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特許7450231受信器、受信システム、送信器、受信方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】受信器、受信システム、送信器、受信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H04B7/08 422
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021567593
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2020048353
(87)【国際公開番号】W WO2021132430
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2019233423
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 真理
(72)【発明者】
【氏名】松本 一弘
(72)【発明者】
【氏名】柴野 伸之
(72)【発明者】
【氏名】本間 尚樹
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0337739(US,A1)
【文献】特開2017-216567(JP,A)
【文献】特開2013-164333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナから入力される前記無線信号に基づく複数の入力信号に対して合成処理を行い、前記無線信号の到来方向を推定するための合成信号を生成する位相合成部と、
前記合成信号を出力する出力部と、
前記無線信号の受信から前記合成信号を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う変更部と、
前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替える切替部と、
を備え、
前記位相合成部は、前記変更部による前記変更処理前に、前記合成信号として第1合成信号を生成し、かつ、前記変更部による前記変更処理後に、前記合成信号として第2合成信号を生成し、
前記出力部は、前記第1合成信号と前記第2合成信号とを出力し、
前記位相合成部は、
前記切替部を介して前記複数のアンテナのうちの一のアンテナと電気的に接続され前記無線信号が入力される第1入力部及び第2入力部を有し、
前記合成処理において前記複数の入力信号のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行い、
前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替えるように前記切替部を制御する処理を行い
前記接続状態には第1接続状態と第2接続状態とがあり、
前記第1接続状態では、前記一のアンテナと前記第2入力部とが前記切替部を介して電気的に接続され、
前記第2接続状態では、前記一のアンテナと前記第1入力部とが前記切替部を介して電気的に接続される、
受信器。
【請求項2】
前記位相合成部は、前記第1入力部及び前記第2入力部を含む複数の入力部を有し、
前記複数のアンテナの数は、前記複数の入力部の数以下である、
請求項1に記載の受信器。
【請求項3】
前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記複数のアンテナが前記無線信号を受信する際の時間に係る設定を変更する処理を行う、
請求項1又は2に記載の受信器。
【請求項4】
前記複数のアンテナは、前記無線信号として、互いに周波数帯の異なる複数の無線信号を受信可能であり、
前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記合成処理の対象となる前記無線信号の周波数帯を切替える処理を行う、
請求項1から3のいずれか1項に記載の受信器。
【請求項5】
前記複数のアンテナの各々は、前記無線信号として、互いに異なる複数の偏波を受信可能であり、
前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記合成処理の対象となる前記無線信号の偏波の種類を切替える処理を行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載の受信器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の受信器と、
前記受信器から出力される前記第1合成信号及び前記第2合成信号に基づいて、前記無線信号の到来方向を推定する推定部と、
を備える、
受信システム。
【請求項7】
複数の元信号に基づく複数の入力信号に対して合成処理を行い、複数の無線信号を生成する位相合成部と、
前記複数の無線信号を送信する複数のアンテナと、
前記複数の元信号の受け付けから前記複数の無線信号を送信するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う変更部と、
前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替える切替部と、
を備え、
前記位相合成部は、
前記変更部による前記変更処理前に、前記複数の無線信号として複数の第1無線信号を生成し、かつ、前記変更部による前記変更処理後に、前記複数の無線信号として複数の第2無線信号を生成し、
前記切替部を介して前記複数のアンテナのうちの一のアンテナと電気的に接続され前記複数の無線信号を出力する第1出力部及び第2出力部を有し、
前記複数のアンテナは、前記複数の第1無線信号と前記複数の第2無線信号とを送信し、
前記位相合成部は、前記合成処理において前記複数の入力信号のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行い、
前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替えるように前記切替部を制御する処理を行い、
前記接続状態には第1接続状態と第2接続状態とがあり、
前記第1接続状態では、前記一のアンテナと前記第2出力部とが前記切替部を介して電気的に接続され、
前記第2接続状態では、前記一のアンテナと前記第1出力部とが前記切替部を介して電気的に接続される、
送信器。
【請求項8】
複数のアンテナと、位相合成部と、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替える切替部と、を備える受信システムにて用いられる受信方法であって、
前記複数のアンテナにて、無線信号を受信する受信ステップと、
前記位相合成部にて、前記無線信号に基づく複数の入力信号に対して合成処理を行い、前記無線信号の到来方向を推定するための第1合成信号を生成する第1の位相合成ステップと、
前記第1の位相合成ステップにおいて生成した前記第1合成信号を出力する第1の出力ステップと、
前記受信ステップから前記第1の位相合成ステップまでの処理に係る少なくとも1つ要素を変更する変更ステップと、
前記変更ステップの後に、前記第1の位相合成ステップにおいて生成した前記第1合成信号とは異なる第2合成信号を生成する第2の位相合成ステップと、
前記第2の位相合成ステップにおいて生成した前記第2合成信号を出力する第2の出力ステップと、
を有し、
前記位相合成部は、前記切替部を介して前記複数のアンテナのうちの一のアンテナと電気的に接続され前記無線信号が入力される第1入力部及び第2入力部を有し、
前記第1の位相合成ステップ及び前記第2の位相合成ステップでは、前記複数の入力信号のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行い、
前記変更ステップでは、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替えるように前記切替部を制御し、
前記接続状態には第1接続状態と第2接続状態とがあり、
前記第1接続状態では、前記一のアンテナと前記第2入力部とが前記切替部を介して電気的に接続され、
前記第2接続状態では、前記一のアンテナと前記第1入力部とが前記切替部を介して電気的に接続される、
受信方法。
【請求項9】
請求項8に記載の受信方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は受信器、受信システム、送信器、受信方法及びプログラムに関し、より詳細には、複数の信号を生成する受信器、受信システム、送信器、受信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の通信端末装置(受信器)は、受信信号強度(RSSI)に基づいて、ビーコン装置(送信器)が送信したビーコン信号(無線信号)の到来方向を推定する。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の通信端末装置(受信器)では、マルチパスが生じることによって、ビーコン信号の到来方向を推定する際に誤差が生じることがある。このため、ビーコン信号の到来方向の推定精度の向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-216567号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示は、上記事由に鑑みてなされており、無線信号の到来方向の推定精度を向上させることができる受信器、受信システム、送信器、受信方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る受信器は、複数のアンテナと、位相合成部と、出力部と、変更部と、切替部と、を備える。前記複数のアンテナは、無線信号を受信する。前記位相合成部は、前記複数のアンテナから入力される前記無線信号に基づく複数の入力信号に対して合成処理を行い、前記無線信号の到来方向を推定するための合成信号を生成する。前記出力部は、前記合成信号を出力する。前記変更部は、前記無線信号の受信から前記合成信号を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。前記切替部は、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替える。前記位相合成部は、前記変更部による前記変更処理前に、前記合成信号として第1合成信号を生成する。また、前記位相合成部は、前記変更部による前記変更処理後に、前記合成信号として第2合成信号を生成する。前記出力部は、前記第1合成信号と前記第2合成信号とを出力する。前記位相合成部は、前記切替部を介して前記複数のアンテナのうちの一のアンテナと電気的に接続され前記無線信号が入力される第1入力部及び第2入力部を有する。前記位相合成部は、前記合成処理において前記複数の入力信号のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行う。前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替えるように前記切替部を制御する処理を行う。前記接続状態には第1接続状態と第2接続状態とがある。前記第1接続状態では、前記一のアンテナと前記第2入力部とが前記切替部を介して電気的に接続される。前記第2接続状態では、前記一のアンテナと前記第1入力部とが前記切替部を介して電気的に接続される。
