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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】液循環式試験装置及び液循環式試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/36 20060101AFI20240307BHJP
   G05D 16/20 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G01N3/36
G05D16/20 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023117677
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2020029634の分割
【原出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2023133387
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】澤 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 徹郎
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-131206(JP,A)
【文献】実開昭60-012669(JP,U)
【文献】実開昭58-167912(JP,U)
【文献】特開2016-142730(JP,A)
【文献】特開平09-189651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/36
G05D 16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧手段が設けられた主流路と、供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、前記加圧手段による加圧力によって液状の流体が循環するように構成された循環路と、
前記バイパス路の開度を変えることによって前記供試体流路での前記流体の圧力を変える圧力変更部と、
前記供試体流路に配置され、前記バイパス路が閉じられた状態で得られる前記供試体流路における前記流体の高圧圧力を調整可能な第1調節弁と、
前記バイパス路に配置され、前記圧力変更部によって前記バイパス路が開かれた状態で得られる前記供試体流路における前記流体の低圧圧力を調整可能な第2調節弁と、
を備えている液循環式試験装置。
【請求項2】
前記第1調節弁によって調整された前記高圧圧力と前記第2調節弁によって調整された前記低圧圧力との間で、前記供試体流路における前記流体の圧力が変わるように前記圧力変更部を制御する制御部を備えている請求項1に記載の液循環式試験装置。
【請求項3】
前記供試体流路において前記流体の圧力を検知する圧力検知部を備え、
前記制御部は、前記圧力検知部によって検知された圧力が予め設定された圧力変化に沿うように、前記圧力検知部の検知結果に応じて前記圧力変更部を制御する請求項2に記載の液循環式試験装置。
【請求項4】
加圧手段が設けられた主流路と、供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、前記加圧手段による加圧力によって液状の流体が循環するように構成された循環路と、
前記供試体流路に配置され、前記供試体流路における前記流体の高圧圧力を設定するための第1調節弁と、
前記バイパス路に配置され、前記供試体流路における前記流体の低圧圧力を設定するための第2調節弁と、
前記バイパス路の開度を変えることによって、前記供試体流路での前記流体の圧力を、前記第1調節弁によって調整される前記高圧圧力と前記第2調節弁によって調整される前記低圧圧力との間で変える圧力変更部と、
を備えている液循環式試験装置。
【請求項5】
前記流体の温度調整を行う温度調整装置が設けられている請求項1から4の何れか1項に記載の液循環式試験装置。
【請求項6】
前記供試体流路に接続された前記供試体を所定の温度に保つ恒温槽を備えている請求項1から5の何れか1項に記載の液循環式試験装置。
【請求項7】
循環路に液状の流体を循環させながら供試体の試験を行う液循環式試験方法であって、
前記循環路は、加圧手段が設けられた主流路と、前記供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、液状の流体が循環するように構成されており、
