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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】円盤状多孔質膜ホルダー
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/44 20220101AFI20240308BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B01F25/44
B01D29/04 510A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019201825
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021062355
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】597011566
【氏名又は名称】エス・ピー・ジーテクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 光輝
(72)【発明者】
【氏名】糸平 俊一
(72)【発明者】
【氏名】前田 大悟
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-142438(JP,A)
【文献】特開2019-098298(JP,A)
【文献】特開2007-125535(JP,A)
【文献】特開2016-059828(JP,A)
【文献】特開平06-315617(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133209(WO,A1)
【文献】特開2019-055376(JP,A)
【文献】米国特許第04027045(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 25/44
B01F 23/41
B01D 29/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒突合せ本体同士の間に円盤状多孔質膜が挟まれており、当該円盤状多孔質膜を介して一次室と二次室など二つの室に区画することが可能であり、当該円盤状多孔質膜を一Oリングで液密あるいは気密を保持し、当該円盤状多孔質膜が脱着できる円盤状多孔質膜ホルダーにおいて、当該一Oリングは当該円盤状多孔質膜の外周断面を覆うように二つの当該円筒突合せ本体の間に設けられるもので、当該一Oリングが、一方または両方の当該円筒突合せ本体のOリング着座部に設置されており、当該円筒突合せ本体同士を螺合手段あるいはクランプ手段で固定することで当該Oリングが圧迫され、そのとき当該円盤状多孔質膜の外周断面に当該Oリング内面部が当接圧着し、同時に当該Oリングの外面部が当該Oリング着座部の内向き面部に当接圧着し、当該円筒突合せ本体の突合せ面から外部への液密あるいは気密も保持できる一Oリングを使用することを特徴とする円盤状多孔質膜ホルダー。
【請求項2】
二つの前記円筒突合せ本体の突合せ面の反対側の少なくとも一方が注射用シリンジと接続することのできるコネクタで形成されることを特徴とする請求項1記載の円盤状多孔質膜ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状多孔質膜を用いた膜ホルダーに係るものであり、多孔質膜を用いた用途には、膜乳化、膜バブリング、膜ろ過など様々である。これらの用途において膜を組み込むホルダーあるいはモジュールは、膜を介して1次側と2次側を液密、あるいは気密に隔てることが最も重要である。そこで本発明は、膜を介して1次側と2次側の室を液密、あるいは気密に隔てるためのシール構造に特徴を有する膜ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質のような微細孔を有さないムク棒や鉄パイプなどをOリングでシールすることは一般的な事項だが、外観形状は同じにしてもそれが本発明に係る当該多孔質膜では、そのOリングの使い方には注意が必要で限りがある。多孔質膜を用いた産業において、多孔質膜を搭載するホルダーあるいはモジュールでは、膜乳化や膜ろ過・膜分離、膜バブリングなど様々な分野で活用されており、所謂膜ホルダーあるいは膜モジュールは、多孔質膜を隔てて、その細孔から液体または気体となる相を反対側の別の相へ分散、または混合相から特定の相を抽出するものであるために、当該多孔質膜を介して相を隔てるシール構造は非常に重要である。つまり多孔質膜の細孔以外、例えばシール不足による隙間からの相の流通は、その細孔由来の生成物が得られないことになり、目的品質とならない。