【0007】
本開示の一態様に係る送信器は、位相合成部と、複数のアンテナと、変更部と、切替部と、を備えている。前記位相合成部は、複数の元信号に基づく複数の入力信号に対して合成処理を行い、複数の無線信号を生成する。前記複数のアンテナは、前記複数の無線信号を送信する。前記変更部は、前記複数の元信号の受け付けから前記複数の無線信号を送信するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。前記切替部は、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替える。前記位相合成部は、前記変更部による前記変更処理前に、前記複数の無線信号として複数の第1無線信号を生成する。また、前記位相合成部は、前記変更部による前記変更処理後に、前記複数の無線信号として複数の第2無線信号を生成する。前記位相合成部は、前記切替部を介して前記複数のアンテナのうちの一のアンテナと電気的に接続され前記複数の無線信号を出力する第1出力部及び第2出力部を有し前記複数のアンテナは、前記複数の第1無線信号と前記複数の第2無線信号とを送信する。前記位相合成部は、前記合成処理において前記複数の入力信号のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行う。前記変更部は、前記変更処理の少なくとも一部として、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替えるように前記切替部を制御する処理を行う。前記接続状態には第1接続状態と第2接続状態とがある。前記第1接続状態では、前記一のアンテナと前記第2出力部とが前記切替部を介して電気的に接続される。前記第2接続状態では、前記一のアンテナと前記第1出力部とが前記切替部を介して電気的に接続される。
【0008】
本開示の一態様に係る受信方法は、受信システムにて用いられる方法である。前記受信システムは、複数のアンテナと、位相合成部と、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替える切替部と、を備える。前記受信方法は、受信ステップと、第1の位相合成ステップと、第1の出力ステップと、変更ステップと、第2の位相合成ステップと、第2の出力ステップとを有する。前記受信ステップでは、前記複数のアンテナにて、無線信号を受信する。前記第1の位相合成ステップでは、前記位相合成部にて、前記無線信号に基づく複数の入力信号に対して合成処理を行い、前記無線信号の到来方向を推定するための第1合成信号を生成する。前記第1の出力ステップでは、前記第1の位相合成ステップにおいて生成した前記第1合成信号を出力する。前記変更ステップでは、前記受信ステップから前記第1の位相合成ステップまでの処理に係る少なくとも1つ要素を変更する。前記第2の位相合成ステップでは、前記変更ステップの後に、前記第1の位相合成ステップにおいて生成した前記第1合成信号とは異なる第2合成信号を生成する。前記第2の出力ステップでは、前記第2の位相合成ステップにおいて生成した前記第2合成信号を出力する。前記位相合成部は、前記切替部を介して前記複数のアンテナのうちの一のアンテナと電気的に接続され前記無線信号が入力される第1入力部及び第2入力部を有する。前記第1の位相合成ステップ及び前記第2の位相合成ステップでは、前記複数の入力信号のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行う。前記変更ステップでは、前記複数のアンテナと前記位相合成部との電気的な接続状態を切替えるように前記切替部を制御する。前記接続状態には第1接続状態と第2接続状態とがある。前記第1接続状態では、前記一のアンテナと前記第2入力部とが前記切替部を介して電気的に接続される。前記第2接続状態では、前記一のアンテナと前記第1入力部とが前記切替部を介して電気的に接続される。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記受信方法を、1以上のプロセッサに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態の受信システム及び送信器の概要を示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態の受信システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、第2実施形態の受信システム及び送信器の概要を示す概略図である。
図4図4は、第2実施形態の送信器の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、共通する要素についての重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)
(1)概要
まず、本実施形態に係る受信器、受信システム、送信器、受信方法及びプログラムの概要について、図1を参照して説明する。本実施形態の送信器4は、例えばBLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)(以下、「BLE」と記載する。)の規格に従ったビーコン信号(無線信号)を送信するビーコン装置などで構成される。ただし、送信器4は、BLEの規格に従ったビーコン信号を送信するビーコン装置に限られない。送信器4は、例えばWiFi(登録商標)の規格に従った無線信号を送信する装置であってもよい。
【0013】
受信システム1は、送信器4が送信する無線信号を受信するための複数(図示例では3つ)のアンテナ11を備えている。本実施形態の複数のアンテナ11は、アンテナ11aとアンテナ11bとアンテナ11cとを含むアレーアンテナである。以下の説明において、特定のアンテナ11について説明する場合は、アンテナ11a,11b,11cを区別して記載する。また、複数のアンテナ11を区別せずに説明する場合は、単にアンテナ11と記載する。
【0014】
本実施形態の受信システム1は、複数のアンテナ11でBLEの規格に従った無線信号を受信可能なシステムで構成される。ただし、受信システム1は、BLEの規格に従った無線信号を受信可能なシステムに限られない。受信システム1は、例えばWiFiの規格に従った無線信号を受信可能なシステムであってもよい。本実施形態の受信システム1は、複数のアンテナ11で受信した無線信号の受信信号強度(RSSI)に基づいて、無線信号を送信した送信器4の位置方向を推定する。
【0015】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る受信システム1の詳細について図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0016】
(2.1)受信システム1の構成
図2に示すように、本実施形態の受信システム1は、受信器2と、推定部3とを備える。受信器2は、送信器4が送信する無線信号を受信する。受信器2は、無線信号を受信すると、無線信号に基づいて、無線信号の到来方向を推定するための合成信号SS1~SS4を生成する。また、受信器2は、無線信号の受信から合成信号SS1~SS4を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。受信器2が無線信号に基づいて生成する合成信号SS1~SS4は、変更処理を行う前後で異なった合成信号SS1~SS4となる。受信器2は、変更処理の前後の合成信号SS1~SS4を推定部3に出力する。
【0017】
推定部3は、受信器2から出力される変更処理の前後の合成信号SS1~SS4に基づいて無線信号の到来方向を推定する。推定部3が無線信号の到来方向を推定する方法については、「(3)到来方向推定」の欄で説明する。
【0018】
(2.2)受信器2の構成
受信器2は、図2に示すように、複数のアンテナ11と、切替部12と、位相合成部13と、出力部14と、変更部15とを備える。
【0019】
複数のアンテナ11は切替部12と電気的に接続されている。複数のアンテナ11の各々は、送信器4が送信する無線信号を受信する。
【0020】
切替部12は、複数のアンテナ11と位相合成部13との間に電気的に接続され、複数のアンテナ11と位相合成部13との電気的な接続状態を切替える処理部である。切替部12は、スイッチ16aとスイッチ16bとスイッチ16cとを含んでいる。以下の説明において、スイッチ16a,16b,16cを区別せずに説明する場合は、単にスイッチ16と記載する。また、特定のスイッチ16について説明する場合は、スイッチ16a,16b,16cを区別して記載する。
【0021】
