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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電気化学デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/70 20130101AFI20240308BHJP
   H01G 11/48 20130101ALI20240308BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20240308BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20240308BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240308BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240308BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240308BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20240308BHJP
【FI】
H01G11/70
H01G11/48
H01G11/68
H01G11/74
H01M4/13
H01M4/64 A
H01M10/0587
H01M50/531
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020539458
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2019033404
(87)【国際公開番号】W WO2020045375
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2018163842
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 東吾
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊明
(72)【発明者】
【氏名】坂田 基浩
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-124146(JP,A)
【文献】特開2007-234445(JP,A)
【文献】特開2005-209638(JP,A)
【文献】特開2009-037891(JP,A)
【文献】特開2003-338276(JP,A)
【文献】特開2010-061893(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039497(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098865(WO,A1)
【文献】特開2006-156135(JP,A)
【文献】特開平02-288158(JP,A)
【文献】特開2001-256950(JP,A)
【文献】特開2011-204414(JP,A)
【文献】特開2011-165436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/70
H01G 11/48
H01G 11/68
H01G 11/74
H01M 4/13
H01M 4/64
H01M 10/0587
H01M 50/531
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯材および前記正極芯材に担持された正極材料層を具備する正極と、
負極芯材および前記負極芯材に担持された負極材料層を具備する負極と、
前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、
非水電解質と、
前記正極芯材と電気的に接続された正極集電板と、
前記負極芯材と電気的に接続された負極集電板と、を具備し、
前記正極、前記負極および前記セパレータは、柱状の捲回体を構成しており、
前記正極芯材の長手方向に沿う端部に正極芯材露出部を有し、
前記負極芯材の長手方向に沿う端部に負極芯材露出部を有し、
前記正極芯材露出部は、前記捲回体の一方の端面から突出するとともに前記正極集電板と溶接され、
前記負極芯材露出部は、前記捲回体の他方の端面から突出するとともに前記負極集電板と溶接され、
前記正極芯材は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により形成され、
前記負極芯材は、銅もしくは銅合金により形成され、
前記正極芯材の厚みは、前記負極芯材の厚みの2倍以上である、
電気化学デバイス。
【請求項2】
前記正極芯材露出部および前記負極芯材露出部は、切り込みがなく、
前記正極芯材露出部および前記負極芯材露出部の少なくとも一方の端面は、前記端面の径方向における前記芯材露出部間の間隔が狭くなった狭窄部を有し、
前記狭窄部は、前記端面の外周および中心の2箇所から前記芯材露出部を内側に窄まるように変形させることで形成され、