前記供試体流路における前記流体の高圧圧力を前記供試体流路に配置された第1調節弁によって設定するとともに、前記供試体流路における前記流体の低圧圧力を前記バイパス路に配置された第2調節弁によって設定する圧力設定工程と、
圧力変更部によって前記バイパス路の開度を変えることによって前記供試体流路での前記流体の圧力を変えて、前記流体から前記供試体にかかる圧力を変える圧力変化工程と、を備える液循環式試験方法。
【請求項8】
前記圧力変化工程では、前記第1調節弁の調整によって得られる前記流体の高圧圧力と、前記第2調節弁の調整によって得られる前記流体の低圧圧力との間で、前記流体から前記供試体にかかる圧力を変える請求項7に記載の液循環式試験方法。
【請求項9】
前記圧力変化工程では、
前記供試体流路を流れる流体の圧力を検知し、
前記検知された圧力が予め設定された圧力変化に沿うように、圧力検知結果に応じて前記圧力変更部を制御する請求項7に記載の液循環式試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液循環式試験装置及び液循環式試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、供試体にかかる液圧を変化させて供試体にかかる圧力を調整する圧力制御装置が知られている。特許文献1に開示された圧力制御装置では、圧力源に繋がる液圧ラインに供試体が接続されるとともに、この液圧ラインに、油圧アクチュエータによって動作する単動ピストンからの液圧が供給されるように構成されている。油圧アクチュエータは、供試体にかかる圧力を検出する圧力検出部からの信号に基づいて、単動ピストンを動作させる。単動ピストンの動作により、供試体には、所定の圧力波形を示す圧力がかけられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-156315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された圧力制御装置では、単動ピストンから液圧ラインに加圧液を供給しつつ供試体にかかる圧力を調整する。この構成では、液圧ラインに加圧液を供給する単動ピストン及びそれを動作させる油圧アクチュエータが必要になるため、構成が複雑なものとなる。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より簡素化された構成で供試体にかかる液圧を調整できる試験装置及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る液循環式試験装置は、加圧手段が設けられた主流路と、供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、前記加圧手段による加圧力によって液状の流体が循環するように構成された循環路と、前記バイパス路の開度を変えることによって前記供試体流路での前記流体の圧力を変える圧力変更部と、前記圧力変更部によって前記供試体流路を流れる前記流体の圧力を変えるときの前記バイパス路の開度変化に関する開度情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記開度情報に基づいて前記圧力変更部を制御する制御部と、を備えている。
【0007】
本発明では、ポンプ等の加圧手段による流体の加圧力によって、主流路を流れる流体の圧力が設定される。この状態で、圧力変更部が、バイパス路の開度を変更すると、主流路からバイパス路に流入する流体の流動抵抗が変わるため、それによって、供試体流路に流入する流体の圧力が変わり、供試体流路の流体から供試体にかかる圧力が変わる。このため、比較的簡素化された構成で供試体にかかる圧力の調整を行うことができる。しかも、開度情報を記憶する記憶部を備えており、制御部は、当該記憶部に記憶された開度情報に基づいて圧力変更部を制御する。これにより、バイパス路の開度変更量に応じて供試体流路での流体圧力が変化する。このため、流体から供試体にかかる圧力を予め設定された目標に沿うように変化させることができる。
【0008】
また本発明に係る液循環式試験装置は、加圧手段が設けられた主流路と、供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、前記加圧手段による加圧力によって液状の流体が循環するように構成された循環路と、前記バイパス路の開度を変えることによって前記供試体流路での前記流体の圧力を変える圧力変更部と、前記供試体流路において前記流体の圧力を検知する圧力検知部と、前記圧力検知部によって検知された圧力が予め設定された圧力変化に沿うように、前記圧力検知部の検知結果に応じて前記圧力変更部を制御する制御部と、を備えている。
