(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】周辺監視システム及び周辺監視方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240307BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20240307BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240307BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240307BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B66F9/24 L
E02F9/24 B
E02F9/26 B
H04N7/18 J
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2023032066
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2018186037の分割
【原出願日】2018-09-28
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 雅明
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 将崇
(72)【発明者】
【氏名】栗原 毅
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-052947(JP,A)
【文献】特開2009-001388(JP,A)
【文献】特開2019-105995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
E02F 9/24 - 9/28
H04N 7/18 - 7/18
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体よりも前方に配置される作業機を備える作業機械のための周辺監視システムであって、
作業車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置
と、
監視制御装置と、を備え、
前記監視制御装置は、
前記物体検出装置の検出範囲の中に、物体の存在により警報の出力が要求される警報範囲を記憶
し、
前記警報範囲に物体が存在するときに、警報装置に警報を出力させ
、
前記作業機械が後進しているときは、前記作業車両の車幅方向の寸法が小さくなるように前記警報範囲を変更する、
周辺監視システム。
【請求項2】
前記作業機械の走行速度を検出するためのセンサを備え、
前記監視制御装置は、前記センサの検出データに基づいて、前記作業機械が後進していると判定したときに、前記検出範囲の中において前記警報範囲を変更する、
請求項1に記載の周辺監視システム。
【請求項3】
前後進切替スイッチを備え、
前記監視制御装置は、前記前後進切替スイッチからの操作データを取得に基づいて、前記作業機械が後進するように前記前後進切替スイッチが操作されたと判定したときに、前記検出範囲の中において前記警報範囲を変更する、
請求項1に記載の周辺監視システム。
【請求項4】
前記監視制御装置は、前記作業車両の前後方向の寸法が大きくなるように前記警報範囲を変更する、
請求項1に記載の周辺監視システム。
【請求項5】
前記作業車両は、フォークリフトである、
請求項1に記載の周辺監視システム。
【請求項6】
車体よりも前方に配置される作業機を備える作業機械のための周辺監視方法であって、
前記作業機械が後進しているとき、前記作業
機械の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置の検出範囲の中において、物体の存在により警報の出力が要求される警報範囲
の前記作業機械の車幅方向の寸法が小さくなるように変更することと、
前記警報範囲に物体が存在するときに、警報装置に警報を出力させることと、を含む
、
周辺監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の周辺監視システム及び作業車両の周辺監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両に係る技術分野において、物体検出装置を用いて作業車両の周辺の状況を監視する周辺監視システムが知られている。特許文献1には、物体検出装置の一種であるレーダ装置を用いて作業車両の周辺を監視する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物体検出装置が作業車両の周辺の物体を検出したとき、作業車両の運転室に設けられている警報装置から警報が出力される。物体が作業車両の作業を妨げる障害物である場合、警報が出力されることにより、作業車両の運転者は、作業車両の周辺に障害物が存在することを認識することができる。一方、作業車両の周辺に存在する物体が作業車両の作業に必要な物体である場合、運転者が作業車両の周辺の状況を十分に認識しているにもかかわらず、物体検出装置が物体を障害物として検出してしまうと、警報装置から不要な警報が出力されてしまい、運転者は煩わしさを感じることがある。特許文献1には、シフトレバーの位置(F,N,R)に応じて所定の検出範囲を有するセンサの有効又は無効を切り換えることが開示されているが、検出範囲内に警報領域を設定するものではなく、警報領域を作業状態に応じて変更することができないため、不要な警報の出力を十分に抑制することができなかった。
【0005】
本発明の態様は、不要な警報の出力を抑制して、必要な警報を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、作業車両の周囲に存在する物体を検出する物体検出装置の検出範囲の中に、物体の存在により警報の出力が要求される警報範囲を記憶する警報範囲記憶部と、前記作業車両の作業モードを判定する作業モード判定部と、前記作業モードが特定作業モードであると判定されたときに、前記検出範囲の中において前記警報範囲を変更する警報範囲変更部と、前記警報範囲に物体が存在するときに、警報装置に警報を出力させる警報制御部と、を備える作業車両の周辺監視システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、不要な警報の出力を抑制して、必要な警報を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、物体検出装置の撮影領域及び検出領域を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、検出範囲及び警報範囲を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、特定作業モードを含む作業車両の作業を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、特定作業モードを含む作業車両の作業を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、警報範囲変更部により変更された後の警報範囲を示す変更警報範囲を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、周辺監視方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、コンピュータシステムを示すブロック図である。
【
図11】
図11は、警報範囲が変更されず初期警報範囲が維持された状態で作業車両が第1後進作業を実行している状態を示す図である。
【
図12】
図12は、警報範囲が変更警報範囲に変更された状態で作業車両が第1後進作業を実行している状態を示す図である。
【
図13】
図13は、運搬車両に最も近い警報範囲の端部が運搬車両から離れるように警報範囲が変更された状態を示す図である。
【
図14】
図14は、運搬車両に最も近い警報範囲の端部が運搬車両から離れるように警報範囲が変更された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[作業車両]
図1は、作業車両1を示す側面図である。作業車両1は、作業現場において作業対象に対して所定の作業を実行する。作業車両1は、作業機10を有し、作業機10を用いて所定の作業を実行する。所定の作業は、掘削作業及び積込作業の少なくとも一方を含む。作業対象は、掘削対象及び積込対象の少なくとも一方を含む。作業対象は、作業車両1の所定の作業に必要な物体である。作業車両1は、掘削対象を掘削する掘削作業、及び掘削作業により掘削した掘削物を積込対象に積み込む積込作業を実行する。積込作業は、掘削物を排出対象に排出する排出作業を含む。掘削対象として、地山、岩山、石炭、及び壁面の少なくとも一つが例示される。地山は、土砂により構成される山である。岩山は、岩又は石により構成される山である。積込対象又は排出対象として、運搬車両、作業現場の所定エリア、ホッパ、ベルトコンベヤ、及びクラッシャの少なくとも一つが例示される。
【0011】
実施形態において、作業車両1は、アーティキュレート式作業車両の一種であるホイールローダ1であることとする。ホイールローダ1は、運転者によって運転される。ホイールローダ1は、運転者が搭乗する運転室3Rを有する運転台3と、タイヤ6が装着される車輪5とを有する。