【0003】
例えば、膜乳化で生成されるエマルションは、細孔由来の分散粒子径を得るところ、シール機構に不足がありその隙間から粗大な分散粒子が生成されると不均一なエマルションとなり問題となる。
【0004】
また、膜ろ過で細孔径に従う抽出物を得たいところ、シール機構が不十分で隙間があると、その隙間からの漏れにより、本来の微粒子以外の粗大粒子が混在し、抽出不良の問題となる。
【0005】
そこで、多孔質膜のシール漏れを完全に防止し、均一な分散粒子のエマルションや、ろ過に好適に使用される円盤状多孔質膜のシール構造を提供する特許文献1が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平06-315617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、円盤状多孔質膜のような板状のものは、一般的に面の垂直方向の応力に強度耐性を有さないため、本発明を含め特許文献の装置に係る当該円盤状多孔質膜ホルダーは、当該円盤状多孔質膜を破壊することなく、しっかりした液密・気密を確保する構造でなければならない。
【0008】
そこで特許文献1では、円盤状多孔質膜の周縁部両面にそれぞれOリングが設置され、各相タンクとなる円筒突合せ本体同士でそれぞれのOリングを狭着し液密を保持するものである。
【0009】
また、特許文献1によると前述の円筒突合せ本体の突合せ手段として、袋ナットである螺合部材により締め付けて圧着する場合と、クランプ式により締め付けて圧着する場合が示されているが、何れも所謂円盤状多孔質膜を介して二室に区画するための液密を確保するには、少なくとも両周縁部に二Oリングを必要とし、場合によっては当該円筒突合せ本体の突合せ面から外部へ漏洩しないために、第三のOリングを必要とすることが看取される。
【0010】
何れにしても、当該多孔質膜を用いる産業分野では、その多孔質膜細孔由来の生成物を必要とするもので、所謂液密が保持されず当該多孔質膜細孔以外の各隙間から各相の流通が発生すると、例えば膜乳化の場合、粗大粒子が発生することになり、またろ過の場合、正しい抽出や分級が行えないことになる。さらに、装置外部への漏洩となると場合によっては衛生面や汚染などの危険を招く事態も考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、当該一Oリングのシール機構で隙間が起こりにくく、円盤状多孔質膜を円筒突合せ本体同士の間に挟んで二つの室に液密・気密に区画することのでき、当該円盤状多孔質膜の着脱が可能な画期的な膜ホルダーを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の膜ホルダーに関するものである。
項1.円筒突合せ本体同士の間に円盤状多孔質膜が挟まれており、当該円盤状多孔質膜を介して一次室と二次室など二つの室に区画することが可能であり、当該円盤状多孔質膜を一Oリングで液密あるいは気密を保持し、当該円盤状多孔質膜が脱着できることを特徴とする円盤状多孔質膜ホルダー。
項2.前記一Oリングが前記円盤状多孔質膜の外周断面を覆うように二つの前記円筒突合せ本体の間に設けられるもので、当該一Oリングが、一方または両方の当該円筒突合せ本体のOリング着座部に設置されており、当該円筒突合せ本体同士を螺合手段あるいはクランプ手段で固定することで当該Oリングが圧迫され、そのとき当該円盤状多孔質膜の外周断面に当該Oリング内面部が当接圧着し、同時に当該Oリングの外面部が当該Oリング着座部の内向き面部に当接圧着し、当該円筒突合せ本体の突合せ面から外部への液密あるいは気密も保持できる一Oリングを使用することを特徴とする項1記載の円盤状多孔質膜ホルダー。
項3.一方の前記円筒突合せ本体の段部に前記円盤状多孔質膜の一方の円縁面が当接するように静置されており、両当該円筒突合せ本体同士を螺合手段あるいはクランプ手段で固定し突合せすることにより、もう一方の当該円筒突合せ本体の凸部を囲うように設置された前記一Oリングが当該円盤状多孔質膜のもう一方の円縁面に当接圧着し、同時に当該一Oリングが先の当該円筒突合せ本体の段部の内向き面部に当接圧着し、当該円筒突合せ本体の突合せ面から外部への液密あるいは気密も保持できる一Oリングを使用することを特徴とする項1記載の円盤状多孔質膜ホルダー。
