(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】浴槽温水保温循環システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/196 20220101AFI20240308BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240308BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20240308BHJP
【FI】
F24H15/196 301G
F24H1/18 B
F24H1/18 G
F24H4/02 U
(21)【出願番号】P 2019141013
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519279432
【氏名又は名称】瀧本 和義
(74)【代理人】
【識別番号】100169775
【氏名又は名称】橘 祐史
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 和義
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010207(JP,A)
【文献】特開2013-195012(JP,A)
【文献】特開2011-075253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/196
F24H 1/18
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴用浴槽設備と、摂氏90℃の温水を貯蔵しておく高温貯湯槽と前記高温貯湯槽に前記温水を供給するヒートポンプ設備と、
前記入浴用浴槽設備と浴槽用熱交換器との間を循環する温水の熱交換を行う前記浴槽用熱交換器と、
前記浴槽用熱交換器と貯湯用熱交換器との間を循環する温水の熱交換を行う前記貯湯用熱交換器と、
前記高温貯湯槽から供給され、前記貯湯用熱交換器を通過し低温貯湯槽に至る温水の熱交換を行う前記貯湯用熱交換器と、を有し、
前記温水の前記浴槽用熱交換器及び前記貯湯用熱交換器による熱交換によって、前記入浴用浴槽設備内の温水の温度を一定に保ち、
かつ、
前記低温貯湯槽は、摂氏60℃から摂氏70℃の温水を貯蔵しておくことを特徴とし、前記入浴用浴槽設備並びに前記入浴用浴槽設備付属のシャワー並びにカランに摂氏60℃から摂氏70℃の温水を供給することを特徴とする、浴槽温水保温循環システム。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ設備が、電気式であることを特徴とする請求項1に記載の浴槽温水保温循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴用浴槽設備内の温水の温度を一定に保つための熱交換器と温水を貯蔵しておく貯湯槽とを有するシステム関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、入浴用浴槽に供給する温水はボイラーと風呂用熱交換器によって供給されていたが、入浴用浴槽内の温水の温度を効率的に一定に保つことが求められ、たとえば、特許文献1では、浴槽温水の廃熱を回収して加熱に利用する技術が開示されている。特許文献2では、浴槽の周囲に温水配管を内蔵させる技術が開示されている。これらの技術によって、入浴用浴槽内の温水温度を一定に保つことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-309044