【0012】
以下の説明においては、上下方向、車幅方向、及び前後方向という用語を用いて各部の位置関係について説明する。上下方向とは、地面RSと接触するタイヤ6の接地面と直交する方向をいう。車幅方向とは、車輪5の回転軸と平行な方向をいう。前後方向とは、上下方向及び車幅方向と直交する方向をいう。
【0013】
「上」とは、上下方向の一方向をいい、タイヤ6の接地面を基準として運転室3Rが存在する方向をいう。「下」とは、上下方向において「上」の反対方向をいう。「左」とは、車幅方向の一方向をいう。「右」とは、車幅方向において「左」の反対方向をいう。「前」とは、前後方向の一方向をいい、運転室3Rを基準として作業機10が存在する方向をいう。「後」とは、前後方向において「前」の反対方向をいう。
【0014】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体2と、運転台3と、走行装置4と、変速機7と、作業機10と、ブームシリンダ15と、バケットシリンダ16とを備える。
【0015】
車体2は、車体前部2Fと、車体前部2Fよりも後方に配置される車体後部2Rとを含む。車体前部2Fと車体後部2Rとは、関節機構9を介して屈曲可能に連結される。
【0016】
運転台3は、車体2に支持される。運転台3に運転室3Rが設けられる。ホイールローダ1は、運転室3Rに搭乗した運転者によって運転される。
【0017】
走行装置4は、車体2を支持して地面RSを走行する。走行装置4は、車輪5と、エンジン4Aと、ブレーキ4Bと、ステアリングシリンダ4Cとを有する。タイヤ6が車輪5に装着される。
【0018】
車輪5は、車体前部2Fに回転可能に支持される2つの前輪5Fと、車体後部2Rに回転可能に支持される2つの後輪5Rとを含む。タイヤ6は、前輪5Fに装着される前タイヤ6Fと、後輪5Rに装着される後タイヤ6Rとを含む。
【0019】
車体2の車幅方向は、前輪5Fの回転軸FXと平行な車体前部2Fの車幅方向と、後輪5Rの回転軸RXと平行な車体後部2Rの車幅方向とを含む。ホイールローダ1が直進状態で走行するとき、回転軸FXと回転軸RXとは平行であり、車体前部2Fの車幅方向と車体後部2Rの車幅方向とは一致する。
【0020】
ステアリングシリンダ4Cは、ホイールローダ1を旋回させる動力を発生する油圧シリンダである。ステアリングシリンダ4Cは、関節機構9に設けられる。ステアリングシリンダ4Cが伸縮することにより、車体後部2Rに対して車体前部2Fが屈曲する。車体後部2Rに対して車体前部2Fが屈曲することにより、ホイールローダ1が旋回し、ホイールローダ1の走行方向が調整される。
【0021】
変速機7は、複数の変速段を有する。実施形態において、変速機7は、4つの変速段を有する。すなわち、変速機7は、1速、2速、3速、及び4速の変速段を有する。変速機7の変速段が変更されることにより、変速機7の入力軸の回転数と出力軸の回転数との比を示す変速比が変更される。また、変速機7は、入力軸の回転方向に対する出力軸の回転方向を切り換える。変速機7の出力軸の回転方向が切り換えられることにより、ホイールローダ1は前進又は後進する。
【0022】
作業機10は、車体前部2Fに支持される。作業機10の少なくとも一部は、車体前部2Fよりも前方に配置される。作業機10は、ブーム11と、バケット12と、ベルクランク13と、リンク14とを有する。
【0023】
ブーム11は、車体前部2Fに回動可能に連結される。ベルクランク13は、リンク14を介してバケット12に連結される。バケット12は、ブーム11の先端部に回動可能に連結される。バケット12は、刃先を含む先端部12Bを有する作業部材である。バケット12は、前タイヤ6Fよりも前方に配置される。
【0024】
ブームシリンダ15は、ブーム11を作動させる動力を発生する油圧シリンダである。ブームシリンダ15が伸縮することにより、ブーム11は上げ動作又は下げ動作する。
【0025】
バケットシリンダ16は、バケット12を作動させる動力を発生する油圧シリンダである。バケットシリンダ16が伸縮することにより、バケット12はダンプ動作又はチルト動作する。バケット12がチルト動作することにより、バケット12は掘削物をすくい取る。バケット12がダンプ動作することにより、バケット12に保持されている掘削物がバケット12から排出される。
【0026】
[物体検出装置]
ホイールローダ1は、ホイールローダ1の周辺を監視して、ホイールローダ1の周辺の状況を運転者に認識させる周辺監視システム100を備える。周辺監視システム100は、物体検出装置20を備える。
【0027】
図2は、物体検出装置20の撮影領域及び検出領域を模式的に示す図である。物体検出装置20は、ホイールローダ1の周辺の物体を検出する。
図1及び
図2に示すように、物体検出装置20は、ホイールローダ1の周辺の物体を撮影するカメラ21と、ホイールローダ1の周辺の物体を非接触で検出する非接触センサ22とを含む。
【0028】
カメラ21は、ホイールローダ1に複数搭載され、ホイールローダ1の周辺の物体の画像を取得する。カメラ21は、ホイールローダ1の車体2の外面に設けられる。カメラ21は、車体前部2Fに設けられたカメラ21Aと、車体後部2Rに設けられたカメラ21B、カメラ21C、カメラ21D、カメラ21E、及びカメラ21Fとを含む。各カメラ21の撮像領域は、隣接するカメラ21の撮像領域と一部重畳してもよい。
【0029】
カメラ21Aは、車体前部2Fの前側の外面に設けられ、車体2の前方に規定された撮影領域SAを撮影する。
【0030】
カメラ21Bは、車体後部2Rの右側の外面の前部に設けられ、車体2の右方に規定された撮影領域SBを撮影する。
【0031】
カメラ21Cは、車体後部2Rの右側の外面の後部に設けられ、車体2の右方及び右後方に規定された撮影領域SCを撮影する。
【0032】
カメラ21Dは、車体後部2Rの後側の外面に設けられ、車体2の後方に規定された撮影領域SDを撮影する。
【0033】
カメラ21Eは、車体後部2Rの左側の外面の後部に設けられ、車体2の左方及び左後方に規定された撮影領域SEを撮影する。
【0034】
カメラ21Fは、車体後部2Rの左側の外面の前部に設けられ、車体2の左方に規定された撮影領域SFを撮影する。
【0035】
非接触センサ22は、ホイールローダ1に複数搭載され、ホイールローダ1の周辺の物体を非接触で検出する。非接触センサ22は、ホイールローダ1の周辺を走査して、物体を検出する。非接触センサ22の検出データは、物体の有無データ及び物体の位置データを含む。物体の位置データは、ホイールローダ1と物体との相対位置を示す。物体との相対位置は、物体までの距離を含む。非接触センサ22は、ホイールローダ1の周辺を電波で走査して物体を検出可能なレーダ装置を含む。なお、非接触センサ22は、ホイールローダ1の周辺をレーザ光で走査して物体を検出可能なレーザスキャナ装置を含んでもよい。非接触センサ22は、ホイールローダ1の周辺を超音波で走査して物体を検出可能な超音波センサ装置を含んでもよい。なお、非接触センサ22は、レーダ装置、レーザスキャナ装置、及び超音波センサ装置に限定されない。以下の説明においては、電波、レーザ光、及び超音波のような、物体を検出するために走査されるエネルギー波を適宜、検出波、と称する。
【0036】
非接触センサ22は、ホイールローダ1の車体2の外面に設けられる。非接触センサ22は、車体後部2Rに設けられた非接触センサ22A、非接触センサ22B、非接触センサ22C、及び非接触センサ22Dを含む。各非接触センサ22A~22Dの検出領域DA~DDは、隣接する非接触センサ22の検出領域と一部で重畳してもよい。
【0037】
非接触センサ22Aは、車体後部2Rの右側の外面の後部に設けられ、車体2の右方に規定された検出領域DAの物体を検出する。検出領域DAは、非接触センサ22Aから右方に放射状に拡がる。
【0038】
非接触センサ22Bは、車体後部2Rの後側の外面の右部に設けられ、車体2の後方及び左後方に規定された検出領域DBの物体を検出する。検出領域DBは、非接触センサ22Bから左後方に放射状に拡がる。
【0039】
非接触センサ22Cは、車体後部2Rの後側の外面の左部に設けられ、車体2の後方及び右後方に規定された検出領域DCの物体を検出する。検出領域DCは、非接触センサ22Cから右後方に放射状に拡がる。
【0040】
非接触センサ22Dは、車体後部2Rの左側の外面の後部に設けられ、車体2の左方に規定された検出領域DDの物体を検出する。検出領域DDは、非接触センサ22Dから左方に放射状に拡がる。
【0041】
以下の説明においては、検出領域DA、検出領域DB、検出領域DC、及び検出領域DDを適宜、検出領域D、と総称する。検出領域Dは、検出波が走査される領域である。
【0042】
各非接触センサ22A~22Dのいずれかの検出領域に含まれている地点が非接触センサ22全体による検出領域Dに該当する。後述する検出範囲設定部74は、検出領域D内に検出範囲TDを設定する。また、後述する警報範囲特定部75は、検出領域D内における警報範囲TAを特定する。
【0043】
