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  • 特許-複合砥粒および弾性砥石 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】複合砥粒および弾性砥石
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/02 20060101AFI20240308BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240308BHJP
   B24D 15/04 20060101ALI20240308BHJP
   B24D 3/22 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B24D3/02 A
C08K3/34
C08K3/22
C08L61/04
C08L101/00
B24D15/04 Z
B24D3/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019209774
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079497
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】597027671
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】菊地 光男
(72)【発明者】
【氏名】吉見谷 猛
(72)【発明者】
【氏名】岩川 泰三
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-021653(JP,A)
【文献】特開2005-199407(JP,A)
【文献】特開2009-034817(JP,A)
【文献】特表2003-532550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/02
C08K 3/34
C08K 3/22
C08L 61/04
C08L 101/00
B24D 15/04
B24D 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む第一の結合材と、
アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、および窒化ケイ素からなる群より選択される1つ以上の成分からなるセラミック砥粒と、を含有し、
前記第一の結合材1質量部に対し、前記セラミック砥粒を1~5質量部含有し、
前記セラミック砥粒の粒径が、40~500μmである(ただし、40~500μmの粒径範囲に含まれないセラミック砥粒を、全セラミック砥粒のうち10質量%以下含んでいてもよい)、弾性砥石用複合砥粒。
【請求項2】
前記第一の結合材がフェノール樹脂を含む、請求項1に記載の複合砥粒。
【請求項3】
粒径が0.1~5mmである、請求項1または2に記載の複合砥粒。
【請求項4】
合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む第二の結合材と、請求項1~3のいずれかに記載の複合砥粒と、を含有する弾性砥石。
【請求項5】
前記第二の結合材が、合成ゴムまたは天然ゴムを含む、請求項4に記載の弾性砥石。
【請求項6】
JIS K6253-3に準拠したタイプAデュロメータで測定したゴム硬度が30~95である、請求項4または5に記載の弾性砥石。
【請求項7】
前記第二の結合材1質量部に対し、前記複合砥粒を0.1~6質量部含有する、請求項4~6のいずれかに記載の弾性砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合砥粒および弾性砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
砥石は、被加工物を研削研磨するための加工具として広く知られている。中でも、ゴム弾性を有する結合材中に、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭化ケイ素、ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素(CBN)等からなる砥粒を分散させた弾性砥石が、被加工物の表面形状との馴染みがよい砥石として知られている。
【0003】
弾性砥石は結合材が柔軟であるため、(1)被加工物の表面との接触時、砥粒が結合材に押し込まれて、砥粒が突出した状態での研削研磨がなされにくいこと、(2)砥粒に与えられる衝撃を結合材が吸収して、砥粒の破砕による切刃の新生が行われにくいこと、(3)これらを改善するため、摩耗しやすい結合材を用いた場合、多くの砥粒が研削研磨に寄与しないまま脱落してしまうこと、等の問題点を有する。これらの問題点により、ビトリファイド砥石やレジノイド砥石と比較し、弾性砥石は研削力が低く、また寿命が短いと考えられてきた。
【0004】
上記問題点を解決するため、樹脂結合材を用いて複数の砥粒を結合し、塊状集合体とした「複合砥粒」を製造し、これを通常の砥粒の代わりに用いる方法が開発された。ゴム弾性を有する結合材中に、この複合砥粒を分散させることで、ピトリファイド砥石およびレジノイド砥石等と同等の研削力を有する弾性砥石を得ることができる(特許文献1)。
【0005】