【0009】
本発明では、ポンプ等の加圧手段による流体の加圧力によって、主流路を流れる流体の圧力が設定される。この状態で、圧力変更部が、バイパス路の開度を変更すると、主流路からバイパス路に流入する流体の流動抵抗が変わるため、それによって、供試体流路に流入する流体の圧力が変わり、供試体流路の流体から供試体にかかる圧力が変わる。このため、比較的簡素化された構成で供試体にかかる圧力の調整を行うことができる。しかも、供試体流路を流れる流体の圧力を検知する圧力検知部を備えており、制御部は、当該圧力検知部によって検知された圧力が予め設定された圧力変化に沿うように圧力変更部を制御する。このため、圧力変更部を制御することにより、供試体にかかる圧力を予め設定された目標に沿うように変化させることができる。
【0010】
前記圧力変更部は、前記バイパス路に配置された弁又は前記供試体流路に対する前記バイパス路の分岐部分に配置された弁と、前記バイパス路の流路開度が変わるように前記弁を駆動するサーボモータと、を備えてもよい。この場合において、前記制御部は、前記サーボモータを制御するように構成されていてもよい。
【0011】
この態様では、弁がサーボモータによって駆動されるため、サーボモータを制御することによってバイパス路の流路開度を精度良く調整することができ、また、バイパス路の流路開度を迅速に変更する場合にも対応することができる。
【0012】
前記供試体流路には、前記供試体流路における前記流体の流動抵抗を変更可能な供試体側調節弁が設けられていてもよい。
【0013】
この態様では、圧力変更部によって、バイパス路に流体が流入しない状態になっているときにおいても、供試体流路での流体の流動抵抗を供試体側調節弁によって変更することができる。これにより、主流路を流れる流体の全量が供試体流路に流れる状態のときに、供試体にかかる流体の圧力をさらに調整することができる。したがって、供試体に高圧圧力がかかるときの圧力を調節することができる。
【0014】
前記バイパス路には、前記バイパス路における前記流体の流動抵抗を変更可能なバイパス側調節弁が設けられていてもよい。
【0015】
この態様では、圧力変更部によって、バイパス路に流体が流入する状態になっているときに、バイパス路での流体の流動抵抗をバイパス側調節弁によって変更することができる。バイパス側調節弁の開度が調整されることにより、主流路を流れる流体の一部が供試体流路に流れる状態での、供試体にかかる流体の圧力を変更することができる。したがって、供試体に低圧圧力がかかるときの圧力を調節することができる。
【0016】
前記液循環式試験装置には、前記主流路における前記流体の圧力が変わるように前記加圧手段を制御可能な制御手段が設けられていてもよい。この態様では、圧力変更部の制御によって供試体にかかる流体圧力を調節するだけでなく、加圧手段を制御することによっても供試体にかかる流体の圧力を調節することができる。したがって、供試体にかかる圧力をより多様に変えることができるようになる。
【0017】
前記液循環式試験装置には、前記流体の温度調整を行う温度調整装置が設けられていてもよい。この態様では、循環路を循環する流体の温度を変更することも、所定の温度に維持することもできる。したがって、供試体に流入する流体の温度を制御する要求がある場合にも対応することができる。
【0018】
前記液循環式試験装置は、前記供試体流路に接続された前記供試体を所定の温度に保つ恒温槽を備えていてもよい。この態様では、供試体が所定の温度下におかれた状態で供試体の試験を行うことができる。
【0019】
本発明に係る液循環式試験方法は、循環路に液状の流体を循環させながら供試体の試験を行う液循環式試験方法であって、前記循環路は、加圧手段が設けられた主流路と、前記供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、液状の流体が循環するように構成されており、圧力変更部によって前記バイパス路の開度を変えることによって前記供試体流路での前記流体の圧力を変えて、前記流体から前記供試体にかかる圧力を変える圧力変化工程を備え、前記圧力変化工程では、前記バイパス路の開度変化に関する開度情報に基づいて前記圧力変更部を制御する。
【0020】
本発明では、ポンプ等の加圧手段による流体の加圧力によって、主流路を流れる流体の圧力が設定される。この状態で、圧力変更部が、バイパス路の開度を変更すると、主流路からバイパス路に流入する流体の流動抵抗が変わるため、それによって、供試体流路に流入する流体の圧力が変わり、供試体流路の流体から供試体にかかる圧力が変わる。このため、比較的簡素化された構成で供試体にかかる圧力の調整を行うことができる。しかも、バイパス路の開度変化に関する開度情報に基づいて圧力変更部が制御される。このとき、バイパス路の開度変更量に応じて供試体流路での流体圧力が変化するため、流体から供試体にかかる圧力を予め設定された目標に沿うように変化させることができる。
