(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】レーザスキャナの機能性の検証
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240307BHJP
【FI】
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2023528152
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2021080903
(87)【国際公開番号】W WO2022101125
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】102020129663.0
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ、サーゲーブ
(72)【発明者】
【氏名】ティール、ダニエル
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257325(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018110566(DE,A1)
【文献】特開2002-031685(JP,A)
【文献】特開2019-020149(JP,A)
【文献】特開2004-184333(JP,A)
【文献】特開2011-215005(JP,A)
【文献】特開2016-125898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性窓(5)を有するハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に配置された、レーザ信号(9)を放射するための送信機ユニット(6)と、前記レーザ信号(9)を偏向させるための可動偏向ユニット(10)と、前記ハウジング(4)内に配置された検出器ユニット(7)とを備えるレーザスキャナ(2b)の機能性を確認するための方法であって、前記方法により、
-少なくとも1つの試験信号(15)が試験段階中に前記送信機ユニット(6)によって送信され、
-前記偏向ユニット(10)は、前記少なくとも1つの試験信号(15)が前記窓(5)に向けられないように、前記試験段階中に前記送信機ユニット(6)に対して位置合わせされ、
そして、
-前記少なくとも1つの試験信号(15)の成分(15’)が、前記検出器ユニット(7)の少なくとも2つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)によって記録され、少なくとも2つの検出器信号が、前記検出された成分(15’)に基づいて生成されることと、
-パルス幅が、前記少なくとも2つの検出器信号の各々について演算ユニット(2a)によって決定されることと、
-前記少なくとも2つの検出器信号のうちの第1の検出器信号の前記パルス幅の、前記少なくとも2つの検出器信号のうちの第2の検出器信号の前記パルス幅に対する比が、前記演算ユニット(2a)によって決定されることと、
-前記比に基づいて、前記送信機ユニット(6)及び/又は前記検出器ユニット(7)の機能性が確認されることと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記比が前記演算ユニット(2a)によって所定の基準比と比較され、前記比較の結果に応じて誤差信号が生成されるという点で、前記機能性を確認することを含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
-それぞれの対の前記検出器信号の互いに対する前記パルス幅の比は、前記少なくとも2つの検出器信号の検出器信号の対ごとに、前記演算ユニット(2a)によって決定されることと、
-前記機能性は、前記検出器信号の前記対の前記比に基づいて確認されることと
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの検出器信号のうちの1つは、前記比に基づいて前記演算ユニット(2a)によって識別され、前記識別された検出器信号を含有する各対の前記比は、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の閾値だけずれていること
を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)のうち、前記識別された検出器信号に割り当てられた光学検出器(7a、7b、7c、7d)の制限された機能性が識別されること
を特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの検出器信号のグループが、前記比に基づいて前記演算ユニット(2a)によって識別され、各対の前記比は、前記識別されたグループからの検出器信号と、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の閾値だけずれている、前記識別されたグループの一部ではない検出器信号とを含有すること
を特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記識別されたグループに割り当てられた、前記送信機ユニット(6)の光源の制限された機能性が識別されること
を特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
演算ユニット(2a)と、レーザスキャナ(2b)とを有するレーザスキャナ装置であって、
-前記レーザスキャナ(2b)は、光透過性窓(5)を有するハウジング(4)と、ハウジング(4)内に配置された、レーザ信号(9)を放射するための送信機ユニット(6)と、制御ユニット(8)と、レーザ信号(9)を偏向させるための可動偏向ユニット(10)と、ハウジング(4)内に配置された検出器ユニット(7)とを有し、
-前記制御ユニット(8)は、試験段階中に、少なくとも1つの試験信号(15)を送信するように前記送信機ユニット(6)を駆動し、前記試験段階中に、前記少なくとも1つの試験信号(15)が前記窓(5)に向けられないように、偏向ユニット(10)が前記送信機ユニット(6)に対して位置合わせされるように前記偏向ユニット(10)を駆動するように構成され、
そして、
