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  • 特許-窒化物半導体発光素子 図1
  • 特許-窒化物半導体発光素子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20240307BHJP
   H01L 33/18 20100101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023029186
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松倉 勇介
(72)【発明者】
【氏名】ペルノ シリル
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 一史
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-091748(JP,A)
【文献】特開2023-039861(JP,A)
【文献】特開2017-034036(JP,A)
【文献】特開2016-088803(JP,A)
【文献】特開2019-029536(JP,A)
【文献】特開2013-016711(JP,A)
【文献】特開2012-119481(JP,A)
【文献】特開2021-185618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103289(US,A1)
【文献】中国実用新案第203910838(CN,U)
【文献】特開2019-121655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Ga及びNを含有するn型半導体層と、
前記n型半導体層の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する複数の井戸層を有する多重量子井戸構造の活性層と、
前記活性層の前記n型半導体層側と反対側に形成されたp型半導体層と、を備え、
前記活性層内には、シリコンが含まれ、
前記n型半導体層の(10-12)面についてのX線ロッキングカーブの半値幅は、812arcsec以下であり、
前記活性層の前記複数の井戸層は、前記n型半導体層に近い井戸層ほど、シリコン濃度が高い、
窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記半値幅は、760arcsec以下である、
請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記n型半導体層、前記活性層及び前記p型半導体層の積層方向における前記活性層のシリコン濃度分布の最大値は、8.0×1018atoms/cm以上である、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記n型半導体層と前記活性層との間には、前記活性層側の位置ほど、Al組成比が高くなるとともに、シリコンが含まれる組成傾斜層が形成されている、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記p型半導体層は、p型のGaNによって形成されるp型コンタクト層を有し、
前記p型コンタクト層の膜厚は、30nm以下である、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、n型AlGaNにて形成されたn型クラッド層と、AlGaNにて形成された活性層とを有する窒化物半導体素子が開示されている。特許文献1には、n型クラッド層の(10-12)面についてのX線ロッキングカーブの半値幅であるn-AlGaNミックス値を500arcsec以下とすることで、窒化物半導体素子の発光出力が向上する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-121655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性層内にシリコンが含まれる前提構成を有する場合においては、活性層内にシリコンが含まれない場合と比べ、n-AlGaNミックス値と発光出力との関係が異なることが新たに見出された。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、活性層内にシリコンが含まれる場合において、発光出力の向上を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、Al、Ga及びNを含有するn型半導体層と、前記n型半導体層の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する複数の井戸層を有する多重量子井戸構造の活性層と、前記活性層の前記n型半導体層側と反対側に形成されたp型半導体層と、を備え、前記活性層内には、シリコンが含まれ、前記n型半導体層の(10-12)面についてのX線ロッキングカーブの半値幅は、812arcsec以下であり、前記活性層の前記複数の井戸層は、前記n型半導体層に近い井戸層ほど、シリコン濃度が高い、窒化物半導体発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性層内にシリコンが含まれる場合において、発光出力の向上を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態における、窒化物半導体発光素子の構成を概略的に示す模式図である。
