(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240308BHJP
B25B 23/18 20060101ALI20240308BHJP
B25B 21/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B25F5/00 Z
B25B23/18
B25B21/02 Z
(21)【出願番号】P 2019144818
(22)【出願日】2019-08-06
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069445(JP,A)
【文献】特許第5573480(JP,B2)
【文献】特開2004-291135(JP,A)
【文献】特許第6466803(JP,B2)
【文献】特許第6406353(JP,B2)
【文献】特許第6816477(JP,B2)
【文献】特許第6901346(JP,B2)
【文献】特許第3907950(JP,B2)
【文献】特許第4011563(JP,B2)
【文献】特開2001-057293(JP,A)
【文献】特開2011-104709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25B 23/18
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池部と、
先端工具を取り付ける取付部と、
前記電池部を電源として前記取付部を回転駆動させるための電動機と、
前記電池部を電源として先端工具の先に光を照射するための照明部と、
前記照明部に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる安定化回路と、
前記取付部と、前記電動機と、の間に配されて、前記電動機の回転駆動をインパクト駆動に変換するインパクト機構と、を備え、
前記安定化回路は、前記電池部に対して前記電動機と並列に接続され、前記照明部に電圧を出力
し、
前記安定化回路は、前記照明部に印加する電圧を照明設定電圧で印加し、
前記照明設定電圧の値は、前記照明部に印加される電圧が前記インパクト機構の動作時に前記電動機に印加される電圧の値よりも小さい、
電動工具。
【請求項2】
前記照明部は、1つ又は複数の発光素子を含む、
請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記安定化回路は、前記照明部に印加する電圧を発光素子設定電圧で印加し、
前記発光素子設定電圧の値は、前記照明部に含まれる少なくとも1つ以上の前記発光素子の順方向に基づいて得られる前記照明部の両端の電圧の値よりも大きい、
請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記照明部は、前記複数の発光素子を含み、
前記照明部は、前記複数の発光素子のうち2以上の発光素子が直列に接続された複数の直列回路が並列接続されることで構成され、
前記照明部の両端の電圧の値は、前記複数の直列回路のうち、1の直列回路を構成する前記2以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる、前記1の直列回路の両端の電圧の値である、
請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記複数の直列回路の各々を構成する前記2以上の発光素子の個数は同一である、
請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記安定化回路は、シリーズレギュレータにより構成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動工具。
【請求項7】
電池部と、
先端工具を取り付ける取付部と、
前記電池部を電源として前記取付部を回転駆動させるための電動機と、
前記電池部を電源として先端工具の先に光を照射するための照明部と、
前記照明部に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる安定化回路と、を備え、
前記安定化回路は、前記電池部に対して前記電動機と並列に接続され、前記照明部に電圧を出力し、
前記照明部は、複数の発光素子を含み、
前記安定化回路は、前記照明部に印加する電圧を発光素子設定電圧で印加し、
前記発光素子設定電圧の値は、前記照明部に含まれる少なくとも1つ以上の前記発光素子の順方向に基づいて得られる前記照明部の両端の電圧の値よりも大きく、
前記照明部は、前記複数の発光素子のうち2以上の発光素子が直列に接続された複数の直列回路が並列接続されることで構成され、
前記照明部の両端の電圧の値は、前記複数の直列回路のうち、1の直列回路を構成する前記2以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる、前記1の直列回路の両端の電圧の値である、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具に関し、より詳細には、照明部を備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インパクトドライバとしての電動工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電動工具は、本体部及び把持部が略T字状に形成されたインパクトドライバである。ユーザは、手動・自動切替スイッチにより照明を制御するモードを選択する。自動モードにおいては、照度センサによって検出される周囲の明るさを所定値以下と判別し、かつ接触センサによりユーザがインパクトドライバを把持していると判別された場合に照明が点灯する。周囲の明るさが所定値以上と判別された場合、または接触センサが接触を検知しない場合には、照明は消灯状態となる。このとき、ユーザは指などで照度センサを遮蔽して照度センサへの光の入射を遮断し、随時照明を点灯させることができる。カウンタ回路は点灯時間を計測し、所定時間経過後には照明を消灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動工具は、電池パックを備える。特許文献1の電動工具は、電池パックから供給される電流を用いて、電動工具を駆動させたときに照明部を点灯する。このとき、電池パックは、電源を電動機と照明部と、の両方に電流を供給している。電動機に流れる電流は大きいため、電動機に流れる電流は負荷状況により大きく変動する。電動機に流れる電流が変動すると、電池パックの電圧が変動するため、照明部に流れる電流が変化し、照度が変化する。その結果、照明部のちらつきが発生する。
