(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】燃料電池用複合シート及び燃料電池用複合シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1004 20160101AFI20240307BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240307BHJP
H01M 8/0286 20160101ALI20240307BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240307BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/0273
H01M8/0286
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2022567550
(86)(22)【出願日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2022022671
(87)【国際公開番号】W WO2023281953
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021114120
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水島 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】白川 創平
(72)【発明者】
【氏名】上赤 功哉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 頼
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/001755(WO,A1)
【文献】特開2006-331861(JP,A)
【文献】特表2005-536861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/10
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体に設けられガス拡散層を含む膜電極接合体と、
前記枠体よりも硬質であって、前記膜電極接合体を挟持するシート状の挟持部材と、を有
し、
前記挟持部材は磁性体であり、当該磁性体は、マグネットシートと、磁性を備える金属プレートとを備えていることを特徴とする燃料電池用複合シート。
【請求項2】
枠体と、
前記枠体に設けられガス拡散層を含む膜電極接合体と、
前記枠体よりも硬質であって、前記膜電極接合体を挟持するシート状の挟持部材と、を有
し、
前記枠体にガスケットが設けられており、
前記挟持部材は磁性体であり、当該磁性体は、マグネットシートと、磁性を備える金属プレートとを備えていることを特徴とする燃料電池用複合シート。
【請求項3】
前記マグネットシートは、樹脂でラミネート加工されていることを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載の燃料電池用複合シート。
【請求項4】
枠体に、ガス拡散層を含んだ膜電極接合体を設ける工程と、
前記枠体よりも硬質のシート状の挟持部材で、前記膜電極接合体を挟持する工程と、を含
み、
前記枠体に、圧縮成形によってガスケットを形成し、
前記挟持部材は、磁性体を含み、
一対の成形型の一方に成形型用磁性部材を備え、前記枠体、前記膜電極接合体及び前記挟持部材を当該一方の成形型に磁力で拘束した状態で前記圧縮成形を行うことを特徴とする燃料電池用複合シートの製造方法。
【請求項5】
前記磁性体は、マグネットシートと、磁性を備える金属プレートとを備えていることを特徴とする請求項
4に記載の燃料電池用複合シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用複合シート及び燃料電池用複合シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池セルは、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)、ガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)、一対のセパレータ及びガスケットを備えている。当該燃料電池セルは、アノード側から水素ガス、カソード側から空気(酸素ガス)を供給することで発電するようになっている。
【0003】