一方で、近年、被加工物の複雑高度化等を背景として、研削力が高く、長寿命で、かつ加工時に発生する熱を抑制可能な弾性砥石への需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭48-8678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、研削力が高く、長寿命で、かつ加工時に発生する熱を抑制可能な弾性砥石を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各実施態様は以下のとおりである。
[1]熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む第一の結合材と、セラミック砥粒と、を含有する、弾性砥石用複合砥粒。
[2]前記第一の結合材1質量部に対し、前記セラミック砥粒を1~6質量部含有する、[1]の複合砥粒。
[3]前記第一の結合材がフェノール樹脂を含む、[1]または[2]の複合砥粒。
[4]粒径が0.1~5mmである、[1]~[3]のいずれかの複合砥粒。
[5]合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む第二の結合材と、[1]~[4]のいずれかの複合砥粒と、を含有する弾性砥石。
[6]JIS K6253-3に準拠したタイプAデュロメータで測定したゴム硬度が30~95である、[5]の弾性砥石。
[7]前記第二の結合材1質量部に対し、前記複合砥粒を0.1~6質量部含有する、[5]または[6]の弾性砥石。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、研削力が高く、長寿命で、かつ加工時に発生する熱を抑制可能な弾性砥石を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例および比較例における被加工物の温度推移を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[複合砥粒]
本発明の複合砥粒は弾性砥石用であり、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む第一の結合材と、セラミック砥粒と、を含有する。
ここでいう弾性砥石とは、ゴム弾性を有する砥石を指す。
【0012】
従来の複合砥粒は、砥粒として主に溶融アルミナ(溶融酸化アルミニウム)が用いられていた。溶融アルミナ砥粒を用いた複合砥粒を含む弾性砥石により研削を行った場合、砥粒の先端が磨滅し平坦化する「目つぶれ」が起こりやすい。この目つぶれが生じた状態で研削を続けると、法線研削抵抗が増大し、工具の振動、過剰な発熱による被加工物の焼け、および砥粒の脱落等の問題が生じる。
【0013】
一方、本発明の複合砥粒に含有されるセラミック砥粒は、目つぶれが生じにくく、また、砥粒自体が脱落しにくく、高い研削力が持続する。また、法線研削抵抗が低減し、加工時の発熱が抑制される。
セラミック砥粒においては、研削時に砥粒の先端に負荷がかかると、砥粒が磨滅する前に微細な欠けが生じ、常に新たなエッジが出現する。これは、セラミックがサブミクロンサイズの結晶が集まった多結晶の構造を有するためと考えられる。この結晶サイズは、溶融アルミナの結晶サイズと比較してはるかに小さい。このことが、上記効果に寄与していると考えられる。
【0014】
なお、通常の加工において、熱伝導率が低い素材からなる加工具を用いると、加工時の摩擦熱を逃がすことができず、被加工物の温度が上昇しやすくなる傾向にあることが知られている。セラミックの多くは、砥粒に用いられる素材の中では熱伝導率が比較的低い。ところが、本発明者らの実験によると、複合砥粒を用いた砥石においては、セラミック砥粒を用いることで、溶融アルミナ砥粒を用いる場合よりも被加工物の温度上昇を抑制できることが判明した。この理由は定かではないが、複合砥粒においては、上記のように法線研削抵抗が低減することによる発熱抑制効果が優勢になることが理由の一つとして考えられる。
以下、本発明の複合砥粒について構成ごとに詳細に説明する。
【0015】
(第一の結合材)
本発明の複合砥粒に含有される第一の結合材は、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含む。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂(尿素樹脂)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0016】
前記第一の結合材は、耐熱性および複合砥粒への成形性の観点から、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、フェノール樹脂、ユリア樹脂(尿素樹脂)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、およびポリウレタンからなる群より選択される1種を含むことがより好ましく、耐熱性、難燃性、機械的特性、耐油性、耐薬品性および経済性等の観点からはフェノール樹脂を含むことがさらに好ましい。
【0017】
前記第一の結合材は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、光安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤等の他の成分を含んでいてもよい。
前記第一の結合材中の前記熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0018】
(セラミック砥粒)
本発明の複合砥粒は、セラミック砥粒を含有する。
本明細書中において、セラミックは、無機物の粉末等を加熱処理し焼き固めた焼結体であり、多結晶であるものを指す。
本明細書中において、セラミックは、ゾル-ゲル法を経て製造されたものを含む。
【0019】