【0021】
本発明に係る液循環式試験方法は、循環路に液状の流体を循環させながら供試体の試験を行う液循環式試験方法であって、前記循環路は、加圧手段が設けられた主流路と、前記供試体を接続可能に構成され前記主流路に繋がる供試体流路と、前記供試体流路に対して分岐するように前記主流路に繋がるバイパス路とを有し、液状の流体が循環するように構成されており、圧力変更部によって前記バイパス路の開度を変えることによって前記供試体流路での前記流体の圧力を変えて、前記流体から前記供試体にかかる圧力を変える圧力変化工程を備え、前記圧力変化工程では、前記供試体流路を流れる前記流体の圧力を検知し、前記検知された圧力が予め設定された圧力変化に沿うように、圧力検知結果に応じて前記圧力変更部を制御する。
【0022】
本発明では、ポンプ等の加圧手段による流体の加圧力によって、主流路を流れる流体の圧力が設定される。この状態で、圧力変更部が、バイパス路の開度を変更すると、主流路からバイパス路に流入する流体の流動抵抗が変わるため、それによって、供試体流路に流入する流体の圧力が変わり、供試体流路の流体から供試体にかかる圧力が変わる。このため、比較的簡素化された構成で供試体にかかる圧力の調整を行うことができる。しかも、検知された供試体流路での流体圧力が予め設定された圧力変化に沿うように圧力変更部が制御される。このため、供試体にかかる圧力を予め設定された目標に沿うように変化させることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、より簡素化された構成で供試体にかかる液圧を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る液循環式試験装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】供試体に与える圧力が台形状の波形を示す場合の圧力波形を例示的に示す図である。
図3】供試体に与える圧力が正弦波形を示す場合の圧力波形を例示的に示す図である。
図4】供試体に与える圧力が矩形状の波形を示す場合の圧力波形を例示的に示す図である。
図5】第1実施形態の変形例に係る液循環式試験装置の全体構成を概略的に示す図である。
図6】第2実施形態に係る液循環式試験装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る液循環式試験装置(以下、単に試験装置と称する。)10は、液状の流体が循環するように構成された循環路12を備えている。循環路12は、試験対象としての供試体Wを接続可能に構成されている。供試体Wは、流体を流通させる管路Waを有するものであり、試験装置10は、循環路12を循環する流体をこの管路Waに流入させることによって、供試体Wの耐圧性、耐久性等の試験を行うことができる。
【0027】
供試体Wとして、例えば、発熱する要素を冷却する冷却装置等が挙げられる。冷却装置は、車載部品等のように、当該冷却装置の管路Waを流れる液温が、例えば-40℃~105℃のように広範囲の温度帯で使用されるものであってもよい。
【0028】
循環路12は、主流路12aと供試体流路12bとバイパス路12cとを有する。主流路12aには、流体を加圧する加圧手段としてのポンプ14が設けられている。ポンプ14が作動することにより、流体が加圧される。循環路12では、ポンプ14の加圧力によって流体が循環する。
【0029】
供試体流路12bの一端部は、主流路12aにおけるポンプ14の吐出側の端部13aに繋がっている。バイパス路12cは、供試体流路12bに対して主流路12aから分岐するように、一端部が主流路12aの前記端部13aに繋がっている。したがって、ポンプ14から吐出された流体を供試体流路12bとバイパス路12cに分流させることが可能となっている。供試体流路12bの他端部及びバイパス路12cの他端部はそれぞれ、主流路12aにおけるポンプ14の吸入側の端部13bに繋がっている。
【0030】
主流路12aにおけるポンプ14の吸入側の端部13bには、流体の温度を調整するための温度調整装置16が設けられている。したがって、供試体流路12b及びバイパス路12cを流れた流体は、何れも温度調整装置16に導入される。温度調整装置16によって温度が調整された流体は、ポンプ14に吸入される。なお、温度調整装置16は、主流路12aにおける中間部に配置されていてもよい。
