(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】折り畳み式昇降機
(51)【国際特許分類】
B66F 7/06 20060101AFI20240308BHJP
A61G 5/06 20060101ALI20240308BHJP
B66F 17/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B66F7/06 F
A61G5/06
B66F17/00 F
(21)【出願番号】P 2020018589
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 モデルチェンジのお知らせ
(73)【特許権者】
【識別番号】394006129
【氏名又は名称】株式会社いうら
(72)【発明者】
【氏名】和田 憲三
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-058891(JP,A)
【文献】特開2000-175967(JP,A)
【文献】特開2005-247501(JP,A)
【文献】特開2008-081231(JP,A)
【文献】米国特許第04534450(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/06
B66F 7/00 - 7/28
13/00 - 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ベースと該第一ベースの一端に回動自在に軸着される第二ベースで構成するベース部と、該第二ベース上に開閉自在に軸着される昇降リンク部と、該昇降リンク部に支持されるテーブル部と、該第一ベース上に支持される中マスト及び該中マストに外挿される外マストと該中マストに対して相対的に該外マストを昇降自在にするための昇降駆動部を具備するマスト部と、該外マストの下端近傍に軸着し、且つ、該テーブル部の一端を止着することで該テーブル部をマスト部側に回動自在に保持する保持部と該保持部に一端を軸着し、且つ、他端を該外マストに穿設した長穴を転動自在に軸着したアーム部と該アーム部に一端を軸着し、且つ、他端を該外マストの下端に軸着した伸縮手段で構成した折り畳み機構を具備し、使用しない時には該伸縮手段の一端が延伸することで該外マストの該長穴を転動するとともに該アーム部の一端を該外マストの上方に向かって持ち上げることで該第二ベース及び該昇降リンク部、該テーブル部を該マスト部側に折り畳むことを可能にした折り畳み式昇降機において、該テーブル部が最低位でしか該中マストに螺着した付勢螺子と該伸縮手段の延伸及び短縮を可能にするレバーが当接しないように該マスト部を構成したことを特徴とする折り畳み式昇降機。
【請求項2】
前記テーブル部折り畳み時に折り畳み式昇降機の転倒を防止するために前記マスト部に対して平面視において垂直方向に延伸して構成されるベースアシを前記第一ベースの一端に止着したことを特徴とする請求項1に記載の折り畳み式昇降機。
【請求項3】
平面視において矩形状に形成した前記テーブル部に、前記マスト部に対して垂直方向の一辺に第一スロープを該マスト部の対面の一辺に第二スロープをそれぞれ回動可能に軸着し、該第二スロープの一端に止着され平面視において該テーブル部が最低位時に該第一スロープの一端と他端が隣接するように扇状に形成されたコーナースロープで構成されるスロープ部と、該第一スロープと対面の一辺にブリッジ部を回動可能に軸着することで、車椅子が該テーブル部に乗り込む時に直進方向及びL字方向だけでなく斜め方向からも乗り込めることを特徴とした請求項1もしくは請求項2に記載の折り畳み式昇降機。
【請求項4】
前記第一スロープの両端に固着した支持板の角穴とスロープ軸の角部が同期するように該第一スロープの長手方向にスロープ軸を挿通し、且つ、該スロープ軸の一端は前記テーブル部のボス部材を介してローラー支持部を止着し、他端は該テーブル部に止着した第一固定部を介して前記コーナースロープの下面に配設してスロープ部を構成したことで、前記中マストの側部に配設された案内部材によって付勢されることで該テーブル部上昇時に該ローラー支持部の一端に軸着したスロープローラーが該第一スロープを起立状態に姿勢変更させつつ、該コーナースロープの下面に配設された該スロープ軸の一端が該コーナースロープを起立方向に付勢することで、該コーナースロープを止着している前記第二スロープを該コーナースロープと同時に起立状態に姿勢変更可能に構成にしたことを特徴とする請求項3に記載の折り畳み式昇降機。
【請求項5】
前記ブリッジ部の前記第二スロープ側の一端にハンドル部を具備したことにより、前記テーブル部の折り畳み操作を簡便にしたことを特徴とする請求項3もしくは請求項4に記載の折り畳み式昇降機。
【請求項6】
前記マスト部の上部に利用者が掴まることができるグリップ部を設けたことを特徴とする
請求項3~5に記載の折り畳み式昇降機。
【請求項7】
折り畳み状態にした前記テーブル部が使用状態に戻らないように、該テーブル部、前記スロープ部、前記ブリッジ部のいずれかと前記マスト部を固定するロック部を具備したことを特徴とする
請求項3~6に記載の折り畳み式昇降機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の玄関などに設置することで、上がり框(かまち)などの段差を車椅子や下肢の不自由な方が乗り越えるために使用する昇降機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、玄関に設けられた上がり框などを乗り越えて屋外から屋内に車椅子や下肢の不自由な方が移動するためにスロープや昇降機が使用されている。
スロープを使用するメリットとして一般的に部品点数が少なくて良く、アルミ板など軽い材料を使用する場合が多く、重量が軽いことで設置及び収納が簡便であることが挙げられる。
一方でデメリットとして、段差が高い場所に設置する場合には勾配を緩やかにするためにスロープの全長を長くする必要があり、例えば玄関の狭い住宅ではスロープが設置できないことが挙げられる。
対して、昇降機を利用するメリットとして、昇降機を設置できるスペースが確保されていれば良く、スロープに比べて設置条件の制限が少ないことが挙げられる。
一方でデメリットとして、スロープは簡単に設置や取外しができるのに対して、昇降機は重量が重く簡単には移動させることができないことが挙げられる。また、玄関に設置すると、専有面積が広くなり昇降機を利用しない健常な方が玄関を出入りする際に昇降機が邪魔になることが考えられる。
【0003】
そこで、前述した昇降機を利用するデメリットを解決するために、特許文献1に記載される段差解消機が提案されている。