前記セラミック砥粒の成分としては、アルミナ、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびこれらの複合材料等が挙げられる。
中でも、前記セラミック砥粒としては、アルミナ(好ましくはα-アルミナ)を主成分とするセラミック砥粒を用いることが好ましく、アルミナ(好ましくはα-アルミナ)を90質量%以上含むセラミック砥粒を用いることがより好ましい。
前記セラミック砥粒の多結晶の結晶サイズは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。
【0020】
前記セラミック砥粒の形状に特に制限はなく、通常のセラミック砥粒として用いられるものから選択して用いることができる。中でも、鋭角である二面角を有する略多面体や、構成する3つの角が全て鋭角である三面角を有する略多面体等、鋭利なエッジを有する形状のものが好ましい。
前記セラミック砥粒は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
前記セラミック砥粒の粒径は、弾性砥石が粗仕上げ用である場合には180~500μmであることが好ましく、200~350μmであることがより好ましい。また、弾性砥石が中仕上げ用である場合には40~180μmであることが好ましく、50~100μmであることがより好ましい。
前記セラミック砥粒の粒径が適切な範囲内であることにより、加工条件に合った研削研磨レートが得られる。
前記セラミック砥粒の粒径は、ふるい法等で分級することができる。
【0022】
なお、前記粒径範囲に含まれないセラミック砥粒が一部に含まれていてもよい。その場合は、前記粒径範囲に含まれないセラミック砥粒が、全セラミック砥粒のうち10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
(セラミック砥粒の含有量)
本発明の複合砥粒中における、前記セラミック砥粒の含有量は、前記第一の結合材1質量部に対し、1~6質量部であることが好ましく、2~5質量部であることがより好ましく、2.5~4.5質量部であることがさらに好ましく、3~4質量部であることが最も好ましい。
前記セラミック砥粒の含有量が適切な範囲内であることにより、砥石の研削力が十分となり、かつスクラッチの発生を抑制することができる。
【0024】
(複合砥粒の構造および形状)
本発明の複合砥粒は、前記第一の結合材をマトリックスとして、複数の前記セラミック砥粒が分散している構造であることが好ましい。ただし、複数の前記セラミック砥粒同士が一部で接触していてもよい。
【0025】
本発明の複合砥粒の粒径は、0.1~5mmであることが好ましい。
前記複合砥粒の粒径は、ふるい法等で分級することができる。
なお、前記粒径範囲に含まれない複合砥粒が一部に含まれていてもよい。その場合は、前記粒径範囲に含まれない複合砥粒が、全複合砥粒のうち15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明の複合砥粒の粒径は、用途に応じて、前記範囲から適切なものを選択することができる。
例えば研削用途においては、本発明の複合砥粒の粒径が2~5mmであることがより好ましい。
また、研磨用途においては、本発明の複合砥粒の粒径が0.1~2mmであることがより好ましい。
【0027】
本発明の複合砥粒は塊状である。その輪郭は突出したセラミック砥粒の存在により複雑になるが、全体として略球形または略楕円体形であることが好ましい。
【0028】
(その他の砥粒)
本発明の複合砥粒は、前記セラミック砥粒の他、溶融アルミナ砥粒、ダイヤモンド砥粒等の他の砥粒を一部に含んでいてもよい。
その場合、全砥粒のうち、前記セラミック砥粒の含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0029】
(複合砥粒の製造方法)
本発明の複合砥粒は、例えば、撹拌機を用いて原料を混合し、得られた混合物を金網に通して粒状にしたものを造粒機で造粒加工し、得られた複合砥粒前駆体を電気炉等で加熱する方法等で製造できる。
【0030】
[弾性砥石]
本発明の弾性砥石は、合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む第二の結合材と、上記した本発明の複合砥粒と、を含有する。
以下、本発明の弾性砥石について構成ごとに詳細に説明する。
【0031】
(第二の結合材)
本発明の弾性砥石に含有される第二の結合材は、合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含む。
【0032】
前記合成ゴムとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0033】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、フッ素樹脂等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂(尿素樹脂)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0034】
前記第二の結合材は、被加工物の表面形状との馴染みの観点から、天然ゴムまたは合成ゴムを含むことが好ましく、合成ゴムを含むことがより好ましく、スチレン-ブタジエンゴムまたはクロロプレンゴムを含むことがさらに好ましく、スチレン-ブタジエンゴムを含むことが最も好ましい。
前記スチレン-ブタジエンゴムは、乳化重合スチレン-ブタジエンゴムであることが好ましい。
【0035】
前記第二の結合材は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、フィラー、光安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤等の他の成分を含んでいてもよい。
