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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/023 20060101AFI20240307BHJP
   G06F 3/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B60R16/023 Z
G06F3/00 W
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023036637
(22)【出願日】2023-03-09
(65)【公開番号】P2023068004
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
(72)【発明者】
【氏名】森 恵
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹也
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-193718(JP,A)
【文献】特開2011-164826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0289141(US,A1)
【文献】特開2002-366505(JP,A)
【文献】特開平11-110332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/023
G06F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組付対象の搭載位置に組み付けて使用される電子機器であって、
複数の端子と、
前記複数の端子に入力される入力信号を含む前記端子への入力状態の組み合わせを基に、前記搭載位置を判定して登録する搭載位置登録部と、
記憶部と
を備え、
判定した前記搭載位置を前記記憶部に書き込むとともに、
組み付けられた位置に応じた情報を含む制御信号を出力するものであって、
前記組み付けられた位置の情報を用いた制御を実行するシステム装置に接続されており、
端末との間で通信を実行する電子機器であって、
前記システム装置に出力される前記組み付けられた位置の情報は、前記組付対象と前記端末との位置関係の推定制御に用いられるものである電子機器。
【請求項2】
前記複数の端子の各々は、配線が接続されない状態と、前記配線が接続される状態とがあり、
前記配線が接続される状態では、前記配線から、Loレベルとして設定された入力信号、又はHiレベルとして設定された入力信号のいずれか一方の信号が入力され、
前記搭載位置登録部は、前記複数の端子に対し、前記配線が接続されない状態と、前記Loレベルとして設定された前記入力信号が入力される状態と、前記Hiレベルとして設定された前記入力信号が入力される状態とのうち、少なくとも3つの状態の組み合わせから、搭載位置を判定して登録する
請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自ら搭載位置を登録可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、量産される電子機器では、搭載位置に応じた作動を実行可能とするために、各電装品に搭載位置を登録する場合がある。この搭載位置の登録方法としては、例えば誤組み付けを防止するために、電子機器の一つひとつの形状を変更する方法がある。また、予め電子機器の正しい搭載パターンを別の機器に登録しておき、組み付け後の実際の登録パターンを、予め機器に登録しておいた登録パターンと比較することで、誤組み付けを検出する技術も周知である(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-125428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子機器を一つひとつ形状変更する対策の場合、電子機器の種類が増えてしまうと、管理する対象が多くなる問題があった。また、電子機器の一つひとつの形状を変更した場合、部品の共通化ができず、電子機器のコストアップに繋がる問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、搭載位置の登録作業の簡素化を可能にした電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決する電子機器は、組付対象の搭載位置に組み付けて使用される電子機器であって、複数の端子と、前記複数の端子に入力される入力信号を含む前記端子への入力状態の組み合わせを基に、前記搭載位置を判定して登録する搭載位置登録部と、記憶部とを備え、判定した前記搭載位置を前記記憶部に書き込むとともに、組み付けられた位置に応じた情報を含む制御信号を出力するものであって、前記組み付けられた位置の情報を用いた制御を実行するシステム装置に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搭載位置の登録を簡素なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の車両の構成図。
