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特許7450115顕微鏡法システムの動作方法及び顕微鏡法システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】顕微鏡法システムの動作方法及び顕微鏡法システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240307BHJP
   A61B 90/20 20160101ALI20240307BHJP
【FI】
G02B21/00
A61B90/20
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023514840
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2021074011
(87)【国際公開番号】W WO2022049069
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102020211133.2
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン フォイクト
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フィリップ
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-131457(JP,A)
【文献】特開2003-310638(JP,A)
【文献】特開2003-309861(JP,A)
【文献】特開2018-075121(JP,A)
【文献】特開2016-053699(JP,A)
【文献】特開平05-168648(JP,A)
【文献】特開平06-324270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0236352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00-21/00
G02B 21/06-21/36
A61B 90/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡法システム(1)の動作方法であって、枢動点(21)が定義され、前記顕微鏡法システム(1)は、前記顕微鏡法システム(1)の顕微鏡(2)が前記枢動点(21)の回りを移動するように動作し、前記顕微鏡(2)の光軸(17)と基準面(19)との交点は、前記枢動点(21)として決定され、前記基準面(19)の位置及び/又は向きを表す前記基準面(19)の姿勢は、焦点位置から独立した基準座標系において定義され、前記枢動点(21)は、前記基準座標系における前記光軸(17)とそうして定義される基準面との交点として定義され、前記基準面(19)が決定される、方法であって、
前記基準面(19)の姿勢についての情報は、検索可能な形態で記憶され、前記基準面(19)についての前記記憶された情報は、前記光軸(17)の前記姿勢が変化した後、前記枢動点(21)を決定するために検索され、前記枢動点(21)は、変化した後の姿勢での前記光軸(17)と前記記憶された基準面(19)との交点として決定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記基準面(19)の前記姿勢は、対物面から独立した基準座標系において定義されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は形状は、解剖学的部位の開口部(20)により囲まれるエリアが、前記基準面(19)を形成し、又は前記基準面(19)により少なくとも部分的に包含されるように定義されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記解剖学的部位の開口部(20)は自動的に又は手動で定義されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基準面(19)は、開口縁によって画定される面及び/又は曲面であり、且つ/又は前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は形状は、術前生成データに基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記基準面(19)は、開口縁によって画定される面及び/又は曲面であり、且つ/又は前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は前記形状は、術前生成データに基づいて決定されることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
解剖学的部位のトポグラフィ情報が決定され、前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は形状は、このトポグラフィ情報に基づいて決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
解剖学的部位のトポグラフィ情報が決定され、前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は前記形状は、このトポグラフィ情報に基づいて決定されることを特徴とする請求項3~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基準面(19)は、少なくとも1つの基準面点(22)により決定され、前記基準面(19)は、前記顕微鏡(2)の前記光軸(17)に直交して向けられ、前記基準面点(22)が配置される平面として定義され、又は前記平面に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記基準面(19)は、少なくとも1つの基準面点(22)により決定され、前記基準面(19)は、前記顕微鏡(2)の前記光軸(17)に直交して向けられ、前記基準面点(22)が配置される平面として定義され、又は前記平面に配置されることを特徴とする請求項3~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの前記基準面点(22)は、ユーザによって設定される焦点として決定され、又は少なくとも1つの前記基準面点(22)は、姿勢マーキング器具(24)の位置により定義され、又は前記基準面点(22)は、前記少なくとも1つのマーカの位置及び/又は向きに基づいて決定され、又は少なくとも1つの前記基準面点(22)は、視線方向検出に基づいて定義されることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
基準面点(22)の前記姿勢は、既に定義された基準面点(22)の前記姿勢を変更することにより定義されることを特徴とする請求項9~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも3つの基準面点(22)が決定され、前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は形状は、前記少なくとも3つの基準面点(22)が前記基準面(19)に配置され、又は前記基準面又は前記基準面を含む平面からの前記基準面点の距離が最小であるように決定されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも3つの基準面点(22)が決定され、前記基準面(19)の前記姿勢及び/又は前記形状は、前記少なくとも3つの基準面点(22)が前記基準面(19)に配置され、又は前記基準面又は前記基準面を含む平面からの前記基準面点の距離が最小であるように決定されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記顕微鏡法システムの焦点は、前記光軸(17)が前記基準面(19)であって開口縁によって画定される面と交わらない場合、前記枢動点(21)として定義されることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項16】
1つの焦点位置は、前記枢動点(21)からの前記顕微鏡(2)の距離の変化に基づいて変更されることを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
顕微鏡法システムであって、
・顕微鏡(2)と、
・前記顕微鏡(2)を保持するスタンド(3)と、
