(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240308BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240308BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20240308BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08F290/06
B32B27/00 A
C08F299/00
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
(21)【出願番号】P 2020569714
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2020003367
(87)【国際公開番号】W WO2020158849
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019016437
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 幸一
(72)【発明者】
【氏名】青木 朋之
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 英一郎
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-064132(JP,A)
【文献】特開2007-079153(JP,A)
【文献】特開2013-159692(JP,A)
【文献】特表2016-525172(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171151(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030112(WO,A1)
【文献】特開2016-056367(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117554(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
B32B 27/00
C08F 299/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性不飽和化合物(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、有機ラジカル化合物(C)とを含有し、
前記有機ラジカル化合物(C)は、有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)を含有し、前記熱ラジカル重合開始剤(B)の量は、前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、
前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)に対する前記有機ラジカル化合物(C)の量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
プリント配線板における絶縁層作製用であ
り、
前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)は、モノオレフィンに由来する構造単位及びジエンに由来する構造単位を有する共重合体(A1)と、末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(A2)と、を含有する、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ラジカル重合性不飽和化合物(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、有機ラジカル化合物(C)とを含有し、
前記有機ラジカル化合物(C)は、有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)を含有し、前記熱ラジカル重合開始剤(B)の量は、前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、
前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)に対する前記有機ラジカル化合物(C)の量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
プリント配線板における絶縁層作製用であり、
金属不活性化剤(D)を更に含有する、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ラジカル重合性不飽和化合物(A)と、熱ラジカル重合開始剤(B)と、有機ラジカル化合物(C)とを含有し、
前記有機ラジカル化合物(C)は、有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)を含有し、前記熱ラジカル重合開始剤(B)の量は、前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、
前記ラジカル重合性不飽和化合物(A)に対する前記有機ラジカル化合物(C)の量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であり、
プリント配線板における絶縁層作製用であり、
スチレン系エラストマー(E)を更に含有する、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱ラジカル重合開始剤(B)は、t-アミルパーオキサイド系重合開始剤及びt-ヘキシルパーオキサイド系重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
無機充填材(F)を更に含有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填材(F)が、重合性有機化合物で表面処理されたシリカを含有する、
請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
難燃剤(G)を更に含有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む、
樹脂シート。
【請求項9】
絶縁層と金属箔とを備え、
前記絶縁層は、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する、
積層板。
【請求項10】
絶縁層と導体配線とを備え、
前記絶縁層は、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物、樹脂シート、積層板及びプリント配線板に関し、詳しくは、ラジカル重合性不飽和化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物、前記熱硬化性樹脂組成物から作製される樹脂シート、前記熱硬化性樹脂組成物から作製される絶縁層を備える積層板、及び前記熱硬化性樹脂組成物から作製される絶縁層を備えるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プリント配線板を製造するための熱硬化性接着フィルム等を作製するための熱硬化性接着剤組成物が開示されている。この熱硬化性接着剤組成物には、ポリフェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物、マレイミド樹脂、及び成分ポリオレフィン骨格を主成分とし、ポリオレフィンブロックとポリスチレンブロックの共重合体である熱可塑性エラストマー、を特定の比率で含有し、100%伸び引張応力が0.1~2.9MPa、切断時伸びが100%以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の課題は、熱硬化性樹脂組成物及びその半硬化物を加熱した場合に、まず溶融粘度が低い状態を維持してから速やかに硬化させやすく、かつ熱硬化性樹脂組成物及びその半硬化物の保存安定性を向上でき、さらにそれに伴う硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下が起こりにくい熱硬化性樹脂組成物、この熱硬化性樹脂組成物から作製された樹脂シート、この熱硬化性樹脂組成物から作製された絶縁層を備える積層板、及びこの熱硬化性樹脂組成物から作製された絶縁層を備えるプリント配線板を提供することである。
【0005】
本開示の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性不飽和化合物と、有機ラジカル化合物とを含有する。
【0006】
本開示の一態様に係る樹脂シートは、前記熱硬化性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る積層板は、絶縁層と金属箔とを備え、前記絶縁層は、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する。
【0008】
本開示の一態様に係るプリント配線板は、絶縁層と導体配線とを備え、前記絶縁層は、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは本開示の実施形態に係る樹脂シートの概略を示す断面図、
図1Bは
図1Aに示す樹脂シートを用いて作製されたプリント配線板の例の概略を示す断面図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bの各々は、本開示の実施形態に係る樹脂付き金属箔の例の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本開示の完成に至るまでの経緯の概略を説明する。
【0011】