図2】電子機器の構成図。
図3】入力信号の入力パターンと電子機器の搭載位置との関連をまとめた表。
図4】搭載位置判定時に実行されるフローチャート。
図5】第2実施形態の搭載位置判定時の電子機器の作動図。
図6】搭載位置判定時の電子機器の作動図。
図7】搭載位置判定時の電子機器の作動図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、電子機器の第1実施形態を図1図4に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1において各種作動を実行する電子機器2が複数搭載されている。電子機器2は、例えば車両1のキー位置付けの端末3と無線による測距通信を行って、端末3との位置関係の妥当性を判定する通信機であることが好ましい。測距通信は、例えばUWB(Ultra Wide Band)帯の電波を送受信して、その伝搬時間から互いの間の距離を測定する通信であることが好ましい。電子機器2は、車内の通信線5に接続され、システム装置としての他のECU4と通信線5を介した通信を行いながら作動する。例えば、システム装置(ECU4)は、測距通信で得られた値と、電子機器2からの制御信号から得た情報から、車両1と端末3との位置関係を推定する。例えば、推定する車両1と端末3との位置関係として、車両1と端末3との距離、車両1に対する端末3の位置が挙げられる。
【0010】
電子機器2は、例えば車両1と端末3とが無線によるID照合(キー照合)を行った場合に、端末3との間で測距通信を実行する。電子機器2は、この測距通信で測定した値が許容値未満であれば、ID照合の成立を許可する。よって、端末3で車両1を操作可能となる。一方、電子機器2は、この測距通信で測定した値が許容値以上であれば、ID照合の成立を不許可とする。よって、例えば端末3が中継器等による不正通信を介してID照合が成立に移行された可能性がある場合に、ID照合を不許可にして、車両1の不正使用を防止する。
【0011】
図2に示すように、組付対象7における電子機器2の搭載位置は、搭載位置登録システム8によって各電子機器2に登録可能となっている。組付対象7は、複数の電子機器2が搭載される車両1である。本例の電子機器2は、外観が同一の形状で複数製造され、組付対象7の搭載位置に組み付けて使用される。電子機器2は、組付対象7に対する搭載位置が予め指定されていない。本例の搭載位置登録システム8は、この電子機器2に対し、電子機器2に設けられた各々の端子9で入力する入力信号Stの組み合わせから、搭載位置を判定して登録する。搭載位置としては、例えば車体前部右側、車体前部左側、車体後部右側、車体後部左側、車内などがある。電子機器2は、搭載位置に応じた情報を含む制御信号をシステム装置(ECU4)に出力する。この搭載位置に応じた情報は、組み付けられた位置に応じた情報に対応する。システム装置は、搭載位置に応じた情報を用いた制御を実行する。例えば、システム装置は、測距通信で得られた値と、電子機器2からの制御信号である「組み付けられた位置に応じた情報を含む制御信号」から得られた搭載位置の情報から、車両1と端末3との位置関係を推定する。例えば、推定する車両1と端末3との位置関係として、車両1と端末3との距離、車両1に対する端末3の位置が挙げられる。
【0012】
電子機器2は、本体部10と、複数の端子9が設けられたコネクタ部11とを備える。コネクタ部11は、電子機器2の搭載位置判定で使用する複数の端子9の他に、電源端子12及びグランド端子13を備える。端子9の各々は、配線14が接続されない状態と、配線14が接続される状態とがある。配線14が接続される状態では、配線14から、Loレベルとして設定された入力信号St、又はHiレベルとして設定された入力信号Stのいずれか一方の信号が入力される。電源端子12は、例えば車両1の電源+Bに接続されている。グランド端子13は、GND(グランド)に接地されている。
【0013】
本例の場合、端子9は、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの2端子からなる。第1入力端子9aには、電子機器2の搭載位置を判定する際に用いる入力信号St1が配線14aを介して入力される。第2入力端子9bには、電子機器2の搭載位置を判定する際に用いる入力信号St2が配線14bを介して入力される。本例の場合、第1入力端子9a及び第2入力端子9bは、GNDに接続されると、Lo信号を入力する状態となり、電源+Bに入力されると、Hi信号を入力する状態となる。また、第1入力端子9a及び第2入力端子9bは、電源+B及びGNDのどちらにも接続されていない場合、信号を入力しないオープン状態となる。
【0014】
電子機器2は、複数の端子9で入力される入力信号St(St1,St2)を含む端子9への入力状態の組み合せを基に搭載位置を判定して登録する搭載位置登録部15を備える。搭載位置登録部15は、配線14が接続されない状態と、Loレベルとして設定された入力信号Stが入力される状態と、Hiレベルとして設定された入力信号Stが入力される状態とのうち、少なくとも3つの状態の組み合わせから、電子機器2の搭載位置を判定する。本例の場合、搭載位置登録部15は、第1入力端子9a及び第2入力端子9bから入力した入力信号St1,St2の入力パターンから、電子機器2の搭載位置を判定する。本例の入力パターンは、例えば2値符号(「0」及び「1」)の組み合わせとし、パターン前段(2桁値の左側)を入力信号St1の入力状態とし、パターン後段(2桁値の右側)を入力信号St2の入力状態とする。