前記狭窄部が、前記端面の周方向に沿って2箇所以上設けられている、
請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
前記正極芯材露出部および前記負極芯材露出部の少なくとも一方の端面は、前記端面の径方向における前記芯材露出部間の間隔が、前記端面の周方向に沿って徐々に減少して極小値に至り、その後、徐々に増加する複数の前記狭窄部を有する、
請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記負極芯材露出部の突出幅は、前記正極芯材露出部の突出幅以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記正極芯材露出部および前記負極芯材露出部の少なくとも一方が、少なくとも部分的に1回以上折り返されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記正極材料層は、導電性高分子を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記正極集電板が放射状に配された複数の第1溶接痕を有し、
前記負極集電板が放射状に配された複数の第2溶接痕を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記第1溶接痕の数が、前記第2溶接痕の数よりも多い、
請求項7に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記第1溶接痕の合計面積が、前記第2溶接痕の合計面積よりも大きい、
請求項7または8に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
前記正極集電板および前記負極集電板の少なくとも一方が、貫通孔および/または切り欠きを有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極とを有する捲回体を具備する電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学デバイスの高出力化を達成するには、電気化学デバイスの内部抵抗を低減することが望まれる。例えば、リチウムイオンキャパシタにおいて、円盤形状を有する正極集電部材と負極集電部材を有する捲回体ユニットを用いることが提案されている。各集電部材は、正極集電体および負極集電体の露出部にレーザ溶接されている(特許文献1)。このような構造は、集電抵抗が低く、電気化学デバイスの高出力化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/036249号パンフレット
【発明の概要】
【0004】
電気化学デバイスの中でも、例えば車載用途等では高度な耐振動性が求められる。しかし、特許文献1が採用する構造では、強い振動の印加によって、集電部材と集電体露出部との溶接部分近傍で集電体が破損することがある。
【0005】
本発明の一側面は、正極芯材および前記正極芯材に担持された正極材料層を具備する正極と、負極芯材および前記負極芯材に担持された負極材料層を具備する負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、非水電解質と、前記正極芯材と電気的に接続された正極集電板と、前記負極芯材と電気的に接続された負極集電板と、を具備し、前記正極、前記負極および前記セパレータは、柱状の捲回体を構成しており、前記正極芯材の長手方向に沿う端部に正極芯材露出部を有し、前記負極芯材の長手方向に沿う端部に負極芯材露出部を有し、前記正極芯材露出部は、前記捲回体の一方の端面から突出するとともに前記正極集電板と溶接され、前記負極芯材露出部は、前記捲回体の他方の端面から突出するとともに前記負極集電板と溶接され、前記正極芯材の厚みが、前記負極芯材の厚みよりも大きい、電気化学デバイスに関する。
【0006】
本発明によれば、電気化学デバイスの耐振動性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電気化学デバイスに含まれる捲回体の外観を示す斜視図である。
図2A図2Aは、正極の構成を示す平面図である。
図2B図2Bは、別の正極の構成を示す平面図(a)と縦断面図(b)である。
図3図3は、負極の構成を示す平面図である。
図4図4は、正極集電板の構成を示す斜視図である。
図5図5は、負極集電板の構成を示す斜視図である。
図6A図6Aは、狭窄部が形成される前の芯材露出部の一例を示す平面図である。
図6B図6Bは、狭窄部が形成された芯材露出部の一例を示す平面図である。
図7図7は、狭窄部のV-V線における縦断面図である。
図8A図8Aは、狭窄部に接続された正極集電板の一例の平面図である。
図8B図8Bは、狭窄部に接続された負極集電板の一例の平面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る電気化学デバイスは、正極芯材および正極芯材に担持された正極材料層を具備する正極と、負極芯材および負極芯材に担持された負極材料層を具備する負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、非水電解質と、正極芯材と電気的に接続された正極集電板と、負極芯材と電気的に接続された負極集電板とを具備する。