・前記顕微鏡法システム(1)を制御する少なくとも1つの制御・評価デバイス(7)であって、前記顕微鏡法システム(1)は、前記顕微鏡(2)が枢動点(21)の回りを移動するように動作可能であり、基準面(19)が決定可能であり、前記顕微鏡(2)の光軸(17)と基準面(19)との交点が、前記枢動点(21)として決定可能であり、前記基準面(19)の位置及び/又は向きを表す前記基準面(19)の姿勢は、焦点位置から独立した基準座標系において定義され、前記枢動点(21)は、前記基準座標系における前記光軸(17)とそうして定義される基準面との交点として定義され、前記基準面(19)が決定される、少なくとも1つの制御・評価デバイス(7)と、
を備える顕微鏡法システムであって、
前記基準面(19)の姿勢についての情報は、検索可能な形態で記憶され、前記基準面(19)についての前記記憶された情報は、前記光軸(17)の前記姿勢が変化した後、前記枢動点(21)を決定するために検索され、前記枢動点(21)は、変化した後の姿勢での前記光軸(17)と前記記憶された基準面(19)との交点として決定されることを特徴とする顕微鏡法システム。
【請求項18】
前記基準面(19)の前記姿勢は、対物面から独立した基準座標系において定義されることを特徴とする請求項17に記載の顕微鏡法システム。
【請求項19】
前記顕微鏡法システム(1)は、トポグラフィ情報を生成するデバイス並びに/或いは姿勢マーキング器具(24)及び/又はマーカの姿勢を検出する少なくとも1つの姿勢検出デバイスを備えることを特徴とする請求項17又は18に記載の顕微鏡法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡法システムの動作方法及び顕微鏡法システムに関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡は多くの場合、検査対象の拡大図を提供するために使用される。医療用途では、いわゆる外科用顕微鏡が、特に外科処置を支援するために使用される。顕微鏡は、処置中、よりよい視覚配向(visual orientation)を外科医に与えるために、特に体の領域の拡大図を提供するように機能する。これらの外科用顕微鏡は一般に、特にスタンド上に移動可能に搭載される。特に、これにより、ユーザは顕微鏡の姿勢、即ち位置及び/又は向きを変更して、検査領域への視角を変更することができ、又は他の検査領域を見ることができる。
【0003】
そのような顕微鏡法システムを使用する場合、定期的なリポジショニングが必要とされることがある。この場合、解剖学的部位の所望のビューを得るためには、自由度7までの調整、具体的には並進自由度3、回転自由度3、及び可変作業距離の調整が必要である。
【0004】
従来技術では、異なる視点から特定の作業点を観察する用途に幾つかの解決策がある。例えば、欧州特許出願第1537830A1号明細書には、顕微鏡を使用して異なる視線方向から物体を観察する方法及び装置が記載されている。ここでは、物体の標的領域の第1の画像が作成、保存され、顕微鏡は定義された角度だけ枢動し、第2の画像が作成、保存され、次いで物体の同一部分が両画像においてマーキングされる。さらに、物体のその部分の座標が三角測量により計算され、顕微鏡の制御は、この点の回りの枢動が実行可能であるように構成される。
【0005】
米国特許出願第2006/0274444A1号明細書も知られており、これには、少なくとも1枚のレンズ及びこのレンズの光軸を有する顕微鏡光学系を備えた顕微鏡法システムが開示されており、光軸は焦点領域において対物面と交わり、制御デバイスが、顕微鏡法システムの動作中、交点の位置を一定に保とうとする。この文献には、顕微鏡法システムの動作中、焦点領域外の点を一定に保つこともできることが更に開示されている。この文献の教示によれば、対物面は焦点領域に配置されるため、対物面の姿勢は焦点位置に依存する。
【0006】
いわゆるポイントロック機能も既知である。ここでは、顕微鏡法システムは焦点の回りを移動する。これに関連して、様々な変形がある。第1の変形では、顕微鏡法システム又は顕微鏡法システムの顕微鏡は、例えばジョイスティックを使用することにより球面に沿って位置制御されて移動し、顕微鏡の向きも同時に、光軸が随時、焦点と交わるように調整される。第2の変形では、ユーザは、光軸が焦点と交わるように向き及び焦点が自動的に更新される状態で、顕微鏡を動かす。
【0007】
ポイントロック機能がアクティブ化されると、ユーザは焦点を手動で変更することができるが、枢動点を変えることはできず、アクティブ化中、枢動的は特に、焦点位置によって定義される場所に静止したままである。
【0008】
特定の用途では、焦点により定義される点の回りの顕微鏡法システム又は顕微鏡の回転移動を実行せず、即ち、そのような点の回りを枢動せず、代わりに、焦点位置外の点の回りの回転移動を実行することが望ましい。例として、いわゆる鍵穴手術状況では、洞穴の基底面上の点の回りを枢動しないことが望ましいことがあり、その理由は、この場合、比較的小さな回転移動はただでさえ、顕微鏡を通したビューを、鍵穴に隣接する構造によって遮ることに繋がる恐れがあるためである。
【0009】
焦点面外の枢動点を設定するための現行の操作状況は時間がかかり、特に、多数のステップが必要とされる。例として、まず、鍵穴レベルの縁部における領域に焦点を合わせ、続けて所望の摺動点に焦点を合わせることにより、焦点面外にそのような枢動点を定義することが知られている。顕微鏡は続けて、所望の姿勢、即ち、所望の位置及び所望の向きに、特に光軸が鍵穴によって囲まれるエリアを通るように位置決めされ、次いで上述したポイントロックモードがアクティブ化される。しかしながら、解剖学的部位を見るためには、顕微鏡の焦点はなお調整可能でなければならない。
【0010】
この方法の欠点には、複数のステップを協働して連続して実行する必要があり、全く直観的ではない動作を必要とすることがある。さらに、設定された枢動点を失わないように、ポイントロックモードをアクティブなままにする必要がある。ポイントロックモードで再位置決めが割り込む都度、枢動点が変わらない場合であっても、枢動点を再調整する必要がある。枢動点を調整するために、ポイントロックモードがアクティブ化される前に、まず、焦点を鍵穴の縁部に設定する必要が更にあり、次いで顕微鏡を所望の姿勢に位置決めする必要がある。これには追加の時間が必要とされるのみならず、再位置決め中、危機的状況で特に重要な解剖学的部位のビューも中断する。そのような方法では、ハンズフリー操作と呼ぶこともでき、例えばフットスイッチの作動によって実施される非接触制御は、可能ではないか、又は困難を伴ってのみ可能である。
【0011】
従来技術は、特開2003-310638A号公報にも開示されており、これには、手術観察機器、特に手術中に使用される手術観測手段の支持アーム機構の制御が開示されている。
【0012】
欧州特許出願公開第1333306A2号明細書には、少なくとも1人のユーザによリ観察するために、物体の少なくとも一対の表現を生成する立体顕微鏡法及び立体顕微鏡法システムが開示されている。
【0013】
国際公開第2018/088203A1号パンフレットには、医療支持装置が開示されている。
【0014】
米国特許出願公開第2004/236352A1号明細書には、最小侵襲性心臓インターベンションを実行するシステム及び方法が開示されている。
【0015】
独国特許出願公表第112017005655T5号明細書には、医療用支持アーム及び医療システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、顕微鏡法システムの動作を簡易化する顕微鏡法システムの動作方法及び顕微鏡法システムを開発する技術的問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
技術的問題への解決策は、独立請求項の特徴を有する主題によって提供される。本発明の更なる有利な構成は、従属請求項から明らかである。
【0018】
顕微鏡法システムの動作方法が提案される。
【0019】
顕微鏡法システムは、顕微鏡を備える。本発明の範囲内で、顕微鏡とは、検査対象の視覚表現を拡大するデバイスを示す。顕微鏡は、光学効果を利用することにより、特にビーム誘導及び/又はビーム整形及び/又はビーム偏向を行う手段、例えばレンズによって拡大画像表現を生成する従来の光学顕微鏡であることができる。しかしながら、顕微鏡は、画像捕捉デバイスにより、顕微鏡により視覚化すべき画像を生成することができ、適切な表示デバイス、例えば表示ユニットに表示することができるデジタル顕微鏡であってもよい。
【0020】
顕微鏡は特に、少なくとも1つの接眼レンズを備えることができる。接眼レンズとは、顕微鏡により生成された画像表現を見るために、ユーザがのぞき込むか、又はのぞく顕微鏡の部品を指す。
【0021】
さらに、顕微鏡は少なくとも1つの対物レンズを備えることができる。この対物レンズは、検査対象の光学実像表現を生成することができる。ここでは、対物レンズは、ビーム誘導及び/又はビーム整形及び/又はビーム偏向を行う光学要素を含み得る。
【0022】