各非接触センサ22A~22Dの検出領域DA~DDは、単なる扇形ではなく、左右両端部の一部領域を切り欠いた領域としている。これは、例えば旋回走行を行った場合に作業機の端部が両端の非接触センサ22A,22Dにおける検出領域DA,DDの端部にかかってしまい、誤って障害物と認識することを防ぐためである。ホイールローダ1はアーティキュレート型の作業機械であり、最大まで旋回操舵した場合には、作業機が車体後部に対して大きく傾くことになり、作業機の端部が検出領域DA,DDの端部にかかる可能性があるためである。このように非接触センサ22A~22Dの検出領域DA~DD端部の一部領域を切り欠いた領域とすることは、アーティキュレート型の作業機械のみに限らず、例えば油圧ショベルおよびフォークリフトに設けられた非接触センサにおいても適用できる。そうすることで、油圧ショベルおよびフォークリフトの旋回動作時に、非接触センサが誤って作業機を検出してしまうことを防止できる。
【0044】
物体検出装置20は、複数のカメラ21及び複数の非接触センサ22を用いて、ホイールローダ1の周辺の異なる領域のそれぞれに存在する物体を検出可能である。
【0045】
[周辺監視システム]
図3は、ホイールローダ1を示すブロック図である。ホイールローダ1は、運転者に操作される操作装置30と、ホイールローダ1の状態を検出するセンサ40と、車両制御装置60と、周辺監視システム100とを備える。周辺監視システム100は、物体検出装置20と、監視制御装置70と、監視モニタ装置50とを有する。車両制御装置60及び監視制御装置70のそれぞれは、コンピュータシステムを含み、ホイールローダ1に搭載される。車両制御装置60は、走行装置4、変速機7、及び作業機10を制御する。監視制御装置70は、監視モニタ装置50を制御する。
【0046】
<操作装置>
操作装置30は、運転室3Rに配置され、運転者に操作される。操作装置30は、走行操作装置31と、変速機操作装置32と、パーキングブレーキ操作装置33と、作業機操作装置34とを含む。
【0047】
走行操作装置31は、走行装置4を作動するために操作される。走行操作装置31は、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングレバーを含む。アクセルペダルが操作されることにより、エンジン4Aが駆動力を発生する。ブレーキペダルが操作されることにより、ブレーキ4Bが制動力を発生する。ステアリングレバーが操作されることにより、ステアリングシリンダ4Cが伸縮し、ホイールローダ1が旋回する。
【0048】
変速機操作装置32は、変速機7を作動するために操作される。変速機操作装置32は、前後進切換スイッチ、シフトアップスイッチ、及びシフトダウンスイッチを含む。前後進切換スイッチが操作されることにより、変速機7の出力軸の回転方向が切り換えられ、ホイールローダ1が前進又は後進する。シフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチの少なくとも一方が操作されることにより、変速機7の変速段が変更される。シフトアップスイッチが操作されることにより、変速機7の変速段が上がり、変速機7の変速比が小さくなる。シフトダウンスイッチが操作されることにより、変速機7の変速段が下がり、変速機7の変速比が大きくなる。なお、前後進切換スイッチ、シフトアップスイッチ、及びシフトダウンスイッチのそれぞれの機能が、1つの操作部材(操作レバーなど)が操作されることにより発揮されてもよい。
【0049】
パーキングブレーキ操作装置33は、ホイールローダ1のパーキングブレーキ8を作動するために操作される。パーキングブレーキ操作装置33は、パーキングブレーキスイッチを含む。パーキングブレーキスイッチが操作されることにより、パーキングブレーキ8が制動力を発生する。
【0050】
作業機操作装置34は、作業機10を作動するために操作される。作業機操作装置34は、ブームレバー、及びバケットレバーを含む。ブームレバーが操作されることにより、ブームシリンダ15が伸縮し、ブーム11が作動する。バケットレバーが操作されることにより、バケットシリンダ16が伸縮し、バケット12が作動する。
【0051】
<センサ>
センサ40は、速度センサ41と、姿勢センサ42と、角度センサ43と、重量センサ44とを含む。
【0052】
速度センサ41は、ホイールローダ1の走行速度を検出する。速度センサ41は、例えば車輪5の単位時間当たりの回転数を検出することによって、ホイールローダ1の走行速度を検出する。
【0053】
姿勢センサ42は、車体2の姿勢を検出する。車体2の姿勢は、水平面に対する車体2の傾斜角度及び角速度の少なくとも一方を含む。また、車体2の姿勢は、車体2が向く方向を示す方位を含む。姿勢センサ42は、車体2に設けられた慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を含む。
【0054】
角度センサ43は、作業機10の角度を検出する。角度センサ43は、車体前部2Fに規定された車体座標系の基準軸に対するブーム11の角度を検出するブーム角度センサと、ブーム11に対するバケット12の角度を検出するバケット角度センサとを含む。角度センサ43は、ポテンショメータでもよいし、ブームシリンダ15のストローク及びバケットシリンダ16のストロークを検出するストロークセンサでもよい。
【0055】
重量センサ44は、バケット12の重量を検出する。重量センサ44は、バケット12の重量を検出して、バケット12に保持されている掘削物の重量を検出する。また、重量センサ44は、バケット12の重量を検出して、バケット12に掘削物が保持されているか否かを検出する。
【0056】
<監視モニタ装置>
監視モニタ装置50は、運転室3Rに配置される。監視モニタ装置50は、警報装置51と、表示装置52とを有する。
【0057】
警報装置51は、警報を出力する。警報装置51は、例えばブザー装置を含み、警報として警報音を出力する。なお、警報装置51は、例えばランプのような発光装置を含み、警報として光を出力してもよい。警報装置51は、例えば非接触センサ22が警報範囲TAに存在する物体を検出した場合に、警報を出力する。
【0058】
表示装置52は、表示データを表示する。表示装置52は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)又は有機ELディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)のようなフラットパネルディスプレイを含む。表示装置52は、表示データとして、カメラ21で取得されたホイールローダ1の周辺の画像データを表示する。また、ホイールローダ1の周辺に障害物が存在する場合、表示装置52は、表示データとして、非接触センサ22で検出された障害物の位置データを表示する。表示装置52は、例えば非接触センサ22が検出範囲TDまたは警報範囲TAに存在する障害物を検出した場合に、検出された障害物の位置データを表示する。
【0059】
<車両制御装置>
車両制御装置60は、操作装置30に接続される。運転者により操作装置30が操作されると、操作装置30は操作データを出力する。操作装置30から出力された操作データは、車両制御装置60に出力される。車両制御装置60は、操作装置30の操作データに基づいて、走行装置4、変速機7、パーキングブレーキ8、及び作業機10の少なくとも一つを制御する制御指令を出力する。
【0060】
車両制御装置60は、走行制御部61と、変速機制御部62と、パーキングブレーキ制御部63と、作業機制御部64とを有する。
【0061】
走行制御部61は、走行操作装置31から出力された操作データに基づいて、エンジン4A、ブレーキ4B、及びステアリングシリンダ4Cの少なくとも一つを制御する制御する制御指令を出力する。
【0062】
変速機制御部62は、変速機操作装置32から出力された操作データに基づいて、変速機7の出力軸の回転方向を制御する制御指令、及び変速機7の変速段を制御する制御指令を出力する。
【0063】
パーキングブレーキ制御部63は、パーキングブレーキ操作装置33から出力された操作データに基づいて、パーキングブレーキ8を制御する制御指令を出力する。
【0064】
作業機制御部64は、作業機操作装置34から出力された操作データに基づいて、ブームシリンダ15及びバケットシリンダ16の少なくとも一方を制御する制御する制御指令を出力する。
【0065】
<監視制御装置>
監視制御装置70は、物体検出装置20、操作装置30、及びセンサ40に接続される。監視制御装置70は、物体検出装置20の検出データを示す周辺データ、操作装置30の操作データ、及びセンサ40の検出データを示す状態データの少なくとも一つに基づいて、監視モニタ装置50を制御する制御指令を出力する。
【0066】
監視制御装置70は、操作データ取得部71と、状態データ取得部72と、周辺データ取得部73と、検出範囲設定部74と、警報範囲特定部75と、作業モード判定部76と、警報範囲変更部77と、障害物判定部78と、警報制御部79と、表示制御部80と、警報範囲記憶部81とを有する。
【0067】
操作データ取得部71は、操作装置30から出力される操作データを取得する。
【0068】
状態データ取得部72は、センサ40の検出データを示す状態データを取得する。センサ40は、ホイールローダ1の状態を示す状態データを検出する。状態データは、ホイールローダ1の走行速度、車体2の姿勢、作業機10の角度、及びバケット12の重量の少なくとも一つを含む。
【0069】
周辺データ取得部73は、物体検出装置20の検出データを示す周辺データを取得する。物体検出装置20は、ホイールローダ1の周辺の状況を示す周辺データを検出する。周辺データは、非接触センサ22によって検出されるホイールローダ1の周辺における物体の有無データ及び物体の位置データを含む。
【0070】