特許文献1に開示されているような、ポリフェニレンエーテル骨格を有するビニル化合物などのラジカル重合性化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物、その乾燥物又はその半硬化物を加熱すると、粘度が十分に低くなる前に速やかに硬化してしまいやすい。そのため、例えば熱硬化性樹脂組成物、その乾燥物又はその半硬化物から導体配線に重なる絶縁層を作製する場合には、導体配線の隙間に絶縁層を十分に充填することが難しいことがある。また、熱硬化性樹脂組成物、その乾燥物及びその半硬化物の保存中に硬化反応が進行してしまうこともある。
【0012】
しかし、熱硬化性樹脂組成物、その乾燥物及びその半硬化物の重合反応を抑制するためにフェノール系化合物などの一般的な重合禁止剤を使用すると、硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下が起こりやすい。そのため硬化物の熱的特性が悪化しやすい。
【0013】
そこで、発明者は、熱硬化性樹脂組成物、その乾燥物及びその半硬化物の加熱時に粘度が低い状態を維持しやすく、保存安定性を向上でき、かつそれに伴う硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下を起こりにくくすべく、鋭意研究の結果、本開示の完成に至った。
【0014】
以下、本開示の実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、ラジカル重合性不飽和化合物と、有機ラジカル化合物とを含有する。このため、組成物(X)、組成物(X)の乾燥物及び組成物(X)の半硬化物は、加熱されると粘度が低い状態を維持しやすい。また、組成物(X)、組成物(X)の乾燥物及び組成物(X)の半硬化物の保存安定性が向上しやすい。さらに、それに伴う硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下が起こりにくい。さらに、組成物(X)の硬化物の難燃性を向上させることもできる。
【0016】
本実施形態による上記作用に関して発明者が推定する機序は、次のとおりである。
【0017】
ラジカル重合性不飽和化合物からラジカル活性種が生成すると、ラジカル重合反応が連鎖的に進行して、ラジカル重合性不飽和化合物が重合する。フェノール系化合物などの一般的な重合禁止剤は、ラジカル活性種と反応してラジカル重合反応を停止させることで、組成物(X)、乾燥物及び半硬化物は加熱時に粘度の低い状態を維持しやすく、かつ組成物(X)、乾燥物及び半硬化物の保存安定性を向上できる。しかし、ラジカル活性種とフェノール系化合物との反応生成物の安定性は非常に高いため、この反応生成物は、ラジカル重合性不飽和化合物の重合反応を阻害する作用が大きい。このため、重合禁止剤は硬化物中の架橋密度の低下を招きやすく、そのことが硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下を招きやすい。
【0018】
一方、本実施形態では、組成物(X)、乾燥物又は半硬化物中で、ラジカル活性種が生成すると、ラジカル活性種と有機ラジカル化合物とが反応して安定な反応生成物が生成する。このため組成物(X)、乾燥物及び半硬化物は、加熱されても粘度の低い状態を維持しやすい。また、組成物(X)、乾燥物及び半硬化物の保存安定性が向上しうる。また、ラジカル活性種と有機ラジカル化合物との反応生成物が更に加熱されると、当該反応生成物が分解して再びラジカル活性種が生じやすい。このようにラジカル活性種が発生すると、硬化反応が急激に進行しやすい。そのため、硬化物の架橋密度が高まりやすく、そのことが硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下を起こりにくくし、かつ硬化物の難燃性を高めると、推察される。
【0019】
組成物(X)が含みうる成分について説明する。
【0020】
ラジカル重合性不飽和結合を有する化合物(A)(以下、化合物(A)ともいう。)は、熱ラジカル重合反応により重合可能であれば、特に制限はない。化合物(A)は、例えばエチレン性不飽和基を有し、より具体的には例えばビニル基、アリル基、メタクリル基、スチリル基、メタ(アクリル)基、及びマレイミド基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。化合物(A)に含まれる成分の選択によって、組成物(X)、半硬化物及び硬化物の物性を制御できる。例えば化合物(A)が重合性不飽和基を一つ有する単官能化合物を含有すると、単官能化合物は組成物(X)の溶融粘度を低減して成形性を向上できる。また、化合物(A)が重合性不飽和基を複数有する多官能化合物を含有すると、多官能化合物は、硬化物の架橋密度を増大させることができる。それにより、多官能化合物は、硬化物の靭性向上、ガラス転移点向上及びそれに伴う耐熱性向上、並びに線膨張係数の低減に、寄与できる。
【0021】
化合物(A)が含みうる成分について、より具体的に説明する。
【0022】
化合物(A)は、モノオレフィンに由来する構造単位(以下、モノオレフィンユニットという)及びジエンに由来する構造単位(以下、ジエンユニットという)を有する共重合体(A1)(以下、共重合体(A1)ともいう。)を含有することが好ましい。
【0023】
共重合体(A1)は、一般的にフィルム形成能を有しているため組成物(X)をシート状に成形して樹脂フィルムを作製する場合の成形性を高めやすく、共重合体(A1)の誘電率が低いため硬化物の誘電率を低減しやすく、ジエンユニットが重合性不飽和基であることから硬化物の線膨張係数を低めやすく、更に硬化物の耐熱性を高めやすい。
【0024】
共重合体(A1)におけるモノオレフィンユニットは一種の構造単位のみを含んでもよく、二種以上の構造単位を含んでもよい。モノオレフィンユニットは、エチレンに由来する構造単位(以下、エチレンユニットという)、プロピレンに由来する構造単位(以下、プロピレンユニットという)、ブチレンに由来する構造単位(以下、ブチレンユニットという)、α-オレフィンに由来する構造単位(以下、α-オレフィンユニットという)、水添ブタジエンに由来する構造単位(以下、水添ブタジエンユニットという)、及び水添イソプレンに由来する構造単位(以下、水添イソプレンユニットという)からなる群から選択される一種以上を含むことが好ましい。なお、モノオレフィンユニットに含まれる構造単位は、前記のみには制限されない。モノオレフィンユニットは、例えばエチレンユニットとプロピレンユニットとを含んでもよい。すなわち、共重合体(A1)は、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を含んでもよい。エチレン-プロピレン-ジエン共重合体は一般に、EPDMゴム(ethylene-propylene-diene terpolymer)とも呼ばれる。
【0025】
ジエンユニットは、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネンに由来する構造単位(以下、5-エチリデン-2-ノルボルネンユニットという)、ジシクロペンタジエンに由来する構造単位(以下、ジシクロペンタジエンユニットという)、1,4-ヘキサジエンに由来する構造単位(以下、1,4-ヘキサジエンユニットという)、ブタジエンに由来する構造単位(以下、ブタジエンユニットという)及びイソプレンに由来する構造単位(以下、イソプレンユニットという)からなる群から選択される少なくとも一種の構造単位を含む。なお、ジエンユニットに含まれる構造単位は前記のみには制限されない。ジエンユニットは、5-エチリデン-2-ノルボルネンユニットを含むことが好ましい。
【0026】
共重合体(A1)は、エチレンユニットとプロピレンユニットと5-エチリデン-2-ノルボルネンユニットとを有することが好ましい。すなわち、例えば共重合体(A1)の分子は、下記式(1)に示す構造を有することが好ましい。式(1)中、n、m及びlの各々は、自然数であり、式(1)中の構造単位の数を示す。このため式(1)は、構造単位の比率を示す組成式である。すなわち、式(1)は、共重合体(A1)がエチレンユニットをnモル、プロピレンユニットをmモル、ジエンユニットをlモル含むことを、意味する。ジエンユニットである5-エチリデン-2-ノルボルネンユニットは、組成物(X)の硬化反応の速度向上に寄与することができ、組成物(X)の硬化に要する時間を短縮できる。
【0027】
【0028】
共重合体(A1)全体に対する、ジエンユニットの、質量比率は、3%以上であることが好ましい。このことは、硬化物の耐熱性向上に寄与できる。ジエンユニットの比率が3%以上15%以下であればより好ましい。
【0029】
共重合体(A1)全体に対する、エチレンユニットの、質量比率は、50%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)をシート状に成形しやすくできる。エチレンユニットの比率が50%以上85%以下であればより好ましい。
【0030】
共重合体(A1)の、JIS K6300-1:2013で規定されるムーニー粘度ML(1+4)100℃は、10以上であることが好ましい。この場合も、組成物(X)をシート状に成形しやすくでき、シート状に形成して得られる成形体のタックを低減できる。共重合体(A1)のJIS K6300-1:2013で規定されるムーニー粘度ML(1+4)125℃が80以下であればより好ましい。80以下であることによって、共重合体(A1)の溶融粘度が高くなり過ぎず、硬化物の成形性を向上させることができる。
【0031】
なお、共重合体(A1)のムーニー粘度は、共重合体(A1)の分子量が大きいほど高くなる。このため、例えば共重合体(A1)に含まれる分子の分子量を調整すること、共重合体(A1)に分子量の異なる分子を混合して含ませてその混合比を調整すること、及び共重合体(A1)に含まれる分子を分枝状の構造に調整すること等からなる群から選択される少なくとも一種の手段で、ムーニー粘度を調整できる。
【0032】