顕微鏡は光軸を有し得る。これは、対物レンズの光軸であることができる。顕微鏡が立体カメラ系を含む場合、立体カメラ系の2つの画像捕捉デバイスの光軸は、焦点で交わる。この場合、顕微鏡の光軸は、これもまた焦点を通って延びる、2つの画像捕捉デバイスの光軸間の二等分線に対応することができる。
【0023】
さらに、顕微鏡は顕微鏡本体を備えることができる。顕微鏡本体はこの場合、ビーム誘導及び/又はビーム整形及び/又はビーム偏向を行う更なる光学要素を備え得る。対物レンズが着脱可能に、即ち交換可能に、顕微鏡本体に締着されることが可能である。しかしながら、対物レンズが顕微鏡本体上又は顕微鏡本体内にしっかりと一体化されることも可能である。対物レンズはこの場合、顕微鏡本体に対して一定の位置に配置することができる。
【0024】
さらに、顕微鏡法システムは、顕微鏡を保持するためのスタンドを備え得る。したがって、顕微鏡、特に顕微鏡本体は、スタンドに機械的に締着することができる。顕微鏡がスタンドの自由端部に特に移動可能なように、例えば枢動可能なように締着されることが可能である。この場合、スタンドは、空間での顕微鏡の、特に少なくとも自由度1、好ましくは自由度6での移動を可能にするように実施される。当然ながら、空間での顕微鏡の限られた数の自由度、即ち特に6未満の自由度での移動を可能にするようにスタンドを実施することも可能である。
【0025】
この場合、自由度は、並進自由度又は回転自由度であることができる。特に、3つの異なる並進自由度及び3つの異なる回転自由度を有する移動をスタンドにより可能にすることができる。
【0026】
この場合、自由度は大域基準座標系に関連し得る。この基準座標系の垂直軸(z軸)は、重力及び重力の逆に平行して向けることができる。基準座標系の長手方向軸(x軸)及び基準座標系の横断軸(y軸)はこの場合、垂直軸に直交して向けられる平面に広がり得る。さらに、長手方向軸及び横断軸は互いにも直交して向けることができる。したがって、基準座標系はデカルト座標系であり得る。
【0027】
さらに、スタンドは、顕微鏡を移動させる少なくとも1つの駆動デバイスを備え得る。スタンドは好ましくは複数の駆動デバイスを備える。駆動デバイスは、この場合、駆動力又は駆動モーメントを生み出すデバイスを指す。そのような駆動デバイスは、例えばサーバモータであることができる。当然ながら、スタンドは、力/モーメントを伝達する手段、例えば歯車ユニットを備えることもできる。特に、顕微鏡が所望の移動、ひいては所望の姿勢変更を空間において実行し、又は空間において所望の姿勢をとるように、少なくとも1つの駆動デバイスを制御することが可能である。この場合、姿勢とは位置及び/又は向きを指す。この場合、移動速度が所定の最大速度に制限されることが可能である。
【0028】
例えば、少なくとも1つの駆動デバイスは、対物レンズの光軸が所望の向きをとるように制御することができる。さらに、少なくとも1つの駆動デバイスは、顕微鏡の基準点、例えば焦点が空間中の所望の位置に位置決めされるように制御することができる。
【0029】
この場合、標的姿勢は、ユーザ又は別の上位システムにより指定することができる。ここでは、標的姿勢及びスタンドの運動学的構造に基づいて少なくとも1つの駆動デバイスを制御する方法は、当業者に既知である。ユーザはこの場合、顕微鏡を操作する人、特に物体の拡大ビューを得るために接眼レンズをのぞく/のぞき込む人を指すことができる。顕微鏡は、外科用顕微鏡として知られているものであることが可能である。この場合、ユーザは特に外科医であることができる。
【0030】
さらに、枢動点が定義され、顕微鏡法システム、特に顕微鏡法システムの少なくとも1つの駆動デバイス及び/又は少なくとも1つの制動デバイスは、上述した顕微鏡法システムの顕微鏡が、必須ではないが特に一定の距離にある定義された枢動点の回りを移動するように動作する。この枢動点は、ピボットと呼ぶこともできる。特に、顕微鏡法システムは、顕微鏡が、例えば手動作動によって生じた移動中、定義された枢動点の回りを移動するように動作することができる。これは例えば、例えば動作によって実施されるか、又は動作によって生じる力制御の移動制御の形態の適切な移動制御によって達成することができる。しかしながら、顕微鏡法システムは、上述した駆動デバイスが、生じる顕微鏡の移動が例えば位置制御によってそれに従って実施されるような開ループ又は閉ループ制御を受けるように動作することもできる。
【0031】
この場合、制動デバイスは、少なくとも1つの軸の回り/に沿った顕微鏡の移動が制動されるように実施且つ/又は配置することができる。制動デバイスにより、複数の軸ではあるが、全ての軸ではない軸の回り/に沿った移動を制動することもできる。更なる代替では、全ての軸の回り/に沿った移動を制動デバイスにより制動することができる。
【0032】
枢動点は、顕微鏡の光軸と基準面との交点として決定される。このために、より詳細に後述するように、光軸の姿勢を決定することができる。
【0033】
本発明によれば、基準面の姿勢は、基準座標系において焦点位置から独立して定義される。換言すれば、基準面の姿勢は、焦点位置独立の基準座標系において定義される。このために、姿勢はそれに従って、特に事前に定義することができる。さらに、枢動点は、光軸と、基準座標系におけるそうして定義された基準面との交点として決定される。姿勢が焦点位置から独立して定義されるということは、焦点が例えば大域基準座標系において変わった場合、基準面の姿勢が変わらないことを意味する。これの代替として、しかし好ましくはこれに加えて、基準面の姿勢は、基準座標系において対物面から独立して定義することができる。換言すれば、基準面の姿勢は、対物面から独立した基準座標系において定義することができる。姿勢が対物面から独立して定義されるということは、対物面、特にその姿勢が、例えば大域基準座標系において変わった場合、基準面の姿勢が変わらないことを意味する。基準面は、特に平面、即ち非曲面であることができる。しかしながら、基準面が平面ではなく、例えば曲面であることも考えられる。
【0034】
したがって、基準面の姿勢は、焦点位置から独立且つ対物面から独立した基準座標系において定義することができる。焦点位置独立の基準座標系における定義は同様に、対物面から独立した基準座標系における定義であることが可能である。
【0035】
基準面の姿勢は、特に焦点位置から独立且つ/又は対物面から独立した基準座標系への代替又は追加として、鮮鋭面(sharpness plane)独立の基準座標系において定義することも可能である。姿勢が鮮鋭面から独立して定義されるということは、鮮鋭面、特にその姿勢が、例えば大域基準座標系において変わる場合、基準面の姿勢が変わらないことを意味する。鮮鋭面は、物体空間における平面を示し得、上記平面における物体は所望の鮮鋭度で撮像される。上記平面は、被写界深度範囲の中心において鮮鋭面と交わる顕微鏡の光軸に直交して向けられ得る。被写界深度範囲は、現在設定されている焦点距離、現在設定されている距離、及び現在設定されているアパーチャに既知のように依存し得る。顕微鏡の作業距離とは、鮮鋭面と、顕微鏡の対物レンズ又は対物レンズ系により定義することができる顕微鏡の光軸に沿った顕微鏡の対物レンズ系の最後の要素との間の距離を示し得る。作業距離は、最大合焦における対物レンズ、特に最後の要素と物体との間の距離であることもできる。
【0036】
鮮鋭面の姿勢を定義するために、作業距離は、例えばユーザにより又はオートフォーカス機能を実行することにより調整することができる。作業距離が変わる場合、鮮鋭面の姿勢も変わる。したがって、焦点、特にその姿勢の変化は、鮮鋭面の姿勢も変化させ得る。対物面は鮮鋭面に対応し得る。
【0037】
上記基準座標系における基準面の姿勢は、この場合、予め決定し得、姿勢についての情報及び任意選択的に更なる基準面固有の性質、例えばその形状は、メモリデバイスに検索可能に記憶することが可能である。したがって、この場合、枢動点の決定前、特に枢動点の最初の決定前に一度、基準座標系における基準面の姿勢及び任意選択的には更なる性質を決定する必要があり、次いでこの情報は、枢動点が(再)決定される場合、それに従って検索され評価される。この決定の種々の実施形態についてより詳細に後述する。
【0038】
基準座標系は、患者固定座標系又は身体部位固定座標系、例えば骨若しくは頭蓋固定座標系であることができる。座標系は、上述した大域基準座標系であることもできる。更なる代替として、基準座標系は、顕微鏡法システム又は顕微鏡固定座標系であることができる。例として、基準座標系は、顕微鏡法システムのスタンドの基部に対して静止して配置された座標系であることができる。スタンドの可動部品は、この基部に締着することができる。意図されるように使用される場合、基部は床面上に静止して配置することができる。これは、顕微鏡法システムを運ぶために、床面に沿って、例えばローラ上で移動可能なことから基部を排除するものではない。
【0039】