ガスケットによるシール構造には様々な種類があるが、例えば、膜電極接合体の外周縁に延設された枠体に、ゴム等の弾性体を形成するものが知られている(特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載された発明は、枠体(プレート)と、ガス拡散層を含んだ膜電極接合体と、枠体に設けられたガスケットと、を備えた燃料電池用複合シートとなっている。
【0004】
ガスケットの成形においては、枠体に直接圧縮成形する方法と、予め成形されたガスケットを枠体に接着させる方法が知られている。後者の接着させる方法では、接着剤からガスが透過するおそれがあるとともに、工数が増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る発明では、枠体(プレート)として金属製のセパレータが例示されているが、例えば、柔らかいフィルムで枠体を形成する場合もある。このような場合、燃料電池用複合シートが薄く、変形しやすくなるため製造工程において取り扱い性が低下するという問題がある。
【0007】
また、枠体に直接圧縮成形してガスケットを製造する場合、湿度変化によって被成形体が反り、成形型への噛み込みやガスケットの位置ずれが発生するという問題がある。当該問題は、一般的に、高分子電解質膜(PEM:polymer electrolyte membrane)を含む膜電極接合体の膨潤率が枠体よりも高いために発生すると解される。例えば、成形型内の湿度を一定に管理することで反りを防止できると考えられるが、圧縮成形では被成形体の周囲を高温かつ真空にする必要があり、湿度管理が困難になる。
【0008】
一方、膨潤率の高い高分子電解質膜のみを密封することも考えられるが、ガスケットの成形位置と高分子電解質膜とを十分に離間させる必要があるため、製品形状が限定されるという問題がある。また、室温硬化(RTV:room temperature vulcanization)型のシリコーンゴムなどを使用すれば湿度を管理できるが、一般的に機械的特性や耐薬品性が劣るという問題がある。
【0009】
本発明はかかる課題を解決するために発明されたものであり、取り扱い性が高い燃料電池用複合シート及び燃料電池用複合シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための本発明は、枠体と、前記枠体に設けられガス拡散層を含む膜電極接合体と、前記枠体よりも硬質であって、前記膜電極接合体を挟持するシート状の挟持部材と、を有し、前記挟持部材は磁性体であり、当該磁性体は、マグネットシートと、磁性を備える金属プレートとを備えていることを特徴とする。
また、本発明は、枠体と、前記枠体に設けられガス拡散層を含む膜電極接合体と、前記枠体よりも硬質であって、前記膜電極接合体を挟持するシート状の挟持部材と、を有し、前記枠体にガスケットが設けられており、前記挟持部材は磁性体であり、当該磁性体は、マグネットシートと、磁性を備える金属プレートとを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、挟持部材で膜電極接合体を挟持することにより、反りを抑制することができる。これにより、成形時、組み立て時等における燃料電池用複合シートの取り扱い性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明によれば、湿度管理が困難な環境でも、膜電極接合体の反りを抑制できるため、成形型への噛み込みやガスケットの位置ずれを防ぐことができる。
【0016】
本発明によれば、挟持部材を磁性体で構成することで、ガスケットの成形時に枠体及び膜電極接合体が変形するのを防ぐことができる。
【0017】
また、前記マグネットシートは、樹脂でラミネート加工されていることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、ガスケットの圧縮成形時の熱によるマグネットシートからのアウトガスの発生を防止することができる。
【0019】
また、本発明は、枠体に、ガス拡散層を含んだ膜電極接合体を設ける工程と、前記枠体よりも硬質のシート状の挟持部材で、前記膜電極接合体を挟持する工程と、を含み、前記枠体に、圧縮成形によってガスケットを形成し、前記挟持部材は、磁性体を含み、一対の成形型の一方に成形型用磁性部材を備え、前記枠体、前記膜電極接合体及び前記挟持部材を当該一方の成形型に磁力で拘束した状態で前記圧縮成形を行うことを特徴とする。