【0015】
本例の2値符号は、端子9がオープン状態の場合に2値符号を「0」とし、端子9がLo信号入力状態の場合に2値符号を「1」とする。このように、本例の場合は、端子9においてオープン状態及びLo信号入力状態のいずれであるかを確認しており、端子9の入力信号としてHi信号は使用していない。
【0016】
電子機器2は、入力信号St(St1,St2)の入力パターンと搭載位置とが関連付けられたテーブル16が記憶された記憶部17を備える。本例のテーブル16は、入力パターンの「00」が搭載位置「A」として登録され、入力パターンの「01」が搭載位置「B」として登録され、入力パターンの「10」が搭載位置「C」として登録され、入力パターンの「11」が搭載位置「D」として登録されている。搭載位置登録部15は、入力信号St1,St2の入力パターンを基にテーブル16を参照して搭載位置を判断する。搭載位置登録部15は、判定した搭載位置を記憶部17に登録する。記憶部17は、書き込まれた搭載位置を記憶する。
【0017】
次に、図3及び図4を用いて、本実施形態の電子機器2の作用について説明する。
図3に示すように、第1電子機器2aは、車体に組み付けられた際、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの両方が「オープン状態」とされる。すなわち、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの両方とも、配線14が接続されない状態とされる。この場合、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの入力信号Stの入力パターンは、「00」となる。このため、第1電子機器2aの搭載位置登録部15は、入力パターンの「00」をテーブル16で確認することにより、入力パターン「00」に対する搭載位置として「A」を認識する。よって、第1電子機器2aの搭載位置登録部15は、第1電子機器2aの搭載位置を「A」と判定し、これを第1電子機器2aの記憶部17に書き込み保存する。例えば、この「A」は、第1電子機器2aにおける「組み付けられた位置に応じた情報」である。
【0018】
第2電子機器2bは、車体に組み付けられた際、第1入力端子9aが「オープン」とされ、第2入力端子9bが「GND」とされる。第2入力端子9bは、GNDに設定されることにより、Loレベル(Lo信号の入力)となる。この場合、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの入力信号Stの入力パターンは「01」となる。このため、第2電子機器2bの搭載位置登録部15は、入力パターンの「01」をテーブル16で確認することにより、入力パターン「01」に対する搭載位置として「B」を認識する。よって、第2電子機器2bの搭載位置登録部15は、第2電子機器2bの搭載位置を「B」と判定し、これを第2電子機器2bの記憶部17に書き込み保存する。例えば、この「B」は、第2電子機器2bにおける「組み付けられた位置に応じた情報」である。
【0019】
第3電子機器2cは、車体に組み付けられた際、第1入力端子9aが「GND」とされ、第2入力端子9bが「オープン」とされる。このとき、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの入力信号Stの入力パターンが「10」となって、テーブル16を参照した判定により、第3電子機器2cの搭載位置が「C」と判定される。よって、第3電子機器2cの搭載位置登録部15は、第3電子機器2cの搭載位置として、「C」を第3電子機器2cの記憶部17に書き込み保存する。例えば、この「C」は、第3電子機器2cにおける「組み付けられた位置に応じた情報」である。
【0020】
第4電子機器2dは、車体に組み付けられた際、第1入力端子9aが「GND」とされ、第2入力端子9bが「GND」とされる。このとき、第1入力端子9a及び第2入力端子9bの入力信号Stの入力パターンが「11」となって、テーブル16を参照した判定により、第4電子機器2dの搭載位置が「D」と判定される。よって、第4電子機器2dの搭載位置登録部15は、第4電子機器2dの搭載位置として、「D」を第4電子機器2dの記憶部17に書き込み保存する。例えば、この「D」は、第4電子機器2dにおける「組み付けられた位置に応じた情報」である。
【0021】
図4に、搭載位置登録部15の動作のまとめを図示する。なお、同図のフローは、例えば電子機器2において電源端子12で電源+Bを入力したことをトリガに開始されることが好ましい。
【0022】
ステップ101において、搭載位置登録部15は、電子機器2の端子9(第1入力端子9a及び第2入力端子9b)において入力信号Stを入力したか否かを判定する。搭載位置登録部15は、入力信号Stを入力すれば、ステップ102に移行し、入力信号Stを入力していなければ、ステップ101で待機する。