【0006】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、照明部のちらつきを抑制することができる電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電動工具は、電池部と、取付部と、電動機と、照明部と、安定化回路と、インパクト機構と、を備える。前記取付部は、先端工具を取り付ける。前記電動機は、前記電池部を電源として前記取付部を回転駆動させる。前記照明部は、前記電池部を電源として先端工具の先に光を照射する。前記安定化回路は、照明部に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる。前記インパクト機構は、前記取付部と、前記電動機と、の間に配されて、前記電動機の回転駆動をインパクト駆動に変換する。前記安定化回路は、前記電池部に対して前記電動機と並列に接続され、前記照明部に電圧を出力する。前記安定化回路は、前記照明部に印加する電圧を照明設定電圧で印加する。前記照明設定電圧の値は、前記照明部に印加される電圧が前記インパクト機構の動作時に前記電動機に印加される電圧の値よりも小さい。
本開示の一態様に係る電動工具は、電池部と、取付部と、電動機と、照明部と、安定化回路と、を備える。前記取付部は、先端工具を取り付ける。前記電動機は、前記電池部を電源として前記取付部を回転駆動させる。前記照明部は、前記電池部を電源として先端工具の先に光を照射する。前記安定化回路は、照明部に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる。前記安定化回路は、前記電池部に対して前記電動機と並列に接続され、前記照明部に電圧を出力する。前記照明部は、複数の発光素子を含む。前記安定化回路は、前記照明部に印加する電圧を発光素子設定電圧で印加する。前記発光素子設定電圧の値は、前記照明部に含まれる少なくとも1つ以上の前記発光素子の順方向に基づいて得られる前記照明部の両端の電圧の値よりも大きい。前記照明部は、前記複数の発光素子のうち2以上の発光素子が直列に接続された複数の直列回路が並列接続されることで構成される。前記照明部の両端の電圧の値は、前記複数の直列回路のうち、1の直列回路を構成する前記2以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる、前記1の直列回路の両端の電圧の値である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によると、照明部のちらつきを抑制することができる電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動工具の回路を説明する図である。
【
図3】
図3Aは、安定化回路を備えない電動工具においてインパクト機構使用時の使用時間と電流のグラフである。
図3Bは、安定化回路を備えない電動工具においてインパクト機構使用時の使用時間と電圧のグラフである。
図3Cは、安定化回路を備えない電動工具においてインパクト機構使用時の使用時間と照明部の照度のグラフである。
【
図4】
図4Aは、一実施形態に係る電動工具においてインパクト機構使用時の使用時間と電流との関係を表すグラフである。
図4Bは、同上の電動工具においてインパクト機構使用時の使用時間と電圧との関係を表すグラフである。
図4Cは、同上の電動工具においてインパクト機構使用時の使用時間と照明部の照度との関係を表すグラフである。
【
図5】
図5Aは、一実施形態の変形例1において安定化回路を備えていないドリルドライバーとしての電動工具の使用時間と電流との関係を説明するグラフである。
図5Bは、同上の安定化回路を備えていないドリルドライバーとしての電動工具の使用時間と電圧との関係を説明するグラフである。
図5Cは、同上の安定化回路のないドリルドライバーとしての電動工具の使用時間と照明部の照度との関係を説明するグラフである。
【
図6】
図6Aは、実施形態1の変形例1に係る安定化回路を備えたドリルドライバーとしての電動工具の使用時間と電流のグラフである。
図6Bは、同上の安定化回路を備えたドリルドライバーとしての電動工具の使用時間と電圧のグラフである。
図6Cは、同上の安定化回路を備えたドリルドライバーとしての電動工具の使用時間と照明部の照度のグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例2に係る安定化回路に降圧型スイッチングレギュレータを用いた構成図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の変形例3の電動工具が備えるチップオンボードLEDの模式図である。
【
図10】
図10は、同上の電動工具の回路を説明する図である。
【
図11】
図11は、実施形態1の変形例2における別例の電動工具の回路を説明する図である。
【
図12】
図12は、実施形態1の変形例4に係る電動工具の回路を説明する図である。
【
図13】