したがって、枢動点は、顕微鏡の焦点位置が変わった場合、特に摺動点の定義後、摺動点が変わらないように決定される。換言すれば、定義された枢動点の姿勢は、摺動点が定義された後に顕微鏡の焦点位置が変わった場合、変わらない。摺動点が定義された後に顕微鏡の対物面及び/又は鮮鋭面の姿勢が変わった場合、定義された摺動点の姿勢が変わらないことも可能である。
【0040】
特に、基準面は、焦点面に対応しないように、又は完全には顕微鏡の焦点面に配置されないように決定することができる。しかしながら、基準面の一部が焦点面に配置され、又は焦点面と交わることが考えられる。さらに、基準面は、対物面及び/又は鮮鋭面に対応しないように、又は完全にはこの平面/これらの平面に配置されないように決定することができる。しかしながら、基準面の一部がこの平面/これらの平面に配置され、又は交わることが考えられる。
【0041】
この場合、焦点面とは、焦点が配置され、且つ光軸に直交して延びる平面を示す。したがって、提案される方法を使用して、焦点ではなく、代わりに焦点面外の枢動点を枢動点として定義することが可能である。
【0042】
焦点から独立して枢動点を定義することも可能である。これは、焦点が変わるとき、枢動点が変わらないように定義されることを意味することができる。
【0043】
この場合、基準面はデータに基づいて決定することができる。これは、基準面が、術前又は術中に生成されるデータに基づいて決定されることを意味することができる。術中に生成されたデータは、特に解剖学的部位のトポグラフィ情報を符号化するデータであることができる。術中に生成されるデータは、姿勢検出デバイスにより生成され、姿勢マーキング器具又はマーカの空間姿勢を符号化するデータであることもできる。これについてより詳細に後述する。データは、顕微鏡の操作パラメータを符号化することもできる。
【0044】
基準面は、ユーザ入力からのデータに基づいて決定することもできる。枢動点を光軸と基準面との交点として定義することは、有利なことに、枢動点の単純で正確且つ信頼性の高い定義に繋がる。さらに、有利なことに、焦点面外の枢動点の単純で正確且つ信頼性の高い定義を保証することを達成することができる。そしてこれは、有利なことに、特に上述した鍵穴手術状況において、顕微鏡法システムの動作を改善し、枢動点は、例えばより詳細に後述するように、解剖学的部位の開口部によって囲まれるエリアにおける点として定義可能である。従来の方法と比較して、これは、特にそのような手術状況で、顕微鏡法システムの単純、ひいては時間が掛からない動作をもたらす。
【0045】
有利なことに、枢動点を決定する基準面は、1度だけ定義するだけでよく、次いで検索可能な形態で記憶することができる。本発明によれば、基準面について記憶された情報は次いで、後に検索され、新しい枢動点は、現在の姿勢での光軸と記憶された基準面との交点として決定される。次いで、顕微鏡法システムの少なくとも1つの駆動デバイス及び/又は少なくとも1つの制動デバイスは、顕微鏡法システムの上記顕微鏡が、新たに定義された枢動点の回りを移動するように動作することができる。これにより、基準面の新たな決定及び定義を可能にせずに、枢動と呼ぶこともできる、顕微鏡による基準面上の枢動点の回りの繰り返し移動を可能にする。これにより、ユーザは枢動モードを繰り返しアクティブ化することができ、そのないぞう場合、回転移動は常に、記憶された基準面における枢動点の回りで実行される。
【0046】
更なる実施形態では、基準面の姿勢は対物面から独立した基準座標系で定義される。これについて及び対応する利点については既に上述した。
【0047】
更なる実施形態では、基準面の姿勢及び/又は形状は、解剖学的部位の開口部によって囲まれるエリアが、基準面をなし、又は基準面によって包含されるように定義される。
【0048】
解剖学的部位の開口部は解剖学的構造によって定義することができる。特に、解剖学的部位の開口部は、頭蓋開口部であることができ、この開口部は、開口部を囲む頭蓋骨によって画定される。解剖学的部位の開口部が医療器具、例えばトロカールにより又は医療クランプにより画定されることも考えられる。
【0049】
この場合、解剖学的部位の開口部によって囲まれるエリアは、断面において解剖学的部位の開口部の縁部によって区切られるエリアを示すことができ、この断面は、解剖学的部位の開口部の中心線に直交して向けられる。換言すれば、上記断面におけるエリアは、解剖学的部位の開口部の縁部によって区切られる。
【0050】
囲まれるエリアの形状及び/又はサイズは、中心線に沿った異なる断面で変わり得る。この場合、包含エリアは、例えば、異なる断面で生じる1組のエリアからの最小サイズを有するエリアとして決定することができる。
【0051】
有利なことに、その結果として生じるのは、顕微鏡法システムの枢動点が、この定義される枢動点を用いた顕微鏡法システムの動作中、即ちこの枢動点によってアクティブ化されるポイントロックモードで、ユーザが、フォーカスが変わったとき、ビューが遮られずに解剖学的部位の開口部を通して高信頼性でのぞき込むことができるように、焦点面から独立して、特に焦点面外で容易、迅速、正確、且つ高信頼性で定義することができることである。枢動点の単純化された定義も可能になる。これは特に、既に説明した鍵穴手術状況で有利である。
【0052】
更なる実施形態では、解剖学的部位の開口部、特にその形状及び/又は姿勢は自動的に定義される。このために、特に検出デバイス、特にセンサからの出力信号を評価することができる。これに関する例示的な方法についてより詳細に後述する。術前又は術中に生成されるデータ、特に画像データを評価することにより、解剖学的部位の開口部を定義することも可能である。
【0053】
代替的には、解剖学的部位の開口部は手動で、特にユーザ入力により定義される。
【0054】
当然ながら、解剖学的部位の開口部を半自動的に、自動定義アルゴリズムがユーザ入力により支援される状態で定義することも可能である。
【0055】
この場合、基準面を決定するためのデータは、例えば検出デバイスにより又はユーザ入力により生成される。
【0056】
これは有利なことに、解剖学的部位の開口部、ひいては基準面の簡単で信頼性の高い定義に繋がる。
【0057】
更なる実施形態では、基準面は有界面である。基準面が、全辺で区切られた表面であることが可能である。この場合、基準面は、例えば円形面又は楕円形面であることができる。当然ながら、基準面が異なる形状、特に自由形式形状を有することも考えられる。
【0058】
代替的には、基準面が、全ての辺では区切られていない表面であることが可能である。例として、基準面は、一辺のみで区切られた表面であることができる。この場合、基準面の縁部の少なくとも1つのセクションが部分的に円形又は部分的に楕円形であることが可能であり得る。当然ながら、縁部の部分が異なる形状、特に自由形式形状を有してもよいことも考えられる。
【0059】
有界表面としての基準面の使用は有利なことに、枢動点を所望の領域に高い信頼性で定義することができることに繋がり、その結果として、例えば、顕微鏡法システムがこのようにして定義される枢動点を用いて動作する場合、特に基準面が解剖学的部位の開口部によって囲まれるエリアに対応するとき、ユーザが解剖学的部位の開口部を高信頼性でのぞき込むことができることを保証することが可能である。
【0060】
当然ながら、基準面が非有界表面、即ち平面であることも考えられる。この場合、枢動点の特に単純な定義が有利に得られる。
【0061】
更なる実施形態では、基準面は曲面である。これにより有利なことに、枢動点の定義の信頼性が更に改善され、そしてそれにより、既に上述したように、この定義された枢動点を用いて動作しているとき、ユーザが視界を失うリスクが低下する。
【0062】
更なる実施形態では、基準面の姿勢及び/又は形状は、術前に生成されたデータに基づいて決定される。そのような術前生成データは、例えば、CTベースのデータ又はMRIベースのデータであることができる。当然ながら、他の方法を使用して、術前に、基準面の姿勢及び/又は形状を符号化したデータを生成することも可能であり、又はそれに基づいて基準面の姿勢及び/又は形状を定義することができる。
【0063】
例として、手術計画時、解剖学的部位の開口部の姿勢及び/又は形状は、術前生成データ、特に手術を受ける患者の解剖学的構造を表すデータに基づいて定義することができる。
【0064】
この場合、術前データを、説明された基準座標系と幾何学的関係にすることが必要であり得る。これは、例えば当業者に既知のレジストレーションプロセスによって実施することができる。特に、これにより、術前生成データに基づいて決定された姿勢及び/又は形状を術前データの座標系から基準座標系に変換するための変換ルールを決定することができる。これは、術前生成データに基づいて基準面の姿勢及び/又は形状を決定するのに使用することができる。
【0065】
これは有利なことに、基準面の姿勢及び/又は形状の簡単な決定に繋がる。