【文献】特開2008-237629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、入浴用浴槽内の温水温度を効率的に一定に保つことが求められているにもかかわらず、従来技術では、効率的に浴槽内の温水温度を保つことができない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、効率的に入浴用浴槽内の温水温度を一定に保つことができ、かつ、大幅なコストダウンを可能とする浴槽温水保温循環システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、浴槽温水保温循環システムに係る請求項1の発明は、入浴用浴槽設備と前記入浴用浴槽設備に温水を供給するための浴槽用熱交換器と、高温の温水を貯蔵しておく高温貯湯槽と前記高温貯湯槽に温水を供給するヒートポンプ設備と、前記浴槽用熱交換器から排出される温水と前記高温貯湯槽の温水との間で熱交換を行う貯湯用熱交換器とを有し、前記入浴用浴槽設備内の温水の温度を一定に保つことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、入浴用浴槽設備に供給される温水について、貯湯用熱交換器と浴槽用熱交換器との間を循環する温水の熱交換と、浴槽用熱交換器と入浴用浴槽設備との間を循環する温水の熱交換という2段階の熱交換を段階的に行う。これによって、入浴用設備に付属しているボイラーを省くことができ、効果的及び効率的に入浴用浴槽設備内の温水の温度を一定に保つことができる。
【0007】
また、本発明によれば、高温貯湯槽に高温の温水を供給するヒートポンプ設備を電気式にしているので、夜間電力を使って、高温の温水を高温貯湯槽に保存することができ、よって、低コストで浴槽設備温水の温度を一定に保つことができる。(請求項2)
【0008】
さらに、本発明は、貯湯用熱交換器から排出された温水を貯蔵しておく低温貯湯槽を有し、前記低温貯湯槽から前記浴槽設備及び前記浴槽設備付属のシャワー並びにカランに温水を供給することを特徴としている。よって、シャワーやカランに供給する温水については、循環する温水の熱交換による供給なので、コストダウンとなる。
【0009】
本発明は、高温貯湯槽内の温水温度が90℃であることを特徴としているので、浴槽用設備内の温水温度とは開きがあり、よって、温度を一定に保つことができる。
【0010】
本発明は、低温貯湯槽の温水の温度が60℃から70℃であることを特徴としているので、湯張りやシャワーカラン用の温水としては、再度温める必要がない。
【0011】
本発明は、貯湯用熱交換器から浴槽用熱交換器へ供給される温水の温度が50℃から65℃であることを特徴としており、温水の熱交換によって、入浴用浴槽温水温度を一定に保つことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入浴用浴槽の温水温度を効率的に一定に保つことができ、夜間電力を使用することができるので、大幅なコストダウンとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る浴槽温水保温循環システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る浴槽温水保温循環システムの構成を示す図である。同図を参照して、浴槽温水保温循環システム1を説明すると、本システムは、浴槽設備10、浴槽設備に温水を供給する浴槽用熱交換器3、貯湯用熱交換器4、高温貯湯槽5、ヒートポンプ6、低温貯湯槽7、湯張用蛇口9、及び給水バルブ21、浴槽用熱交換器一次側バルブ31A、浴槽用熱交換器二次側バルブ31B、貯湯用熱交換器一次側バルブ41、貯湯用熱交換器一次側バイパスバルブ41A、貯湯用熱交換器二次側バルブ41B、貯湯用熱交換器二次側バイパスバルブ41C、ヒートポンプバルブ61、低温貯湯槽一次側バルブ71、低温貯湯槽二次側バルブ72、シャワー及びカラン8から構成され、浴槽設備10に供給される温水が、上記の各バルブの開閉を行うことによって常に浴槽用熱交換器3と貯湯用熱交換器4を循環して、熱交換によって一定の温度に保たれ、及びシャワー及びカラン8には、低温貯湯槽7から温水を供給する構成となっている。
【0015】
低温貯湯槽7には、貯湯用熱交換器4において使用された排温水を使用して、70度の温水を保存し、浴槽設備10の湯張りの補助用温水を供給し、並びにシャワー及びカラン8に温水を供給している。
【0016】
本発明にかかる浴槽温水保温循環システムのフローを順次説明する。
【0017】
本発明に係る浴槽設備10には、初めに温泉水、水道水、又は地下水などの取水設備2により取水された温泉水、水道水又は地下水を、給水バルブ21を開け、給水口111より供給し、そして/または、低温貯湯槽7から供給される温水を、湯張用蛇口9から供給し、満杯とする。
【0018】