図2】実験例における、n-AlGaNミックス値と発光出力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
(窒化物半導体発光素子1)
図1は、窒化物半導体発光素子1の構成を概略的に示す模式図である。なお、図1において、窒化物半導体発光素子1(以下、単に「発光素子1」ともいう。)の各層の積層方向の寸法比は、必ずしも実際のものと一致するものではない。以後、発光素子1の各層の積層方向を上下方向という。また、上下方向の一方側であって、基板2における各半導体層が成長される側(例えば図1の上側)を上側とし、その反対側(例えば図1の下側)を下側とする。なお、上下の表現は便宜的なものであり、例えば発光素子1の使用時における、鉛直方向に対する発光素子1の姿勢を限定するものではない。
【0011】
発光素子1は、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)又は半導体レーザ(LD:Laser Diode)である。本形態において、発光素子1は、紫外領域の波長の光を発する発光ダイオードである。特に、本形態の発光素子1は、中心波長が250nm以上365nm以下の紫外光を発する。発光素子1は、例えば殺菌(例えば空気浄化、浄水等)、医療(例えば光線治療、計測・分析等)、UVキュアリング等の分野において用いることができる。
【0012】
発光素子1は、基板2上に、バッファ層3、n型クラッド層4、組成傾斜層5、活性層6、電子ブロック層7及びp型半導体層8を順次備える。また、発光素子1は、n型クラッド層4上に設けられたn側電極11と、p型半導体層8上に設けられたp側電極12とを備える。
【0013】
発光素子1を構成する半導体としては、例えば、AlGaIn1-a-bN(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)にて表される2~4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。本形態においては、発光素子1を構成する半導体として、AlGa1-cN(0≦c≦1)にて表される2元系又は3元系のIII族窒化物半導体を用いている。これらのIII族元素の一部は、ホウ素(B)、タリウム(Tl)等に置き換えてもよい。また、窒素の一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置き換えてもよい。
【0014】
基板2は、活性層6が発する光を透過する材料からなる。基板2は、例えばサファイア(Al)基板である。基板2の上面(すなわち発光素子1の各半導体層が積層される側の面)は、c面である。このc面は、オフ角を有するものであってもよい。また、基板2として、例えば窒化アルミニウム(AlN)基板又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)基板等を用いてもよい。
【0015】
バッファ層3は、基板2上に形成されている。本形態において、バッファ層3は、窒化アルミニウムにより形成されている。なお、基板2が窒化アルミニウム基板又は窒化アルミニウムガリウム基板である場合、バッファ層3は必ずしも設けなくてもよい。また、バッファ層3は、窒化アルミニウムからなる半導体層の上に形成された、アンドープのAlGa1-pN(0≦p≦1)からなる半導体層を含んでいてもよい。
【0016】
n型クラッド層4は、バッファ層3上に形成されたn型半導体層である。n型クラッド層4は、例えば、n型不純物がドープされたAlGa1-qN(0≦q≦1)により形成されている。本形態において、n型不純物としては、シリコン(Si)を用いた。なお、n型不純物としては、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)又はテルル(Te)等を用いてもよい。n型クラッド層4のAl組成比qは、例えば20%以上とすることが好ましく、25%以上70%以下とすることが更に好ましい。なお、Al組成比は、AlNモル分率とも称される。n型クラッド層4の膜厚は、例えば1μm以上4μm以下とすることができる。
【0017】
n型クラッド層4を構成するn型AlGaN結晶の(10-12)面に対するX線回折のωスキャンにより得られるX線ロッキングカーブの半値幅(以後、「n-AlGaNミックス値」ともいう。)は、812arcsec以下である。n-AlGaNミックス値は、n型クラッド層4の結晶品質を示す指標であり、その値が低いほどn型クラッド層4の結晶品質が良いことを意味する。後述の実験例にて示すように、活性層6にシリコンが含まれる発光素子1においては、n-AlGaNミックス値を812arcsec以下とすることで発光出力が向上する。発光出力をより向上させる観点から、n-AlGaNミックス値は、760arcsec以下が好ましい。
【0018】