【0023】
ステップ102において、搭載位置登録部15は、端子9で入力した入力信号Stの入力パターンを確認する。このとき、搭載位置登録部15は、取得した入力パターンをテーブル16に照らし合わせて、取得した入力パターンに応じた搭載位置を確認する。
【0024】
ステップ103において、搭載位置登録部15は、テーブル16を参照して導き出した搭載位置を、電子機器2の記憶部17に書き込み保存する。これにより、電子機器2に搭載位置が登録される。
【0025】
上記実施形態の電子機器によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電子機器2の搭載位置登録部15は、複数の端子9に入力される入力信号Stを含む端子9への入力状態の組み合わせを基に、電子機器2の搭載位置を判定して登録する。これにより、各電子機器2と搭載位置とを紐付けるにあたり、各々の電子機器2の形状を変更するなどの手間やコストを要する方法をとらずに済む。よって、電子機器2において搭載位置の登録を簡素なものとすることができる。
【0026】
(2)電子機器2には、入力信号Stの入力パターンと搭載位置とが関連づけられたテーブル16が設けられている。搭載位置登録部15は、その入力パターンを基にテーブル16を参照して搭載位置を判断する。よって、電子機器2の端子9で入力した入力信号Stの入力パターンを用いてテーブル16を参照するという簡素な処理により、電子機器2の搭載位置を識別して登録することができる。
【0027】
(3)複数の端子9の各々は、配線14から、Loレベルとして設定された入力信号St、又はHiレベルとして設定された入力信号Stのいずれか一方の信号が入力される。搭載位置登録部15は、複数の端子9に対し、配線14が接続されない状態と、Loレベルの入力信号Stが入力される状態と、Hiレベルの入力信号Stが入力される状態とのうち、少なくとも3つの状態の組み合わせから、搭載位置を判定して登録する。これにより、電子機器2の各端子9を、オープン状態、Lo信号入力状態又はHi信号入力状態のいずれかに設定するという簡素な処理により、入力信号Stの組み合わせを適宜設定することができる。よって、電子機器2の搭載位置の登録の簡素化に一層寄与する。
【0028】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図5図7に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に記載の搭載位置の判定方法を変更した実施例である。よって、第1実施形態と同様の部分はその詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0029】
図5図7に示すように、電子機器2は、搭載位置登録の際に作動するスイッチング素子20を少なくとも1つ備える。本例のスイッチング素子20は、複数(図の例は2つ)設けられ、それぞれ端子9に接続されている。本例のスイッチング素子20は、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bの2つ設けられ、第1スイッチング素子20aが第1入力端子9aに接続され、第2スイッチング素子20bが第2入力端子9bに接続されている。また、電子機器2は、グランド端子13を複数(本例は2つ)備え、一方を第1グランド端子13aとし、他方を第2グランド端子13bとする。スイッチング素子20(端子9)やグランド端子13の個数は、図の例では2つずつとしたが、搭載する電子機器2の個数に応じて適宜変わる。
【0030】
図示する例の場合、電子機器2は、第1電子機器2a、第2電子機器2b及び第3電子機器2cの3つとする。第1電子機器2aが第1搭載位置E1に搭載され、第2電子機器2bが第2搭載位置E2に搭載され、第3電子機器2cが第3搭載位置E3に搭載されるとする。
【0031】
第1搭載位置E1に設置される電子機器2の第1スイッチング素子20aに繋がるポート21aは、第2搭載位置E2に設置される電子機器2の第1グランド端子13aに繋がるポート22cに配線24を介して接続されている。第1搭載位置E1に設置される電子機器2の第2スイッチング素子20bに繋がるポート21bは、第3搭載位置に設置される電子機器2の第1グランド端子13aに繋がるポート23cに配線25を介して接続されている。同様に、第2搭載位置E2では、ポート22aが第1搭載位置E1のポート21cに配線26を介して接続され、ポート22bが第3搭載位置E3のポート23dに配線27を介して接続されている。さらに、第3搭載位置E3では、ポート23aが第1搭載位置E1のポート21dに配線28を介して接続され、ポート23bが第2搭載位置E2のポート22dに配線29を介して接続されている。
【0032】
また、本例の場合、電子機器2をどの搭載位置から順に組み付けていくかの順序と、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bのオンオフの組み合わせとが、予め関連付けされている。本例の電子機器2の搭載の組み付け順は、例えば車体右側前部→車体左側前部→車体右側後部→車体左側後部とする。
【0033】