項4.前記円盤状多孔質膜の外周断面を覆うように設置されるか、あるいは当該円盤状多孔質膜の円縁面に当接するように設置される前記一Oリングの線径が、当該円盤状多孔質膜の厚みに対して0.3乃至3倍の大きさであることを特徴とする項1乃至3記載の円盤状多孔質膜ホルダー。
項5.二つの前記円筒突合せ本体の突合せ面の反対側の少なくとも一方が注射用シリンジと接続することのできるコネクタで形成されることを特徴とする項1乃至4記載の円盤状多孔質膜ホルダー。
【0013】
ここで本発明において利用できる当該円盤状多孔質膜は、無機質多孔質体、有機質多孔質体があるが、無機質多孔質体には炭素質多孔質体、炭化ケイ素多孔質体、シリカアルミナ系多孔質体、ゼオライト系多孔質体、粘土系多孔質体、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、金属及び金属酸化物系多孔質がある。有機質多孔質体においては、高分子多孔質焼結体などがある。本発明においては、これらの多孔質体を有効に利用することが可能である。本発明において適している分相法多孔質ガラス体として周知のNaO-B-SiOを基礎ガラス組成とし骨格SiO組成となる多孔質ガラス、NaO-B-CeONbを基礎ガラス組成とし骨格CeONb組成となる多孔質ガラス、NaO-P-SiOを基礎ガラス組成とし骨格P-SiO組成となる多孔質ガラス、NaO-B-SiO-GeOを基礎ガラス組成とし骨格SiO-GeO組成となる多孔質ガラス、CaO-B-TiO-SiOを基礎ガラス組成とし骨格TiO-SiO組成となる多孔質ガラス、NaO-B-ZrO-SiOを基礎ガラス組成とし骨格ZrO-SiO組成となる多孔質ガラス、CaO-B-Al-SiOを基礎ガラス組成とし骨格Al-SiO組成となる多孔質ガラスがあるが、最も適しているCaO-B-SiO-Al系の多孔質ガラス、CaO-B-SiO-Al-NaO系の多孔質ガラス及びCaO-B-SiO-Al-NaO-MgO系の多孔質ガラスなどを円筒状に成形した多孔質膜として使用するのが好ましい。本発明に最も適している後述の本実施例で用いたCaO-B-SiO-Al系多孔質体のシラス多孔質ガラス膜(以下、SPGという)は、膜を貫通する無数の超微細孔を有し、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れている公知の多孔質ガラス膜である。成形するSPGの形状自体は特に限定されないが、平板形、円柱形など使用目的に応じた形状に成形できる。SPGはガラスフィルターであり、円筒状のものでは外圧に対して約20MPa耐えることもできる。またSPGの多孔質を構成する気孔率は微細孔径に因ることなく約50%乃至60%を有する。液体をこのSPGに透過させるのに高圧は全く必要なく、非常に低エネルギーで透過させることができる透過性に優れた多孔質体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る膜ホルダーは、一Oリングで円盤状多孔質膜を介して液密・気密に二室を区画することが可能で、外部への漏洩も遮断できるものであり、従来のように二Oリングで円盤状多孔質膜両面を圧迫し液密を確保する必要はなく、また、両突合せ部位そのものの合わせ部の液密を確保するための第三Oリングの必要もなくなる。よって、繰り返し実験などで頻繁に消耗する可能性があるOリングにおいて、特にパーフロ製など耐薬品性を要する高価なOリングなどコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明によれば、例えば膜乳化実施中に液密支持の一Oリングからの分散相液漏れの心配がなく、円盤状多孔質膜細孔から押し出される分散相液滴のエマルションを生成することが可能で、乳化実施前後の円盤状多孔質膜の装着脱の手間が非常に簡潔で、多数種類の頻繁な操作に適するものである。
【0016】
本発明で使用される最も適している多孔質膜であるSPGは、膜を貫通する無数の微細孔を有し、気孔率が非常に高く、細孔の均一性について非常に優れている。また使用目的に応じた形状に成形できる。SPGの多孔質を構成する気孔率は、細孔径に因ることなく約50%乃至60%を有しており多孔質膜のなかでも非常に透過性に優れているので、液体や気体を該SPGに透過させるのに低エネルギーで押し出すことができる。
【0017】