本形態において、n型クラッド層4は、単層構造であるが、複数層構造としてもよい。n型クラッド層4が複数層構造の場合、n型クラッド層4を構成する各半導体層のうち、最も活性層6に近い側の半導体層について、n-AlGaNミックス値が812arcsec以下(好ましくは760arcsec以下)とされる。活性層6の発光強度は、活性層6の結晶性に依存し、活性層6の結晶性は、n型クラッド層4の複数の半導体層のうち最も活性層6に近い半導体層の結晶性に依存すると考えられるためである。
【0019】
組成傾斜層5は、n型クラッド層4上に形成されている。組成傾斜層5は、シリコンがドープされたAlGa1-rN(0≦r≦1)からなる。組成傾斜層5の上下方向の各位置におけるAl組成比は、活性層6側の位置ほど大きくなっている。なお、組成傾斜層5は、例えば上下方向の極一部の領域(例えば組成傾斜層5の上下方向の全体の5%以下の領域)に、活性層6側に向かうにつれてAl組成比が大きくならない領域を含んでいてもよい。
【0020】
組成傾斜層5は、そのn型クラッド層4側の端部のAl組成比が、n型クラッド層4における組成傾斜層5側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。また、組成傾斜層5は、その活性層6側の端部のAl組成比が、活性層6における組成傾斜層5側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。組成傾斜層5の膜厚は、例えば5nm以上50nm以下とすることができる。
【0021】
活性層6は、組成傾斜層5上に形成されている。活性層6は、複数の井戸層621~623を有する多重量子井戸構造である。活性層6は、中心波長が250nm以上365nm以下の紫外光を発することができるよう、バンドギャップが調整されている。
【0022】
本形態において、活性層6は、障壁層61と井戸層621~623とを3つずつ有し、障壁層61と井戸層621~623とが交互に積層されている。活性層6においては、組成傾斜層5側の端部に障壁層61が位置しており、電子ブロック層7側の端部に井戸層623が位置している。なお、活性層6の障壁層61の数及び井戸層621~623の数は、井戸層が2つ以上存在してれば特に限定されない。
【0023】
各障壁層61は、AlGa1-sN(0<s<1)により形成されている。各障壁層61のAl組成比sは、例えば75%以上95%以下である。また、各障壁層61の膜厚は、例えば2nm以上50nm以下である。
【0024】
井戸層621~623は、AlGa1-tN(0<t<1)により形成されている。各井戸層621~623のAl組成比tは、障壁層61のAl組成比sよりも小さい(すなわちt<s)。
【0025】
3つの井戸層621~623を、組成傾斜層5側から順に第1井戸層621、第2井戸層622、第3井戸層623と呼ぶこととする。第1井戸層621の膜厚は、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれの膜厚よりも1nm以上大きい。これにより、活性層6の各層が平坦化され、出力光の単色性が向上する。第1井戸層621の膜厚と第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれの膜厚との差は、2nm以上4nm以下とすることが好ましい。本形態において、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれは、2nm以上4nm以下の膜厚を有し、第1井戸層621は、4nm以上6nm以下の膜厚を有する。
【0026】
また、第1井戸層621のAl組成比は、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれのAl組成比よりも2%以上大きい。第1井戸層621のAl組成比を、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれのAl組成比よりも大きくすることにより、第1井戸層621の結晶性が向上する。これは、第1井戸層621とn型クラッド層4とのAl組成比の差が小さくなるためである。第1井戸層621の結晶性が向上することにより、活性層6のうちの第1井戸層621上に形成される各半導体層の結晶性も向上する。これにより、活性層6におけるキャリアの移動度が向上し、発光出力が向上する。かかる効果は、第1井戸層621の膜厚が大きくなるほど顕著であるが、発光素子1全体の電気抵抗値が増加することを抑制する観点から第1井戸層621の膜厚は所定値以下となるよう設計される。
【0027】
本形態において、第2井戸層622及び第3井戸層623のそれぞれは、25%以上45%以下のAl組成比を有し、第1井戸層621は、35%以上55%以下のAl組成比を有する。複数の井戸層621~623は、例えば組成傾斜層5側のものほどAl組成比が大きくなるよう構成されていてもよい。
【0028】
活性層6には、シリコンが含まれている。後述するように、本形態においては活性層6の成膜中にシリコン源は供給されず、活性層6の各層に存在するシリコンは、発光素子1の活性層6よりも基板2側から拡散されたものである。活性層6中のシリコンは、活性層6の上下方向の各位置のうちのAl組成比が小さい位置に特に取り込まれやすく、また、活性層6の各層のうちの組成傾斜層5に近い層に取り込まれやすい傾向がある。
【0029】
