(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】トンネルの防災設備
(51)【国際特許分類】
A62C 2/06 20060101AFI20240307BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20240307BHJP
E21F 5/00 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A62C2/06 502
A62C3/00 J
E21F5/00
(21)【出願番号】P 2023102177
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2019137341の分割
【原出願日】2019-07-26
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-101928(JP,A)
【文献】特開平10-127809(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0039931(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105935474(CN,A)
【文献】特開2005-245683(JP,A)
【文献】特開2004-313753(JP,A)
【文献】特開2013-202102(JP,A)
【文献】特開2002-035147(JP,A)
【文献】特開平11-294098(JP,A)
【文献】特表2001-505118(JP,A)
【文献】特開2004-190322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
E21F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁面を略矩形型としたトンネルの長手方向に沿って配置され、火災時に仕切シートを展開して、トンネル内空間を、少なくとも火源位置を含む火災側の領域と、火災でない側の領域とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、固定端と可動端を有し、前記固定端と前記可動端の初期位置が前記トンネルの長手方向に沿うようにトンネル側壁面の上端付近に配置されたことを特徴とするトンネルの防災設備。
【請求項2】
請求項1記載のトンネルの防災設備に於いて、
前記仕切手段は、通常時は前記可動端を前記初期位置に保持し、火災時に前記固定端を中心に前記可動端をトンネル幅方向で前記固定端に対向する所定の旋回目標位置まで旋回し、当該旋回目標位置まで旋回した状態で、前記仕切シートを展開することにより前記トンネル内空間を前記火災側の領域と前記火災でない側の領域とに仕切ることを特徴とするトンネルの防災設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内での火災に対し避難環境を確保しながら消火抑制するトンネルの防災設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用のトンネル内部は、
図14に示すように、水噴霧設備が設けられており、火災検知器200が火災を検知すると、火災場所に対応した放水区画の自動弁装置202を起動してトンネル天井側に設けた水噴霧ヘッド204から消火用水を散布し、火災によるトンネル躯体等の損傷を抑制防止し、併せて火災の消火抑制を可能としている。
【0003】
また監視員通路206に沿ったトンネル側壁には例えば50メートル間隔で消火栓装置208が設置されており、火災時に消火栓扉を開いて内部のノズル付きホースを取り出し、火災場所近傍まで引き出してから火源にノズルを向けて放水することで消火を行えるようにしている。更に、トンネル内には照明装置210やジェットファンを用いた換気装置212が設置されている。
【0004】
しかしながら、このようなトンネル防災設備においては、一度火災が発生すると、トンネル内に煙が充満し、特に天井に拡散した煙が徐々に下降して視界が遮られ、煙の中で監視員通路から非常口を通って避難することは困難を伴い、安全に避難できない可能性が残る。
【0005】
この問題を解決するため、トンネルの天井面又は側壁面の道路を横切る方向に複数のヘッド列を配置し、火災時に 、火災場所の両側に位置するヘッド列からの水噴射により水幕(ウォータースクリーン)を形成して仕切り、火災の抑制に加え、火災による煙の拡散を抑えて安全な避難を可能とする防火防煙設備が提案されている(特許文献1,2)。
【0006】
また、トンネル長手方向にカーテン巻出し装置を配列し、火災時にカーテン巻出し装置から道路に向けて防火カーテンを下ろして監視員通路を道路側から仕切って避難空間を形成し、安全に避難可能とする設備も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-313753号公報
【文献】特開2013-202102号公報
【文献】特開2002-035147号公報
【文献】特開2005-245683号公報
【文献】特開2004-313753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように火災場所を水幕の形成により仕切る従来のトンネルの防災設備にあっては、防火カーテンのようにトンネル空間を良好に仕切ることができないことから、特に火災の規模が大きくなると水幕の隙間を通って煙が拡散し、安全な避難環境を継続的に維持できない場合がある。
【0009】
また、監視員通路と道路側を防火カーテンにより仕切る従来の防災設備は、火災時に安全な避難経路を確保すことは可能であるが、火災の規模が大きくなると火災による熱や炎を直接受け続けて防火カーテンが焼損して破れ、破れた箇所から避難経路に煙が流入して避難経路が失われる可能性がある。
【0010】