検出範囲設定部74は、検出波が走査される検出領域Dにおいて、物体の検出範囲TDを設定する。検出範囲TDとは、物体の監視対象範囲をいう。
図2に示すように、検出範囲TDは、検出領域Dの一部に規定される。非接触センサ22から最も遠い検出領域Dの端部は、非接触センサ22から例えば50[m]以上離れている。検出領域Dの端部においては、検出波のエネルギーが小さく、物体の検出精度が低下する可能性がある。また、検出領域Dの全部を監視対象範囲にしてしまうと、ホイールローダ1との接触の可能性が低い物体まで検出されてしまう。また、検出領域Dの全部を監視対象範囲としてしまうと、監視制御装置70が処理すべきデータ数が過剰に大きくなってしまう。そのため、検出精度の低下の抑制及びデータ数の抑制等の観点から、物体の監視対象範囲として、検出領域Dよりも小さい検出範囲TDが設定される。ホイールローダ1の周辺の物体を検出する場合、検出範囲TDに存在する物体の検出データのみが採用され、検出範囲TDの外側に存在する物体の検出データは、削除される。
【0071】
警報範囲特定部75は、物体の存在により警報の出力が要求される警報範囲TAを特定する。警報範囲特定部75は、検出範囲TDに警報範囲TAを特定する。警報範囲TAを特定するとは、警報範囲があらかじめ設定されている場合、および図示しない入出力手段により警報範囲が新たに設定される場合を含むものとし、警報範囲の「特定」とは、「設定」を含む概念とする。
【0072】
警報範囲記憶部81は、警報範囲特定部75が特定した警報範囲TAのデータを記憶する。警報範囲TAのデータは、図示しない所定の記憶領域に記憶されていてもよいし、監視制御装置70のプログラムにおける所定の個所に入力されているものであってもよい。警報範囲記憶部81には、警報範囲TAが初期状態から記憶されていてもよいし、何らかの設定作業により設定・更新されてもよい。
【0073】
図4は、検出範囲TD及び警報範囲TAを模式的に示す図である。
図2及び
図4に示すように、検出範囲TDは、検出領域Dの一部に設定される。
【0074】
検出範囲設定部74は、ホイールローダ1の周囲の少なくとも一部に非接触センサ22の検出範囲TDを規定する。実施形態において、検出範囲設定部74は、ホイールローダ1の所定部位よりも後方に非接触センサ22の検出範囲TDを規定する。所定部位は、車体後部2Rの少なくとも一部に規定される。実施形態において、所定部位は、前後方向において後タイヤ6Rの後端部に一致する車体後部2Rの一部に規定される。検出範囲TDは、後タイヤ6Rの後端部よりも後方に規定される。なお、所定部位は、前後方向において後タイヤ6Rの回転軸RXに一致する車体後部2Rの一部に規定されてもよい。また、検出範囲TDは、ホイールローダ1の中心線CLに対して左右対称に規定される。中心線CLとは、車幅方向におけるホイールローダ1の中心を通り前後方向に延在する線をいう。
【0075】
検出範囲TDは、四角形状に規定される。車幅方向において、中心線CLと検出範囲TDの左端部との距離と、中心線CLと検出範囲TDの右端部との距離とは、等しい。検出範囲TDの前端部は、回転軸RXに平行である。検出範囲TDの後端部は、検出範囲TDの前端部に平行である。検出範囲TDの左端部及び右端部のそれぞれは、検出範囲TDの前端部及び後端部に直交する。
【0076】
警報範囲特定部75は、検出範囲TDの中に警報範囲TAを設定する。警報範囲TAは、物体の存在により警報の出力が要求される範囲である。警報範囲TAに物体が存在する場合、警報装置51から警報が出力される。検出範囲TDの中であっても警報範囲TAの外側に物体が存在する場合、警報装置51から警報は出力されない。
【0077】
警報範囲TAは、四角形状に規定される。警報範囲TAの前端部は、回転軸RXに平行である。警報範囲TAの後端部は、警報範囲TAの前端部に平行である。警報範囲TAの左端部及び右端部のそれぞれは、警報範囲TAの前端部及び後端部に直交する。
【0078】
前後方向において、警報範囲TAの前端部の位置と検出範囲TDの前端部の位置とは、一致する。前後方向において、警報範囲TAの後端部は、検出範囲TDの後端部よりも前方に配置される。車幅方向において、中心線CLと警報範囲TAの左端部との距離と、中心線CLと警報範囲TAの右端部との距離とは、等しい。車幅方向において、警報範囲TAの左端部は、中心線CLと検出範囲TDの左端部との間に配置される。車幅方向において、警報範囲TAの右端部は、中心線CLと検出範囲TDの右端部との間に配置される。
【0079】
警報範囲特定部75は、警報範囲TAの初期状態を示す初期警報範囲TA0を設定する。初期警報範囲TA0の寸法は、警報範囲TAの寸法の初期値を示す。
図4に示すように、警報範囲特定部75によって設定される初期警報範囲TA0の車幅方向の寸法Wは、寸法W0であり、警報範囲特定部75によって設定される初期警報範囲TA0の前後方向の寸法Lは、寸法L0である。
【0080】
作業モード判定部76は、ホイールローダ1の作業モードを判定する。作業モード判定部76は、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであるか否かを判定する。
【0081】
図5及び
図6のそれぞれは、特定作業モードを含むホイールローダ1の作業を模式的に示す図である。ホイールローダ1は、作業機10のバケット12で掘削対象を掘削する掘削作業、及び掘削作業によりバケット12ですくい取った掘削物を積込対象に積み込む積込作業を実行可能である。掘削対象として、地面RSに置かれた地山DSが例示される。積込対象として、運搬車両LSが例示される。運搬車両LSとして、ベッセルを有するダンプトラックが例示される。
【0082】
図5(A)に示すように、ホイールローダ1は、作業機10のバケット12に掘削物が保持されていない状態で、作業機10のバケット12で地山DSを掘削するために地山DSに向かって前進する第1前進作業F1を実行する。運転者は、操作装置30を操作して、
図5(A)の矢印で示すように、ホイールローダ1を前進させて地山DSに接近させる。また、運転者は、バケット12で地山DSが掘削されるように、操作装置30を操作する。
【0083】
図5(B)に示すように、地山DSをバケット12により掘削し、掘削物をバケット12ですくい取った後、ホイールローダ1は、バケット12に掘削物が保持されている状態で、地山DSから離れるように後進する第1後進作業R1を実行する。運転者は、操作装置30を操作して、
図5(B)の矢印で示すように、ホイールローダ1を後進させて地山DSから離間させる。
【0084】
次に、
図6(A)に示すように、ホイールローダ1は、作業機10のバケット12に保持されている掘削物を運搬車両LSに積み込むために運搬車両LSに向かって前進する第2前進作業F2を実行する。運転者は、操作装置30を操作して、
図6(A)の矢印で示すように、ホイールローダ1を旋回させながら前進させて運搬車両LSに接近させる。また、運転者は、バケット12に保持されている掘削物が運搬車両LSのベッセルに積み込まれるように、操作装置30を操作する。すなわち、運転者は、ホイールローダ1が運搬車両LSに接近するように前進している状態で、ブーム11が上げ動作するように、操作装置30を操作する。ブーム11が上げ動作し、バケット12が運搬車両LSのベッセルの上方に配置された後、運転者は、バケット12がチルト動作するように、操作装置30を操作する。これにより、バケット12から掘削物が排出され、運搬車両LSに積み込まれる。
【0085】
図6(B)に示すように、バケット12から掘削物を排出し、運搬車両LSのベッセルに積み込んだ後、ホイールローダ1は、作業機10のバケット12に掘削物が保持されていない状態で、運搬車両LSから離れるように後進する第2後進作業R2を実行する。運転者は、操作装置30を操作して、
図6(B)の矢印で示すように、ホイールローダ1を後進させて運搬車両LSから離間させる。
【0086】
運転者は、ベッセルBEに掘削物が満載されるまで、上述の動作を繰り返す。以下の説明において、第1前進作業F1、第1後進作業R1、第2前進作業F2、及び第2後進作業R2の一連の作業を含む作業モードを適宜、Vシェープ作業モード、と称する。
【0087】
特定作業モードは、Vシェープ作業モードの第1後進作業R1を含む。作業モード判定部76は、Vシェープ作業モードにおいて、ホイールローダ1が第1後進作業R1を実行しているか否かを判定する。第1後進作業R1において、ホイールローダ1は、運搬車両LSの周辺を後進する。ホイールローダ1は、運搬車両LSの周辺を後進した後に、作業機10のバケット12に保持されている掘削物を運搬車両LSに積み込む第2前進作業F2を実行する。
【0088】
作業モード判定部76は、少なくとも操作データ取得部71により取得された変速機操作装置32の操作データに基づいて、作業モードを判定する。作業モード判定部76は、操作データ取得部71により取得された変速機操作装置32の操作データに基づいて、ホイールローダ1が特定の変速段で後進していると判定したときに、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると判定する。実施形態においては、作業モード判定部76は、変速機7の変速段が低速度段である場合に、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると判定する。実施形態においては、低速度段とは、変速機7の速度段が、1速又は2速であることをいう。
【0089】