また、SPGのような多孔質膜は円盤状など精密な外観寸法加工が可能で、本発明に係る精密な寸法仕様が必要な円盤状用膜ホルダーでは何ら問題なく大小さまざまな大きさのものを製作することができる。
【0018】
ここで本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1に示すように、本発明の膜ホルダー6において突合せ本体となるホルダーオス3には、一Oリング2が設置されるOリング着座部3aが設けられており、その一Oリング2の内径部に収まるように円盤状多孔質膜1が円筒突合せ本体の段部3dに静置され、もう一方の突合せ本体となるホルダーアダプター4が円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えながらホルダーキャップ5によりホルダーオス3と螺合することでそれぞれ両突合せ本体の突合せ面が当接、あるいは当該突合せ面12は当接せずとも当該一Oリング2の最大圧迫時の接近状態で、一Oリング2が円盤状多孔質膜1の外周断面3hに当接圧着されるものである。このときホルダーオス3の円筒突合せ段部3dとホルダーアダプター4のOリング押圧部4aは、配置された一Oリング2の面に対して円盤状多孔質膜1が傾かず平衡に収まるように、円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えるだけで、強く円盤状多孔質膜1に圧着されるものではない。
【0020】
然るに当該突合せのための螺合手段であるホルダーキャップ5には、ホルダーオス3の螺合ねじ部3cと螺合するために、螺合ねじ部5aが設けられている。
【0021】
そして、図1(b)に示すように、螺合手段により突き合わされ圧迫した一Oリング2の外周面は、ホルダーオス3のOリング着座部3aの内向き面部3gにも当接圧着される構造であるため、突合せ面12から外部へ漏洩することもない。
【0022】
また、円盤状多孔質膜1を介して二室に液密・気密に区画された本発明の膜ホルダー6の突合せ本体であるホルダーオス3と、もう一方の突合せ本体であるホルダーアダプター4の辺縁部には、それぞれ他室と連結できる他室連絡継手3bと4bを備えることができる。
【実施例2】
【0023】
図2に示すように、本発明の膜ホルダー6において突合せ本体となるホルダーオス3には、一Oリング2が設置されるOリング着座部3aが設けられており、その一Oリング2の内径部に収まるように円盤状多孔質膜1が円筒突合せ本体の段部3dに静置され、もう一方の突合せ本体となるホルダーアダプター4が円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えながらホルダークランプ5bによりホルダーオス3とクランプされることでそれぞれ両突合せ本体の突合せ面が当接あるいは、当該突合せ面12は当接せずとも当該一Oリング2の最大圧迫時の接近状態で、一Oリング2が円盤状多孔質膜1の外周断面3hに当接圧着されるものである。このときホルダーオス3の円筒突合せ段部3dとホルダーアダプター4の円筒突合せ段部3dは、配置された一Oリング2の面に対して円盤状多孔質膜1が傾かず平衡に収まるように、円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えるだけで、強く円盤状多孔質膜1に圧着されるものではない。
【0024】
そして、図2(b)に示すように、クランプ手段により突き合わされ圧迫した一Oリング2の外周面は、ホルダーオス3のOリング着座部3aの内向き面部3gにも当接圧着される構造であるため、突合せ面12から外部へ漏洩することもない。
【0025】
また、円盤状多孔質膜1を介して二室に液密・気密に区画された本発明の膜ホルダー6の突合せ本体であるホルダーオス3と、もう一方の突合せ本体であるホルダーアダプター4の辺縁部には、それぞれ他室と連結できる他室連絡継手3bと4bを備えることができる。
【実施例3】
【0026】
図3に示すように、本発明の膜ホルダー6において突合せ本体となるホルダーオス3の円筒突合せ本体の段部3dに円盤状多孔質膜1の外径がちょうど収まるように静置され、もう一方の突合せ本体となるホルダーアダプター4の円筒突合せ本体の凸部3eを囲うように一Oリング2が設置され、その一Oリング2は円盤状多孔質膜1のもう一方片側の円縁面3fに当接するものであり、ホルダークランプ5bによりホルダーオス3とホルダーアダプター4がクランプされることでそれぞれ両突合せ本体の突合せ面が当接、あるいは当該突合せ面12は当接せずとも当該一Oリング2の最大圧迫時の接近状態で、一Oリング2が円盤状多孔質膜1の円縁面3fに当接圧着されるものである。このときホルダーオス3の円筒突合せ段部3dとホルダーアダプター4の円筒突合せ本体の凸部3eは、配置された一Oリング2の面に対して円盤状多孔質膜1が傾かず平衡に収まるように、円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えるだけで、強く円盤状多孔質膜1に圧着されるものではない。
