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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】送風装置及び静圧評価装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20240308BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20240308BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20240308BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/52
F24F11/49
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020050513
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021148381
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】宇野 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】安藤 晃規
(72)【発明者】
【氏名】小西 歩
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183874(JP,A)
【文献】特開2002-098088(JP,A)
【文献】特開2005-180830(JP,A)
【文献】特開平06-323582(JP,A)
【文献】特開2007-101009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0134823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/52
F24F 11/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気扇と静圧評価装置と、を備え、
前記換気扇は、
ブラシレスDCモータと、
ブラシレスDCモータに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記ブラシレスDCモータの回転数を検出する回転数検出部と、
前記電流検出部が検出した電流値と前記回転数検出部が検出した回転数から現在出力されている風量を演算し、前記演算された演算風量を目標風量に近づけるためのモータの目標回転数を出力する風量演算部と、
前記ブラシレスDCモータの回転数を前記風量演算部で出力された目標回転数に制御する速度制御部と、
前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記電流検出部が検出した電流値と、前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記回転数検出部が検出した回転数と、前記目標風量と、を前記静圧評価装置に出力する出力部と、を備え、
前記静圧評価装置は、
施工時の前記換気扇から、電流値と、回転数と、目標風量を受信する受信部と、
各風量における静圧と電流値と回転数とを関連付けて記憶した記憶部と、
前記受信した、前記電流値と、前記回転数と、前記目標風量と、前記記憶部と、に基づいて、現在の静圧を演算静圧として演算出力する静圧演算部と、
静圧の大きさに応じた評価を複数の段階に分けて記憶した静圧レベル記憶部と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧と、前記静圧レベル記憶部が記憶する前記評価とを比較し、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を出力する比較判断部と、
前記比較判断部による結果に基づいて、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を表示する静圧表示部と、を備え、
前記評価は、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において正常である旨を示す正常評価と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において異常である旨を示す異常評価と、の少なくとも一方を含み、
前記静圧評価装置は、前記換気扇に対して着脱可能又は独立して設けられる、送風装置。
【請求項2】
施工時の換気扇から、当該換気扇が目標風量に達した際の電流値と、前記目標風量に達した際の回転数と、前記目標風量と、を受信する受信部と、
各風量における静圧と電流値と回転数とを関連付けて記憶した記憶部と、
前記受信部が受信した、前記電流値と、前記回転数と、前記目標風量と、前記記憶部と、に基づいて、現在の静圧を演算静圧として演算出力する静圧演算部と、
静圧の大きさに応じた評価を複数の段階に分けて記憶した静圧レベル記憶部と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧と、前記静圧レベル記憶部が記憶する前記評価とを比較し、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を出力する比較判断部と、
前記比較判断部による結果に基づいて、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を表示する静圧表示部と、を備え、