-前記検出器ユニット(7)は、前記少なくとも1つの試験信号(15)の反射及び/又は散乱成分(15’)を記録し、前記検出された成分(15’)に基づいて少なくとも2つの検出器信号を生成するように構成された少なくとも2つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)を有することと、
-前記演算ユニット(2a)は、
-前記少なくとも2つの検出器信号の各々のパルス幅を決定し、
-前記少なくとも2つの検出器信号のうちの第1の検出器信号の前記パルス幅の、前記少なくとも2つの検出器信号のうちの第2の検出器信号の前記パルス幅に対する比を決定し、かつ
-前記比に基づいて前記送信機ユニット(6)及び/又は前記検出器ユニット(7)の機能性を確認する
ように構成されることと
を特徴とする、レーザスキャナ装置。
【請求項9】
前記偏向ユニット(10)は、回転可能若しくは旋回可能なミラー又は微小電気機械ミラーシステムを含有すること
を特徴とする、請求項8に記載のレーザスキャナ装置。
【請求項10】
-前記送信機ユニット(6)は、少なくとも2つの光源を有し、前記少なくとも2つの光源の各光源が、前記少なくとも2つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)のうちの少なくとも1つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)に割り当てられることと、
-前記少なくとも2つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)の各光学検出器(7a、7b、7c、7d)が、前記少なくとも2つの光源のうちの正確に1つの光源に割り当てられることと
を特徴とする、請求項8又は9に記載のレーザスキャナ装置。
【請求項11】
前記制御ユニット(8)は、前記少なくとも2つの光源が時間オフセットを伴って前記少なくとも1つの試験信号(15)のそれぞれの試験信号(15)を送信するように、前記送信機ユニット(6)を駆動するように構成されること
を特徴とする、請求項10に記載のレーザスキャナ装置。
【請求項12】
前記演算ユニット(2a)は、前記少なくとも2つの検出器信号の検出器信号の対ごとに、それぞれの対の検出器信号の互いに対する前記パルス幅の比を決定し、前記検出器信号の前記対の前記比に基づいて前記機能性を確認するように構成されること
を特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載のレーザスキャナ装置。
【請求項13】
-前記演算ユニット(2a)は、前記比に基づいて前記少なくとも2つの検出器信号のうちの1つを識別するように構成され、前記識別された検出器信号を含有する各対の前記比は、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の第1の閾値だけずれていること、及び/又は
-前記演算ユニット(2a)は、前記比に基づいて前記少なくとも2つの検出器信号のグループを識別するように構成され、各対の前記比は、前記識別されたグループからの検出器信号と、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の第2の閾値だけずれている、前記識別されたグループの一部ではない検出器信号とを含有すること
を特徴とする、請求項12に記載のレーザスキャナ装置。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載のレーザスキャナ装置(2)を有する自動車。
【請求項15】
請求項8から13のいずれか一項に記載のレーザスキャナ装置(2)に請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を行わせる命令を有するコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスキャナの機能を確認するための方法に関し、レーザスキャナは、光透過性窓を有するハウジングと、ハウジング内に配置された、レーザ信号を放射するための送信機ユニットと、レーザ信号を偏向させるための可動偏向ユニットと、ハウジング内に配置された検出器ユニットとを備え、少なくとも1つの試験信号が試験段階中に送信機ユニットによって送信され、偏向ユニットは、少なくとも1つの試験信号が窓に向けられないように、試験段階中に送信機ユニットに対して位置合わせされる。本発明はまた、演算ユニット及びレーザスキャナを有する対応するレーザスキャナ装置、レーザスキャナ装置を有する自動車、並びにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子車両ガイドシステム又は運転者支援システムの様々な機能を実現するために、ライダシステムを自動車に取り付けることができる。これらの機能には、距離測定、距離制御アルゴリズム、車線維持アシスタント、物体追跡機能などが含まれる。
【0003】
ライダシステムの公知の設計は、いわゆるレーザスキャナであり、レーザスキャナでは、レーザビームが偏向ユニットによって偏向され、その結果、レーザスキャナの異なる偏向角を実現することができる。放射されたレーザビームは、周囲で部分的に反射又は散乱することができ、散乱又は反射された成分は、次に、レーザスキャナ、特にレーザスキャナの検出器ユニットに部分的に衝突することができ、それにより、検出された成分に基づいて対応する検出器信号を生成することができる。レーザスキャナの送信機ユニットは、1つ以上のレーザ光源を含有し、検出器ユニットは、1つ以上の光学検出器、例えばフォトダイオードを含有する。
【0004】
レーザスキャナの最大範囲は、原則として、及びとりわけ、自動車の文脈において非常に重要である。レーザスキャナの機能性、特に最大範囲は、例えば、光源又は光学検出器の汚染によって引き起こされ得る。例えば、汚染は、製造プロセス中に生じるダスト粒子まで遡る可能性がある。このようなダスト粒子は、光源又は光学検出器を部分的に覆い、したがってレーザスキャナの範囲を低減する可能性がある。原則として、汚染は、例えば、製造プロセスの最後の試験によって識別することができる。しかしながら、汚染が試験後にのみ生じること、又は試験前に既に存在する汚染が試験後にのみ光源又は光学検出器を覆う可能性がある。
【0005】