また、前記磁性体は、マグネットシートと、磁性を備える金属プレートとを備えていることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、挟持部材で膜電極接合体を挟持することにより、反りを抑制することができる。これにより、成形時、組み立て時等における燃料電池用複合シートの取り扱い性の向上を図ることができる。また、本発明によれば、成形型の成形時の衝撃に起因する位置ずれを防ぐことが できる。また、離型後に一方の成形型に製品が残るため、成形のサイクルタイムを向上させることができる。また、成形後の離型時に、製品が他方の成形型(キャビティ側・上型)に残って製品が落下することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の燃料電池用複合シート及び燃料電池用複合シートの製造方法によれば、取り扱い性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係る燃料電池用複合シートの平面図である。
【
図3】実施例1に係る燃料電池用複合シートの分解斜視図である。
【
図5】ガスケットの圧縮成形工程を示す断面図である。
【
図6】従来の燃料電池用複合シートを示す斜視図である。
【
図9】実施例2の成形型を示す断面図(
図10のIX-IX線断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態に係る燃料電池用複合シート及び燃料電池用複合シートの製造方法について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、燃料電池用複合シート1は、枠体2と、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)3と、挟持部材4と、ガスケット5と、を備えている。燃料電池セルは、燃料電池用複合シート1を一対のセパレータ(図示省略)で挟持することで構成されている。当該燃料電池セルは、アノード側から水素ガス、カソード側から空気(酸素ガス)を供給することで発電するようになっている。
【0024】
本実施形態に係る燃料電池用複合シート1及び燃料電池用複合シートの製造方法では、挟持部材4で膜電極接合体3を挟持することにより、反りを抑制することができる。これにより、成形時、組み立て時等における取り扱い性の向上を図ることができる。以下、実施例について詳細に説明する。
【0025】
[実施例1]
枠体2は、
図1に示すように、平面視矩形のフィルム状のシートである。枠体2は、例えば、PEN(polyethylene terephthalate)フィルム等の樹脂製フィルムで形成されている。枠体2の形状及び材料は、あくまで例示であって、例えば、金属セパレータ、カーボンセパレータ、ガス拡散層付きサブガスケット等であってもよい。枠体2は、枠本体21と、枠本体21の両側に設けられた複数の連通孔22とを備えている。枠本体21の中央部は、膜電極接合体3が設置される部位である。連通孔22の形状、位置、個数は適宜設定すればよい。
【0026】
膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)3は、
図2に示すように、高分子電解質膜31と、ガス拡散層32,32と、を備えている。ガス拡散層32,32は、高分子電解質膜31を表面側及び裏面側から挟持している。高分子電解質膜31の外縁から側方に向けて枠本体21が延設されている。
【0027】
挟持部材4は、
図2及び
図3に示すように、膜電極接合体3を表面側及び裏面側から挟持するシート状の部材である。挟持部材4は、本実施例では、マグネットシート41と、金属プレート42とを備えている。マグネットシート41は、矩形を呈し膜電極接合体3の表側の全体を覆うように配置されている。マグネットシート41は、例えば、熱可塑性樹脂のフィルムでラミネート加工が施されている。
【0028】
金属プレート42は、矩形を呈し膜電極接合体3の裏側の全体を覆うように配置されている。本実施例では、金属プレート42は、磁性を備えた材料(例えば、SUS430)で形成されている。これにより、マグネットシート41と金属プレート42とが磁力でくっついた状態となる。
【0029】
挟持部材4は、本実施例では上記のように構成したが、膜電極接合体3よりも硬質で、膜電極接合体3よりも膨潤率が低いシート状の部材であれば、他の形態であってもよい。
【0030】
ガスケット5は、
図1及び
図4に示すように、弾性材料で形成されたシール部材である。ガスケット5とセパレータ(図示省略)とが当接することで、シール領域を形成することができる。ガスケット5は、本実施例ではシリコーンゴム(VMQ)を用いている。なお、ガスケット5は、弾性を有する材料で形成すればよく、例えば、ゴム硬度Hs45~55のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、ポリイソブチレン(PIB)、樹脂等を用いることができる。
【0031】