【0009】
正極および負極は、セパレータを介して捲回され、柱状の捲回体を構成している。正極芯材の長手方向に沿う端部には、正極芯材露出部が形成され、負極芯材の長手方向に沿う端部には負極芯材露出部が形成されている。芯材露出部とは、電極芯材のうち電極材料層を具備しない領域である。
【0010】
正極芯材露出部は、捲回体の一方の端面から突出するとともに正極集電板と溶接され、負極芯材露出部は、捲回体の他方の端面から突出するとともに負極集電板と溶接されている。
【0011】
ここで、正極芯材の厚みTpは、負極芯材の厚みTnよりも大きくなっている。正極芯材と負極芯材とでは、引張り弾性率が相違し、通常、正極芯材よりも負極芯材の引張り弾性率が大きい。正極芯材は、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金により形成され、負極芯材は、例えば、銅もしくは銅合金により形成されている。正極芯材の厚みを負極芯材の厚みよりも大きくすることで、正極集電板と正極芯材露出部との溶接部分近傍と、負極集電板と負極芯材露出部との溶接部分近傍との機械的強度のバランスが向上し、一方の溶接部分近傍への応力集中が抑制されるものと考えられる。これにより、溶接部分近傍における各電極芯材の破損が抑制され、電気化学デバイスの耐振動性が向上する。正極芯材の厚みTpの負極芯材の厚みTnに対する比:Tp/Tnは、Tp/Tn>1を満たせばよいが、電気化学デバイスの耐振動性の更なる向上の観点からは、Tp/Tn≧2を満たすことが好ましい。
【0012】
正極芯材と負極芯材とでは、熱伝導率が相違し、通常、正極芯材よりも負極芯材の熱伝導率が大きい。また、正極芯材露出部の突出幅Wpは、体積効率と正極芯材露出部の強度とのバランスを考慮し、できるだけ小さく設定される。正極芯材露出部の突出幅Wpは、電気化学デバイスの容量、種類等によって相違するが、例えば3~10mmの範囲内に設定される。このとき、Wn<Wpでは、溶接時の熱が捲回体中のセパレータに過度に伝わることがある。これに対し、Wn≧Wpとすることで、負極集電板と負極芯材露出部とを溶接する際の熱が捲回体中のセパレータに伝わりにくくなり、セパレータの損傷を回避しやすくなる。Wn/Wpは、Wn/Wp>1を満たすことが好ましいが、Wn/Wp=1でもよい。
【0013】
正極芯材露出部および負極芯材露出部の少なくとも一方は、例えば、それぞれが配された捲回体の端面の中心に向けて屈曲させた屈曲部を有してもよい。このような屈曲部は、例えば捲回体を回転させながら芯材露出部に対して外周側から治具を押し当て、徐々に治具を捲回体の端面の中心に移動させることで行い得る。屈曲部を形成することにより、捲回体の端面が芯材露出部で覆われる面積が大きくなる。よって、集電板と芯材露出部とを溶接する際にスパッタが飛散しても、スパッタと捲回体中のセパレータもしくは電極材料層との接触が抑制される。また、集電板と芯材露出部との溶接面積を大きくすることができ、溶接部分の機械的強度を向上させることができる。
【0014】
正極芯材露出部および負極芯材露出部の少なくとも一方を、少なくとも部分的に1回以上折り返してもよい。これにより、捲回体の端面が芯材露出部で覆われる面積が更に大きくなる。また、集電板と芯材露出部との溶接面積を更に大きくすることができ、溶接部分の機械的強度を効果的に向上させることができる。
【0015】
正極芯材露出部および負極芯材露出部の少なくとも一方は、例えば、それぞれが配された捲回体の端面の径方向における間隔が狭くなった狭窄部を有してもよい。狭窄部とは、例えば、捲回体の端面の径方向において、その端面の外周および中心の2箇所から芯材露出部を内側に窄まるように変形させた部位である。狭窄部は、より具体的には、例えば芯材露出部間の径方向における間隔が捲回体の端面の周方向に沿って徐々に減少して極小値に至り、その後、徐々に増加するような変形部をいう。狭窄部は、芯材露出部にカットもしくは切り込みを入れることなく、芯材露出部に部分的に(例えば上記2箇所から)圧力を印加して変形させることで形成される。狭窄部を形成することでも、スパッタと捲回体中のセパレータもしくは電極材料層との接触が抑制される。また、溶接部分の機械的強度を向上させやすくなる。
【0016】
狭窄部は、捲回体の端面の周方向に沿って2箇所以上設けられ、3箇所以上設けることが好ましく、6箇所以上設けてもよい。ただし、非水電解質の浸透性を確保する観点から、狭窄部は10箇所以下とすることが好ましい。
【0017】
正極材料層は、アニオンの可逆的な吸着と脱離により電気化学的な容量を発現する導電性高分子を含んでもよい。この場合、化学電池と電気二重層キャパシタの中間的な性能を有する電気化学デバイスを得ることができる。アニオンの吸着(ドープ)と脱離(脱ドープ)により充放電を行う正極材料は、反応抵抗が小さく、化学電池に比べて高出力を達成しやすい。ただし、導電性高分子は有機物であり、耐熱性が低いため、正極集電板と正極接続部とを溶接する際の熱により劣化し得る。これに対し、正極芯材露出部に複数の狭窄部を設け、狭窄部に正極集電板を溶接することで、熱の局所的な集中が抑制されるとともに熱が効率的に拡散しやすくなる。