この段差解消機は、段差解消機を使用しない時に昇降装置を上向きの収納姿勢にできるため、段差解消機を使用しない健常な方が玄関を使用する時に邪魔にならないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の段差解消機には以下の問題が挙げられる。
まず、収納枠は昇降装置を収納姿勢にするため、昇降装置は昇降台を昇降させるために用いられるが、収納枠と昇降装置は連動するように構成されておらず単独で操作できてしまう。つまり、昇降装置が完全に最低位になっていない状態で収納姿勢に姿勢変更させようとすると、正しく収納できないばかりか昇降台の上面が壁面に干渉してしまい住宅を損壊する恐れが考えられる。
そして、使用姿勢から収納姿勢に姿勢変更するために、反転式渡しプレートと反転式スロープを介助者もしくは利用者が自ら操作して昇降台の上に置いた状態にする必要があり、収納操作が煩雑になっている。
さらに、直進乗り込みに使用が限定される昇降装置構成のため設置可能な玄関に制限がある。例えば玄関の入口に対して上がり框が垂直方向に付いているL字出入り型の玄関に対して特許文献1の段差解消機を設置することができない。
また、収納枠を側壁に接触または接近するように立設しつつ下端を床面に固定しているため安定した設置ができるが、一度設置位置を決めてしまうと簡単にレイアウト変更できないことや、住宅工事のための費用が必要になるデメリットも考えられる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本願発明が解決しようとする課題は、テーブルの折り畳み操作を安全、且つ、簡便にしたことを特徴とする折り畳み式昇降機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の折り畳み式昇降機は、第一ベースと該第一ベースの一端に回動自在に軸着される第二ベースで構成するベース部と、該第二ベース上に開閉自在に軸着される昇降リンク部と、該昇降リンク部に支持されるテーブル部と、該第一ベース上に支持される中マスト及び該中マストに外挿される外マストと該中マストに対して相対的に該外マストを昇降自在にするための昇降駆動部を具備するマスト部と、該外マストの下端近傍に軸着し、且つ、該テーブル部の一端を止着することで該テーブル部を該マスト部側に回動自在に保持する保持部と該保持部に一端を軸着し、且つ、他端を該外マストに穿設した長穴を転動自在に軸着したアーム部と該アーム部に一端を軸着し、且つ、他端を該外マストの下端に軸着した伸縮手段で構成した折り畳み機構を具備し、使用しない時には該伸縮手段の一端が延伸することで該外マストの該長穴を転動するとともに該アーム部の一端を該外マストの上方に向かって持ち上げることで該第二ベース及び該昇降リンク部、該テーブル部を該マスト部側に折り畳むことを可能にした折り畳み式昇降機において、該テーブル部が最低位でしか該中マストに螺着した付勢螺子と該伸縮手段の延伸及び短縮を可能にするレバーが当接しないように該マスト部を構成したことを特徴としている。
そして、前記テーブル部折り畳み時に折り畳み式昇降機の転倒を防止するために前記マスト部に対して平面視において垂直方向に延伸して構成されるベースアシを前記第一ベースの一端に止着したことを特徴としている。
そして、平面視において矩形状に形成した前記テーブル部に、前記マスト部に対して垂直方向の一辺に第一スロープを該マスト部の対面の一辺に第二スロープをそれぞれ回動可能に軸着し、該第二スロープの一端に止着され平面視において該テーブル部が最低位時に該第一スロープの一端と他端が隣接するように扇状に形成されたコーナースロープで構成されるスロープ部と、該第一スロープと対面の一辺にブリッジ部を回動可能に軸着することで、車椅子が該テーブル部に乗り込む時に直進方向及びL字方向だけでなく斜め方向からも乗り込めることを特徴としている。
そして、前記第一スロープの両端に固着した支持板の角穴とスロープ軸の角部が同期するように該第一スロープの長手方向に該スロープ軸を挿通し、且つ、該スロープ軸の一端は前記テーブル部のボス部材を介してローラー支持部を止着し、他端は該テーブル部に止着した第一固定部を介して前記コーナースロープの下面に配設して前記スロープ部を構成したことで、前記中マストの側部に配設された案内部材によって付勢されることで該テーブル部上昇時に該ローラー支持部の一端に軸着したスロープローラーが該第一スロープを起立状態に姿勢変更させつつ、該コーナースロープの下面に配設された該スロープ軸の一端が該コーナースロープを起立方向に付勢することで、該コーナースロープを止着している前記第二スロープを該コーナースロープと同時に起立状態に姿勢変更可能に構成にしたことを特徴としている。
そして、前記ブリッジ部の前記第二スロープ側の一端にハンドル部を具備したことにより、前記テーブル部の折り畳み操作を簡便にしたことを特徴としている。
そして、前記マスト部の上部に利用者が掴まることができるグリップ部を設けたことを特徴としている。
そして、折り畳み状態にした前記テーブル部が使用状態に戻らないように、該テーブル部、前記スロープ部、前記ブリッジ部のいずれかと前記マスト部を固定するロック部を具備したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の折り畳み式昇降機は、使用しない時にベース部を構成する第二ベース及び昇降リンク部、テーブル部、スロープ部、ブリッジ部を第一ベースの上方に配設したマスト部側に折り畳み可能にし、且つ、テーブル部が最低位でしか折り畳みができないように構成したことで、意図しない高さでテーブル部を使用状態に戻した時にテーブル部に何らかの偏荷重がかかって機械が破損することを未然に防ぐことができる効果がある。
そして、上がり框側(段差側)に対して平行になるようにベース部の側部にアシベースを止着することで、折りたたみ状態の折り畳み式昇降機が倒れないように安定して設置することができる効果がある。また、アシベースの一端に進退自在にアウトリガーを止着したことで壁から一定間隔離間した位置に折り畳み式昇降機を設置する場合には、マスト部側から後方に倒れないようにする効果がある。また、従来の技術では折り畳んだ後に本体が倒れるのを防止するために床面や壁面にアンカー工事をする必要や、倒れ防止のためにベース部を大きくする必要があり、玄関などの設置場所を有効利用し難くなる場面があったが、アシベースやアウトリガーを具備したことで、工事不要、且つ、構成する部材を大きくする必要がないため、より設置場所の空間を広く、有効活用することができる効果がある。
そして、床面からテーブル部への乗り込みに使用するスロープ部を直進乗り込み側の第一スロープとL字乗り込み側の第二スロープを具備し、且つ、第一スロープと第二スロープが連続するようにコーナースロープを付設したことによって、斜め方向からもテーブル部に乗り込みが可能となったことで、折り畳み式昇降機を玄関に設置する場合にデッドスペースを形成することなく広く玄関を使用することができる効果がある。