第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bの両方が「オフ」の場合、搭載位置が車体右側前部とされ、第1スイッチング素子20aが「オン」で第2スイッチング素子20bが「オフ」の場合、搭載位置が車体左側前部とされる。そして、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bの両方が「オン」の場合、搭載位置が車体右側後部とされるように、組み付け順とスイッチング素子20のオンオフの組み合わせとが紐付いている。
【0034】
続いて、図5図7を用いて、本実施形態の電子機器2の作用及び効果について説明する。電子機器2の搭載作業は、例えば車両工場等で実施される。なお、本例の場合も、電子機器2は、搭載位置に組み付けられて電源+Bを入力したタイミングで搭載位置判定を実行する。また、予め決められた組み付け順に沿い、最初に第1電子機器2aを第1搭載位置E1に組み付け、次に第2電子機器2bを第2搭載位置E2に組み付け、続いて第3電子機器2cを第3搭載位置E3に組み付けるとする。
【0035】
図5に示すように、第1電子機器2aが第1搭載位置E1に搭載された場合、第1電子機器2aの第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bのどちらも、何も接続されないオープンのままの状態をとる。このため、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bは、両方とも「オフ」となる。
【0036】
第1電子機器2aの搭載位置登録部15は、搭載位置判定のタイミング(+Bの電源を入力するタイミング)において、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bの両方が「オフ」となることを確認すると、第1電子機器2aの搭載位置を第1搭載位置E1、すなわち車体右側前部と判定する。第1電子機器2aの搭載位置登録部15は、第1電子機器2aの搭載位置として、「第1搭載位置E1:車体右側前部」を第1電子機器2aの記憶部17に書き込み保存する。
【0037】
図6に示すように、第1電子機器2aが搭載された後に第2電子機器2bが第2搭載位置E2に搭載された場合、第2電子機器2bの第1スイッチング素子20aは、第1電子機器2aの第1グランド端子13aと接続されて、第1グランド端子13aから配線26を通じて入力信号Stを入力し、「オン」に切り替わる。一方、第2電子機器2bの第2スイッチング素子20bは、何も接続されないので、オープンのままとなる。よって、このときは、第1スイッチング素子20aが「オン」となり、第2スイッチング素子20bが「オフ」となる。
【0038】
第2電子機器2bの搭載位置登録部15は、搭載位置判定のタイミング(+Bの電源を入力するタイミング)において、第1スイッチング素子20aが「オン」、第2スイッチング素子20bが「オフ」となることを認識する。このため、第2電子機器2bの搭載位置登録部15は、第2電子機器2bの搭載位置を第2搭載位置E2、すなわち車体左側前部と判定する。第2電子機器2bの搭載位置登録部15は、第2電子機器2bの搭載位置として、「第2搭載位置E2:車体左側前部」を第2電子機器2bの記憶部17に書き込み保存する。
【0039】
図7に示すように、第1電子機器2a及び第2電子機器2bの搭載後に第3電子機器2cが搭載された場合、第3電子機器2cの第1スイッチング素子20aは、第1電子機器2aの第2グランド端子13bと接続されて、第2グランド端子13bから配線28を通じて入力信号Stを入力し、「オン」に切り替わる。また、第3電子機器2cの第2スイッチング素子20bは、第2電子機器2bの第2グランド端子13bと接続されて、第2グランド端子13bから配線29を通じて入力信号Stを入力し、「オン」に切り替わる。よって、このときは、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bは、両方とも「オン」となる。
【0040】
第3電子機器2cの搭載位置登録部15は、搭載位置判定のタイミング(+Bの電源を入力するタイミング)において、第1スイッチング素子20a及び第2スイッチング素子20bの両方が「オン」となることを確認すると、第3電子機器2cの搭載位置を第3搭載位置E3、すなわち車体右側後部と判定する。第3電子機器2cの搭載位置登録部15は、第3電子機器2cの搭載位置として、「第3搭載位置E3:車体右側後部」を第3電子機器2cの記憶部17に書き込み保存する。以降、他の電子機器2も同様の手順を踏み、搭載位置が登録される。
【0041】
上記実施形態の電子機器によれば、以下のような効果を得ることができる。
(4)電子機器2に少なくとも1つ(本例は2つ)のスイッチング素子20を設ける。スイッチング素子20は、組付対象7(車両1)に組み付けられた別の電子機器2から、組付の有無に応じた内容の入力信号Stにより、オンオフが切り替わるようにする。搭載位置登録部15は、予め決められた電子機器2の組み付け順と、スイッチング素子20のオンオフの組み合わせとを基に、搭載位置を判定して登録する。このため、電子機器2に設けたスイッチング素子20のオンオフを適宜設定するという簡素な処理により、電子機器2の搭載位置を自ら判定させて登録することができる。よって、電子機器2の搭載位置の登録の簡素化に一層寄与する。
