作パネル120のY方向に延在する端辺に沿って設けられた4つの懸架装置140は、一例として
図14及び
図15におけるX方向の両端における振動のピークを抑制するために設けられている。領域120A1~120A5(
図1参照)のうち、領域120A1及び120A5は、X方向における片側のみに隣接する領域120A2及び120A4が存在する。これは、領域120A2~120A4のように、X方向における両側に隣接する領域がある、接続剛性が高い構造とは異なる。このため、領域120A1及び120A5は、領域120A2~120A4と比べると、X方向における接続剛性が低い。このため、
図14及び
図15に示すように、領域120A1の-X方向側の端部と、領域120A5の+X方向側の端部のように接続剛性が低い部分では振動を抑制しにくく、振動のピークが大きくなりやすい。このような振動のピークを抑制するために、電子機器100M2は、操作パネル120のY方向に延在する端辺にも懸架装置140を設けて振動を抑制している。
【0069】
なお、Y方向に延在する端辺の2つの懸架装置140が配置される構成を示すが、懸架装置140は各端辺に3つ以上設けられていてもよい。また、Y方向に延在する端辺には懸架装置140が配置された構成を示しているが、これに替えて、または、これに加えて、アクチュエータ160を配置しても良い。この場合にはX方向に延在する端辺に配置されたアクチュエータ160と同様の動作を行うこととなる。
【0070】
<実施形態2>
図18は、実施形態2の電子機器200を示す平面図である。以下では、実施形態1と同様にXYZ座標系を定義して説明する。また、以下では、平面視とはXY面視のことであり、説明の便宜上、-Z方向側を下側又は下、+Z方向側を上側又は上と称すが、普遍的な上下関係を表すものではない。また、厚さとは特に断らない限りZ方向の寸法である。
【0071】
また、以下では、実施形態1の電子機器100と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。電子機器200は、操作パネル220、センサシート230A、懸架装置140、及びアクチュエータ160を含む。
図18では、電子機器200のフレームになる部材を省略する。実施形態2では、電子機器200のフレームになる部材は、一例として車両のインテリアパネルである。インテリアパネルは、
図18では操作パネル220の-Z方向側に設けられる。操作パネル220は、車室内側に取り付けられるインテリアパネルであり、
図18は背面側から透視した図である。なお、電子機器200は、加速度センサ170(
図2、
図5、及び
図6参照)を含むが、
図18では省略する。
【0072】
電子機器200は、一例として11個の懸架装置140を含む。11個の懸架装置140のうち、平面視で操作パネル220の外縁側に設けられる7個の懸架装置140Aは、第1取付部の一例であり、7個の懸架装置140Aが囲む領域よりも内側でアクチュエータ160の周囲に設けられる4個の懸架装置140Bは、第2取付部の一例である。平面視における操作パネル220の外縁側とは、平面視において、操作パネル220の中央側よりも外縁に近い側をいう。また、7個の懸架装置140Aが囲む領域とは、平面視で7個の懸架装置140Aが位置する領域を結んだ線によって囲まれる領域である。
【0073】
以下では、懸架装置140Aと懸架装置140Bを区別しない場合には、単に懸架装置140と称す。
図18では、懸架装置140については、ホルダ141、ホルダ141の3つの貫通孔141B、及びネジ144を示し、その他の構成要素(ホルダ141の切欠部141A、ラバー部材142、軸部143等)については、
図5及び
図6等を援用して説明を行う。
【0074】
各懸架装置140は、
図5及び
図6に示す懸架装置140と同様であるが、実施形態2では、ホルダ141に対して3本のネジ145Bを挿入する方向が実施形態1とは逆である。実施形態1及び2において、ラバー部材142を固定するネジ144のネジ頭から先端に向かう方向が+Z方向であり、実施形態1ではホルダ141の3つの貫通孔141Bに-Z方向側から+Z方向側にネジ145Bを挿通させるが、実施形態1ではホルダ141の貫通孔141Bに+Z方向側から-Z方向側にネジ145Bを挿通させてネジ145Bでホルダ141をインテリアパネルに取り付けてある。
【0075】
また、ラバー部材142は、軸部143とネジ144によって操作パネル220の-Z方向側の表面に取り付けられている。
図18には、操作パネル220の-Z方向側の表面に取り付けられたラバー部材142の外周部をホルダ141の切欠部141Aに係合させた状態を示す。操作パネル220Aは、ラバー部材142をインテリアパネルの+Z方向側に取り付けられたホルダ141の切欠部141Aに係合させることによって、インテリアパネルに取り付けられている。
【0076】
センサシート230Aは、平面視において操作パネル220の中央部(操作パネル220のX方向の長さの中央部に位置し、かつ、操作パネル220のY方向の長さの中央部に位置する部分)の-Z方向側に設けられている。センサシート230Aは平面視で矩形状であり、センサシート230Aが設けられる領域の四隅の外側には4個の懸架装置140Bが設けられている。