そして、第一スロープの一端に止着されたローラー支持部が中マストの案内部材に当接することで、スロープ部とブリッジ部をテーブル部の昇降に合わせて橋渡し状態と転落防止状態に自動で姿勢変更できるようにしたことで、昇降時に利用者が安全に移動することができる効果がある。
そして、ブリッジ部の第二スロープ側の一端に折りたたみ操作用のハンドル部を具備したことにより、操作者が安全、且つ、簡単に第二ベース及び昇降リンク部、テーブル部、スロープ部、ブリッジ部を折り畳むことができる効果がある。
そして、マスト部の上部に折り畳み式昇降機の利用者が把持できるグリップ部を設けたことで、利用者がグリップ部を把持することで安全に利用者を目的地まで移動させることができることや、心理的な安定性も満たすことができる効果がある。
そして、折り畳み状態になった第二ベース及び昇降リンク部、テーブル部、スロープ部、ブリッジ部が使用状態に戻らないようにロック部材を具備したことで、不意に第一ベース及び昇降リンク部、テーブル部、スロープ部、ブリッジ部が戻ることで通行人が挟まれたり、床面に置いた物が挟まれて破損したりすることを防止する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】折り畳み式昇降機1の使用状態を示す全体斜視図
【
図2】折り畳み式昇降機1の折り畳み状態を示す全体斜視図
【
図6】ベース部2と昇降リンク部3の構成を示す説明図
【
図7】昇降リンク部3とテーブル部4の構成を示す説明図
【
図8】ベース部2のブリッジガイド24の構成を示す説明図
【
図10】マスト部5の外マスト52と昇降駆動部8の構成を示す説明図
【
図11】マスト部5の中マスト51と外マスト52の構成を示す説明図
【
図13】テーブル部4とマスト部5の構成を示す説明図
【
図14】テーブル部4とスロープ部6とブリッジ部7の構成を示す説明図
【
図15】マスト部5とスロープ部6の(a)テーブル部4が最低位での関係を示す説明図(b)テーブル部4が上昇時の関係を示す説明図
【
図16】折り畳み式昇降機1のテーブル部4が上昇時を示す要部側断面図
【
図17】折り畳み式昇降機1のテーブル部4が最低位を示す要部側断面図
【
図18】折り畳み式昇降機1のテーブル部4が折り畳み状態を示す要部側断面図
【
図19】折り畳み式昇降機1のテーブル部4の折り畳み途中を示す説明図
【
図20】折り畳み式昇降機1の玄関への配置を示す模式図((a)直進乗り込み(b)L字乗り込み(c)斜め乗り込み)
【
図21】車椅子Kが折り畳み式昇降機1に(a)直進乗り込みをする状態を示す説明図(b)L字乗り込み及び斜め乗り込みをする状態を示す説明図
【
図22】テーブル部4を折り畳み状態にした時の(a)ロック部12を示す説明図(b)カバー13を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
以下、本発明の折り畳み式昇降機1について図面を基に説明する。
この折り畳み式昇降機1は、主にベース部2と、このベース部2に支持される昇降リンク部3と、この昇降リンク部3に支持されるテーブル部4と、ベース部2上に支持されるマスト部5と、テーブル部4の外周に配設されるスロープ部6及びブリッジ部7、テーブル部4及びマスト部5を昇降するための昇降駆動部8で主に構成される。
また、本実施例では
図1などで示すように上がり框Fが設けられた玄関に折り畳み式昇降機1を設置した状態で説明する。なお、本発明の説明を明確にするため、図中のマスト部に使用されるカバーを一部省略して説明することがある。
また、
図3に示すように平面視において玄関の入り口側にスロープ部6を、上がり框F側にブリッジ部7を配置した形態で折り畳み式昇降機1を説明する。なお、詳細は省略するがスロープ部6とブリッジ部7及びベースアシ23を左右対称に組み替えることで、
図3に対して左右反対のレイアウトの玄関に対応することができる。
【0011】
まず、ベース部2を説明する。
図5に示すように第一ベース21に第二ベース22が回動自在に軸着され、
図1などで示すように該第二ベース22の側部にある上がり框Fにベースアシ23が平行になるように第一ベース21の一端に止着している。そして、ベースアシ23のマスト部5側の一端近傍には該ベースアシ23に対して垂直方向にブリッジガイド24を止着している。
まず、第一ベース21は、複数のフレームから成り、上がり框Fに対して鉛直方向に延伸するように配設される第一ベース本体21aの両端下面に螺子部により突出量を調整自在にしたアジャスター21b,21bを螺着している。該アジャスター21b,21bは螺子部を締緩することで設置する床面の勾配や凸凹によるがたつきを抑えて安定して設置できるようにするものである。そして、該第一ベース本体21aには後述する第二ベース本体22a方向に突出形成される支点ブラケット21c,21cを固着している。
次に、第二ベース22は、複数のフレームを矩形状に配設、固着して
該第二ベース本体22aを形成し、後述する昇降リンク部3が該第二ベース本体22a内に収納可能な空間を設けている。そして、該第一ベース本体21aに面する一辺のフレームに、一定間隔離間した一対の支点ブラケット22b,22b,・・・を固着している。そして、該支点ブラケット22b,22b,・・・の対面のフレーム及び側部のフレームの内側にレール部材22c,22cを固着している。なお、該レール部材22c,22cの一端側は略コ字形状をしており、後述する昇降リンク部3の第一リンク31,31の一端が転動する際に脱線しないようにしている。
このように構成した第一ベース21と第二ベース22は、支点ブラケット21c,21c及び22b,22bを軸着することで、第一ベース21に対して第二ベース22が側面視において上方回動可能に構成される。
【0012】
次に、ベースアシ23は、
図8に示すように中空の矩形パイプで構成されるアシフレーム23aの一端より挿通され、且つ、該アシフレーム23a内を伸縮自在にアウトリガー23bを軸着し、他端先端にはアジャスター23c,23cを螺着して構成している。
まず、アウトリガー23bは、折り畳み式昇降機1を玄関の壁から離して設置する場合(例えば、広い玄関や、屋外など)にマスト部5後方へ折り畳み式昇降機1が倒れるのを防止するために使用するものである。次に、該アジャスター23c,23cは、前述したベース部2のアジャスター21b,21bと同様に螺子部を締緩することで設置する床面の凸凹によるがたつきを抑えて安定して設置できるようにしている。なお、アジャスター23c,23cを接地面と上面にそれぞれ配設しているのは前述したように左右を組み替えた際にいずれかのアジャスター23cを接地させて使用するためである。