図13は、実施形態1の変形例4における別例の電動工具の回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、実施形態及び変形例に限定されない。以下の実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0011】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る電動工具1は、例えば、インパクトドライバとして用いられる。本実施形態の一形態であるインパクトドライバについて、
図1~
図4を用いて説明する。
【0012】
(1)概要
本実施形態に係る電動工具1は、
図1及び
図2に示すように、電動機15と、インパクト機構17と、制御部4と、照明部2と、安定化回路3と、を備える。電動機15は、例えば、無整流子電動機である。インパクト機構17は、取付部23と、電動機15と、の間に配されて、電動機15の回転駆動をインパクト駆動に変換し、打撃動作を行う。制御部4は、電動機15及び照明部2の動作をフィードバック制御する。照明部2は、工具先端の照明を行う。
【0013】
電動工具1は、
図2に示すように、電動機15と、電池部32と、駆動伝達部18と、インパクト機構17と、取付部23と、トリガボリューム29と、制御部4と、トルク測定部26と、ビット回転測定部25と、モータ回転測定部27と、照明部2と、を備える。また、電動工具1は、先端工具(図示せず)を更に備える。
【0014】
電動機15は、先端工具を駆動する駆動源、例えばモータである。電動機15は、回転動力を出力する出力軸16を有する。電池部32は、電動機15を駆動する電流を供給する電源である。電池部32は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。駆動伝達部18は、駆動軸22を備えている。駆動軸22は、インパクト機構17に接続されている。
【0015】
インパクト機構17は、駆動伝達部18を介して受け取った電動機15の回転動力をパルス状のトルクに変換してインパクトを発生する。インパクト機構17は、ハンマ19と、アンビル20と、出力軸21と、ばね24と、を備える。ハンマ19は、駆動伝達部18の駆動軸22にカム機構を介して取り付けられる。アンビル20は、ハンマ19に結合されており、ハンマ19と一体に回転する。ばね24は、ハンマ19をアンビル20側に押している。アンビル20は、出力軸21と一体に形成される。なお、アンビル20は、出力軸21とは別体に形成されて出力軸21に固定されていてもよい。
【0016】
出力軸21に所定の大きさ以上の負荷(トルク)がかかっていないときには、カム機構により連結された駆動軸22とハンマ19とが一体に回転し、更にハンマ19とアンビル20とが一体に回転するので、アンビル20と一体に形成された出力軸21が回転する。一方、出力軸21に所定の大きさ以上の負荷がかかったときには、ハンマ19がカム機構による規制を受けながらばね24に抗して後退する(つまり、アンビル20から離れる)。ハンマ19とアンビル20との結合が外れた時点で、ハンマ19は回転しながら前進してアンビル20に回転方向の打撃衝撃を与え、出力軸21を回転させる。このように、インパクト機構17は、ハンマ19とアンビル20との衝突を繰り返す打撃動作を行うことで、ハンマ19からアンビル20を介して出力軸21に打撃衝撃を加えることを繰り返す。
【0017】
トリガボリューム29は、電動機15の回転を制御するための操作を受け付ける。トリガボリューム29を引く操作により、電動機15のオンとオフを切替可能である。また、使用者は、トリガボリューム29の引込み量で、出力軸21の回転速度、つまり電動機の回転速度を調整可能である。使用者は、上記引込み量が大きいほど、電動機15の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きいほど、電動機15の回転速度が速くなる。制御部4は、トリガボリューム29を引く操作の引込み量に応じて、電動機15を回転又は停止させ、また、電動機15の回転速度を制御する。この電動工具1では、先端工具が取付部23に取り付けられる。そして、トリガボリューム29への操作によって電動機15の回転速度が制御されることで、先端工具の回転速度が制御される。なお、本実施形態の電動工具1は取付部23を備えることで、先端工具を用途に応じて交換可能であるが、先端工具が交換可能であることは必須ではない。例えば、電動工具1は、特定の先端工具のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0018】
トルク測定部26は、電動機15の動作トルクを測定する。トルク測定部26は、例えば、ねじり歪みの検出が可能な磁歪式歪センサである。磁歪式歪センサは、電動機15の出力軸16にトルクが加わることにより発生する歪みに応じた透磁率の変化を電動機15の非回転部分に設置したコイルで検出し、歪みに比例した電圧信号を出力する。
【0019】
ビット回転測定部25は、出力軸21の回転角を測定する。ここでは、出力軸21の回転角は、先端工具(ビット)の回転角に等しい。ビット回転測定部25としては、例えば、光電式エンコーダ又は磁気式エンコーダを採用することができる。
【0020】
制御部4は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部4の少なくとも一部の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されてもよいし、インターネット等の電気通信回路を通して提供されてもよく、メモリーカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0021】
トリガボリューム29が引かれると、制御部4は照明部2を点灯する。照明部2は、1又は複数のLED(Light Emitting Diode)を備える。本実施形態では照明部は1個のLEDを備える。