【0066】
更なる実施形態では、解剖学的部位のトポグラフィ情報が決定され、基準面の姿勢及び/又は形状はこの情報に基づいて決定される。基準面の決定に使用されるデータは、この場合、トポグラフィ情報又はその一部を符号化することができる。
【0067】
トポグラフィ情報は、トポグラフィ情報を生成するデータにより生成することができる。そのようなデバイスは、特に画像捕捉デバイスを含むことができる。したがってこの場合、基準面の姿勢及び/又は形状は画像に基づいて決定することができる。このために、少なくとも1つの画像捕捉デバイスにより生成された画像表現を評価することができる。これに関して、画像捕捉デバイスとは、解剖学的部位のトポグラフィ情報を決定するデバイスを示すことができる。画像捕捉デバイスは、二次元又は三次元画像表現を生成することができ、例えばCCDカメラ又はCMOSカメラであることができる。しかしながら、画像捕捉デバイスは飛行時間カメラであることもできる。評価は評価デバイスにより実施することができ、評価デバイスは、マイクロコントローラ若しくは集積回路として設計することができ、又はマイクロコントローラ若しくは集積回路を含むことができる。
【0068】
このために、特に、顕微鏡法システムにより生成される少なくとも1つの画像、好ましくは複数の画像を評価することができる。この場合、顕微鏡法システムは少なくとも1つの画像捕捉デバイスを含み得、その画像表現は、特に顕微鏡法システムの評価デバイスにより評価されて、基準面の姿勢及び/又は形状を決定する。
【0069】
顕微鏡法システムの画像捕捉デバイスは、特に、顕微鏡により生成された画像表現をデジタル化するように機能する画像捕捉デバイスであることができ、次いで上記画像表現は、例えば顕微鏡法システムの適切な表示デバイスに提示される。
【0070】
代替的には、顕微鏡法システムの一部ではなく、且つ/又は説明されたデジタルを行うように機能しない画像捕捉デバイスからの画像表現を評価することも可能である。例として、画像捕捉デバイスは、姿勢検出デバイスの画像捕捉デバイスであることができる。姿勢検出デバイスは、顕微鏡法システムの姿勢検出デバイスであることができる。この場合、例えば、画像捕捉デバイスは顕微鏡法システムに配置/取り付けることができるが、顕微鏡により生成された画像表現のデジタル化に使用されない。
【0071】
当業者に既知の画像処理の方法、例えばセグメント化法は、姿勢及び/又は形状の画像ベースの決定に使用することができる。術前データを使用する場合のように、レジストレオ-ションによる画像捕捉デバイスの座標系と上記基準参照系との間の機械学的関係を決定する必要があり得、次いでこの幾何学的関係に基づいて、形状及び/又は姿勢を例えば座標変換の形態で決定することができる。
【0072】
例えば適したセグメント化法を利用することにより、例えば、解剖学的部位の開口部を1つ又は複数の画像表現において検出することが可能である。次いで解剖学的部位の開口部の縁部で囲まれたエリアを基準面として定義することができる。
【0073】
トポグラフィ情報に基づいて、そして更に顕微鏡の視線方向及び/又はユーザの視線方向に基づいて、基準面の姿勢及び/又は形状を決定することも可能である。
【0074】
このために、顕微鏡の視線方向を決定することができる。例として、これは顕微鏡のアライメントに基づいて決定することができる。例として、視線方向は、特に基準座標系における光軸の方向/向きとして決定することができる。
【0075】
ユーザの視線方向は、顕微鏡の視線方向に対応することができる。代替的には、ユーザの視線方向は、視線方向検出デバイス、例えば当業者に既知の注視追跡システムにより決定することができる。
【0076】
例として、視線方向と、トポグラフィ情報に基づいて決定可能な解剖学的部位の表面との交点を決定することが可能である。次いで、この交点が基準面上に配置されるように基準面を定義することができる。さらに、解剖学的部位の開口部のサーチエリアを次いで、この交点の姿勢に基づいて決定することができ、次いで、トポグラフィ情報を評価する適した方法を使用するために、例えば画像処理のために、解剖学的部位の開口部がサーチされる。複数の解剖学的部位の開口部が検出される場合、交点に最も近い解剖学的部位の開口部の縁部によって囲まれるエリアを基準面として定義することができる。ユーザが顕微鏡の視線方向又はユーザの視線方向を基準面の縁部と整列させ、上記視線方向が縁部に沿って移動するように所定の時間間隔にわたって上記視線方向を変え、そうして基準面の境界を画定することも可能である。
【0077】
トポグラフィ情報に基づくとともに、姿勢マーキング器具及び/又はマーカの姿勢に更に基づいて、基準面の姿勢及び/又は形状を決定することも可能である。姿勢マーキング器具及びマーカについてより詳細に後述する。
【0078】
この場合、姿勢及び/又は形状は、トポグラフィ情報を評価することにより、即ち特に画像ベースで検出することができる。
【0079】
さらに、基準面の姿勢及び/又は形状をマーカの姿勢に基づいて決定することができるように、少なくとも1つのマーカを配置することができる。例として、マーカの位置が共通面に配置されるように3つ以上のマーカを配置することができ、基準面もこの平面に配置される。マーカ間の線を結ぶことにより、基準面の境界線を符号化することができる。マーカの向きは、基準面の向きを符号化することもできる。したがって、基準面の姿勢を個々のマーカの姿勢により定義することも可能である。
【0080】
さらに、解剖学的部位の開口部のサーチエリアを器具/マーカに基づいて決定することができ、次いでトポグラフィ情報を評価するのに適した方法を使用するため、例えば画像処理のために、解剖学的部位の開口部をサーチする。複数の解剖学的部位の開口部が検出される場合、器具/マーカの姿勢に最も近い解剖学的部位の開口部の縁部により囲まれるエリアを基準面として定義することができる。
【0081】
これは同様に、有利なことに、基準面の形状及び/又は姿勢の簡単で信頼性の高い決定に繋がる。
【0082】
好ましい実施形態では、基準面は、少なくとも1つの基準面点を定義することによって決定され、基準面は、顕微鏡の光軸に直交して向けられ、基準面点が配置される平面として定義され、又はそのような平面に配置される。この場合、決定に使用されるデータは、基準面点の姿勢及び光軸の向きについての情報を包含又は符号化することができる。
【0083】
このために、特に上記基準座標系における顕微鏡の光軸の向きを決定することが必要であり得る。さらに、好ましくは同様に上記基準座標系において基準面点の姿勢を定義することが必要であり得る。基準面点の姿勢を定義する例示的な方法について後述する。
【0084】
この場合、基準面点は上記枢動点に対応せず、又は必ずしも対応するわけではない。
【0085】
これは有利なことに、基準面の簡単で迅速な定義に繋がる。
【0086】
基準面がこのように決定される場合、基準面点は一度だけ定義するだけでよく、例えば検索可能な形態で記憶することができる。基準面点についての記憶された情報は次いで、検索することができ、後の時点で、基準面に基づいて基準面を決定することができ、新しい枢動点は、現在の姿勢での光軸と、そうして決定された基準面との交点として決定される。次いで、顕微鏡法システムの少なくとも1つの駆動デバイス及び/又は少なくとも1つの制動デバイスは、顕微鏡法システムの上記顕微鏡が、新たに定義された枢動点の回りを移動するように動作することができる。これにより、基準面点の新たな定義を可能にせずに、顕微鏡は基準面上の枢動点の回りを繰り返し移動することができ、これはピボットと呼ぶこともできる。
【0087】
特にこの実施形態では、しかしこの実施形態に限定されずに、基準面は所定の幾何学的形状、例えば円形又は楕円形を有することができ、幾何学的形状の性質は予め決定することが可能である。
【0088】
更なる実施形態では、少なくとも1つの基準面点は、ユーザにより設定される焦点として決定される。したがってこの場合、基準面を決定するデータは、顕微鏡の動作パラメータデータを更に含むことができる。
【0089】
この場合、基準面点が決定/定義された後、顕微鏡法システムの焦点位置を再び変更することができるが、基準面は、変更前に設定された基準面点に基づいて決定される。基準面又は基準面点の姿勢が、手術中又は手術フェーズ中に変わらない場合、基準面点は1度定義するだけでよい。基準面又は基準面点の姿勢の変更は、例えば、患者の姿勢変化から出現することができる。
【0090】
基準面又は基準面点の姿勢の変化が、例えば適した姿勢追跡システムにより手術中又は手術フェーズ中に決定可能な場合、基準面又は基準面点の姿勢は、決定された姿勢変化に従って更新することもできる。
【0091】