このように構成したベースアシ23は、前記第一ベース21の第一ベース本体21aの上がり框F側の一端に止着している。
【0013】
また、ブリッジガイド24は、
図8に示すように前記アシフレーム23aの前記第一ベース21側の上面に一定の長さの調整ポール24aを止着し、この調整ポール24aに上下方向に摺動自在にブリッジガイド本体24bを止着して構成している。
このブリッジガイド本体24bは、後述するブリッジ部7のガイド部材71bの案内板になっており、ガイド部材71bがブリッジガイド本体24bの側面を摺動することで昇降時の車椅子の転落防止姿勢となり、ガイド部材71bがブリッジガイド本体24bの上面を摺動することで車椅子が上がり框Fを乗り越えるための橋渡し姿勢に姿勢変更することができるものである。
なお、詳細な説明は省略するが、該ブリッジガイド本体24bは使用する住宅の上がり框F高さと上面が略平行になるように調整ポール24aに沿って位置調整をする。
【0014】
次に、昇降リンク部3を説明する。
この昇降リンク部3は、開閉することで上部に支持するテーブル部4を任意の高さで保持するものである。
図6に示すように、一端を前記第二ベース22のレール部材22c,22c上を転動可能に枢結し、他端を後述するテーブル部4のマスト部5側の支持ブラケット4e,4e,・・・に軸着した第一リンク31,31と、該第一リンク31,31の内側に配設され、一端を前記第二ベース22の支点ブラケット22b,22b,・・・に軸着し、他端をテーブル部4のレール部材4c,4c内を転動可能に枢結した第二リンク32で構成している。なお、該第二リンク32は平面視において略H字状にフレームを形成しており、第一リンク31,31と第二リンク32の略中央付近を回動可能に軸着している。
このように昇降リンク部3を構成することで、Xフレーム構成となりテーブル部4が受ける荷重を安定して支えることができる。
【0015】
次に、テーブル部4を説明する。
図7に示すように、このテーブル部4は複数のフレームを矩形状に配設してテーブル本体4aを形成し、該テーブル本体4aの上方に天板4bを固着している。そして、該テーブル本体4aの内側に配設され、前述した昇降リンク3の第二リンク32の一端を転動可能にするレール部材4c,4c,4d,4dを該テーブル本体4a及び該天板4bに固着している。なお、該レール部材4c,4cは略コ字形状をしており、該第二リンク32の一端が脱落しないようにしている。そして、テーブル本体4aのマスト部5側のフレームには前述した昇降リンク部3の第一リンク31,31と第二リンク32の一端を軸着するための支持ブラケット4e,4e,・・・を固着している。一方、テーブル本体4aのマスト部5とは反対側のフレームには後述するスロープ部6とブリッジ部7の第一固定部63と第二固定部72を止着するための支持板4f,4fを固着している。
【0016】
なお、
図1などで示すようにテーブル部4のマスト部5取付け側の1辺以外の3辺に巻き取り式のカーテン41,41,41を配設している。
該カーテン41,41,41の詳細な説明は省略するが、一端をテーブル本体4aに、他端を第二ベース22に止着されたカーテン41,41,41がテーブル部4が昇降するのに合わせてが巻き取られたり繰り出されたりすることで、テーブル部4とベース部2の間に異物が入り込むのを防ぐことができ、折り畳み式昇降1の破損や人の怪我を未然に防止することができる。また、このテーブル部4の上面にマット部材を敷設しており、テーブル部4の汚れ防止や、載置した車椅子の滑り止め、さらにはテーブル部4を構成する部材を溶着した際に発生するテーブル部4上面への溶接湧きを隠すことで外観性を向上させている。
【0017】
次に、マスト部5を説明する。
図11に示すように、このマスト部5は、正面視において凹字状に形成した中マスト51と、この中マスト51に挿通することで上下方向に移動自在に構成した外マスト52で構成される。
まず、中マスト51を説明する。
図11に示すように、中空の矩形状、且つ、1辺を開口して形成された支柱フレーム51a,51aを一定間隔離間し、該支柱フレーム51a,51aのそれぞれの下端を連結プレート51bで止着して連結している。なお、該支柱フレーム51a,51aの向かい合う面同士を開口側にしている。そして、該支柱フレーム51a,51aの開口部と反対側の外側部に案内部材51c,51cを止着し、上がり框F側の案内部材51cに上下方向に調整自在に構成した調節ブラケット51dを止着している。詳細な説明及び図示は省略するが、この調節ブラケット51dの高さ調節を行うことで後述する外マスト52内に組み込まれた上限停止用リミットスイッチの感知位置を変更することができ、テーブル部4の上昇高さを調節することができる。そして、後述する伸縮手段93,93のレバー93e,93eを付勢するための付勢螺子51e,51eを該レバー93e,93eの取付け位置の直下に配設して連結プレート51bに螺着している。
このように構成した中マスト51は、
図13に示すように前記ベース部2の前記第一ベース21上に配設され、該連結プレート51bを前記ベース部2の第一ベース本体21aに止着している。
【0018】
次に、外マスト52を説明する。
図11などに示すように、この外マスト52は、略L字状に左右対称に形成した第一基枠52a,52aを一定間隔離間して配設し、側面視において略L字状に形成した連結枠52bを該第一基枠52a,52aの両端に固着することで、正面視において略逆凹字形状になるように形成している。そして、平面視において略L字状に左右対称に形成した第二基枠52c,52cを、該連結枠52bの両端に接するように配置して該第一基枠52a,52aと該連結枠52bに固着している。また、
図10に示すように該第二基枠52c,52cの下端近傍に軸受部材52d,52dを固着するとともに、該軸受部材52d,52dにベアリング52e,52eを挿嵌している。そして、該ベアリング52e,52eに駆動軸52fを挿通するとともに、該駆動軸52fの両端にはスプロケット52g,52gを止着している。
【0019】
また、
図11に示すように、連結枠52bの上方に側面視において略コ字状に形成したクドウフレーム8aを前記外マスト52に止着した昇降駆動部8を外マスト52の上方に設けている。
この昇降駆動部8は、次のように構成している。
まず、
図9に示すように該クドウフレーム8aの両端近傍にはクドウフレーム枠8b,8bを固着するとともに、該クドウフレーム枠8b,8bに軸受部材8c,8cを固着している。そして、該軸受部材8c,8cにベアリング8d,8dを挿嵌している。
【0020】
そして、
図9などで示すようにクドウフレーム8aの内部にはモーター81を設けている。