【0027】
そして、図3(b)に示すように、クランプ手段により突き合わされ圧迫した一Oリング2の外周面は、ホルダーオス3の突合せ本体段部3dの内向き面部3gにも当接圧着される構造であるため、突合せ面12から外部へ漏洩することもない。
【0028】
また、円盤状多孔質膜1を介して二室に液密・気密に区画された本発明の膜ホルダー6の突合せ本体であるホルダーオス3と、もう一方の突合せ本体であるホルダーアダプター4の辺縁部には、それぞれ他室と連結できる他室連絡継手3bと4bを備えることができる。
【実施例4】
【0029】
図4に示すように、実施例1において円盤状多孔質膜1を介して二室に液密・気密に区画された本発明の膜ホルダー6の突合せ本体であるホルダーオス3と、もう一方の突合せ本体であるホルダーアダプター4の辺縁部が、それぞれ注射用シリンジと連結できる注射シリンジ用コネクタ4cとすること以外、実施例1と同様とすることができる。
【実施例5】
【0030】
図5に示すように、実施例4において円盤状多孔質膜1を介して二室に液密・気密に区画された本発明の膜ホルダー6の突合せ本体であるホルダーオス3に対して、もう一方の突合せ本体をホルダープラグ7とすること以外、実施例4と同様とすることができる。
【実施例6】
【0031】
図6に示すように、本発明の膜ホルダーの一Oリング着座部3aが両円筒突合せ本体に設けられており、同時に両Oリング着座部3aがOリング押圧部4aとなるように構成しても良い。このとき円筒突合せ本体の段部3dが円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えながら両円筒突合せ本体の螺合やクランプなど突合せ固定手段(図示しない)により突合せ面が当接、あるいは当該突合せ面12は当接せずとも当該一Oリング2の最大圧迫時の接近状態で、一Oリング2が円盤状多孔質膜1の外周断面3hに当接圧着されるものである。このとき両円筒突合せ本体の段部3dは、配置された一Oリング2の面に対して円盤状多孔質膜1が傾かず平衡に収まるように、円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えるだけで、強く円盤状多孔質膜1に圧着されるものではない。
【0032】
そして、突合せ固定手段により突き合わされ圧迫した一Oリング2の外周面は、両Oリング着座部3aの両内向き面部3gにも当接圧着される構造であるため、突合せ面12から外部へ漏洩することもない。
【実施例7】
【0033】
以上の実施例のように、本発明に用いる円盤状多孔質膜の膜厚みmに対する一OリングのOリング線径nは、図7(a)に示すように膜厚みmに対してOリング線径nが大きいものも利用することができる。ただしこの場合、一Oリング2の潰しシロh分の挟み込みにより円盤状多孔質膜の外周断面3hが全周圧迫されると、Oリング2の線径nが膜厚みmより大きいため、当該円盤状多孔質膜1が傾いたり斜め状態で圧着されてしまう可能性があり、するとそのOリングから円盤状多孔質膜が逸脱して逆に隙間を形成してしまう可能性がある。そのような不具合を抑制するために、膜厚みm<Oリング線径nの場合、図7(b)のように両円筒突合せ本体が突き合ったとき、膜厚みm分が圧迫されたOリング2の一部に当接するように円筒突合せ本体の段部3dを円筒突合せ本体の凸部3eとして設計するこ前述の実施例のとおり、配置された一Oリング2の面に対して、円盤状多孔質膜1が傾かず平衡に収まるように、円盤状多孔質膜1の円縁面3fを支えるだけのことで、その不具合を解消することができる。だからとして、膜厚みmに対して過剰な太さの線径nのOリング、つまり大きなOリングは必要なく、一Oリングに掛かる費用と、それに係る本発明の膜ホルダーのコンパクト性を考慮すると、Oリング線径nは、膜厚みmに対して最大3倍が好ましい。
【実施例8】
【0034】