化合物(A)が末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(A2)(以下、化合物(A2)ともいう)を含有することも好ましい。この場合、一般的に(A2)が優れた誘電特性を有するため硬化物の低誘電率化、低誘電正接化することができる。また、(A2)は難燃性を示す材料であるため良好な難燃性を実現しやすい。
【0033】
化合物(A2)は、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性されたポリフェニレンエーテルである。すなわち、化合物(A2)は、例えばポリフェニレンエーテル鎖と、ポリフェニレンエーテル鎖の末端に結合している炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とを、有する。
【0034】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基としては、例えば、下記式(2)で表される置換基等が挙げられる。
【0035】
【0036】
式(2)中、nは、0~10の数である。Zはアリーレン基である。R1~R3は、各々独立に、水素原子又はアルキル基である。式(2)において、nが0である場合は、Zがポリフェニレンエーテル鎖の末端に直接結合している。
【0037】
アリーレン基は、例えばフェニレン基等の単環芳香族基、又はナフチレン基等の多環芳香族基等である。アリーレン基における芳香族環に結合する少なくとも一つの水素原子が、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換されていてもよい。アリーレン基は、前記のみには限られない。
【0038】
アルキル基は、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、又はデシル基等である。アルキル基は、前記のみには限られない。
【0039】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基は、例えばp-エテニルベンジル基、m-エテニルベンジル基等のビニルベンジル基(エテニルベンジル基)、ビニルフェニル基、アクリレート基、又はメタクリレート基等を有する。炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基は、特にビニルベンジル基、ビニルフェニル基、又はメタクリレート基を有することが好ましい。炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基がアリル基を有すれば、化合物(A2)の反応性が低い傾向がある。また、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基がアクリレート基を有すれば、化合物(A2)の反応性が高すぎる傾向がある。
【0040】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基の好ましい具体例としては、ビニルベンジル基を含む官能基が挙げられる。具体的には、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基は、例えば下記式(3)又は式(4)に示す置換基である。
【0041】
【0042】
【0043】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基は、(メタ)アクリレート基でもよい。(メタ)アクリレート基は、例えば、下記式(5)で示される。
【0044】
【0045】
式(5)中、R4は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基は、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、例えば、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、又はデシル基等である。アルキル基は前記のみには制限されない。
【0046】
化合物(A2)は、上記のとおり、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有している。ポリフェニレンエーテル鎖は、例えば、下記式(6)で表される繰り返し単位を有する。
【0047】
【0048】
式(6)において、mは、1~50の数である。R5~R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基である。R5~R8の各々は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。アルキル基は、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、又はデシル基等である。アルケニル基は、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。具体的には、アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、又は3-ブテニル基等である。アルキニル基は、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。具体的には、アルキニル基は、例えば、エチニル基、又はプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等である。アルキルカルボニル基は、アルキル基で置換されたカルボニル基であればよく、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。具体的には、アルキルカルボニル基は、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、又はシクロヘキシルカルボニル基等である。アルケニルカルボニル基は、アルケニル基で置換されたカルボニル基であればよく、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、アルケニルカルボニル基は、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はクロトノイル基等である。アルキニルカルボニル基は、アルキニル基で置換されたカルボニル基であればよく、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。具体的には、アルキニルカルボニル基は、例えば、プロピオロイル基等である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基及びアルキニルカルボニル基は、前記のみには制限されない。
【0049】
化合物(A2)の重量平均分子量(Mw)は、500以上5000以下であることが好ましく、500以上2000以下であることがより好ましく、1000以上2000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で得られた測定結果をポリスチレン換算した値である。化合物(A2)が、式(6)で表される繰り返し単位を分子中に有している場合、式(6)中のmは、化合物(A2)の重量平均分子量が上記の好ましい範囲内になるような数値であることが好ましい。具体的には、mは、1以上50以下であることが好ましい。化合物(A2)の重量平均分子量がこのような範囲内であると、化合物(A2)は、ポリフェニレンエーテル鎖によって組成物(X)の硬化物に優れた誘電特性を付与し、硬化物の耐熱性を向上させることができ、更に組成物(X)の成形性を向上できる。その理由として、以下のことが考えられる。変性されていないポリフェニレンエーテルは、その重量平均分子量が500以上5000以下程度であると、比較的低分子量であるので、硬化物の耐熱性を低下させる傾向がある。これに対し、化合物(A2)は、末端に不飽和二重結合を有するので、硬化物の耐熱性を高められると考えられる。また化合物(A2)の重量平均分子量が5000以下であると、組成物(X)の成形性が阻害されにくいと考えられる。よって、化合物(A2)は、硬化物の耐熱性を向上できるだけではなく、組成物(X)の成形性を向上できると考えられる。なお、化合物(A2)の重量平均分子量が500以上であると、硬化物のガラス転移温度が低下しにくく、このため硬化物が良好な耐熱性を有しやすい。さらに、化合物(A2)におけるポリフェニレンエーテル鎖が短くなりにくいため、ポリフェニレンエーテル鎖による硬化物の優れた誘電特性が維持されやすい。また、重量平均分子量が5000以下であると、化合物(A2)は溶剤に溶解しやすく、組成物(X)の保存安定性が低下しにくい。また、化合物(A2)は組成物(X)の粘度を上昇させにくく、そのため組成物(X)の良好な成形性が得られやすい。
【0050】
化合物(A2)の1分子当たりの、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基の平均個数(末端官能基数)は、1~5個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましく、1.5~3個であることが更に好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物の耐熱性を確保しやすく、また化合物(A2)の反応性及び粘度が過度に高くなることを抑制することができる。また組成物(X)の硬化後に、未反応の不飽和二重結合を残りにくくできる。なお、化合物(A2)の末端官能基数は、化合物(A2)1モル中の、1分子あたりの、置換基の平均値である。この末端官能基数は、例えば、ポリフェニレンエーテルを変性して化合物(A2)を合成した場合、化合物(A2)中の水酸基数を測定して、化合物(A2)中の水酸基数の、変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分を算出することによって、得られる。この変性前のポリフェニレンエーテルの水酸基数からの減少分が、末端官能基数である。化合物(A2)に残存する水酸基数は、化合物(A2)の溶液に、水酸基と会合する4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を添加して得られる混合溶液のUV吸光度を測定することによって、求めることができる。