Vシェープ作業モードで作業するとき、運転者は、変速機7の変速段が2速に設定されるように変速機操作装置32を操作する場合が多い。運転者は、Vシェープ作業モードにおいて第1前進作業F1及び第2前進作業F2を実行する場合、変速機7の変速段が2速に設定されている状態でホイールローダ1が前進するように変速機操作装置32を操作する。また、運転者は、Vシェープ作業モードにおいて第1後進作業R1及び第2後進作業R2を実行する場合、変速機7の変速段が2速に設定されている状態でホイールローダ1が後進するように変速機操作装置32を操作する。ホイールローダ1は、Vシェープ作業モードにおいて、変速段が2速に設定された状態で、第1前進作業F1、第1後進作業R1、第2前進作業F2、及び第2後進作業R2を実行する。
【0090】
一方、Vシェープ作業モード以外の作業モードで作業するとき、運転者は、変速機7の変速段が3速又は4速に設定されるように変速機操作装置32を操作する場合が多い。運転者は、Vシェープ作業モード以外の作業モードにおいてホイールローダ1を前進させる場合、変速機7の変速段が3速又は4速に設定されている状態でホイールローダ1が前進するように変速機操作装置32を操作する。運転者は、Vシェープ作業モード以外の作業モードにおいてホイールローダ1を後進させる場合、変速機7の変速段が3速又は4速に設定されている状態でホイールローダ1が後進するように変速機操作装置32を操作する。ホイールローダ1は、Vシェープ作業モード以外の作業モードにおいて、変速段が3速又は4速に設定された状態で、前進又は後進する。
【0091】
したがって、作業モード判定部76は、ホイールローダ1が2速で後進していると判定したとき、ホイールローダ1の作業モードがVシェープ作業モードの第1後進作業R1であると判定することができる。
【0092】
警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると作業モード判定部76により判定されたときに、検出範囲TDの中において警報範囲TAを変更する。警報範囲変更部77は、検出範囲TDから警報範囲TAがはみ出さないように、検出範囲TDの内側において警報範囲TAを変更する。警報範囲TAの変更は、警報範囲TAの面積を変更すること、警報範囲TAの位置を変更すること、及び警報範囲TAの形状を変更することの少なくとも一つを含む。警報範囲変更部77が警報範囲TAを変更する際には、警報範囲記憶部81に記憶されている警報範囲TAのデータを、変更後の警報範囲TAのデータに更新する。また、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると判定されたときといった所定条件を満たした場合に、警報範囲記憶部81に記憶されている警報範囲TAのデータを、変更後の警報範囲TAのデータに更新するものの、所定条件が満たさなくなった場合には、変更前の警報範囲TAのデータに更新しなおしてもよい。
【0093】
図7は、警報範囲変更部77により変更された後の警報範囲TAを示す変更警報範囲TA1を模式的に示す図である。
図7に示すように、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1がVシェープ作業モードにおいて第1後進作業R1を実行していると判定されたときに、車幅方向の寸法Wが初期値の寸法W0よりも小さくなるように、警報範囲TA(初期警報範囲TA0)を変更する。警報範囲変更部77により変更された後の警報範囲TAを示す変更警報範囲TA1の車幅方向の寸法W1は、警報範囲特定部75により設定された初期警報範囲TA0の車幅方向の寸法W0よりも小さい。
【0094】
なお、警報範囲変更部77は、警報範囲TAの前後方向の寸法Lは変更しない。すなわち、変更警報範囲TA1の前後方向の寸法L1は、初期警報範囲TA0の前後方向の寸法L0と等しい。
【0095】
警報範囲変更部77は、変更警報範囲TA1を四角形状に設定する。変更警報範囲TA1の前端部は、検出範囲TDの前端部に一致する。車幅方向において、中心線CLと変更警報範囲TA1の左端部との距離と、中心線CLと変更警報範囲TA1の右端部との距離とは、等しい。
【0096】
障害物判定部78は、非接触センサ22の検出データを示す周辺データを周辺データ取得部73から取得する。障害物判定部78は、警報範囲TAに物体(障害物)が存在するか否かを判定する。警報範囲変更部77により警報範囲TAが変更されていない場合、障害物判定部78は、初期警報範囲TA0に物体が存在しているか否かを判定する。警報範囲変更部77により警報範囲TAが変更されている場合、障害物判定部78は、変更警報範囲TA1に物体が存在しているか否かを判定する。
【0097】
障害物の外形は、ホイールローダ1の外形よりも小さい。障害物として、例えば作業現場を管理するピックアップトラックのような有人車両が例示される。
【0098】
警報制御部79は、警報範囲TAに物体が存在すると障害物判定部78に判定されたときに、警報装置51に警報を出力させる警報指令を制御指令として出力する。警報装置51から警報が出力されることにより、運転者は、警報範囲TAに障害物が存在することを認識することができる。
【0099】
警報制御部79は、ホイールローダ1が後進している状態で警報範囲TAに物体が存在しているとき、警報指令を出力する。警報制御部79は、ホイールローダ1が前進又は停車している状態においては、警報指令を出力しない。警報制御部79は、変速機操作装置32の操作データに基づいて、ホイールローダ1が後進していると判定したとき、且つ、警報範囲TAに物体が存在していると判定されたとき、警報指令を出力する。警報制御部79は、変速機操作装置32の操作データに基づいて、ホイールローダ1が前進していると判定したとき、警報範囲TAにおける物体の有無にかかわらず、警報指令を出力しない。警報制御部79は、パーキングブレーキ操作装置33の操作データに基づいて、ホイールローダ1が停車していると判定したとき、警報範囲TAにおける物体の有無にかかわらず、警報指令を出力しない。
【0100】
表示制御部80は、表示装置52に表示データを表示させる表示指令を制御指令として出力する。表示制御部80は、カメラ21によって取得された画像データ、及び非接触センサ22によって取得された物体の位置データを、表示データとして表示装置52に表示させる。
【0101】
<表示装置>
図8は、表示装置52の表示例を示す図である。
図8に示すように、表示制御部80は、表示装置52の表示画面の第1領域52Aにホイールローダ1のキャラクタ画像CG及び俯瞰画像BIを表示させ、第1領域52Aの隣の表示画面の第2領域52Bにカメラ21Dで撮影されたホイールローダ1の後方を示す画像を表示させる。なお、
図8は、ホイールローダ1が後進するときの表示装置52の表示例を示す。
【0102】
表示制御部80は、俯瞰画像BIを生成するための画像データを取得する複数のカメラ21B,21C,21D,21E,21Fの撮影領域SBp,SCp,SDp,SEp,SFpの境界を示すラインLGを俯瞰画像BIに重ねて表示させる。
【0103】
また、表示制御部80は、ホイールローダ1の外縁からの距離を示すラインLa,Lb,Lcを俯瞰画像BIに重ねて表示させる。ホイールローダ1の外縁とは、ホイールローダ1が、直進できる姿勢において、ホイールローダ1を上方から見た平面視が示すホイールローダ1の外形を形成する線である。例えば、ラインLaはホイールローダ1の外縁からの距離が3[m]であることを示し、ラインLbはホイールローダ1の外縁からの距離が5[m]であることを示し、ラインLcはホイールローダ1の外縁からの距離が7[m]であることを示す。
【0104】
また、表示制御部80は、非接触センサ22によって検出された検出範囲TDに存在する障害物の位置データを示すマーク54を俯瞰画像BIに重ねて表示させる。例えば、ホイールローダ1の後方に存在する障害物が非接触センサ22によって検出されたとき、表示制御部80は、障害物の位置データに基づいて、俯瞰画像BIにおいて表示されている障害物にマーク54を重ねて表示させる。これにより、障害物が存在することが強調して示され、ホイールローダ1の運転者は、障害物の有無及び位置を速やかに認識することができる。
【0105】
第2領域52Bには、複数のカメラ21の撮影領域のうち第2領域52Bに表示されるカメラ21の撮影領域を示すインジケータ55が表示される。
【0106】
また、第2領域52Bには、警報装置51が警報を出力可能状態であることを示す表示データであるアイコン56が表示される。警報装置51が警報を出力可能状態であるとき、アイコン56が表示される。警報装置51が警報を出力不可能状態であるとき、アイコン56が非表示になる。アイコン56の表示の有無により、運転者は、警報装置51が警報を出力可能状態か否かを認識することができる。
【0107】
ホイールローダ1が後進時において、表示制御部80は、ホイールローダ1の後端部からの距離を示すラインLf,Lg,Lhを撮影画像に重ねて表示させる。ホイールローダ1の後端部は、例えば、車体後部2Rの最後部に設けられたリアバンパーの後端に設定することができる。
【0108】
以下の説明においては、検出範囲TDに障害物が存在し、障害物の位置データを示すマーク54を表示させる表示指令を適宜、位置表示指令、と称し、検出範囲TDに障害物が存在せず、マーク54を表示させない表示指令を適宜、通常表示指令、と称する。
【0109】
[周辺監視方法]