【0022】
(2)構成
次に電動工具1の構成について説明する。電動工具1は、電池部32と、先端工具を取り付ける取付部23と、電池部32を電源として取付部23を回転駆動させるための電動機15と、電池部32を電源として先端工具の先に光を照射するための照明部2と、を備える。また、照明部2に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる安定化回路3を、更に備える。電動工具1は、
図1に示すように、電池部32と、スイッチSW1と、制御部4と、電動機15と、照明部2と、抵抗R2と、シリーズレギュレータ5と、スイッチQ1と、スイッチQ2と、スイッチSW2と、を備える。
【0023】
スイッチSW1は、上述したトリガボリューム29である。
【0024】
スイッチSW2は、電池部32から制御部4への電圧の供給及び非供給を切り替えるスイッチである。
【0025】
スイッチQ1及びスイッチQ2は、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)で構成される。スイッチQ1では、電動機15が動作するときにスイッチQ1のゲート端子に電圧が印加される。また、スイッチQ2では、照明部2が動作するときにスイッチQ2のゲート端子に電圧が印加される。
【0026】
制御部4は、電池部32から電圧の供給を受けることで動作する。制御部4と電池部32との接続経路上に、スイッチSW2が設けられている。スイッチSW2の一端が電池部32のプラス端子に接続され、スイッチSW2の他端が制御部4に接続される。スイッチSW2に対する操作により、制御部4への電圧の供給及び非供給を切り替える。
【0027】
また、制御部4は、スイッチQ1及びQ2のゲート端子に接続される。スイッチSW2がオン状態、つまり電池部32から制御部4への電圧の供給が行われる場合に、トリガボリューム29が引き込まれると、引込み量に応じて電動機15に流れる電流が変化する。
【0028】
各回路構成要素の接続について説明する。
【0029】
電動機15とスイッチQ1とは直列に接続されている。電動機15は、電池部32のプラス端子と接続される。スイッチQ1のドレインは電動機15に接続され、スイッチQ1のソースは電池部32のマイナス端子に接続される。
【0030】
安定化回路3であるシリーズレギュレータ5は、
図1に示すように、抵抗R1、ツェナーダイオードZD1、NPN型トランジスタQ3及びコンデンサC1を備える。シリーズレギュレータ5は、降圧のみ可能な定電圧直流電源回路である。シリーズレギュレータ5は、電池部32に対して電動機15と並列に接続される。すなわち、安定化回路3であるシリーズレギュレータ5は、電池部32の電圧値と同一の電圧値を入力値としている。シリーズレギュレータ5は、スイッチSW2を介して、照明部2と抵抗R2に印加される電圧が安定化するように接続される。制御部4の一端は、電池部32のプラス端子とスイッチSW2を介して接続され、他端は電池部32のマイナス端子に接続される。また、制御部4は、スイッチQ1及びQ2のゲート端子に接続される。
【0031】
NPN型トランジスタQ3のコレクタは、スイッチSW2と制御部4との接続経路上の点P0と接続される。NPN型トランジスタQ3のエミッタは、抵抗R2に接続される。NPN型トランジスタQ3のベースは、ツェナーダイオードZD1のカソードと接続される。ツェナーダイオードZD1のアノードは、電池部32のマイナス端子に接続される。
【0032】
NPN型トランジスタQ3のコレクタとベースは、抵抗R1を介して接続される。具体的には、抵抗R1の一端は、接続点P0とNPN型トランジスタQ3のコレクタとの接続経路上の点P1と接続される。抵抗R1の他端は、NPN型トランジスタQ3のベースとツェナーダイオードZD1との接続経路上の点P3と接続される。すなわち、NPN型トランジスタQ3のベースとコレクタは、抵抗R1を介して接続される。
【0033】
コンデンサC1の一端は、NPN型トランジスタQ3のエミッタと抵抗R2との接続経路上の点P2と接続される。コンデンサC1の他端は、電池部32のマイナス端子と接続される。
【0034】
抵抗R2と照明部2とスイッチQ2とは、直列に接続されている。抵抗R2の一端は、上述したように、NPN型トランジスタQ3のエミッタと接続される。つまり、抵抗R2は、後述するNPN型トランジスタQ3を介して電池部32のプラス端子と接続される。
抵抗R2の他端は、照明部2のアノードと接続されている。照明部2のカソードは、スイッチQ2のドレインと接続されている。スイッチQ2のソースは、コンデンサC1の他端、及びツェナーダイオードZD1のアノードと接続される。つまり、スイッチQ2は、電池部32のマイナス端子と接続される。
【0035】
(3)動作
上述した電動工具1の動作について、
図1~
図4Cを用いて簡単に説明する。
【0036】
電動工具1本体のスイッチSW1が入った状態、すなわちトリガボリューム29が少し引かれると、スイッチSW2もオンとなって制御部4が通電される。また、スイッチQ1及びQ2もオンとなり、照明部2が点灯する。更にトリガボリューム29が引かれると、引込み量に応じて電動機15の回転数が変化する。最後までトリガボリューム29が引かれると、電動機15の回転数は最大回転となる。トリガボリューム29が放されると、スイッチQ1がオフとなり、電動機15が停止する。所定の時間が経過すると、スイッチQ2がオフとなり、照明部2が消灯する。また、制御部4のスイッチSW2がオフとなる。
【0037】
従来例として、ねじを締めるときに電動工具(従来の電動工具)のインパクト機構を使用した場合の電流と使用時間のグラフを
図3Aに、電圧と使用時間のグラフを
図3Bに、照明部2の照度と使用時間のグラフを
図3Cに示す。従来の電動工具のインパクト機構の使用時には、例えば、1分間に3000回の打撃が繰り返される。インパクト機構の負荷変動により、