代替的には、少なくとも1つの基準面点は、姿勢マーキング器具のポジショニングにより定義される。姿勢マーキング器具は特に、特に手術中、ユーザが手動で位置決め可能な器具であることができる。例えば、基準面点の所望の姿勢に対応する姿勢にユーザが姿勢マーキング器具を位置決めすることにより、基準面点を定義することが可能であり、次いで、例えばユーザにより、姿勢決定信号が生成される。この信号は、特にユーザ入力、例えば触覚、音響、又は任意の他のタイプのユーザ入力により生成することができる。基準面点の姿勢は、姿勢マーキング器具のそうして決定された姿勢として定義することができる。姿勢マーキング器具の姿勢は、例えば、姿勢マーキング器具の所定のポイント、例えば先端部の姿勢に対応することができる。
【0092】
代替的には、基準面点は少なくとも1つのマーカの姿勢に基づいて決定することができる。特に手術中、マーカは器具に静止して配置することができ、より具体的には解剖学的部位に配置することができる。
【0093】
このために、姿勢マーキング器具又はマーカの姿勢は、特に上記基準座標系において決定することができる。姿勢は、例えば姿勢検出デバイス、例えば光学姿勢検出デバイス、特に立体姿勢検出デバイスにより決定することができる。当然ながら、他の姿勢検出デバイスを使用することもできる。
【0094】
姿勢マーキング器具又はマーカの姿勢は、例えば、光学姿勢検出デバイスから又は顕微鏡法システムの画像捕捉デバイスの画像表現からの画像表現に基づいて画像ベースで決定することもできる。
【0095】
姿勢マーキング器具又はマーカは、少なくとも1つの標的を更に含むことができ、例えば、少なくとも1つの標的は少なくとも1つのマーカ要素を含み、又は有する。この場合、マーカ要素は、特に、光学的に捕捉可能であることができ、したがって、画像表現において検出可能であることもでき、特に、光学的に検出可能なパターンを有することができる。
【0096】
この場合、標的は、例えば姿勢マーキング器具又はマーカに締着することができる。
【0097】
姿勢マーキング器具は、例えば、シリンジ、ツイーザ、スプーン、シザーズ、外科用メス、鉗子、吸引器、若しくは焼灼器、又は手術中、ユーザにより動的に位置決めされ、又は動的に位置決め可能な他の器具として設計することができる。
【0098】
マーカは、例えば、クランプ、特に皮膚クランプ、ホルダ、トロカール、外科用開創器、皮膚ステープラのみならず、リトラクタ、例えば脳リトラクタ又は手術中に静止して配置される別の器具としても設計することができる。
【0099】
姿勢マーキング器具又はマーカはしたがって、上述した器具の1つにより形成することができる。
【0100】
したがってこの場合、基準面を定義するデータは、姿勢検出デバイスにより生成されるデータであることができる。
【0101】
この結果として、基準面点の簡単な定義も同様に出現する。
【0102】
代替的には、少なくとも1つの基準面点は、視線方向検出に基づいて定義することができる。視線方向検出については既に上述してある。
【0103】
さらに、基準面点は、視線方向に沿った点として、例えば視線方向軸と所定又はユーザ定義のトポグラフィ特徴との交点として定義することができる。この定義は、ユーザ入力により、特に音声コマンドの形態の音響ユーザ入力により実施することができる。
【0104】
例として、オートフォーカス機能を実施することができ、その場合、基準面点は、オートフォーカス機能が実施された後に決定される焦点として定義される。この場合、基準面点が決定/定義された後、顕微鏡法システムの焦点位置を再び変更することができる。
【0105】
この結果、基準面点の簡単な定義も同様に有利に出現する。
【0106】
更なる実施形態では、基準面点の姿勢は、既に定義された基準面点の姿勢を変更することによって定義される。例として、姿勢は距離を決定することによって変更することができ、基準面点の姿勢は、特に所定の方向に沿って、例えば既に定義された基準面への法線方向に沿って又は特に顕微鏡に向かう光軸に沿ってこのように決定された距離により変更されている、既に定義された基準面点の姿勢によって決定される。
【0107】
距離は、例えばユーザ入力により、例えば触覚、音響、又は任意の他のタイプのユーザ入力により定義することができる。これは有利なことに、基準面点、ひいては基準面の簡単な変更に繋がる。
【0108】
更なる実施形態では、少なくとも3つの基準面点が決定され、基準面の姿勢及び/又は形状は、少なくとも3つの基準面点が基準面上に配置されるように又は基準面又は基準面を含む平面からの基準面点の距離が最小であるように決定される。例えば、基準面の姿勢及び/又は形状が、少なくとも3つの基準面点が基準面の縁部点を形成するように決定されることが考えられる。しかしながら、これは必須ではない。したがって、少なくとも3つの基準面点が基準面のいかなる縁部点も形成しないことも考えられる。基準面点の定義に関して、上記例示的な方法が参照される。この結果、基準面の簡単な定義が同様に、有利に出現する。
【0109】
更なる実施形態では、光軸が有界基準面と交わらない場合、焦点は枢動点として定義される。これは有利なことに、ユーザが顕微鏡法システムを上記ポイントロックモード及び提案される方法に従って定義された点の回りの移動を実施するモードの両方に容易にすることができることを意味する。
【0110】
顕微鏡法システムが、顕微鏡法システムの顕微鏡が枢動点の回りを一定距離移動するように動作することが可能である。一定距離でのそのような移動は、顕微鏡の移動が手動操作可能な制御デバイス、例えばジョイスティックにより制御される場合、特に興味深く、その場合、制御デバイスを操作することによる距離の変更は望ましくないか、又は可能ではない。一定距離により顕微鏡の移動を可能にし、倍率、画像セクション、明度、及び任意選択的には更なる性質等の光学性質は、移動中、同じままであるか、又は変更する必要はない。当然ながら、手動作動によって行われる移動中に一定距離が保証される場合も、これを保証することができる。
【0111】
更なる実施形態では、焦点位置は枢動点からの顕微鏡の距離変化に基づいて、即ち顕微鏡が枢動点の回りを移動する場合、距離が変化するとき、変わる。これは自動的に実施することができる。距離は、顕微鏡の光軸に沿った距離であることができる。例として、焦点位置の変更は、距離変更に等しい値であることができる。換言すれば、距離が変わった場合であっても合焦点/領域にピントが合ったままであるように再合焦を実行することができる。この場合、枢動点の回りを移動する場合であっても、焦点位置は基準座標系において一定のままであることができる。
【0112】
しかしながら、そのような再合焦の実施は必須ではない。したがって、焦点位置が、枢動点からの顕微鏡の距離変化に基づいて変わらない(自動的に)ことが望ましいことがある。この場合、焦点位置は、枢動点の回りを移動する場合、基準座標系において変わることができる。
【0113】
顕微鏡法システムも提案され、本顕微鏡法システムは、
-顕微鏡と、
-顕微鏡を保持するスタンドであって、スタンドは、顕微鏡を移動される少なくとも1つの駆動デバイスを備える、スタンドと、
-少なくとも1つの制御・評価デバイスであって、顕微鏡法システムは、顕微鏡が枢動点の回りを移動するように、制御・評価デバイスにより動作可能、特に制御可能であり、基準面が決定され、顕微鏡の光軸と基準面との交点が、枢動点として使用される、少なくとも1つの制御・評価デバイスと、
を備える。
【0114】
本発明によれば、基準面の姿勢は、焦点位置独立の基準座標系において定義され、枢動点は、基準座標系における光軸と、そうして定義された基準面との交点として決定可能である。
【0115】
特に、顕微鏡法システムは、メモリデバイス、例えばRAM又はROMベースの眼折りデバイスを備えることができ、そこに、基準座標系における基準面の姿勢についての情報及び任意選択的に、例えば基準面の形状等の更なる基準面固有の情報が検索可能に記憶される。この情報は、制御・評価デバイスにより検索することができ、次いで枢動点もこの制御・評価デバイスにより決定することが可能である。
【0116】
したがって、顕微鏡法システムは、本開示に開示される実施形態の1つによる方法が顕微鏡法システムを使用して実行可能なように特に構成される。これは有利なことに、そのような方法を実行することができる顕微鏡法システムに繋がる。
【0117】
この場合、制御・評価デバイスは、マイクロコントローラ又は集積回路として実施し得、又はそれ(ら)を備え得る。制御・評価デバイスは特に、トポグラフィ情報を評価する上記評価デバイスを形成することができる。さらに、制御・評価デバイスは、基準面を決定/定義する上記方法を実行することができる。
【0118】
更なる実施形態では、基準面の姿勢は対物面から独立した基準座標系において定義される。この利点及び対応する利点について既に説明した。
【0119】
更なる実施形態では、顕微鏡法システムは、トポグラフィ情報を生成するデバイスを備え、上記デバイスは特に、画像捕捉デバイスとして設計可能であり、又は少なくとも1つの画像捕捉デバイスを備えることが可能なものとして設計可能である。この利点及び対応する利点については既に説明した。更に代替又は追加として、顕微鏡法システムは、姿勢マーキング器具及び/又はマーカの姿勢を検出する少なくとも1つの姿勢検出デバイスを備える。