【0051】
化合物(A2)の固有粘度は、0.03dl/g以上0.12dl/g以下であることが好ましく、0.04dl/g以上0.11dl/g以下であることがより好ましく、0.06dl/g以上0.095dl/g以下であることが更に好ましい。この場合、組成物(X)の硬化物の誘電率及び誘電正接を、より低下させやすい。また組成物(X)に充分な流動性を付与することで、組成物(X)の成形性を向上させることができる。
【0052】
なお、固有粘度は、25℃の塩化メチレン中で測定した固有粘度であり、より具体的には、例えば、化合物(A2)を塩化メチレンに0.18g/45mlの濃度で溶解させて調製される溶液の、25℃における粘度である。この粘度は、例えばSchott社製のAVS500 Visco System等の粘度計で測定される。
【0053】
化合物(A2)の合成方法に、特に制限はない。例えばポリフェニレンエーテルに、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された構造を有する化合物を反応させることで、化合物(A2)を合成できる。より具体的には、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された構造を有する化合物とを溶媒に溶解させ、攪拌する。これにより、ポリフェニレンエーテルと、炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された構造を有する化合物とが反応し、化合物(A2)が得られる。
【0054】
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基とハロゲン原子とが結合された構造を有する化合物としては、例えば、p-クロロメチルスチレン及びm-クロロメチルスチレン等が挙げられる。原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に化合物(A2)が合成されうるならば、特に限定されない。ポリフェニレンエーテルは、例えば2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテル、並びにポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルからなる群から選択される少なくとも一種を含有する。2官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に2個有するフェノール化合物であり、例えば、テトラメチルビスフェノールA、ビフェノールおよびテトラアルキルビフェノール等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。3官能フェノールとは、フェノール性水酸基を分子中に3個有するフェノール化合物である。
【0055】
化合物(A)が、共重合体(A1)と化合物(A2)との両方を含有すると特に好ましい。この場合、硬化物の誘電率及び誘電正接を特に低めやすい。
【0056】
化合物(A)が、共重合体(A1)と化合物(A2)との両方を含有する場合、化合物(A2)100質量部に対する共重合体(A1)の量が10質量部以上200質量部以下であることが好ましい。共重合体(A1)の量が10質量部以上であることにより、組成物(X)をフィルム状に成形する場合の成形性を特に高めやすく、かつ硬化物の誘電率を特に低めやすい。共重合体(A1)の量が200質量部以下であると、組成物(X)から作製される樹脂シートの可とう性を向上でき、さらに硬化物の線膨張係数を特に低めやすい。
【0057】
化合物(A)は、共重合体(A1)及び化合物(A2)のみを含有してもよく、共重合体(A1)及び化合物(A2)に加えて、共重合体(A1)及び化合物(A2)以外の化合物(A3)を含有してもよい。
【0058】
化合物(A)が化合物(A3)を含有する場合、化合物(A3)は、単官能化合物および多官能化合物からなる群から選択される少なくとも1種類を含有することが好ましい。化合物(A3)が単官能化合物を含有する場合、単官能化合物は、例えば1-オクタデセン、ステアリルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレートなどからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。化合物(A3)が多官能化合物を含有する場合、多官能化合物は、例えばジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンダイマー、トリビニルシクロヘキサン、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジシクロペンタジエンジメタノールジメタクリレート、ノナンジオールジメタクリレート、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、及びトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。市販されている多官能化合物の例は、四国化成工業株式会社製のTA-G、LDAIC、DD-1を含む。化合物(A3)が多官能化合物を含有する場合、組成物(X)の硬化物の難燃性を向上させやすい。
【0059】
化合物(A3)は、マレイミドを含有してもよい。この場合、硬化物の難燃性を向上させやすい。マレイミドは、例えばフェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、4,4´-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3´-ジメチル-5,5´-ジエチル-4,4´-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド及び1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。市販されているビスマレイミドの例は、DESIGNER MOLECULES社製の商品名BMI-689及びBMI-3000並びに日本化薬株式会社製のMIR-3000を含む。
【0060】
化合物(A)が共重合体(A1)と化合物(A2)と化合物(A3)とを含有する場合の化合物(A3)の量は、共重合体(A1)と化合物(A2)の合計100質量部に対して1質量部以上50質量部以下が好ましい。化合物(A3)の量が1質量部以上であることにより、組成物(X)の硬化物の耐熱性を向上させることができる。化合物(A3)の量が50質量部以下であることにより、組成物(X)の硬化物の、誘電率及び誘電正接を低くできると共に、組成物(X)から作製される樹脂シートのタックの発生を抑制することができる。
【0061】
組成物(X)は、熱ラジカル重合開始剤(B)を含有することが好ましい。熱ラジカル重合開始剤(B)は、組成物(X)が加熱された場合に、活性種を生じることで、化合物(A)の熱ラジカル重合反応を促すことができる。なお、化合物(A)が、加熱されることで活性種を生じさせやすい成分を含有するならば、組成物(X)は熱ラジカル重合開始剤(B)を含有しなくてもよい。
【0062】
熱ラジカル重合開始剤(B)は、例えばアゾ化合物と過酸化物とのうち、少なくとも一方を含有できる。アゾ化合物は、例えばアゾビスイソブチロニトリル等を含有する。過酸化物は、例えばα,α´-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、α,α´-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、過酸化ベンゾイル、3,3´,5,5´-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジーt-アミルパーオキサイド、及び1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、熱ラジカル重合開始剤(B)が含有しうる化合物は、前記のみには制限されない。
【0063】
熱ラジカル重合開始剤(B)は、過酸化物を含有することが好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度を高めやすい。
【0064】
熱ラジカル重合開始剤(B)が過酸化物を含有する場合、過酸化物は、t-アミルパーオキサイド系重合開始剤及びt-ヘキシルパーオキサイド系重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。この場合、過酸化物は、硬化物のガラス転移温度を高めながら、硬化物の誘電正接を増大させにくい。なお、アゾ化合物も、硬化物の誘電正接を増大させにくい点では好ましい。
【0065】
t-アミルパーオキサイド系重合開始剤は、例えばt-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジーt-アミルパーオキサイド、及び1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0066】
t-ヘキシルパーオキサイド系重合開始剤は、例えばジ-t-ヘキシルパーオキサイドを含有できる。
【0067】
組成物(X)が熱ラジカル重合開始剤(B)を含有する場合、熱ラジカル重合開始剤(B)の量は、例えば化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。
【0068】
有機ラジカル化合物(C)は、上記のとおり、組成物(X)、乾燥物及び半硬化物の保存安定性を向上させやすく、かつそれに伴う硬化物の線膨張係数の上昇及びガラス転移温度の低下を起こしにくい。
【0069】
有機ラジカル化合物(C)は、有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)を含有することが好ましい。この場合、有機ラジカル化合物(C)による上記の作用が特に得られやすい。