図3Aに示すように、幅bの範囲で電流の増減が繰り返される。その影響で
図3Bに示すように幅cの間で電圧の増減が繰り返し発生する。その結果、
図3Cに示すように照明部の照度も幅dの間でちらつきが発生する。
【0038】
そこで、照明部の照度のちらつきを防ぐため、電動工具1は安定化回路3として、定電圧回路であるシリーズレギュレータ5を備えている。
図1を用いて、電動工具1の照明部2について説明する。電池部32の電源電圧をVs、NPN型トランジスタQ3のベースとエミッタとの間の電圧差をVe、ツェナーダイオードZD1にかかる電圧(ツェナー電圧)をVzとすると、抵抗R2及び照明部2の両端に印加される電圧は、Vz+Veで表わされる。抵抗R2及び照明部2の両端間電圧が変動した場合、ツェナーダイオードZD1にかかる電圧はVzとして一定であるので、電圧の変動分はベースとエミッタとの間の電圧Veの変動となって表れる。電圧Veの変動は、ベース電流を変動させ、NPN型トランジスタQ3により、抵抗R2及び照明部2に流れる電流の大きさが調整され、抵抗R2及び照明部2の両端間の電圧は一定に保たれる。すなわち、抵抗R2及び照明部2の電圧は安定化する。
【0039】
シリーズレギュレータ5を導入した電動工具1を用いて、例えば、ねじを締めるときにインパクト機構17を使用した場合の使用時間と電流、使用時間と電圧、使用時間と照明部2の照度の相関関係を
図4A~
図4Cに示す。シリーズレギュレータ5の電圧設定範囲は、
図4Bに示す電圧eすなわち照明設定電圧以下であり、かつ
図4Bに示す電圧fすなわち発光素子設定電圧以上である。ここで、照明設定電圧の値は、照明部2に印加される電圧がインパクト機構17の動作時に電動機15に印加される電圧の値よりも小さくなるように設定される。このように照明設定電圧の上限を設定することで、インパクト機構17の使用中の負荷変動によるちらつきを抑制することができる。
図4Bに示すように、インパクト機構を使用して作業を繰り返すと電池部32の電圧が低下していくので、電池容量の低下も考慮した照明設定電圧に設定すると更に利便性が高まる。また、発光素子設定電圧の値は、照明部2に含まれる少なくとも1つ以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる照明部2の両端の電圧の値である。照明部2が複数の発光素子を含み、複数の発光素子のうち2以上の発光素子が直列に接続された複数の直列回路が並列接続することで構成される場合は、1の直列回路の両端の電圧である。この場合、照明部2の両端の電圧の値は、複数の直列回路のうち、1の直列回路を構成する2以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる。照明部2の照度の均一性を考慮すると、複数の直列回路の各々を構成する2以上の発光素子の個数は同一であることが好ましい。
【0040】
上述のように、シリーズレギュレータ5の電圧設定範囲を設定することで、
図4Cに示すようにねじ締め時の照明部2の照度は、ほぼ一定となる。
【0041】
図4Aでは、使用時間a秒後にねじ締め時の電流の大きさはピークを迎えているが、これは突入電流と呼ばれる。突入電流とは、電気機器に電源を投入した際に一時的に流れる大電流のことである。突入電流により、電源電圧の不安定化(電圧降下)が発生することがある。シリーズレギュレータ5の出力側にコンデンサC1を追加することで、コンデンサC1は、起動時の突入電流によるねじ締め時の照明部2の照度のちらつきを抑制することができる。
【0042】
以上から、シリーズレギュレータ5を採用することで、後述する降圧型スイッチングレギュレータ6に対して、回路構成をコンパクトにすることができ、より扱いやすいインパクト機構17を有する電動工具1を提供することができる。シリーズレギュレータ5は、後述する降圧型スイッチングレギュレータ6に対して、ノイズを低減することができる。
【0043】
(4)利点
本実施形態の電動工具1は、電池部32と、取付部23と、電動機15と、照明部2と、安定化回路3と、を備える。取付部23は先端工具を取り付ける。電動機15は電池部32を電源として取付部23を回転駆動させる。照明部2は電池部32を電源として先端工具の先に光を照射する。安定化回路3は、照明部2に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる。安定化回路3は、電池部32に対して電動機15と並列に接続され、照明部2に電圧を出力する。これにより、照明部2に印加される電圧は安定化される。この結果、インパクト機構17を使用する電動工具1の照明部2の照度は安定化し、ちらつきを抑制することができる。
【0044】
(5)変形例
以下に、変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0045】
(5.1)変形例1
実施形態では、インパクト機構17を備えた電動工具1としたが、この構成に限定されない。インパクト機構17を備えない電動工具であってもよい(図示せず)。例えば、ドリルドライバーなどである。本変形例の電動工具(図示せず、例えばドリルドライバー)は、
図1においてインパクト機構17を有しない。つまり、本変形例の電動工具は、取付部23に取り付けられた先端工具の回転のみを与える。
【0046】
電圧安定化回路、すなわちシリーズレギュレータ5を導入していない従来のドリルドライバーについて、使用時間と電流、使用時間と電圧、使用時間と照明部2の照度、の相関を表すグラフを
図5A~
図5Cに示す。
図5Aに示すように、使用直後のh秒後に電流のピークがあり、突入電流が発生している。また、
図5Bに示すように、繰り返し作業を行うと、電池部32の電圧が低下する。実施形態1のように、インパクト機構17のような電流変動や電圧変動はないものの、作業時間が経つにつれて、照明部2の照度は低下している。