各障壁層61のシリコン濃度は、組成傾斜層5に近い側の層ほど大きくなり、同様に、各井戸層621~623のシリコン濃度は、組成傾斜層5に近い側の層ほど大きくなる。本形態において、活性層6の各層のシリコン濃度のうち、複数の井戸層621~623の最もn型半導体層側の井戸層である第1井戸層621のシリコン濃度が最も高い。上下方向における活性層6のシリコン濃度分布の最大値は、8.0×1018atoms/cm以上が好ましく、1.0×1019atoms/cm以上6.0×1019atoms/cm以下が好ましい。上下方向における活性層6のシリコン濃度分布の最大値が前述の数値範囲の場合に、発光素子1の発光出力が向上しやすいことを確認している。
【0030】
活性層6には、図示しない複数のピット(例えばいわゆるVピット)が形成されている。後述するように、発光素子1の製造時、活性層6の成膜前(具体的には組成傾斜層5の成膜後、活性層6の成膜前)にチャンバ内にシリコン源が供給されることで、半導体層の母相の成長モードが変わり、活性層6にピットが形成される。活性層6中にピットが形成されることで、ピットを介してp型半導体層8から活性層6へ正孔が供給されやすくなる結果、発光素子1の発光出力が向上するものと考えられる。また、活性層6にシリコンが含まれることで、活性層6においてピットの形成が誘発されやすくなるものと考えられる。
【0031】
電子ブロック層7は、活性層6上に形成されている。電子ブロック層7は、活性層6からp型半導体層8側へ電子がリークするオーバーフロー現象の発生を抑制すること(以後、電子ブロック効果ともいう)によって活性層6への電子注入効率を向上させる役割を有する。本形態において、電子ブロック層7は、アンドープのAlGa1-uN(0.7≦u≦1)により形成されている。すなわち、電子ブロック層7は、Al組成比uが70%以上の半導体層にて構成されている。電子ブロック層7は、活性層6側から順に、第1電子ブロック層71と第2電子ブロック層72とを積層した積層構造を有する。なお、電子ブロック層7は、3層以上にて形成されていてもよい。
【0032】
第1電子ブロック層71は、活性層6に接するよう設けられている。電子ブロック層7を構成する複数の半導体層(本形態においては第1電子ブロック層71及び第2電子ブロック層72)のうち、第1電子ブロック層71は、電子ブロック層7を構成する他の半導体層(すなわち第2電子ブロック層72)及び障壁層61よりも、Al組成比が大きい。第1電子ブロック層71のAl組成比は、例えば90%以上であり、100%としてもよい(すなわち第1電子ブロック層71をAlNにて構成してもよい)。第1電子ブロック層71の膜厚は、例えば0.5nm以上5.0nm以下である。
【0033】
第2電子ブロック層72のAl組成比は、第1電子ブロック層71のAl組成比よりも小さく、例えば70%以上90%以下である。第2電子ブロック層72の膜厚は、第1電子ブロック層71の膜厚よりも大きく、例えば15nm以上100nm以下である。
【0034】
Al組成比が大きい半導体層ほど電気抵抗値が大きくなるため、Al組成比が比較的高い第1電子ブロック層71の膜厚を大きくし過ぎると発光素子1の全体の電気抵抗値の過度な上昇を招く。そのため、第1電子ブロック層71の膜厚はある程度小さくすることが好ましい。一方、第1電子ブロック層71の膜厚を小さくすると、トンネル効果によって電子が第1電子ブロック層71を活性層6側からp型半導体層8側にすり抜ける確率が増大し得る。そこで、本形態の発光素子1においては、第1電子ブロック層71上に第2電子ブロック層72を形成することで、電子ブロック層7の全体を電子がすり抜けることを抑制している。
【0035】
第1電子ブロック層71及び第2電子ブロック層72のそれぞれは、アンドープの層、n型不純物を含有する層、p型不純物を含有する層、又はn型不純物及びp型不純物の双方を含有する層とすることができる。p型不純物としては、マグネシウム(Mg)を用いることができるが、マグネシウム以外にも、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)又は炭素(C)等を用いてもよい。他のp型不純物を含む半導体層においても同様である。各電子ブロック層7が不純物を含有する場合において、各電子ブロック層7が含有する不純物は、各電子ブロック層7の全体に含まれていてもよいし、各電子ブロック層7の一部に含まれていてもよい。また、電子ブロック層7は、単層にて形成されていてもよいし、3層以上にて形成されていてもよいし、省略されてもよい。
【0036】
電子ブロック層7とp型半導体層8との間には、シリコンが含まれていてもよい。マグネシウムはシリコンに引き付けられやすく、かつ、水素はマグネシウムと結びつきやすいところ、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが存在することで、p型半導体層8から活性層6へのマグネシウム及び水素の拡散が抑制され、発光素子1の長寿命化が図られる。更に、電子ブロック層7とp型半導体層8との間にシリコンが含まれることで、電子ブロック層7とp型半導体層8との間に、ピットが存在する層が形成され得る。ピットは、転位が存在する箇所にシリコン源が供給されることにより形成されるため、ピットが形成されることで、転位がピットよりも上側に進展することが抑制され、発光素子1の長寿命化が図られる。
【0037】