【0077】
センサシート230Aは、実施形態1のセンサシート130Aと同様であり、操作パネル220の+Z方向側の操作面に行われる操作入力の位置(座標)を検出する。実施形態2では、操作パネル220に行われる操作入力の位置を検出可能な領域は、平面視でセンサシート230Aと重なる領域である。
【0078】
アクチュエータ160は、平面視で操作パネル220の中央に設けられる。アクチュエータ160は、センサシート230Aの-Z方向側に重ねて設けられている。アクチュエータ160は、操作パネル220に振動を生じさせ、操作パネル220の+Z方向側の表面に触れる利用者の指先等に触感を提供する。
【0079】
図19は、電子機器200の振動系を示す図である。一例として操作パネル220に3次のモードの振動が生じるものとして考える。例えば、
図18に示す操作パネル220のY方向における中央よりも+Y方向側の領域において、+X方向側と-X方向側とにピークを有する2つの振動が生じ、
図18に示す操作パネル220のY方向における中央よりも-Y方向側の領域に1つの信号が生じるものとする。
【0080】
このような場合には、操作パネル220は仮想的に3つの部分に分かれて振動しており、操作パネル220の質量を仮想的に3つの質量m1、m2、m3に分けて考えることができる。
【0081】
このように操作パネル220を3つに分けると、
図19に示すように質量m1、m2、m3が振動する振動系として電子機器200を捉えることができる。そして、一例として、アクチュエータ160は、質量m2の部分に固定されていることとして考える。
【0082】
図20は、比較用の振動特性を示す図である。
図20に示す特性は、アクチュエータ160を取り外した操作パネル220をインテリアパネルに取り付けて共振させた場合のアクチュエータ取り付け点での振動強度の周波数特性を示す。
図20に示すように、約80Hz、約160Hz、及び約200Hzの帯域に鋭いピークが生じた。
【0083】
図21は、実施形態2の振動特性を示す図である。
図21に示す特性は、アクチュエータ160を操作パネル220上に配置し、インテリアパネルに取り付けて共振させた場合の振動強度の周波数特性を示す。
図21に示すように、約80Hzの振動強度は大幅に低減され、約200Hzの振動強度も低減され、約160Hzにはアクチュエータ160の共振による大きな振動強度が得られた。アクチュエータ160の振動強度は、約200Hzの振動強度よりも大きく、アクチュエータ160の振動が主体的になって共振が生じていることが分かった。かつ、このような振動は、平面視において操作パネル220の中央部の4個の懸架装置140Bによって囲まれる領域内で局所的に生じるものである。
【0084】
これらの効果は、
図19に示した様に、ばね、ダンパーを介してアクチュエータ質量を接続した共振系を付加することで、m2の等価質量が増加することになる。これにより、m1=m3<m2となる為、伝達エネルギ―が一定であることから、m1及びm3の影響によるm2の振動振幅量が減少することとなる。この状態で、ばね、ダンパーを介してアクチュエータ質量を接続した共振系が加わる為、アクチュエータ160の振動が主体的に表れているものと考えられる。なおアクチュエータ160の共振系は、アクチュエータ内部に可動子を持つLRAタイプであってもよいし、VCM可動部にばね、ダンパー系を接続して共振系を構成したものでもよい。
【0085】
本例ではパネルが弾性振動となりかつ、操作領域とその他が3次モードとなるパネルモードを用いているが、3次に限定されるものではなく、操作領域をカバーできる振動モードを選定するのがよい。4次、5次と高次の次数を選択した場合、複数次数の影響がより現れる。その影響を低減する為に、操作領域部の剛性を低減し(厚みを減少)低剛性化を図り、振動モードの次数を削減してもよい。
【0086】
したがって、操作パネル220に局所的な振動を発生させる、操作パネル220の複数の懸架装置140と複数のアクチュエータ160との位置関係を有する電子機器200を提供することができる。
【0087】
なお、本国際出願は、2020年7月8日に出願した日本国特許出願2020-117801号に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【0088】
以上、本発明の例示的な実施形態の電子機器について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
100、100M1、100M2 電子機器
110、110M フレーム
120、120M1、120M2 操作パネル
120A1~120A5 領域
121 操作面
122 凹部
123A 視認領域
123B 非視認領域
130A センサシート
130B LCD
140 懸架装置
141 ホルダ
142 ラバー部材
143 軸部
150 圧力センサ
160 アクチュエータ
170 加速度センサ