【0047】
これに対して、シリーズレギュレータ5を導入した本変形例の電動工具について、使用時間と電流、使用時間と電圧、使用時間と照明部2の照度の相関を表すグラフをそれぞれ
図6A~
図6Cに示す。シリーズレギュレータ5の照明設定電圧の値は、
図6Bの電圧kとして示すように、本変形例の電動工具であるドリルドライバーの動作時に電動機15に印加される電圧の値よりも小さく設定する。このとき、使用時間に対して電圧は低下するので、その低下量を見込んで照明設定電圧を設定することが好ましい。また、シリーズレギュレータ5の発光素子設定電圧の値は、
図6Bの電圧mとして示すように、実施形態1と同様に設定すればよい。
【0048】
上述のようにシリーズレギュレータ5の電圧を設定した場合、
図6Cに示すように、照明部2の照度はほぼ一定となる。
【0049】
(5.2)変形例2
電動工具1の照明部2に導入する安定化回路3として、シリーズレギュレータ5のみに限定されない。シリーズレギュレータ5の代わりの安定化回路3として降圧型スイッチングレギュレータ6を用いてもよい。降圧型スイッチングレギュレータ6は、
図7に示すように、ダイオードD1、インダクタL1、コンデンサC2を有する。また、本変形例の電動工具1は、スイッチQ4を、更に備える。
【0050】
スイッチQ4は、電池部32とインダクタL1の間に挿入される。具体的には、スイッチQ4のドレインは、点P0においてスイッチSW2を介して電池部32のプラス端子と接続される。また、スイッチQ4のソースは、インダクタL1と接続される。さらに、スイッチQ4のゲートは、制御部4に接続される。スイッチQ4は、制御部4の信号により電池部32からの電流の通過、遮断の切り替えが行われる。
【0051】
インダクタL1の一端は、電池部32のプラス端子と、スイッチSW2及びスイッチQ4を介して接続される。すなわち、スイッチQ4のソースとインダクタL1の一端が接続される。また、インダクタL1の他端は、抵抗R2に接続される。スイッチQ4とインダクタL1との接続経路上の点P4と、ダイオードD1のカソードが接続される。ダイオードD1のアノードは、電池部32のマイナス端子と接続される。具体的には、ダイオードD1のカソードが点P4と、ダイオードD1のアノードが電池部32のマイナス端子と、それぞれ接続される。インダクタL1と抵抗R2との接続経路上の点P5と、電池部32のマイナス端子との間にコンデンサC2が挿入される。具体的には、コンデンサC2の一端が点P5と、コンデンサC2の他端が電池部32のマイナス端子と、それぞれ接続される。つまり、コンデンサC2は、抵抗R2、照明部2及びスイッチQ2の直列回路に並列に接続される。
【0052】
降圧型スイッチングレギュレータ6を用いた回路の動作について説明する。電動工具1のスイッチSW1がオンの状態で、トリガボリューム29が引かれると、スイッチSW2がオンとなり、制御部4が通電する。この状態でスイッチQ1、Q2、Q4がオンとなる。スイッチQ4がオンの状態では、インダクタL1、抵抗R2、照明部2の順に電流が流れる。このとき、インダクタL1に磁気エネルギーが蓄積される。出力電圧、すなわち抵抗R2と照明部2の両端に付加される電圧が設定電圧を超えると、スイッチQ4がオフとなり、蓄積された磁気エネルギーが電流となる。電流は、抵抗R2、照明部2、ダイオードD2インダクタL1の順に流れる。磁気エネルギーがなくなり、出力電圧が下がってくると、スイッチQ4がオンとなる。この動作の繰り返しで、抵抗R2と照明部2の両端にかかる電圧は一定に保たれる。このため、照明部2に印加される電圧は安定し、照明部2の照度も一定となる。
【0053】
(5.3)変形例3
実施形態では、電動工具1は、照明部2の照明用LEDとして1つのLEDを備える構成を一例として説明した。しかしながら、電動工具1の構成は、これに限定されない。電動工具1は、照明用LEDとして複数のLEDを備えてもよい。例えば、照度が更に必要な場合には、電動工具1は、
図8に示すようなチップオンボード(COB LED:chip on board LED)10を照明部2として備えてもよい。COB LED10は、
図9に示すように、COB LED10の中心が出力軸21の回転軸と同心となるように電動工具1の取付部23に配置される。 本変形例の電動工具1は、安定化回路3として、シリーズレギュレータ5を備えることにより、COB LED10に対しても、照度のちらつきを抑制することが可能である。COB LED10及びシリーズレギュレータ5を導入した電動工具1の回路構成図を
図10に示す。COB LED10は、例えば
図8に示すように、21個のLEDから構成され、等価回路としては直列(
図10では7つ)につながったLEDの組が、並列(
図10では3列)に並び、基板上に円環状に配置されている。直列につながった7つのLEDが3列に並列に接続され、それぞれの終端部に電流制限抵抗R3、R4、R5が接続される。この並列回路(照明部2)の一端は抵抗R2に、照明部2の他端は各電流制限抵抗を介して電池部32のマイナス端子に接続される。シリーズレギュレータ5の構成は実施形態1と同等である。LEDが直列に7個接続された分、必要となる電圧は大きくなるため、ツェナーダイオードZD1については高耐圧のものが好ましい。等価回路の動作としては、実施形態1と同様である。
【0054】
さらに、電動工具1の安定化回路3として、昇圧型スイッチングレギュレータ7を用いる構成も可能である。昇圧型スイッチングレギュレータ7は、電池部32を昇圧することが可能である。昇圧型スイッチングレギュレータ7は、