前記評価は、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において正常である旨を示す正常評価と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において異常である旨を示す異常評価と、の少なくとも一方を含み、
前記換気扇に対して着脱可能又は独立して設けられる、静圧評価装置。
【請求項3】
換気扇と静圧評価装置と、を備え、
前記換気扇は、
ブラシレスDCモータと、
ブラシレスDCモータに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記ブラシレスDCモータの回転数を検出する回転数検出部と、
前記電流検出部が検出した電流値と前記回転数検出部が検出した回転数から現在出力されている風量を演算し、前記演算された演算風量を目標風量に近づけるためのモータの目標回転数を出力する風量演算部と、
前記ブラシレスDCモータの回転数を前記風量演算部で出力された目標回転数に制御する速度制御部と、
各風量における静圧と電流値と回転数とを関連付けて記憶した記憶部と、
前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記電流検出部が検出した電流値と、前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記回転数検出部が検出した回転数と、前記目標風量と、前記記憶部と、に基づいて、現在の静圧を演算静圧として演算出力する静圧演算部と、
静圧の大きさに応じた評価を複数の段階に分けて記憶した静圧レベル記憶部と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧と、前記静圧レベル記憶部が記憶する前記評価とを比較し、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を出力する比較判断部と、
前記評価を前記静圧評価装置に出力する出力部と、を備え、
前記静圧評価装置は、
前記出力部が出力した前記評価を受け取る受信部と、
前記評価を表示する静圧表示部と、を備え、
前記評価は、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において正常である旨を示す正常評価と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において異常である旨を示す異常評価と、の少なくとも一方を含み、
前記静圧評価装置は、前記換気扇に対して着脱可能又は独立して設けられる、送風装置。
【請求項4】
ブラシレスDCモータと、
ブラシレスDCモータに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記ブラシレスDCモータの回転数を検出する回転数検出部と、
前記電流検出部が検出した電流値と前記回転数検出部が検出した回転数から現在出力されている風量を演算し、前記演算された演算風量を目標風量に近づけるためのモータの目標回転数を出力する風量演算部と、
前記ブラシレスDCモータの回転数を前記風量演算部で出力された目標回転数に制御する速度制御部と、
各風量における静圧と電流値と回転数とを関連付けて記憶した記憶部と、
前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記電流検出部が検出した電流値と、前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記回転数検出部が検出した回転数と、前記目標風量と、前記記憶部と、に基づいて、現在の静圧を演算静圧として演算出力する静圧演算部と、静圧の大きさに応じた評価を複数の段階に分けて記憶した静圧レベル記憶部と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧と、前記静圧レベル記憶部が記憶する前記評価とを比較し、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を出力する比較判断部と、
前記評価を出力する出力部と、を備える換気扇が接続された流路の施工時の静圧を評価する静圧評価装置であって、
施工時の前記換気扇から、当該換気扇が出力した前記評価を受け取る受信部と、
前記評価を表示する静圧表示部と、を備え、
前記評価は、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において正常である旨を示す正常評価と、
前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において異常である旨を示す異常評価と、の少なくとも一方を含み、
前記換気扇に対して着脱可能または独立してに設けられる、静圧評価装置。
【請求項5】
前記風量演算部は、
風量一定制御を行い、
前記記憶部は、
前記風量一定制御における前記目標風量と、静圧と、前記電流値と、前記回転数とを関連付けた関係データを記憶する、請求項1又は3に記載の送風装置。
【請求項6】
前記記憶部は、
前記関係データを、当該関係データを構成する前記目標風量と、静圧と、前記電流値と、前記回転数との関係を近似的に示す近似式を記憶し、
前記静圧演算部は、
前記近似式と、前記目標風量と、前記電流値と、前記回転数とに基づいて前記演算静圧を演算出力する請求項に記載の送風装置。
【請求項7】
前記静圧表示部は、