切替部12は、変更部15に制御されることにより、スイッチ16a~16cの切替え動作を行う。本実施形態のスイッチ16bは、変更部15による制御に応じて、アンテナ11bと、位相合成部13に含まれる位相合成器17bの第1入力端子I1と第2入力端子I2とのうちの一方とを電気的に接続する。以下の説明において、スイッチ16bによってアンテナ11bと位相合成器17bの第1入力端子I1とが電気的に接続されている状態を、「第1接続状態」と記載する。また、スイッチ16bによってアンテナ11bと位相合成器17bの第2入力端子I2とが電気的に接続されている状態を、「第2接続状態」と記載する。
【0022】
スイッチ16aは、アンテナ11aと位相合成器17aの第1入力端子I1とが常に電気的に接続された状態となるように制御される。すなわち、本実施形態のスイッチ16aは切替え動作を行わない。そのため、スイッチ16aは、アンテナ11aと、位相合成器17aの第1入力端子I1とを接続する単なる電気的経路であってもよい。
【0023】
また、スイッチ16cは、アンテナ11cと位相合成器17cの第2入力端子I2とが常に電気的に接続された状態となるように制御される。すなわち、本実施形態のスイッチ16cは切替え動作を行わない。そのため、スイッチ16cは、アンテナ11cと、位相合成器17cの第2入力端子I2とを接続する単なる電気的回路であってもよい。
【0024】
ただし、アンテナ11aから位相合成器17aまでの電気的経路の長さ、アンテナ11bから位相合成器17bまでの電気的経路の長さ、及び、アンテナ11cから位相合成器17cまでの電気的経路の長さは、同じ長さであることが好ましい。各アンテナ11a~11cから各位相合成器17a~17cまでの各電気的経路の長さが異なっていると、無線信号の到来方向を推定する際の精度が低下するからである。そこで、本実施形態は、スイッチ16a、スイッチ16b、及びスイッチ16cを同じスイッチ16で構成している。
【0025】
位相合成部13は、複数のアンテナ11から入力される無線信号に基づく複数の入力信号IS1~IS3(信号IS4~IS7)に対して合成処理を行い、無線信号の到来方向を推定するための合成信号SS1~SS4を生成する処理部である。また、本実施形態の位相合成部13は、スイッチ16bが切替えられる前後で異なった合成信号SS1~SS4を生成する。ここで、第1接続状態において、位相合成部13が生成する合成信号SS1~SS4を第1合成信号SS1~SS4とする。また、第2接続状態において、位相合成部13が生成する合成信号SS1~SS4を第2合成信号SS1~SS4とする。
【0026】
位相合成部13は、位相合成器17aと、位相合成器17bと、位相合成器17cと、位相合成器17dと、位相合成器17eとを備えている。以下の説明において、位相合成器17a,17b,17c,17d,17eを区別せずに説明する場合は、単に位相合成器17と記載する。位相合成器17は、例えば90度ハイブリッドユニット(ハイブリッド素子)などで構成される。本実施形態の位相合成器17は、第1入力端子I1及び第2入力端子I2に入力される無線信号に基づく入力信号IS1~IS3と比べて、電力値が1/√2倍の信号を第1出力端子O1及び第2出力端子O2から出力する。また、位相合成器17は、第1入力端子I1に入力される無線信号に基づく入力信号IS1~IS3と比べて、同位相の信号を第1出力端子O1から出力し、位相が90度遅れた信号を第2出力端子O2から出力する。
【0027】
位相合成器17aは、第1入力端子I1に入力される無線信号に基づく入力信号IS1と比べて、電力値が1/√2倍で同相の信号IS4を第1出力端子O1から出力する。
【0028】
位相合成器17bは、接続状態に応じて、アンテナ11bと電気的に接続される入力端子が異なる。第1接続状態では、第1入力端子I1に無線信号に基づく入力信号IS2が入力される。この場合、位相合成器17bは、入力信号IS2と比べて、電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号IS5を、第2出力端子O2から出力する。また、位相合成器17bは、入力信号IS2と比べて、電力値が1/√2倍で同位相の信号IS6を、第1出力端子O1から出力する。
【0029】
第2接続状態では、第2入力端子I2に入力信号IS2が入力される。この場合、位相合成器17bは、入力信号IS2と比べて、電力値が1/√2倍で同位相の信号IS5を、第2出力端子O2から出力する。また、位相合成器17bは、入力信号IS2と比べて、電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号IS6を、第1出力端子O1から出力する。
【0030】
位相合成器17cは、第2入力端子I2に入力される無線信号に基づく入力信号IS3と比べて、電力値が1/√2倍で同相の信号IS7を第2出力端子O2から出力する。
【0031】
位相合成器17dは、第2入力端子I2で信号IS4を受け付け、第1入力端子I1で信号IS5を受け付ける。位相合成器17dは、信号IS4と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、信号IS5と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、を足し合わせた合成信号SS1を第1出力端子O1から出力する。また、位相合成器17dは、信号IS4と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、信号IS5と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、を足し合わせた合成信号SS2を第2出力端子O2から出力する。
【0032】
位相合成器17eは、第2入力端子I2で信号IS6を受け付け、第1入力端子I1で信号IS7を受け付ける。位相合成器17eは、信号IS6と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、信号IS7と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、を足し合わせた合成信号SS3を第1出力端子O1から出力する。また、位相合成器17eは、信号IS6と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、信号IS7と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、を足し合わせた合成信号SS4を第2出力端子O2から出力する。
【0033】
変更部15は、無線信号の受信から合成信号SS1~SS4を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う処理部である。本実施形態の変更部15は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ11と位相合成部13との電気的な接続状態を切替えるように切替部12を制御する処理を行う。具体的には、変更部15は、スイッチ16bを切替える制御を行うことで、アンテナ11bと位相合成器17bとの電気的な接続状態を切替える。以下の説明において、変更部15が変更処理を行うまでは、アンテナ11bと位相合成器17bとの接続状態が第1接続状態であるとする。また、変更部15が変更処理を行った後は、アンテナ11bと位相合成器17bとの接続状態が第2接続状態であるとする。変更部15は、変更処理を所定のタイミングで行う。所定のタイミングは、例えば、位相合成部13が合成信号SS1~SS4を出力したタイミングや、送信器4が無線信号を送信する間隔に応じて設定される一定のタイミングなどである。
【0034】
出力部14は、位相合成部13によって生成される合成信号SS1~SS4を、推定部3に出力する。具体的には、出力部14は、変更部15によって変更処理が行われる前に位相合成部13によって生成される第1合成信号SS1~SS4と、変更部15によって変更処理が行われる前に位相合成部13によって生成される第2合成信号SS1~SS4とを推定部3に出力する。
【0035】
(3)到来方向推定
次に、推定部3が無線信号の到来方向を推定する方法について図1及び図2を参照しつつ説明する。図1に示すように、アンテナ11aと送信器4の送信アンテナとの間の複素伝播チャネルをh1、アンテナ11bと送信アンテナとの間の複素伝播チャネルをh2、アンテナ11cと送信アンテナとの間の複素伝播チャネルをh3とする。また、アンテナ11aとアンテナ11bとの距離、及び、アンテナ11bとアンテナ11cとの距離をd1とする。また、アンテナ11aとアンテナ11bとアンテナ11cとで構成されるアレーアンテナのブロードサイド方向を基準として角度θ1の位置に送信器4が存在するものとする。まず、推定部3が、第1合成信号SS1~SS4に基づいて、無線信号の到来方向を推定する場合について説明する。
【0036】
伝播チャネルはまとめて、式(1)と表すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
この伝播チャネルの相関行列は、式(2)と表すことができる。
【0039】
【数2】
【0040】
ここで、記号Hは複素共役転置を、記号*は複素共役を表す。通常、相関行列Rの対角項は実数となり、非対角項は複素数となる。相関行列Rを求めることで、推定部3は、無線信号の到来方向を推定することができる。推定部3は、受信信号強度に関する情報に基づいて、相関行列Rを求める。
【0041】
式(1)の伝播チャネルを用いると、推定部3に入力される複数の第1合成信号SS1~SS4の振幅は、式(3)~式(6)と表すことができる。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
【数5】
【0045】
【数6】
【0046】