独国特許出願公開第102018110566号明細書は、レーザスキャナの機能性を確認するための方法を記載している。この場合、光信号がレーザスキャナの送信機によって送信され、一方、回転可能又は旋回可能な偏向ミラーユニットが、送信機から来る光信号がレーザスキャナのハウジングとしての窓に向かうことができないように位置合わせされる。ハウジング内で散乱された光信号は、受信機によって受信され、基準と比較される。比較の結果に応じて、レーザスキャナの機能性に関する通知が任意選択的に生成される。
【0006】
この方法の欠点は、レーザスキャナの機能性を非常に非特異的な様式でしか確認することができないため、機能障害が検出された場合、それらをより詳細に特定することができないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102018110566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景から、本発明の目的は、レーザスキャナの機能的制限をより具体的に認識することができる、レーザスキャナの機能を確認するための改良された概念を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項のそれぞれの主題によって達成される。有利な発展形態及び好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
改良された概念は、その検出器ユニットが少なくとも2つの光学検出器を含有するレーザスキャナの対応する検出器信号それぞれのパルス幅を決定し、機能性を確認するために異なる検出器信号又は検出器のパルス幅を互いに関連付けるという考えに基づいている。
【0011】
改良された概念によれば、レーザスキャナの機能を確認するための方法が特定される。レーザスキャナは、光透過性窓を有するハウジングと、ハウジング内に配置された、レーザ信号を放射するためのセンサとを有する。レーザスキャナはまた、レーザ信号を偏向させるための可動偏向ユニットと、ハウジング内に配置され、少なくとも2つの光学検出器を有する検出器ユニットとを有する。本方法によれば、少なくとも1つの試験信号が、試験段階中に送信機ユニットによって送信される。試験段階中、偏向ユニットは、少なくとも1つの試験信号が窓に向けられないように、特に偏向ユニットによって、とりわけレーザスキャナの制御ユニットによって、送信機ユニットに対して位置合わせされる。少なくとも1つの試験信号の成分、特に反射及び/又は散乱成分は、少なくとも2つの光学検出器によって記録され、少なくとも2つの検出器信号が、記録された成分に基づいて少なくとも2つの光学検出器によって生成される。パルス幅は、少なくとも2つの検出器信号の各々について、演算ユニットによって、特にレーザスキャナの演算ユニットによって、又はレーザスキャナに結合された演算ユニットによって決定され、少なくとも2つの検出器信号のうちの第1の検出器信号のパルス幅の、少なくとも2つの検出器信号のうちの第2の検出器信号のパルス幅に対する比が決定される。送信機ユニット及び/又は検出器ユニットの機能性は、比に基づいて、特に演算ユニットによって確認される。
【0012】
本明細書及び以下では、「光(light)」という用語は、可視範囲、赤外線範囲、及び/又は紫外線範囲の電磁波を含むものとして理解され得る。したがって、「光学(optical)」という用語は、この意味で光に関連するものとして理解することもできる。レーザ信号及び試験信号は、好ましくは、赤外線範囲の光に対応する。
【0013】
ハウジングの光透過性窓は、特に、送信機ユニットによって、特にレーザ信号又は試験信号の形態で放射され得る光に対して光透過性である。窓とは別に、ハウジングは、例えば不透明であってもよい。
【0014】
レーザ信号及び少なくとも1つの試験信号はそれぞれ、送信機ユニットの1つ以上の光源、特にレーザ光源、例えばレーザダイオードによって放射され得るレーザ信号に対応する。特に、少なくとも1つの試験信号は、レーザ信号の特殊な場合、具体的には、試験段階中に放射される種類のレーザ信号と見なすことができる。それにもかかわらず、試験信号はまた、特別に適合されたスペクトル組成若しくは構造又は任意の他の組成若しくは構造を有するように生成及び放射することができ、これは試験段階の外部で生成及び放射される他のレーザ信号とは異なる場合がある。しかしながら、これは必須ではない。
【0015】
検出器ユニット、特に少なくとも2つの光学検出器は、レーザ信号及び少なくとも1つの試験信号の反射又は散乱成分を検出するように構成される。レーザ信号が光透過性窓を通ってハウジングの周囲に放射される場合、レーザスキャナ又はハウジングの外側で反射又は散乱されるレーザ信号の成分は、例えば、ハウジングに再び入ることができ、その後検出することができる。少なくとも1つの試験信号の場合、ハウジング内で複数回反射及び/又は散乱される可能性がある少なくとも1つの試験信号の成分は、特に、少なくとも2つの光学検出器によって検出される。特に、少なくとも1つの試験信号は、窓に向けられない結果として、本質的にレーザスキャナのハウジングを離れることはない。
【0016】
窓に向けられなかった少なくとも1つの試験信号は、特に、光線光学的理解又は幾何光学系に沿った理解に基づいて理解することができる。
【0017】
少なくとも2つの光学検出器の各光学検出器は、特に、それぞれの光学検出器によって記録された成分に基づいて、少なくとも2つの検出器信号の関連する検出器信号を生成する。レーザスキャナの具体的な実施形態に応じて、少なくとも2つの光学検出器を異なるように構成することができる。少なくとも2つの光学検出器はそれぞれ、好ましくは、フォトダイオード、例えばアバランシェフォトダイオードAPDを含有する。したがって、検出器信号のうちの1つの時間プロファイルは、それぞれの光学検出器の対応する光学活性面に衝突する光子の数の時間プロファイルを反映する。
【0018】
特に、検出器信号は、エコーとも呼ばれ得る信号パルスを有する。したがって、検出器信号のパルス幅は、特に、対応する信号パルスのパルス幅に対応する。この場合、パルス幅は、対応する検出器信号の振幅が所定の限界値を超える値をとる期間によって与えられる。このパルス幅はまた、エコーパルス幅EPWとも呼ばれる。
【0019】
第1の検出器信号のパルス幅の、第2の検出器信号のパルス幅に対する比を決定するために、演算ユニットは、例えば、対応するパルス幅から商を形成することができる。