図9は、周辺監視方法を示すフローチャートである。検出範囲設定部74は、ホイールローダ1の所定部位よりも後方に非接触センサ22の検出範囲TDを規定する。警報範囲特定部75は、検出範囲設定部74により規定された検出範囲TDに、物体の存在により警報の出力が要求される警報範囲TAを設定する。
【0110】
操作データ取得部71は、操作装置30が操作されることにより生成された操作データを取得する(ステップS10)。
【0111】
操作データ取得部71は、変速機操作装置32の操作データを取得する。また、操作データ取得部71は、パーキングブレーキ操作装置33の操作データを取得する。
【0112】
作業モード判定部76は、操作データ取得部71により取得された変速機操作装置32の前後進切換スイッチの操作データに基づいて、ホイールローダ1が後進しているか否かを判定する(ステップS20)。
【0113】
ステップS20において、ホイールローダ1が後進していると判定した場合(ステップS20:Yes)、作業モード判定部76は、変速機操作装置32のシフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチの操作データに基づいて、変速機7が特定の変速段である2速に設定されているか否かを判定する(ステップS30)。
【0114】
ステップS30において、変速機7が2速に設定されていると判定した場合(ステップS30:Yes)、作業モード判定部76は、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると判定する。作業モード判定部76は、ホイールローダ1がVシェープ作業モードの第1後進作業R1を実行していると判定する。警報範囲変更部77は、警報範囲特定部75で設定された警報範囲TAを変更する(ステップS40)。
【0115】
図7を参照して説明したように、警報範囲変更部77は、車幅方向の寸法Wが小さくなるように、初期警報範囲TA0を変更警報範囲TA1に変更する。
【0116】
ステップS30において、変速機7が2速に設定されていないと判定した場合(ステップS30:No)、作業モード判定部76は、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モード以外の作業モードであると判定する。作業モード判定部76は、Vシェープ作業モード以外の作業モードでホイールローダ1が後進していると判定する。警報範囲変更部77は、警報範囲TAを変更しない。警報範囲TAは、警報範囲特定部75に設定された初期警報範囲TA0に設定される(ステップS50)。
【0117】
障害物判定部78は、周辺データ取得部73により取得された周辺データに基づいて、警報範囲TAに物体(障害物)が存在するか否かを判定する(ステップS60)。
【0118】
警報範囲TAが変更警報範囲TA1に変更されている場合、障害物判定部78は、変更警報範囲TA1に物体が存在するか否かを判定する。警報範囲TAが変更警報範囲TA1に変更されていない場合、障害物判定部78は、初期警報範囲TA0に物体が存在するか否かを判定する。
【0119】
ステップS60において、警報範囲TAに物体が存在すると判定された場合(ステップS60:Yes)、警報制御部79は、警報装置51に警報を出力させる警報指令を出力する。また、表示制御部80は、表示装置52にマーク54を表示させることを含む位置表示指令を出力する(ステップS70)。
【0120】
ステップS60において、警報範囲TAに物体が存在しないと判定された場合(ステップS60:No)、障害物判定部78は、警報範囲TAの外側であって検出範囲TDの内側に物体が存在するか否かを判定する(ステップS80)。
【0121】
ステップS80において、警報範囲TAに物体は存在しないものの検出範囲TDに物体が存在すると判定された場合(ステップS80:Yes)、表示制御部80は、表示装置52にマーク54を表示させることを含む位置表示指令を出力する(ステップS90)。
【0122】
なお、ステップS80において、検出範囲TDの内側に物体が存在すると判定されたものの警報範囲TAに物体は存在しないと判定された場合、警報制御部79から警報指令は出力されない。
【0123】
ステップS80において、検出範囲TDに物体が存在しないと判定された場合(ステップS80:No)、表示制御部80は、表示装置52にマーク54を表示させないことを含む通常表示指令を出力する(ステップS100)。
【0124】
ステップS20において、ホイールローダ1が後進していないと判定した場合(ステップS20:No)、警報範囲TAは変更されず、警報範囲特定部75に設定された初期警報範囲TA0に設定される(ステップS110)。
【0125】
障害物判定部78は、周辺データ取得部73により取得された周辺データに基づいて、検出範囲TDに物体(障害物)が存在するか否かを判定する(ステップS120)。
【0126】
ステップS120において、検出範囲TDに物体が存在すると判定された場合(ステップS120:Yes)、表示制御部80は、表示装置52にマーク54を表示させることを含む位置表示指令を出力する(ステップS130)。
【0127】
なお、ステップS130において、警報制御部79から警報指令は出力されない。
【0128】
ステップS120において、検出範囲TDに物体が存在しないと判定された場合(ステップS120:No)、表示制御部80は、表示装置52にマーク54を表示させないことを含む通常表示指令を出力する(ステップS140)。
【0129】
[コンピュータシステム]
図10は、コンピュータシステム1000を示すブロック図である。上述の車両制御装置60及び監視制御装置70のそれぞれは、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の車両制御装置60の機能及び監視制御装置70の機能は、プログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、プログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、プログラムに従って上述の処理を実行する。なお、プログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0130】
[効果]
以上説明したように、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると判定されたときに、物体の存在により警報の出力が要求される警報範囲TAが変更される。実施形態においては、ホイールローダ1の車幅方向の寸法が小さくなるように警報範囲TAが変更される。これにより、警報装置51から不要な警報が出力されることが抑制される。
【0131】
図11は、警報範囲TAが変更されず初期警報範囲TA0が維持された状態でホイールローダ1がVシェープ作業モードにおける第1後進作業R1を実行している状態を示す図である。第1後進作業R1において、ホイールローダ1は、運搬車両LSの周辺を後進する。初期警報範囲TA0の外形は大きい。
図11に示すように、初期警報範囲TA0が維持されていると、ホイールローダ1が運搬車両LSの近傍を後進するとき、初期警報範囲TA0に運搬車両LSが入り込んでしまう可能性が高くなる。運搬車両LSは、障害物ではなく、ホイールローダ1の作業に必要な物体である。
【0132】
初期警報範囲TA0に運搬車両LSが入り込んだ場合、障害物判定部78は、初期警報範囲TA0に障害物が存在すると誤判定し、警報制御部79は、警報装置51に警報を出力させる警報指令を出力してしまう。Vシェープ作業モードにおいて、運転者は、運搬車両LSの存在を十分に認識しながら第1後進作業R1を実行する。運転者がホイールローダ1の周辺の状況を十分に認識しているにもかかわらず、非接触センサ22が運搬車両LSを障害物として検出してしまうと、警報装置51から不要な警報が出力されてしまう。その結果、運転者は煩わしさを感じることがある。
【0133】
図12は、警報範囲TAが変更警報範囲TA1に変更された状態でホイールローダ1がVシェープ作業モードにおける第1後進作業R1を実行している状態を示す図である。
図12に示すように、変更警報範囲TA1の車幅方向の寸法W1は、初期警報範囲TA0の車幅方向の寸法W0よりも小さい。
図11に示すように、変更警報範囲TA1に変更されることにより、ホイールローダ1が運搬車両LSの周辺を後進するとき、変更警報範囲TA1に運搬車両LSが入り込んでしまうことが抑制される。
図12に示す例においては、第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の左側に運搬車両LSが存在する。警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の後進において運搬車両LSに最も近い警報範囲TAの端部(左端部)が運搬車両LSから離れるように警報範囲TAを変更する。これにより、運転者がホイールローダ1の周辺の状況を十分に認識している状態において、非接触センサ22が運搬車両LSを障害物として検出してしまうことが抑制される。したがって、警報装置51から不要な警報が出力されることが抑制される。
【0134】
なお、
図12は、第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の左側に運搬車両LSが存在する例を示す。第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の右側に運搬車両LSが存在する場合、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の後進において運搬車両LSに最も近い警報範囲TAの端部(右端部)が運搬車両LSから離れるように警報範囲TAを変更する。