【0120】
さらに、顕微鏡法システムは、ユーザの視線方向を検出するデバイスを備え得る。さらに、顕微鏡法システムは、顕微鏡の姿勢、特に顕微鏡の視線方向又は光軸の向きを決定するデバイスを備え得る。
【0121】
同様に、顕微鏡法システムはユーザ入力デバイスを備え得る。さらに、顕微鏡法システムは、術前データを読み取るインターフェースを備え得る。
【0122】
本発明について例示的な実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1】本発明による方法の概略フローチャートを示す。
図2】基準面を決定する概略フローチャートを示す。
図3a解剖学的部位における解剖学的部位の開口部の模式図を示す。
図3b解剖学的部位における解剖学的部位の開口部の更なる模式図を示す。
図4】本発明による顕微鏡法システムの模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下、同一の参照符号は、同一又は同様の技術特徴を有する要素を示す。
【0125】
図1は、顕微鏡法システム1(例えば図4参照)を動作させる本発明による方法の概略フローチャートを示す。
【0126】
ここでは、第1のステップS1において、基準面19が決定される(例えば図3参照)。これは特に、基準座標系における基準面19の支持点の姿勢、即ち例えば位置及び基準面19の向きの決定を含む。
【0127】
この場合、基準面19はデータに基づいて決定される。例として、決定のために術前データを読み取ることができ、基準面19は術前データを評価することにより決定される。このために、術前データの座標系を上記基準座標系に変換することが必要であり得る。これは、適切なレジストレーション手順を使用して実施することができる。
【0128】
例として、画像処理方法を使用して、術前データにおける解剖学的部位の開口部20を検出することが可能であり、この解剖学的部位の開口部20は例えば、手術計画者、例えばユーザ入力により定義される、計画された解剖学的部位の開口部20である。
【0129】
次いで、検出された解剖学的部位の開口部20により囲まれるエリアが基準面19を形成し、又は基準面19により囲まれるように、基準面19を定義することができる。
【0130】
特に術前、解剖学的部位のトポグラフィ情報を決定することも可能であり、次いでトポグラフィ情報を符号化するデータを評価して、基準面19を定義することができる。既に詳細に上述したように、トポグラフィ情報は例えば、例えば解剖学的部位の二次元又は三次元顔図表現の形態の画像情報であることができ、画像情報は1つ又は複数の画像捕捉デバイスにより生成することが可能である。例として、画像処理方法を使用して、この術中生成画像データにおける解剖学的部位の開口部20を検出することが可能である。その場合も、基準面19は、検出された解剖学的部位の開口部20により囲まれるエリアが基準面19を形成し、又は基準面19により囲まれるように定義することができる。
【0131】
さらに、基準面19の決定は、基準面19の形状を決定することを含むこともできる。形状のこの決定は特に、上記データを評価することにより、例えば適した画像処理方法を使用することにより実施することもできる。しかしながら当然、基準面19の形状が所定の形状であることも考えられる。この場合、形状の全ての性質が予め決定されることが可能であり得る。形状の特定の性質のみが予め決定され、一方、形状の更なる性質はデータに基づいて決定されることも可能であり得る。例として、基準面19の形状は円形であるように定義し得、半径はデータに基づいて決定される。
【0132】
さらに、このようにして決定された基準面19の姿勢は、焦点位置独立の基準座標系に、特に図4に示される基準座標系に検索可能に記憶される。この場合、基準面の姿勢は、対物面から独立且つ/又は鮮鋭面から独立した基準座標系において定義され、検索可能に記憶されてもよい。
【0133】
したがって、基準面19は、特に患者13(図4参照)の解剖学的部位の姿勢が変わらない場合、1度決定されるだけでよい。次いで、特に光軸17の姿勢の変化後、各事例で記憶された基準面19と、その現在の姿勢、即ちその現在の位置及び現在の向きでのこの光軸17との交点として、新しい枢動点を決定することができる。
【0134】
したがって、基準面19の姿勢が既に決定されていた場合、第1のステップS1において説明された決定への代替として、基準面19の姿勢についての記憶された情報をメモリデバイスから検索することもできる。
【0135】
さらに、第2のステップS2において、顕微鏡2の光軸17の姿勢が決定される。これは特に、光軸17の向きの決定及び基準座標系における光軸17の支持点、即ち光軸17と顕微鏡2のレンズとの交点の位置の決定を含む。基準座標系について図4を参照してより詳細に後述する。光軸17の向きは特に、顕微鏡法システム1、特に顕微鏡法システム1のスタンド3の姿勢/角度センサからの出力信号に基づいて決定することができる。
【0136】
さらに、顕微鏡2の枢動点21は、光軸17と基準面19との交点として第3のステップS3において決定される。特に、これは、基準座標系におけるこの枢動点21の座標を決定することを含む。
【0137】
第4のステップS4において、顕微鏡法システム1のスタンド3(例えば図4参照)の駆動デバイス及び/又は制動デバイスは、顕微鏡法システム1の顕微鏡2が枢動点21の回りを距離A(例えば図3参照)移動するように動作する。この場合、距離Aは一定距離であることができる。しかしながら、これは必須ではない。例として、回転軸4、5、6の回りのスタンド3の可動部品の移動は、これらの移動の結果として距離Aが変わる場合、このためにブロックすることができる。さらに、顕微鏡2が枢動点21の回りを一定距離A移動するそのような移動のみが、駆動デバイスによって可能になり、又は生成されることが可能である。
【0138】
この動作は、制御デバイス7による開ループ/閉ループ制御を受けることができる。制御デバイス7は、光軸17の姿勢の決定、基準面19の決定、及び交点の決定を実施することもできる。
【0139】
図2は、基準面19を決定するための概略フローチャートを示す。ここで、基準面点22(例えば図3b参照)が、第1の部分ステップS1aにおいて定義される。基準面点22は、決定すべき枢動点21と異なることができる。基準面点22を定義する種々の選択肢については既に説明した。例として、基準面点22は、ユーザにより設定される顕微鏡2の焦点として決定することができ、焦点はその後、再び変更することが可能である。基準面点22が少なくとも1つのマーカの姿勢に基づいて決定されることも同様に可能であり、この姿勢は、例えば画像ベースで決定することが可能である。さらに、基準面点22が視線方向検出に基づいて定義されることが可能である。基準点についての情報は、検索可能な形態で記憶することができ、基準面19及び枢動点21の簡単な再決定を可能にする。
【0140】
更なる部分ステップ1bにおいて、基準面19は、平面として定義され、又は顕微鏡2の光軸17に直交して向けられ、基準面点22が配置される平面におけるエリアとして決定される。
【0141】
複数の基準面点22、特に少なくとも3つの基準面点が第1の部分ステップ1aにおいて決定されることが可能であり、次いで基準面19の姿勢及び/又は形状が、複数の基準面点22が基準面19に配置され、又は基準面19若しくは基準面19を含む平面から所定の尺度を超えずに離間されるように決定される。
【0142】
図3aは、解剖学的部位における解剖学的部位の開口部20の模式図を示す。顕微鏡2及び顕微鏡2の光軸17も示されている。ここで、顕微鏡2は異なる向きで示されている。枢動点21が基準面19に配置されることが更に明らかであ、基準面19の姿勢及び形状は、解剖学的部位の開口部20により囲まれるエリアが基準面19を形成するように定義される。
【0143】
解剖学的部位の開口部20は例えば、下の構造へのアクセスを得るために、神経外科手術中、患者の頭蓋骨に導入される頭蓋開口部であることができる。洞穴23が脳に規則正しく作成され、その直径は頭蓋開口部の直径よりも大きい。上記基準面19の点として枢動点21を定義することは有利なことに、例えば頭蓋開口部を含む頭蓋構造によりビューが妨げられずに、ユーザ、例えば神経外科医が顕微鏡2を通して異なる視線方向から洞穴の基底面を見ることができることを意味し、この実現は更に、少数のみの自由度での構成要素を移動により可能になる。枢動点21から独立して、顕微鏡2の焦点24を設定することも可能である。したがって特に、枢動点21の位置を変えずに焦点24の位置を変更することが可能である。
【0144】