本発明は、トンネル内の火災発生領域を確実に仕切って遮煙、遮熱、遮炎し、避難環境を確保しながら消火抑制を可能とするトンネルの防災設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(トンネルの防災設備)
本発明は、トンネルの防災設備であって、
内壁面を略矩形型としたトンネルの長手方向に沿って配置され、火災時に仕切シートを展開して、トンネル内空間を、少なくとも火源位置を含む火災側の領域と、火災でない側の領域とに仕切る仕切手段を備え、
仕切手段は、固定端と可動端を有し、固定端と可動端の初期位置がトンネルの長手方向に沿うようにトンネル側壁面の上端付近に配置されたことを特徴とする。
【0012】
(旋回型の仕切手段)
仕切手段は、通常時は可動端を初期位置に保持し、火災時に固定端を中心に可動端をトンネル幅方向で固定端に対向する所定の旋回目標位置まで旋回し、当該旋回目標位置まで旋回した状態で、仕切シートを展開することによりトンネル内空間を火災側の領域と火災でない側の領域とに仕切る。
【発明の効果】
【0013】
(トンネルの防災設備の効果)
本発明は、トンネルの防災設備であって、内壁面を略矩形型としたトンネルの長手方向に沿って配置され、火災時に仕切シートを展開して、トンネル内空間を、少なくとも火源位置を含む火災側の領域と、火災でない側の領域とに仕切る仕切手段を備え、仕切手段は、固定端と可動端を有し、固定端と可動端の初期位置がトンネルの長手方向に沿うようにトンネル側壁面の上端付近に配置されたため、火災時に、トンネル内空間を車線方向で火災側の領域と火災でない側の領域とに分断し、火災でない側(車線方向のトンネル内空間の片側)の領域を遮煙、遮熱及び遮炎し、安全な避難環境を確保することを可能とする。
【0014】
(旋回型の仕切手段の効果)
また、仕切手段は、通常時は可動端を初期位置に保持し、火災時に固定端を中心に可動端をトンネル幅方向で固定端に対向する所定の旋回目標位置まで旋回し、当該旋回目標位置まで旋回した状態で、仕切シートを展開することによりトンネル内空間を火災側の領域と火災でない側の領域とに仕切るため、仕切手段は旋回型のクレーンとして機能し、火災時にトンネル長手方向に沿った初期位置からトンネル幅方向の旋回目標位置に旋回して仕切シートを展開することにより、トンネル内空間を火災側の領域と火災でない側の領域に仕切って両領域を簡単且つ確実に分断することができ、更に、火源が存在する火災側の領域の車線方向上流側と下流側の2箇所で仕切シートを展開して仕切ることで閉鎖された仕切区画を簡単且つ確実に形成することができる。
【0015】
また、仕切手段は、通常状態(初期状態)で、トンネル長手方向に沿ったトンネル側壁面の上端付近の初期位置にあることから、車両の流れを妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】トンネル内に設置した防災設備の実施形態を示した説明図
【
図2】火災時に防災設備の仕切シートを展開してトンネル内空間を仕切った状態を示した説明図
【
図3】可動端が旋回目標位置まで旋回した旋回型仕切装置のシート展開前の状態を示した説明図
【
図6】監視員通路用仕切装置の実施形態を示した説明図
【
図8】旋回目標位置まで旋回した旋回型仕切装置、天井用仕切装置、監視員通路用仕切装置及び側壁用仕切装置の仕切シートを展開した状態を示した説明図
【
図9】防災受信盤による防災設備の制御系統を示したブロック図
【
図10】通常状態でのトンネル内の防災設備を示した説明図
【
図11】トンネル内の火災時に火源位置の上流側と下流側の2箇所を仕切って仕切区画を形成する防災設備の動作状態を示した説明図
【
図12】トンネル入口を閉鎖するように仕切シートを展開する防災設備の動作状態を示した説明図
【
図13】道路幅の広いトンネルを対象とした防災設備の実施形態を示した説明図
【
図14】従来のトンネル内の防災設備を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[防災設備]
図1はトンネル内に設置した防災設備の実施形態を示した説明図、
図2は火災時に防災設備の仕切シートを展開してトンネル内空間を仕切った状態を示した説明図である。なお、
図2の仕切シートは透過状態としてトンネル内が見えるように示している。また、トンネル10内には、
図14の従来例に示したと同様に火災検知器、水噴霧ヘッド、消火栓装置、照明装置、換気装置等が設けられるが、火災検知器92と消火栓装置24を除き図示を省略している。
【0018】
[実施形態の基本的な概念]
本実施形態によるトンネルの防災設備の基本的概念は、道路12を有するトンネル10の防災設備であって、第1の仕切手段として機能する例えば旋回型仕切装置16は、一端を固定端16bとして軸支し、他端を可動端16cとしており、固定端16bと可動端16cの初期位置がトンネル長手方向に沿うように、つまり、本体長手方向とトンネル長手方向とが揃うように監視員通路14の直上付近に配置され、通常時は、
図1に示すように、可動端16cを初期位置に保持し、火災時には、
図2に示すように、固定端16bを中心に可動端16cをトンネル長手方向に略直交するトンネル幅方向の所定の旋回目標位置(ストッパー17の係止位置)に旋回した状態で、つまり、本体長手方向とトンネル幅方向が揃うように旋回した状態で、仕切シート16aを展開し、トンネル長手方向で少なくとも火源100が存在する位置領域 (以下「火源位置」という)を含む火災側の領域と火災ではない側の領域に仕切り、更に、第2の仕切手段として機能する天井用仕切装置18、監視員通路用仕切装置20及び側壁用仕切装置22は仕切シート18a,20a,22aを展開し、旋回型仕切装置16の仕切シート16aの展開で火災側の領域と火災でない側の領域とに仕切ったときに生ずるすき間領域を仕切るというものである。
【0019】
これにより、火災時に、トンネル内空間をトンネル長手方向で火災側の領域と火災でない側の領域とに分断し、トンネル内空間の火災でない側の領域に対し遮煙、遮熱及び遮炎を行って安全な避難環境を確保することができる。
【0020】