【0070】
有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)は、例えば下記式(7)で示される化合物、下記式(8)で示される化合物、下記式(9)で示される化合物、下記式(10)で示される化合物及び下記式(11)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。なお、有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)が含有しうる化合物は、前記に制限されない。式(10)において、nは1~18の数である。式(11)において、Rは水素又は水酸基である。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルと、その誘導体とからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含むことが好ましい。例えば有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)は、式(9)に示す化合物、式(10)に示す化合物及び式(11)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
【0077】
有機ニトロキシドラジカル化合物(C1)は、特に式(11)に示す化合物を含有することが好ましい。式(11)においてRが水素であれば更に好ましい。この場合、硬化物の誘電特性を特に改善しやすい。
【0078】
化合物(A)に対する有機ラジカル化合物(C)の量は、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。この量が0.05質量%以上であれば、成型性を良くすることができる。またこの量が5.0質量%以下であれば硬化物の線膨張係数を小さくできる。この有機ラジカル化合物(C)の量は、0.05質量%以上4.0質量%以下であればより好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下であれば更に好ましい。
【0079】
組成物(X)は、金属不活性化剤(D)を含有してもよい。金属不活性化剤(D)は、組成物(X)、乾燥物、半硬化物又は硬化物が導体配線などの導体と接触した場合、導体に由来するイオン(例えば銅イオン)を不活性化させることができる。このため、組成物(X)、乾燥物、半硬化物又は硬化物の成分が、導体中のイオン(例えば銅イオン)と酸化還元反応を起こすことで極性の高い成分が生成することを起こりにくくできる。このため、導体に由来するイオンに起因する硬化物の誘電正接の上昇が起こりにくくなる。特に組成物(X)が共重合体(A1)を含有する場合、共重合体(A1)は本来はイオンと酸化還元反応を起こしやすいが、金属不活性化剤(D)はこの共重合体(A1)とイオンとの酸化還元反応を起こしにくくできる。すなわち、金属不活性化剤(D)は、組成物(X)が共重合体(A1)を含有する場合に、特に有利な効果を発揮する。
【0080】
金属不活性化剤(D)は、例えば2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,3-トリアゾル-3-イルベンザミド(2-Hydroxy-N-1H-1,2,4-triazol-3-ylbenzamide)、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド(N'1,N'12-Bis(2-hydroxybenzoyl)dodecanedihydrazide)、及びN,N’-ビス[3-(3,5-ジ-ターシャル-ブチル-4-ホドロキシフェニル)プロピニル]ヒドラジン(N,N'-Bis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionyl]hydrazine)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。金属不活性化剤(D)の市販品の例は、アデカ製のアデカスタブ CDA-1、アデカスタブ CDA-6、及びアデカスタブ CDA-10を含む。なお、金属不活性化剤(D)が含有しうる成分は、前記に制限されない。
【0081】
金属不活性化剤(D)の量は、化合物(A)に対して0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。金属不活性化剤(D)の量が0.01質量%以上であれば、硬化物の高温処理時の誘電正接の上昇を抑えることができる。また金属不活性化剤(D)の量が5.0質量%以下であれば、硬化物の低い誘電率および誘電正接を得ることができる。金属不活性化剤(D)の量は0.01質量%以上3.0質量%以下であればより好ましく、0.05質量%以上2.0質量%以下であれば更に好ましい。
【0082】
組成物(X)は、スチレン系エラストマー(E)を含有してもよい。エラストマー(E)は、例えばオレフィンユニットとスチレンユニットとを含む共重合体である。オレフィンユニットは、オレフィンモノマーに由来する構造単位であり、スチレンユニットは、スチレンモノマーに由来する構造単位である。スチレンモノマーは、スチレンと置換基を有するスチレンとからなる群から選択される少なくとも一種である。置換基は、例えばメチル基等のアルキル基である。特にスチレンモノマーが、スチレンとメチルスチレンとのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。メチルスチレンは、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン及び4-メチルスチレンからなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0083】
エラストマー(E)は、組成物(X)が共重合体(A1)と化合物(A2)を含有する場合の、共重合体(A1)と化合物(A2)との相溶性を向上させることができる。これにより、エラストマー(E)は、硬化物の難燃性を高めることができる。また、スチレン系エラストマーは、組成物(X)をシート状に成形して樹脂シートを作製する場合の成形性を向上させることができ、かつ半硬化物及び硬化物の靭性を向上させることができる。
【0084】
エラストマー(E)は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。エラストマー(E)がランダム共重合体である場合、エラストマー(E)は、複数のオレフィンユニットと複数のスチレンユニットとがランダムに配列された共重合体である。エラストマー(E)がブロック共重合体である場合、エラストマー(E)は、1以上のオレフィンブロックと、1以上のスチレンブロックとが配列された共重合体である。オレフィンブロックは複数のオレフィンユニットからなり、スチレンブロックは複数のスチレンユニットからなる。エラストマー(E)がランダム共重合体である場合、エラストマー(E)は、例えば、オレフィンモノマーとスチレンモノマーとを、乳化重合法又は溶液重合法によって、重合させることで製造することができる。
【0085】
エラストマー(E)がブロック共重合体である場合、エラストマー(E)は、例えば、リチウム触媒の存在下の不活性溶媒中で、上記オレフィンモノマーと、上記スチレンモノマーとをブロック重合することで製造することができる。
【0086】
エラストマー(E)中の複数のオレフィンユニットは、エチレンユニット、プロピレンユニット、ブチレンユニット、α-オレフィンユニット、ブタジエンユニット、水添ブタジエンユニット、イソプレンユニット及び水添イソプレンユニットからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。オレフィンユニットは、水添イソプレンユニットを含むことが特に好ましい。この場合、組成物(X)の安定性を向上させやすい。
【0087】
エラストマー(E)における、オレフィンユニットとスチレンユニットとの質量比率は、30:70から90:10の範囲内であることが好ましく、60:40から85:15の範囲内であることがより好ましい。この場合、共重合体(A1)と化合物(A2)との相溶性を特に向上させることができる。
【0088】
組成物(X)中のエラストマー(E)の量は、適宜設定されうる。特に組成物(X)が共重合体(A1)と化合物(A2)とエラストマー(E)とを含む場合、エラストマー(E)の量は、共重合体(A1)と化合物(A2)の合計100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましい。エラストマー(E)の量が5質量部以上であることにより、エラストマー(E)は共重合体(A1)と化合物(A2)との相溶性を十分に高めやすく、これにより、組成物(X)を安定してフィルム化することができる。エラストマー(E)の量が100質量部以下であることにより、硬化物の線膨張係数の上昇を抑制できると共に耐熱性及び難燃性を向上させることができる。
【0089】
組成物(X)は、無機充填材(F)を含有してもよい。無機充填材(F)は、硬化物の線膨張係数を低くでき、硬化物の誘電特性を更に改善でき、かつ硬化物の耐熱性及び難燃性を向上できる。
【0090】
無機充填材(F)は、例えばシリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、チッ化ホウ素、フォルステライト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。
【0091】
無機充填材(F)は、重合性不飽和基を有する表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。すなわち、無機充填材(F)の粒子は、その表面に、表面処理剤に由来する重合性不飽和基を有することが好ましい。重合性不飽和基は、例えばビニル基、アリル基、メタリクル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びマレイミドル基からなる少なくとも一種の基を含む。表面処理剤の例として、重合性不飽和基を有するシランカップリング剤が挙げられる。重合性不飽和基が含みうる基及び表面処理剤が含みうる成分は、前記には制限されない。