|y1|は、位相合成器17dの第1出力端子O1から出力される合成信号SS1の振幅を表している。|y2|は、位相合成器17dの第2出力端子O2から出力される合成信号SS2の振幅を表している。|y3|は、位相合成器17eの第1出力端子O1から出力される合成信号SS3の振幅を表している。|y4|は、位相合成器17eの第2出力端子O2から出力される合成信号SS4の振幅を表している。また、受信信号強度から式(3)~(6)の左辺のチャネルの利得は、式(7)~式(10)と表すことができる。
【0047】
【数7】
【0048】
【数8】
【0049】
【数9】
【0050】
【数10】
【0051】
位相合成器17dを介して得られる利得の差に注目すると、式(11)の関係より、式(12)と表すことができる。
【0052】
【数11】
【0053】
【数12】
【0054】
R12及びR21の実部を求めることができる。ここで、αはR12の偏角を表す。
【0055】
また、位相合成器17dを介して得られる利得の和に注目すると、相加相乗平均の関係より、式(13)と表すことができる。
【0056】
【数13】
【0057】
ここで、送信器4の送信アンテナからアンテナ11aまでの伝播損と、送信アンテナからアンテナ11bまでの伝播損とが等しく、|h1|と|h2|とがほぼ等しいとする。|h1|と|h2|とがほぼ等しい場合、R12の偏角であるαは、式(14)と表すことができる。
【0058】
【数14】
【0059】
また、|h1|と|h2|とがほぼ等しい場合、式(15)と表すことができる。
【0060】
【数15】
【0061】
ここでAは実数の定数である。式(2)に示される相関行列Rのうち、位相合成器17dから出力される合成信号SS1,SS2に関する相関行列をR1と定義する。相関行列R1をA及びαを用いて表すと、式(16)と表すことができる。
【0062】
【数16】
【0063】
次に、位相合成器17eを介して得られる利得の差に注目すると、式(17)と表すことができる。
【0064】
【数17】
【0065】
R23及びR32の虚部を求めることができる。ここで、βはR23の偏角を表す。また、位相合成器17eを介して得られる利得の和に注目すると、相加相乗平均の関係より、式(18)と表すことができる。
【0066】
【数18】
【0067】
ここで、送信器4の送信アンテナからアンテナ11bの伝播損と、送信アンテナからアンテナ11cの伝播損とが等しく、|h2|と|h3|とがほぼ等しいとする。|h2|と|h3|とがほぼ等しい場合、R23の偏角であるβは、式(19)と表すことができる。
【0068】
【数19】
【0069】
同様に、|h2|と|h3|とがほぼ等しい場合、式(20)と表すことができる。
【0070】
【数20】
【0071】
ここで、Bは実数の定数である。相関行列Rのうち、位相合成器17eから出力される合成信号SS3,SS4に関する相関行列をR2と定義する。相関行列R2をB及びβを用いて表すと、式(21)となり、相関行列Rが推定される。
【0072】
【数21】
【0073】
ここで、偏角がαとβとでそれぞれ2通りずつ推定されるため、4通りの解が推定されることとなる。したがって、αとβの解を選択する必要がある。ここで、αとβの解として、αとβの差が最も小さい解の組合せを選択する。送信器4の送信アンテナと、アンテナ11a,11b,11cとは十分に離れており、アンテナ11a,11b,11cから見た送信器4の送信アンテナの方向は全て等しくθとみなすことができる(図1参照)。また、アンテナ11aとアンテナ11bとアンテナ11cとは等間隔d1で整列している。そのため、h1とh2との間の位相遅延の差と、h2とh3との間の位相遅延の差とは等しくなる。ここで、αはh1とh2との間の位相遅延の差を表しており、βはh2とh3との間の位相遅延の差を表している。すなわち、αとβとは一致しているとみなすことができる。したがって、αとβの解として、αとβの差が最も小さい解の組合せを選択することで、2通りの解に絞り込むことができる。
【0074】
また、R13は、アンテナ11aとアンテナ11cとの間の無線信号の相関を表している。R13は、求めた|R23|を用いて、式(22)と表すことができる。
【0075】
【数22】
【0076】
以上より、推定された相関行列Rは、式(23)と表すことができる。
【0077】
【数23】
【0078】
推定部3は、相関行列RにMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法などを用いることにより、送信器4の方向推定を行う。相関行列Rを用いた方向推定には様々なアルゴリズムが存在するが、本実施形態では、推定部3がMUSIC法を用いた方向推定を行う場合を例示する。
【0079】
相関行列Rは、固有値分解によって、式(24)で表すことができる。
【0080】
【数24】
【0081】
ここで、式(25)、式(26)であり、diag[]は対角行列を表す。
【0082】
【数25】
【0083】
【数26】
【0084】
また、v1,v2,v3は、それぞれ第1、第2、第3固有ベクトルである。また、λ1、λ2,λ3は、それぞれ第1、第2、第3固有値であり、式(27)であるものとする。
【0085】
【数27】
【0086】
また、λ1は信号を含んだ電力に対応し、λ2及びλ3は雑音電力に対応するものとする。MUSIC法では、このような固有ベクトルを用いた評価式である式(28)を用いて、無線信号の到来方向を推定する。
【0087】
【数28】
【0088】
ここで、式(29)はステアリングベクトルと呼ばれる。
【0089】
【数29】
【0090】
dはアンテナの間隔、λは波長である。推定部3は、式(28)のθ0に様々な値を代入し、Pmusicが最大になる方向が無線信号の出発方向であると判断する。以下の説明において、推定部3が第1合成信号SS1~SS4に基づいて推定した到来方向を「第1推定方向」と記載する。
【0091】
次に、推定部3は第2合成信号SS1~SS4に基づいて、無線信号の到来方向を推定する。式(1)の伝播チャネルを用いると、推定部3に入力される複数の第2合成信号SS1~SS4の振幅は、式(30)~式(33)と表すことができる。
【0092】
【数30】
【0093】
【数31】
【0094】
【数32】
【0095】
【数33】
【0096】
|y1a|は、位相合成器17dの第1出力端子O1から出力される合成信号SS1の振幅を表している。|y2a|は、位相合成器17dの第2出力端子O2から出力される合成信号SS2の振幅を表している。|y3a|は、位相合成器17eの第2出力端子O2から出力される合成信号SS4の振幅を表している。|y4a|は、位相合成器17eの第1出力端子O1から出力される合成信号SS3の振幅を表している。式(30)~(33)が示すように、複数の第1合成信号SS1~SS4の振幅の表し方と、複数の第2合成信号SS1~SS4に含まれる各合成信号の振幅の表し方が異なる。そのため、推定部3は、式(30)~(33)を用いて相関行列Rを求めることにより、第1推定方向とは、異なる到来方向を推定することができる。なお、式(30)~(33)を用いて相関行列Rを求める具体的な方法の説明は省略する。以下の説明において、推定部3が第2合成信号SS1~SS4に基づいて推定した到来方向を「第2推定方向」と記載する。
【0097】
推定部3は、第1推定方向と第2推定方向とに基づいて無線信号の到来方向(送信器4の位置方向)を推定する。例えば、推定部3は、第1推定方向と第2推定方向との平均をとることで、無線信号の到来方向を推定するようにしてもよい。本実施形態の推定部3は、複数の推定方向に基づいて無線信号の到来方向を推定するため、一の推定方向に基づいて無線信号の到来方向を推定する既存の受信システムと比べて、無線信号の到来方向を推定する際の精度が向上する。
【0098】
以上のように本実施形態の受信システム1は、受信器2と推定部3とを備えている。受信器2は、複数のアンテナ11と、位相合成部13と、出力部14と、変更部15とを備えている。複数のアンテナ11は、無線信号を受信する。変更部15は、無線信号の受信から合成信号SS1~SS4を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。位相合成部13は、複数のアンテナ11から入力される無線信号に基づく複数の入力信号IS1~IS3に対して合成処理を行い、無線信号の到来方向(送信器4の位置方向)を推定するための合成信号SS1~SS4を生成する。位相合成部13は、変更部15による変更処理前に、合成信号SS1~SS4として第1合成信号SS1~SS4を生成する。また、位相合成部13は、変更部15による変更処理後に、合成信号SS1~SS4として第2合成信号SS1~SS4を生成する。すなわち、位相合成部13は、変更部15による変更処理の前後でパターンの異なる合成信号SS1~SS4を生成する。言い換えると、本実施形態の受信器2は、無線信号の到来方向を推定するための合成信号SS1~SS4のパターンを増やすことができる。そして、出力部14は、第1合成信号SS1~SS4と第2合成信号SS1~SS4とを推定部3に出力する。推定部3は、受信器2の出力部14から出力される第1合成信号SS1~SS4及び第2合成信号SS1~SS4に基づいて、無線信号の到来方向を推定する。推定部3は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4に基づいて無線信号の到来方向を推定することができる、そのため、1パターンの合成信号SS1~SS4に基づいて無線信号の到来方向を推定する場合と比べて、到来方向推定の精度が向上する。
【0099】