また、仕切シート16a,18a,20a,22aの展開によりトンネル内空間を火源位置を含む火災側の領域と火災でない側の領域に仕切った状態で、火災側の領域の、火源位置等に消火ヘッド26から消火剤として例えば消火用水を散布するものである。これにより火災でない側の領域に対する遮煙、遮熱及び遮炎を行って安全な避難環境を確保しながら、火災側の領域に消火用水を散布して火災を消火抑制することができる。火災側でない領域の水損も抑える。
【0021】
ここで、トンネル長手方向は道路12の車線方向と平行であり、車線方向におけるトンネル入口側を上流又は上流側とし、トンネル出口側を下流又は下流側としている。
【0022】
また、火災時に、火源位置を含む火災側の領域の上流側及び下流側の少なくとも2箇所で仕切シート16a,18a,20a,22aを展開して仕切ることにより、トンネル内空間に火源位置を含む仕切区画15を形成するものである。このような仕切区画15の形成でトンネル内空間に火源位置を含む閉鎖された領域(区画)を形成することができ、トンネル長手方向(車線方向)で仕切区画15の外側となる両側の火災でない側の領域に対する遮煙、遮熱及び遮炎を行い、安全な避難環境を確保することができる。
【0023】
また、仕切区画15内に消火ヘッド16から消火用水を散布するものであり、これによりトンネル長手方向(車線方向)で仕切区画15の外側となる両側の火災でない側の領域に対する遮煙、遮熱及び遮炎を行って安全な避難環境を確保しながら、閉鎖された火源100が存在する位置を含む仕切区画15内に消火用水を散布することで、迅速且つ確実に火災を消火抑制することができる。また、仕切区画15の形成で消火剤散逸を抑えるので、仕切区画15の外側の水損を防止し、区画内の消火抑制効果も高まる。以下、詳細に説明する。
【0024】
[トンネルの防災設備の概要]
図1に示すように、本実施形態の防災設備は、トンネル10内の車両が通行する道路12の一方の路肩に沿って避難時にも使用する監視員通路14が設けられ、監視員通路14の直上付近、例えば監視員通路14における道路12側の略垂直な法面14aの直上付近のトンネル内壁面に、道路12の車線方向すなわちトンネル長手方向に沿うように第1の仕切手段として機能する旋回型仕切装置16を所定間隔で配置し、このとき旋回型仕切装置16は仕切シートがロール状に巻かれた状態で保持している。
【0025】
ここで、旋回型仕切装置16は、トンネル内壁面に一端を固定端16bとして本体を軸支し、他端を可動端16cとし、通常状態(初期状態)で固定端16bと可動端16cを結ぶ方向すなわち図示の旋回型展開装置16の本体の長手方向とトンネル長手方向(車線方向)とが略平行になるように配置されている。このときの可動端16cが位置する位置が初期位置である。
【0026】
一方、火災時には、
図2に示すように、火源100が存在する火源位置を含む火災側の領域(火災検知器92が火災を検知したエリア)の上流側と下流側の2箇所に位置する旋回型仕切装置16は、固定端16bを中心に可動端16cを所定の旋回目標位置、例えばトンネル幅方向において固定端16cに略対向するトンネル側壁面に設置したストッパー17の位置まで旋回する。このため旋回型仕切装置16の可動端16cの旋回目標位置は、例えばトンネル幅方向において固定端16bの位置に対し道路12を挟んで対向した壁面付近の位置である。
【0027】
続いて旋回目標位置まで旋回した旋回型仕切装置16は、ロール状に巻かれて保持した仕切シートの保持を解除してシート下辺側を落下させることで仕切シート16aを展開してトンネル内の火源位置を含む所定の領域を仕切り、トンネル空間内の少なくとも火源位置を含む火災側の領域を上流側と下流側の2箇所で仕切って仕切区画15を形成する。
【0028】
旋回型仕切装置16を旋回した状態で仕切シート16aを展開して仕切区画15を形成した場合、仕切シート16aのトンネル幅方向の両側及び上部(天井側)にすき間領域が発生する。このすき間領域を仕切るため、
図1に示すように、トンネル幅方向に沿ったトンネル天井部内壁面に天井用仕切装置18、また、トンネルの両側壁面にはそれぞれ監視員通路用仕切装置20及び側壁用仕切装置22を配置し、
図2に示すように、それぞれの仕切シート18a,20a,22aを展開することで、仕切シート16aの左右及び上部(天井側)に生じたすき間領域を閉鎖する。このようにして、天井用仕切装置18、監視員通路用仕切装置20、側壁用仕切装置22はそれぞれ第2の仕切手段として機能する。
【0029】
ここで、図示の2車線のトンネル10の場合、トンネル幅方向は例えば約12メートル程度となり、このため旋回型仕切装置16の固定端16bから可動端16cまでの長さは、監視員通路14の通路幅を除いた約10メートル程度の長さとなる。また、トンネル長手方向での旋回型仕切装置16の設置間隔は例えば25メートル間隔とする。なお、トンネル長手方向の旋回型仕切装置16の設置間隔は、旋回型仕切装置16の全体長さを超える範囲で必要に応じて適宜の設置間隔とすることを妨げない。
【0030】
また、旋回型仕切装置16をトンネル内空間に1台だけ設置しても良い。例えばトンネル長が短い場合等には、旋回型仕切装置16を、例えばトンネル長手方向の中央付近に1台だけ設置し、これに併せて天井用仕切装置18、監視員通路用仕切装置20及び側壁用仕切装置22を設置し、火災時にトンネル内空間を上流側と下流側に仕切ることができるようにする。
【0031】
また、トンネル長手方向の監視員通路14側の側壁面に沿って火災検知器25が所定間隔、例えば25メートル間隔で設置され、火災検知器92は上流側用と下流側用の2組の火災検知部を備え、隣接して配置される他の火災検知器との検知エリアが相互補完的に重複するように、即ち1台の火災検知器92の上流側の検知エリアと、この上流側に隣接する火災検知器92の下流側の検知エリアとが重複するように、連続的に配置され、自己の監視エリア(検知エリア)内で起きた火災炎からの赤外線を観測して火災を検知する。
【0032】
本実施形態では、旋回型仕切装置16の設置間隔と火災検知器92の設置間隔を同じ25メートル間隔としており、火災検知器92による火災の検知エリアは、