【0020】
送信機ユニット及び/又は検出器ユニットの機能性を確認することは、特に、パルス幅の互いに対する比を使用して、送信機ユニット及び/又は検出器ユニットの通常動作又は無制限動作又は無制限機能と比較して制限があるかどうかを確認するという文脈で理解することができる。
【0021】
特に、光学検出器の活性面に衝突する光子の数は、対応する信号パルスのパルス形状に影響を及ぼし、したがってパルス幅に影響を及ぼす。したがって、試験段階中に与えられるような再現可能な条件下でのパルス幅が、通常の又は無制限の動作に対して予想されるものと異なる場合、送信機ユニット及び/又は検出器ユニットが制限された機能性を有すると推定することが可能である。これは、特に、送信機ユニットの光源の被覆、又は光学検出器のうちの1つ、すなわち特に光学検出器のうちの1つの活性面の部分的若しくは完全な被覆によって引き起こされる可能性がある。
【0022】
機能的な制限がない場合、パルス幅の互いに対する比の値は、具体的な値又は事前に決定可能な値を有する。一例として、この値は、較正の範囲内で決定することができる。第1の光学検出器の活性面、すなわち第1の検出器信号を生成する光学検出器の活性面が粒子によって覆われている場合、この光学検出器はより少ない光子を検出し、その結果、パルス幅の低減につながる可能性がある。したがって、比の値は小さくなる。対照的に、第2の光学検出器の活性面、すなわち第2の検出器信号を生成する光学検出器の活性面が覆われている場合、比の値はそれに応じて大きくなる。特に較正中に決定された基準比と比較して比の値を分析することによって、又は他の方法で、演算ユニットは、記載されたような粒子による汚染に特に起因する機能性又は機能性の制限を推定することができる。加えて、概説されている例では、演算ユニットは、2つの光学検出器のうちのどちらが覆われているかを決定するために比を使用することもできる。
【0023】
さらに、無制限の機能の場合に予想される値からの比の値のずれの大きさは、機能的制限がどの程度深刻か、すなわち対応する光学検出器が粒子によってどの程度深刻に覆われているかについての記述を可能にすることができる。被覆が大きいほど、対応する光学検出器によって検出される光子が少なくなり、パルス幅が小さくなり、結果として比のずれが相応に大きくなる。
【0024】
レーザスキャナの具体的な構成に応じて、個々の光学検出器を送信機ユニットの具体的な光源に割り当てることができるが、他の光学検出器はこの光源に割り当てられない。これは、特に、送信機ユニットが複数の光源を有する場合に当てはまり、その結果、異なる光学検出器が異なる光源に割り当てられる。その場合、具体的な光源に割り当てられた光学検出器は、対応する割り当てられた光源によって放射される光の散乱又は反射成分のみを記録する。これは、例えば、異なる光源によるレーザ信号又は試験信号の放射の時間オフセット制御によって実現することができる。
【0025】
そのような実施形態では、光源のうちの1つの機能的制限もまた、おそらく比から推定することができる。例として、光源が粒子によって覆われているか、又は他の方法で汚染されている場合、これは、第1又は第2の検出器信号を生成する光学検出器のうちの1つがこの光源に割り当てられている場合に正確にパルス幅比の値に影響を及ぼす。
【0026】
関与する光学検出器及び機能的制限又は汚染の強度の両方について結論を引き出すことができ、おそらく関連する光源についての結論も引き出すことができるパルス幅の比の結果として、改良された概念は、機能的制限のより具体的な分類又は決定を可能にする。
【0027】
パルス幅の比を考慮に入れる利点は、例えば、試験信号が送信機ユニットによって放射される光放射パワー、例えば、光レーザ出力パワー、光学検出器が動作するバイアス電圧、例えば、対応するフォトダイオード若しくはAPDが動作する阻止電圧、周囲温度、構成要素温度又は周囲光などの他の影響変数に対するこの比の不変性にある。
【0028】
その結果、比に基づいて機能性を特に確実かつ再現性よく評価することができる。
【0029】
改良された概念によるレーザスキャナの機能を確認するための方法の少なくとも1つの実施形態によれば、機能性を確認するステップは、演算ユニットによって比を所定の基準比と比較するステップと、比較の結果に応じて、特に演算ユニットによって誤差信号を生成するステップとを含む。
【0030】
基準比は、特に、例えば較正手順中のより早い時点における第1及び第2の光学検出器のそれぞれの検出器信号のパルス幅の比とすることができる。比はまた、例えば商を形成することによって基準比と比較することもできる。基準比からの比のずれがない場合、商はそれに応じて1に等しくなる。特に所定の許容値を超える1からの商のずれは、第1若しくは第2の光学検出器又は関連する光源の制限された機能性を示す。
【0031】
これにより、評価されなければならないのは比の絶対値ではなく、むしろその基準比に対するその大きさであるため、機能性の確認が簡単になる。
【0032】
様々な実施形態において、基準比はまた、例えばレーザスキャナが起動又は停止するときに、更新又は定期的に更新することができる。特に、送信機ユニット及び/又は検出器ユニットの機能性の著しい障害が決定されない場合、パルス幅の具体的な比を定義し、新しい基準比として記憶することができる。これにより、構成要素、特に光学検出器の定期的な経年劣化によって引き起こされる影響を補償することができる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、それぞれの対の検出器信号の互いに対するパルス幅の比は、少なくとも2つの検出器信号の検出器信号の対ごとに、演算ユニットによって決定される。機能性は、検出器信号の対の比に基づいて、特に検出器信号の対のすべての比に基づいて確認される。
【0034】
検出器ユニットの少なくとも2つの光学検出器のうちの総数N個の光学検出器の場合、名目上N2個の比があり、これらの比はまた、それ自体に対する様々な検出器信号のパルス幅の比及び各比の逆比を含む。したがって、対応する比にはN2/2-N個の関連する値がある。しかしながら、処理及び記憶のタイプに応じて、N2個のエントリを有する行列形式で比を表すことが有利である場合がある。この場合、行列内の隣接する行又は列は、有利には、互いに物理的に隣接して配置された光学検出器に対応することができ、その結果、幾何学的効果が行列に反映され、したがっておそらくより容易に識別可能になる。