p型半導体層8は、電子ブロック層7上に形成されている。p型半導体層8は、p型のAlGa1-vN(0≦v<0.7)により形成されている。すなわち、p型半導体層8は、Al組成比が70%未満の半導体層にて構成されている。
【0038】
p型半導体層8は、p型コンタクト層を有する。p型コンタクト層は、p側電極12が接続された層であり、p型不純物が高濃度にドープされたAlGa1-vN(0≦v<0.7)により形成されている。p型コンタクト層は、p側電極12とのオーミックコンタクトを実現すべくAl組成比が低くなるよう構成されており、かかる観点からp型の窒化ガリウム(GaN)により形成することが好ましい。p型の窒化ガリウムからなる半導体層は、紫外光を吸収しやすいため、紫外光の吸収を防止して発光素子1の発光出力を向上させる観点から、p型コンタクト層の膜厚は30nm以下が好ましい。また、ショートの発生を抑制する観点から、p型コンタクト層の膜厚は5nm以上が好ましい。
【0039】
p型半導体層8は、p型コンタクト層の電子ブロック層7側に、更にp型クラッド層を備えていてもよい。p型クラッド層は、Al組成比が70%未満のp型AlGaNから構成される。p型クラッド層は、例えば単層で構成されてもよいし、複数層にて構成されてもよい。p型クラッド層が複数層で構成される場合、例えば、p型クラッド層は、第2電子ブロック層72側に形成された第1p型クラッド層と、第1p型クラッド層とp型コンタクト層との間に形成された第2p型クラッド層とを有してもよい。第2p型クラッド層の上下方向の各位置におけるAl組成比は、p型コンタクト層側の位置ほど小さくしてもよい。なお、第2p型クラッド層は、例えば上下方向の極一部の領域(例えば第2p型クラッド層の上下方向の全体の5%以下の領域)に、p型コンタクト層に向かうにつれてAl組成比が大きくならない領域を含んでいてもよい。第2p型クラッド層は、その第1p型クラッド層側の端部のAl組成比が、第1p型クラッド層における第2p型クラッド層側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。また、第2p型クラッド層は、そのp型コンタクト層側の端部のAl組成比が、p型コンタクト層における第2p型クラッド層側の端部のAl組成比と略同一(例えば差が5%以内)であることが好ましい。
【0040】
発光素子1のうちの、活性層6より上側に存在する半導体層(すなわち電子ブロック層7及びp型半導体層8)の合計の光学膜厚は、活性層6から上側に発されてp側電極12にて反射されて下側に向かう光と、活性層6から直接下側に発された光とが互いに強め合う光学膜厚となるよう設計することが好ましい。活性層6から発される光の中心波長を波長λ[nm]としたとき、例えば、活性層6より上側に存在する半導体層の合計の光学膜厚は、0.5λ以上1.4λ以下が好ましく、0.5λ以上0.8λ以下又は1.0λ以上1.3λ以下がより好ましく、0.5λ以上0.8λ以下がより一層好ましい。
【0041】
n側電極11は、n型クラッド層4の上側に形成された、活性層6から露出する露出面41の面上に形成されている。n側電極11は、例えば、n型クラッド層4の上にチタン(Ti)、アルミニウム、チタン、金(Au)が順に積層された多層膜とすることができる。また、後述するように発光素子1がフリップチップ実装される場合、n側電極11は、活性層6が発する紫外光を反射可能な材料にて構成されていてもよい。
【0042】
p側電極12は、p型半導体層8の上面に形成されている。p側電極12は、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)等にて構成することができる。また、後述するように発光素子1がフリップチップ実装される場合、p側電極12は、活性層6が発する紫外光を反射可能な材料にて構成されていてもよい。
【0043】
発光素子1は、図示しないパッケージ基板にフリップチップ実装されて使用され得る。すなわち、発光素子1は、上下方向におけるn側電極11及びp側電極12が設けられた側をパッケージ基板側に向け、n側電極11及びp側電極12のそれぞれが、金バンプ等を介してパッケージ基板に実装される。フリップチップ実装された発光素子1は、基板2側から光が取り出される。なお、これに限られず、発光素子1は、ワイヤボンディング等によりパッケージ基板に実装されてもよい。また、本形態において、発光素子1は、n側電極11及びp側電極12の双方が発光素子1の上側に設けられた、いわゆる横型の発光素子1としたが、これに限られず、縦型の発光素子1であってもよい。縦型の発光素子1は、n側電極11とp側電極12とによって活性層6がサンドイッチされた発光素子1である。なお、発光素子1を縦型とする場合、基板2及びバッファ層3は、レーザーリフトオフ等により除去することが好ましい。
【0044】
(発光素子1の製造方法)
次に、本形態の発光素子1の製造方法の一例につき説明する。
本形態においては、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により、円板状の基板2上に、バッファ層3、n型クラッド層4、組成傾斜層5、活性層6、電子ブロック層7及びp型半導体層8を順次エピタキシャル成長させる。すなわち、本形態においては、チャンバ内に配されたサセプタのポケットに円板状の基板2を設置し、基板2上に形成される各半導体層の原料ガスをチャンバ内に導入することによって基板2上に各半導体層が形成される。なお、MOCVD法は、有機金属化学気相エピタキシ法(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)と呼ばれることもある。