図2に示す火災側の領域に対応した概念となる。
【0033】
[旋回型仕切装置]
図3は可動端が旋回目標位置まで旋回した旋回型仕切装置のシート展開前の状態を示した説明図、
図4は旋回型仕切装置の実施形態を示した説明図であり、
図4(A)に通常状態を示し、
図4(B)に仕切シートの展開状態を示し、
図4(C)に下側から見た平面を示す。
【0034】
(旋回型仕切装置の構造)
旋回型仕切装置16は、
図3に示すように、本体28と仕切シート16aを含む装置で構成される。本体28は所謂旋回クレーンとして動作し、トンネル内壁面に設置された旋回駆動部30により固定端16bを中心に可動端16cを旋回自在としており、本体28の長手方向が
図1に示したトンネル長手方向と略平行になるように、可動端16cを初期位置から、固定端16bの位置に対し道路12を挟んで対向する壁面位置となる旋回目標位置に旋回させる。
【0035】
ここで、本体28の固定端16bを軸支する旋回駆動部30は例えば水圧駆動型のロータリーアクチュエータ等を使用する。また、電動型のロータリーアクチュエータを使用しても良いし、ワイヤーロープの巻き取り・巻出しによる旋回駆動機構としても良い。
【0036】
図4(A)に示すように、トンネル内壁面に固定部31で固定した旋回駆動部30により旋回する本体28の下部には筐体32を固定し、筐体32に仕切シート16aの一端をシート固定部35により固定し、仕切シート16aはロール状に巻き回された状態で筐体32の下側にワイヤ又はロープを用いたシート保持部材34により複数箇所で吊下げ状態に保持している。
【0037】
仕切シート16aは、防火性、耐火性又は耐熱性を有する布状体であり、例えば1200℃の高熱に耐えることができ、耐火シート、耐火カーテン、耐火幕等とも呼ばれるシートである。なお、仕切シート16aとしては、1200℃以下であっても、例えば数百度以上の耐熱性能を持つものであれば良い。また、仕切シート16aは遮熱性、遮炎性、遮煙性等を有する。
【0038】
ワイヤ又はロープを用いたシート保持部材34は一端が筐体32に固定され、他端はロール状に巻かれた仕切シート16aの下側を通して筐体32に設けられたシート展開部36に着脱自在に保持され、通常は抜け止めされている。シート展開部36は、防災受信盤からの制御信号による例えばソレノイドの通電によりシート保持部材34の保持を解除する。
【0039】
旋回型仕切装置16は、防災受信盤からの制御信号によりシート展開部36を作動するとシート保持部材34の一端の保持が解除され、
図4(B)に示すように、仕切シート16aの一辺(上辺)が筐体32に固定された状態で反対側の他辺(下辺)側が自重により落下して上下方向に展開する。なお、仕切シート16aの下辺側には所定の重り部材を設けても良く、このようにすれば、仕切シート16aの下辺側の落下、また仕切シート16aの展開後の安定を補助することができる。
【0040】
ここで、
図4(B)のように展開した仕切シート16aの上下の長さは、旋回型仕切装置16の設置高さよりも長めに採寸しておくようにする。これは道路12に車両等があっても、落下展開したときに仕切シート16aの弛みにより隙間ができにくいようにするためである。
【0041】
なお、旋回型仕切装置16としては、仕切シート16aを回転軸に巻き、回転軸のラッチを解除して仕切シート16aを展開させる構造としてもよいし、モータ駆動により巻出し巻き取りする構造としても良い。また、旋回型仕切装置16の仕切シート16aを蛇腹状に折り畳んだ状態で保持し、保持を解除して展開させる構造としてもよい。
【0042】
(冷却剤散布ヘッド)
図4に示すように、旋回型仕切装置16には、筐体32の両側に取り出された配管に冷却剤散布手段である冷却剤散布ヘッド38を設けている。冷却剤散布ヘッド38に対しては開閉弁40を介して筐体32内を通した給水配管42を接続し、ポンプ設備からの供給を受けて、
図4(B)のように展開した仕切シート16aのシート面に冷却剤として例えば消火用水(冷却水)を散布する。
【0043】
また、仕切シート16aは布織目の表面に樹脂等をコーティングしたものとコーティングしていないものがあり、非コーティングの仕切シート16aを使用した場合、冷却剤散布ヘッド38から散布された冷却水は、展開した仕切シート16aのシート面を濡らし、散布した冷却水を布の織目構造をもつ仕切シート16aに含浸され、シート面に沿って流れ落ちる。
【0044】
このような冷却水の含浸とシート面に沿った流下により、仕切シート16aの布織目の隙間が閉鎖され、遮煙性が向上し、仕切シート16aの外側への煙の拡散が抑制される。また、仕切シート16aが冷却され、遮炎性と遮熱性が高められる。また、熱による仕切シート16aの損傷が抑制される。
【0045】
なお、展開した仕切シート16aに対する冷却水の散布は、シート面の内側又は外側に冷却水を散布するようにしても良いし、シート面の内側と外側の両方に冷却水を散布するようにしても良い。ここでは、火災側の領域に面したシート面を内側とし、その反対側のシート面を外側とする。
【0046】
また、本実施形態にあっては、
図3に示すように、旋回型仕切装置16に上向きに冷却剤散布ヘッド38を設け、天井用仕切装置18により展開した仕切シート18aのシート面にも冷却剤として消火用水(冷却水)を散布可能としている。
【0047】
また、旋回型仕切装置16の両側でトンネル側壁側へ向けて斜め下向きに冷却剤散布ヘッド38を設けており、監視員通路用仕切装置20及び側壁用仕切装置22により展開した仕切シート20a,22aのシート面に冷却剤として消火用水(冷却剤)を散布可能としている。
【0048】
[天井用仕切装置]
図5は天井用仕切装置の実施形態を示した説明図であり、
図5(A)はシート保持状態を示し、
図5(B)はシート展開状態を示す。
【0049】
図5に示すように、天井用仕切装置18は、トンネル天井側壁面のトンネル長手方向に直交するトンネル幅方向に沿った所定位置に配置される。天井用仕切装置18は、天井中心線a-a’に対しトンネル幅方向両側(図示で左右両側)に分けて設けられ、扇構造を利用して仕切シート18aを展開する。なお、