また、本実施形態の受信器2は、切替部12を更に備えている。切替部12は、複数のアンテナ11と位相合成部13との電気的な接続状態を切替える。より具体的には、アンテナ11bと位相合成器17bとの電気的な接続状態を、第1接続状態から第2接続状態へ、又は第2接続状態から第1接続状態へ切替える。変更部15は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ11と位相合成部13との電気的な接続状態を切替えるように切替部12を制御する処理を行う。受信器2は、複数のアンテナ11と位相合成部13との電気的な接続状態を切替えることにより、無線信号の到来方向を推定するための合成信号SS1~SS4のパターンを容易に増やすことができる。そのため、受信器2は、無線信号の到来方向推定の精度を容易に向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態の位相合成部13は、複数のアンテナ11と電気的に接続され、無線信号が入力される複数の入力部(入力端子)を備えている。具体的には、位相合成器17aの第1入力端子I1と、位相合成器17bの第1入力端子I1及び第2入力端子I2と、位相合成器17cの第2入力端子I2の4つの入力端子である。そして、本実施形態の複数のアンテナ11は、アンテナ11aとアンテナ11bとアンテナ11cとの3本である。すなわち、本実施形態の複数のアンテナ11の数は、複数の入力部の数以下である。アンテナ11の数が入力部の数以下なので、受信器2(受信システム1)の構成をコンパクトにすることが可能である。また、受信器2は、複数のアンテナ11と入力部との電気的な接続状態を切替えることで、アンテナ11の数を増やすことなく、無線信号の到来方向を推定するための無線信号のパターンを容易に増やすことができる。すなわち、受信器2は、アンテナ11の数を増やすことなく、無線信号の到来方向推定の精度を向上させることができる。ただし、アンテナ11の数が入力部の数より多い場合であっても、本実施形態における受信システム1の、無線信号の到来方向の推定精度を向上させることができるという効果が失われるわけではない。そのため、受信器2のアンテナ11の数は、入力部の数より多いものであってもよい。
【0101】
(第2実施形態)
(1)概要
第2実施形態の送信器4a及び受信システム1aの概要について図3を参照して説明する。本実施形態の送信器4aは、複数の無線信号を送信するための複数(図示例では3つ)のアンテナ21を備えている。本実施形態の複数のアンテナ21は、アンテナ21aとアンテナ21bとアンテナ21cとを含むアレーアンテナである。以下の説明において、特定のアンテナ21について説明する場合は、アンテナ21a,21b,21cを区別して記載する。また、複数のアンテナ21を区別せずに説明する場合は、単にアンテナ21と記載する。
【0102】
本実施形態の受信システム1aは、複数のアンテナ21から送信される複数の無線信号を受信する受信アンテナを備える。本実施形態の受信システム1aは、受信アンテナで受信した複数の無線信号の受信信号強度に基づいて、複数の無線信号を送信した送信器4aの位置方向を推定する受信システムであり、例えばスマートフォンなどで構成される。
【0103】
(2)送信器4aの構成
以下、本実施形態に係る送信器4aの構成について図4を参照しつつ説明する。図4に示すように、送信器4aは、複数のアンテナ21と、切替部22と、位相合成部23と、元信号生成部24と、変更部25とを備える。
【0104】
複数のアンテナ21は切替部22と電気的に接続されている。複数のアンテナ21の各々は、位相合成部23によって生成される複数の無線信号RS1~RS3を送信する。
【0105】
切替部22は、複数のアンテナ21と位相合成部23との間に電気的に接続され、複数のアンテナ21と位相合成部23との電気的な接続状態を切替える処理部である。切替部22は、スイッチ26aとスイッチ26bとスイッチ26cとを含んでいる。以下の説明において、スイッチ26a,26b,26cを区別せずに説明する場合は、単にスイッチ26と記載する。また、特定のスイッチ26について説明する場合は、スイッチ26a,26b,26cを区別して記載する。
【0106】
切替部22は、変更部25に制御されることにより、スイッチ26a~26cの切替え動作を行う。本実施形態のスイッチ26bは、変更部25による制御に応じて、アンテナ21bと、位相合成部23に含まれる位相合成器27bの第1出力端子O1及び第2出力端子O2のうちの一方と、を電気的に接続する。以下の説明において、スイッチ26bによってアンテナ21bと位相合成器27bの第2出力端子O2とが電気的に接続されている状態を、「第1接続状態」と記載する。また、スイッチ26bによってアンテナ21bと位相合成器27bの第1出力端子O1とが電気的に接続されている状態を、「第2接続状態」と記載する。
【0107】
スイッチ26aは、アンテナ21aと位相合成器27aの第2出力端子O2とが常に電気的に接続された状態となるように制御される。すなわち、本実施形態のスイッチ26aは切替え動作を行わない。そのため、スイッチ26aは、アンテナ21aと、位相合成器27aの第2出力端子O2とを接続する単なる電気的経路であってもよい。
【0108】
また、スイッチ26cは、アンテナ21cと位相合成器27cの第1出力端子O1とが常に電気的に接続された状態となるように制御される。すなわち、本実施形態のスイッチ26cは切替え動作を行わない。そのため、スイッチ26cは、アンテナ21cと、位相合成器27cの第1出力端子O1とを接続する単なる電気的回路であってもよい。
【0109】
ただし、アンテナ21aから位相合成器27aまでの電気的経路の長さ、アンテナ21bから位相合成器27bまでの電気的経路の長さ、及び、アンテナ21cから位相合成器27cまでの電気的経路の長さは、同じ長さであることが好ましい。各アンテナ21a~21cから各位相合成器27a~27cまでの各電気的経路の長さが異なっていると、受信システム1aが無線信号の到来方向を推定する際の精度が低下するからである。そこで、本実施形態は、スイッチ26a、スイッチ26b、及びスイッチ26cを同じスイッチ26で構成している。
【0110】
元信号生成部24は、複数のアンテナ21が送信する複数の無線信号RS1~RS3の元となる信号であって、例えば識別情報などの所定の情報を含む元信号BS1~BS4を生成する処理部である。元信号生成部24は、元信号生成器24a~24dを含んでいる。元信号生成器24aは、位相合成部23の位相合成器27dの第1入力端子I1と電気的に接続され、元信号BS1を生成する。元信号生成器24bは、位相合成器27dの第2入力端子I2と電気的に接続され、元信号BS2を生成する。元信号生成器24cは、位相合成器27eの第1入力端子I1と電気的に接続され、元信号BS3を生成する。元信号生成器24dは、位相合成器27eの第2入力端子I2と電気的に接続され、元信号BS4を生成する。
【0111】
位相合成部23は、複数の元信号BS1~BS4に基づく複数の入力信号IS8~IS11(信号IS12~IS15)に対して合成処理を行い、複数の無線信号RS1~RS3を生成する処理部である。また、本実施形態の位相合成部23は、スイッチ26bが切替えられる前後で異なった複数の無線信号RS1~RS3を生成する。ここで第1接続状態において、位相合成部23が生成する複数の無線信号RS1~RS3を複数の第1無線信号RS1~RS3とする。また、第2接続状態において、位相合成部23が生成する複数の無線信号RS1~RS3を複数の第2無線信号RS1~RS3とする。
【0112】
位相合成部23は、位相合成器27aと、位相合成器27bと、位相合成器27cと、位相合成器27dと、位相合成器27eとを備えている。以下の説明において、位相合成器27a,27b,27c,27d,27eを区別せずに説明する場合は、単に位相合成器27と記載する。位相合成器27は、例えば90度ハイブリッドユニット(ハイブリッド素子)などで構成される。位相合成器27の基本動作については、「(第1実施形態)における(2.2)受信器2の構成」の欄で説明した位相合成器17の基本動作と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
位相合成器27dは、第1入力端子I1で元信号BS1に基づく入力信号IS8を受け付け、第2入力端子I2で元信号BS2に基づく入力信号IS9を受け付ける。位相合成器27dは、入力信号IS8と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、入力信号IS9と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、を足し合わせた信号IS12を第1出力端子O1から出力する。また、位相合成器27dは、入力信号IS8と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、入力信号IS9と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、を足し合わせた信号IS13を第2出力端子O2から出力する。
【0114】
位相合成器27eは、第1入力端子I1で元信号BS3に基づく入力信号IS10を受け付け、第2入力端子I2で元信号BS4に基づく入力信号IS11を受け付ける。位相合成器27eは、入力信号IS10と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、入力信号IS11と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、を足し合わせた信号IS14を第1出力端子O1から出力する。また、位相合成器27eは、入力信号IS10と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、入力信号IS11と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、を足し合わせた信号IS15を第2出力端子O2から出力する。
【0115】
位相合成器27aは、第2入力端子I2に入力される信号IS12と比べて、電力値が1/√2倍で同位相の無線信号RS1を、第2出力端子O2から出力する。
【0116】
位相合成器27bは、第1入力端子I1で信号IS13を受け付け、第2入力端子I2で信号IS14を受け付ける。第1接続状態である場合、位相合成器27bは、信号IS13と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、信号IS14と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、を足し合わせた無線信号RS2を第2出力端子O2から出力する。また、第2接続状態である場合、位相合成器27bは、信号IS13と比べて電力値が1/√2倍で同位相の信号と、信号IS14と比べて電力値が1/√2倍で位相が90度遅れた信号と、を足し合わせた無線信号RS2を第1出力端子O1から出力する。