【0018】
集電板と芯材露出部との溶接は、例えばレーザ溶接により行い得る。レーザは、例えば芯材露出部を覆うように配された集電板の捲回体の反対側から放射状に複数箇所に照射すればよい。芯材露出部が狭窄部を有する場合には、狭窄部と集電板とが溶接されるように位置合わせをすればよい。このとき、正極集電板には放射状に配された複数の第1溶接痕が形成され、負極集電板には放射状に配された複数の第2溶接痕が形成される。
【0019】
正極集電板に形成される第1溶接痕の数は、負極集電板に形成される第2溶接痕の数よりも多くてもよい。すなわち、正極集電板と正極芯材露出部との溶接箇所の数を、負極集電板と負極芯材露出部との溶接箇所の数よりも多くしてもよい。これにより、正極集電板と正極芯材露出部との溶接部分近傍と、負極集電板と負極芯材露出部との溶接部分近傍との機械的強度のバランスが更に向上し、一方の溶接部分近傍への応力集中が抑制され得る。特に正極集電板にタブリードの一端を接続し、タブリードの他端を電池ケースの開口を塞ぐ封口板に接続する構造では、タブリードの振動と溶接部分の振動とが共振する可能性がある。よって、正極集電板と正極芯材露出部との溶接部分の強度をできるだけ高めることが望ましい。
【0020】
上記と同様の観点から、第1溶接痕の合計面積を、第2溶接痕の合計面積よりも大きくしてもよい。
【0021】
正極集電板および負極集電板の少なくとも一方は、貫通孔および/または切り欠きを有することが望ましい。これにより、捲回体に非水電解質を浸透させる速度を速めることができる。例えば正極集電板にタブリードの一端を接続し、タブリードの他端を電池ケースの開口を塞ぐ封口板に接続する構造では、少なくとも正極集電板が貫通孔および/または切り欠きを有することが好ましい。このとき、正極集電板の機械的強度は、負極集電板に比べて相対的に低下し得る。これに対し、正極集電板に形成される第1溶接痕の数を負極集電板に形成される第2溶接痕の数よりも多くし、もしくは第1溶接痕の合計面積を第2溶接痕の合計面積よりも大きくすることで、各溶接部分の機械的強度のバランスを維持しやすくなる。
【0022】
本発明に係る電気化学デバイスは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層コンデンサなどの電気化学デバイスを包含するが、特に正極材料に導電性高分子を用いるリチウムイオン二次電池とリチウムイオンキャパシタとの中間的な電気化学デバイスとして構成するのに適している。
【0023】
以下、図面を参照しながら更に具体的に本実施形態に係る電気化学デバイスについて説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る捲回体100の外観を示す斜視図である。図2Aは、正極10の構成を示す平面図である。図3は、負極20の構成を示す平面図である。
【0025】
正極10は、長尺シート状であり、図2Aに示すように、正極芯材11およびこれに担持された正極材料層12を具備する。正極材料層12は、正極芯材11の両面に形成されている。ただし、正極芯材11の長手方向に沿う一方の端部には、正極材料層12を有さない正極芯材露出部11xが形成されている。
【0026】
図2Bは、別の正極10Aの構成を示す平面図(a)および縦断面図(b)である。正極10Aは、正極芯材露出部11xが1回折り返された折り返し部11yを有している。折り返し部11yにより、正極芯材露出部11xの捲回軸方向Zから見た見かけ上の厚みは、実際の厚みの約2倍になっている。
【0027】
負極20は、長尺シート状であり、図3に示すように、負極芯材21およびこれに担持された負極材料層22を具備する。負極材料層22は、負極芯材21の両面に形成されている。ただし、負極芯材21の長手方向に沿う一方の端部には、負極材料層22を有さない負極芯材露出部21xが形成されている。正極芯材11の厚みTpは、負極芯材21の厚みTnよりも大きく、Tp/Tn>1を満たす。
【0028】
捲回体100は、正極10と負極20とをセパレータ30を介して捲回して柱状に構成されている。捲回の際、正極芯材露出部11xが捲回体100の一方の端面から突出し、負極芯材露出部21xが捲回体100の他方の端面から突出するように位置合わせが成される。捲回体100の最外周には、セパレータ30が捲き付けられている。図1は、正極芯材露出部11xおよび負極芯材露出部21xに所定の接続部を設ける前の状態を示している。
【0029】
捲回体100において、正極芯材露出部11xの突出幅Wpと負極芯材露出部21xの突出幅Wnとは、Wn≧Wpを満たす。突出幅Wp(Wn)とは、捲回体100におけるセパレータ30の長手方向に沿う端部からの突出幅をいう。よって、芯材露出部11x(21x)の幅と、突出幅Wp(Wn)とは、必ずしも一致しなくてよい。
【0030】