【0035】
検出器信号のすべての対のパルス幅の比を考慮に入れることによって、任意の1つ以上の光学検出器又は光源の汚染又は他の機能障害を追跡することができるので、送信機ユニット及び検出器ユニットの機能性をより包括的かつ確実に確認することができる。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能性を確認することは、演算ユニットを使用して、各比をそれぞれの所定の基準値と比較するか、又は所定の基準値に従って前記比を正規化し、検出器信号の対の正規化された比に基づいて、又は比較のそれぞれの結果に基づいて機能性を確認することを含む。
【0037】
比の基準値に関して、上記の記述は同様に適用される。この場合、検出器信号の異なる対の基準値は互いに異なる場合がある。正規化は、例えば、それぞれの比の、対応する基準値との商を形成するものとして理解することができる。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能性を確認することは、比又は正規化された比に基づいて、演算ユニットによって、少なくとも2つの検出器信号のうちの1つ、特に少なくとも2つの検出器信号の正確に1つを識別することを含み、識別された検出器信号を含有する各対の比は、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の閾値だけずれている。
【0039】
言い換えれば、各比が基準比から少なくとも閾値だけずれているかどうかが、検出器信号の対の多数の比から、少なくとも2つの検出器信号のうちの検出器信号について決定される。この場合、識別された検出器信号を生成する光学検出器の機能性が制限されていると仮定することが可能である。これは、例えば汚染のために、複数の光学検出器の機能性が同時に制限されるか又は著しく制限される見込みがあるという事実から利益を得る。
【0040】
上記で描かれた行列のイメージでは、単一の光学検出器の機能性の制限により、常に1に等しくなければならない、識別された検出器信号のそれ自体とのパルス幅の比を除いて、正確に1つの列のすべての値及び正確に1つの行のすべての値が対応する基準値から著しくずれている、すなわち閾値を超えてずれている。
【0041】
例えば、それぞれの比が基準比からどの程度又はどの値だけずれているかを決定することによって、機能性の制限の程度、例えば汚染の程度を様々な実施形態で定量化することもできる。光学検出器の活性面がより激しく汚染されるほど、対応して登録される光子が少なくなり、それに応じてパルス幅も減少する。一例として、閾値に加えて、機能性の制限の程度を定量化することを可能にするために、対応する範囲で比を分類することを可能にするために、1つ以上のさらなる閾値を提供することができる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも2つの光学検出器のうち、識別された検出器信号に割り当てられた光学検出器の制限された機能性が、特に演算ユニットによって識別される。この文脈では、割り当てられた光学検出器は、特に、識別された検出器信号を生成するものである。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能性を確認することは、比又は正規化された比に基づいて、演算ユニットによって、少なくとも2つの検出器信号のグループ、すなわち少なくとも2つの検出器信号のうちの2つ以上を識別することを含み、各対の比は、識別されたグループからの検出器信号と、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の閾値だけずれている、識別されたグループの一部ではない検出器信号とを含有する。
【0044】
いずれも識別されたグループに属する2つの検出器信号の比は、対応する正規化を仮定すると、特にほぼ1に等しく、すなわち、それらは対応する基準比から所定の閾値未満だけずれている。
【0045】
上記で描かれた行列のイメージでは、これは、グループのサイズに対応する列数及び対応する行数について、行及び列が交差する領域を除いて、閾値を超えるそれぞれのずれがあることを意味する。行列の定義に応じて、例えば、連続する列又は行は、この文脈においてグループを反映することができる。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、送信機ユニットの、識別されたグループに割り当てられた光源の制限された機能性が、特に演算ユニットによって識別される。
【0047】
このような分析は、特に、送信機ユニットが2つ以上の光源、特にレーザダイオードを含有し、各光源が光学検出器のグループに割り当てられ、したがって検出器信号のグループにも割り当てられる場合に適している。対応する光源に割り当てられた光学検出器は、プロセスにおいて割り当てられた光源のレーザ信号又は試験信号の反射又は散乱成分のみを検出し、さらなる光源の対応する成分は検出しない。一例として、これは、異なる光源による様々なレーザ信号のクロックされた時間オフセット放射によって実現することができる。
【0048】
そのような設計は、光源の個々の光出力パワーを過度に増加させる必要なく、特に多数の光学検出器を使用することを可能にする。光学検出器の数が増加すると、レーザスキャナの視野、すなわちその検出角度範囲を増加させることができる。
【0049】
例えば汚染の結果として、個々の光源の機能性が制限されている場合、これは、割り当てられたすべての光学検出器によって受信される光子の数にほぼ同等に強い影響を及ぼす。しかしながら、この光源の制限は、割り当てられていない検出器に影響を及ぼさない。ここでも、2つ以上の光源のうちの1つの光源のみに著しい障害があると高い信頼性で仮定することができる。したがって、識別された検出器信号のグループのサイズは、対応して制限された光源に割り当てられた光学検出器の数に等しい。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、送信機ユニットは、2つ以上の光源、特にレーザ光源又はレーザダイオードを含有する。少なくとも2つの光源の各々には、少なくとも2つの光学検出器のうちの1つ以上が割り当てられ、好ましくは少なくとも2つの光学検出器が光源の各々に割り当てられる。
【0051】