【0092】
無機充填材(F)が重合性不飽和基を有する表面処理剤で表面処理されていると、無機充填材(F)における重合性不飽和基が化合物(A)と反応しうるため、硬化物の架橋密度が増大しうる。そのため、無機充填材(F)は、硬化物の線膨張係数を更に低下させやすく、かつ硬化物のガラス転移温度を更に高めやすい。
【0093】
組成物(X)が無機充填材(F)を含有する場合、無機充填材(F)の量は、化合物(A)の合計100質量部に対して、30質量部以上500質量部以下であることが好ましい。無機充填材(F)の量が30質量部以上であると、無機充填材(F)は硬化物の線膨張係数を特に低くしやすく、硬化物の誘電特性を特に改善しやすく、かつ硬化物の耐熱性及び難燃性を特に向上しやすい。無機充填材(F)の量が500質量部以下であると、組成物(X)の成形時の流動性を維持しやすい。
【0094】
組成物(X)は、難燃剤(G)を含有してもよい。難燃剤(G)を含有すると、組成物(X)の難燃性を向上できる。
【0095】
本実施形態では、上述のとおり、有機ラジカル化合物(C)によって硬化物の難燃性が高められうるが、組成物(X)が難燃剤(G)を含有すると、硬化物の難燃性が更に高められうる。また、有機ラジカル化合物(C)によって硬化物の難燃性が高められているので、組成物(X)に難燃剤(G)を配合する場合の難燃剤(G)の量を少なくできる。
【0096】
難燃剤(G)は、臭素又はリンを含有する難燃剤(F1)を含むことができる。この場合、難燃剤(F1)は、硬化物の誘電率を低くしながら、硬化物の難燃性を向上させることができる。難燃剤(F1)は、臭素を含有する難燃剤(F11)及びリンを含有する難燃剤(F12)のうち少なくとも一方を含有することができる。
【0097】
難燃剤(F11)は、例えば、芳香族臭素化合物を含むことが好ましい。難燃剤(F11)は、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、及びエチレンビステトラブロモフタルイミドからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0098】
組成物(X)が難燃剤(F1)を含有する場合、組成物(X)に対する、難燃剤(F1)中の臭素の量は、8質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の難燃性を特に向上させられる、かつ硬化物の加熱時に硬化物から臭素が解離しにくくできる。
【0099】
難燃剤(F12)は、例えば、非相溶性リン化合物及び相溶性リン化合物のうち少なくとも一方を含有する。
【0100】
非相溶性リン化合物は、例えばジフェニルホスフィンオキサイド基を分子中に二つ以上有するホスフィンオキサイド化合物を含有することが好ましい。このホスフィンオキサイド化合物の融点は、280℃以上が好ましい。ホスフィンオキサイド化合物は、フェニレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、メチレン基、及びエチレン基からなる群から選択される一種以上の連結基で、二つ以上のジフェニルホスフィンオキサイド基が連結された構造の化合物を含有することが好ましい。
【0101】
相溶性リン化合物は、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、亜リン酸エステル化合物、及びホスフィン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0102】
組成物(X)が難燃剤(F12)を含有する場合、組成物(X)に対する、難燃剤(F12)中のリンの量は、2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。この場合、硬化物の難燃性を向上させることができ、かつ硬化物の加熱時に硬化物からリンが解離しにくくなる。
【0103】
組成物(X)は、溶剤を含有してもよい。溶剤は、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶解及びケトン系溶剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。組成物(X)が溶剤を含有すると、組成物(X)をシート状に成形する場合の成形性が向上しやすい。
【0104】
組成物(X)は上記以外の適宜の成分を含有してもよい。例えば組成物(X)は、シリコーン系消泡剤、アクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、並びに湿潤分散剤等の分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してよい。組成物(X)は、これら以外の成分を含有してもよい。
【0105】
本実施形態に係る樹脂シートは、組成物(X)の乾燥物又は半硬化物を含む。樹脂シートは、積層板及びプリント配線板を作製するための材料に適用できる。樹脂シートを硬化させることで、組成物(X)の硬化物を含む絶縁層を作製できる。
【0106】
樹脂シートを製造するためには、例えばまず組成物(X)をシート状に成形する。組成物(X)を成形する方法として塗布法等が挙げられるが、これに制限されない。続いて、組成物(X)を加熱することで乾燥させ又は半硬化させる。これにより、組成物(X)の乾燥物又は半硬化物を含む樹脂シートが得られる。加熱時の加熱温度は組成物(X)に含まれる溶剤を乾燥させ、又は組成物(X)を半硬化させることが可能な温度であれば良く、例えば100℃以上160℃以下である。加熱時の加熱時間は、例えば5分以上10分以下である。
【0107】
上記のとおり、樹脂シートを加熱して硬化させることで、組成物(X)の硬化物を含む絶縁層を作製できる。加熱時の加熱温度は例えば160℃以上220℃以下、好ましくは180℃以上220℃以下である。加熱時の加熱時間は例えば30分以上240分以下、好ましくは60分以上240分以下である。
【0108】
樹脂シートの最低溶融粘度を示す温度は、140℃以上であることが好ましい。この場合、樹脂シートを加熱して溶融させた場合の粘度を低く維持しやすい。この温度が160℃以上であれば更に好ましい。また、この最低溶融粘度を示す温度は、180℃以下であることが好ましい。この場合、樹脂シートを溶融させた後に硬化させるために必要な加熱温度が高くなりすぎないようにできる。また、樹脂シートの最低溶融粘度を示す温度は、上記の組成物(X)の組成によって実現可能である。なお、樹脂シートの最低溶融粘度を示す温度は、次の方法で確認できる。レオメータ(株式会社ユービーエム 型番 Rheosol G-3000)により、パラレルプレートを使用し昇温速度3℃/min、周波数0.009rad/s、の測定条件で、加熱幅50℃から250℃の範囲で樹脂シートの溶融粘度を測定する。これにより得られる温度と溶融粘度との関係を示す溶融粘度曲線から、最低溶融粘度を示す温度を確認できる。
【0109】
樹脂シートを、複数のプリント配線板などの基材を接着するためのボンディングシートとして使用することができる。具体的には、例えばまずポリエチレンテレフタレートなどから作製された支持フィルム8に、組成物(X)を塗布してシート状に成形してから、組成物(X)を乾燥又は半硬化させることによって樹脂シート7を作製する(
図1A参照)。次に、樹脂シート7をプリント配線板などの基材(第一基材91)に張り付けてから、樹脂シート7から支持フィルム8を剥がす。次に、第一基材91上の樹脂シート7に、別の基材(第二基材92)を重ねる。これにより、第一基材91、第二基材92、及び第一基材91と第二基材92との間に介在する樹脂シート7を含む、積層物が得られる。この積層物を熱プレスすることにより、樹脂シート7を溶融させてから硬化させて、絶縁層30(接着層)を作製する。これにより、第一基材91と第二基材92とが絶縁層30を介して接着される。この場合、第一基材91と第二基材92との少なくとも一方における樹脂シート7に重なる面が導体配線93を有していれば、樹脂シート7が導体配線93に重なった状態で溶融してから硬化するので、樹脂シート7から作製される絶縁層30は、導体配線93の隙間に十分に充填されやすい。このように樹脂シート7で基材を接着すると、例えば
図1Bに示すような多層のプリント配線板3を製造することができる。このプリント配線板3は、第一基材91に由来する絶縁層94及び導体配線93と、第二基材92に由来する絶縁層94及び導体配線93と、第一基材91と第二基材92との間に介在する樹脂シート7から作製された絶縁層30とを備える。
【0110】
樹脂付き金属箔1について説明する。樹脂付き金属箔1は、
図2Aに示すように、金属箔10と、金属箔10に重なる樹脂層20とを備え、樹脂層20が上述の樹脂シート7を含む。樹脂付き金属箔1から積層板又はプリント配線板を作製できる。
【0111】
金属箔10は、例えば銅箔である。金属箔10の厚みは例えば2μm以上105μm以下であり、好ましくは5μm以上35μm以下である。金属箔10は、例えば18μm厚銅キャリア箔付き2μm厚銅箔における銅箔であってもよい。
【0112】
図2Aに示す樹脂層20は、金属箔10に重なる第一の樹脂層21と、第一の樹脂層21に重なり、樹脂層20における金属箔10とは反対側の最外層である第二の樹脂層22とを含む。
【0113】
第二の樹脂層22は、樹脂シート7からなり、第一の樹脂層21は第二の樹脂層とは異なる組成を有する。この場合、樹脂層20及び樹脂層20から作製される絶縁層に、第一の樹脂層21の組成に応じた特性が付与される。例えば第一の樹脂層21は、絶縁層に良好な柔軟性を付与することで、樹脂付き金属箔1からフレキシブルな積層板又はプリント配線板を作製できる。
【0114】
第一の樹脂層21の厚みは、例えば1μm以上50μm以下である。第二の樹脂層22の厚みは、例えば5μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上150μm以下である。