次に、図4に正極集電板13の構成を示し、図5に負極集電板23の構成を示す。正極集電板13の中央には貫通孔13hが設けられ、周縁部には部分的に切り欠き14cが設けられている。負極集電板23には貫通孔がなく、周縁部に部分的に切り欠き24cが設けられている。貫通孔13hおよび切り欠き14c(24c)は、非水電解質の通路を確保するのに役立ち、切り欠き14c(24c)は捲回体100と電池ケースもしくは封口板との位置合わせに役立つ。正極集電板13には、タブリード15の一端が溶接により接続されている。タブリード15の他端は、封口板の所定箇所に接続される。なお、負極集電板23は、電池ケースの内底面に直接溶接により接続し得るため、正極集電板13が具備するようなタブリードは設けられていない。
【0031】
正極芯材露出部11xおよび負極芯材露出部21xには、例えば、それぞれ正極集電板13および負極集電板23と溶接するための狭窄部が接続部として設けられる。図6Aには、狭窄部を形成する前の芯材露出部11x(21x)の平面図を示す。
【0032】
図6Aには、複数の矢印が示されている。矢印が示す方向に部分的な圧力を加えることにより、正極接続部および負極接続部として、図6Bに示すような狭窄部111xおよび211xを形成し得る。例えば、互いに対向する矢印の位置に一対の治具をそれぞれ配置し、一対の治具間に配置された芯材露出部を当該治具で部分的に挟み込むことで、複数の狭窄部111x(211x)を形成し得る。複数の狭窄部111x(211x)は、芯材露出部に放射状に配置することが好ましい。
【0033】
図7には、狭窄部111x(211x)のV-V線における縦断面図を示す。狭窄部111x(211x)においては、正極芯材露出部11x間および/または負極芯材露出部21x間の径方向における間隔が狭くなっており、正極芯材露出部同士または負極芯材露出部同士が互いに接触していてもよい。各狭窄部では、芯材露出部間の径方向における間隔が捲回体の端面の周方向に沿って徐々に(もしくは連続的に)減少して極小値に至り、その後、徐々に(もしくは連続的に)増加する変形が繰り返されている。このような連続的な変形によれば、狭窄部111x(211x)に正極集電体(負極集電板)を溶接する際の熱が局所的に集中しにくく、熱が効率的に拡散し得る。また、狭窄部111x(211x)が所定間隔毎に形成されることで、各芯材露出部が配置された捲回体の端面に適度な隙間が確保されるため、非水電解質の捲回体への含浸も滞りなく進行する。
【0034】
図8Aには、狭窄部111xにレーザ溶接により接続された正極集電板13の一例の平面図を示す。図8Bには、狭窄部211xにレーザ溶接により接続された負極集電板23の一例の平面図を示す。正極集電板13は、放射状に配された複数の第1溶接痕16を有する。負極集電板23は、放射状に配された複数の第2溶接痕26を有する。ここでは、第1溶接痕16の数が第2溶接痕26の数よりも多く形成されており、正極集電板13は8本の第1溶接痕16を有し、負極集電板23は6本の第2溶接痕26を有する。結果として、第1溶接痕16の合計面積は、第2溶接痕26の合計面積よりも大きくなっている。隣接する溶接痕16(26)同士の間隔は、各集電板の中心に対して角度的に均等である。
【0035】
図9は、本発明の実施形態に係る電気化学デバイス200の構成を概略的に示している。電気化学デバイス200は、捲回体100と、非水電解質(図示せず)と、捲回体100および非水電解質を収容する金属製の有底の電池ケース210と、電池ケース210の開口を封口する封口板220とを具備する。封口板220の周縁部にはガスケット221が配されており、電池ケース210の開口端部をガスケット221にかしめることで電池ケース210の内部が密閉されている。正極集電板13の捲回体100側の面には、正極芯材露出部11xが配されており、その面に、狭窄部111xが溶接されている。正極集電板13に一端が接続されているタブリード15の他端は、封口板220の内面に接続されている。よって、封口板220は、外部正極端子としての機能を有する。一方、負極集電板23の捲回体100側の面には、負極芯材露出部21xが配されており、その面に、狭窄部211xが溶接されている。負極集電板23は、電池ケース210の内底面に設けられた溶接用部材に直接溶接されている。よって、電池ケース210は、外部負極端子としての機能を有する。
【0036】
以下、正極材料に導電性高分子を用い、負極材料に炭素材料を用いる電気化学デバイスを例にとって、本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの各構成要素について更に詳細に説明する。
【0037】
(正極芯材)
正極芯材には、シート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料は、金属箔、金属多孔体、エッチングメタルなどであればよい。金属材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、チタンなどを用い得る。正極芯材の引っ張り弾性率は、例えば40~60MPa程度である。正極芯材の厚みは、例えば10~100μmである。正極芯材には、カーボン層を形成してもよい。カーボン層は、正極芯材と正極材料層との間に介在して、例えば、正極材料層から正極芯材への集電性を向上させる機能を有する。