図11に示すように、インダクタL2、ダイオードD2、コンデンサC3、スイッチQ5を有する。インダクタL2の一端は、点P0に接続される。インダクタL2の他端は、ダイオードD2のアノードに接続される。インダクタL2とダイオードD2のアノードとの接続経路上の点P6と、電池部のマイナス端子との間に、スイッチQ5が設けられている。すなわち、スイッチQ5のドレインは点P6と、スイッチQ5のソースは電池部32のマイナス端子と、それぞれ接続される。また、ゲート端子は制御部4に接続される。スイッチQ5は、制御部4からの制御信号を受けて昇圧型スイッチングレギュレータ7の通電の入切を行う。ダイオードD2のカソードは、抵抗R2と接続される。抵抗R2はLEDの並列回路の一端に接続され、LEDの並列回路の他端は電池部32のマイナス端子に接続されている。コンデンサC3に一端は、ダイオードD2と抵抗R2との接続経路上の点P7に接続される。コンデンサC3の他端は、スイッチQ2のソースと電池部32の接続経路上の点P8と接続される。
【0055】
昇圧型スイッチングレギュレータ7の動作について、
図11を用いて説明する。昇圧型スイッチングレギュレータ7のスイッチQ5がオンとなると、電池部32から照明部2への電力供給は停止される。照明部2への電力供給は、昇圧型スイッチングレギュレータ7のコンデンサC3が行う。このとき、インダクタL2には磁気エネルギーが蓄積される。この間、電池部32から照明部2への電力供給は停止されているため、照明部2の電圧は次第に低下する。照明部2の電圧が設定された電圧よりも低下すると、昇圧型スイッチングレギュレータ7のスイッチQ5がオフとなる。このとき、インダクタL1は蓄積した磁気エネルギーを放出し、電流を流し続けるため、スイッチQ5の両端にかかる電圧は、抵抗R2に係る電圧と、照明部2及び各電流制限抵抗からなる並列回路にかかる電圧と、ダイオードD2にかかる電圧との和(電圧和)である。出力電圧の値、すなわち電圧和の値が大きくなると、再びスイッチQ3がオフとなる。以上の動作を繰り返すことにより、電圧和は、電池部32が供給する電圧の値よりも高い値となる。そのため、抵抗R2と照明部2及び各電流制限抵抗からなる並列回路となからなる回路に一定の値の出力電圧が供給される。その結果、照明部2の照度のちらつきを抑制することができる。
【0056】
(5.4)変形例4
電動工具1の安定化回路3は、シリーズレギュレータ5や降圧型スイッチングレギュレータ6に限定されない。電動工具1は、安定化回路3として、定電圧回路であるシャントレギュレータ8を用いてもよい。シャントレギュレータ8は、
図12に示すように、抵抗R6と、ツェナーダイオードZD2と、コンデンサC4を有する。抵抗R6に一端は、点P0に接続され、抵抗R6の他端は抵抗R2に接続される。ツェナーダイオードZD2のカソードは抵抗R6と抵抗R2との接続経路上の点P9に接続される。ツェナーダイオードZD2のアノードは、電池部32のマイナス端子に接続される。コンデンサC4は、ツェナーダイオードZD2と並列に挿入される。具体的は、コンデンサC4の一端は、抵抗R6と抵抗R2との接続経路上の点P10に接続される。なお、点P10は、点P9と抵抗R2との間に存在する。コンデンサC4の他端は、電池部32のマイナス端子に接続される。つまり、コンデンサC4は、抵抗R2と照明部2及びスイッチQ2とを含む直列回路と、並列に接続されている。
【0057】
シャントレギュレータ8を用いた回路の動作は、ツェナーダイオードZD2の電圧(ツェナー電圧)をVzとすると、抵抗R2及び照明部2の両端にかかる電圧はVzとなる。このため、照明部2の照度も一定となる。一方、電池部32の電圧Vsとツェナー電圧の電位差Vs-Vzは、抵抗R6で熱となって消費され、抵抗R2及び照明部2に流れない電流もツェナーダイオードZD2で熱となって消費される。
【0058】
(5.5)変形例5
さらに、電動工具1は、安定化回路3として、定電圧回路ではなく、定電流回路を用いることも可能である。一定の電流が流れると、照明部2は一定の照度を保つことができる。また、電池部32の電圧変動に対しても、照明部2の照明用LEDを一定の照度に保つ効果がある。
【0059】
電動工具1に定電流回路(カレントミラー回路9)を導入した場合の回路構成図を
図13に示す。カレントミラー回路9は、抵抗R7、R8、R9、NPN型トランジスタQ7、Q8、照明部2を備える。電池部32のプラス端子にスイッチQ6を介して照明部2が接続される。
【0060】
スイッチQ6ドレインは、点P0においてスイッチSW2を介して電池部32のプラス端子に接続される。スイッチQ6のソースは、照明部2のアノードに接続される。スイッチQ6のゲートは制御部4に接続される。スイッチQ6は、制御部4の信号により電池部32からの電流の通過、遮断の切り替えが行われる。
【0061】
照明部2はNPN型トランジスタQ8のコレクタに接続される。抵抗R9の一端は、NPN型トランジスタQ8のエミッタは、抵抗R9の一端に接続される。抵抗R9の他端は、電池部32のマイナス端子に接続される。
【0062】
抵抗R7の一端は、照明部2とスイッチQ6の接続経路上の点P11に接続される。抵抗R7の他端は、スイッチQ7のコレクタと接続される。抵抗R8の一端は、NPN型トランジスタQ7のエミッタに接続される。抵抗R8の他端は、電池部32のマイナス端子に接続される。具体的には、抵抗R8の他端は、抵抗R9と電池部32のマイナス端子との接続経路上の点P14に接続される。
【0063】
また、NPN型トランジスタQ7のベースは、NPN型トランジスタQ8のベースに接続される。
【0064】
さらに、抵抗R7とNPN型トランジスタQ7との接続経路上の点P12と、NPN型トランジスタQ7とNPN型トランジスタQ8との接続経路上の点P13とは接続される。すなわち、NPN型トランジスタQ7のコレクタとベースとは短絡されている。
【0065】
NPN型トランジスタQ7、Q8は、特性の揃ったトランジスタである。一方、特性がずれていたり、NPN型トランジスタQ7、Q8の温度特性がずれていたりすると、電流値に大きな誤差が生じるため、NPN型トランジスタQ7、Q8のエミッタとの間には、それぞれ抵抗R8、R9が挿入されている。
【0066】