【0135】
実施形態においては、第1後進作業R1において、警報範囲TAの前後方向の寸法Lは変更されず、変更警報範囲TA1の寸法L1は、初期警報範囲TA0の寸法L0と等しい。これにより、ホイールローダ1の車体後部2Rよりも後方の警報範囲TAの寸法が十分に維持される。そのため、車体後部2Rの真後ろに障害物が存在した場合、障害物判定部78は、警報範囲TAに障害物が存在することを検出することができる。警報制御部79は、警報装置51に警報指令を出力することができる。
【0136】
ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードではないとき、警報範囲TAは初期警報範囲TA0に維持される。これにより、運転者がホイールローダ1を後進させるときにホイールローダ1の周辺に障害物が存在する場合、警報制御部79は、警報装置51に警報指令を出力して、必要な警報を出力させることができる。
【0137】
検出範囲TDは、ホイールローダ1の所定部位よりも後方に規定される。ホイールローダ1の前方及び側方は、運転者が目視できる範囲である。また、ホイールローダ1は、関節機構9において屈曲するアーティキュレート式作業車両であり、所定部位は、車体後部2Rの少なくとも一部に規定される。そのため、例えば斜め前方を走査する非接触センサ22が車体後部2Rの左側の外面又は右側の外面に配置されていると、関節機構9を介して車体前部2Fが屈曲したとき、非接触センサ22の検出領域に車体前部2Fの少なくとも一部が入り込んでしまう可能性がある。そのため、ホイールローダ1の前方及び側方に検出範囲TDは規定されなくてもよい。ホイールローダ1の前方及び側方を走査する非接触センサ22を設けなくても済むため、ホイールローダ1のコストが抑制される。
【0138】
また、ホイールローダ1は、関節機構9において屈曲するアーティキュレート式作業車両であるため、ホイールローダ1が旋回しながら後進するとき、前タイヤ6Fは、地面RSにおいて後タイヤ6Rが通過した部分を通過することができる。すなわち、ホイールローダ1の内輪差は十分に小さい。そのため、仮にホイールローダ1の側方に障害物が存在している状態で、ホイールローダ1が後進しても、ホイールローダ1と障害物との接触は十分に抑制される。
【0139】
[他の実施形態]
上述の実施形態において、作業モード判定部76は、ホイールローダ1が有する変速機7を操作する変速機操作装置32の操作データに基づいて、ホイールローダ1が特定作業モードを実行しているか否かを判定することとした。作業モード判定部76は、センサ40により検出された状態データに基づいて、ホイールローダ1の作業モードを判定してもよい。また、作業モード判定部76は、変速機操作装置32の操作データ及びセンサ40の検出データの少なくとも一つに基づいて、ホイールローダ1の作業モードを判定してもよい。また、作業モード判定部76は、変速機操作装置32の操作データに加えて、走行操作装置31の操作データ及び作業機操作装置34の操作データの少なくとも一つに基づいて、ホイールローダ1の作業モードを判定してもよい。
【0140】
Vシェープ作業モードにおいて、ホイールローダ1は、所定の動作を所定の順序で繰り返す。例えば、走行装置4の走行速度、走行装置4の進行方向(前進又は後進)、車体2の姿勢、作業機10の角度、及びバケット12の重量のそれぞれは、所定の条件に所定の順序で変化する。すなわち、Vシェープ作業モードの第1前進作業F1においては、バケット12の先端部12Bが地面RSに接触した状態でホイールローダ1が前進し、第1後進作業R1においては、バケット12がチルト動作しブーム11が上げ動作しながらホイールローダ1が後進し、第2前進作業F2においては、ホイールローダ1が前進しながらブーム11が上げ動作しバケット12がダンプ動作し、第2後進作業R2においては、ブーム11が下げ動作しながらホイールローダ1が後進する。また、第1前進作業F1及び第2後進作業R2においては、バケット12に掘削物は保持されず、第1後進作業R1及び第2前進作業F2においては、バケット12に掘削物は保持される。
【0141】
このように、Vシェープ作業モードにおいて、ホイールローダ1は所定の動作を所定の順序で繰り返すため、走行装置4の走行速度、走行装置4の進行方向、車体2の姿勢、作業機10の角度、及びバケット12の重量を含むホイールローダ1の状態を検出することにより、作業モードを特定することができる。そのため、作業モード判定部76は、走行装置4の走行速度を検出する速度センサ41、車体2の姿勢を検出する姿勢センサ42、作業機10の角度を検出する角度センサ43、及びバケット12の重量を検出する重量センサ44を含むセンサ40の検出データを示す状態データに基づいて、ホイールローダ1が特定作業モードを実行しているか否かを判定することができる。作業モード判定部76は、変速機操作装置32を含む操作装置30の操作データと、センサ40により検出された状態データとを組み合わせて、ホイールローダ1が特定作業モードを実行しているか否かを判定することができる。作業モード判定部76は、操作装置30の操作データとセンサ40により検出された状態データとを用いてホイールローダ1が特定作業モードを実行しているか否かを判定する場合に、機械学習等の人工知能技術を用いて判定してもよい。作業モード判定部76は、カメラ21による撮像データを用いて、人工知能技術による画像認識により、ホイールローダ1が特定作業モードを実行しているか否かを判定してもよい。
【0142】
上述の実施形態において、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の作業モードが特定作業モードであると判定されたときに、警報範囲TAを変更することとした。警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の作業モードによらずに、変速機7を操作する変速機操作装置32の操作データに基づいて、検出範囲TDにおいて警報範囲TAを変更してもよい。警報範囲変更部77は、変速機操作装置32の操作データに基づいてホイールローダ1が特定の変速段で後進していると判定したときに、警報範囲TAを変更してもよい。この場合、作業モード判定部76を省略することができる。
【0143】
また、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の作業モードによらずに、ホイールローダ1の状態を検出するセンサ40の検出データに基づいて、検出範囲TDにおいて警報範囲TAを変更してもよい。
【0144】
上述のように、Vシェープ作業モードにおいては、変速機7の変速段が2速に設定される場合が多い。なお、変速機制御部62は、例えば第1前進作業F1において、バケット12の先端部12Bが地山DSに挿入され、走行装置4に係る負荷が増大した場合、変速機7の変速段を2段から1段に自動的にシフトダウンさせてもよい。
【0145】
上述の実施形態においては、特定の変速段が2速であり、ホイールローダ1が2速で後進しているときに警報範囲TAが変更されることとした。特定の変速段は1速でもよい。例えばVシェープ作業モードにおいて、第1前進作業F1、第1後進作業R1、第2前進作業F2、及び第2後進作業R2のそれぞれにおけるホイールローダ1の移動距離が短い場合、変速段が1速に維持された状態でVシェープ作業モードにより作業が実行される場合がある。変速段が1速に維持された状態でVシェープ作業モードにより作業が実行される場合、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1が1速で後進しているときに警報範囲TAを変更してもよい。
【0146】
変速段が1速に設定された状態及び2速に設定された状態のそれぞれでVシェープ作業モードにより作業が実行される場合、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1が1速で後進するときの変更警報範囲TA1の車幅方向の寸法W1を、ホイールローダ1が2速で後進するときの変更警報範囲TA1の車幅方向の寸法W1よりも小さくしてもよい。すなわち、警報範囲変更部77は、変速段に基づいて、変更警報範囲TA1の寸法W1を異ならせてもよい。
【0147】
上述の実施形態において、警報範囲変更部77は、車幅方向の寸法Wが小さくなるように警報範囲TAが変更されることとした。警報範囲変更部77は、前後方向の寸法Lが小さくなるように警報範囲TAを変更してもよいし、前後方向の寸法L及び車幅方向の寸法Wの両方が小さくなるように警報範囲TAを変更してもよい。
【0148】
上述の実施形態において、変更警報範囲TA1は、ホイールローダ1の中心線CLに対して左右対称に設定されることとした。警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の第1後進作業R1において、運搬車両LSに最も近い警報範囲TAの端部が運搬車両LSから離れるように警報範囲TAを変更すればよい。
【0149】
図13及び
図14のそれぞれは、運搬車両LSに最も近い警報範囲TAの端部が運搬車両LSから離れるように警報範囲TAが変更された状態を示す図である。
【0150】