【0038】
(カーボン層)
カーボン層は、例えば、正極芯材の表面に導電性炭素材料を蒸着し、もしくは、導電性炭素材料を含むカーボンペーストの塗膜を形成し、塗膜を乾燥することで形成される。カーボンペーストは、例えば、導電性炭素材料と、高分子材料と、水または有機溶媒とを含む。カーボン層112の厚みは、例えば1~20μmであればよい。導電性炭素材料には、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンブラックなどを用い得る。中でも、カーボンブラックは、薄くて導電性に優れたカーボン層を形成し得る。高分子材料には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などを用い得る。
【0039】
(正極材料層)
正極材料層は、導電性高分子を含む。正極材料層は、例えば、カーボン層を備える正極芯材を導電性高分子の原料モノマーを含む反応液に浸漬し、正極芯材の存在下で原料モノマーを電解重合することにより形成される。このとき、正極芯材をアノードとして電解重合を行うことにより、導電性高分子を含む正極材料層がカーボン層を覆うように形成される。正極材料層の厚みは、電解電流密度、重合時間等により制御し得る。正極材料層の厚みは、片面あたり、例えば10~300μmである。
【0040】
導電性高分子としては、π共役系高分子が好ましい。π共役系高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジンまたはこれらの誘導体を用い得る。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。導電性高分子の重量平均分子量は、例えば1000~100000である。なお、π共役系高分子の誘導体とは、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジン等のπ共役系高分子を基本骨格とする高分子を意味する。例えば、ポリチオフェン誘導体には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
【0041】
正極材料層は、電解重合以外の方法で形成されてもよい。例えば、原料モノマーの化学重合により導電性高分子を含む正極材料層を形成してもよい。また、予め合成された導電性高分子もしくはその分散体(dispersion)を用いて正極材料層を形成してもよい。
【0042】
電解重合または化学重合で用いられる原料モノマーは、重合により導電性高分子を生成し得る重合性化合物であればよい。原料モノマーは、オリゴマ―を含んでもよい。原料モノマーとしては、例えばアニリン、ピロール、チオフェン、フラン、チオフェンビニレン、ピリジンまたはこれらの誘導体が用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。中でもアニリンは、電解重合によりカーボン層の表面に成長させやすい。
【0043】
電解重合または化学重合は、アニオン(ドーパント)を含む反応液を用いて行い得る。π電子共役系高分子にドーパントをドープすることで優れた導電性を発現される。例えば化学重合では、ドーパントと酸化剤と原料モノマーとを含む反応液に正極芯材を浸漬し、その後、反応液から引き揚げて乾燥させればよい。電解重合では、ドーパントと原料モノマーとを含む反応液に正極芯材と対向電極とを浸漬し、正極芯材をアノードとして両者の間に電流を流せばよい。
【0044】
ドーパントとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン(CFSO )、過塩素酸イオン(ClO )、テトラフルオロ硼酸イオン(BF )、ヘキサフルオロ燐酸イオン(PF )、フルオロ硫酸イオン(FSO )、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン(N(FSO )、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(N(CFSO )などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
ドーパントは、高分子イオンであってもよい。高分子イオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのイオンが挙げられる。これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
(正極集電板)
正極集電板は、概ね円盤状の金属板である。正極集電板の中央部には非水電解質の通路となる貫通孔を形成することが好ましい。正極集電板の材質は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、ステンレス鋼などである。正極集電板の材質は、正極芯材の材質と同じでもよい。
【0047】
(負極芯材)
負極芯材にもシート状の金属材料が用いられる。シート状の金属材料は、金属箔、金属多孔体、エッチングメタルなどであればよい。金属材料としては、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などを用い得る。負極芯材の引っ張り弾性率は、例えば180~350MPaである。負極芯材の厚みは、正極芯材の厚みよりも小さく、例えば10~100μmである。