また、同様に、本発明に用いる円盤状多孔質膜の膜厚みmに対する一Oリング2のOリング線径nは、図8(a)に示すように膜厚みmに対してOリング線径nが小さいものも利用することができる。ただし本発明の膜ホルダーは図8(b)のように一Oリング2の圧迫のための潰しシロhを確保する必要があり、このような膜厚みm>Oリング線径nの場合、線径nが小さすぎると、Oリング2を圧迫した際、膜厚みmに当接する面が小さくなりすぎて高圧な液密・気密が必要な場合、耐圧に負けて漏洩してしまう懸念がある。よってOリング2の潰しシロhにより確実な液密・気密性を保持するために必要な当該当接長さは、当該円盤状多孔質膜1の外周断面3hの少なくとも厚み方向1/4が好ましく、Oリング線径nは、膜厚みmに対して最小0.3倍が好ましい。
【実施例9】
【0035】
図9(a)に示すように、本発明の膜ホルダー6の他室連絡継手3bと処理前相タンク13を連絡し、一方、膜ホルダー6の他室連絡継手4bを処理後相タンク14に連絡し、処理前相タンク13内の処理前相13aをバルブ17を介してガスボンベの加圧などによる送液手段15により膜ホルダー6に通過させ処理後相タンク14に収集することで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜細孔径由来の処理後相14aを生成することができる。例えば処理前相13aを、分散相の油相O(図示しない)と連続相の水溶性界面活性剤の添加された水相W(図示しない)とする2液の適当に粗混合したものとすれば、これを前記のとおり膜ホルダー6に通過させることで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜の細孔径由来の分散相液滴が分散した処理後相14aとしてO/W型エマルションを生成することができる。
【実施例10】
【0036】
図9(b)に示すように、本発明の膜ホルダー6の他室連絡継手3bと処理前相タンク13を送液ポンプ16を介して連絡し、一方、膜ホルダー6の他室連絡継手4bを処理後相タンク14に連絡し、処理前相タンク13内の処理前相13aを、送液ポンプ16により膜ホルダー6に通過させ処理後相タンク14に収集することで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜細孔径由来の処理後相14aを生成することができる。例えば、処理前相13aを、微量の不純物S(図示しない)が混在したものとすれば、これを前記のとおり膜ホルダー6に通過させることで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜の細孔径由来のろ過が可能で、当該不純物Sを除去しながら処理後相14aとしてろ液を回収することができる。
【実施例11】
【0037】
図10(a)に示すとおり、両注射用シリンジを用いてポンピング式の所謂膜乳化によりエマルションを生成するために、本発明の膜ホルダー6の一方の注射シリンジ用コネクタ4cに分散相8aを充填した注射用シリンジ8を接続し、もう一方の注射シリンジ用コネクタ4cに連続相9aを充填した注射用シリンジ9を接続し、膜ホルダー6に交互にポンピングしながら透過させることで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜細孔径由来のエマルションを生成することができる。
【実施例12】
【0038】
図10(b)に示すとおり一注射用シリンジを用いて透過式の所謂膜乳化によりエマルション生成するために、エマルションを形成する分散相と連続相の二液の粗混合相8bを充填した注射用シリンジ8を、本発明の膜ホルダー6の一方の注射シリンジ用コネクタ4cに接続し膜ホルダー6に透過させることで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜細孔径由来のエマルションを生成し、容器10aに収集することができる。
【実施例13】
【0039】
図10(b)はまた、注射用シリンジ8に取り除きたい不純物S(図示しない)が混在したスラリー相8cを構えて膜ホルダー6に透過させることで、膜ホルダー6内の円盤状多孔質膜細孔径由来のろ過により不純物Sを除去し、ろ液を容器10aに収集することができる。
【実施例14】
【0040】
図11に示すように、本発明の膜ホルダー6の一方の他室連絡継手3bに加圧ガス18とバルブ17を介して連結し、容器10a内に貯めた液体などの処理前相13a中に膜ホルダー6を沈下させ、円盤状多孔質膜1の細孔を介してガスを処理前相13a中に散気することができる。このように多孔質膜細孔を介してガスを微細なバブルとして散気させるには、本発明に係る一Oリングによる所謂隙間からバブルが発生すると粗大バブルとなり微細気泡の効果が損なわれる可能性があるため、ここでは気密性が重要となる。この多孔質膜を利用した微細気泡の散気は、細胞培養など酸素供給手段として利用することができる。