【0031】
温度調整装置16は、供試体Wに供給される流体の温度を調整するためのものであり、流体を冷却する冷却器及び流体を加熱する加熱器(図示省略)を備えており、流体の温度を試験に要求される温度に調整する。なお、試験装置10が常温の流体を供試体Wに供給する試験を行うための試験装置として構成される場合には、温度調整装置16を省略することが可能である。
【0032】
供試体流路12bは、その途中の部位において供試体Wを接続可能に構成されている。すなわち、供試体流路12bはその中間部が途切れており、この途切れた部位に供試体Wを接続することができるように構成されている。
【0033】
供試体Wは、恒温槽18の中に収容される。すなわち、供試体流路12bはその中間部が恒温槽18の中を通過するように配置されており、供試体流路12bは、恒温槽18の中で供試体Wに接続されている。恒温槽18は、その内部を所定の温度に保つ機能を有している。なお、恒温槽18を省略することも可能である。
【0034】
バイパス路12cには、バイパス路12cの開度を変えることによって流体圧力を変える圧力変更部20が設けられている。圧力変更部20は、バイパス路12cに配置された開閉弁からなる弁20aと、バイパス路12cの開度が変わるように弁20aを駆動するサーボモータ20bと、を備えている。サーボモータ20bは、弁20aの開速度及び閉速度を調整可能に構成されていて、弁20aを急峻に開閉することもゆっくり開閉することもできるように構成されている。サーボモータ20bは、例えば、全開状態の弁20aを1秒以内に全閉することも、全閉状態の弁20aを1秒以内に全開することも可能である。
【0035】
サーボモータ20bによって弁20aが駆動されることによって、バイパス路12cの開口面積が変わるため、それによって、バイパス路12cでの流体の流動抵抗が変わる。主流路12aにおいては、ポンプ14によって流体が所定の圧力に加圧されているため、バイパス路12cでの流体の流動抵抗が変わると、供試体流路12bでの流体の圧力も変わる。したがって、圧力変更部20の弁20aの開度が変わることにより、流体から供試体W中の管路Waにかかる圧力を変えることができる。例えば、圧力変更部20の弁20aが閉じられると供試体Wにかかる圧力が高くなり、圧力変更部20の弁20aが全開すると供試体Wにかかる圧力が低くなる。
【0036】
ポンプ14は、一定回転数で作動する構成でも可能であるが、図例では、回転数がインバータ14aによって変更可能に構成されている。すなわち、インバータ14aは、ポンプ14を制御可能な制御手段として機能する。ポンプ14の回転数を変更することにより、ポンプ14の吐出側での流体の圧力が変わるため、主流路12aにおける流体の圧力を任意の圧力に設定することができる。なお、試験中は、ポンプ14の回転数が一定の値に維持される。
【0037】
サーボモータ20bは、コントローラ24から出力される信号によって制御される。コントローラ24は、記憶部24aと制御部24bとを含む。記憶部24aは、圧力変更部20によって供試体流路12bを流れる流体の圧力を変えるときの、バイパス路12cの開度変化に関する開度情報を記憶する。すなわち、供試体流路12bにおける流体圧力を変えるために圧力変更部20を駆動するが、この場合において、バイパス路12cの開度を変えることによって、供試体流路12bにおける流体圧力が変わる。このため、記憶部24aには、弁開度の時間変化を表す情報が開度情報として記憶されている。この弁開度の時間変化は、予備実験やシミュレーションから求められたものである。例えば予備実験を行うことにより、弁開度の時間変化と供試体流路12bにおける流体圧力の時間変化との相関関係が得られるため、供試体流路12bでの流体圧力の時間変化が試験で要求される圧力変化になるような、弁開度の時間変化を表す開度情報が記憶部24aに記憶されている。
【0038】
制御部24bは、記憶部24aに記憶された開度情報に基づいてサーボモータ20bを制御する。すなわち、制御部24bは、開度情報に記憶された弁開度の時間変化を示す情報に従って弁20aが開閉するように、サーボモータ20bの駆動信号を出力する。
【0039】
供試体流路12bには、供試体流路12bにおける流体の流動抵抗を変更可能な供試体側調節弁である第1調節弁26が設けられている。第1調節弁26は、供試体流路12bにおける供試体Wの接続部よりも下流側に配置されている。
【0040】