【0048】
負極材料層は、負極活物質として、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出する材料を備える。負極活物質としては、炭素材料、金属化合物、合金、セラミックス材料などが挙げられる。炭素材料としては、黒鉛、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)が好ましく、特に黒鉛やハードカーボンが好ましい。金属化合物としては、ケイ素酸化物、錫酸化物などが挙げられる。合金としては、ケイ素合金、錫合金などが挙げられる。セラミックス材料としては、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0049】
負極材料層には、負極活物質の他に、導電剤、結着剤などを含ませ得る。導電剤としては、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。結着剤としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ゴム材料、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0050】
負極材料層は、例えば、負極活物質と、導電剤および結着剤などとを、分散媒とともに混合して負極合剤ペーストを調製し、負極合剤ペーストを負極集電体に塗布した後、乾燥することにより形成される。負極材料層の厚みは、片面あたり、例えば10~300μmである。
【0051】
負極材料層には、予めリチウムイオンをプレドープすることが望ましい。これにより、負極の電位が低下するため、正極と負極の電位差(すなわち電圧)が大きくなり、電気化学デバイスのエネルギー密度が向上する。
【0052】
リチウムイオンの負極材料層へのプレドープは、例えば、金属リチウム膜を負極材料層の表面に形成し、金属リチウム膜を有する負極をリチウムイオン伝導性電解液(例えば、非水電解質)に含浸させることにより進行する。このとき、金属リチウム膜からリチウムイオンが非水電解質中に溶出し、負極材料層に吸蔵される。
【0053】
(負極集電板)
負極集電板は、概ね円盤状の金属板である。負極集電板の材質は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などである。負極集電板の材質は、負極芯材の材質と同じでもよい。
【0054】
(セパレータ)
セパレータとしては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布もしくは不織布などを用い得る。セパレータの厚みは、例えば10~300μmであり、10~40μmが好ましい。
【0055】
(非水電解質)
非水電解質は、リチウムイオン伝導性を有し、リチウム塩と、リチウム塩を溶解させる非水溶媒とを含む。リチウム塩のアニオンは、正極へのドープと脱ドープとを可逆的に繰り返すことが可能である。リチウム塩に由来するリチウムイオンは、可逆的に負極に吸蔵および放出される。
【0056】
リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl、LiN(FSO、LiN(CFSOなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。充電状態(充電率(SOC)90~100%)における非水電解質中のリチウム塩の濃度は、例えば0.2~5mol/Lである。
【0057】
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-プロパンサルトンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0058】
非水電解質に、必要に応じて、種々の添加剤を含ませてもよい。例えば、負極表面にリチウムイオン伝導性の被膜を形成する添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどの不飽和カーボネートを添加してもよい。
【0059】
(電池ケース)
電池ケースの材質は、特に限定されないが、例えば鋼板が用いられる。鋼板にはニッケルめっきを施すことが好ましい。鋼板の具体的種類としては、例えばJIS G3141に準拠したSPCC、SPCD、SPCE等が挙げられる。
【0060】
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(1)正極の作製
厚み25μmのアルミニウム箔(正極芯材)の両面に、カーボンブラックを含むカーボン層(厚み2μm)を形成した。一方、アニリンおよび硫酸を含むアニリン水溶液を準備した。正極芯材と対向電極とをアニリン水溶液に浸漬し、10mA/cmの電流密度で20分間の電解重合を行ない、硫酸イオン(SO 2-)がドープされた導電性高分子(ポリアニリン)の膜を正極材料層としてカーボン層上に成長させた。このとき、正極芯材の長手方向に沿う端部には、幅10mmの正極芯材露出部を形成した。次に、硫酸イオンがドープされた導電性高分子を還元し、ドープされていた硫酸イオンを脱ドープし、その後、正極材料層を十分に洗浄し、乾燥させた。正極材料層の厚みは、片面あたり50μmとした。