【0045】
各層をエピタキシャル成長させるための原料ガスとしては、アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、ガリウム源としてトリメチルガリウム(TMG)、窒素源としてアンモニア(NH)、シリコン源としてテトラメチルシラン(TMSi)、マグネシウム源としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。
【0046】
本形態の発光素子1の製造方法においては、活性層6の成膜時にチャンバ内にシリコン源は供給されず、活性層6の成膜前に供給されたシリコンが活性層6に拡散される。本形態においては、例えば、n型クラッド層4の成膜時、組成傾斜層5の成膜時及び活性層6の成膜直前(すなわち組成傾斜層5の成膜後かつ活性層6の成膜前)において、チャンバ内にシリコン源が供給される。活性層6の成膜直前においては、チャンバ内に原料ガスとしてシリコン源のみが供給され、この工程を以下「シリコン源供給工程」という。シリコン源供給工程においては、原料ガスとしてシリコン源のみがチャンバ内に供給されていればよく、チャンバ内に原料ガス以外のガス(例えば水素等のキャリアガス)が導入されてもよい。例えばシリコン源供給工程において供給されるシリコン源の量を調整することで、活性層6の各層に含まれるシリコンの量が調整される。また、シリコン源供給工程において、転位が存在する箇所にシリコン源が供給されることによって、半導体層の母相の成長モードが変わり、活性層6の成膜時においてピットが形成される。
【0047】
その他、ウエハの各半導体層をエピタキシャル成長させるための成長温度、成長圧力及び成長時間等の製造条件については、各半導体層の構成に応じた条件を適宜採用することができる。
【0048】
なお、基板2上に各半導体層をエピタキシャル成長させるに際しては、分子線エピタキシ法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、ハイドライド気相エピタキシ法(HVPE:Hydride Vapor Phase Epitaxy)等の他のエピタキシャル成長法を用いることも可能である。
【0049】
円板状の基板2上に各半導体層を形成した後、p型半導体層8上の一部、すなわちn型クラッド層4の露出面41になる部分以外の部位にマスクを形成する。そして、マスクを形成していない領域を、p型半導体層8の上面から上下方向のn型クラッド層4の途中までエッチングにより除去する。これにより、上側に向かって露出する露出面41がn型クラッド層4に形成される。露出面41の形成後、マスクを除去する。
【0050】
次いで、n型クラッド層4の露出面41上にn側電極11を形成し、p型半導体層8上にp側電極12を形成する。n側電極11及びp側電極12は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの周知の方法により形成してよい。以上により完成したものを、所望の寸法に切り分けることにより、1つのウエハから図1に示すような発光素子1が複数製造される。
【0051】
(実施の形態の作用及び効果)
本形態の発光素子1は、n型クラッド層4の(10-12)面についてのX線ロッキングカーブの半値幅(すなわちn-AlGaNミックス値)が812arcsec以下であり、活性層6内には、シリコンが含まれる。これにより、後述の実験例にて示すように、発光素子1の発光出力が向上する。このように、活性層6内にシリコンが含まれる発光素子1において、n-AlGaNミックス値を812arcsec以下とすることによって発光出力が向上することは、新たな知見である。
【0052】
また、n-AlGaNミックス値は、760arcsec以下を満たすことが好ましい。この場合には、後述の実験例にて示すように、より発光出力の向上を図りやすい。
【0053】
また、活性層6の複数の井戸層621~623は、n型クラッド層4に近い井戸層621~623ほど、シリコン濃度が高い。かかる構成により、発光素子1の発光出力が向上しやすいことを確認している。かかる構成は、n型クラッド層4と活性層6との間に、シリコンが含まれる組成傾斜層5が形成されることで、容易に実現されやすい。すなわち、組成傾斜層5から活性層6側にシリコンが拡散されるため、n型クラッド層4に近い井戸層621~623ほどシリコン濃度が高い構成が実現されやすい。
【0054】
また、上下方向における活性層6のシリコン濃度分布の最大値は、8.0×1018atoms/cm以上である。これにより、発光素子1の発光出力がより向上しやすいことを確認している。
【0055】
また、p型半導体層8は、p型のGaNによって形成されるp型コンタクト層を有し、p型コンタクト層の膜厚は、30nm以下である。p型のGaNからなるp型コンタクト層は、紫外光を吸収しやすいところ、p型コンタクト層の膜厚を30nm以下と薄くすることで、紫外光の吸収を抑制し、発光素子1の発光出力の向上が図られる。
【0056】