入浴用浴槽設備10が満杯になると、浴槽用熱交換器バルブ31Bを開け、浴槽用熱交換器3に入浴用浴槽設備10から設定温度以下の温水を流入させると、浴槽用熱交換器3によって、貯湯用熱交換器4から供給された温水を熱媒として、摂氏45度から摂氏55度の温水となり、入浴用浴槽設備10に還流する。この還流は、入浴用浴槽設備10が満杯になった後は常に行われ、温水は常に循環する形となる。
【0019】
貯湯用熱交換器4は、浴槽用熱交換器3との間において循環する温水の熱交換を、高温貯湯槽5から供給された温水を熱媒として使用して、常時行う。
【0020】
貯湯用熱交換器4と浴槽用熱交換3と間の熱交換において、浴槽用熱交換器3に温水温度が設定温度以上の温水が流入する場合には、浴槽用熱交換器3において熱交換の必要がないので、浴槽用熱交換器一次側バルブ31Aと浴槽用熱交換器二次側バルブ31Bを閉じて、かつ、貯湯用熱交換器二次側バイパスバルブ41Cを開けて、浴槽用熱交換器3の熱媒としての温水が循環する形となる。
【0021】
貯湯用熱交換器4から、浴槽用熱交換器3に供給される熱媒としての温水の温度は摂氏50度から摂氏65度である。
【0022】
高温貯湯槽5には、ヒートポンプ6で沸かされた摂氏90度の温水を、ヒートポンプバルブ61を開け、供給し貯蔵する。本システムのかかる還流が開始されると貯湯用熱交換器一次側バルブ41を開け、貯湯用熱交換器4に、摂氏90度の温水を供給し、この温水を熱媒として浴槽用熱交換器3との熱交換を行う。
【0023】
貯湯用熱交換器4において、浴槽用熱交換器3に温水温度が設定温度以上の温水が流入する場合には、浴槽用熱交換器3において熱交換の必要がないので、貯湯用熱交換器二次側バルブ41Bを閉じ、さらに貯湯用熱交換器一次側バイパスバルブ41Aを開け、高温の温水が貯湯用熱交換器4を循環する形となる。そして、循環する過程で摂氏70度前後まで下がった段階で、貯湯用熱交換器二次側バルブ41Bを開け、低温貯湯槽7に温水を供給する。
【0024】
貯湯用熱交換器4において、低温貯湯槽7が満杯の時は、貯湯用熱交換器二次側バルブ41Bを閉じ、さらに貯湯用熱交換器一次側バイパスバルブ41Aを開け、高温の温水が貯湯用熱交換器4を循環する形となる。そして、低温貯湯槽7が満杯でなくなった段階で、貯湯用熱交換器二次側バルブ41Bを開け、低温貯湯槽7に温水を供給する。
【0025】
ヒートポンプ6は、夜間電力を使って夜間に高温貯湯槽5に温水を貯蔵するために、電気式であることが望ましい。
【0026】
こうした浴槽用熱交換器3及び貯湯用熱交換器4による熱交換が常時行われるので、入浴用浴槽設備10の温水の温度を一定の温度に保つことができる。
【0027】
貯湯用熱交換器4による熱交換が行われた後に、貯湯用熱交換器二次側バルブ41Bを開け、熱交換が行われた後の排温水を、低温貯湯槽7に保存する。排温水は摂氏60度から摂氏70度の温水であり、浴槽設備の湯張補助用の温水、並びにシャワー及びカラン8の温水として供給される。
【0028】
営業開始前には、低温貯湯槽7は満杯になり、営業時間開始とともにシャワーやカラン8、浴槽の湯張りの補助用温水として使用される。
【0029】
なお、本発明は特許請求の範囲を逸脱しない範囲で各種の応用実施を行うことが可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、入浴用浴槽内の温水を一定の温度に再加熱することなく、熱交換の排温水を再利用することによって、効率的かつ大幅なコストダウンを実現できる浴槽温水保温循環システムを提供する。これにより浴場設備のコストダウンなど新たな価値を生み出し住宅業界などの他の業界の発展にも大きく貢献する。
【符号の説明】
【0031】
1:浴槽温水保温循環システム
10:入浴用浴槽設備
111:給水口
2:温泉水、水道水、地下水などの取水設備
21:給水バルブ
3:浴槽用熱交換器
31A:浴槽用熱交換器一次側バルブ
31B:浴槽用熱交換器二次側バルブ
4:貯湯用熱交換器
41:貯湯用熱交換器一次側バルブ
41A:貯湯用熱交換器一次側バイパスバルブ
41B:貯湯用熱交換器二次側バルブ
41C:貯湯用熱交換器二次側バイパスバルブ
5:高温貯湯槽
6:ヒートポンプ
61:ヒートポンプバルブ
7:低温貯湯槽
71:低温貯湯槽一次側バルブ
72:低温貯湯槽二次側バルブ
8:シャワー、カラン
9:湯張用蛇口