【0115】
第一の樹脂層21は、例えば液晶ポリマー樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分(以下、特定樹脂成分ともいう)を含む。例えば第一の樹脂層21は、前述の成分を含む樹脂液又はシート材から作製される。シート材は、その内部にガラスクロス等の基材を有し、この基材で強化されていてもよい。シート材は、例えばプリプレグであってもよい。第一の樹脂層21は、例えば、金属箔10に樹脂液を塗布してから乾燥すること、又は金属箔10にシート材を重ねた後に熱プレスすることによって作製できる。
【0116】
第一の樹脂層21は、
図2Aに示すように単一の層でもよいが、複数の層で構成されていてもよい。例えば第一の樹脂層21が、
図2Bに示すように、互いに組成の異なる第一の層211及び第二の層212を含んでいてもよい。例えば第一の層211及び第二の層212の各々は特定樹脂成分を含み、かつ互いに組成が異なっている。なお、第一の樹脂層21は、三つ以上の層を含んでいてもよい。
【0117】
第二の樹脂層22は、上述のとおり、樹脂シート7からなる。例えば第一の樹脂層21の上に組成物(X)を塗布法等によりシート状に成形してから、加熱することで乾燥させ又は半硬化させることで、樹脂シート7からなる第二の樹脂層22を作製できる。
【0118】
樹脂層20は、樹脂シート7のみを含む単一の層であってもよい。この場合、例えば金属箔10上に組成物(X)を塗布法等によりシート状に成形してから、加熱することで乾燥させ又は半硬化させることで、樹脂シート7のみを含む樹脂層20を作製できる。
【0119】
本実施形態に係る積層板2について説明する。積層板2は、
図3A~
図3Dに示すように、絶縁層30と金属箔10とを備える。
【0120】
積層板2は、その最外層に金属箔10を備える。積層板2は、一つの金属箔10を備えてもよく、複数の金属箔10を備えてもよい。積層板2が複数の金属箔10を備える場合、積層板2は、その最外層に、複数の金属箔10のうちの一つを備える。
【0121】
絶縁層30は、組成物(X)の硬化物を含む。絶縁層30は特定樹脂成分を更に含んでもよい。
【0122】
積層板2は、
図3A及び
図3Bに示すように絶縁層30を一つのみ備えてもよく、
図3C及び
図3Dに示すように二以上の絶縁層30を備えてもよい。
【0123】
積層板2が絶縁層30を一つのみ備える場合、絶縁層30は、例えば組成物(X)の硬化物を含む層のみを備え、又は組成物(X)の硬化物を含む第二の層302と、それ以外の第一の層301とを備える。第一の層301は、例えば特定樹脂成分を含む。第一の層301の厚みは、例えば1μm以上50μm以下である。第二の層302の厚みは、例えば5μm以上50μm以下である。
【0124】
積層板2が二以上の絶縁層30を備える場合、二以上の絶縁層30の少なくとも一つが、組成物(X)の硬化物を含めばよい。また、二以上の絶縁層30の少なくとも一つが、特定樹脂成分を含んでもよい。二以上の絶縁層30のうち少なくとも一つが、組成物(X)の硬化物と、特定樹脂成分とを含んでもよい。この場合、二以上の絶縁層30のうち少なくとも一つが、上記の第一の層301と、第一の層301に重なる第二の層302とを備える層であってもよい。二以上の絶縁層30の各々が特定樹脂成分を含んでもよい。
【0125】
金属箔10の素材及び厚みは、上記の樹脂付き金属箔における金属箔10と同じでよい。
【0126】
積層板2が組成物(X)の硬化物を含む絶縁層30を備えることで、絶縁層30の耐熱性の向上、低線膨張係数化、及び難燃性の向上が実現されやすい。
【0127】
図3Aに示す積層板2は、金属箔10、第一の層301及び第二の層302を備え、これらがこの順に積層している。
図3Aに示す積層板2は、例えば上述の樹脂付き金属箔1を加熱することによって製造される。積層板2の製造方法はこれに制限されない。例えば金属箔10、第一の層301の成分を含有するシート材、及び上述の樹脂シート7を、この順に重ねてから、熱プレスすることによって積層板2を製造することもできる。なお、金属箔10、第二の層302及び第一の層301がこの順に積層していてもよい。第一の層301が二以上の層を含んでもよい。その場合、第一の層301内で直接接し合う二つの層は互いに異なる組成を有する。
【0128】
図3Bに示す積層板2は、金属箔10(第一の金属箔11)、絶縁層30、及び金属箔10(第二の金属箔12)を備え、これらがこの順に積層している。この積層板2は、例えば上述の樹脂付き金属箔1の樹脂層20に金属箔を重ねて熱プレスすることによって製造される。積層板2の製造方法はこれに制限されない。例えば第一の金属箔11、第一の層301の成分を含有するシート材、上述の樹脂シート7、及び第二の金属箔12を用意し、これらをこの順に積層してから、熱プレスすることで、積層板2を製造してもよい。
【0129】
図3Cに示す積層板2は、金属箔10(第一の金属箔11)と、絶縁層30(第一の絶縁層31)と、導体層50と、絶縁層30(第二の絶縁層32)とを、この順に積層して備える。第一の絶縁層31は、第一の層301と第二の層302とを備える。第一の絶縁層31の構成は、
図3Aに示す積層板2における絶縁層30と同じでよい。第二の絶縁層32は、例えば組成物(X)の硬化物、液晶ポリマー樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂及びポリフェニレンエーテル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含む。導体層50は、導体配線であるが、金属箔であってもよい。
【0130】
図3Cに示す積層板2を製造する場合、例えば第二の絶縁層32とこれに重なる導体層50(導体配線)とを備えるコア材を用意する。このコア材における導体層50側の面に、上述の樹脂付き金属箔1における樹脂層20を重ねる。この状態でコア材と樹脂付き金属箔1とを熱プレスすることで、積層板2を製造できる。この場合、熱プレスの際に、樹脂付き金属箔1の樹脂層20中の樹脂シート7が導体層50に重なった状態で溶融してから硬化するので、樹脂層20から作製される第一の絶縁層31は、導体層50の隙間に十分に充填されやすい。
【0131】
積層板2の製造方法は上記に制限されない。例えば金属箔10(第一の金属箔11)、第一の層301の成分を含有するシート材、上述の樹脂シート7、導体層50、及び第二の絶縁層32の成分を含有するシート材を用意する。これらを前記の順に重ねて熱プレスすることで、積層板2を製造できる。
【0132】
図3Dに示す積層板2は、金属箔10(第一の金属箔11)、絶縁層30(第一の絶縁層31)、導体層50、絶縁層30(第二の絶縁層32)及び金属箔10(第二の金属箔12)を、この順に積層して備える。第一の絶縁層31は、第一の層301と第二の層302とを備える。導体層50は導体配線であるが、金属箔であってもよい。すなわち、
図3Dに示す積層板2は、第二の金属箔12を更に備えること以外は、
図3Cに示す積層板2と同じ構成を有する。
【0133】
積層板2を製造する場合、例えば第二の金属箔12、第二の絶縁層32及び導体層50(導体配線)がこの順に積層した構造を有するコア材を用意する。このコア材における導体層50側の面に、上述の樹脂付き金属箔1における樹脂層20を重ねる。この状態でコア材と樹脂付き金属箔1とを熱プレスすることで、積層板2を製造できる。この場合、熱プレスの際に、樹脂付き金属箔1の樹脂層20中の樹脂シート7が導体層50に重なった状態で溶融してから硬化するので、樹脂層20から作製される第一の絶縁層31は、導体層50の隙間に十分に充填されやすい。
【0134】
積層板2の製造方法は上記に制限されない。例えば第一の金属箔11、第一の層301の成分を含有するシート材、上述の樹脂シート7、導体層50、第二の絶縁層の成分を含有するシート材及び第二の金属箔12を用意する。これらをこの順に積層して、熱プレスすることで、積層板2を製造できる。
【0135】
積層板2の構成は、
図3A~
図3Dに示す具体例に限られない。例えば、積層板2は、一以上の金属箔10と、二以上の導体層50と、三以上の絶縁層30とを備えてもよい。導体層50は、隣合う二つの絶縁層30の間に介在する。金属箔10は、積層板2の最外層にある。三以上の絶縁層30のうち少なくとも一つは、組成物(X)の硬化物を含む。三以上の絶縁層30のうち少なくとも一つは、例えば特定樹脂成分を含む。
【0136】
本実施形態に係るプリント配線板3について説明する。プリント配線板3は、
図4A~
図4Dに示すように、絶縁層30と導体配線60とを備える。プリント配線板3は、その最外層に導体配線60を備える。絶縁層30は、組成物(X)の硬化物を含む。この場合、絶縁層30の耐熱性の向上、低線膨張係数化、及び難燃性の向上が実現されやすい。
【0137】
プリント配線板3は、
図4A及び
図4Bに示すように、一つの絶縁層30を含んでいてもよく、
図4C及び
図4Dに示すように、複数の絶縁層30を含んでいてもよい。プリント配線板3が複数の絶縁層30を含む場合、少なくとも一つの絶縁層30が組成物(X)を含む。また少なくとも一つの絶縁層30が、特定樹脂成分を含むことが好ましい。
図4C及び
図4Dに示すプリント配線板3は、一以上の導体配線60と二以上の絶縁層30とを備えることから、多層プリント配線板4でもある。
【0138】
絶縁層30は、単一の層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
図4Aから
図4Dに示すプリント配線板3は、第一の層301と、第一の層301と重なる第二の層302とで構成された絶縁層30を含む。絶縁層30の構成は、上述の積層板2における絶縁層30と同様である。
【0139】
図4Aから
図4Dに示すプリント配線板3について、更に詳しく説明する。
【0140】
図4Aに示すプリント配線板3は、導体配線60、第一の層301、及び第二の層302を、この順に積層して備えている。このプリント配線板3は、金属箔10に代えて導体配線60を有する以外は、