以上のごとく、本形態によれば、活性層内にシリコンが含まれる場合において、発光出力の向上を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【0057】
[実験例]
本実験例は、活性層にシリコンが含まれないウエハに係る比較例1~14と、活性層にシリコンが含まれたウエハに係る実施例1~461とにおいて、n-AlGaNミックス値と発光出力との関係を評価した例である。なお、本実験例以降において用いた用語のうち、既出の形態において用いた用語と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の内容を表す。
【0058】
比較例1~14は、組成傾斜層を有さない点及び活性層にシリコンが含まれない点を除き実施の形態で示した発光素子と同様の基本構成を有するウエハである。比較例1~14は、互いにn-AlGaNミックス値が異なる点を除き、互いに同様の基本構成を有する。
【0059】
実施例1~461のうちの実施例1~344は、活性層にシリコンが含まれていることを除いて比較例1~14と基本構成を同様としたウエハである。実施例1~344は、互いにn-AlGaNミックス値が異なる点を除き、互いに同様の構成を有する。
【0060】
実施例1~461のうちの実施例345~461は、実施例1~344と比べ、電子ブロック層とp型半導体層との間にシリコンが含まれているとともにp型半導体層の構成が異なるウエハである。実施例345~461は、互いにn-AlGaNミックス値が異なる点を除き、互いに同様の構成を有する。
【0061】
比較例1~14の構造、各層の膜厚、各層のAl組成比及び各層のシリコン濃度を下記表1に示す。また、実施例1~344の構造、各層の膜厚、各層のAl組成比及び各層のシリコン濃度を下記表2に示す。また、実施例345~461の構造、各層の膜厚、各層のAl組成比及び各層のシリコン濃度を下記表3に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表1~表3に記載の各層の膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)によって測定したものである。また、表1~表3に記載の各層のAl組成比は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定したAlの二次イオン強度から推定した値である。表2及び表3における組成傾斜層のAl組成比の欄は、組成傾斜層の上下方向の各位置のAl組成比が、n型クラッド層側から活性層側にかけて、55%から85%まで変動していることを表している。同様に、表3における第2p型クラッド層のAl組成比の欄は、第2p型クラッド層の上下方向の各位置のAl組成比が、第1p型クラッド層側からp型コンタクト層側にかけて、55%から0%まで変動していることを表している。また、表1~表3に記載の各層のシリコン濃度は、二次イオン質量分析法を用いて得られたものである。表1~表3のそれぞれにおいて、Si濃度の欄の「※」印を付けた箇所は、半導体層の膜厚が薄く正確なシリコン濃度の測定が困難であることを意味している。また、表1~表3のSi濃度の欄について、「BG」との表記は、バックグラウンドレベルを意味している。バックグラウンドレベルのシリコン濃度は、シリコンをドープしない場合に検出されるシリコン濃度である。
【0066】
そして、本実験例においては、比較例1~14及び実施例1~461のそれぞれについて、オンウエハの状態で20mAの電流を流したときの発光出力を測定した。発光出力の測定は、比較例1~14及び実施例1~461のそれぞれのウエハの基板側に設置した光検出器によって測定した。比較例1~14及び実施例1~461のそれぞれのn-AlGaNミックス値と発光出力との関係を図2に示す。図2において、比較例1~14の結果を三角記号にてプロットしており、実施例1~344の結果を四角記号にてプロットしており、実施例345~461の結果を丸記号にてプロットしている。なお、図2においては、四角記号のプロット同士が重なっており、丸記号のプロット同士が重なっているが、実施例1~344の結果(すなわち四角記号のプロット)は、発光出力1.00[a.u.]~1.50[a.u.]の範囲に収まっており、実施例345~461の結果(すなわち丸記号のプロット)は、発光出力1.50[a.u.]以上を満たしている。
【0067】
図2から分かるように、活性層にシリコンが含まれない比較例1~14の結果を見ると、n-AlGaNミックス値を500arcsec以下とすることが、発光出力向上の観点から好ましいことが分かる。この結果は、特開2019-121655号公報の図3に示されている結果と同様である。つまり、特開2019-121655号公報の図3に関する実験例は、活性層にシリコンが含まれない発光素子を用いた結果であることが分かる。
【0068】
一方、図2から分かるように、活性層にシリコンが含まれた実施例1~461の結果を見ると、n-AlGaNミックス値が812arcsec以下の領域において、高い発光出力が得られていることが分かる。つまり、活性層のシリコンが含まれている発光素子においては、比較例1~14とは異なり、n-AlGaNミックス値が500arcsecを超えている場合であっても、n-AlGaNミックス値が812arcsec以下を満たしていれば高い発光出力が得られることが分かる。