前記静圧演算部から出力された前記演算静圧の値を表示する請求項1又は3に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置及び静圧評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風量可変な換気扇の制御方法としてダクト内の静圧によらず風量一定制御を行う方法がある。そういった制御方法を利用した換気扇においては、風量一定制御可能な静圧の範囲内であれば、通常の制御で静圧が大きくなると実際の風量が目標風量よりも小さくなってしまう場合においても、換気扇の出力を調整して目的の風量で運転させることが可能である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-165477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の制御方法を利用した換気扇においては風量一定制御可能な静圧の範囲が決まっており、それよりも大きな静圧下では風量一定制御ができなくなってしまう。また、風量一定制御が可能な範囲であってもダクトの状態により必要以上に静圧が大きいと、より多くのエネルギーを消費することになる。しかし、特に施工現場で換気扇に対するダクト内の静圧を直接的に評価することは容易ではなく、つまり実際に施工した状態にて換気扇が風量一定制御できる状態にあるかを評価することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、換気扇施工時に換気扇を接続したダクトの静圧からダクト抵抗を評価することで、ダクト形状やダクト経路を改善するための情報を提供する送風装置及び静圧評価装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明は、換気扇と静圧評価装置と、を備え、前
記換気扇は、ブラシレスDCモータと、ブラシレスDCモータに流れる電流値を検出する電流検出部と、前記ブラシレスDCモータの回転数を検出する回転数検出部と、前記電流検出部が検出した電流値と前記回転数検出部が検出した回転数から現在出力されている風量を演算し、前記演算された演算風量を目標風量に近づけるためのモータの目標回転数を出力する風量演算部と、前記ブラシレスDCモータの回転数を前記風量演算部で出力された目標回転数に制御する速度制御部と、前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記電流検出部が検出した電流値と、前記演算風量が前記目標風量に達した際の前記回転数検出部が検出した回転数と、前記目標風量と、を前記静圧評価装置に出力する出力部と、を備え、前記静圧評価装置は、施工時の前記換気扇から、電流値と、回転数と、目標風量を受信する受信部と、各風量における静圧と電流値と回転数とを関連付けて記憶した記憶部と、前記受信した、前記電流値と、前記回転数と、前記目標風量と、前記記憶部と、に基づいて、現在の静圧を演算静圧として演算出力する静圧演算部と、静圧の大きさに応じた評価を複数の段階に分けて記憶した静圧レベル記憶部と、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧と、前記静圧レベル記憶部が記憶する前記評価とを比較し、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を出力する比較判断部と、前記比較判断部による結果に基づいて、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が属する前記評価を表示する静圧表示部と、を備え、前記評価は、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において正常である旨を示す正常評価と、前記静圧演算部が出力した前記演算静圧が、施工時において異常である旨を示す異常評価と、の少なくとも一方を含み、前記静圧評価装置は、前記換気扇に対して着脱可能又は独立して設けられる、送風装置とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【0007】
また、本発明は、送風装置が接続された流路の静圧を評価する静圧評価装置であって、各風量における静圧と電流値と回転数とを関連付けて記憶した記憶部と、前記送風装置から、演算風量が目標風量に達した際の電流検出部が検出した電流値と、演算風量が目標風量に達した際の回転数検出部が検出した回転数と、前記目標風量を受信する受信部と、前記受信部が受信した、前記電流値と、前記回転数と、前記目標風量と、前記記憶部と、に基づいて、現在の静圧を演算静圧として演算出力する静圧演算部と、前記静圧演算部から出力された前記演算静圧を表示する静圧表示部と、を備えた静圧評価装置等とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダクト形状やダクト経路を改善するための情報を提供できるため、これにより風量一定制御に適した静圧の環境の構築を可能とし、結果として、換気扇のエネルギー消費を抑制させることができる送風装置及び静圧評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る換気扇の概略図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る換気扇の制御回路及び静圧評価回路の機能ブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る換気扇の静圧表示の一例を示す概略図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る換気扇の制御回路と静圧評価装置の静圧評価回路の機能ブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る静圧評価装置の一例を示す概略図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る換気扇の制御回路と静圧評価回路と、静圧評価装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0011】