図5は天井中心線a-a’の監視員通路側(図示で左側)に設けた天井用仕切装置18の構造を示している。
【0050】
天井用仕切装置18は、監視員通路側(図示で左側)を例にとると、トンネル天井の壁面に沿って下側に開いた収納ケース44を固定し、収納ケース44の図示で左下端の軸48に、複数本の骨アーム46、例えば3本の骨アーム46の一端を回動自在に軸支している。骨アーム46は天井側の壁面アーチと略同じ湾曲形状であり、
図5(B)の展開状態に示すように、骨アーム46を仕切シート18aに固定している。
【0051】
これにより骨アーム46を収納ケース44に収納するために軸48を中心に上向きに回動させると、仕切シート18aは骨アーム46の間の点線で示す折り目52で折り畳まれながら収納ケース44に収納できる。
【0052】
収納ケース44内に畳み込まれた仕切シート18aの保持はラッチピン50(シート保持手段)で行う。ラッチピン50は収納ケース44の外側面の一方に配置したソレノイド駆動部(図示せず)に出没自在に設けている。
【0053】
図5(A)に示すように、収納ケース44に畳み込まれた仕切シート18aの骨アーム46の先端下側にラッチピン50が位置し、このラッチにより仕切シート18aを折り畳み状態で収納ケース44内に保持している。
【0054】
ラッチピン50は防災受信盤からの制御信号によるソレノイド(シート展開手段又はシート保持解除手段)の駆動によりソレノイド駆動部に引き込まれ、これにより骨アーム46の先端の保持を解除し、骨アーム46が自重により軸48を中心に下向きに回動し、
図4(B)に示すように、仕切シート18aは扇が開くように展開し、旋回型仕切装置16の仕切シート16aを展開したときに生じる天井側のすき間領域を仕切る。
【0055】
なお、仕切シート18aを確実に展開するため、軸48に骨アーム46を展開方向に付勢するコイルバネ等の付勢手段を設けるようにしても良い。
【0056】
また、
図4(B)に示す仕切シート18aの展開状態で最下部に位置する骨アーム46の軸48側には、骨アーム46と旋回型仕切装置16との間に生ずる円弧状のすき間領域を仕切るシート張出部18bを設けている。
【0057】
また、監視員通路と反対側(図示で右側)の天井用仕切装置18については、
図5に示した図示で左側の扇構造を天井中心線a-a’に対し線対称としたものが設けられるが、図示を省略している。
【0058】
なお、本実施形態は、扇構造を利用した天井用仕切装置18を示しているが、これに限定されず、通常時は仕切シートを天井面側に非展開で保持し、火災時に仕切シートを展開するものであれば、適宜の構造を含む。
【0059】
[監視員通路用仕切装置]
図6は監視員通路用仕切装置の実施形態を示した説明図であり、
図6(A)にシート保持状態を示し、
図6(B)にシート展開状態を示す。
【0060】
図6(A)に示すように、監視員通路用仕切装置20は、監視員通路14側の側壁面に沿った所定位置にトンネル幅方向で沿うように所定位置に配置される。例えば、監視員通路用仕切装置20は、監視員通路14側のトンネル側壁面に沿ってトンネル内部側に開いた収納ケース54を配置し、
図6(B)に示す展開状態にある仕切シート20aの壁面側の周縁を収納ケース54内に固定し、仕切シート20aの道路側の周縁から畳込むことで収納ケース54に収納している。
【0061】
収納ケース54内に畳み込まれた仕切シート20aの保持は、最上端の軸53に続いて配置した複数のラッチピン56(シート保持手段)で行う。ラッチピン56は収納ケース54の外側面の一方に配置したソレノイド駆動部(図示せず)に出没自在に設けている。
【0062】
図6(A)に示すように、収納ケース54に畳み込まれた仕切シート20aのケース開口側(図示で右側)にラッチピン56が位置し、仕切シート20aを折り畳み状態で収納ケース54内に保持している。
【0063】
ラッチピン56は防災受信盤からの制御信号によるソレノイド(シート展開手段又はシート保持解除手段)の駆動によりソレノイド駆動部に引き込まれ、これにより仕切シート20aの保持が解除され、
図6(B)に示すように、仕切シート20aをトンネル幅方向に展開し、旋回型仕切装置16の仕切シート16aを展開したときに生ずる監視員通路14側のすき間領域を仕切る。
【0064】
また展開した仕切シート20aにはスリット58が設けられ、監視員通路14に対する人の通過を容易とする。
【0065】
また、
図6(B)の展開状態に示すように、収納ケース54の上部の軸53に付勢アーム55の一端がコイルスプリング等によりトンネル幅方向に向けて付勢された状態で軸支されており、付勢アーム55には仕切シート20aの図示で右側上縁が固定され、
図6(A)のシート保持状態で付勢アーム55は一番上のラッチピン56により保持されている。
【0066】
防災受信盤からの制御信号によるソレノイドの駆動によりラッチピン56がソレノイド駆動部に引き込まれると付勢アーム55の保持が解除されて軸53を中心にトンネル幅方向に回動し、これにより収納ケース54に畳み込まれていた仕切シート20aを、監視員通路14を仕切るように展開することができる。ここで、付勢アーム55はラッチピン56を駆動するソレノイドと共にシート展開手段又はシート保持解除手段を構成している。
【0067】
なお、本実施形態の監視員通路用仕切装置20としては、通常時は仕切シートを監視員通路14側の壁面に非展開で保持し、火災時に仕切シートを展開するものであれば、適宜の構造を含む。
【0068】
[側壁用仕切装置]
図7は側壁用仕切装置の実施形態を示した説明図であり、
図7(A)にシート保持状態を示し、
図7(B)にシート展開状態を示す。
【0069】
図7(A)に示すように、側壁用仕切装置22は、監視員通路14とは反対側の側壁面に沿うように所定位置に配置される。例えば側壁用仕切装置22は、監視員通路14の反対側のトンネル壁面に沿ってトンネル幅方向に開いた収納ケース60を配置し、