【0062】
(2)負極の作製
厚み10μmの銅箔(負極芯材)を準備した。一方、ハードカーボン97質量部と、カルボキシセルロース1質量部と、スチレンブタジエンゴム2質量部とを混合した混合粉末と、水とを、質量比で40:60の割合で混錬した負極合剤ペーストを調製した。負極合剤ペーストを負極芯材の両面に塗布し、乾燥して、厚さ50μmの負極材料層を形成した。負極芯材の長手方向に沿う端部には、幅10mmの負極芯材露出部を形成した。次に、負極材料層に所定量のプレドープのための金属リチウム層を形成した。プレドープ完了後の非水電解質中での負極電位が金属リチウムに対して0.2V以下となるように金属リチウム層の分量を設定した。
【0063】
(3)捲回体の作製
正極と負極とをセルロース製不織布のセパレータ(厚さ35μm)を介して柱状に捲回して捲回体を形成した。このとき、正極芯材露出部を捲回体の一方の端面から突出させ、負極芯材露出部を捲回体の他方の端面から突出させた。
【0064】
捲回体は、正極芯材の厚みTp=25μm、負極芯材の厚みTn=10μm、Tp/Tn=2.5、正極芯材の引張り弾性率55MPa、負極芯材の引張り弾性率195MPa、正極芯材露出部の突出幅Wp=負極芯材露出部の突出幅Wn=10mm、Wn/Wp=1.0を満たしていた。
【0065】
(4)正極接続部(狭窄部)の形成
捲回体の一方の端面に配されている正極芯材露出部において、その端面の中心に対して角度的に均等な8箇所に狭窄部を形成した。
【0066】
(5)負極接続部(狭窄部)の形成
捲回体の他方の端面に配されている負極芯材露出部において、その端面の中心に対して角度的に均等な6箇所に狭窄部を形成した。
【0067】
(6)集電板の溶接
正極集電板として、φ19mm、厚み0.8mmの円盤状のアルミニウム板を準備した。正極集電板の中央部には直径3mmの貫通孔を設けた。また、負極集電板として、ニッケルめっきを施したφ19mm、厚み0.6mmの円盤状の銅板を準備した。正極集電板には、アルミニウム製のストリップ状(9mm×25mm、厚み200μm)のタブリードの一端を溶接により接続した。
【0068】
正極芯材露出部に正極集電板を配置し、8箇所の狭窄部に沿って正極集電板にレーザを照射して狭窄部と正極集電板とを溶接した。また、負極芯材露出部に負極集電板を配置し、6箇所の狭窄部に沿って負極集電板にレーザを照射して狭窄部と負極集電板とを溶接した。
【0069】
(7)非水電解液の調製
プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとの体積比1:1の混合物に、ビニレンカーボネートを0.2質量%添加して、溶媒を調製した。得られた溶媒にリチウム塩としてLiPFを所定濃度で溶解させて、アニオンとしてヘキサフルオロリン酸イオン(PF )を有する非水電解質を調製した。
【0070】
(8)電気化学デバイスの作製
開口を有する有底の電池ケースに捲回体を収容し、正極集電板と接続されているタブリードの他端を封口板の内面に接続し、更に、負極集電板を電池ケースの内底面に溶接した。電池ケース内に非水電解質を注液した後、電池ケースの開口を封口板で塞ぎ、図9に示すような電気化学デバイスA1を組み立てた。その後、正極と負極との端子間に3.8Vの充電電圧を印加しながら25℃で24時間エージングし、リチウムイオンの負極へのプレドープを進行させた。
【0071】
(実施例2)
それぞれ狭窄部を形成することなく、正極芯材露出部および負極芯材露出部に正極集電板および負極集電板を溶接したこと以外、実施例1と同様に電気化学デバイスA2を組み立てた。
【0072】
エージング直後において、電気化学デバイスを3.8Vの電圧で充電した後、所定時間放電し、その際の電圧降下量から内部抵抗(初期DCR)を求めたところ、電気化学デバイスA1に比べて、電気化学デバイスA2の内部抵抗が5%大きかった。これは、電気化学デバイスA2の正極材料層内のポリアニリンが溶接時の熱により僅かに劣化したことや、電気化学デバイスA1とA2の溶接部分近傍の接続強度の差に起因するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る電気化学デバイスは、耐振動性に優れるため、例えば車載用途として好適である。
【符号の説明】
【0074】
100:捲回体
10、10A:正極
11:正極芯材
11x:正極芯材露出部
111x:狭窄部
11y:折り返し部
12:正極材料層
13:正極集電板
13h:貫通孔
14c:切り欠き
15:タブリード
16:第1溶接痕
20:負極
21:負極芯材
21x:負極芯材露出部
211x:狭窄部
22:負極材料層
23:負極集電板
24c:切り欠き
30:セパレータ
200:電気化学デバイス
210:電池ケース
220:封口板
221:ガスケット
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9