第1調節弁26は、手動弁であり、供試体流路12bの開度を変えることできるように構成されている。第1調節弁26の開度を変えることにより、供試体流路12bにおける流体の流動抵抗が変わるため、供試体流路12bにおける流体の圧力が変わる。したがって、例えば、圧力変更部20の弁20aを閉じた状態で第1調節弁26の開度を変えると、供試体Wにかかる圧力のうち高圧側の圧力を変えることができる。なお、第1調節弁26は手動弁に限られるものではなく、コントローラ24によって開閉制御できるように構成されていてもよい。
【0041】
バイパス路12cには、バイパス路12cにおける流体の流動抵抗を変更可能なバイパス側調節弁である第2調節弁28が設けられている。第2調節弁28は、バイパス路12cにおける弁20aよりも下流側に配置されている。なお、第2調節弁28は、バイパス路12cにおいて、弁20aよりも上流側に配置されていてもよい。
【0042】
第2調節弁28は、手動弁であり、バイパス路12cの開度を変えることできるように構成されている。第2調節弁28の開度を変えることにより、バイパス路12cにおける流体の流動抵抗が変わるため、バイパス路12cにおける流体の圧力が変わる。したがって、例えば、圧力変更部20の弁20aを開けた状態で第2調節弁28の開度を変えると、供試体Wにかかる圧力のうち低圧側の圧力を変えることができる。なお、第2調節弁28は手動弁に限られるものではなく、コントローラ24によって開閉制御できるように構成されていてもよい。
【0043】
供試体流路12bには、供試体流路12bを流れる流体の圧力を検知する圧力計30が設けられている。圧力計30は省略可能である。
【0044】
ここで、第1実施形態にかかる試験装置10の動作制御について説明する。試験装置10によって供試体Wの試験を行うには、まず、試験装置10の供試体流路12bに供試体Wを接続して、ポンプ14の回転数、第1調節弁26及び第2調節弁28の開度を設定する。また、例えば、高圧圧力、低圧圧力、圧力変化速度、圧力変化タイミング及び圧力変化の繰り返し数等を、供試体Wの試験に要求される値に設定する。
【0045】
例えば図2に示すように、台形状の圧力波形が得られるように、流体圧力を繰り返し変化させる試験を行う場合、高圧圧力PH、低圧圧力PL、高圧圧力PH(又は低圧圧力PL)から低圧圧力PL(又は高圧圧力PH)に到達するまでの時間T1、高圧圧力PH及び低圧圧力PLに保持する時間T2を設定する。
【0046】
この場合、まず、試験者は、高圧圧力PH及び低圧圧力PLに応じてポンプ14の回転数を決める。そして、圧力変更部20の弁20aを閉じた状態でポンプ14を作動させ、供試体Wにかける高圧圧力PHを設定すべく、試験者は、第1調節弁26の開度を設定する。つまり、主流路12aを流れる流体の全量が供試体流路12bに流れる状態で、供試体流路12bを流れる流体の圧力、すなわち高圧圧力PHが調整される。また、圧力変更部20の弁20aを全開にした状態でポンプ14を作動させ、供試体Wにかける低圧圧力PLを設定すべく、試験者は、第2調節弁28の開度を設定する。つまり、主流路12aを流れる流体の一部が供試体流路12bに流れる状態で、第2調節弁28の開度を調節すると、バイパス路12cの流動抵抗が調節されるため、供試体流路12bでの低圧圧力PLを調節することができる。
【0047】
また、時間T1を設定すべく、圧力変更部20の弁20aが全閉状態から全開状態に至るまでに要する時間及び全開状態から全閉状態に至るまでに要する時間を設定し、時間T2を設定すべく、圧力変更部20の弁20aを全閉状態に維持する時間及び全開状態に維持する時間を設定する。この時間T1及びT2の設定は、入力装置34を通して行われる。入力装置34を通して入力された、弁20aが全閉状態(又は全開状態)から全開状態(又は全閉状態)に至るまでに要する時間に関する設定値は、開度情報としてコントローラ24の記憶部24aに記憶される。また、入力装置34を通して入力された、弁20aを全閉状態に維持する時間及び全開状態に維持する時間、及び繰り返し数も、記憶部24aに記憶される。
【0048】
続いて、記憶部24aに記憶された設定値を用いて、供試体Wの管路Waに繰り返し圧力をかける試験を行う。この試験方法では、第1調節弁26及び第2調節弁28の開度が設定された後、ポンプ14を駆動する。また、温度調整装置16により循環路12を循環する流体の温度を調整する。そして、ポンプ14の駆動を継続しつつ、制御部24bは、記憶部24aに記憶された設定値にしたがって、圧力変更部20の弁20aの開度を変える。これにより、供試体流路12bでの流体の圧力が変わり、流体から供試体Wにかかる圧力が変わる(圧力変化工程)。この圧力変化工程では、記憶部24aに記憶された開度情報が用いられており、圧力変化工程は、試験中、繰り返し行われる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、ポンプ14による流体の加圧力によって、主流路12aを流れる流体の圧力が設定される。