例えば、少なくとも2つの光学検出器の数は、少なくとも2つの光源の数の整数倍に対応することができ、その結果、同じ数の光学検出器を光源に割り当てることができる。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、送信機ユニットは、NL個の光源及びNL*M個の光学検出器を含み、ここで、Mは、光源のうちの1つに割り当てられた光学検出器の数である。
【0053】
M列M行の行列が上記のように影響を受ける場合、対応する光源の機能性が制限されているか、又は汚染されていると仮定することができる。
【0054】
改良された概念によれば、演算ユニット及びレーザスキャナを有するレーザスキャナ装置も特定される。レーザスキャナは、光透過性窓を有するハウジングと、ハウジング内に配置されたレーザ信号を放射するための送信機ユニットとを有する。レーザスキャナは、制御ユニットと、レーザ信号を偏向させるための可動偏向ユニットと、ハウジング内に配置され、2つ以上の光学検出器を有する検出器ユニットとを有する。制御ユニットは、試験段階中に少なくとも1つの試験信号を送信するように送信機ユニットを駆動するように構成される。制御ユニットはまた、少なくとも1つの試験信号が窓に向けられないように、試験段階中に偏向ユニットが送信機ユニットに対して位置合わせされるように偏向ユニットを駆動するように構成される。少なくとも2つの光学検出器は、少なくとも1つの試験信号の反射及び/又は散乱成分を記録し、検出された成分に基づいて少なくとも2つの検出器信号を生成するように構成される。演算ユニットは、少なくとも2つの検出器信号の各々のパルス幅を決定し、少なくとも2つの検出器信号の第1の検出器信号のパルス幅の、少なくとも2つの検出器信号の第2の検出器信号のパルス幅に対する比を決定するように構成される。演算ユニットは、比に基づいて送信機ユニット及び/又は検出器ユニットの機能性を確認するように構成される。
【0055】
演算ユニットは、この場合、レーザスキャナの一部であってもよく、又はそれとは別個に設けられてもよい。レーザスキャナ装置が自動車内又は自動車上で使用するために設けられる場合、演算ユニットは、例えば、自動車の電子コントローラとして実装することができる。制御ユニットは、任意選択的に、演算ユニットの一部であってもよい。特に、演算ユニットの記載された機能又はタスクは、様々な実施形態において制御ユニットによって実施することができ、又はその逆も可能である。
【0056】
レーザスキャナ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、偏向ユニットは、回転可能若しくは旋回可能なミラー又は微小電気機械ミラーシステム、すなわち微小電気機械システムMEMSとして設計されたミラーを含有する。
【0057】
特に、制御ユニットは、送信機ユニットによって対応して放射される試験信号が偏向ユニット、特にミラーの反射面に衝突しないように、又は反射面によって窓に対応しないハウジング内の領域に偏向されるように、試験段階中に偏向ユニットを駆動することができる。
【0058】
様々な実施形態では、旋回可能又は回転可能なミラーは、特に略直方体形状を有することができるミラー本体を含有し、反射面は直方体の1つの側面に位置する。様々な構成において、さらなる反射面を、直方体の反射面とは反対側に配置することができる。ミラー本体は、特に直方体の2つのさらなる対向する側面を通過する回転軸を中心として回転可能又は旋回可能であるように装着される。したがって、反射面にも回転軸が通過する側面にも対応しない直方体の残りの2つの側面は、例えば端面と呼ぶことができる。
【0059】
様々な実施形態において、制御ユニットは、放射された試験信号が端面の1つに衝突するように、試験段階中に偏向ユニットを駆動するように構成される。
【0060】
少なくとも1つの実施形態によれば、送信機ユニットは、少なくとも2つの光源を有し、少なくとも2つの光源の各光源は、少なくとも2つの光学検出器のうちの少なくとも1つの光学検出器に割り当てられ、少なくとも2つの光学検出器の各光学検出器は、少なくとも2つの光源のうちの正確に1つの光源に割り当てられる。
【0061】
この文脈では、改良された概念による方法に関する対応する記述が参照される。
【0062】
少なくとも1つの実施形態によれば、制御ユニットは、少なくとも2つの光源が少なくとも1つの試験信号のそれぞれの試験信号を時間オフセットで送信するように送信機ユニットを駆動するように構成される。
【0063】
言い換えれば、少なくとも1つの試験信号は、光源ごとに1つの試験信号を含有する。異なる光源からの試験信号は、互いに時間オフセットして放射され、その結果、それらは時間的に重なり合わず、したがって、規定された光源の反射成分のみを、任意の所与の時間に少なくとも2つの光学検出器によって検出することができる。
【0064】
少なくとも1つの実施形態によれば、演算ユニットは、少なくとも2つの検出器信号の検出器信号の対ごとに、それぞれの対の検出器信号の互いに対するパルス幅の比を決定し、検出器信号の対の比に基づいて機能性を確認するように構成される。
【0065】
少なくとも1つの実施形態によれば、演算ユニットは、比に基づいて、少なくとも2つの検出器信号のうちの1つ、特に少なくとも2つの検出器信号のうちの正確に1つを識別するように構成され、識別された検出器信号を含有する各対の比は、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の第1の閾値だけずれている。
【0066】
少なくとも1つの実施形態によれば、演算ユニットは、比に基づいて少なくとも2つの検出器信号のグループを識別するように構成され、各対の比は、識別されたグループからの検出器信号と、関連する所定の基準比から少なくとも1つの所定の第2の閾値だけずれている、識別されたグループの一部ではない検出器信号とを含有する。
【0067】
レーザスキャナ装置のさらなる実施形態は、改良された概念による比の異なる構成から直接導かれ、逆もまた同様である。特に、改良された概念によるレーザスキャナ装置は、改良された概念による方法を行うように構成又はプログラムすることができ、又はレーザスキャナ装置は、そのような方法を行う。
【0068】
改良された概念によれば、改良された概念に係るレーザスキャナ装置の実施形態を含有する自動車も特定される。
【0069】