定電流回路であるカレントミラー回路9の動作を簡単に説明する。NPN型トランジスタQ7及びQ8は、特性が揃い、ベースが共通であるので、NPN型トランジスタQ7及びQ8のエミッタ電流は等しくなる。すなわち、抵抗R8及びR9に流れる電流は等しくなる。さらに、NPN型トランジスタQ7及びQ8の電流増幅率(ベース電流に対するコレクタ電流の比率)が十分に大きければ、ベース電流は無視することができるので、コレクタ電流も同じとみなすことができる。言い換えると、抵抗R7と照明部2に流れる電流は同等となる。こうして抵抗R7、R8、R9及び照明部2に流れる電流は同等となる。抵抗R7の代わりに定電流ダイオード(図示せず)を用いると、更に電圧の変動があったとしても、定電流を流すことができる。
【0067】
なお、電動工具1は、定電圧回路及び定電流回路の双方を備えてもよい。つまり、電動工具1は、照明部2に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる回路を備えていればよい。
【0068】
(まとめ)
以上、説明したように、第1の態様の電動工具(1)は、電池部(32)と、取付部(23)と、電動機(15)と、照明部(2)と、安定化回路(3)と、を備える。取付部(23)は、先端工具を取り付ける。電動機(15)は、電池部(32)を電源として取付部(23)を回転駆動させる。照明部(2)は、電池部(32)を電源として、先端工具の先に光を照射する。安定化回路(3)は、照明部(2)に印加する電流及び電圧の少なくとも一方を安定化させる。安定化回路(3)は、電池部(32)に対して並列に接続され、照明部(2)に電圧を出力する。
【0069】
この構成によると、電池部(32)と照明部(2)との間に安定化回路(3)を備えることで、電動機(15)に流れる電流が大きく変動する状態でも、照明部(2)のちらつきを抑制することができる。
【0070】
第2の態様の電動工具(1)は、第1の態様において、インパクト機構(17)を、更に備える。インパクト機構(17)は取付部(23)と、電動機(15)と、の間に配されて、電動機(15)の回転駆動をインパクト駆動に変換する。
【0071】
この構成によると、インパクト機構(17)を有する電動工具(1)においても、照明部(2)が一定の照度を保って先端工具の先に光を照らすので、照明部(2)のちらつきによる事故等が発生しにくい。また、回転駆動に加えてインパクト駆動が加わることで、利便性が向上する。
【0072】
第3の態様の電動工具(1)では、第2の態様において、安定化回路(3)は、照明部(2)に印加する電圧を照明設定電圧で印加する。照明設定電圧の値は、照明部(2)に印加される電圧がインパクト機構(17)の動作時に電動機(15)に印加される電圧の値よりも小さい。
【0073】
この構成によると、インパクト機構(17)の使用時に電動機(15)に印加される不安定な電圧よりも、照明部(2)に印加される電圧が低いために、電動機(15)に印加される電圧に影響されることなく、照明部(2)にかかる電圧を安定化させることができる。
【0074】
第4の態様の電動工具(1)では、第1~3のいずれかの態様において、照明部(2)は、1つ又は複数の発光素子を含む。
【0075】
この構成によると、照明部(2)が複数の発光素子から成り、より明るくなると照明部(2)のちらつきの視認性は大きくなるが、その場合にも安定化回路(3)を配置することにより、照明部(2)のちらつきを抑制することができる。
【0076】
第5の態様の電動工具(1)では、第4の態様において、安定化回路(3)は、照明部(2)に印加する電圧を発光素子設定電圧で印加する。発光素子設定電圧の値は、照明部(2)に含まれる少なくとも1つ以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる照明部(2)の両端の電圧の値よりも大きい。
【0077】
この構成によると、発光素子設定電圧は、順方向電圧と発光素子の個数の積によって得られる電圧以上に設定することで、照明部(2)の点灯に十分な、かつちらつきを抑制することができる電圧となる。
【0078】
第6の態様の電動工具(1)では、第5の態様において、照明部(2)は複数の発光素子を含み、複数の発光素子のうち2以上の発光素子が直列に接続された複数の直列回路が並列接続されることで構成される。照明部(2)の両端の電圧の値は、複数の直列回路のうち、1の回路を構成する2以上の発光素子の順方向電圧に基づいて得られる、1の直列回路の両端の電圧の値である。
【0079】
この構成によると、複数の直列回路の各々を構成する2以上の発光素子の個数が同一ではない場合であっても、並列回路からなる照明部(2)の両端の電圧の値を、発光素子設定電圧として設定することができる。この場合も、安定化回路(3)は、発光素子設定電圧以上の値を設定することで、照明部(2)の点灯に十分な電圧を供給することができる。
【0080】
第7の態様の電動工具(1)では、第6の態様において、複数の直列回路の各々を構成する2以上の発光素子の個数は同一である。
【0081】
この構成によると、並列回路を構成する複数の直列回路の各々を構成する発光素子の個数が同一であることから、照明部(2)の照度の均一性が向上する。
【0082】
第8の態様の電動工具(1)では、第1~7のいずれかの態様において、安定化回路(3)は、シリーズレギュレータ(5)により構成されている。
【0083】
この構成によると、シリーズレギュレータ(5)は、回路構成をコンパクトにできるので、より扱いやすいインパクト電動工具を提供することができる。また、降圧型スイッチングレギュレータ(6)に比べて、ノイズを低減することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 電動工具
2 照明部
3 安定化回路
5 シリーズレギュレータ
15 電動機
17 インパクト機構
23 取付部
32 電池部