この状態で、圧力変更部20が、バイパス路12cの開度を変更すると、主流路12aからバイパス路12cに流入する流体の流動抵抗が変わるため、それによって、供試体流路12bに流入する流体の圧力が変わり、供試体流路12bの流体から供試体Wにかかる圧力が変わる。このため、比較的簡素化された構成で供試体Wにかかる圧力の調整を行うことができる。しかも、開度情報を記憶する記憶部24aを備えており、制御部24bは、当該記憶部24aに記憶された開度情報に基づいて圧力変更部20を制御する。これにより、バイパス路12cの開度変更量に応じて供試体流路12bでの流体圧力が変化する。このため、流体から供試体Wにかかる圧力を、予め設定された目標に沿うように変化させることができる。
【0050】
本実施形態では、弁20aがサーボモータ20bによって駆動されるため、サーボモータ20bを制御することによってバイパス路12cの流路開度を精度良く調整することができ、バイパス路12cの流路開度を迅速に変更する場合にも対応することができる。
【0051】
本実施形態では、供試体流路12bに第1調節弁26が設けられているため、圧力変更部20によってバイパス路12cに流体が流入しない状態にして、供試体流路12bでの流体の流動抵抗を第1調節弁26によって変更することができる。これにより、主流路12aを流れる流体の全量が供試体流路12bに流れる状態のときに、供試体Wにかかる流体の圧力をさらに調整することができる。したがって、供試体Wにかかる高圧圧力PHを調節することができる。
【0052】
本実施形態では、バイパス路12cに第2調節弁28が設けられているため、圧力変更部20によってバイパス路12cに流体が流入する状態になっているときに、バイパス路12cでの流体の流動抵抗を第2調節弁28によって変更することができる。第2調節弁28の開度が調整されることにより、主流路12aを流れる流体の一部が供試体流路12bに流れる状態での、供試体Wにかかる流体の圧力を変更することができる。したがって、供試体Wにかかる低圧圧力PLを調節することができる。
【0053】
本実施形態では、温度調整装置16が設けられているため、循環路12を循環する流体の温度を変更することも、所定の温度に維持することもできる。したがって、供試体Wに流入する流体の温度を制御する要求がある場合にも対応することができる。
【0054】
本実施形態では、供試体Wを収容する恒温槽18が設けられているので、供試体Wが所定の温度下におかれた状態で供試体Wの試験を行うことができる。
【0055】
なお、本実施形態では、供試体Wにかかる圧力の波形が台形状に変化する場合について説明したが、図3に示すように、圧力波形が正弦波状に変化するように圧力変更部20を制御してもよく、あるいは図4に示すように、圧力波形が矩形状に変化するように圧力変更部20を制御してもよい。また、これ以外の形状に圧力を変化させてもよい。
【0056】
本実施形態では、供試体流路12bに第1調節弁26が設けられる構成としているが、高圧圧力PHの調節が不要な場合には、第1調節弁26を省略することが可能である。
【0057】
また本実施形態では、バイパス路12cに第2調節弁28が設けられる構成としているが、低圧圧力PLの調節が不要な場合には、第2調節弁28を省略することが可能である。
【0058】
本実施形態では、試験中はポンプ14の回転数を一定の値に維持するようにしているがこれに限られるものではない。例えば、制御部24bは、サーボモータ20bによる弁20aの開度制御とインバータ14aによるポンプ14の回転数制御とを協調させるように構成されていてもよい。この場合、弁20aの開度だけでなくポンプ14の回転数を変えることによって、供試体Wにかかる圧力が調整されることになる。したがって、圧力波形をより多様に変えることができる。なお、制御部24bは、サーボモータ20bによる弁20aの開度制御とインバータ14aによるポンプ14の制御とを選択的に行うように構成されていてもよい。つまり、弁20aの開度制御が行われるときと、ポンプ14の制御が行われるときとが、別々に存在していてもよい。
【0059】
また、第1調節弁26によって高圧圧力PHを調節するのではなく、インバータ14aによってポンプ14の回転数を調節することによって、高圧圧力PHを調節してもよい。この場合にも、第1調節弁26を省略することが可能となる。また、第2調節弁28によって低圧圧力PLを調節するのではなく、インバータ14aによってポンプ14の回転数を調節することによって、低圧圧力PLを調節してもよい。この場合にも、第2調節弁28を省略することが可能となる。
【0060】