【0117】
位相合成器27cは、第1入力端子I1に入力される信号IS15と比べて、電力値が1/√2倍で同位相の無線信号RS3を、第1出力端子O1から出力する。
【0118】
変更部25は、複数の元信号BS1~BS4の入力から複数の無線信号RS1~RS3を送信するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う処理部である。本実施形態の変更部25は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ21と位相合成部23との電気的な接続状態を切替えるように切替部22を制御する処理を行う。具体的には、変更部25は、スイッチ26bを切替える制御を行うことで、アンテナ21bと位相合成器27bとの電気的な接続状態を切替える。以下の説明において、変更部25が変更処理を行うまでは、アンテナ21bと位相合成器27bとの接続状態が第1接続状態であるとする。また、変更部25が変更処理を行った後は、アンテナ21bと位相合成器27bとの接続状態が第2接続状態であるとする。変更部25は、変更処理を所定のタイミングで行う。所定のタイミングは、例えば、位相合成部23が複数の無線信号RS1~RS3を出力したタイミングや、送信器4aが無線信号を送信する間隔に応じて設定される一定のタイミングなどである。
【0119】
(3)到来方向推定
次に、受信システム1aが複数の無線信号RS1~RS3の到来方向を推定する方法について図3を参照しつつ説明する。なお、「(第1実施形態)における(3)到来方向推定」の欄で説明した事項については、適宜説明を省略する。図3に示すように、アンテナ21aと受信システム1aの受信アンテナとの間の複素伝播チャネルをh4、アンテナ21bと受信アンテナとの間の複素伝播チャネルをh5、アンテナ21cと受信アンテナとの間の複素伝播チャネルをh6とする。また、アンテナ21aとアンテナ21bとの距離、及び、アンテナ21bとアンテナ21cとの距離をd2とする。また、アンテナ21aとアンテナ21bとアンテナ21cとで構成されるアレーアンテナのブロードサイド方向を基準として角度θ2の位置に受信システム1aが存在するものとする。まず、受信システム1aが、複数の第1無線信号RS1~RS3の到来方向を推定する場合について説明する。
【0120】
伝播チャネルはまとめて、式(34)と表すことができる。
【0121】
【数34】
【0122】
この伝播チャネルの相関行列は、式(35)と表すことができる。
【0123】
【数35】
【0124】
相関行列Rを求めることで、受信システム1aは、複数の第1の無線信号RS1~RS3の到来方向を推定することができる。受信システム1aは、受信信号強度に関する情報に基づいて、相関行列Rを求める。
【0125】
式(34)の伝播チャネルを用いると、受信システム1aで測定される各元信号BS1,BS2,BS3,BS4の振幅は、式(36)~式(39)と表すことができる。
【0126】
【数36】
【0127】
【数37】
【0128】
【数38】
【0129】
【数39】
【0130】
と表すことができる。ここで、式(40)とすると、見かけの伝搬チャネルを式(41)~式(44)と表すことができる。
【0131】
【数40】
【0132】
【数41】
【0133】
【数42】
【0134】
【数43】
【0135】
【数44】
【0136】
式(41)~(44)に基づいて、相関行列Rを求める方法は、「(第1実施形態)における(3)到来方向推定」の欄で説明した通りであるため、説明を省略する。また、相関行列RにMUSIC法などの所定のアルゴリズムを用いて複数の第1無線信号RS1~RS3の到来方向を求める方法についても、「(第1実施形態)における(3)到来方向推定」の欄で説明した通りであるため、説明を省略する。なお、以下の説明において、受信システム1aが推定した複数の第1無線信号RS1~RS3の到来方向を「第1推定方向」と記載する。
【0137】
次に、受信システム1aが複数の第2無線信号RS1~RS3の到来方向を推定する場合について説明する。式(34)の伝播チャネルを用いると、受信システム1aで測定される各元信号BS1,BS2,BS3,BS4の振幅は、式(45)~式(48)で表すことができる。
【0138】
【数45】
【0139】
【数46】
【0140】
【数47】
【0141】
【数48】
【0142】
式(45)~(48)が示すように、複数の第1無線信号RS1~RS3に含まれる各元信号BS1,BS2,BS3,BS4の振幅と、複数の第2無線信号RS1~RS3に含まれる各元信号BS1,BS2,BS3,BS4の振幅とが異なる。そのため、受信システム1aは、式(45)~(48)を用いて相関行列Rを求めることにより、第1推定方向とは異なる到来方向を推定することができる。なお、式(45)~(48)を用いて相関行列Rを求める具体的な方法の説明は省略する。以下の説明において、受信システム1aが推定した複数の第2無線信号RS1~RS3の到来方向を「第2推定方向」と記載する。
【0143】
送信器4aが送信する複数の第1及び第2無線信号を受信した受信システム1aは、第1推定方向と第2推定方向とに基づいて複数の無線信号RS1~RS3の到来方向(送信器4aの位置方向)を推定する。例えば、受信システム1aは、第1推定方向と第2推定方向との平均をとることで、複数の無線信号RS1~RS3の到来方向を推定するようにしてもよい。送信器4aが送信する複数の第1及び第2無線信号RS1~RS3を受信した受信システム1aは、複数の推定方向に基づいて無線信号RS1~RS3の到来方向を推定する。そのため、一のパターンの複数の無線信号RS1~RS3に基づいて無線信号RS1~RS3の到来方向を推定する既存の受信システムと比べて、無線信号RS1~RS3の到来方向を推定する際の精度が向上する。
【0144】
以上のように、本実施形態の送信器4aは、位相合成部23と、複数のアンテナ21と、変更部25とを備えている。位相合成部23は、複数の元信号BS1~BS4に基づく複数の入力信号IS8~IS11(信号IS12~IS15)に対して合成処理を行い、複数の無線信号RS1~RS3を生成する。変更部25は、複数の入力信号IS8~IS11の受け付けから複数の無線信号RS1~RS3を送信するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。位相合成部23は、変更部25による変更処理前に、複数の無線信号RS1~RS3として複数の第1無線信号RS1~RS3を生成する。また、位相合成部23は、変更部25による変更処理後に、複数の無線信号RS1~RS3として複数の第2無線信号RS1~RS3を生成する。複数のアンテナ21は、複数の第1無線信号RS1~RS3と複数の第2無線信号RS1~RS3とを送信する。送信器4aが、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3を送信するため、受信システム1aは、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3に基づいて送信器4aの方向を推定することができる。そのため、受信システム1aが1パターンの複数の無線信号に基づいて送信器4aの位置方向を推定する場合と比べて、推定の精度が向上する。
【0145】
(変形例)
以下に、上記実施形態の変形例に係る受信システム1(1a)及び送信器4(4a)を列記する。なお、以下に説明する変形例の各構成は、上記実施形態で説明した各構成と適宜組合せて適用可能である。
【0146】
(1)変形例1
上記の実施形態において、変更部15は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ11が無線信号を受信する際の時間に係る設定を変更する処理を行うようにしてもよい。変更部15が、複数のアンテナ11が無線信号を受信する際の時間長さや受信タイミングを変更することで、位相合成部13は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4を生成する。すなわち、合成信号SS1~SS4のパターンが増えることで、式(3)の|y1|の値、式(4)の|y2|の値、式(5)の|y3|の値、式(6)の|y4|の値のパターンが増える。そのため、受信システム1が推定する無声信号の到来方向の推定結果が増え、推定の精度が向上する。
【0147】
また、上記の実施形態において、変更部25は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ21が複数の無線信号RS1~RS3を送信する際の時間に係る設定を変更する処理を行うようにしてもよい。変更部25が複数のアンテナ21が複数の無線信号RS1~RS3を送信する際の時間長さや送信タイミングを変更することで、送信器4aは、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3を送信する。受信システム1aは、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3に基づいて、送信器4aの方向を推定するため、推定の精度が向上する。
【0148】
(2)変形例2
上記の実施形態及び変形例1において、位相合成部13は、合成処理において複数の入力信号IS1~IS3(信号IS4~IS7)のうちの少なくとも1つに対して位相をずらす処理を行ってもよい。また、変更部15は、変更処理の少なくとも一部として、合成処理において位相合成部13が入力信号IS1~IS3(信号IS4~IS7)の位相をずらす量を変更する処理を行ってもよい。上記実施形態の受信システム1は、スイッチ16bを切替えることで、入力信号IS1~IS3(信号IS4~IS7)の位相のずれ方がそれぞれ異なる第1合成信号SS1~SS4と第2合成信号SS1~SS4を生成していた。変更部15が、合成処理において位相合成部13が入力信号IS1~IS3(信号IS4~IS7)の位相をずらす量を変更する変更処理を行うことで、上記実施形態と同様の第2合成信号SS1~SS4を生成することが可能となる。受信システム1は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4に基づいて、無線信号の到来方向(送信器4の方向)を推定するため、推定の精度が向上する。