このモーター81は、クドウフレーム8a内に止着しているモーターブラケット8eに支持される。該モーター81の出力軸81aにはモータースプロケット81bを止着している。また、モーターブラケット8eのモーター81より上部には軸受部材8fを固着している。そして、モーター駆動軸8gをモーターブラケット8eに挿通するとともに、該モーター駆動軸8gの一端側にはベアリング8h(図示省略)を介してスプロケット8iを止着している。そして、該モーター81の該出力軸81a側のモータースプロケット81bと、該モーター駆動軸8gのスプロケット8iに正逆回転自在にモーターチェーン8jを巻き掛けている。また、該モーター駆動軸8gの両端は前記軸受部材8c,8cに挿通し、それぞれ該ベアリング81d,81dを介してスプロケット8k,8kを止着している。
そして、
図10に示すように該モーター駆動軸8gの両端に止着した該スプロケット8k,8kと、前記外マスト52の前記駆動軸52fの両端に止着した前記スプロケット52g,52gに正逆回転自在に昇降チェーン8l,8lを巻き掛けている。そして、この昇降チェーン8l,8lは前記中マスト51の前記支柱フレーム51a,51a内に配置し、該昇降チェーン8l,8lの両端は連結部材8m,8mで止着して無端状にしている。
そして、
図11に示すように連結部材8m,8mをチェーン固定部材52i,52iを介して中マスト51の支柱フレーム51a,51aに止着することで、モーター81の正逆回転によって各スプロケットが正逆回転し、各チェーンを正逆回転することで該昇降駆動部8に連結された外マスト52が中マスト51に対して上下方向に移動するように構成している。なお、各種チェーンの張り状態は緩みなど無く常に適度な張り具合になるように構成するものとする。
なお、本実施例ではチェーンを使用しているが、ベルトなどを用いても良く各駆動軸を回転させられるものであれば良い。
【0021】
また、本実施例では昇降駆動部8をマスト部5上方に配置している。これは折り畳み式昇降機1を設置した時に玄関の専有面積を極力小さくするためである。つまり、設置する場所に十分なスペースがある場合には昇降駆動部8の設置位置はマスト部5の両側部もしくは後部のいずれかに配置しても問題は無い。
以下、詳細な説明は省略するが本実施例における折り畳み式昇降機1はいくつかの機能を備えている。
まず、外マスト52の内部にモーター81を起動するための制御基板や昇降スイッチの部品などを配設し、複数の屈曲したフレームで構成されるカバーで覆っている。このように構成することで、マスト部5の外部に無駄な配線が飛び出すことが無く安全に使用することができるものになっている。
また、本実施例における昇降駆動部8にはテーブル部4が上昇位置で停止している時に停電など電気部品に異常が発生した時に手動操作でテーブル部4を下降させるための非常降下装置を具備している。この非常降下装置によって、利用者が安全に脱出できるものとなっている。
【0022】
次に、折り畳み機構9,9を説明する。(以下、
図10~13では上がり框F側の部品のみ図示しているが、スロープ6側の外マスト52にも左右対称に同部品が取り付けられる。)
この折り畳み機構9,9は、
図12に示すように外マスト52の下端近傍に軸着されテーブル部4に回動自在に軸着される保持部91,91と、この保持部91,91と外マスト52に架設され、且つ、一端が外マスト52内を転動可能に軸着されるアーム部92,92と、このアーム部92,92の動作をサポートするための伸縮手段93,93で構成される。
まず、保持部91,91を説明する。
この保持部91,91は、ボス部材91a,91aを前記外マスト52の第二基枠52c,52cのテーブル部4側の下端近傍に軸着している。そして、テーブル部4側に突出するように配設した連結部材91b,91bを該ボス部91a,91aの一端に固着している。そして、該連結部材91b,91bと該ボス部材91a,91aの下面に配設され一定間隔離間した一対のプレート91c,91c,・・・を固着している。
【0023】
そして、
図13に示すようにマスト部5は中マスト51の連結プレート52bを第一ベース21の第一ベース本体21aに止着し、折り畳み機構9,9の保持部91,91の支持部材91b,91bをテーブル部4のテーブル本体4aに止着している。
このようにマスト部5を構成することで、
図15に示すように中マスト51に対して外マスト52が相対的に昇降するのに合わせて、保持部91,91に支持されたテーブル部4が連動して昇降するようにしている。
【0024】
次に、アーム部92,92を説明する。
このアーム部92は、
図12に示すように側面視において略L字状に形成されたアーム本体92a,92aの長辺側の上端近傍に該アーム本体92a,92aに対して垂直に支軸92b,92bを固着している。そして、該支軸92b,92bの一端は前記外マスト52の前記第一基枠52a,52aの内側側面に穿設された長穴521a,521a内を転動可能に軸着している。そして、該支軸92b,92bの他端は後述する伸縮手段93の一端のボス931a,931aを介して前記第二基枠52c,52cの側面に穿設された長孔521c,521c内を転動可能に軸着している。そして、該アーム本体92a,92aの短辺側の先端を前記連結部材91b,91bの切欠を介して前記プレート91c,91c,91c,91cに軸着している。そして、該連結部材91b,91bの下面とテーブル部4の上面を合わせて止着することで、外マスト52内に設けた折り畳み機構9,9とテーブル部4が連動するように構成され、外マスト52の昇降に合わせてテーブル部4も昇降することができる。
【0025】
次に伸縮手段93,93の説明をする。
この伸縮手段93,93は、
図12に示すように外筒93a,93a内を内筒93b,93bが伸縮するように構成されるガスシリンダを用いている。そして、該内筒93b,93bの一端にロッド93c,93cが付設されており、該ロッド93c,93cに外力を加えて付勢することにより伸縮手段93,93のロックが解除されることで伸縮自在になっている。また、該内筒93b,93bの一端にコ字状に形成されたブラケット93d,93dを取着しており、該ブラケット93d,93dには該ロッド93c,93cを付勢するためのレバー93e,93eが軸着されている。
なお、本実施例では伸縮手段93,93にガスシリンダを使用しているが、油圧シリンダやアクチュエータなどでもよく、伸縮可能に構成される部品であれば使用者が任意に設定したので良い。
【0026】
次に、スロープ部6を説明する。
このスロープ部6は
図14に示すように平面視において矩形状に形成したテーブル部4の4辺のうち、ブリッジ部7とマスト部5を除く連続した2辺に配置される第一スロープ61と第二スロープ66と、この第一スロープ61と第二スロープ66の角部を連結するコーナースロープ67で構成され、車椅子Kを設置面からテーブル部4に簡単に乗り込みさせるためのものである。