図7(B)に示す展開状態にある仕切シート22aの壁面側の周縁を収納ケース60内に固定し、仕切シート22aの道路側の周縁から点線で示す折り目64で畳み込むことで収納ケース60に収納している。
【0070】
収納ケース60内の畳み込まれた仕切シート22aの保持は、最上端の軸63に続いて配置した複数のラッチピン62(シート保持手段)で行う。ラッチピン62は収納ケース60の外側面の一方に配置したソレノイド駆動部(図示せず)に出没自在に設けている。
【0071】
図7(A)に示すように、収納ケース60に畳み込まれた仕切シート22aのケース開口側(図示で左側)にラッチピン62が位置し、仕切シート22aを折り畳み状態で収納ケース60内に保持している。
【0072】
ラッチピン62は防災受信盤からの制御信号によるソレノイド(シート展開手段又はシート保持解除手段)の駆動によりソレノイド駆動部に引き込まれ、これにより仕切シート22aの保持が解除され、
図7(B)に示すように、仕切シート22aをトンネル幅方向に展開し、旋回型仕切装置16の仕切シート16aを展開したときに生ずる(仕切れない)監視員通路14側の反対側の壁面との間のすき間領域を仕切る。
【0073】
また、
図7(B)の展開状態に示すように、収納ケース60の上部の軸63に付勢アーム65の一端がコイルスプリング等によりトンネル幅方向に向けて付勢された状態で軸支されており、付勢アーム65には仕切シート22aの図示で左側上縁が固定され、
図7(A)のシート保持状態で付勢アーム65は一番上のラッチピン62により保持されている。
【0074】
防災受信盤からの制御信号によるソレノイドの駆動によりラッチピン62がソレノイド駆動部に引き込まれると付勢アーム65の保持が解除されて軸63を中心にトンネル幅方向に回動し、これにより収納ケース60に畳み込まれていた仕切シート22aを、監視員通路14側の反対側の側壁面との間のすき間領域を仕切る位置に展開することができる。ここで、付勢アーム65はラッチピン62を駆動するソレノイドと共にシート展開手段又はシート保持解除手段を構成している。
【0075】
なお、本実施形態の側壁用仕切装置22としては、通常時は仕切シートを監視員通路14の反対側の壁面の収納ケース60に故展開で保持し、火災時に仕切シートを展開するものであれば、適宜の構造を含む。
【0076】
[トンネル空間の仕切り]
図8は旋回目標位置まで旋回した旋回型仕切装置、天井用仕切装置、監視員通路用仕切装置及び側壁用仕切装置の仕切シートを展開した状態を示した説明図である。
【0077】
図8に示すように、旋回型仕切装置16は旋回状態で可動端16cを固定端16bに対向したトンネル幅方向の旋回目標位置にストッパー17で係止され、仕切シート16aを展開してトンネル内空間を幅方向の複数領域に仕切る。天井用仕切装置187は扇構造の仕切シート18aを展開し、仕切シート16aの天井側のすき間領域を仕切る。
【0078】
監視員通路用仕切装置20は仕切シート20aを展開し、仕切シート16aの展開で監視員通路14側に生じたすき間領域を仕切る。側壁用仕切装置22は仕切シート22aを展開し、仕切シート16aの展開で監視員通路14とは反対側の側壁との間に生じたすき間領域を仕切る。
【0079】
また、展開した仕切シート16a,18a,20a,22aのシート面の内側と外側の一方又は両方には冷却剤散布ヘッド38から消火用水を冷却水として散布する。
【0080】
[防災設備の制御系統]
(制御系統の概要)
図9は防災受信盤による防災設備の制御系統を示したブロック図である。
図9に示すように、防災受信盤70からはトンネル10に対し信号線90を引き出して複数の火災検知器92(92-1.92-2,92-3・・・)を接続している。
【0081】
火災検知器92はトンネル長手方向の壁面に沿って例えば25メートル間隔で配置され、隣接して配置される火災検知器との検知エリアが相互補完的に重複するように連続的に配置され、火源位置を含む火災側の領域である検知エリア内の火災炎からの赤外線を観測して火災を検知する。火災検知器92には固有のアドレスが設定され、防災受信盤70との間で所定の伝送方式により信号を送受信する。
【0082】
また、防災受信盤70に対しては、換気設備72、警報表示板設備74、ラジオ再放送設備76、テレビ監視設備78及び照明設備80、IG子局設備82、ポンプ設備88等が設けられている。IG子局設備82は、防災受信盤70と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備86とをネットワーク84を経由して結ぶ通信設備である。
【0083】
また、トンネル10には、非常用設備として、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置24が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備などが設置されるが、図示を省略している。
【0084】
(区画防災制御の概要)
防災受信盤70から引き出された信号線93には、旋回型仕切装置16の設置に対応した区画に分けて区画防災設備94(94-1,94-2,94-3・・・)が接続されている。
【0085】
区画防災設備94-1に代表して示すように、区画防災設備94-1には中継器96を設け、中継器96に対し旋回型仕切装置16に設けたラッチ解除部36(
図4参照)、天井用仕切装置18に設けたラッチピン50(
図5参照)のソレノイド、監視員通路用仕切装置20に設けたラッチピン56(
図6参照)のソレノイド、側壁用仕切装置22に設けたラッチピン62(
図7参照)のソレノイド、消火ヘッド26の開閉弁98、及び冷却剤散布ヘッド38の開閉弁40を接続している。
【0086】
中継器96には固有のアドレスが設定され、火災検知器92と同様に、防災受信盤70との間で所定の伝送方式により信号の送受信を行う。
【0087】
(火災側領域の仕切制御)
図10は通常状態のトンネル内の防災設備を示した説明図であり、