本実施形態では、圧力変更部20が、弁20aと、弁20aを駆動するサーボモータ20bとを有し、制御部24bがサーボモータ20bを制御する構成とされているが、これに限られるものではない。圧力変更部20が電動弁を有する構成であれば、制御部24bが電動弁を制御する構成とすることができる。
【0061】
本実施形態では、圧力変更部20の弁20aがバイパス路12cに配置される構成としているが、これに限られるものではない。例えば、図5に示すように、圧力変更部20の弁20aは、供試体流路12bに対するバイパス路12cの分岐部分に配置されていてもよい。この場合の弁20aは、三方弁によって構成され、主流路12aと供試体流路12bとを連通するとともに主流路12aとバイパス路12cとの間を遮断する状態と、主流路12aと供試体流路12bとバイパス路12cとを連通させる状態とを取り得る。そして、主流路12aと供試体流路12bとバイパス路12cとが連通した状態では、供試体流路12b側の開度とバイパス路12c側の開度との比率を調整可能である。
【0062】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
第1実施形態では、制御部24bがコントローラ24の記憶部24aに記憶された開度情報を用いて圧力変更部20を制御する。これに対し、第2実施形態では、圧力検知部40が設けられ、制御部24bはこの圧力検知部40による検知結果に応じて圧力変更部20を制御する。
【0064】
具体的に説明すると、圧力検知部40は、供試体流路12bに設けられ、供試体流路12b内の流体の圧力を検知するように構成されている。記憶部24aには、供試体流路12b内の流体の圧力についての目標となる圧力時間変化を示す情報が記憶されている。この情報は入力装置34を通してコントローラ24に入力することができる。なお、コントローラ24の記憶部24aには、開度情報は記憶されていなくてもよい。
【0065】
コントローラ24の制御部24bは、圧力検知部40によって検知された圧力が記憶部24aに記憶された目標圧力変化に沿うように、圧力検知部40による圧力検知結果に応じて圧力変更部20のサーボモータ20bを制御する。すなわち、圧力検知部40による検知圧力が目標圧力よりも低いときには、その偏差に応じた開度だけ弁20aを閉じる制御を行い、圧力検知部40による検知圧力が目標圧力よりも高いときには、その偏差に応じた開度だけ弁20aを開く制御を行う。このようにして、供試体Wにかかる流体圧力が目標圧力変化に沿うように調整される。なお、高圧圧力PH及び低圧圧力PLについては、第1実施形態と同様に設定される。
【0066】
第2実施形態では、ポンプ14による流体の加圧力によって、主流路12aを流れる流体の圧力が設定される。この状態で、圧力変更部20が、バイパス路12cの開度を変更すると、主流路12aからバイパス路12cに流入する流体の流動抵抗が変わるため、それによって、供試体流路12bに流入する流体の圧力が変わり、供試体流路12bの流体から供試体Wにかかる圧力が変わる。このため、比較的簡素化された構成で供試体Wにかかる圧力の調整を行うことができる。しかも、供試体流路12bを流れる流体の圧力を検知する圧力検知部40を備えており、制御部24bは、当該圧力検知部40によって検知された圧力が予め設定された圧力変化に沿うように圧力変更部20を制御する。このため、圧力変更部20を制御することにより、供試体Wにかかる圧力を予め設定された目標に沿うように変化させることができる。
【0067】
なお、第2実施形態では、圧力変更部20の弁20aがバイパス路12cに配置される構成としているが、これに代え、弁20aは、図5の形態と同様に、供試体流路12bに対するバイパス路12cの分岐部分に配置されていてもよい。また、第1調節弁26及び第2調節弁28の少なくとも一方を省略することも可能である。また、圧力変更部20が弁20aとサーボモータ20bとを有する構成に代え、圧力変更部20が電動弁を有する構成として、制御部24bが電動弁を制御する構成としてもよい。
【0068】
その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0069】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 :試験装置
12 :循環路
12a :主流路
12b :供試体流路
12c :バイパス路
14 :ポンプ
16 :温度調整装置
18 :恒温槽
20 :圧力変更部
20a :弁
20b :サーボモータ
24a :記憶部
24b :制御部
26 :第1調節弁
28 :第2調節弁
40 :圧力検知部
W :供試体
図1
図2
図3
図4
図5
図6