まず、第一スロープ61を説明する。
この第一スロープ61は入口(ドア)側の短辺側に配設され、使用状態の時に車椅子が乗り込み易いようにテーパ形状に形成された第一スロープ本体61aの両端に支持板61b,61bを固着している。なお、該第一スロープ本体61aはプレートを複数回屈曲形成して中空形状に構成している。
このように構成した第一スロープ61は、部品の詳細な説明は後述するがスロープ軸62を第一スロープ61の長手方向に貫通するように支持板61b,61bに穿設した角穴611b,611bにテーブル部4に止着する第一固定部63を介して挿通し、第一スロープ61から突出した一端を前記テーブル部4のボス部材4g及びローラー支持部64に挿通し、止着部材65で止着している。
【0027】
次に、スロープ軸62を説明する。
このスロープ軸62は、正方形状の四角棒の両端から一定間隔円筒形状になるように切削し、一端は後述するローラー支持部64を止着するための穴を穿設し、他端は略へ字状に屈曲形成したスロープ軸本体62aと、該スロープ軸本体62aの略ヘ字状に屈曲した一端にローラー部材62bを圧入している。なお、該ローラー部材62bは先端に向かうにつれて細くなるようにテーパ形状をしている。このように構成することで、前述したように第一スロープ61の支持板61b,61bの角穴611b,611bとスロープ軸本体64aの四角棒が同期された状態となる。
【0028】
次に、第一固定部63を説明する。
この第一固定部63は、スロープ軸62を挿通するための穴631aを穿設した第一固定部本体63aと、この第一固定部本体63aの穴631aに垂直方向に配設される支軸63bと、テーブル固定部63cをそれぞれ固着して構成している。なお、第一固定部本体63aの穴631aには前記スロープ軸本体62aの円筒形状部分が配置される。そして、支軸63bには後述する第二スロープ66の一端が回動自在に挿通される。そして、テーブル固定部63cをテーブル部4の支持板4fに止着することで、第一固定部63をテーブル部4に固定している。
【0029】
次に、ローラー支持部64を説明する。
略コ字状に形成されたローラー支持プレート64aの一端にボス部材64bを固着し、他端にはスロープローラー64cを軸着している。なお、該ボス部材64bは外径中心から該ローラー支持プレート64aの閉口方向の偏心させた位置に穴を穿設している。
次に、止着部材65を説明する。
この止着部材65は前記スロープ軸62のスロープ軸本体62aの外径に嵌め合う程度に湾曲された外枠の中央にピン部を具備しており、ピン部をスロープ軸本体62aの穴に挿通することで該スロープ軸62aがテーブル部4のボス部材4gから脱落しないようにするものである。
このように構成したローラー支持部64と止着部材65によって、前述した通り前記スロープ軸本体62aがテーブル部4の側部を回動自在、且つ、抜けないように構成される。
なお、ローラー支持部64のスロープローラー64cはテーブル部4昇降時に前記マスト部5の案内部材51cに当接転動するように組み付けている。
【0030】
このように構成した第一スロープ61は、
図15に示すように、ローラー支持部64の前記スロープローラー64cが前記マスト部5の案内部材51cに案内されて転動するのに合わせて設置面との橋渡し状態と、昇降時に車椅子の車輪受けとなる転落防止状態に姿勢変更することができる。
詳述すると、
図15(a)に示すようにテーブル部4が最低位に位置する時には、スロープローラー64cが案内部材51cの真下に配置され案内部材51cと当接しないため第一スロープ61は自重によりテーブル部4と水平状態となり橋渡し状態となる。
一方、
図15(b)に示すように最低位から任意の高さまでテーブル部4を上昇させると、スロープローラー64cが案内部材51cの下面と当接することで正面視において反時計回りに回動する。この状態からさらにテーブル部4を上昇させると案内部材51cの側面をスロープローラー64cが転動しながら上昇する。
この時、第一スロープ61はスロープ軸62によって同期された状態であるので該スロープ軸62と同期したローラー支持部64が姿勢変更するのに合わせて第一スロープ61も姿勢変更され、正面視においてテーブル部4に対して第一スロープ61が反時計回りに起立した転落防止状態で支持される。
【0031】
次に、第二スロープ66を説明する。
この第二スロープ66はテーブル部のマスト部5の対面の長辺側に配設され、前記第一スロープ61と同様に、橋渡し状態の時に車椅子が乗り込み易いようにテーパ形状に形成された第二スロープ本体66aの両端に支持板66b,66bを固着し、該支持板66b,66bの外側に連結板66c,66cを固着している。
このように構成した第二スロープ66の、第一スロープ61側の一端の支持板66bには後述するコーナースロープ67の一端を止着し、連結板66cに穿設した穴に前記第一固定部63の支軸63bを挿通し、他端は連結板66cに穿設した穴に後述する第二固定部72の支軸72cを挿通することで、第二スロープ66がテーブル部4の側部を側面視において回動自在に軸着している。
【0032】
次に、コーナースロープ67を説明する。
このコーナースロープ67は、
図3に示すように平面視において扇状に形成され、且つ、前記第一スロープ本体61aと前記第二スロープ本体66aの上面と連続した形状となるようにテーパ状に形成されたコーナースロープ本体67aと、該コーナースロープ本体67aの両端に支持板67b,67bを固着している。
このように構成したコーナースロープ67は、前述した通り、第二スロープ66の第一スロープ61側の一端に止着され、前記スロープ軸62のローラー部材62bがコーナースロープ本体67aの裏面に当接するように配設される。
【0033】
このように構成した第二スロープ66及びコーナースロープ67は、前述した第一スロープ61の姿勢変更に連動することができる。
詳述すると、
図15(b)に示すように、テーブル部4が最低位から上昇する場合、前述した通り前記第一スロープ61に同期されたスロープ軸62がローラー支持部64によって正面視において反時計回りに回動するように作用される。
すると、第一スロープ61は起立して転落防止状態になるとともに、コーナースロープ67の裏面に配設された該スロープ軸62のローラー部材62bがコーナースロープ67のコーナースロープ本体67aの裏面を押圧することで、コーナースロープ67が起立して転落防止状態となる。この時、コーナースロープ67に止着している第二スロープ66もコーナースロープ67と連動して転落防止状態になる。
【0034】
次に、ブリッジ部7を説明する。