図10(A)にトンネル横断面(
図10(B)のx-x矢視断面)を示し、
図10(B)にトンネル長手方向の縦断面を示し、
図10(C)にトンネル長手方向の平面断面を示す。
【0088】
図10に示すように、トンネル10内には、旋回型仕切装置16が固定端16bと可動端16cを結ぶ方向をトンネル長手方向に略平行とする初期状態で監視員通路14の直上付近のトンネル内壁面に保持されており、トンネル長手方向の複数の区画A(A1,A2,A3・・・)ごとに旋回型仕切装置16(16-1,16-2,16-3・・・)を配置している。また、各区画に対応して火災検知器92が配置されている。
【0089】
各区画には、旋回型仕切装置16、天井用仕切装置18、監視員通路用仕切装置20、側壁用仕切装置22、消火ヘッド26が設けられ、
図9に示した区画防災設備94を構成している。そして、これらの仕切装置は、区画の境界に対応して配置されている。
【0090】
図11はトンネル内の火災時に火源位置の上流側と下流側の2箇所を仕切って仕切区画を形成する防災設備の動作状態を示した説明図あり、
図11(A)にトンネル横断面(
図11(B)のx-x矢視断面)を示し、
図11(B)にトンネル長手方向の縦断面を示し、
図11(C)にトンネル長手方向の平面断面を示す。なお、
図11(A)は仕切シート16a,18a,20a,22aの展開状態を分かり易くするため、仕切シート16aは斜線で示し、仕切シート16aのすき間領域を仕切る仕切シート18a,20a,22aは砂地で示している。
【0091】
図11に示すように、トンネル10の例えば区画A2の道路12上での車両事故等により、火源100で示す火災が発生したとすると、
図9に示した防災受信盤70は、火災検知器92からの火災検知信号により火源位置に対応する火災検知エリアとなる区画A2の火災を判別する。
【0092】
なお、ここでは、簡単のため、各区画(区画防災設備)に対応する火災検知器92が、当該区画を検知エリアとして火災を監視しているものとし、検知エリアの重複を考えないことにする。
【0093】
また、火源位置を含む火災側の領域(火災検知エリア)をFとし、火災でない上流側及び下流側の領域をNFとしており、火災側の領域(火災検知エリア)Fは区画A2となり、火災でない領域NFは上流側の区画A1と下流側の区画A3・・・となる。
【0094】
図9に示した防災受信盤70は、区画A2の火災検知に基づき、火災側の領域Fの上流側と下流側境界に位置する区画A2,A3に設置された旋回型仕切装置16(16-2,16-3)、天井用仕切装置18(18-2,18-3)、監視員通路用仕切装置20(20-2,20-3)、側壁用仕切装置22(22-2,22-3)を動作する制御を行い、火災側の領域Fの上流側と下流側の2箇所の境界で仕切シート16a,18a,20a,22aを展開して仕切区画15(区画A2の仕切区画)を形成して火災(火災側)の領域を閉鎖し、仕切区画15の外側の火災でない側の領域NFに対する延焼を防止し、また遮煙性、遮熱性及び遮炎性を確保する。
【0095】
このとき
図9に示した防災受信盤70は開閉弁40の開制御で仕切区画15を形成している仕切シート16a,18a,20a,22aのシート面に消火用水を冷却水として散布し、防火性、耐火性、耐熱性、遮熱性、遮炎性及び遮煙性をさらに高める。
【0096】
また、
図9に示した防災受信盤70は開閉弁98の開制御で区画A2の消火ヘッド26から仕切シート16a,18a,20a,22aにより上流側と下流側が仕切られた仕切区画15(区画A2の仕切区画)内の火源100が存在する位置を含む火災側の領域に消火用水を散布し、火災を消火抑制する。
【0097】
なお、トンネル内の所定位置、例えば監視員通路14に沿った側壁に区画毎に対応して手動起動装置を設け、手動起動装置の操作により直接又は防災受信盤70を経由して、旋回型仕切装置16、天井用仕切装置18、監視員通路用仕切装置20、側壁用仕切装置22を動作する制御を行うようにしても良い。
【0098】
また、
図11の仕切制御にあっては、火源位置を含む火災側の領域の上流側と下流側の2箇所の境界で仕切シート16a,18a,20a,22aを展開して仕切ることで仕切区画を形成しているが、更に、その外側で仕切シート16a,18a,20a,22aを展開し、例えば二重に或いはそれ以上の多重に仕切った仕切区画を形成しても良い。
【0099】
また、火源位置を含む仕切区画15内に消火ヘッド26から消火用水を散布して消火抑制しているときに消防隊が到着した場合には、防災受信盤70の操作により消防隊が入ろうとする仕切区画15の片側の旋回型仕切装置16を監視員通路14側に戻すように旋回することで通過空間を形成し、消防隊による消火活動を容易とする。この場合、旋回型仕切装置16の戻し旋回量を変えることで、火災状況に応じて通過空間の空き具合を調整する。
【0100】
また、旋回型仕切装置16が仕切シート16aを回転軸に巻き、回転軸のモータ駆動により仕切シート16aの巻出しと巻上げを行う構造を設けている場合には、巻出しにより展開した仕切シート16aを消防隊が通過できる程度に巻き上げても良く、またそのうえで戻し旋回を行っても良い。このようにすれば煙の拡大を抑制しながら消防隊による消火活動をより容易とする。
【0101】
(トンネル入口の閉鎖)
図12はトンネル入口を閉鎖するように仕切シートを展開する防災設備の動作状態を示した説明図である。
【0102】
図9に示した防災受信盤70は、火災検知器92からの火災検知信号の受信、手動通報装置や非常電話による非常通報等を受けた場合、その火災発生区画に関わらず例えば防災管理者の判断操作により、
図12に示すように、トンネル入口10aの境界に設置した旋回型仕切装置16(16-1)を、旋回して仕切シート16aを展開することで、道路12のトンネル入口10aを閉鎖する制御を行う。
【0103】
トンネル入口10aを閉鎖する仕切シート16aには例えば「車両進入禁止」及び「火災が発生しています」等の警告文字を、運転者か視認できる十分な大きさで表示している。
【0104】