【0042】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・第1実施形態において、Lo信号は、グランド端子13から引き込むことで生成されることに限らず、例えばCPUから出力されるLo信号を用いてもよい。
【0043】
・第1実施形態において、例えば電源+Bを配線14に引き込んで、端子9にHi信号が入力されるようにし、このHi信号を搭載位置判定のパラメータとして使用してもよい。この場合、例えばHi信号とオープン信号との組み合わせにより位置判定をしたり、Hi信号とLo信号との組み合わせにより位置判定をしたりすることができる。
【0044】
・第1実施形態において、端子9を3つ以上設け、オープン、Lo信号及びHi信号の組み合わせから、搭載位置を判定してもよい。
・第1実施形態において、Hi信号は、電源端子12から引き込むことで生成されることに限定されず、例えばCPUから出力されるHi信号としてもよい。
【0045】
・第1実施形態において、電源端子12で入力する入力信号Stや、グランド端子13で入力する入力信号Stを、搭載位置の判定に使用してもよい。
・第2実施形態において、スイッチング素子20は、トランジスタに限定されず、オンオフが切り替わる素子であればよい。
【0046】
・第2実施形態において、スイッチング素子20は、他の電子機器2の第1グランド端子13aや第2グランド端子13bと接続されてオンすることに限定されず、素子をオンできる電圧を引き込むことができる端子と接続されればよい。
【0047】
・第2実施形態において、電子機器2の搭載位置の数は、図示された3つに限定されず、2つでもよいし、4つ以上としてもよい。
・各実施形態において、測距通信は、UWB通信を使用した態様に限定されず、電波を送受信し合って、その伝搬時間から互いの位置関係を測定できる通信であればよい。
【0048】
・各実施形態において、搭載位置判定で使用する端子9の数は、2つに限定されず、3つ以上としてもよい。
・各実施形態において、搭載位置判定は、テーブル16を用いた構成に限らず、例えば計算式を使用するなどの他の構成に変更してもよい。
【0049】
・各実施形態において、端末3は、種にキー機能を有する電子キーや、キー機能を備えた高機能携帯端末などであればよい。
・各実施形態において、外観が同一形状とは、見た目で区別できない形状であればよい。
【0050】
・各実施形態において、電子機器2は、外観が同一形状のものに限定されず、異なる形状をとるものでもよい。
・各実施形態において、電子機器2は、通信機以外の種々の部材が適用可能である。
【0051】
・各実施形態において、組付対象7は、車両1に限定されず、他の機器や装置に変更してもよい。
次に、上記実施形態及び変更例ら把握できる技術的思想について記載する。
【0052】
(イ)外観が同一の形状で複数製造され、組付対象の搭載位置に組み付けて使用される電子機器に対し、その搭載位置を登録する搭載位置登録システムであって、複数の端子と、前記複数の端子に入力される入力信号を含む前記端子への入力状態の組み合わせを基に、前記搭載位置を判定して登録する搭載位置登録部とを備える。
【0053】
以下に技術的思想を記載する。
・組付対象の搭載位置に組み付けて使用される電子機器であって、
複数の端子と、
前記複数の端子に入力される入力信号を含む前記端子への入力状態の組み合わせを基に、前記搭載位置を判定して登録する搭載位置登録部と
を備える電子機器。
【0054】
・前記入力信号の入力パターンと前記搭載位置とが関連付けられたテーブルが記憶された記憶部を備え、
前記搭載位置登録部は、前記入力パターンを基に前記テーブルを参照して前記搭載位置を判断する。
【0055】
・前記複数の端子の各々は、配線が接続されない状態と、前記配線が接続される状態とがあり、
前記配線が接続される状態では、前記配線から、Loレベルとして設定された入力信号、又はHiレベルとして設定された入力信号のいずれか一方の信号が入力され、
前記搭載位置登録部は、前記複数の端子に対し、前記配線が接続されない状態と、前記Loレベルとして設定された前記入力信号が入力される状態と、前記Hiレベルとして設定された前記入力信号が入力される状態とのうち、少なくとも3つの状態の組み合わせから、搭載位置を判定して登録する。
【0056】
・前記端子に接続され、前記組付対象に組み付けられた別の電子機器から、組み付けの有無に応じた内容の前記入力信号によりオンオフが切り替わるスイッチング素子を少なくとも1つ備え、
前記搭載位置登録部は、予め決められた前記電子機器の組み付け順と、前記スイッチング素子のオンオフの組み合わせとを基に、前記搭載位置を判定して登録する。
【符号の説明】
【0057】
1…車両、2…電子機器、9…端子、9a…第1端子、9b…第2端子、7…組付対象、14…配線、14a,14b…配線、15…搭載位置登録部、16…テーブル、20…スイッチング素子、20a…第1スイッチング素子、20b…第2スイッチング素子、St、St1、St2…入力信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7