このブリッジ部7はブリッジ71と、このブリッジ71をテーブル部4に組み付けたときに前記第二スロープ66側の一端に止着される第二固定部72と、このブリッジ71と第二固定部72に架設されるハンドル部73で構成され、テーブル部4と上がり框Fとを橋渡しすることによって車椅子や利用者を屋内に移動するために使用される。
まず、ブリッジ71は、長手方向の両端を屈曲してコ字状に形成したブリッジ本体71aの両端にガイド部材71b,71bを止着し、該ブリッジ本体71aのテーブル部4側の一端にブリッジ本体71aの端部から突出するように配設した支軸71c,71cを固着している。
このように構成したブリッジ部71は、一端を前記テーブル部4のボス4gに、他端を第二固定部72の第二固定部本体72aの穴721aに挿通して回動自在に支持されている。
【0035】
次に、第二固定部72を説明する。
この第二固定部72は、前述したブリッジ71の支軸71cを挿通するための穴721aを穿設した第二固定部本体72aと、この第二固定部本体72aの穴721aの支軸71c差込側と反対側の端部に配設したハンドル軸72bと、この支軸72bに対して垂直になるように配設される支軸72cと、テーブル固定部72dをそれぞれ固着して構成している。そして、ハンドル軸72bには後述するハンドル部73のボス73aを外挿し、支軸72cは前記第二スロープ66の支持板66bの穴に挿通している。そして、テーブル固定部72dをテーブル部4の支持板4fに止着することで、第二固定部72をテーブル部4に固定している。
【0036】
次に、ハンドル部73を説明する。
このハンドル部73は、前記第二固定部72の支軸72bに外挿して止着されるボス部材73aと、このボス部材73aに一端をL型に湾曲形成したハンドル73bを固着して構成している。そして、該ハンドル73bの一端は、前記ブリッジ71のガイド部材71bに穿設した穴711bに挿通している。
【0037】
このように構成したブリッジ部7は、スロープ部6と連動せずに単独で姿勢変更する。
詳述すると、このブリッジ部7は
図4に示すように最低位の時は前記ブリッジガイド24のテーブル部4側の側面にガイド部材71bが案内されることで、ブリッジ部7はテーブル部4に対して正面視において時計回りに回動することで起立状態となる。この状態からテーブル部4を上昇させると該ブリッジガイド24の側面をガイド部材71bが当接しながら上昇し、ブリッジガイド24の上面まで移動するとブリッジ部7は反時計回りに回動して上がり框Fとテーブル部4の橋渡し状態となる。つまり、本実施例におけるブリッジ部7は起立状態と橋渡し状態を自動で切替えることができる自動スロープ構成である。
なお、本実施例ではブリッジガイド24によってブリッジ部7の姿勢変更を行っているが、上がり框Fの側面が
図4に示すように垂直になっている場合は、上がり框Fの側面を利用してブリッジ部7の姿勢変更をしても良い。
【0038】
また、詳細な説明は省略するが、スロープ部6及びブリッジ部7は右仕様と左仕様に組み替えることができる。
そして、本実施例においてはテーブル部4の形状を長方形状にすることで短辺側と長辺側で第一スロープ61と第二スロープ66の幅が異なる2種類のスロープを必要としているが、テーブル部4を正方形状にすることでスロープの乗り込み幅の種類を1つにすることができる。
つまり、スロープ(第一スロープ61と第二スロープ66)は本実施例に限定するものではなく、テーブル部4の一辺の大きさに合わせて任意に設定したので良い。
【0039】
次に、ここまで説明した部品以外に折り畳み式昇降機1を構成する部品を説明する。
まず、昇降スイッチ10について説明する。
この昇降スイッチ10は
図1などで示すように前記モーター81aを起動させるためのスイッチであり、上昇及び下降の指示をするための2つのボタンが備えられている。(なお、図示や詳細な説明は省略するが主電源は家庭用コンセントに接続して電力を得ている。)
また、該昇降スイッチ10を収納する際には、後述するグリップ部11に引っ掛けることもできるが、マスト部5の内側に固着されるフック52hに引っ掛けることができる。
これは、該フック52hは側面視において、外マスト52の前端よりやや内側に配置しており、テーブル部4を折り畳み状態にする際にテーブル部4の上面と昇降スイッチ10が干渉しないようにするためである。
【0040】
次に、グリップ部11について説明する。
このグリップ部11はマスト部5の上方に配置され、マスト部5の両端上方より突出するように一定間隔離間して取着された支持部11a,11aに強度の有る軸材に筒状の樹脂材を巻き付けることで形成したグリップ11bを架設している。
このグリップ11bは車椅子の利用者もしくは下肢の不自由な利用者が折り畳み式昇降1を使用して昇降する際に、把持することで安定感を向上させる目的がある。また、マスト部5とベース部2を組み立てる時の持ち手として使用することができる。
【0041】
次に、テーブル部4の折り畳み方法を説明する。
まず、本実施例における折り畳み式昇降機1は、テーブル部4が最低位の時にしか折り畳み操作ができないように構成している。
詳述すると、
図16はテーブル部4が一定の高さまで上昇して停止している状態を示している。
この時、折り畳み機構9,9のレバー93e,93eと中マスト51の付勢螺子51e,51eが当接していない。
よって、該レバー93e,93eによってロッド93c,93cが押圧されない状態となるため伸縮手段93,93が伸縮不可能になっており、テーブル部4を折り畳むことが不可能となっている。
【0042】
そして、
図17はテーブル部4が最低位の状態を示している。
この時、折り畳み機構9,9のレバー93e,93eと中マスト51の付勢螺子51e,51eが当接している。つまり、該レバー93e,93eによってロッド93c,93cが押圧された状態となり伸縮手段93,93が伸縮可能になっている。
また、該伸縮手段93,93の内筒93b,93bに対して外筒93a,93aは延伸しようとするが、ベース部2の第二ベース22及びテーブル部4、スロープ部6、ブリッジ部7などテーブル部4に取付けられる部品を一つの剛体としたときに、それらのモーメントが伸縮手段93,93の反発力より大きいため伸縮手段93,93が延伸することができなくなっている。
この状態からテーブル部4に連接したブリッジ部7に設けたハンドル部73を介助者などが把持してマスト部5方向に回動させることで、重心位置がマスト部5(伸縮手段93,93)に徐々に近くなりモーメントが小さくなる。
すると、テーブル部4などのモーメントに比べて伸縮手段93,93の反発力が大きくなることで伸縮手段93,93が延伸することができる。それに伴い、テーブル部4がマスト部5側に折り畳まれることで
図18に示すように折り畳み状態にすることができる。