(実施の形態1)
本発明の送風装置の一実施の形態として、換気扇の概略構造について図1を用いて説明する。なお図1は、本実施の形態に係る換気扇の概略図である。
【0012】
換気扇1は、例えば建物内の天井に設けられ、建物内の空気を屋外に排出するために利用される。換気扇1は、ファン2と、ブラシレスDCモータ3と、制御回路4と、静圧評価回路5とを備える。
【0013】
ファン2は、回転軸を中心に回転することで、図1における下方から空気を吸い込み側方(図1における右側)から空気を吹き出す、例えばシロッコファンである。
【0014】
ブラシレスDCモータ3は、軸心がファン2の回転軸に固定されており、給電により軸心が回転することでファン2を回転させ、送風を行う。
【0015】
制御回路4は、ブラシレスDCモータ3に接続され、ブラシレスDCモータ3の回転速度等を制御する。制御回路4は、ブラシレスDCモータ3及びファン2に対して風量一定制御を行うが、詳細は後述する。
【0016】
静圧評価回路5は、換気扇1が接続している流路の静圧を演算して得た静圧を評価するが、詳細については後述する。
【0017】
続いて、制御回路4及び静圧評価回路5の構成について図2を用いて説明する。なお図2は、換気扇1の制御回路4及び静圧評価回路5の機能ブロック図である。
【0018】
制御回路4は、電流検出部6と、回転数検出部7と、風量演算部8と、速度制御部9とを備える。
【0019】
電流検出部6は、ブラシレスDCモータ3の巻線に流れる電流を、シャント抵抗等を利用して検出し、検出した電流値を風量演算部8へ出力する。
【0020】
回転数検出部7は、ブラシレスDCモータ3の回転数を例えば回転子の位置を検知するセンサを用いて検出し、検出した回転数を風量演算部8へ出力する。
【0021】
風量演算部8は、換気扇1の出力風量が、入力された目標風量と同等となるようなブラシレスDCモータ3の目標回転数を演算し、速度制御部9へ出力する。その際には、風量演算部8があらかじめ記憶している各風量における電流値と回転数の関係データの値と、それぞれ電流検出部6と回転数検出部7から出力された電流値と回転数とを比較し、その2つの差が小さくなるように作用する目標回転数を出力する。また、目標風量と現在の風量が一致したときの電流値と回転数と目標風量の値を後述する静圧演算部11へ出力する。
【0022】
速度制御部9は、ブラシレスDCモータ3の回転数が、風量演算部8が出力した目標回転数となるように、ブラシレスDCモータ3へ印加する電圧を演算し、出力することでブラシレスDCモータ3の回転の速度制御を行う。
【0023】
これらの構成により制御回路4は換気扇1の風量一定制御を行う。なお、風量演算部8で計算に用いるパラメータや速度制御部9でブラシレスDCモータ3へ出力するパラメータとして、モータの電圧の変調率を利用する場合もあるが、どちらを採用してもよい(引用:特開2015-028301)。
【0024】
静圧評価回路5は、記憶部10と、静圧演算部11と、静圧レベル記憶部12と、比較判断部13と、静圧表示部14とを備える。
【0025】
記憶部10は、一定風量で運転する換気扇1のブラシレスDCモータ3に流れる電流値とブラシレスDCモータ3の回転数、現在の静圧の値の間にある相関関係を表す関係データを記憶している。関係データとしては各風量における静圧と電流値と回転数の関係を表した近似式やあるいはそれらの値の組み合わせを複数記憶している場合等を含む。
【0026】
静圧演算部11は、演算風量が目標風量に達した際の電流検出部6が検出した電流値と、その時回転数検出部7が検出した回転数と、目標風量を記憶部10の関係データと比較して、換気扇1が接続されている流路の静圧の値を演算し、演算静圧として出力する。また静圧演算部11は比較判断部13が出力した評価を静圧表示部14へ出力する。
【0027】
静圧レベル記憶部12は、換気扇1が接続された流路の静圧の大きさを2つ以上の複数の段階に分け、それぞれの段階に対応する評価を合わせて記憶している。評価には風量一定制御可能な静圧であることを示す「正常評価」と、風量一定制御が不可能なほど静圧が大きいことを示す「異常評価」の少なくとも一方を含む。また、この評価は任意の段階に設定してもよく、例えば静圧の大きさをレベル1、レベル2、レベル3、レベル4に段階分けし、レベル4を異常評価とする、としてもよい。
【0028】
比較判断部13は、静圧演算部11が出力した演算静圧を、静圧レベル記憶部12が記憶している段階的な静圧のレベルと比較して、該当する段階の評価を静圧演算部11へ返す。また、比較判断部13は前記評価を静圧表示部14へ直接出力するとしてもよい。
【0029】
静圧表示部14は、静圧演算部が出力した前記演算静圧の値と前記評価の少なくとも一方を表示する。
【0030】
なお、風量演算部8が利用する関係データと静圧演算部11が利用する関係データは共通として記憶部10が記憶している関係データを利用するとしてもよい。
【0031】
図3に本実施形態に係る換気扇の静圧表示の一例を示す。施工者は換気扇1を施工後、換気扇1を実使用状態と同様に運転させることで、換気扇1は図3のように静圧表示部14に静圧を表示する。この時、静圧表示部14の静圧の値ないし静圧の評価を参照しながらダクトの経路等を改善していくことで換気扇1に対するダクト抵抗を低減し、施工異常の改善と、省エネルギーでの運転とを実現する。
【0032】
ところで、実際に換気扇を施工する現場においては施工者のスキルが様々であり、単に静圧の値を表示したとしてもその値から異常があるかないかを施工者が判断することが困難な場合がある。
【0033】