【0149】
また、上記の実施形態及び変形例1において、位相合成部23は、合成処理において複数の入力信号IS8~IS11(信号IS12~IS15)のうちの少なくとも1つに対して位相をずらす処理を行ってもよい。また、変更部25は、変更処理の少なくとも一部として、合成処理において位相合成部23が入力信号IS8~IS11(信号IS12~IS15)の位相をずらす量を変更する処理を行ってもよい。上記実施形態の送信器4aは、スイッチ26bを切替えることで、入力信号IS8~IS11(信号IS12~IS15)の位相のずれ方がそれぞれ異なる複数の第1無線信号RS1~RS3と、複数の第2無線信号RS1~RS3を生成していた。変更部25が、合成処理において位相合成部23が入力信号IS8~IS11(信号IS12~IS15)の位相をずらす量を、変更する変更処理を行うことで、上記実施形態と同様の複数の第2無線信号RS1~RS3を生成することが可能となる。受信システム1aは、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3に基づいて、送信器4aの方向を推定するため、推定の精度が向上する。
【0150】
(3)変形例3
上記の実施形態及び変形例1,2において、複数のアンテナ11は、無線信号として、互いに周波数帯の異なる複数の無線信号を受信可能であってもよい。無線信号が、例えばBLEの規格に従っている場合、複数のアンテナ11は、2.400[GHz]~2.480[GHz]を2[MHz]幅で分割した40の周波数帯のそれぞれの無線信号を受信可能であってもよい。そして、変更部15は、変更処理の少なくとも一部として、合成処理の対象となる無線信号の周波数帯を切替える処理を行うようにしてもよい。変更部15が、合成処理の対象となる無線信号の周波数帯を切替えることで、位相合成部13は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4を生成する。受信システム1は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4に基づいて、無線信号の到来方向(送信器4の方向)を推定するため、推定の精度が向上する。
【0151】
また、上記の実施形態及び変形例1,2において、複数のアンテナ21は、複数の無線信号RS1~RS3として、互いに周波数帯の異なる複数の無線信号RS1~RS3を送信可能であってもよい。そして、変更部25は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ21が送信する複数の無線信号RS1~RS3の周波数帯を切替える処理を行うようにしてもよい。変更部25による変更処理の前後で、複数のアンテナ21は、互いに周波数帯の異なる2パターン以上の複数の無線信号RS1~RS3を送信する。受信システム1aは、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3に基づいて、送信器4aの方向を推定するため、推定の精度が向上する。
【0152】
(4)変形例4
また、上記の実施形態及び変形例1から3において、複数のアンテナ11は、無線信号として、互いに異なる複数の偏波を受信可能であってもよい。ここで、互いに異なる複数の偏波とは、例えば、水平偏波や垂直偏波や円偏波などである。そして、変更部15は、変更処理の少なくとも一部として、合成処理の対象となる無線信号の偏波の種類を切替える処理を行う。変更部15が、合成処理の対象となる無線信号の偏波の種類を切替えることで、複数のアンテナ11は、偏波の種類が異なる無線信号を受信する。そして、位相合成部13は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4を生成する。受信システム1は、2以上のパターンの合成信号SS1~SS4に基づいて、無線信号の到来方向(送信器4の方向)を推定するため、推定の精度が向上する。
【0153】
また、上記の実施形態及び変形例1から2において、複数のアンテナ21は、複数の無線信号RS1~RS3として、互いに異なる複数の偏波を送信可能であってもよい。そして、変更部25は、変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ21が送信する複数の無線信号RS1~RS3の偏波の種類を切替える処理を行うようにしてもよい。変更部25による変更処理の前後で、複数のアンテナ21は、互いに偏波の種類が異なる2パターン以上の複数の無線信号RS1~RS3を送信する。受信システム1aは、2以上のパターンの複数の無線信号RS1~RS3に基づいて、送信器4aの方向を推定するため、推定の精度が向上する。
【0154】
(5)その他の変形例
本実施形態では、受信器2は、切替部12を備えているが、切替部12は必須ではない。受信器2は、少なくとも、複数のアンテナ11、位相合成部13、出力部14、及び変更部15を備えていればよい。
【0155】
また、本実施形態では、送信器4aは、切替部22及び元信号生成部24を備えているが、切替部22及び元信号生成部24は必須ではない。送信器4aは少なくとも、複数のアンテナ21、位相合成部23、及び変更部25を備えていればよい。
【0156】
また、本実施形態では、受信システム1は、受信器2及び推定部3を含む1つのシステムで実現されているが、2つ以上のシステムで実現されていてもよい。例えば、受信器2及び推定部3の機能が、2つ以上のシステムに分散して設けられていてもよい。また、受信器2及び推定部3のうち少なくとも1つの機能が、2つ以上のシステムに分散して設けられていてもよい。また、受信器2及び推定部3の各機能が、複数の装置に分散して設けられていてもよい。例えば、受信器2の機能が2つ以上の装置に分散されて設けられていてもよい。また、受信システム1の少なくとも一部の機能が、例えばクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。
【0157】
(受信方法、プログラム)
上述の実施形態(各変形例も含む)は、様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計などに応じて種々の変更が可能である。また、受信システム1と同様の機能は、受信方法、プログラム又はプログラムを記録した記録媒体などで具現化されてもよい。
【0158】
本実施形態に係る受信方法は、受信ステップと、第1の位相合成ステップと、第1の出力ステップと、変更ステップと、第2の位相合成ステップと、第2の出力ステップとを有する。受信ステップでは、無線信号を受信する。第1の位相合成ステップでは、無線信号に基づく複数の入力信号IS1~IS3に対して合成処理を行い、無線信号の到来方向を推定するための第1合成信号SS1~SS4を生成する。第1の出力ステップでは、第1の位相合成ステップにおいて生成した第1合成信号SS1~SS4を出力する。変更ステップでは、受信ステップから第1の位相合成ステップまでの処理に係る少なくとも1つ要素を変更する。第2の位相合成ステップでは、変更ステップの後に、第1の位相合成ステップにおいて生成した第1合成信号SS1~SS4とは異なる第2合成信号SS1~SS4を生成する。第2の出力ステップでは、第2の位相合成ステップにおいて生成した第2合成信号SS1~SS4を出力する。
【0159】
また、本実施形態に係る(コンピュータ)プログラムは、上述した受信ステップ、第1の位相合成ステップ、第1の出力ステップ、変更ステップ、第2の位相合成ステップ、及び第2の出力ステップを1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0160】
受信器2、受信システム1、送信器4a及び受信方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって受信器2、受信システム1、送信器4a及び受信方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリにあらかじめ記録されていてもよい。また、プログラムは、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散されて設けられていてもよい。
【0161】
(まとめ)
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の第1から第11の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0162】
第1態様に係る受信器(2)は、複数のアンテナ(11)と、位相合成部(13)と、出力部(14)と、変更部(15)とを備える。複数のアンテナ(11)は、無線信号を受信する。位相合成部(13)は、複数のアンテナ(11)から入力される無線信号に基づく複数の入力信号(IS1~IS3)に対して合成処理を行い、無線信号の到来方向を推定するための合成信号(SS1~SS4)を生成する。出力部(14)は、合成信号(SS1~SS4)を出力する。変更部(15)は、無線信号の受信から合成信号(SS1~SS4)を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。位相合成部(13)は、変更部(15)による上記変更処理前に、合成信号(SS1~SS4)として第1合成信号(SS1~SS4)を生成する。また、位相合成部(13)は、変更部(15)による上記変更処理後に、合成信号(SS1~SS4)として第2合成信号(SS1~SS4)を生成する。出力部(14)は、第1合成信号(SS1~SS4)と第2合成信号(SS1~SS4)とを出力する。
【0163】