このためトンネル10内で車両事故に伴う火災等の異常が起きたときに、トンネル入口10aの境界の仕切シート16aを展開して閉鎖することで、火災等の異常が起きているトンネル10内への車両の侵入を確実に阻止して二次災害の発生を未然に防止可能とする。
【0105】
また、トンネル入口10aを閉鎖するように仕切シート16aを展開した旋回型仕切装置16(16-1)は、消防隊や救急隊等の関係者や関係車両が到着した場合には、仕切シート16aを展開したまま監視員通路14に沿った初期位置に旋回して戻すことで、消防隊や救急隊等の関係者や関係車両の通過を容易とする。
【0106】
また、旋回型仕切装置16(16-1)が仕切シート16aを回転軸に巻き、回転軸のモータ駆動により仕切シート16aの巻出しと巻上げを行う構造を設けている場合には、巻出しにより展開した仕切シート16aを車両が通過できる程度に巻き上げても良い。
【0107】
また例えば入口境界からトンネル内部に進につれ、仕切シートの展開量(仕切シートの巻出長さ)を大きくし、所定の境界に達したときに仕切シートを全部巻き出すようにしても良い。
【0108】
[道路幅の広いトンネルの防災設備]
図13は道路幅の広いトンネルを対象とした防災設備の実施形態を示した説明図であり、
図13(A)にトンネル横断面(
図13(B)のx-x矢視断面)を示し、
図13(B)にトンネル長手方向の縦断面を示し、
図13(C)にトンネル長手方向の平面断面を示す。
【0109】
図13に示すように、本実施形態のトンネル10は、トンネル10内の道路12を3車線としていることで、トンネル幅が広くなっている。例えば
図10に示した2車線のトンネル10のトンネル幅は約12メートル程度であるが、本実施形態の3車線ではトンネル幅は約18メートル程度と広くなる。
【0110】
このため
図10の実施形態のように、旋回型仕切装置16を監視員通路14側の片側の壁面に沿って配置すると、旋回型仕切装置16の固定端16bから可動端26cまでの長さは監視員通路14の通路幅をトンネル幅から差し引いた略16メートル程度の長さとなり、
図4に示した旋回駆動部30が大型化し、本体28及び仕切シート16aの幅も長くなることで重量が増加し、コストが嵩む。
【0111】
そこで本実施形態にあっては、旋回型仕切装置16を、トンネル長手方向に略直交する道路12を挟んだトンネル幅方向で対向する両側のトンネル側壁面の各々に、旋回型仕切装置(16-11,16-12)、(16-21,16-22)、(16-31,16-32)・・・として示すように配置する。
【0112】
このように相互に対向配置された2台の旋回型仕切装置16例えば旋回型仕切装置16-11,16-12は、固定端16bを旋回駆動部30により軸支し、可動端16aをトンネル長手方向に沿った初期位置から、一方の固定端16bから対向する他方の固定端16bに向けてその高さを維持してトンネル幅方向に引出した線上の道路12上空間にある位置Pを旋回目標位置として旋回する。
【0113】
そして、対向配置された2台の旋回型仕切装置16-11,16-12は、ぞれぞれの可動端16cを旋回目標位置(位置P)まで旋回した回型仕切装置16’-11,16’-12に示す状態で各々の仕切シート16aを展開し、併せて、天井用仕切装置18、監視員通路用仕切装置20、側壁用仕切装置22の仕切シート18a,20a,22aを展開して旋回型仕切装置16による仕切シート16aの展開で生じたすき間領域を仕切る。なお、それ以外の構成及び機能は、
図1乃至
図12に示した実施形態と同様になる。
【0114】
このように旋回型仕切装置16を対向配置した場合、旋回型仕切装置16の設置数は倍になるが、旋回型仕切装置16の固定端16bから可動端16cまでの長さは対向配置していない場合に比べて略半分の約8メートル程度と短くなり、
図4に示した旋回駆動部30、本体28及び仕切シート16aを含む装置全体を小型軽量化し、設備工事も簡単になる点を考慮すると、トータル的なコストを低減可能とする。もちろん、
図10のようにトンネル幅が比較的狭いトンネルに、対向配置を適用しても良い。
【0115】
[本発明の変形例]
(仕切装置)
上記の実施形態は、トンネル幅方向のトンネル内壁面(側壁面、天井面及び反対側の側壁面)をアーチ型としたトンネルの防災設備を例にとっているが、トンネル内壁面を略矩形型としたトンネルについても、同様の考え方で実施することができ、例えば天井用仕切装置18や側壁用仕切装置22を旋回型仕切装置16で兼用することができる。即ち、トンネル空間に対する仕切シートを展開する領域の分割は任意であり、分割(境界の設定)した領域に対応して仕切シートを展開する仕切装置を設ければ良い。
【0116】
また、上記の実施形態は、第1の仕切手段として旋回型仕切装置を例とっているが、固定型仕切装置としても良い。固定型仕切装置は、例えば旋回型仕切装置を旋回した状態で固定し、旋回機構を省略したものとすれば良い。
【0117】
(対象施設)
上記の実施形態は、トンネルを対象にしているが、これに限定されず、地下街や地下道等の道路が左右及び上部の内壁面で覆われた適宜の坑道施設が対象となり得る。
【0118】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0119】
10:トンネル
12:道路
14:監視員通路
15:仕切区画
16:旋回型仕切装置
16a,18a,20a,22a:仕切シート
16b:固定端
16c:可動端
17:ストッパー
18:天井用仕切装置
20:監視員通路用仕切装置
22:側壁用仕切装置
24:消火栓装置
26:消火ヘッド
28:本体
30:旋回駆動部
32:筐体
34:シート保持部材
35:シート固定部
36:シート展開部
38:冷却剤散布ヘッド
40,98:開閉弁
42:給水配管
44,54,60:収納ケース
46:骨アーム
48,53,63:軸
50,56,62:ラッチピン
52,64:折り目
58:スリット
70:防災受信盤
88:ポンプ設備
90,93:信号線
92:火災検知器
94-1~94-3:区画防災設備
96:中継器
100:火源