図3Aに示す積層板2と同じ構成を有する。このプリント配線板3は、例えば
図3Aに示す積層板2における金属箔10の不要部分をエッチングなどで除去して導体配線60を作製することで、製造できる。
【0141】
図4Bに示すプリント配線板3は、導体配線60、絶縁層30、及び導体層50をこの順に積層して備えている。このプリント配線板3は、第一の金属箔11の代わりに導体配線60を含み、第二の金属箔12の代わりに導体層50(第二の導体層52)を含むこと以外は、
図3Bに示す積層板2と同様の構成を備える。このため、プリント配線板3は、例えば、
図3Bに示す積層板2における第一の金属箔11の不要部分をエッチングなどで除去して導体配線60を作製することで製造できる。
【0142】
図4Cに示すプリント配線板3は、導体配線60、絶縁層30(第一の絶縁層31)、導体層50、及び絶縁層30(第二の絶縁層32)を、この順に積層して備えている。このプリント配線板3は、金属箔10に代えて導体配線60を有する以外は、
図3Cに示す積層板2と同じ構成を有する。このプリント配線板3は、例えば、
図3Cに示す積層板2における金属箔10の不要部分をエッチング等により除去して導体配線60を作製することで、製造できる。
【0143】
図4Dに示すプリント配線板3は、導体配線60、絶縁層30(第一の絶縁層31)、導体層50(第一の導体層51)、絶縁層30(第二の絶縁層32)、及び導体層50(第二の導体層52)を、この順に積層して備える。このプリント配線板3は、第一の金属箔11の代わりに導体配線60を含み、第二の金属箔12の代わりに導体層50(第二の導体層52)を含むこと以外は、
図3Dに示す積層板2と同様の構成を備える。このプリント配線板3は、例えば、
図3Dに示す積層板2における第一の金属箔11の不要部分をエッチングなどで除去して導体配線60を作製することで製造できる。
【0144】
図4C及び
図4Dに示すプリント配線板3は、二つの絶縁層30を備えているが、これに限られない。例えばプリント配線板3が、3つ以上の絶縁層30を備えていてもよい。
【実施例】
【0145】
1.組成物の調製及び樹脂シートの作製
表1~4中の「組成」の欄に示す成分を、トルエンに溶解させることで、固形分濃度25質量%の組成物を得た。コンマコーター及びこれに接続された乾燥機を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に組成物を塗布してから、組成物を110℃で5分間加熱することで、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に厚み50μmの樹脂シートを作製した。
【0146】
なお、表1~4に示す成分の詳細は次の通りである。
・共重合体1:エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)15、エチレン含有量72%、ジエン含有量3.6%、三井化学株式会社製、X-3012P。
・共重合体2:エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)20、エチレン含有量77%、ジエン含有量10.4%、三井化学製、K-9720。
・PPE1:末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(スチリル変性ポリフェニレンエーテル化合物)、数平均分子量1200、三菱瓦斯化学株式会社製、OPE-2St 1200。
・PPE2:末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(スチリル変性ポリフェニレンエーテル化合物)、数平均分子量2400三菱瓦斯化学株式会社製、OPE-2St 2400。
・PPE3:末端変性ポリフェニレンエーテル化合物(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル化合物)、数平均分子量1600、SABIC社製、SA-9000。
・不飽和化合物1:トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製、TAIC。
・不飽和化合物2:ビスマレイミド、DESIGNER MOLECULES製、BMI-689。
・不飽和化合物3:1-オクタデセン。
・不飽和化合物4:1,3-ジイソプロペニルベンゼン。
・不飽和化合物5:ジシクロペンタニルメタクリレート。
・不飽和化合物6:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・熱ラジカル重合開始剤1:ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、日油製、パーヘキシルD。
・熱ラジカル重合開始剤2:ジ-t-アミルパーオキサイド、アルケマ吉富製、ルペロックスDTA。
・熱ラジカル重合開始剤3:1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、アルケマ吉富製、ルペロックス531。
・熱ラジカル重合開始剤4:α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、日油株式会社製、品名パーブチルP。
・有機ラジカル化合物1:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、TCI製。
・有機ラジカル化合物2:4-ヒドロキシ‐2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、TCI製。
・有機ラジカル化合物3:セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル‐4ピペリジル‐1-オキシル、TCI製。
・金属不活性化剤:N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、アデカ製、アデカスタブCDA-6。
・エラストマー1:スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体、クラレ製、セプトンV9827。
・エラストマー2:スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体、クラレ製、セプトン8007。
・エラストマー3:スチレン系エラストマー、デンカ製、SEポリマー。
・無機充填材:ビニルシランにより表面処理された球状シリカ、株式会社アドマテックス製、品番0.5μmSV-CT1(25%トルエン含有スラリー)。
・難燃剤:リン含有難燃剤、第一工業製薬製、PQ-60。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Pentaerythritoltetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])、アデカ製、AO-60。
【0147】
2.評価
樹脂シートを、下記の方法で評価した。
【0148】
(1)最低溶融粘度を示す温度
レオメータ(株式会社ユービーエム 型番 Rheosol G-3000)により、パラレルプレートを使用し昇温速度3℃/min、周波数0.009rad/s、の測定条件で、加熱幅50℃から250℃の範囲で、樹脂シートの溶融粘度を測定した。これにより得られる温度と溶融粘度との関係を示す溶融粘度曲線から、最低溶融粘度を示す温度を確認した。
【0149】
(2)誘電特性(比誘電率、誘電正接及びΔDf)
厚み18μmの二つの銅箔を、その光沢面同士が対向するように配置し、二つの銅箔の間に樹脂シートを配置した。これらを200℃、2MPaの条件で1時間加熱プレスすることで、評価用のサンプルを作製した。このサンプルにエッチング処理を施すことで両面の銅箔を除去することで、樹脂シートの硬化物からなる試験片を作製した。この試験片の、試験周波数10GHzの場合での比誘電率及び誘電正接を、IPC TM-650 2.5.5.5に基づいて測定した。
【0150】
また、サンプルを150℃で200時間加熱してから、上記と同様にサンプルの誘電正接を測定した。この結果から、加熱による誘電正接の変化量(ΔDf)を求めた。ΔDfの値が小さいほど、誘電正接の熱時安定性が高いと判断できる。
【0151】
(3)線膨張係数評価及びガラス転移温度評価
樹脂シートを、真空下、200℃で120分加熱することで得られた硬化物をカットすることで、平面視5mm×20mmの寸法の評価用のサンプルを作製した。このサンプルの線膨張係数及びガラス転移温度を、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「TMA/SS6100」)を用いて、チャック間長15mm、荷重10g、350℃までの昇温速度10℃/minの条件で、測定した。なお、熱膨張係数(α1)は硬化物のガラス転移温度未満での線膨張係数の値であり、熱膨張係数(30-250℃平均)は30℃から250℃までの範囲内での測定結果から算出した熱膨張係数の平均値である。熱膨張係数(α1)が40ppm/℃以下であれば線膨張係数の増大が抑制されていると評価でき、また熱膨張係数(30-250℃平均)が50ppm/℃以下であれば線膨張係数の増大が抑制されていると評価できる。
【0152】
(4)難燃性
複数の樹脂シートを、総厚みが200μmとなるように積層し、真空下、200℃で120分加熱することで硬化物を作製した。この硬化物をカットすることで、平面視125mm×13mmの寸法の評価用のサンプルを作製した。このサンプルの難燃性を、UL94規格に従って測定した。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
上記結果に示されるように、ラジカル重合性不飽和化合物(A)と有機ラジカル化合物(C)とを含有する実施例1~24では、最低溶融粘度を示す温度が比較例1~4のいずれよりも高く、そのため加熱された場合に溶融粘度が低い状態を維持しやすい。さらに、実施例1~24では、低い比誘電率、低い誘電正接、高い誘電正接の熱時安定性、高いガラス転移温度及び高い難燃性を、実現できた。