なお、テーブル部4を使用状態にする場合には、折り畳み状態とは反対に伸縮手段93,93が作用することで使用状態に姿勢変更することができる。
【0043】
このように折り畳み機構9,9を構成することで、最低位でないとテーブル部4が折り畳みできないため、最低位に僅かに達していない時に無理にテーブル部4を使用可能状態にするなどして無理に車椅子や利用者がテーブル部4に乗り込むことで偏荷重を受けてテーブル部4などが破損することを未然に防止することができる。
そして、テーブル部4を折り畳み状態にする場合は、
図19で示すように一定の位置まで操作者がハンドル部73を把持して折り畳み方向にテーブル部4を動かすと、徐々に伸縮手段93,93の反発力がテーブル部4などのモーメントより大きくなるため操作者がハンドル部73を操作する力を軽くすることができる。(一定の所まで移動すると自動で折り畳むことができる。)
対して、折り畳み状態から使用状態に戻す場合は、徐々に伸縮手段93の反発力よりテーブル部4などのモーメントが大きくなるため操作者の負担を少なくすることができる。
【0044】
次に、本実施例を用いた折り畳み式昇降機1の使用方法を説明する。
以下の手順は上がり框Fがある玄関を想定し、玄関から屋内に移動する手順を説明している。
(1)折り畳み状態にある折り畳み式昇降機1のテーブル部4をブリッジ部7のハンドル部73を把持しながら使用状態に展開する。
(2)車椅子Kの利用者Mが玄関側からスロープ部6を介してテーブル部4上面に乗り込む。
(3)介助者もしくは車椅子Kの利用者Mが昇降スイッチ10の上昇ボタンを押して、テーブル部4を上昇させる。
(4)上がり框Fの上面と略平行の高さまでテーブル部4が上昇すると同時に、ブリッジ部7が自動で上がり框F側に橋渡し状態になる。
(5)車椅子Kの利用者Mがテーブル部4からブリッジ部7を介して上がり框Fを越えて屋内に移動する。
(6)玄関を健常な方が使用する場合は、昇降スイッチ10の下降ボタンを押して、テーブル部4を最低位まで下降させる。
(7)ブリッジ部7のハンドル部73を把持しながらテーブル部4をマスト部5側に折り畳んで折り畳み状態にする。
なお、本実施例では
図19に示すように車椅子を用いて説明を行ったが、下肢の不自由な利用者が歩いてテーブル部4に乗り込むことでスタンディングリフトとしても使用することができる。(使用方法は車椅子Kを使用した方法と同様。)
【0045】
また、本実施例における折り畳み式昇降機1は
図20(a)~(c)に示すように直進乗り込み、L字乗り込み、斜め乗り込みができ、玄関などの間取りに左右されること無く設置することができる。
詳述すると、
図20(a)に示すように入口(ドア)に対して上がり框Fが直線方向に結ばれる位置関係、且つ、入口(ドア)が壁側に設置されている場合は、
図21(a)のように第一スロープ61を利用してテーブル部4に乗り込む。
図20(b)に示すように入口(ドア)に対して上がり框FがLじ方向に結ばれる位置関係の場合は、
図21(b)のように第二スロープ66を利用してテーブル部4に乗り込み、テーブル部4上で利用者Mが車椅子Kを旋回させて搭乗状態にする。
なお、前述したようにマスト部5の内マスト51及び外マスト52を凹字状に形成したことで空間Sを設けているため、車椅子Kを旋回させた時に車椅子Kや利用者Mの足がマスト部5と干渉することが無くスムーズに旋回することができる。
図20(c)に示すように入口(ドア)に対して上がり框Fが直線方向に結ばれる位置関係、且つ、入口(ドア)が壁側から離れた位置に設置されている場合は、
図20(a)に示すように直進乗り込みができないため一般的な昇降機を利用する場合は壁から離して設置する必要があり、マスト部5の後方にデッドスペースができてしまう。それに対して本実施例における折り畳み式昇降1は、前述したように第一スロープ61と第二スロープ66が連続するようにコーナースロープ67を具備したことによって、斜め乗り込みをすることができるため、デッドスペースを作る必要が無く玄関を広く使うことができる。斜め乗り込み方法は、L字乗り込みと同様にテーブル部4に乗り込んだ後、テーブル部4上で利用者Mが車椅子Kを旋回させて搭乗状態にして利用する。
なお、
図21に示すように車椅子Kを後方乗り込みで説明しているのは、上がり框Fの下面に空間が設けられていた場合に、車椅子Kのフットサポートや利用者Mの足が挟まれるのを未然に防止するためである。上がり框Fの下に空間が無い場合は挟まれる心配がないので車椅子Kを前方乗り込みしたので良い。
【0046】
また、テーブル部4を折り畳み状態に姿勢変更すると伸縮手段93の反発力によってテーブル部4は折り畳み状態を保ち続けることができるが、何らかの外力(例えば、利用者が凭れかかったり、傘などを引っかけてしまったりするなど)が加わることによってテーブル部4を使用状態に戻す力が働くことが考えられる。この場合、人が危険に晒されたり、床に置いている物を挟み込んで破損させてしまう恐れがある。
その際、
図22(a)に示すようにテーブル部4を折り畳み状態にした時にテーブル部4とマスト部5を固定するロック部12を具備することで危険を回避することができる。
詳述すると、ハンドル部73のハンドル本体73bに解除レバー付フック12aを掛け、この解除レバー付フック12aの一端にボールチェーン12bを止着し、このボールチェーン12bの他端に丸環12cを取着し、この丸環12cをグリップ部11の支持部11aのプレートに穿設した穴に取着している。
このようにロック部12を構成することで、テーブル部4を使用状態に戻る力が働いてもロック部12によってハンドル部73と支持部11aがボールチェーン12bの長さ分しか開けないため、テーブル部4が不意に使用状態まで戻ることが無い。
なお、特に具備する場所や仕様は限定するものでは無く、テーブル部4が使用状態に戻らないようにマスト部5との位置関係を保てるような構成であれば良い。
例えば、
図22(b)に示すように埃除けを兼ねて一端を封止した筒状のカバー13でマスト部5とテーブル部4(スロープ部6、ブリッジ部7)を覆うようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 折り畳み式昇降機
2 ベース部
21 第一ベース
22 第二ベース
3 昇降リンク部
4 テーブル部
5 マスト部
51 中マスト
52 外マスト
6 スロープ部
61 第一スロープ
62 スロープ軸
63 第一固定部
64 ローラー支持部
65 止着部材
66 第二スロープ
67 コーナースロープ
7 ブリッジ部
71 ブリッジ
72 第二固定部
73 ハンドル部
8 昇降駆動部
81 モーター
9 折り畳み機構
91 保持部
92 アーム部
93 伸縮手段
10 昇降スイッチ
11 グリップ部
F 上がり框
K 車椅子
S 空間