前記第二の結合材中における、合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0036】
(ゴム硬度)
本発明の弾性砥石は、JIS K 6253-3に準拠したタイプAデュロメータで測定したゴム硬度が30~95であることが好ましい。
ゴム硬度が適切な範囲内であることにより、高い研削力と研削安定性を両立できる。
【0037】
本発明の弾性砥石のゴム硬度は、用途に応じて、前記範囲から適切な硬度を選択することができる。
例えば研削用途においては、前記ゴム硬度が65~95であることがより好ましい。
また、研磨用途においては、前記ゴム硬度が30~65であることがより好ましい。
【0038】
(複合砥粒の含有量)
本発明の弾性砥石中における本発明の複合砥粒の含有量は、前記第二の結合材1質量部に対し、0.1~6質量部であることが好ましく、1~4質量部であることがより好ましく、1.3~3.3質量部であることがさらに好ましく、2~3質量部であることが最も好ましい。
【0039】
(弾性砥石の形状および構造)
本発明の弾性砥石は、前記第二の結合材をマトリックスとして、複数の本発明の複合砥粒が分散している構造であることが好ましい。ただし、複数の本発明の複合砥粒同士が一部で接触していてもよい。
【0040】
本発明の弾性砥石のサイズおよび形状は、用途に応じ、適切なものを選択することができる。
本発明の弾性砥石の形状の例としては、円柱状、略円柱状、円錐状、砲弾状、円柱と円錐の複合形状、円柱と略円錐の複合形状および球状等が挙げられる。
本発明の弾性砥石は、軸付き弾性砥石として用いるのが好ましい。
【0041】
(その他の砥粒)
本発明の弾性砥石は、本発明の複合砥粒の他、複合砥粒となっていないセラミック砥粒、溶融アルミナ砥粒、ダイヤモンド砥粒等の他の砥粒を一部に含んでいてもよい。
その場合、全砥粒のうち、本発明の複合砥粒の含有量が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0042】
(弾性砥石の製造方法)
本発明の弾性砥石は、例えばゴムロール機を用いて原料を混合し、金型を用いて成形する方法等で製造できる。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例等によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何ら限定されない。
【0044】
[複合砥粒の製造]
まず、撹拌機(KitchenAid社製スタンドミキサー)を用いて表1に示す原料を混合し、均一に分散させて混合物を得た。
前記混合物を金網(サンポー社製ステンレスふるい(目開き1mm))に通し、粒状混合物を得た。
前記粒状混合物を、造粒機(シンフォニアテクノロジー社製パーツフィーダ DMS-45C)を用いて約20分間造粒加工に付し、複合砥粒前駆体を得た。
得られた複合砥粒前駆体を電気炉に投入し、170℃で9時間加熱して複合砥粒を得た。
得られた複合砥粒について、サンポー社製ステンレスふるい(目開き1.4mm、1.0mm、0.5mm)を用いて分級したところ、表2の通りの粒径分布であった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
[弾性砥石の製造]
ゴムロール機(モリヤマ社製加圧型ニーダー DS3-10MWB-S)を用いて、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(JSR株式会社製 JSR1502)および複合砥粒を混合し、均一に分散させてゴム混合物を得た。この際の複合砥粒の配合量は、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム1質量部に対し1.5質量部であった。
前記ゴム混合物を金型に詰め、30分静置して弾性砥石を得た。
得られた弾性砥石の形状は、直径10mm、長さ20mmの円柱であった。
得られた弾性砥石について、JIS K 6253-3に準拠したタイプAデュロメータで測定したゴム硬度は80であった。
得られた弾性砥石を軸(太陽精工社製 直径3mm、長さ40mm、材質S50C)の先端に固着させ、軸付き弾性砥石を得た。
【0048】
[研削試験]
(試験条件)
砥石: 軸付き弾性砥石(上記の通り製造したもの)
被加工物: 50mm×50mm×30mmのSUS630
(発熱測定のみ50mm×50mm×10mmのSUS630)
研削装置: ナカニシ社製 製品名エスパート500
回転数: 30000回転/分(rpm)
押し当て角度:15°
押し当て荷重:約4.9N(500gf)
研削時間: 60秒
温度測定器: 安立計器社製ハンディタイプ温度計
温度測定位置:研削箇所から直線距離で5mm離れた箇所に温度センサーを装着
【0049】
(試験)
実施例1、2および比較例1において、研削前後の被加工物および軸付き弾性砥石の質量を測定したところ、表3に示す通りとなった。
また、実施例1、2および比較例1において、研削時間に対する被加工物の温度を測定したところ、表4および図1に示す通りとなった。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
上記結果から、本発明の複合砥石は研削力が高く、長寿命で、かつ加工時に発生する熱を抑制可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の複合砥粒および弾性砥石は、アルミニウム、鉄、ステンレスおよびチタン等の被加工物の各種研削研磨に好適に利用可能である。
図1