この態様によれば、受信器(2)は、無線信号の受信から合成信号(SS1~SS4)を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更することで、パターンが異なった複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを増やすことができるので、無線信号の到来方向の推定精度を向上させることができる。
【0164】
第2態様に係る受信器(2)は、第1態様において、切替部(12)を更に備える。切替部(12)は、複数のアンテナ(11)と位相合成部(13)との電気的な接続状態を切替える。変更部(15)は、上記変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ(11)と位相合成部(13)との電気的な接続状態を切替えるように切替部(12)を制御する処理を行う。
【0165】
この態様によれば、受信器(2)は、変更処理の一部として、複数のアンテナ(11)と位相合成部(13)との電気的な接続状態を切替えることで、パターンの異なる複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを容易に増やすことができるので、無線信号の到来方向の推定精度を容易に向上させることができる。
【0166】
第3態様に係る受信器(2)は、第1態様又は第2態様において、位相合成部(13)が複数の入力部を有している。複数の入力部は、複数のアンテナ(11)と電気的に接続され無線信号が入力される。複数のアンテナ(11)の数は、複数の入力部の数以下である。
【0167】
この態様によれば、アンテナ(11)の数が入力部の数以下であるため、受信器(2)をコンパクトにすることができる。
【0168】
第4態様に係る受信器(2)は、第1態様から第3態様のいずれかに1つにおいて、変更部(15)が、上記変更処理の少なくとも一部として、複数のアンテナ(11)が無声信号を受信する際の時間に係る設定を変更する処理を行う。
【0169】
この態様によれば、受信器(2)は、無線信号を受信する際の時間(時間長さ、受信タイミング)に係る設定を変更することで、パターンの異なる複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを容易に増やすことができるので、無線信号の到来方向の推定精度を容易に向上させることができる。
【0170】
第5態様に係る受信器(2)は、第1態様から第4態様のいずれか1つにおいて、位相合成部(13)が上記合成処理において、複数の入力信号(IS1~IS3)のうちの少なくとも1つの位相をずらす処理を行う。変更部(15)は、上記変更処理の少なくとも一部として、上記合成処理における上記位相をずらす量を変更する処理を行う。
【0171】
この態様によれば、受信器(2)は、上記合成処理における上記位相をずらす量を変更することで、パターンの異なる複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。すなわち、無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを容易に増やすことができる。したがって、無線信号の到来方向の推定精度を容易に向上させることができる。
【0172】
第6態様に係る受信器(2)は、第1態様から第5態様のいずれか1つにおいて、複数のアンテナ(11)が、無線信号として、互いに周波数帯の異なる複数の無線信号を受信可能である。変更部(15)は、上記変更処理の少なくとも一部として、上記合成処理の対象となる無線信号の周波数帯を切替える処理を行う。
【0173】
この態様によれば、受信器(2)は、上記合成処理の対象となる無線信号の周波数帯を切替えることで、パターンの異なる複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。すなわち、無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを容易に増やすことができる。したがって、無線信号の到来方向の推定精度を容易に向上させることができる。
【0174】
第7態様に係る受信器(2)は、第1態様から第6態様のいずれか1つにおいて、複数のアンテナ(11)の各々が、無線信号として、互いに異なる複数の偏波を受信可能である。変更部(15)は、上記変更処理の少なくとも一部として、上記合成処理の対象となる無線信号の偏波の種類を切替える処理を行う。
【0175】
この態様によれば、受信器(2)は、上記合成処理の対象となる無線信号の偏波の種類を切替えることで、パターンの異なる複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。すなわち、無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを容易に増やすことができる。したがって、無線信号の到来方向の推定精度を容易に向上させることができる。
【0176】
なお、第2態様から第7態様に係る構成については、受信器(2)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0177】
第8態様に係る受信システム(1)は、第1態様から第7態様のいずれか1つの受信器(2)と、推定部(3)とを備える。推定部(3)は、受信器(2)から出力される第1合成信号(SS1~SS4)及び第2合成信号(SS1~SS4)に基づいて、無線信号の到来方向を推定する。
【0178】
この態様によれば、受信システム(1)は、無線信号の受信から合成信号(SS1~SS4)を生成するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更することで、パターンが異なった複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを増やすことができるので、無線信号の到来方向の推定精度を向上させることができる。
【0179】
第9態様に係る送信器(4a)は、位相合成部(23)と、複数のアンテナ(21)と、変更部(25)とを備える。位相合成部(23)は、複数の元信号(BS1~BS4)に基づく複数の入力信号(IS8~IS11)に対して合成処理を行い、複数の無線信号(RS1~RS3)を生成する。複数のアンテナ(21)は、複数の無線信号(RS1~RS3)を送信する。変更部(25)は、複数の元信号(BS1~BS4)の受け付けから複数の無線信号(RS1~RS3)を送信するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更する変更処理を行う。位相合成部(23)は、変更部(25)による上記変更処理前に、複数の無線信号(RS1~RS3)として複数の第1無線信号(RS1~RS3)を生成する。また、位相合成部(23)は、変更部(25)による上記変更処理後に、複数の無線信号(RS1~RS3)として複数の第2無線信号(RS1~RS3)を生成する。複数のアンテナ(21)は、複数の第1無線信号(RS1~RS3)と複数の第2無線信号(RS1~RS3)とを出力する。
【0180】
この態様によれば、送信器(4a)は、複数の元信号(BS1~BS4)の受け付けから複数の無線信号(RS1~RS3)を送信するまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更することで、パターンが異なった複数の無線信号(RS1~RS3)を送信する。複数の無線信号(RS1~RS3)のパターンを増やすことができるので、受信システム(1a)による送信器(4a)の位置方向の推定精度を向上させることができる。
【0181】
第10態様に係る受信方法は、受信ステップと、第1の位相合成ステップと、第1の出力ステップと、変更ステップと、第2の位相合成ステップと、第2の出力ステップとを有する。受信ステップでは、無線信号を受信する。第1の位相合成ステップでは、無線信号に基づく複数の入力信号(IS1~IS3)に対して合成処理を行い、無線信号の到来方向を推定するための第1合成信号(SS1~SS4)を生成する。第1の出力ステップでは、第1の位相合成ステップにおいて生成した第1合成信号(SS1~SS4)を出力する。変更ステップでは、受信ステップから第1の位相合成ステップまでの処理に係る少なくとも1つ要素を変更する。第2の位相合成ステップでは、変更ステップの後に、第1の位相合成ステップにおいて生成した第1合成信号(SS1~SS4)とは異なる第2合成信号(SS1~SS4)を生成する。第2の出力ステップでは、第2の位相合成ステップにおいて生成した第2合成信号(SS1~SS4)を出力する。
【0182】
この態様によれば、受信ステップから第1の位相合成ステップまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更することで、パターンが異なった複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを増やすことができるので、無線信号の到来方向の推定精度を向上させることができる。
【0183】
第11態様に係るプログラムは、第10態様の受信方法を、1以上のプロセッサに実行させる。
【0184】
この態様によれば、受信ステップから第1の位相合成ステップまでの処理に係る少なくとも1つの要素を変更することで、パターンが異なった複数の合成信号(SS1~SS4)を生成する。無線信号の到来方向(送信器(4)の位置方向)を推定するための合成信号(SS1~SS4)のパターンを増やすことができるので、無線信号の到来方向の推定精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0185】
1 受信システム
2 受信器
3 推定部
4a 送信器
11 アンテナ
12 切替部
13 位相合成部
14 出力部
15 変更部
21 アンテナ
22 切替部
23 位相合成部
25 変更部
BS1~BS4 元信号
IS1~IS3 入力信号
IS8~IS11 入力信号
RS1~RS3 無線信号
SS1~SS4 合成信号
図1
図2
図3
図4