【比較例1】
【0041】
図12(a)に示す従来の円盤状多孔質膜1の両円縁面に当接する二Oリングでの液密・気密の保持において、両円筒突合せ本体19の突合せ面詳細を図12(b)に示すとおり、円盤状多孔質膜1の円縁面両面に当接する二Oリングにより液相・気相の流通経路xとyについては遮断されるが、当該円盤状多孔質膜1は微細貫通孔が縦横無尽に存在するものであり、流通経路zへの流通もあることから、当該円筒突合せ面12も液密・気密に保持する必要がある。従って、当該円筒突合せ面12の位置にも液密・気密を確保するための第三の突合せ部用Oリング11を必要とし、つまりこれらの三Oリングを設置するための膜ホルダー構造が必要で、そのスペースを確保するために膜ホルダー自体が大きくなり、それと同時に複雑な構造上の加工費と、大きなホルダー本体にかかる材料費、使用する三Oリングの費用などコスト高の傾向となる。
【0042】
以下の実験例は一例として示されるものであり、本発明がこれらの実験例に限定されるものではない。
【0043】
(実験例1)
本実験例で使用する円盤状多孔質膜SPGは、外径φ7.6×厚み0.7mmのディスクで、使用する一Oリングは、SPGディスクの厚みに対して約2.6倍の線径太さの規格AS568-0011(内径φ7.65×線径1.78)のフッ素ゴム製を使用し、図4に示す本発明の膜ホルダーを用いて、ポンピング式の膜乳化によりエマルションを生成した。仮に液密不足による隙間が存在するとその隙間から得られてしまう粗大粒子が存在し、当該膜の細孔由来のエマルションが生成されず多分散エマルションとなってしまう。ここで、SPG細孔径は10μmとし、10mL容の両注射用シリンジに、それぞれ分散相として灯油2mL、連続相として0.5wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液8mLを用い、膜ホルダーに交互通過させる往復のポンピングは、10往復とした。その結果、粒度分布では、分散粒子のメディアン径(50%D)が約4.7μmで、単分散性の指標となる積算分布の90%D/10%D=αは、α=2.5以内を単分散とみなすと、結果はα=2.2となり、本実験例で用いた本発明の一Oリング式の膜ホルダーはSPGの細孔以外を流通することなく、また膜ホルダー外部への漏洩も見られず液密にSPGを介してエマルションを生成することができたものである。
【0044】
(実験例2)
本実験例で使用する円盤状多孔質膜SPGは、外径φ7.6×厚み0.7mmのディスクで、使用する一Oリングは、SPGディスクの厚みに対して約1.4倍の線径太さの規格SS-080(内径φ8.0×線径1.0)のシリコンゴム製を使用し、図5に示す本発明の膜ホルダーを用いて、透過式の膜乳化によりエマルションを生成した。仮に液密不足により隙間が存在するとその隙間から得られてしまう粗大粒子が存在し、当該膜細孔由来のエマルションが生成されず多分散エマルションとなってしまう。ここでSPG細孔径は10μmとし、10mL容の一注射用シリンジに、エマルション組成の分散相として大豆油0.5mL、連続相として0.5wt%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)水溶液4.5mLをスターラー300rpm×1分間攪拌の事前の粗混合液として充填し、膜ホルダーに一通過させる所謂透過膜乳化によりエマルションを生成した。その結果、粒度分布では、分散粒子のメディアン径(50%D)が約9.8μmで、前述同様、単分散性α=2.3となり、本実験例で用いた本発明の一Oリング式の膜ホルダーはSPGの細孔以外を流通することなく、また膜ホルダー外部への漏洩も見られず液密にSPGを介してエマルションを生成することができたものである。
【0045】
(実験例3)