【0069】
ここで、図2の丸記号のプロット(すなわち実施例345~461の結果)のうち、最もn-AlGaNミックス値が高いプロットP1は、n-AlGaNミックス値が812.1arcsecであり、この結果については発光出力が比較的低くなっていることが分かる。そのため、活性層にシリコンが含まれる構成(すなわち実施例1~461)においては、n-AlGaNミックス値を812arcsec以下とすることが発光出力の向上に必要であることが分かる。
【0070】
また、四角記号のプロット(すなわち実施例1~344の結果)のうちのプロットP2は、四角記号のプロットのうちの発光出力が高い結果のうち、n-AlGaNミックス値が最も高い結果である。プロットP2のn-AlGaN値は、760.0arcsecであったため、活性層にシリコンが含まれる構成においては、n-AlGaNミックス値を760arcsec以下とすることがより好ましいことが分かる。
【0071】
また、実施例1~344の結果と実施例345~461の結果とを比較すると、実施例345~461の方が高い発光出力が得られていることが分かる。これについては、実施例345~461は、実施例1~344と比べ、p型コンタクト層の膜厚が薄く、p型コンタクト層による紫外光の吸収が抑えられたことが大きな要因であると考えられる。
【0072】
なお、実施例1~344のうち、n-AlGaNミックス値が最小のものは394.2arcsecであり、実施例345~461のうち、n-AlGaNミックス値が最小のものは406.5arcsecであった。n-AlGaNミックス値が小さいほど(すなわちn型クラッド層の結晶品質が高いほど)発光出力が向上する傾向があるため、実施例1~461よりもn-AlGaNミックス値が小さいものは、実施例1~461と比べ、発光出力が同等又は向上するものと想定される。
【0073】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0074】
[1]本発明の第1の実施態様は、Al、Ga及びNを含有するn型半導体層4と、前記n型半導体層4の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する複数の井戸層621~623を有する多重量子井戸構造の活性層6と、前記活性層6の前記n型半導体層4側と反対側に形成されたp型半導体層8と、を備え、前記n型半導体層4の(10-12)面についてのX線ロッキングカーブの半値幅は、812arcsec以下であり、前記活性層6内には、シリコンが含まれる、窒化物半導体発光素子1である。
これにより、活性層6内にシリコンが含まれる窒化物半導体発光素子1において、発光出力を向上させることができる。
【0075】
[2]本発明の第2の実施態様は、第1の実施態様において、前記半値幅が、760arcsec以下であることである。
これにより、活性層6内にシリコンが含まれる窒化物半導体発光素子1において、発光出力がより向上する。
【0076】
[3]本発明の第3の実施態様は、第1又は第2の実施態様において、前記活性層6の前記複数の井戸層621~623が、前記n型半導体層4に近い井戸層621~623ほど、シリコン濃度が高いことである。
これにより、窒化物半導体発光素子1の発光出力がより向上する。
【0077】
[4]本発明の第4の実施態様は、第3の実施態様において、前記n型半導体層4、前記活性層6及び前記p型半導体層8の積層方向における前記活性層6のシリコン濃度分布の最大値が、8.0×1018atoms/cm以上であることである。
これにより、窒化物半導体発光素子1の発光出力がより向上する。
【0078】
[5]本発明の第5の実施態様は、第3又は第4の実施態様において、前記n型半導体層4と前記活性層6との間に、前記活性層6側の位置ほど、Al組成比が高くなるとともに、シリコンが含まれる組成傾斜層5が形成されていることである。
これにより、第3の実施態様の構成が容易に実現される。
【0079】
[6]本発明の第6の実施態様は、第1乃至第5のいずれか1つの実施態様において、前記p型半導体層8が、p型のGaNによって形成されるp型コンタクト層を有し、前記p型コンタクト層の膜厚が、30nm以下であることである。
これにより、窒化物半導体発光素子1の発光出力がより向上する。
【0080】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…窒化物半導体発光素子
4…n型クラッド層(n型半導体層)
5…組成傾斜層
6…活性層
621…第1井戸層
622…第2井戸層
623…第3井戸層
8…p型半導体層
【要約】
【課題】活性層内にシリコンが含まれる場合において、発光出力の向上を図ることができる窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】窒化物半導体発光素子は、Al、Ga及びNを含有するn型半導体層と、n型半導体層の一方側に形成され、Al、Ga及びNを含有する複数の井戸層を有する多重量子井戸構造の活性層と、活性層のn型半導体層側と反対側に形成されたp型半導体層と、を備える。活性層内には、シリコンが含まれる。n型半導体層の(10-12)面についてのX線ロッキングカーブの半値幅は、812arcsec以下である。
【選択図】図2
図1
図2