図13に示すように、第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の左側に運搬車両LSが存在する場合、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の後進において運搬車両LSに最も近い変更警報範囲TA1の左端部が運搬車両LSから離れるように、初期警報範囲TA0の左端部の位置を変更する。
図13に示す例において、初期警報範囲TA0の右端部の位置は変更されず、変更警報範囲TA1の右端部の位置と初期警報範囲TA0の右端部の位置とは等しい。
図13に示す例においても、警報装置51から不要な警報が出力されてしまうことが抑制される。
【0151】
警報範囲変更部77は、ステアリングシリンダ4C(操舵装置)を操作するステアリングレバー(走行操作装置31)の操作データに基づいて、ホイールローダ1と運搬車両LSとの相対位置を判定することができる。
図13に示すように、第1後進作業R1において、ホイールローダ1の左側に運搬車両LSが存在する場合、ホイールローダ1が右旋回しながら後進するように、少なくともステアリングレバーが操作される。第1後進作業R1において、ホイールローダ1の右側に運搬車両LSが存在する場合、ホイールローダ1が左旋回しながら後進するように、少なくともステアリングレバーが操作される。そのため、警報範囲変更部77は、少なくともステアリングレバーの操作データに基づいて、運搬車両LSがホイールローダ1の左側に存在するか右側に存在するかを判定して、ホイールローダ1の後進において積込車両LSに最も近い警報範囲TAの端部が積込車両LSから離れるように警報範囲TAを変更することができる。
【0152】
警報範囲変更部77は、少なくともステアリングレバーの操作データに基づいて、第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の左側に運搬車両LSが存在すると判定した場合、ホイールローダ1の後進において運搬車両LSに最も近い変更警報範囲TA1の左端部が運搬車両LSから離れるように、初期警報範囲TA0の左端部の位置を変更する。また、警報範囲変更部77は、少なくともステアリングレバーの操作データに基づいて、第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の右側に運搬車両LSが存在すると判定した場合、ホイールローダ1の後進において運搬車両LSに最も近い変更警報範囲TA1の右端部が運搬車両LSから離れるように、初期警報範囲TA0の右端部の位置を変更する。
【0153】
図14に示すように、第1後進作業R1を実行するときにホイールローダ1の左側に運搬車両LSが存在する場合、警報範囲変更部77は、ホイールローダ1の後進において運搬車両LSに最も近い変更警報範囲TA1の左端部が運搬車両LSから離れるように、初期警報範囲TA0の位置を変更する。
図14に示す例において、初期警報範囲TA0の大きさは変更されず、変更警報範囲TA1の面積と初期警報範囲TA0の面積とは等しい。変更警報範囲TA1は、初期警報範囲TA0の位置を右に移動した警報範囲TAに相当する。
図14に示す例においても、警報装置51から不要な警報が出力されてしまうことが抑制される。
【0154】
上述の実施形態において、警報範囲TAの変更は、初期警報範囲TA0の面積を変更すること、初期警報範囲TA0の位置を変更すること、及び初期警報範囲TA0の形状を変更することの少なくとも一つを含む。また、警報範囲TAの変更は、初期警報範囲TA0の面積、位置、及び形状を変更することなく、初期警報範囲TA0に存在する物体の検出データの一部を除去又は無効化することを含む概念である。
【0155】
上述の実施形態においては、警報範囲TAが変更される特定作業モードがVシェープ作業モードの第1後進作業R1であることとした。特定作業モードは第1後進作業R1に限定されない。例えば、後進するホイールローダ1の通路の両側に壁が存在し、ホイールローダ1が狭隘な通路を後進しなければならない特定作業を実行する場合、警報範囲変更部77は、車幅方向の寸法Wが小さくなるように警報範囲TAを変更してもよい。
【0156】
上述の実施形態において、警報範囲変更部77は、前後方向の寸法L及び車幅方向の寸法Wの一方又は両方が大きくなるように警報範囲TAを変更してもよい。また、警報範囲変更部77は、警報範囲TAをいずれのかの方向にスライドさせる、警報範囲TAの形状を変更する、警報範囲TAを曲げる、または警報範囲TAの縦横比を変更することで、警報範囲TAを変更してもよい。
【0157】
上述の実施形態において、検出範囲TDは、ホイールローダ1の所定部位よりも後方に規定されることとした。検出範囲TDは、ホイールローダ1の所定部位よりも前方に規定されてもよいし、ホイールローダ1の側方に規定されてもよい。
【0158】
上述の実施形態において、警報範囲TAが変更される特定作業モードが第1後進作業R1であり、ホイールローダ1の第1後進作業R1において、警報範囲TAが変更されることとした。警報範囲TAが変更される特定作業モードは、第1前進作業F1、第1後進作業R1、第2前進作業F2、及び第2後進作業R2の少なくとも一つでもよい。例えば第1前進作業F1又は第2前進作業F2において、警報装置51から不要な警報が出力される可能性がある場合、警報範囲変更部77は、第1前進作業F1又は第2前進作業F2において、警報範囲TAを変更することができる。また、第2後進作業R2において、警報装置51から不要な警報が出力される可能性がある場合、警報範囲変更部77は、第2後進作業R2において、警報範囲TAを変更することができる。
【0159】
上述の実施形態において、警報範囲TAが変更される特定作業モードがVシェープ作業モードでもよい。すなわち、警報範囲変更部77は、作業機10で掘削対象を掘削するために掘削対象に向かって前進する第1前進作業F1と、掘削対象を掘削した後に掘削対象から離れるように後進する第1後進作業R1と、作業機10に保持されている掘削物を積込対象に積み込むために積込対象に向かって前進する第2前進作業F2と、掘削物を積込対象に積み込んだ後に積込対象から離れるように後進する第2後進作業R2とを含むVシェープ作業モードをホイールローダ1が実行していると判定されたときに、警報範囲TAを変更してもよい。
【0160】
上述の実施形態においては、検出範囲TDが設定され、検出範囲TDに警報範囲TAが設定されることとしたが、その実施形態に限られず、例えば検出範囲TDは設定されずに、非接触センサ22が検出可能な範囲を検出範囲TDと設定してもよい。
【0161】
ホイールローダ1の操作は、ホイールローダ1に設けられた運転室3Rにおいて行われなくてもよく、例えばホイールローダ1から遠く離れた図示しない遠隔運転室において行われてもよい。その場合、操作装置30、警報装置51および表示装置52は遠隔運転室に設置されてもよい。
【0162】
なお、上述の実施形態において、作業車両1はホイールローダ1に限定されない。作業車両1は、例えばフォークリフト、ダンプトラック、およびモーターグレーダの少なくとも1つでもよい。
【符号の説明】
【0163】
1…ホイールローダ(作業車両)、2…車体、2F…車体前部、2R…車体後部、3…運転台、3R…運転室、4…走行装置、4A…エンジン、4B…ブレーキ、4C…ステアリングシリンダ、5…車輪、5F…前輪、5R…後輪、6…タイヤ、6F…前タイヤ、6R…後タイヤ、7…変速機、8…パーキングブレーキ、9…関節機構、10…作業機、11…ブーム、12…バケット、12B…先端部、13…ベルクランク、14…リンク、15…ブームシリンダ、16…バケットシリンダ、20…物体検出装置、21…カメラ、21A…カメラ、21B…カメラ、21C…カメラ、21D…カメラ、21E…カメラ、21F…カメラ、22…非接触センサ、22A…非接触センサ、22B…非接触センサ、22C…非接触センサ、22D…非接触センサ、30…操作装置、31…走行操作装置、32…変速機操作装置、33…パーキングブレーキ操作装置、34…作業機操作装置、40…センサ、41…速度センサ、42…姿勢センサ、43…角度センサ、44…重量センサ、50…監視モニタ装置、51…警報装置、52…表示装置、52A…第1領域、52B…第2領域、54…マーク、55…インジケータ、56…アイコン、60…車両制御装置、61…走行制御部、62…変速機制御部、63…パーキングブレーキ制御部、64…作業機制御部、70…監視制御装置、71…操作データ取得部、72…状態データ取得部、73…周辺データ取得部、74…検出範囲設定部、75…警報範囲特定部、76…作業モード判定部、77…警報範囲変更部、78…障害物判定部、79…警報制御部、80…表示制御部、81…警報範囲記憶部、100…周辺監視システム、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース、BI…俯瞰画像、CG…キャラクタ画像、D…検出領域、DA…検出領域、DB…検出領域、DC…検出領域、DD…検出領域、F1…第1前進作業、F2…第2前進作業、FX…回転軸、L0…寸法、L1…寸法、La…ライン、Lb…ライン、Lc…ライン、Lf…ライン、Lg…ライン、Lh…ライン、LG…ライン、R1…第1後進作業、R2…第2後進作業、RS…地面、RX…回転軸、SA…撮影領域、SB…撮影領域、SC…撮影領域、SD…撮影領域、SE…撮影領域、SF…撮影領域、SBp…撮影領域、SCp…撮影領域、SDp…撮影領域、SEp…撮影領域、SFp…撮影領域、TA…警報範囲、TA0…初期警報範囲、TA1…変更警報範囲、TD…検出範囲、W0…寸法、W1…寸法。