図3bは、解剖学的部位における解剖学的部位の開口部20の更なる模式図を示す。同様に、顕微鏡2及び顕微鏡2の光軸17も示される。枢動点21が基準面19に配置されることが更に明らかであり、基準面19の姿勢及び形状は、解剖学的部位の開口部20により囲まれるエリアが基準面19を形成するように定義される。
【0145】
例えばユーザにより位置決めすることができる姿勢マーキング器具24も示されている。例えば姿勢検出デバイス(図示せず)により検出可能な姿勢マーキング器具24の姿勢は、姿勢マーキング器具24の先端部により定義される。光学的に検出可能なマーカ要素25が模式的に示され、マーカ要素は姿勢検出デバイスにより検出することができ、先端部により定義される姿勢は次いで、これらの撮像されたマーカ要素25に基づいて決定可能である。マーカ要素25は、標的9(図4参照)の一部であることができる。基準面点22が姿勢マーキング器具24により定義されることも示されている。上記基準面点は基準面19を定義し、基準面19は同時に、顕微鏡2の光軸17に直交して向けられる。
【0146】
図4は、本発明による顕微鏡法システム1の模式図を示す。顕微鏡法システム1は顕微鏡2を備え、顕微鏡2は、顕微鏡2を保持するスタンド3上に、特にスタンド3の自由端部に配置される。スタンド3は、顕微鏡2の姿勢、即ち位置及び/又は向きを変えるために、顕微鏡2を移動できるようにする。基準座標系は、垂直軸z及び長手方向軸xを用いて示されている。垂直軸zはここでは、重力の方向と平行し、重力の逆に向けられる。長手方向軸xは垂直軸zに直交して向けられる。基準座標系の横断軸(図示せず)は、ここでは、長手方向軸x及び垂直軸zに直交して向けられ、軸x、zはデカルト座標系を形成する。
【0147】
示されるスタンド3は、顕微鏡2を保持し、移動させる運動学的構造の一例である。当業者は当然ながら、他の運動学的構造を使用してもよいことがわかる。
【0148】
スタンド3は、顕微鏡2を移動させる駆動デバイス(図示せず)を備える。ここでは、駆動デバイスは例えば、回転軸4、5、6及び垂直軸zと平行する回転軸の回りのスタンド3の可動部品の回転移動を可能にすることができる。制御デバイス7も示されており、制御デバイス7は、駆動デバイス(図示せず)の制御に使用され、例えばマイクロコントローラを含み得る。この場合、制御デバイス7は制御・評価デバイスを形成することができる。
【0149】
さらに、制御デバイス7は、スタンド3の制動デバイス(図示せず)を制御することもでき、これは、可動部品の回転移動を制動又は阻止することができる。
【0150】
制御デバイス7により、駆動デバイスは特に、顕微鏡2が特に基準座標系において所望の移動を実施するように制御することができる。例として、顕微鏡2を所望の向きで所望の空間位置に位置決めすることが可能である。さらに、制御デバイス7は、顕微鏡2の動作パラメータ及び/又は移動パラメータを調整して、例えば、顕微鏡2の合焦値を調整するように機能することもできる。このために、制御デバイス7は、顕微鏡2及び/又は駆動デバイスに信号接続且つ/又はデータ接続することができる。
【0151】
顕微鏡法システム1は、ユーザ8により保持され移動することができる器具19の姿勢を検出する姿勢検出デバイスを更に備える。器具19は特に姿勢マーキング器具24であることができ、姿勢マーキング器具24は例えば図3bに示されている。ユーザ8は、例えば外科医であることができる。姿勢検出デバイスは、少なくとも1つのマーカ要素25(例えば図4参照)を有する少なくとも1つの標的9と、標的を捕捉する少なくとも1つの画像捕捉デバイス10と備える。姿勢検出デバイスにより、画像捕捉デバイスに対する標的9の姿勢は、特に姿勢検出デバイスの座標系において決定することができる。この場合、標的9は、少なくとも1つの受動マーカ要素25、好ましくは3つの受動マーカ要素25を含む。
【0152】
図4は、標的9が器具19に締着されることを示す。器具19は、例えば吸引器として構成することができる。器具19はこの場合、標的9が画像捕捉デバイス10の捕捉領域に配置されるようにユーザ8により保持される。
【0153】
器具19の姿勢は、画像ベースで、決定中の標的9の姿勢により、姿勢検出デバイスにより検出することができ、器具19の姿勢は次いで、器具19上の標的9の固定された配置を考慮して決定することもできる。標的9と器具19との間の相対姿勢は、この場合、事前に既知であり得、例えばレジストレーションにより決定し得る。
【0154】
顕微鏡法システム1の画像捕捉デバイス10、例えばCCDカメラも示されている。画像捕捉デバイス10は、顕微鏡2の顕微鏡本体16に配置される。特に、画像捕捉デバイスは顕微鏡本体16の筐体に配置される。さらに、画像捕捉デバイス10は特に、顕微鏡2の一部に機械的に固設され、したがって、上記部分に対して固定位置に配置される。
【0155】
画像捕捉デバイス10と制御デバイス7との間に信号接続及び/又はデータ接続12も示されている。例えば姿勢検出デバイスの一部であり得る制御デバイス7又は評価デバイス(図示せず)により、姿勢検出デバイスの三次元座標系において標的9と捕捉デバイス10との間の相対姿勢を決定することが可能である。例として、画像捕捉デバイス10の二次元画像座標系における標的9の姿勢を決定し、次いでこの姿勢に基づいて、姿勢検出デバイスの座標系における姿勢を決定することが可能である。この場合、位置及び向きは両方とも、姿勢検出デバイスの三次元座標系において決定することができる。したがって、標的9を器具19に締着することにより、姿勢検出デバイスの座標系、ひいては基準座標系における器具19の姿勢を決定することも可能である。特に、標的9の姿勢の変化、ひいては器具19の姿勢の変化は、姿勢検出デバイスにより検出することができる。
【0156】
顕微鏡法システム1が動作する前、姿勢検出デバイスの座標系は、示される基準座標系とレジストレーションすることができる。換言すれば、姿勢検出デバイスの座標系における姿勢を基準座標系に変換するための変換ルールを決定することができる。
【0157】
図4は、画像捕捉デバイス10が顕微鏡本体16内に配置されることを示す。当然ながら、これらを顕微鏡本体16の外側で顕微鏡本体16に締着することも可能である。画像捕捉デバイスを顕微鏡法システム1に締着せず、むしろ、顕微鏡法システム1のスタンド3と異なる姿勢検出デバイスのスタンドに締着することも可能である。
【0158】
標的9の姿勢は、画像捕捉デバイス10の厳密に1つの二次元画像表現により検出することができる。
【0159】
手術台14に横になっている患者13も示されている。顕微鏡2が接眼レンズ15を備えることも示され、ユーザ8は接眼レンズ15を見て、顕微鏡2を通して患者13の部分領域を特に拡大して見る。
【0160】
顕微鏡2の光軸17も示されている。顕微鏡2から患者13へのこの光軸に沿ったビーム方向において、画像捕捉デバイス10は、顕微鏡2のガラスプレート18の前方に配置され、ガラスプレート18は、外部環境から顕微鏡本体16の筐体内部を閉鎖する。したがって、ガラスプレート18は、画像捕捉デバイス10と観測すべき患者13との間に配置される。
【0161】
この場合、姿勢を検出する画像捕捉デバイス10の捕捉領域は、患者又は患者13の身体領域を拡大して示す顕微鏡の捕捉領域と少なくとも部分的に重なる。
【0162】
例えば手を使って器具19を動かすことにより、ユーザ8が標的9を動かし、したがって、標的9の姿勢を変えることが可能である。姿勢の変化はこの場合、姿勢検出デバイスにより検出することができ、このように設定された姿勢は次いで、基準表面点22(図3b参照)の姿勢として決定することが可能である。
【0163】
スタンド3の可動部品間の相対姿勢を検出する角度センサは示されず、制御デバイス7は、角度センサからの出力信号に基づいて、顕微鏡2の空間姿勢、特に光軸17の空間姿勢も決定することが可能である。
【0164】
顕微鏡法システムは、顕微鏡2が枢動点21の回りを一定距離A(図3a参照)移動するように、制御デバイス7により動作可能であり、枢動点21は、顕微鏡2の光軸17と基準面19との交点である。さらに、基準面19は、データに基づいて、特に制御デバイス7により決定することができる。これについては既に上述した。
【符号の説明】
【0165】
1 顕微鏡法システム
2 顕微鏡
3 スタンド
4 回転軸
5 回転軸
6 回転軸
7 制御デバイス
8 ユーザ
9 標的
10 画像捕捉デバイス
12 信号接続及び/又はデータ接続
13 患者
14 手術台
15 接眼レンズ
16 顕微鏡本体
17 光軸
18 ガラスプレート
19 器具
20 解剖学的部位の開口部
21 枢動点
22 基準面点
23 洞穴
24 姿勢マーキング器具
25 マーカ要素
26 焦点
A 距離
S1 第1のステップ
S2 第2のステップ
S2a 第1の部分ステップ
S2b 第2の部分ステップ
S3 第3のステップ
S4 第4のステップ
図1
図2
図3a
図3b
図4