ガスケット5は、第1ガスケット5Aと、複数の第2ガスケット5Bとを備えている。第1ガスケット5Aは、枠本体21の外周縁に沿って、無端となるように形成されている。第2ガスケット5Bは、第1ガスケット5Aよりも内側において、各連通孔22の外周縁に沿って無端となるように形成されている。第2ガスケット5Bは、各連通孔22に対応して形成されている。ガスケット5は、圧縮成形で枠本体21に一体成形してもよいし、予め成形されたガスケット5を接着剤で枠本体21に接着してもよい。
【0032】
次に、本実施例の燃料電池用複合シートの製造方法について説明する。本実施例の燃料電池用複合シートの製造方法では、第一工程と、第二工程と、第三工程と、を行う。
【0033】
第一工程は、枠体2にガス拡散層32を含んだ膜電極接合体3を設ける工程である。本実施例では、枠体2の中央部に膜電極接合体3を接着して一体成形している。
【0034】
第二工程は、挟持部材4で膜電極接合体3を挟持する工程である。本実施例では、膜電極接合体3の表面(上面)にマグネットシート41を配置し、裏面(下面)に金属プレート42を配置して挟持する。
【0035】
第三工程は、ガスケット5を形成する工程である。本実施例では、圧縮成形によって一体成形する。
図5に示すように、第三工程では、第一成形型51と、第二成形型52とを用いる。第一成形型51の端面51aは平坦になっている。第二成形型52は、平坦な端面52aと、凹部53,53と、当接面54とを備えている。当接面54は、成形時に枠体2と接触する面である。
【0036】
第三工程では、第一成形型51の端面51aと、第二成形型52の端面52a及び当接面54とで枠体2を挟持する。これにより、凹部53,53と枠体2とで囲まれたキャビティが形成される。当該キャビティに材料を流入させ、所定時間加熱、加圧することで枠体2にガスケット5が一体成形される。以上の工程により燃料電池用複合シート1が形成される。
【0037】
ここで、
図6は、従来の燃料電池用複合シート1Aを示す斜視図である。従来の燃料電池用複合シート1Aは、フィルム状の枠体2Aと、膜電極接合体3Aと、ガスケット5Cとを備えている。連通孔22Aの周囲にもガスケット5Cが配置されている。従来の燃料電池用複合シート1Aは、枠体2Aがフィルムで形成され、変形しやすくなっている。このため、搬送時、成形時、組み立て時等において取り扱いが困難になるという問題がある。また、圧縮成形時の湿度変化によって反ってしまうため、成形型への噛み込みやガスケット5Cの位置ずれが発生するという問題がある。
【0038】
この点、本実施例によれば、挟持部材4で膜電極接合体3を挟持することにより、反りを抑制することができる。これにより、搬送時、成形時、組み立て時等における取り扱い性の向上を図ることができる。
【0039】
また、圧縮成形のように湿度管理が困難な環境下でも、膜電極接合体3の反りを抑制できるため、成形型への噛み込みやガスケット5の位置ずれを防ぐことができる。
【0040】
また、本実施例のように挟持部材4は磁性体であることが好ましい。より詳しくは、磁性体は、マグネットシート41と、磁性を備える金属プレート42とを備えていることが好ましい。仮に、磁性を備えていない一対の板状部材で挟持部材4を構成した場合、ガスケット5の圧縮成形時にインサートする途中で反ってしまい、変形してしまうおそれがある。しかし、本実施例の挟持部材4を磁性体で構成することで、マグネットシート41と金属プレート42とが磁力でくっついた状態で挟持するため、ガスケット5の圧縮成形時に枠体2及び膜電極接合体3が変形するのを防ぐことができる。
【0041】
また、マグネットシート41は、樹脂でラミネート加工されていることが好ましい。これにより、ガスケット5の圧縮成形時の熱によるマグネットシート41からのアウトガスの発生を防止することができる。
【0042】
[実施例2]
次に、実施例2に係る燃料電池用複合シートの製造方法について説明する。まずは、従来の成形型を用いた場合の課題について説明する。
図7は、従来の成形型を示す断面図である。
図8は、従来の下型を示す平面図である。
【0043】
図7及び
図8に示すように、従来の成形型60は、第一成形型(下型)61と、第二成形型(上型)62とを備えている。第一成形型61は、平坦な端面61aの周縁部に、位置決め部61b,61cが形成されている。位置決め部61b,61cは、直方体を呈し、互いに垂直となる位置に配置されている。
【0044】
第二成形型62は、平坦な端面62aに、凹部63と、第一収容凹部64と、第二収容凹部65とが形成されている。凹部63は、ガスケット6を成形する空間である。第一収容凹部64は、成形時に膜電極接合体3が収容される空間である。第二収容凹部65は、成形時に位置決め部61bが収容される空間である。成形型60は、第一成形型61と第二成形型62とで枠体2を挟持しつつ、凹部63に材料を流入させ、ガスケット6を圧縮成形するものである。