命令を有するコンピュータプログラムも、改良された概念に従って特定される。命令又はコンピュータプログラムが改良された概念に従ってレーザスキャナ装置によって実行されると、命令は、改良された概念に従って、レーザスキャナ装置に方法を行わせる。
【0070】
改良された概念によれば、改良された概念に係るコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶媒体も特定される。
【0071】
改良された概念によるコンピュータプログラム及びコンピュータ可読記憶媒体を、命令を有するそれぞれのコンピュータプログラム製品と呼ぶ場合がある。
【0072】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面、及び図面の説明から明らかである。説明において上述した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに図面の説明において以下に述べる及び/又は図面にのみ示される特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれの場合に特定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせにおいても改良された概念に含まれ得る。したがって、図に明示的に示されていない、及び/又は説明されていないが、特徴の別個の組み合わせによって説明された実施形態から出現し、生成することができる改良された概念の実施形態も含まれ、開示される。したがって、特に、最初に記載された請求項のすべての特徴を有さない実施形態及び特徴の組み合わせも含まれ、開示される。さらに、特許請求の範囲の参考文献に記載されている特徴の組み合わせを超えるか、又はそれらとは異なる実施形態及び特徴の組み合わせが含まれ、開示される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】改良された概念によるレーザスキャナ装置の例示的な実施形態を有する自動車の概略図である。
【
図2】改良された概念によるレーザスキャナ装置のさらなる例示的な実施形態の概略図である。
【
図3】改良された概念によるレーザスキャナ装置のさらなる例示的な実施形態の送信機ユニットの概略図である。
【
図4】走査段階における、改良された概念によるレーザスキャナ装置のさらなる例示的な実施形態の一部を概略的に示す図である。
【
図5】試験段階における、改良された概念によるレーザスキャナ装置のさらなる例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、改良された概念による自動車1の例示的な実施形態を概略的に描写する。自動車1は、改良された概念による例示的な実施形態によるレーザスキャナ装置2を含有する。レーザスキャナ装置2は、自動車1の周囲にレーザ信号9を放射し、周囲の物体3によって反射されたレーザ信号の成分9’を検出することができる。レーザスキャナ装置2は、検出された反射成分9’に基づいて、レーザスキャナ装置2からの物体3の位置及び/又は距離を決定することができる。これは、例えば、飛行時間(TOF)測定の概念に基づいて実装することができる。
【0075】
図2は、レーザスキャナ装置2、例えば
図1の自動車1のレーザスキャナ装置2の例示的な実施形態のブロック図を概略的に示す。レーザスキャナ装置2は、レーザスキャナ2bと、レーザスキャナ2bに接続され、例えば自動車1の電子コントローラの形態であり得る演算ユニット2aとを有する。レーザスキャナ2bは、光透過性窓5を有するハウジング4と、ハウジング4内に配置された、レーザ信号9を放射するための送信機ユニット6とを有し、前記レーザ信号は光透過性窓5を通って放射される。レーザスキャナ2bは、制御ユニット8を含有し、制御ユニット8は、送信機ユニット6を駆動してレーザ信号9を放射するために、演算ユニット2a及び送信機ユニット6に接続されている。レーザスキャナ2bはまた、特にフォトダイオードとして、例えばAPDとして設計された少なくとも2つの光学検出器を有する検出器ユニット7を含有する。送信機ユニット6は、少なくとも1つの光源、特にレーザ源、例えば少なくとも1つの赤外線レーザダイオードを含有する。
【0076】
検出器ユニット7は、レーザ信号9の反射成分9’を検出することができ、それに基づいて、少なくとも2つの光学検出器の各々は対応する検出器信号を生成し、対応する検出器信号を制御ユニット8及び/又は演算ユニット2aに送信することができる。
【0077】
レーザスキャナ2bはまた、例えば、回転軸11を中心に回転可能に装着されたミラー10を有することができる偏向ユニットを含有する。
図2において、回転軸11は、図面の平面に対して垂直である。偏向ユニットは同様に制御ユニット8に接続され、制御ユニット8はそれに応じて、ミラー10が回転軸11を中心に回転するように偏向ユニットを駆動することができる。これにより、ミラー10の回転によってレーザ信号9の放射角度を変化させることができる。物体3によって反射されたレーザ信号9の反射成分9’の受信経路は、例えば、ミラー10を介して検出器ユニット7、特に光学検出器のうちの1つの活性面につながっている。次いで、反射成分9’は、対応する光学検出器によって記録され、したがって、ミラー10を回転軸11を中心に回転させることによって、各光学検出器は、異なる方向から入射するレーザ信号9の反射成分9’を検出することができる。ミラー10の瞬間的な位置は、例えば、回転軸11又は対応するシャフトに結合されたロータリエンコーダ(図示せず)を介して決定することができる。
【0078】
ミラー10の瞬間的な位置は、例えばあらゆる時点で既知であるため、点群とも呼ばれる走査点のセットを、検出された反射成分9’の時間的シーケンスによって生成することができる。この場合、走査点又は点群のサブセットは、各光学検出器によって生成される。光学検出器の1つによって生成された走査点のサブセットは、走査点の位置と呼ぶこともできる。
【0079】
図3は、
図2のレーザスキャナ2bの送信機ユニット6、並びにレーザ信号9及び物体3を概略的に示す。
図3の上側の図は、例えば、側面図、すなわち、ミラー10の回転軸に垂直な方向に見た図に対応する。
図3の下側の図は、例えば、送信機ユニット6の平面図、すなわち、ミラー10の回転軸に平行な方向に見た図に対応する。
図3の図から明らかなように、レーザ信号9のそれぞれのビーム拡大は、異なる平面で異なる場合がある。