SPGは、医薬品製造ラインや半導体製造ラインなどクリーンな環境でのろ過用フィルターとして使用される。そのためSPGは細孔内も含めてコンタミが発生しないように念入りに洗浄しなければならない。本実験例で使用する円盤状多孔質膜SPGを、外径φ20.0×厚み3.0mmのディスクとし、使用する一Oリングには、SPGディスクの厚みに対して約0.3倍の線径太さの規格SS-200(内径φ20.0×線径1.0)のシリコンゴム製を用い、図2に示す本発明の膜ホルダーを用いて、SPGの細孔内を通液洗浄することができる。この細孔内を確実に洗浄液が通過するためには、使用する当該OリングSS-200のシール性が必要であり、隙間が存在するとその細孔内を十分通液洗浄することができないことになる。そこで、本実験で使用する円盤状多孔質膜SPGの代わりに、貫通細孔を有さない円盤状ガラス、外径φ20.0×厚み3.0mmのディスクを本発明の膜ホルダーに設置し、同様Oリング規格SS-200を用いて、その液密・気密性を調べたところ、ガスを0.3MPa×3分間加圧したところ減圧の様子が見られなかったことから、本実験例のとおり、SPGディスクの厚みに対して約0.3倍の線径のOリングでも十分液密・気密性を保持できることが確認された。
【0046】
以上のとおり本発明に係る膜ホルダーは、従来のように円盤状多孔質膜で液密・気密に二つの室に区画するため、操作性としても煩わしい二Oリング以上使用する必要はなく、構造が簡単で頻繁な脱着の使用でも煩わしくない一Oリングでその機能を十分発揮するものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の膜ホルダーは、一Oリングで円盤状多孔質膜を液密に封止し、二つの室に区画することが可能で、当該円盤状多孔質膜を搭載した膜ホルダーを利用する産業分野として、食品、医薬品、化粧品、化成品など一般産業から農業、漁業、環境など多岐にわたるものである。例えば、実験例のように乳化産業においては処方設計のための僅かな量で頻繁な乳化実験に利用されたり、液相など品質確認のため不純物を捕捉回収して特定するためろ過検査に利用されたり、更にその細孔径別による利用方法も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明に係る螺合式の円盤状多孔質膜ホルダーの部品構成図と組図を示す一実施例の側断面図である。
図2】本発明に係るクランプ式の円盤状多孔質膜ホルダーの部品構成図と組図を示す一実施例の側断面図である。
図3】本発明に係る円盤状多孔質膜の円周面上に一Oリングを設けたクランプ式の円盤状多孔質膜ホルダーの部品構成図と組図を示す一実施例の側断面図である。
図4】本発明に係る螺合式の円盤状多孔質膜ホルダーの両側が注射用シリンジと連結できる部品構成図と組図を示す一実施例の側断面図である。
図5】本発明に係る螺合式の円盤状多孔質膜ホルダーの片側が注射用シリンジと連結できる部品構成図と組図を示す一実施例の側断面図である。
図6】本発明に係る一Oリングによる構成を示す一実施例の拡大側断面図である。
図7】本発明に係る一Oリングの線径が、円盤状多孔質膜厚みより大きい場合の一実施例の拡大側断面図である。
図8】本発明に係る一Oリングの線径が、円盤状多孔質膜厚みより小さい場合の一実施例の拡大側断面図である。
図9】本発明の円盤状多孔質膜ホルダーに周辺機器を接続する場合の一実施例の構成図である。
図10】本発明の円盤状多孔質膜ホルダーに両側あるいは一方に注射用シリンジを接続する場合の一実施例の構成図である。
図11】本発明の円盤状多孔質膜ホルダーを液相中で使用する場合の一実施例の構成図である。
図12】従来の円盤状多孔質膜ホルダーに係る液密性不足を示す一実施例の側断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 円盤状多孔質膜
2 Oリング
3 ホルダーオス(突合せ本体)
3a Oリング着座部
3b 他室連絡継手
3c 螺合ねじ部
3d 円筒突合せ本体の段部
3e 円筒突合せ本体の凸部
3f 円盤状多孔質膜の円縁面
3g 内向き面部
3h 円盤状多孔質膜の外周断面
4 ホルダーアダプター(突合せ本体)
4a Oリング押圧部
4b 他室連絡継手
4c 注射シリンジ用コネクタ
5 ホルダーキャップ
5a 螺合ねじ部
5b クランプ
6 ホルダー
7 ホルダープラグ(突合せ本体)
7a Oリング押圧部
8、9 注射用シリンジ
8a 分散相
8b 粗混合相
8c スラリー相
9 連続相
10a 容器
11 突合せ部用Oリング
12 突合せ面
h 潰しシロ
m 膜厚み
n Oリング線径
x 液相あるいは気相の流れ
y 液相あるいは気相の流れ
z 液相あるいは気相の流れ
13 処理前相タンク
13a 処理前相
14 処理後相タンク
14a 処理後相
15 送液手段
16 送液ポンプ
17 バルブ
18 加圧ガス
19 円筒突合せ本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12