図8に示すように、成形時には、位置決め部61b,61cに枠体2を当接させることで、第一成形型61に対して枠体2を位置決めすることができる。
【0045】
しかし、従来の成形型60のように枠体2に直接圧縮成形してガスケット6を成形する場合、成形型60のスライド・型締め等の動作の衝撃に起因して、枠体2と成形型60との位置がずれるという問題がある(
図8の白抜き矢印参照)。従来は、位置決め部61b,61cや、位置決めピン(図示省略)等で位置決めをするのが一般的であるが、ガスケット成形後の離型時に、製品が第二成形型62(上型)に残ってしまうおそれもある。第二成形型62に製品が残ってしまうと、それを取り外す作業が煩雑となる。また、ガスケット成形後の離型時に、製品が第二成形型62(上型)に残ってしまうと、
図7の白抜き矢印に示すように、製品が落下し破損するおそれもある。そこで、第二実施例では枠体2等の位置ずれを防ぐことを目的とするものである。
【0046】
図9は、実施例2の成形型を示す断面図である。
図10は、実施例2の下型を示す平面図である。
図9及び
図10に示すように、実施例2に係る成形型70は、第一成形型(下型)71と、第二成形型(上型)72と、で構成されている。第一成形型71は、成形面となる端面71aに位置決め部71b,71cが形成されている。
図10に示すように、位置決め部71b,71cは互いに垂直となる位置に配置されている。また、第一成形型71の内部には、複数の成形型用磁性部材77が配置されている。成形型用磁性部材77は、例えば、磁石である。成形型用磁性部材77は、端面71aと面一とするか、端面71aの内部に配置されている。
【0047】
第二成形型(上型)72は、第一成形型71に対して相対移動可能になっている。第二成形型72の成形面となる端面72aには、凹部73と、第一収容凹部74と、第二収容凹部75とが形成されている。凹部73は、ガスケットを成形する空間である。第一収容凹部74は、成形時に膜電極接合体3が収容される空間である。第二収容凹部75は、位置決め部61bに対応する位置に設けられ、成形時に位置決め部61bが収容される空間である。また、具体的な図示は省略するが、第二成形型72には、位置決め部71cを収容する第二収容凹部も設けられている。成形型70は、第一成形型71と第二成形型72とで枠体2を挟持しつつ、凹部73に材料を流入させ、ガスケットを圧縮成形するものである。
【0048】
次に、本実施例の燃料電池用複合シートの製造方法について説明する。本実施例の燃料電用複合シートの製造方法では、第一工程と、第二工程と、第三工程と、を行う。第一工程及び第二工程は、実施例1と同じである。第二工程によって、MEA・GDL(ガス拡散層)付きサブガスケットの両面に、挟持部材4としてのマグネットシート41及び金属プレート42が設けられている。なお、当該成形品を、「中間体X」と称する。
【0049】
第三工程は、ガスケットを形成する工程である。本実施例では、圧縮成形によってガスケットを一体成形する。
図11に示すように、第三工程では、第一成形型71の端面71aに中間体Xを配置する。
【0050】
挟持部材4は、マグネットシート41及び金属プレート42で構成されているため、中間体Xを第一成形型71に配置すると、成形型用磁性部材77の磁力によって移動不能に拘束される。次に、第一成形型71と第二成形型72とを近接させ、端面71a,72a同士で枠体2を挟持する。これにより、枠体2と凹部73とでキャビティが形成される。当該キャビティに材料を流入させ、所定時間加熱、加圧することで枠体2にガスケットが一体成形される。
【0051】
以上説明した実施例2に係る燃料電池用複合シートの製造方法によれば、第一成形型71に成形型用磁性部材77を備えているため、磁力によって成形型70の成形時の衝撃に起因する中間体Xの位置ずれを防ぐことができる。また、離型後に一方の成形型(第一成形型71)に製品がそのまま残る。これにより、従来のように第二成形型72から製品を取り外す作業がなくなるため、成形のサイクルタイムを向上させることができる。また、成形後の離型時に、製品が第二成形型72(他方の成形型)に残って製品が落下することを防ぐことができる。
【0052】
以上実施例について説明したが、適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 燃料電池用複合シート
2 枠体
3 膜電極接合体
4 挟持部材
5 ガスケット
21 枠本体
22 連通孔
31 高分子電解質膜
32 ガス拡散層
41 マグネットシート
42 金属プレート
70 成形型
71 第一成形型(下型)
72 第二成形型(上型)
77 成形型用磁性部材