【0080】
図4は、
図2のレーザスキャナ2bの検出器ユニット7及びミラー10を再び概略的に描写しており、反射成分9’の受信経路が示されている。任意選択的に、レーザスキャナ2bは、反射成分9’の受信経路に配置されたビーム誘導用のレンズ配置14を有することができる。
【0081】
図4の例は、例えば互いに直線的に隣接して配置された検出器ユニット7の4つの光学検出器7a、7b、7c、7dを描写する。例として、送信機ユニット6は、2つ以上の光源を有することができ、各光源は、光学検出器7a、7b、7c、7dのうちの2つ以上に割り当てられる。
【0082】
図4において、ミラー10は、略又は実質的に直方体のミラー本体を有する。しかしながら、ミラー本体の側面は、必ずしも平面である必要はなく、例えば湾曲していてもよい。ミラー10は、例えば、回転軸11に平行に配置された2つの対向する反射側面12a、12bを有する。ミラー本体の2つの非反射端面13a、13bは、反射側面12a、12bに垂直に、かつ同様に回転軸11に平行に配置される。
【0083】
図4では、例えば走査段階中のレーザスキャナ2bが描写されている。送信機ユニット6は、反射面12a、12bのうちの1つに入射し、
図2にも概略的に描写されているように、前記レーザ信号がハウジング4から離れることができるように、偏向ユニットによって窓5に向かうように操作されるレーザ信号9を放射する。反射成分9’は、同様に反射面12a、12bに入射し、それに応じて検出器ユニット7へと偏向される。
【0084】
図5には、試験段階中のレーザスキャナ2bが描写されている。試験段階中、ミラー10は、試験段階中に放射された試験信号15が端面13a、13bの一方に入射し、したがって窓5の方向に向かうようには操作されず、代わりにハウジング4内で複数回反射又は散乱されるように、送信機ユニット6に対して位置合わせされる。したがって、複数回反射及び散乱される試験信号15の成分15’は、次いで、光学検出器7a、7b、7c、7dの活性面に入射し、光学検出器7a、7b、7c、7dは、それに基づいて対応する検出器信号を生成し、前記検出器信号を演算ユニットに送信する。次いで、演算ユニット2aは、検出器信号の各々について、エコーパルス幅EPWとも呼ばれ得る対応するパルス幅を決定する。演算ユニット2aはまた、検出器信号の対ごとにパルス幅の対応する比を計算し、例えば商を形成することによって、この比を対応するそれぞれの所定の基準値と比較する。対応する商は、例えば、行列の形態で表すことができ、又は記憶することができる。例えば、行列の構造は以下のようになる。
【0085】
【0086】
この場合、EPWi(i=1,…,4)は、対応する検出器信号のパルス幅を示す。Rij(i=1,…,4、j=1,…,4)は、対応する対の基準比を示す。
【0087】
この例では、レーザスキャナ2bは、4つの光学検出器7a、7b、7c、7dを有する検出器ユニット7と、2つの光源を有する送信機ユニット6とを有し、光源の各々は、光学検出器7a、7b、7c、7dのうちの2つに割り当てられている。
【0088】
パルス幅の比に基づいて、演算ユニット2aは、送信機ユニット6及び/又は検出器ユニット7の機能性を確認することができ、特に、例えば、光源又は光学検出器7a、7b、7c、7dの対応する汚染の結果として、機能性の制限を決定することができる。送信機ユニット又は検出器ユニット7の汚染又は制限がない場合、比は、例えば、すべて対応する基準比に等しいか、又は正規化された比は1に等しい。一例として、単一の光学検出器の活性面が汚染されている場合、正規化された比の行列構造は、例えば以下の通りである。
【0089】
【0090】
この例示的な例では、(i,j)=(3,3)のエントリを除いて、第3の列の値は1より大きく、それに対応して第3の行の値は1未満である。このことから、第3の検出器信号のパルス幅は他のすべてのパルス幅と比較して低減しており、これは対応する光学検出器の汚染を示していると推定することができる。
【0091】
対照的に、送信機ユニット6の光源の1つが汚染されており、前記光源が複数の光学検出器に割り当てられている場合、行列の以下の例示的な構造が現れる。
【0092】
【0093】
この例示的な例では、(i,j)=(3,3)、(4,3)、(3,4)、及び(4,4)のエントリを除いて、列3及び4の値はそれぞれ1より大きく、行3及び4の値はそれぞれ1未満である。これは、ここでは、第3及び第4の検出器信号のパルス幅が他のパルス幅と比較して低減していることを示す。経験上、2つの光学検出器が汚染されている可能性は非常に低いことが示されているので、行列のそのようなシグネチャは、第3及び第4の検出器信号を生成する光学検出器に割り当てられた送信機ユニット6の光源が汚染されていることを示す。
【0094】
汚染された光源の状況はまた、
図6a及び
図6bにも例示されている。この例では、レーザスキャナ2bは、16個の光学検出器7a、7b、7c、7dを有する検出器ユニット7と、4つの光源を有する送信機ユニット6とを有し、光源の各々は、光学検出器7a、7b、7c、7dのうちの4つに割り当てられている。
【0095】
図6aは、様々な光学検出器7a、7b、7c、7dの検出器信号のパルス幅の値を縦座標に概略的に示し、例えば、16a、17a、18a及び19aはそれぞれ、光源又は光学検出器7a、7b、7c、7dが汚染されていない、対応する検出器信号の4つのパルス幅を表す。
図6bでは、16b、17a、18b、及び19bは、それぞれのパルス幅に対応し、光源の1つが汚染されている。特に、パルス幅18bに割り当てられた光源が汚染されている。したがって、パルス幅18bはそれぞれ、
図6aからのパルス幅18aに対して低減しているが、残りのパルス幅16b、17b、19bは、元のパルス幅16a、17a、19aに対して低減していない。
【0096】
説明したように、特に図面に関して、改良された概念は、特にレーザスキャナの光源又は光学検出器の汚染に起因する、レーザスキャナの具体的な機能的制限をより高い精度で決定することを可能にする。この目的のために、個々の光学検出器のパルス幅の互いに対する比における特徴的なパターン又はシグネチャを分析することができる。様々な実施形態において、ここでは、1つの粒子が2つ以上の光源を覆っている確率、又は複数の光学検出器が同時に覆われている確率は低いという、実験的に十分に文書化された仮定がなされる。