このため、静圧の値とは別に静圧の値を段階的にレベル分けした評価を合わせて表示することで、直感的に換気扇1に対する静圧の状態を理解できるようになる。その結果として、施工者に、換気扇1が接続しているダクト内の静圧の値の異常を知らせ、例えばダクトの経路を改善するなどのダクト抵抗を低減するための措置を促すことができ、換気扇1の消費電力をより小さくさせることができる。
【0034】
その際、異常評価の場合には音を鳴らして注意喚起する等の工夫も合わせて行うことでより異常の検知を容易にすることができる。
【0035】
また、事前に静圧の値を見積もっている場合には、事前見積もりと同等の静圧の値となっているかを評価することで、施工者は、適切に換気扇1を施工できているか否かを容易に確認することができる。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した換気扇1に対して、静圧評価回路5を着脱可能とした構成について、図4を参照しながら説明する。なお図4は、換気扇1の制御回路4と静圧評価装置15の静圧評価回路5の機能ブロック図である。
【0037】
図4に示すように、静圧を演算・評価する静圧評価回路5を、独立した換気扇1に接続可能な静圧評価装置15とすることもできる。
【0038】
ここで、実施の形態1と異なる構成について説明する。
【0039】
出力部16は、風量演算部8から出力された、演算風量が目標風量に達した際の電流検出部6が検出した電流値と、その時回転数検出部7が検出した回転数と、目標風量の値を、静圧評価装置15へ出力する。
【0040】
受信部17は、出力部16が出力した電流値と回転数と目標風量の値を受け取り、静圧演算部11へ出力する。
【0041】
静圧評価回路5では受信部17で受け取った値から静圧評価回路5と同様に静圧演算部11が出力した前記演算静圧の値と、その静圧の値に対する前記評価の少なくとも一方を表示する。
【0042】
静圧評価装置15の一例を示す概略図を図5に示す。静圧の評価は基本的に施工時のみ行えばよいことから、静圧評価装置15を換気扇1から独立させることで、換気扇内に静圧評価回路5を備えた場合と比較して換気扇自体の製造コストの増加を抑えることができる。
【0043】
また、静圧評価装置15内に複数機種の換気扇の関係データを記憶させておけば、静圧評価装置1台で対応する換気扇全ての静圧を評価することができる。この際、静圧評価装置15は、換気扇の機種の選択機能を備え、これに基づき対象となる換気扇を切り替え可能とする。
【0044】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した換気扇1に対して、静圧表示部14のみを静圧評価装置15bとして着脱可能とした構成について、図6を参照しながら説明する。なお図6は、換気扇1の制御回路4と静圧評価回路5と、静圧評価装置15bの機能ブロック図である。
【0045】
図6に示すように、演算された静圧の値と評価を表示する静圧表示部14を、独立した換気扇1に接続可能な静圧評価装置15bとすることもできる。
【0046】
換気扇1の出力部16は、静圧評価回路5が演算出力した演算静圧と静圧の値に対する評価を静圧評価装置15bへ出力する。
【0047】
静圧評価装置15bは受信部17と静圧表示部14を備える。
【0048】
受信部17は出力部16が出力した静圧の値と静圧の評価を受け取り、静圧表示部14へ出力する。
【0049】
静圧表示部14は受信部17が出力した出力した前記演算静圧の値と前記評価の少なくとも一方を表示する。
【0050】
実施の形態3では、主に施工時以外は必要でない静圧の値と評価を表示する機能を着脱可能とすることで、換気扇1に静圧表示部14を備えた実施の形態1と比較して、得られる効果はそのままに、換気扇1の製造コストを安くすることができる。
【0051】
(変形例)
実施の形態2や3では、換気扇と静圧評価装置間のデータ入出力は物理的に接続して行っている。物理的な接続では静圧評価装置を換気扇に接続し、固定するような構造とすることで施工者がハンズフリーで作業をしながら静圧の評価を確認できる。ただし、物理的な接続を無線での接続に代替することも可能である。
【0052】
無線接続であれば、施工者が天井裏等で作業をしながらでも静圧の評価を確認でき、換気扇を運転させてリアルタイムで静圧の値と評価を確認しながらダクト経路の設定を行うことができる。その場合、換気扇が複数ある場合は通信の混線が発生する恐れがあるため、換気扇側にデータ出力スイッチ等を備えておき、スイッチがONの時のみ換気扇がデータを出力するようにする等の工夫をすることが望ましい。
【0053】
また、図5では静圧評価装置としてその用途にしか用いることができない専用の機器を想定しているが、そのような専用の機器を用いなくとも、例えば携帯電話端末等のアプリケーションに上述した静圧評価装置の機能を持たせることで、製造側はハードを新たに製造する必要がないため手間とコストを省くことができる。施工者も新たな装置を増やすことなく、また、新機種が追加された際の記憶部内のデータ等のアップデートも簡単に行うことができ、より手軽に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る送風装置は、送風装置が接続する流路の静圧が大きくなる天井埋め込みの換気扇等の製品において広く有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 換気扇
2 ファン
3 ブラシレスDCモータ
4 制御回路
5 静圧評価回路
6 電流検出部
7 回転数検出部
8 風量演算部
9 速度制御部
10 記憶部
11 静圧演算部
12 静圧レベル記憶部
13 比較判断部
14 静圧表示部
15、15b 静圧評価装置
16 出力部
17 受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6